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サンプリングの関する 基礎知識 (日環協教育用テキスト提供原稿) イー・サポート 高円寺

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サンプリングの関する

基礎知識

(日環協教育用テキスト提供原稿)

イー・サポート 高円寺

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1.実験計画及びサンプリングの基礎 1.1 はじめに・・・・・・サンプリングの重要性

CITAC ガイド1(分析化学における分析値の信頼性に関する聞く最適指針)

19. サンプリング,試料の取扱及び調製 ※ CITAC Co-Operation on International Traceability in Analytical Chemistry (分析化学における国際トレーサビリティー協力機構)

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(1) 化学分析の目的

・物質全体の分析値の平均を確定する

・物質全体の対象物質の濃度分布を求める

・物質の部分的汚染を決める

試料採取方法は,分析目的により異なる

(2) 試験試料がもとの物質を代表していない場合

どんなに分析方法がよくても,どんなに慎重に分析をおこなったとしても

測定した結果をもとの物質の結果に結びつけることは不可能

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(3) サンプリング誤差

サンプリング誤差は,標準物質や測定標準で補正できず,

常に誤差発生原因となる (4) サンプリングは得られた結果は全体を代表する値であること ・その分析の全般的な背景を理解している熟練した試料採取できる人, または,その指揮下で行わなければならない ・正しくサンプリングできるのは,経験ある分析者 またはサンプリングについて,特別に教育・訓練をされた者 ・サンプリング手順の重要さを軽視し,かつ未熟で教育不足の従業員に 委ねることは,典型的な落とし穴である

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(5) サンプリング計画・実施においての重要事項

①目的に合った手順 平均濃度 対象成分の分布 特定成分の汚染 ②均一性 均一にみえたとしても,均一とみなすことは注意 ③目的成分の特性を考慮 揮発性, 光・熱安定性,化学反応性 サンプリング立案 採取器具・装置選定 容器・保管方法 目的成分が試料容器に吸着するおそれがある微量分析では, 安定化のため,酸,酸化防止剤等を添加

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④サンプリングの記録

サンプリングプロセスを厳密に反復できるように,

たどった手順を明確に記録する

⑤試験所がサンプリングを自ら行わない場合

サンプリング段階で責任がない

受け取った試料をそのまま分析

報告書にその旨を記載

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(6) その他の注意事項

①試料に接触するものは,表面が不活性であること 容器,栓から溶出する金属,可塑剤による汚染 ②容器からの試料の漏れ、汚染物の混入 ③試料ラベル 重要な『文書』であり, 損傷(退色,破損,試料・試薬の付着に耐える)しないもの ④試料の保管 汚染,クロスコンタミ,ラベル損傷がないように清浄で整理された場所 必要により環境監視(例 温度)をする ⑤試料取扱い 保管・処分について文書化した手順

適切な教育,訓練

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1.2 サンプリングでの精度管理

(1) サンプリング誤差と分析誤差

環境測定 現地作業(サンプリング)と試験室での作業(分析)

ばらつき(標準偏差) σS σM

全体のばらつき(標準偏差)σは、これらを合成した次式になる σ2=σS

2+σM2

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このうち 分析のばらつきσM

分析操作を SOP に従って実施し,最小化 ※SOP : Standard Operation Procedure

・ σSを最小化するには,サンプリング手順を 各試験所に適したSOPとし実施する ・ サンプリング手順,SOPは,公定法に則るものが 必要で,Private Method は原則的には不可 ⇒ 計量士が検証データをもとに,変更することは可

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(2) サンプリングの目的=測定・分析目的

・環境測定

対象とする環境の実態把握 環境基準等の基準に対しての適合性評価 汚染源の特定,汚染源からの拡散評価 特定事業・工事による影響・汚染の調査 ・事業所からの排水

排水基準等の基準の順守状況、適合性確認

水処理管理のための工程ごとの水質把握

・品質管理,工程管理

ロットの特性把握

品質管理、工程管理の重要な特性把握

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(3) サンプリングに関する主な規格、公定法

対 象 規格,公定法

工業用水・工場排水 JIS K 0094 (工業用水・工場排水の試料採取方法)

