ブラインド画像回復 修正...

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ブライ : Lucy Blind deconvolution: modified Lucy-algorithm , ( ( )) Harutaka Fukutome, Yasuo Katayama (Winbond Electronics Corp. Japan) 2007 2 28 1 はじめに 1 FIR IIR Wiener deconvolutionFIR PSF (Point Spread Function) ボリュ PSF Wiener filter PSF PSF PSF ブライ (blind deconvolution) ボル PSF PSF リビ 、ブライ Richardson (1972) - Lucy (1974) PSF Lucy PSF PSF Lucy 2 繰返しによる逆フィルタ PSF FIR (1) H : f i,j = clip( X k,l y i-k,j-l h k,l ) H T : y r+1 i-k,j-l = y r i-k,j-l + e i,j h k,l e i,j = x i,j - f i,j 0 ( ) 222-0033 3 7-18 ビル Phone: 045-478-3669, 045-478-5498, Fax: 045-478-1800, E-mail: [email protected], [email protected] 1

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Page 1: ブラインド画像回復 修正 Lucyhome.catv.ne.jp/dd/pub/deconv/deconv1.pdfブラインド画像回復: 修正Lucy 法 Blind deconvolution: modified Lucy-algorithm 福留治隆,

ブラインド画像回復: 修正 Lucy 法Blind deconvolution: modified Lucy-algorithm

福留治隆, 片山泰男 (ウィンボンド・エレクトロニクス (株))

Harutaka Fukutome, Yasuo Katayama (Winbond Electronics Corp. Japan)

2007年 2月 28日

1 はじめに

1 次元 FIR フィルタの逆フィルタは、IIR で実現可能であるが、一般に安定である保証がなく、そのために

安定な逆フィルタ処理として、Wiener deconvolution、最小位相変移法等が使われてきた。画像信号においても

FIR 処理は、画像と広がり関数 PSF (Point Spread Function) とのコンボリューションであり、その逆処理には

解の存在性、一意性、安定性の保証がないという特有の問題がある。順方向処理の特性を示す PSF が既知のと

き、Wiener filter による方法と、繰返しによる逐次近似とが実際的な方法として存在した。

しかし、順方向特性である PSFを知ることも推定問題であり、PSFの知識を持たずに、画像推定すると同時に

PSF も推定するブラインド画像回復 (blind deconvolution) が望まれる。コンボルーションは、画像と PSFとが

対等であるから、これも原理的に不可能ではないと思われるが、そこには PSF がデルタ関数というトリビアル解

が存在するから逆処理よりもさらに困難な問題と思われてきた。しかし、ブラインド画像回復には、Richardson

(1972) - Lucy (1974) による画像と PSF を初期値から徐々に推定を修正する繰返し法があり、現在まで天体画像

の回復に使われてきた。

天体画像だけでなく広がった明るさをもつ通常画像においてもこの処理が使うことが望まれるが、Lucy 法は、

画像の輝度の傾斜に左右されて推定 PSF がその逆方向に広がる現象、PSF の変化が遅いため推定画像が先に大

きく変化してしまう現象があって、まだ実用には遠いと思われる問題がある。この Lucy 法を通常画像に使うた

めの変種を調査し、それをテストした結果を報告する。

2 繰返しによる逆フィルタ

PSF が既知のとき、観測画像と、推定画像を FIR フィルタ処理した画像との差を単純な逆処理によって推定

画像に分配する繰返し法がある (図 1)。誤差に対して逆処理を繰返し適用するフィードバックによって推定画像

を収束させるのである。

H : fi,j = clip(∑

k,l

yi−k,j−lhk,l)

HT : yr+1i−k,j−l = yr

i−k,j−l + ei,jhk,l

ei,j = xi,j − fi,j

0ウィンボンド・エレクトロニクス (株) 技術部 〒 222-0033 横浜市港北区新横浜 3 丁目 7-18 第二上野ビル Phone: 045-478-3669,

045-478-5498, Fax: 045-478-1800, E-mail: [email protected], [email protected]

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Mem

+

H^T

estimate

input

H

clip

Fig.1 Block diagram of iterational inverse filter

clip(a) = 0(a < 0), a(0 ≤ a ≤ 255), 255(a > 255)

