グローバル・...
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目次
1. 2000年代の国際分業の確立➢ 日本企業間の国際分業
➢ 日本企業のアジアの企業との国際分業
2. 2010年代の変化➢ 真の現地化の推進
➢ グローバルサプライチェーンの伸延・複雑化
➢ 中国生産からの回避
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日本企業の海外生産
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%
年度
日本企業の海外生産比率
輸送機械
情報通信機械
製造業計
化学
電気機械
鉄鋼
資料:経済産業省「第41回海外事業活動基本調査(2011年7月調査)」
「第44回海外事業活動基本調査(2014年7月調査)」。国内全法人ベース。
© 東京大学 新宅2019
日本自動車産業の発展推移
(出展)新宅 純二郎、「海外現地生産の進展と国内製造業への影響」(赤門マネジメント・レビュー 15巻5号 (2016年5月) )、278頁
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万台
国内生産 国内販売 輸出 海外生産
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90年台半ばを境に、輸出と海外拠点における生産量が逆転
海外生産の急増
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円ドル
為替レート輸出額
百万ドル
円高と輸出
資料: 輸出は、財務省(旧大蔵省)「貿易統計」よりジェトロ経済情報発信課が作成したデータ、為替レートは
『東洋経済統計月報』より、筆者作図。
2000年代は、海外生産と輸出が同時拡大した
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③国際分業の時代
②転換期
日本の自動車メーカー:輸出と現地生産の推移
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万台日本自動車メーカー:アジア
生産
輸出
資料:日本自動車工業会資料:日本自動車工業会
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万台日本自動車メーカー:北米
生産
輸出
資料:日本自動車工業会資料:日本自動車工業会
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万台日本自動車メーカー:欧州
生産
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資料:日本自動車工業会資料:日本自動車工業会
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万台日本自動車メーカー:世界
海外生産
輸出合計
資料:日本自動車工業会資料:日本自動車工業会
北米市場• 85~95年は輸出代替の現
地生産。
• その後リーマンショックまで現地生産で純増。
• 輸出も増えたが減少。
アジア市場• 現地生産で純増
欧州市場• 90年代後半から現地生産
で純増も
• リーマン後の縮小で輸出縮小
世界
• 輸出は減少後に回復。リーマン後はまた縮小。
輸出代替 現地生産の純増
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2000年代、輸出先は欧米から中国・アジアへ(約5割)。USも依然大きい。
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日本の地域別輸出構成比
中国
(含、香
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出所: 財務省「貿易統計」よりジェトロ国際経済研究課作成資料より筆者作成。
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百万ドル 日本の地域別輸出額
US EU(28)
中国(含、香港) 台湾
韓国 ASEAN
出所: 財務省「貿易統計」よりジェトロ国際経済研究課作成資料より筆者作成。
2000年代に確立した国際分業
1. 日本企業の社内&企業間の国際分業
– 日本製の部品、原材料、製造装置をアジアを中心とした海外工場に送って、海外生産を行う。
2. 日本企業と台湾企業・韓国企業の国際分業
– 日本企業は部品、原材料、製造装置
– 台湾、韓国企業は、中間製品(液晶パネルなど)
– 日本、台湾、韓国企業の完成品は中国で生産
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1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
$1,000 東アジア向け輸出の財別構成
その他
耐久消費財
資本財
工業用原料
(注)東アジアは、中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、マレー
シア、フィリピン、インドネシアの9カ国。
東アジア向け輸出は産業財が85%(資本財50%、原料35%)
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Billion ¥
日本の機械産業における
アジア現地法人の調達
出所:経済産業省「海外事業活動基本調査」各年版より筆者作成。
注:対象は、1998-2000年は一般機械、電気機械、精密機械、輸送機械、2001-2006年は一般機械、
電気機械、精密機械、輸送機械、情報通信機械、2007-2013年ははん用機械、電気機械、輸送
機械、生産機械、業務用機械。
日本からの調達
現地調達第3国からの調達
現地調達率
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純粋に現地付加価値ではないものも含まれている
海外のサプライチェーンの構造
出所:新宅純二郎・大木清弘(2012)「日本企業の海外生産を支える産業財輸出と深層の現地化」『一橋ビジネスレビュー』2012年冬号.