排ガス

JIS K 0095 (排ガス試料採取方法)

なお,各項目ごとの個別規格で各項目ごとの

個別の採取方法を規定

産業廃棄物 JIS K 0060 (産業廃棄物のサンプリング方法)

土壌汚染対策法関連

土壌 環境省令第29号/平14 (土壌汚染対策法施行規則)

土中ガス

及び地下水

環境省告示第16号/平15 (土壌ガス調査に係る採取及び測定の方法)

ダイオキシン類

工場用水

工場排水

JIS K 0094 (工業用水・工場排水の試料採取方法)及びJIS K 0312 (工業用水・工場排水中のダイオキシン類及

びコプラナーPCBの測定方法)

排ガス

JIS K 0095 (排ガス試料採取方法)及びJIS K 0311

(排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法)

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さらに,環境庁・環境省等から,さまざまなマニュアルが対象ごと に制定されている (例 : 要調査項目等調査マニュアル)

対 象 規格,公定法

底質 底質調査方法

下水 下水試験方法

水道水 健水発第1010001号/平15 (水質基準に関する省令・・・留意事項について)

上水 上水試験方法

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なお、規格の国際化(I SOとの整合性)が進んでおり,以下のその例を紹介する

注) これらの規格は、環境関連法令では引用されていないため, 水質関連ではJIS K 0094 が基本的な試料採取方法となる

JIS K 0410-3-1

(ISO 5667-1) 水質-サンプリング-第1部:サンプリング計画策定の指針

JIS K 0410-3-2

(ISO 5667-2) 水質-サンプリング-第2部:サンプリング技術の指針

JIS K 0410-3-3

(ISO 5667-3) 水質-サンプリング-第3部:試料の保存及び取扱いの指針

JIS K 0410-3-6

(ISO 5667-6) 水質-サンプリング-第6部:河川水のサンプリングの指針

JIS K 0410-3-9

(ISO 5667-9) 水質-サンプリング-第9部:海水のサンプリングの指針

JIS K 0410-3-11

(ISO 5667-11) 水質-サンプリング-第11部:地下水のサンプリングの指針

JIS K 0410-3-12 (ISO 5667-12)

水質-サンプリング-第12部:底質のサンプリングの指針

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(4) 水質試料のサンプリング(引用規格 JIS K 0094)

なお,溶存酸素,ヘキサン抽出物質,細菌試験,揮発性有機化合物(VOC)等 の試料採取は,JIS K 0101,JIS K 0102,JIS K 0125,環境庁告示等の 個別の方法による ① 適用範囲 ・工業用水(上水道水,工業用水道水,河川水,湖沼水,地下水,海水) ・工場排水 ②試料容器

共栓ポリエリレン(PE)びん

または,ポリプロピレン(PP)びん,ポリカーボネート(PC)びん

(いづれも 共栓)栓は,びんと同材質とする

PEびんは,懸濁物質,P化合物,有機物,重金属等を付着・吸着の傾向

無色共栓ガラスびん

ガラスびんは,Na,K,B,SiO2,Al,種類によっては,As,Znが微量溶出

硬質1級ガラスは溶出量は少ない

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試料容器の洗浄手順 a. 水道水で洗浄し純水し,次いで精製水(JIS K 0557 のA1)で洗浄 ※JIS K 0557 : 用水・排水の試験に用いる水 b.対象別洗浄 注) A1,A2,A3,A4 : JIS K 0557 で示す精製水 c.洗浄後の試料容器は,水を排出後,密栓して保存