H は、PSF を hk,l とする推定画像 y への順方向の 2 次元コンボリューションであり、観測画像に入っている (単

調を前提とする) 非線形特性を扱うため、観測画像に合わせるために clip() が入っている。(後述するが、最初か

ら観測画像を線形に戻しておいて処理する方法もある。) HT は、誤差 (xi,j − fi,j) を推定画像のその誤差の原

因となる位置の画素 yi−k,j−l に分配する処理であり、全体としての逆フィルタの 1 次近似である単純化した逆処

理である。これは、誤差が分配される推定画素 (i-k,j-l) を (i,j) と置き直せば容易にわかるように反転した PSF

h−k,−l による FIR フィルタ処理である。 (画像の周辺処理を例外とする。)

HT : yr+1i,j = yr

i,j + ei+k,j+lhk,l

この繰返しによる逆フィルタにおいて、エラー画像の正の画素について推定画像との相互相関の PSF への掛け

込み、

hr+1k,l = hr

k,l

i,j

yi−k,j−lei,j(ei,j > 0)

または、その変化を 1/2 にする、

hr+1k,l = hr

k,l(∑

i,j

yi−k,j−lei,j)1/2(ei,j > 0)

によって、PSF の推定が可能であった。また、HT を改良して、

HT : yr+1i−k,j−l = yr

i−k,j−l + ei,jhk,lyi−k,j−l∑k,l hk,lyi−k,j−l

HT : yr+1i−k,j−l = yr

i−k,j−l + ei,jhk,lyi−k,j−l

fi,j

がより有効な逆処理であることを確認した。観測画像 xi,j から漸化中のフィルタ画像 fi,j とのエラー画像 ei,j を

推定画像 yi−k,j−l と PSF hk,l を要素毎に積し、それらの積和 fi,j によって正規化して、推定値へ分配する。こ

の処理は、Lucy 法の累加表現の推定画像の漸化式 (7) と一致している。

3 Lucy のアルゴリズム

Φ を観測画像、Ψ を推定画像、 p を PSF、χ, ξを 2 次元ベクトルとすると、次の関係がある。

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Φ(χ) =∫

Ψ(ξ)p(χ− ξ)dξ (1)

Ψ(ξ) =∫

Φ(χ)g(ξ − χ)dχ (2)

(1) は、FIRフィルタの通常の 2 次元コンボリューション処理である。(2) は、逆フィルタによる画像回復で

あるが、逆処理を行うときの PSF(PSFの逆関数) g は、未知である。Φと p からΨと g を知ることは逆フィル

タの処理であり、ΦだけからΨ, p, g を知ることが blind deconvolution である。

PSF である p と g を条件付き確率と解釈する (p(χ−ξ) : Pr(χ | ξ)、g(ξ−χ) : Pr(ξ | χ))。画像も確

率解釈をする (Ψ (ξ) : Pr(ξ)、Φ (χ) : Pr(χ))。 Bayes の定理、

Pr(A | B) =Pr(B | A)Pr(A)

Pr(B)

を使って、

g(ξ − χ) =p(χ− ξ)Ψ(ξ)

Φ(χ)(3)

推定画像Ψ (ξ)と p(χ-ξ)に初期値を与え、繰返し (漸化, 逐次近似)を使いΨ (ξ)を求める。(2) の g に (3)

を代入する際、(2)のΦ (χ) には観測画像Φ 0(χ) を使い、(3)の分母のΦ (χ)には、漸化中のフィルタ画像Φr(χ)を使う。

Ψr+1(ξ) =∫Φ0(χ)Φr(χ)

Ψr(ξ)p(χ−ξ)dχ

式中のΨ r(ξ)が dχ による積分の外に出て式 (5)、 (1) からΨ r から Φ r を求める式 (4) を得る。

Φr(χ) =∫

Ψr(ξ)pr(χ− ξ)dξ (4)

Ψr+1(ξ) = Ψr(ξ)∫

Φ0(χ)Φr(χ)

pr(χ− ξ)dχ (5)

推定画像の漸化式 (5) は、比のエラー画像 (Φ0(χ)/Φr(χ)) の PSF p(χ-ξ) によるコンボリューション画像

の推定画像への掛け込みである。さらに、推定画像Ψ (ξ)と PSF とは、対等であるから、ξ’= χ-ξとして、次

の PSF についての漸化式 (6) を得る。

pr+1(ξ′) = pr(ξ′)∫

Φ0(χ)Φr(χ)

Ψr(χ− ξ′)dχ (6)