海外工場の調達
1. 日本からの調達(輸入)
2. 第3国からの調達(輸入)
3. 現地調達• 輸入品• 日本部材、輸入部材を使った現地生産• 現地部材を使った現地生産
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日系アジア工場:日本由来のコスト比率は意外に大きい(2007年頃)
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日調材
CKD
部品A 経費
部品B 労務費
部品C
直材費経費
部品X 労務費
部品Y 償却費
部品Z 直材費
日
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品
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調
達
品
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直材費
償却費
日
本
品
(30%)
日
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ス
ト
(40%)
現
地
コ
ス
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(30%)
見かけの現地調達
日本
(70%)
実際の現地調達
タイの自動車産業 2007年頃日系自動車企業A社
見かけの現地調達率 90%実際の現地調達率 60%
日系1次サプライヤーB社見かけの現地調達率 70%実際の現地調達率 30%
中国の電気機械産業 2007年
日系の中国法人の売上 8兆円に対し、
日本から中国への電機機械系中間製品の輸出は約4兆円。
見かけの現調率と実際の現調率の乖離
• タイ自動車産業(2007年)– 日系自動車メーカー
• 見かけ 90% ⇔ 実際 60% ・・・2015年に約70%
– 日系1次サプライヤー• 見かけ 70% ⇔ 実際 30% ・・・2015年に約50%
– 日系2次(鍛造)• 現調率は30%
• 中国の日系電機メーカー(2011年)– 中国法人の売上100に対して、日→中の社内輸出が40の
比率。
• 自動車では、北米工場でも30%程度日本からの送り出し部品がある。
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東アジアの貿易構造2006年→2010年
日本
韓国
台湾
中国・香港
129 → 134
120 → 121
出所:ジェトロホームページ・国別情報統計より抜粋
7
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単位:10億ドル
材料製造装置
材料製造装置
液晶パネルなど中間製品
日本の産業財は、日本企業の海外生産(中国生産)を支えるとともに、韓国企業、台湾企業の成長の基礎となった。
液晶関連の製造装置や部材の85%が韓国・台湾・中国。
最近の変化• 日中は安定• 日→韓、台が
減少• 韓・台→中国
が増加
出所:経済産業省『通商白書2016』47頁。
68億ドル
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LCD Manufacturing Network in East Asia
Japan
Korea
Taiwan
China・Hong Kong
© SHINTAKU@MMRC
material
manufacturing
machine
material
manufacturing
machine
LCD
board
LCD, etc
Intermediate
goods
LCD TV
US
EU
LCD TV Manufacturing Cost Analysis (46” LCD TV) 2011
17
Source: 1. Nakagawa. K.., W. W. Song, & S. Katsumata (2011) Customized component transaction with insufficient trust: Case of the LCD industry (Japanese), Discussion Paper Series No. 339, Manufacturing Management Research Center, The University of Tokyo.
TV manufacturerprof it
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labor cost etcgeneral expense etc
5%
other TV set parts 14%
pane l manufacturer profit 5%
labor cost , deprec iat ion etc 9%
other modu le parts 7%
LED BLU 24%
dr iver IC 1%
l iqu id crystal 2%
polar izer 4%
color fi l te r 6%
glass substrate 5%
LCDmodule
shipmentprice64%
TVset
shipmentprice100%
TVsetcost83%
LCD TV Manufacturing Cost Analysis(46”)inside of LCD module parts
18Source: 1. Data from LCD report of Fuji Chimera Research Institute, 2010.2. Same as previous slide.
14% 46% 20% 20%
↑ ↑ ↑ ↑JAPAN KOREA TAIWAN ? Others
Total cost
Japan Korea Taiwan
pane l manu fac tu re r pro fit 7% 6.5%
labo r cost , deprec iat ion e tc 14% 6.5%
othe r modu le parts 12%
LED BLU 38% 6.5%