金属元素、有機物

ⅰ) 温硝酸(1+10)又は温塩酸(1+5)で洗浄

ⅱ) 硝酸(1+65)を満杯にし、密栓し16時間以上

ⅲ) A1の水で洗浄後、A2又はA3の水で十分洗浄

ⅳ) A4 微量分析に用いる

上記以外

(陰イオン等)

ⅰ) A2の水を満杯にし、密栓し16時間以上

ⅱ) A2又はA3の水で十分洗浄

ⅲ) A4 微量分析に用いる

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③採水器による採取

採 水 器 採 取 方 法

試料容器

(直接採取)

ⅰ) 容器を採取場所の水で,3~4回洗う

ⅱ) 容器を静かに沈め,満水になるまで採取し密栓

バケツ,

柄付ひしゃく

(表層水の採取)

・バケツは必要に応じロープを付ける

・PE又はPP製がよい,SUS製は微量金属の溶出に注意

ⅰ) 採取場所の水で,採水器を洗う

ⅱ) 採水器で採取場所の水をくみ取り,手早く試料容器

を洗浄し, 満水になるまで入れ密栓

ハイロート採水器

(各深度の試料採取が可能)採取時に試料容器中の空気と試料水が置換するため,溶存ガス成分,還元性物資には不向き

ⅰ) 採取場所の水で洗浄した試料容器を取り付ける

ⅱ) つりさげ用ロープで,採取深度まで静かに沈める

ⅲ) 開栓用鎖を引いて開栓し,しばらく放置し試料を採取

ⅳ) 開栓用鎖を緩めて栓をし,引き上げる

ⅴ) 試料容器を外し,密栓・・・・・・(満水)

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採 水 器 採 取 方 法

バンドーン

採水器

(各深度の試料採取が可能)

ⅰ) 採水器の円筒,上下のふた,バケツ類を採取場所の水で洗う

ⅱ) つり下げ用ロープで所定深度まで静かに沈め,深度を確認

ⅲ) 採水器を2~3回上下させ,円筒内の水を十分に入れ換える

ⅳ) メッセンジャーを落とし,上下のふたを閉じた後,採水器を引き

上げる

ⅴ) チューブのピンチコックを緩め,試料の一部でバケツを洗浄後,

試料をバケツに移す

ⅵ) 試料を攪拌しながらこの試料で試料容器を1~2回洗浄後,

満水になるまで流し入れ密栓する

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この他の採取方法

ⅰ) 自動採取装置 ・間欠採取装置(水質計連動採取方式,定時採取

方式)

・コンポジット試料採取装置(混合試料採取装置)

・集中採取配管方式

ⅱ) 採取弁による採取

・配管,装置に設置した採取弁を用いての採取

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④ 試料採取時の記録事項

(*) JIS K 0094には規定さていない

1 試料名,試料番号

2 採取場所名,採取位置(表層水,採取深度等)

3 採取年月日,時刻

4 採取時天候

5 前日天候

6 採取者名

7 採取場所状況(水質に影響を与えうる事項,例 採取現場略図)

8 採取時の気温,水温

9 その他-1 試料の外観(色,濁り),臭気の有無

10 その他-2 採取時の測定値(透視度,pH,残留塩素)、

採取方法(*)・・・・直接/ハイロート/バンドーン・・・・

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⑤試料の保存処理 イオンクロマトグラフ分析を行う試料は,保存処理せずに採取後直ちに試験する

保存処理 分析項目

a 0~10℃の暗所に保存

CODMn,CODCr,CODOH

BOD,TOC,TOD,

界面活性剤

・pHを2~3 (塩酸l又は硫酸を添加),

0~ 10℃の暗所に保存

・短日数であれば,保存処理せずにそのままの状態で0~10℃の暗所保存 でもよい

NH4+,NO3

-,

有機体-N,T-N

・クロロホルムを添加し(1 mL /L ) ,0~10℃

の暗所 に保存

・短い日数であれば,保存処理せずに,その

ままの状態で0~10℃の暗所保存でもよい

NO2-

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保存処理 分析項目

d pH約10 (NaOH(200 g/L)添加)

