ハイテン材のプレス成形 図1.2 自動車における環境...
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豊橋技術科学大学 森謙一郎
ハイテン材のプレス成形
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
車体構造軽量材料: 高張力鋼板, アルミ, マグネ, CFRP,樹脂
エンジンターボチャージャー,熱効率向上,可変バルブタイミング,摩擦低減, クリーンディーゼル
EV, PHV, HV
CVT, 摩擦低減,AT多段化,アイドリングストップ
駆動系
空気抵抗
ボディ形状
タイヤ表面パターン
転がり抵抗
車体重量低減
動力源
100kg減少:1km/l燃費向上
図1.2 自動車における環境対策技術
20
25
30
35
40
燃費
値(
km/L
)
ハイブリッド車CVT車MT車AT車2015年度基準2020年度基準
0500 1000 1500 2000 2500 3000
車両重量(kg)
5
10
15
国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/001031308.pdf
図1.4 燃費値と車両重量の関係
車体30%
エンジン12%
パワートレイン7%サスペンション
7%
燃料タンク
4%
ホイール,ハブ4%
シート 4%
タイヤ 3%
窓ガラス 3%
その他 26%
自動車の重量構成
フロントサイドメンバー
ロッカー
センターピラー
フロントピラー
ルーフサイドレール
フェンダー
トランクリッド
フード
ドアビーム
60~70%
30~40 %内板:1-3mm
外板:0,65-0.8mm
ドアアウター
ルーフ
図1.7 自動車車体における内板と外板
内板:骨格部材,body-in-white
板材 引張強さ 比重
比強度 コスト(1kg当り)
生産量
超高張力鋼板 980~1470MPa
7.8 126~188MPa
100円程度
鉄:12億ton
従来高張力鋼板
490~790MPa
7.8 63~101MPa
軟鋼板 SPCC 340MPa 7.8 44MPa
アルミ合金板A6061(T6処理)
310MPa 2.7 115MPa 800円程度
アルミ:3400万ton
マグネシウム合金板 AZ31
270MPa 1.8 137MPa 6000円程度
マグネ:60万ton
PAN系炭素繊維
2000MPa~5000MPa
1.6 2000円程度
炭素繊維:2万ton
自動車用板材の比較
鉄鋼:鉄鉱石の還元,炭素量の調節,アルミ:ボーキサイトの電気分解
50
40
30
20
10
0
材料1kgあ
たりのCO2換
算排出量
/kg
各種材料の製造におけるCO2排出量
CO2換算量
材料製造時自動車使用時 廃車時
走行距離
クロスポイント
0
高張力鋼板とアルミニウム合金板のCO2排出量
1200 1500
超高張力鋼
200 400 600 800 1000
DP 鋼 TRIP 鋼
残留オーステナイト
ベイナイト
フェライト
マルテンサイトIF鋼:固溶強化
ダイクエンチング
TRIP鋼:残留オーステナイト
DP鋼:フェライト中にマルテンサイトを分散
引張強さ /MPa
全伸
び/%
マルテンサイト鋼
各種高張力鋼板
荷重
引張強さ:440, 490, 590, 780, 980, 1180 MPaPmax/A0
Pmax
変位
A0: 初期の断面積
高張力鋼板
鋼板 F /MPa nSPFC1180 1404 0.10SPFC980 1391 0.09SPFC780 1210 0.12SPFC590 979 0.16SPFC440 754 0.18SPCC 530 0.25
応力
/MPa
ひずみ
0 0.05
1200SPFC1180
SPFC980
SPFC780
SPFC590
SPFC440
JSC270
900
600
300
0.1 0.15 0.2 0.25 0.3
各種高張力鋼板の応力―ひずみ曲線
= Fn
伸び
/%
引張強さ /MPa
0 200
50
40
30
20
10
400 600 800 1000 1200
各種高張力鋼板における伸びと引張強さの関係 マツダSKYACTIVにおける高張力鋼板の使用
提供:マツダ㈱
日産自動車インフィニティ Q50の骨格部材における1180MPa級超高張力鋼板材の冷間プレス成形
提供:日産自動車㈱ 骨格部材の25%:1180MPa
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
超高張力鋼板のスプリングバック
ε
σ 普通鋼板
超高張力鋼板
弾性回復
スプリングバック:大形状凍結性:低 引張り
圧縮
引張り
圧縮
負荷
除荷
角度変化
壁そり
ねじれ
稜線そり
超高張力鋼板の形状凍結性 高張力鋼板の曲げにおけるスプリングバック
SPCC, 440, 590, 780, 980, 1180MPa
パンチ形状
(a) 材質の影響 (b) 板厚の影響
5
4
3
2
1
0
曲げ角度 /º 曲げ角度 /º
スプ
リン
グバ
ック
角度
/º
V曲げにおけるスプリングバックに及ぼす材質および板厚の影響
側壁ビードによるスプリングバックの防止
側壁の剛性増加
面取りによるスプリングバックの防止
設計変更
面取り
しわ押え力制御によるスプリングバックの防止
低しわ押え力
髙しわ押え力
フォーム成形によるスプリングバックの防止
(a) ドロー曲げ (b) フォーム成形