dr ive r IC 2%liqu id c rystal 3% 9.7%
po lar ize r 7% 10.8% 1.7%
co lo r filte r 10%
glass substrate 7%
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module
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67% 26.5%
67% 26.5%
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58.7% 28.8%
42.9% 47.4% Swiss27.4% 23.2% 31.2% 18.2%
目次
1. 2000年代の国際分業の確立➢ 日本企業間の国際分業
➢ 日本企業のアジアの企業との国際分業
2. 2010年代の変化➢ 真の現地化の推進
➢ グローバルサプライチェーンの伸延・複雑化
➢ 中国生産からの回避
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2010年代、中国の減少で対米輸出比率が増加。他国はほぼ安定。
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日本の地域別輸出構成比
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出所: 財務省「貿易統計」よりジェトロ国際経済研究課作成資料より筆者作成。
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百万ドル 日本の地域別輸出額
US EU(28)
中国(含、香港) 台湾
韓国 ASEAN
出所: 財務省「貿易統計」よりジェトロ国際経済研究課作成資料より筆者作成。
(2018年度)
自動車メーカー8社の生産・輸出・販売状況
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日刊工業新聞(2019年4月26日)
国内生産 海外生産 生産合計 日本輸出日本輸出/国内生産
国内販売国内販売/生産合計
トヨタ 3,212,906 36% 5,724,282 64% 8,937,188 1,947,895 61% 1,569,566 18%日産 900,781 17% 4,460,107 83% 5,360,888 502,045 56% 596,087 11%
ホンダ 911,837 17% 4,425,784 83% 5,337,621 184,946 20% 748,678 14%スズキ 1,010,657 30% 2,383,319 70% 3,393,976 202,037 20% 725,110 21%三菱自 660,880 46% 780,347 54% 1,441,227 429,615 65% 104,496 7%マツダ 1,010,160 64% 559,505 36% 1,569,665 835,892 83% 214,534 14%
ダイハツ 929,166 55% 772,825 45% 1,701,991 1 0% 651,492 38%スバル 616,987 62% 372,162 38% 989,149 491,496 80% 140,068 14%8社合計 9,253,374 32% 19,478,331 68% 28,731,705 4,593,927 50% 4,750,031 17%
トヨタの地域別生産販売(2018年度)
22
321157
2642
1220
187277
35 4378 100
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生産 販売
(万台)
アジア(中国以外)
中国
欧州
中南米
北米
アフリカ
中近東
その他
オセアニア
日本 出所:トヨタ公開資料
ホンダの地域別生産販売(2018年度)*四輪のみ
23
91 72
180 195
15 17
150 147
80 77
0
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生産 販売
(万台)
アジア(中
国以外)
中国
欧州
北米
日本
出所:ホンダ公開資料
1) 真の現地化の推進サプライヤーのケース
24Source: Data from a supplier firm in Thailand, 2011.
Japan70%
material
parts
part A other cost
part B labor cost
part C
material
other cost
part X labor cost
part Y depreciation
part Z material
First tier localization
manufactur ingcost
Japan(30%)
Local(70%)
materialcost
depreciation
Real localization
Japan
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Japan
cos t
(40%)
Loca l
cos t
(30%)
material
parts
part A other cost
part B labor cost
part C
material
other cost
part X labor cost
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part Z material
First tier localization
manufactur ingcost
Japan(30%)
Local(70%)
materialcost
depreciation
Real localization
Japan
(30%)
Japan
cos t
(40%)
Loca l
cos t
(30%)
30%
2007
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50%
2015© 東京大学 新宅2019