又は ,粒状NaOHを添加 (2~4 粒/L) I,Br

pH約12 (NaOH(200 g/L )添加)

又は ,粒状NaOHを添加 (4~6 粒/L )

CN,S

残留塩素など酸化性物質が共 存する場合

・L(+)-アスコルビン酸を加え還元後,pHを 約12 CN

・DO測定瓶に採取し,塩基性炭酸亜 鉛懸濁液を

添加(約2 mL/100 mL)してもよい

S

f pHを約4(りん酸添加)とし,CuSO4・5H2Oを1 g/L

添加し, 0~10 ℃の暗所に保存

フェノール類

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保存処理 分析項目

g 弱酸性 (塩酸添加) 農薬(パラチオン,メチルパラチオン,EPN,ペンタクロロフェノール等)

・中性の状態で、ークロロホルムを添加し(約5 mL/L),

0~10℃の暗所に保存

・1~2日間であれば,添加せず0~10℃の暗所でもよい

りん化合物

pH約2 (硫酸又は硝酸添加) 全りん

ろ紙(No.5C)でろ過し,初めのろ液約50 mLを捨て,その後のろ液を試料とし,以下は<りん化合物>と同様の保存処理をする

溶存りん

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保存処理 分析項目

pH約1 (硝酸添加) Cu,Zn,Pb,Cd,Mn,Fe,Al,Ni,As,Cr.Hg,Se等

pH約1 (塩酸(ひ素分析用)添加)

As

有機物,硝酸塩等を

含まず前 処理で硝

酸を酸化剤を用いな

い場合

0~10℃の暗所に保存 Cr(Ⅵ)

ろ紙(No.5C)でろ過し,初めのろ液約50 mLを捨て,その後のろ液を試料とし,pH約1 (硝酸添加)

溶存状態の金属元素

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JIS K 0094 に規定されない項目-1

JIS K 0125

(用水・排水のVOC

試験方法)

・JIS K 0094 に従う

ただし,試料容器に泡立てないように移し

入れ,気泡が残らないように満杯にし密

栓する

・試験は,採取直後直ちにおこなう

直ちに行えない場合は,4℃以下(凍結さ

せない) の暗所で保存し,できるだけ早く

試験する

揮発性有機

化合物(VOC)

・残留塩素などの酸化性物質が共存する場合

L(+)-アスコルビン酸を10

~20 mg/残留塩素1 mg

上に加え,塩酸(1+11)で

pHを約2以下にする THM類

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JIS K 0094 に規定されない項目-2

JIS K 0093

(用水・排水のPCB試験

方法)

・JIS K 0094 に従う

ただし,採取した試料は,他の容

器に移し替えたり,一部を採取し

てはならない

・試験は,採取直後直ちにおこなう

直ちに行えない場合は,0~10℃

の暗所で保存し,できるだけ早く

試験する

PCB

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JIS K 0094 に規定されない項目-3

JIS K 0102

(工場排水

試験方法)

・採水びん

乾熱滅菌又は高圧蒸気滅菌をしたものを使用

または,滅菌済み細菌試験用PEびんを使用

・試験は,採取直後直ちにおこなう

直ちに行えない場合は,0~5 ℃(凍結させな

い) の暗所で保存し,できるだけ早く試験する

一般細菌

大腸菌群

・残留塩素などの

酸化性物質が

共存する場合

粉末Na2S2O3 20~50 mgを100 mL滅菌瓶に入れ,高圧蒸気滅菌又はエチレンオキシド滅菌をし,採取する

JIS K 0128

(用水・排水中の農薬

試験方法)