オーバーラン誘発パンチによるスプリングバックの防止
引張り強さ /MPa
452
597
838
1025
1211
1520
オーバーラン誘発パンチによるスプリングバックの防止 リストライクによるスプリングバックの防止
980MPa
(a) ドロー (b) リストライク
リストライクによるねじれの防止
(a) ドロー成形 (b) スライドロックドロー成形
780MPa
スライドロックドローによるスプリングバックの防止
目標形状
ダイス形状
製品形状
(a) ダイス形状が目標形状と同一 (b) ダイス形状の修正
スプリングバック
ダイス形状
製品形状=目標形状
スプリングバックを考慮して目標形状を得るための金型の補正
FEMシミュレーション
製品との差
金型形状の修正
NG
OK
(a) シミュレーション結果
(b) 1回目修正 (c) 2回目修正 鈴木工業㈱
有限要素シミュレーションを用いたスプリングバックを考慮した金型形状の修正 有限要素シミュレーションにおける
スプリングバックに及ぼす構成式の影響
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
プレス成形部品780MPa級
フランジ割れ板材端部で発生する引張応力による割れ
板材
せん断 曲げ
引張りせん断切り口面
フランジ割れ
プレス成形におけるフランジ割れ せん断と伸びフランジ成形
パンチパンチ
ダイ
ダイ
板押え
ブランク
板
パンチパンチ
ブランク板押え ダイ
ダイ
凹型ブランク
ブランク
(a) せん断加工
(b) 伸びフランジ加工
フランジ割れにおよぼすせん断クリアランス比の影響(JSC780Y,L=17mm)
割れ
(a) c=25% (b) c=15%
割れなし
観察部
実験による限界伸びフランジ率におよぼすせん断クリアランス比の影響(JSC980Y,L=15mm,平坦パンチ)
(a) c =20%
割れ
1mm
正面 切口面
0.1mm
割れ
(b) c =15%
正面 切口面
割れなし
1mm
せん断面
破断面
0.1mm傾斜角度10
o
傾斜角度45o
(a) 平坦パンチ
(b) 逐次接触パンチ
引張低減
引張集中
部分逐次接触パンチによる伸びフランジ成形性の向上
(a) 平坦パンチ(α=0o)
計算による長手方向引張りひずみの変化(JSC780, L=17mm)
長手方向引張りひずみ
(b) 逐次接触パンチ(α=10o, W/W0=1.0)
00.5 0.4 0.3 0.2 0.1
s/se=100%s/se=100%s/se=60% s/se=60%
(s:ストローク, se:加工終了時のストローク)
(b) 逐次接触パンチ(α=10o, W/W0=1.0)割れなし
(a) 平坦パンチ(α=0o)割れ
逐次接触パンチによる割れの防止(JSC780, L=18mm)
205.9
20.9
22.5
205.2
20.7
22.8
17.2
実験における部分逐次接触パンチによる最大製品高さの向上
平坦
平坦
W/W0=0.2, =45o
13.7
18.0
(a) JSC980Y
(b) JSC1180Y
W/W0=0.2, =45o
21.9
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
(a) 270 MPa, 55 mm (b) 590 MPa, 40 mm (c) 980 MPa, 25mm
各種鋼板の深絞り成形性 780MPa級鋼板のプレス成形における割れ
1180MPa級超高張力鋼板の深絞り加工における割れの発生
10m
m
980MPa級超高張力鋼板の曲げ加工における割れ
390MPa440MPa
490MPa
290MPa790MPa
各種鋼板の成形限界線
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
かけかけひび
かじり
焼付き
高張力鋼板のプレス成形における金型の損傷
提供:㈱ベルソニカ
1180MPa級超高張力鋼板の深絞り加工における焼付きの発生による容器側面の擦れた傷
焼付き
1.2GPa以上の冷間プレスは困難
1180MPa級超高張力鋼板の深絞り加工における金型への焼付きの発生
(a) コーティングなし (b) TiN(CVD)
(c) TiN(PVD) (d) VC(TD)
焼付き
焼付き
焼付き
5mm
ダイス
R部
観察位置
しごき絞り加工における焼付き
超高張力鋼プレス成形車体部品
焼付き 型かじり
各種コーティングにおける摩擦係数
0.8
0.6
0.4
0.2
1000 2000 3000 40000
硬さ /HV
摩擦
係数
窒化PVD CrN
PVD TiN
PVD TiAlN
CVD TiC
冷間プレス用金型 SLD-MAGIC
耐摩耗性,耐かじり性向上
被削性 Machinability 良 Good
SLD®SKD11
ARK1®
8%Cr鋼
10%Cr鋼
耐摩
耗性
Wea
r res
ista
nce
良G
ood
SLD-MAGIC®
かじりなし
(b) SKD11
(a) SLD-MAGIC2
かじり発生
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
(a) 270 MPa (b) 590 MPa (c) 980 MPa
各種鋼板のプレス成形におけるしわ
780MPaのプレス成形におけるしわ
(a) 実験 (b) シミュレーション
プレス成形におけるしわの予測
(a) 実験 (b) シミュレーション
プレス成形におけるしわの予測 しわと割れ