深層の現地化によって、日本付加価値率は減るが(縦軸)、販売額が増加すれば、日本付加価値額は減らない(横軸)
25
経費
償却費
直材費経費
償却費
労務費
直材費
労務費
日
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品
(30%)
日
本
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(40%)
現
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コ
ス
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日本(70%)
日本
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経・労・償
経費
償却費
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コスト
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コスト
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直材費
経・労・償
経費
償却費
労務費
直材費
現地向け商品開発部材の現地化生産性向上
新興国市場の販売増日本付加価値維持・増加
日本付加価値率低下
全体コスト削減
深層の現地化 市場の拡大
© 東京大学 新宅2019
深層の現地化がもたらす二極分化
1)日本に残って成長する事業(企業)
この種の事業は少数になっていく
同じ業種の中でも、高度なもの
海外企業からも引き合いがある事業
2)新たな海外進出が必須の事業(企業)
深層の現地化に牽引されて進出
中小企業の海外進出が課題
海外企業との競争
26© 東京大学 新宅2019
2)グローバルサプライチェーンの伸延・複雑化
– 各製品、各工程が、グローバルな観点で最適立地をめざす。
– 最適立地のロジックは多様: コスト、技術・ノウハウ、市場(地産地消)
– 製品、工程によって、どのロジックを重視するかは異なる。• 低コスト生産立地:電機やアパレルに代表される流れ• 市場立地:自動車に代表される地産地消の流れ
– 国によって比較優位は異なる。自由貿易の結果、様々な製品・工程がグローバルに分散配置される。
兵站線が世界規模で伸延。グローバルサプライチェーンの伸延、複雑化
27© 東京大学 新宅2019
兵站線が世界規模で伸延グローバルサプライチェーンの伸延、複雑化
生産移転の困難な製品・工程
• 生産集中のメリット– 設備集約的工程
– 生産量が少ない特殊部品
– 原料調達
• 技術的に移転困難– 先端製品
– 工程が暗黙知的
• 供給業者が限定
• 政策的に移転しない
新宅2016 28
半導体、液晶パネル
↓
生産移転しづらい
長納期部品(3ヵ月~6ヵ月)
↓
計画の長期化、在庫対応
現地生産でも長い納期
販売地 生産地 オーダーからディーラー到着までのリードタイム
日本 日本 1ヶ月
米国日本 3ヶ月
米国 3ヶ月
中国 中国 3ヶ月
欧州 欧州 3ヶ月
南アフリカ
日本 3ヶ月
インド 3ヶ月+10日
南アフリカ 4ヶ月
出所:ヒアリングに基づき作成© 東京大学 新宅2019 29
受注
生産計画策定
日本支給部品
現地生産ディーラー
(在庫)販売
受注
生産計画策定
生産
販売日本
北米
現地生産
欧州
日本から輸出
日本国内生産
北米
中国
欧州
N +2月N+1 月N 月 N+3 月 N+4 月
受注
生産計画策定
日本支給部品
現地生産ディーラー
(在庫)販売
受注
生産計画策定
日本支給部品
現地生産在庫
販売販売
受注
生産計画策定日本生産 海上輸送
ディーラー
(在庫)販売
受注
生産計画策定日本生産 海上輸送
在庫
販売販売
トヨタの生産計画
© 東京大学 新宅2019 30
トヨタの国内生産・国内販売
31
N-1月 N月(生産月)
車両生産
N月分の月度生産計画策定(20日頃、モデル別生産総量確定)
ディーラー
仕入れ要望需要予測
部品メーカー
内示 納品指示
仕様変更
差は±20%以内
かんばん
※ディーラーは原則、N−1月に発注した車両は引き取る
販売
*生産日の3日前まで仕様変更可能
トヨタの輸出・海外生産・海外販売
32
N-3月 N-2月 N-1月 N月 N+1月
日本車両生産
海外車両生産
販売
輸送
部品輸送(LT1.5ヶ月)日本部品生産
*工場部品在庫で対応
N−3月までの販売実績より
*モデル・型式・エンジン
トランスミッション確定
*生産日の数日前まで
スペック(オプション)・色の変更可能
(ウィークリー/デイリー)
20日
*スペック(オプション)・色の変更可能
月度生産計画
20日
見込生産計画
以前は、一度決定したらスペック・色の変更はできなかった。
部品輸送日本部品生産
富野/新宅/小林(2016)(2019年3月19日TMMK聞き取り)
2008年 リーマンショック
• 9月15日にリーマンブラザーズは破産申請
• しかし、日本の自動車メーカーのアメリカ現地生産は、減産することなく11月まで続いた。日本からの輸出も止まることがなかった。
• その結果、大量の流通在庫が発生し、12月
以降は生産をゼロにして生産調整せざるを得なくなった。生産の回復に時間がかかった。
• 危機のときのブレーキが踏めない。
ⓒ新宅2015 33
米国市場向け生産の変革N月 N+1月 N+2月 N+3月
日本生産
北米現地生産
北米販売受注・生産計画策定月度生産計画策定
日本支給部品出荷
車両海上輸送
日本支給部品見込み出荷
仕様(OP・色)の変更(北米輸出分)
日本生産 車両海上輸送
北米現地生産
仕様(OP・色)の変更
北米販売改革後
改革前
型式変更
受注・生産計画策定月度生産計画策定
出所:トヨタ自動車資料、ヒアリングに基づき作成34©新宅2018 東京大学
米国市場向け生産の変革とその後の海外への展開
• フレキシビリティーの変革(バラエティ変動)– 生産月に、オプション変更を受容
– 欧米など、成熟した市場に導入
– ディーラーの能力も必要
• 生産数量の変動力は不変(計画LTは同じ)– 月度計画のタイミングは同じ
– 生産月に、ブレーキを踏むことも。
– 販売からの数量は、楽観的か悲観的かで、生産の構え方をかえる。