・JIS K 0094 に従う

・残留塩素が共存する場合

採取後,L(+)-アスコルビン酸(40 g/L)を,残留塩

素1 mgあたり0.1 mL添加

・試験は,採取直後直ちにおこなう

直ちに行えない場合は,0~10℃ の暗所で保存

し,できるだけ早く試験する

農薬

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⑥試料の種類別採取方法

工場排水-1

特徴

ⅰ) 工場,事業所から放流されるもので,操業に伴って各生産工程

から排出される製品処理 洗浄廃液,冷却廃水,ボイラ廃水等を

廃水処理設備で浄化処理し,工場等の外に排出されるもの

ⅱ) 水質や水量は,業種・製品種・事業規模等で異なり,操業の周

期変動により経時変動や季節変動がある

採取地点

ⅰ) 工場,事業所の排水口

ⅱ) 排水口での採取が困難な場合

同水質の排水が採取できる排水路,排水管路の汚水枡,最終

調整槽,廃水処理施設出口

ⅲ) 工程ごとの廃水を試験する場合は,目的に応じ設定する

採取時期

と頻度

ⅰ) 通常の操業時間,廃水処理設備の稼動時間を考慮する

ⅱ) 頻度は,目的に応じ設定する

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工場排水-2

採取方法

ⅰ) 排水路,排水管路から落下している場合

・試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

ⅱ) 排水路(排水溝),排水管路から放流されている場合

・試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

・水位の変動で外部の水が逆流してくる場合があり,

要注意

ⅲ) 汚水枡,最終調整槽からの採取

・バケツや柄付ひしゃく

ⅳ) 廃水処理施設出口での採取

・採取装置がある場合

JIS K 0094 4.3項による

・採取装置がない場合

試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

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工場用水(河川水)-1

特徴

ⅰ) 流域の地理的,地質的条件によって異なり,さらに降雨などの気

象条件,各種用水の取水,生活排水・工場排水の流入,河川工

事等の人為的条件により水質変動

ⅱ) 河川の多くは中小河川が合流して形成されるため,中小河川の

水質も変動要因

ⅲ) 感潮水域では,潮の干満の影響,表層水と下層水の水質の違い

採取地点

ⅰ)取水する事業所等が取水している地点で同深度より採取

ⅱ)河川水の水質変動が予知できる地点をあらかじめ選定

ⅲ)河川から直接採取する場合は,流入する支流や排水が十分に混

合している場所

ⅳ) 流心部(横断面の単位面積について最も流量が大きい部分・・・・

最深部)で,全水深2割の位置川幅が広い場合は,左右両岸でも

採取し,比較するのが望ましい

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工場用水(河川水)-2

採取時期

頻度

ⅰ) 事業所等が通常の状態で操業し取水しているとき

ⅱ) 比較的晴天が続き,水質が安定した日

(目的により,降雨時,降雨後)

ⅲ) 感潮水域では,潮の干満が激しくない干潮時

(目的により,海水の影響を調査する場合もある)