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形 せん断切口面におよぼすクリアランス比の影響(低強度の高張力鋼板:JSC390W)
(a) c=4% (b) c=12% (c) c=20% (d) c=30%
1mm
せん断面
破断面
かえり
だれせん断面
破断面
かえり
せん断切口面におよぼすクリアランス比の影響(超高張力鋼板: JSC980Y)
(a) c=4% (b) c=12% (c) c=20% (d) c=30%
1mm
かえり
二次せん断面
だれせん断面
破断面
かえり
せん断された穴径
dpパンチ
dd
dh
0 5 10 15 20 25 30 359.99
10.00
10.01
10.02
10.03
10.04
穴抜きクリアランス比c / %
JSC270CJSC390WJSC440WJSC590RJSC780YJSC980Y
dp
d h /m
m
クリアランス比大→穴径大
各種コーティング金型を用いた980MPaの打抜き加工
Wide Peening and Cleaning
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形
板にSPRを打込み,機械的に結合穴あけ不要溶接の難しい材料の締結異種材料の締結
ダイス
板押え SPR(鋼)
パンチ
Cフレーム
接合部
<工法のメリット>
セルフピアスリベッティング
高張力鋼板
・高強度・低延性
リベット硬度に近い
リベット割れ リベット折れ
アルミニウム板と高張力鋼板の接合
マルチマテリアル化
(a) 上板 SPFC980 t1.4,下板 A5052 t1.5
(b) 上板 A5052 t1.5,下板 SPFC980 t1.4
有限要素シミュレーション
曲面ダイ テーパーダイ形状
ダイ形状の最適化
上板:SPFC980, 1.4mm, 下板:A5052, 1.5mm
リベット
メカニカルクリンチング
セルフピアシングリベット
パンチパンチパンチ
メカニカルクリンチング
リベット使用高コスト
セルフピアシングリベット
リベット不要低コスト
ダイ
リベット
パンチ
ダイ
メカニカルクリンチングによる高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合
高張力鋼板の引張強さ /MPa
10008006004002000
下板高張力鋼板1.5
1.0
0.5
上板高張力鋼板
十字
引張
荷重
/ k
N
上板SPFC780
0
上板SPFC980
1.5mm厚さのアルミニウム合金板と1.4mm厚さの高張力鋼板の接合体の十字引張荷重
高張力鋼板どうしのメカニカルクリンチング
下板割れ
ダイ深さ
h[m
m]
0 105
1.21.4
1.8
1.0
1.6
2.0
底部角度 θ [°](b) 下板JAC980
ダイ深さ
h[m
m]
0 105
1.21.4
1.8
1.0
1.6
2.0
底部角度 θ [°](a) 下板JAC780
接合良好
上板破断
インターロック不足
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形 ホットスタンピング
加熱 プレス成形鋼板 後加工
下死点保持:高強度化(1500MPa)レーザでトリミング
ダイクエンチング
900
フォルクスワーゲン
パサート:骨格部材の17%(2006年)
ゴルフ:骨格部材の28%(2012年,23kgの軽量化)
ボルボXC90:40%
ホットスタンピングの適用割合
05
1015202530354045
2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016
骨格
部材
に占
める
ホッ
トス
タン
ピン
グ部
材の
重量
割合
[%]
年
1 2
16
7
1
5
2008年 2013年
採用なし
採用なし 車体構造部品
衝突補強部品
日本 10%超えた車種はまだない
鈴木貴之,素形材,2014年7月号
トヨタ新型プリウスにおけるホットスタンピングの適用
プラットフォームTNGA
3%から19%Bピラ一,ルーフクロスメンバー,フロアクロスメンバー
ホンダN BOXのセンターピラー
室外
室内
超高強度スティフナー
アイシン高丘におけるホットスタンピング成形品
豊田鉄工,ユニプレス,ワイテック,東プレ,ジーテクト
ドアインパクトビーム
フロントサイドメンバー
テーラードブランク
Aピラーリーンフォースメント
ダッシュロアクロスメンバー
フロントバンパーリーンフォースメント
ルーフクロスメンバー
リアバンパーリーンフォースメント
ベルトラインリーンフォースメント
プレスへ
炉長
炉へ投入
大きな加熱炉
1.6m
x1.6m = 24m20sec300sec
板材投入部
板材搬送装置銅電極
成形品排出装置
成形型
通電加熱, 成形+ダイクエンチ板材搬送 材料取出し
連続通電加熱ホットスタンピング通電加熱ホットスタンピング装置の開発
㈱アミノ
(d)下死点保持
(a)炉加熱
ブランク(900 )
(e)終了
搬送
(c)成形中(b)接触開始
直接水冷を用いたホットスタンピング
従来:10秒保持新:3秒保持
低い生産性
水
水槽
下型
上型
直接水冷を用いたホットスタンピング
1. 高張力鋼板
2. スプリングバック
3. 伸びフランジ
4. 割れ
5. 金型損傷
6. しわ
7. せん断加工
8. 塑性接合
9. 超高強度鋼部材のホットスタンピング
ハイテン材のプレス成形