©新宅2018 東京大学 35
自動車の部品供給ネットワーク
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日本 US
アジア メキシコ
欧州
© 東京大学 新宅2019
海外部品でフレキシビリティを失う国内生産と販売
• 近年、装備品の増加で、購買部品が増加• 電子部品増加が多く、非系列、欧州部品も増加• ワイヤハーネスは、日系アジア工場から輸入
37
• 輸入部品:長納期、低い生産フレキシビリティ
• 部品在庫、輸送費増(航空便)
• 国内販売:BTOが長期化、販売機会ロス、在庫の増加、安売り
3)生産拠点の中国からの移転
• 中国から、ベトナムなどへの移転
– 日本企業の移転はコスト要因(中国における賃金上昇)
– 日本に戻る場合もある。
– 中国市場向け生産は、中国で維持。
– 近年、コスト+貿易戦争で、中国企業の移転が増加
– ベトナムの裾野産業がそろうにはまだ時間がかかる。
© 東京大学 新宅2019 38
アジア自動車工場の生産性比較 2006年
© 東京大学 新宅2019 39
1,000 1,028
1,283
436
187
566
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
金額生産性(労務費/台)
日本=1000
10.713.0
20.6
25.2
28.4
41.5
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
物的生産性(人・時/台)
出所:大鹿隆(2014)「アジア自動車工場の生産性と賃金率の格差に関する研究―IMVP ラウンド4(2006 年)調査をベースとして―」MMRC-DP#461.より筆者作図
日中格差2.7倍
日中格差5.3倍
物的生産性(人時/台)では日本が圧勝 2.7倍
金額生産性(労務費/台)では中国が圧勝 5.3倍
© 東京大学 新宅2019 40
4,350
3,680
2,900
805
307
635
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500
5,000
賃金($/月)
日中格差14.2倍
コストと現場力
国際通貨コスト(ドルベース)=
為替レート
×
単位要素コスト(賃金、原料費、光熱費など)
×
生産性(1台あたり工数など)
© 東京大学 新宅2019
企業の現場力
環境要因
41
© 東京大学 新宅2019
23
31
32
34
42
44
45
63
0 20 40 60 80 100
ベトナム(38)
フィリピン(30)
インドネシア(73)
インド(34)
タイ(128)
中国(213)
マレーシア(33)
台湾(33)
日本
ワーカーの賃金比較(対マザー工場)
括弧内は回
答企業数
日本のマザー工場
の賃金を10として、
10段階で回答。
42
中国の賃金高騰によって、
• より低賃金のベトナムに逃げるか、
• 生産性の高い日本に回帰。
43
NEC米沢:ノートPC工場2012年
• 2011年 グローバル企業レノボの傘下に。
• レノボの製造担当役員が米沢工場を訪問
• 結論:レノボ・ブランドの日本出荷分の一部は米沢工場による国内生産に切り替え。サーバー生産も
日本工場生き残りの危機!
• 2012/2000年比で労働生産性が8倍。
• 2万品種を3日で出荷。30分サイクル生産。
• 保税JITとVMI調達。構内部品在庫は45分
©新宅2018 東京大学
ベトナムにおける低い現地調達率
• 現地調達率は低下• 中国→ベトナム の調達
– 当初は、中国工場で調達していた現地の部品材料をベトナムにもってくる。
– 生産におけるベトナムの付加価値は低い。
– ベトナム製品の対米輸出には、中国生産の付加価値が多く含まれている。⇒米国政府はこれを容認か?
• ASEAN部材への転換– 中国部材をASEAN部材に転換しようとするが、時間
がかかる。
© 東京大学 新宅2019 44
ご清聴ありがとうございました。参考文献• 中沢孝夫・藤本隆宏・新宅純二郎(2016)『ものづくりの反撃』(ちくま新書)筑摩書房.• 新宅ほか『新興国市場戦略』有斐閣、2013年.• 藤本隆宏・新宅純二郎・青島矢一(編著)『日本のものづくりの底力』東洋経済新報社, 2015年.• 新宅純二郎・天野倫文(2009)『ものづくりの国際経営戦略―アジアの産業地理学』有斐閣.• 新宅純二郎, 稲水伸行, 福澤光啓, 鈴木信貴, 横澤公道 (2014)「電機産業の現場力調査:日本の
現場の競争力を支える職場」『赤門マネジメント・レビュー』 13(10), 371-406.• 富野貴弘, 新宅純二郎, 小林美月 (2016)「トヨタのグローバル・サプライチェーン・マネジメント」
『赤門マネジメント・レビュー』 15(4), 209-230.• 新宅純二郎 (2016)「日本企業の海外生産における深層の現地化」『赤門マネジメント・レビュー』
15(11), 523-538. • 新宅純二郎 (2016)「海外現地生産の進展と国内製造業への影響」『赤門マネジメント・レビュー』
15(5), 267-284.
関連URL➢ 東京大学ものづくり経営研究センター(MMRC) http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/index.html➢ 地域のものづくりスクールは ⇒ものづくり改善ネットワーク http://www.mkn.or.jp/➢ 新宅ホームページ http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/shintaku/➢ 各種論文を読みたい方は ⇒
➢ MMRC論文:http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/index.html➢ 赤門マネジメントレビュー http://www.gbrc.jp/journal/amr/index.html➢ 新宅論文リスト http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/shintaku/gyoseki.html
45© 東京大学 新宅2019