ⅳ) 通常は3~4 回/日,日間変動を調査する場合は2~4 時間間隔

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工場用水(河川水)-3

採取方法

ⅰ) 取水配管がある場合

JIS K 0094 4.2,4.3項による

ⅱ) 取水配管がない場合

川岸と流れの中心部では流速、懸濁物量が異なるため,一般に

は流れが均一な中央部で採取

a) 徒歩による採取

・試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

b) 船上からの採取 人為的汚染がないように船首を上流に向ける

・表層水 試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

・各深度 ハイロート採水器又はバンドーン採水器

c) 橋からの採取 橋桁による乱流がない下流で採取

・表層水 試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

・各深度 ハイロート採水器又はバンドーン採水器

ⅳ) 採取装置による採取

・JIS K 0094 4.2項による

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工場用水(地下水)-1

特徴

ⅰ) 伏流水(河川水,湖沼水が地下に浸透),自由地下水(地表近くを

流れる浅井戸),被圧地下水(深い地層中にある深井戸)に分け

られる

ⅱ) 伏流水 河川水に比較し,有機物・NH4・りん化合物濃度が

一般には低い

自由地下水 降雨,生物活動の影響を受けやすく,水質も変化

しやすい

被圧地下水 地質的影響を受けるが,水質変動は少ない

ⅲ) 大気との接触が少なく,微生物活動等で溶存酸素が消費されて

いるため,還元性状態(嫌気性状態)が多い

空気との接触で水質変化を生じるので,採取時に空気との接触を

避ける

採取地点

工場、事業所等の揚水ポンプ出口又は砂分離装置出口

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その他,JIS K 0094 には湖沼水,海水について規定されている

工場用水(地下水)-2

採取時期

と頻度

ⅰ) 事業所等が通常の状態で揚水しているとき

ⅱ) 水質変動が予想される場合,その都度決める

ⅲ) 過剰揚水,過少揚水時,休止井戸では通常状態の採取でも水質

が一定しない場合がある

休止井戸では,通常の運転状態で数時間揚水後,採取する

ⅳ) 被圧地下水は、揚水量の大幅変動で水質が変化する場合がある

ⅴ) 伏流水,自由地下水は河川水等の影響を受けやすいので,採取

時期・頻度に注意

採取方法

ⅰ) 試料採取弁がある場合

JIS K 0094 4.2,4.3項による

ⅱ) 揚水ポンプ出口,砂分離装置出口からの採取

・試料容器で直接又はバケツや柄付ひしゃく

ⅲ) 井戸から直接採取(採水器を入れれる場合

ハイロート採水器又はバンドーン採水器

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⑦ サンプリング誤差のチェック(上水試験方法2001版より引用)

<サンプリング,汚染,損失等のチェック> a) サンプリング誤差 ・採水 同時に同じ採水方法で2本の試料を採取 ・測定項目 有効数字2桁以上の濃度があり,できるだけ測定誤差が 小さく,標準偏差(s)既知の項目を併行測定する ・測定結果の比較、判定 室内併行試験の許容差による棄却検定法による 2個の測定値の範囲(R)が R≦2.8 s : サンプリング誤差無し R>2.8 s : サンプリング誤差有り 注) 「2.8」は,確率95 %における許容差を求める係数Dn(0.95)の n=2の値である

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b)汚染のチェック ・ 採取操作と測定 ⅰ) 試料瓶6本を用意し,4本に精製水を入れ,通常の採水作業同様 にして採水現場まで運搬 ⅱ) 採水操作に類似した操作により2本の精製水を他の2本に移し (他の2本はそのまま),採取試料と同様にして試験室に持ち帰り 併行試験により測定する ・ 測定結果の比較,判定 x11、x12 : 採水操作を施した精製水の測定値 x21、x22 : 採水操作を施さなかった精製水の測定値 t 検定により判定する 統計値 t0≧t (φ,α)=t (2,0.05)=4.303 : 汚染有り t0<t (φ,α)=t (2,0.05)=4.303 : 汚染無し

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c)損失のチェック ・採取操作と測定 ⅰ) 試料瓶4本を用意し,2本に実試料と同程度の濃度の標準液を 入れ採水現場まで運搬 ⅱ) 採水操作に類似した操作により2本の試験水を他の2本に移し, 採取試料と同様にして試験室に持ち帰り,併行試験により測定する ・測定結果の比較,判定(②汚染のチェックと同様) x11、x12 : 採水操作を施した試験水の測定値 x21、x22 : 採水操作を施さなかった試験水の測定値 t 検定により判定する 統計値 t0≧t (φ,α)=t (2,0.05)=4.303 : 汚染有り t0<t (φ,α)=t (2,0.05)=4.303 : 汚染無し d)水質の微小な差異を検討する場合 < 略 >

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(5)大気のサンプリング 大気 ・環境大気、排ガス ・対象項目ごとにサンプリング方法が規定されている ・環境大気 主に環境庁,環境省による「・・・測定方法マニュアル」 ・排ガス JIS K 0095 はじめ 「 JIS K ⊿⊿⊿⊿<排ガス中の・・・・分析方法>」として 対象項目ごとに規定されている 注) (3)項に主な大気関係JISに示す (ここでは,概要を紹介する) ①採取方法 直接採取測定 ・・・・・ 採取現場で分析計,分析装置に接続 濃縮採取 ・・・・・ 溶液吸収法,フィルター(ろ過法)、 吸着法(捕集管) 容器採取 ・・・・・ 注射筒,真空フラスコ,真空捕集びん 捕集バッグ(直接,間接),キャニスター

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②有害大気汚染物質採取における容器採取方法の特徴-1

採取方法 利点 欠点 その他

バッグ

・安価

・操作が容易

・繰り返し分析可能

・VOC及び共存物

質の測定可能

・保存性 良好ではない

・光化学反応が生 じる

・吸着の可能性

・破損しやすい

・分析精度低下しやすい

・極低濃度には

不向き

・冷暗所に保存

・採取後速やか

に分析

真空瓶

・比較的安価

・洗浄容易

・操作容易

・繰り返し分析可能

・光化学反応が生じる

・破損しやすい

・ガス漏れ

・長時間連続採取不 可能

・冷暗所に保存

・運搬容器が必

・採取後速やか

に分析

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②有害大気汚染物質採取における容器採取方法の特徴-2

採取方法 利点 欠点 その他

キャニ

スター

・試料の安定性優秀

・繰り返し分析可能

・VOC及び共存物

質の測定可能

・瞬間,長時間採取

可能

・精度管理容易

・高価又は初期投資が

大きい

・かさばる

・専用クリーナーが必要

・ゼロガスに適当な湿度が

必要

(相対湿度> 40 %)

・広汎な

VOC に対

応できる

捕集管

・安価

・コンパクト

・防湿工程不要

・既知濃度成分なら

精度良好

・破過

・操作に熟練がいる

・脱着溶媒(CS2)の

有害性

・長時間連続採取

不可能

・概略濃度

(最大)が

既知の場合適用

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③大気関係のサンプリングについて規定した主なJIS規格

JIS K 0095 排ガス試料採取方法

JIS Z 8808 排ガス中のダスト濃度測定方法

JIS K 0103 排ガス中の硫黄酸化物分析方法

JIS K 0104 排ガス中の窒素酸化物分析方法

JIS K 0105 排ガス中のふっ素化合物分析方法

JIS K 0107 排ガス中の塩化水素分析方法

JIS K 0083 排ガス中の金属分析方法

(対象 : Cd,Pb,Ni,Mn,V,Cr,Be,As,Se)

JIS K 0098 排ガス中の一酸化炭素分析方法

JIS K 0099 排ガス中のアンモニア分析方法

JIS K 0301 排ガス中の酸素分析方法

JIS K 0303 排ガス中のホルムアルデヒド分析方法

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(6)その他

土壌 測定目的により以下に分類される

目的 採取方法(詳細 略)

土壌汚染対策法

に係る土壌調査

土壌

(地下水)

環境省令第29号/平14

(土壌汚染対策法施行規則)

土中ガス 環境省告示第16号/平15

(土壌ガス調査に係る採取及び測定方法)

単位区画、試料採取等区画,試料採取地点を決め,第1種特定有害物質(VOC)及び第2,3種特定有害物質(重金属等,農薬等)について採取方法を詳細に規定

農用地の汚染に

係る土壌調査

Cd : 農林省令第47号(昭46)

・区画の中央部(1点/約2.5 ha)で,地表から15

cmまでを採取

Cu : 総理府令第66号(昭47)

・水口,中央,水尻地点を結ぶ線を3等分し,それぞ

れの中央地点で地表から15 cmまでを採取

As : 総理府令第31号(昭50)

・Cuの場合と同じ