PSF の漸化式 (6) は、推定画像Ψ (ξ)と比エラー (Φ 0(χ)/Φ r(χ)) との相互相関の掛け込みである。この

(4), (5), (6) による繰返しによる画像推定と PSF 推定の方法を Lucy の方法という。

Lucy の方法は、通常の繰返しによる逆フィルタと類似した過程の処理である。画像推定処理のブロック図を図

2に示す。繰返し法 (図 1)と、Lucyの方法 (図 2) とでは構成における違いはなく、差エラーを処理するか、比

エラーを処理するかであり、推定画像の修正も加算でなく乗算である点が違っている。

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/

*

estimate

input

Mem

H

H^T

estimate

rate

Fig.2 Block diagram of Lucy-algorithm

4 Lucy アルゴリズムの累加表現

Lucy のアルゴリズムにおける推定画像の漸化式 (5) と PSFの漸化式 (6) は、それぞれの初期値への掛け込み

の繰返しであったが、これを累加的な漸化式にすることができる。(5)に ∫ p(χ-ξ) dχ = 1 を使って、

Ψr+1(ξ) = Ψr(ξ) +∫

(Φ0(χ)− Φr(χ))Ψr(ξ)Φr(χ)

pr(χ− ξ)dχ (7)

(7) 式は、観測画像Φ 0(χ) から漸化中のフィルタ画像Φ r(χ)との差エラー画像 (Φ 0(χ) - Φ r(χ)) を推定

画像Ψ r(ξ) と PSF を要素毎に積し、それらの積和 Φ r(χ) によって正規化して、推定値へ分配するものと解

釈できる。しかも、Ψr(ξ)/Φr(χ)p(χ −ξ) の部分が Bayes の定理の式 (3) の g(ξ-χ) に一致することは、

差エラーに対して Bayes 定理による式 (3) を適用した処理であることが分かる。(7)式は、推定画像への修正に

(推定画像値を使うが) 加算的である。

同様に、PSF の修正の (6) 式の比エラー (Φ 0(χ)/Φ r(χ)) と推定画像Ψ r(ξ)との相互相関は、次のように

差のエラーを使って累加的な漸化式に記述することができる。

pr+1(ξ′) = pr(ξ′)∫

Ψ(ξ)dξ +∫

(Φ0(χ)− Φr(χ))Ψr(χ− ξ′)

Φr(χ)pr(ξ′)dχ (8)

(8) 式の Ψr(χ−ξ′)/Φr(χ)pr(ξ′) =Ψr(ξ)/Φr(χ)pr(χ−ξ)も、式 (3) の g(ξ-χ) に一致し、差エラー

に対して Bayes 定理による式 (3) を適用した処理である。 (8) 式も (7) 式と同様に累加的な漸化式である。Ψ

(ξ)が正規化されてない場合、r回時点の PSF pr(ξ’) に PSF に推定画像の和 ∫Ψ (ξ)dξ で積し、第 2 項を

加算する。その後、PSF を正規化する。式 (7),(8)は、積分内部の主要部分が同一であるから、両者を共用し計

算量削減ができる。これは、同じ差エラーの逆フィルタ結果を推定画像に分配すると同時に、PSF 推定に分配す

る処理である。Lucy 法の累加的表現 (Additive Lucy (ADL)) の構成を 図 3 に示す。本来、Lucy 法と同じ結果

を導くべきものである。

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Mem

+

H^T

estimate

input

/

*

H

Fig.3 Block diagram of Additive Lucy method

5 PSF 推定の別アルゴリズム

Lucy アルゴリズムの PSF 推定の方法 (式 (6)) は、推定画像Ψ (ξ)と比エラー (Φ 0(χ)/Φ r(χ)) との相互

相関の掛け込みであった。また、式 (8) も同じ結果を導く別の計算法である。差エラー画像の正について推定画

像Ψ (ξ)との相互相関の掛け込みを行う次の漸化式 (9) があり、実験的に (6), (8) に優る方法である。

pr+1(ξ′) = pr(ξ′)∫

(Φ0(χ)− Φr(χ)(> 0))Ψr(χ− ξ′)dχ (9)

または、

pr+1(ξ′) = pr(ξ′)∫

(Φ0(χ)− Φr(χ))2Ψr(χ− ξ′)dχ(ifΦ0(χ) > Φr(χ))

式 (9) は、2章の繰返しによる逆フィルタ においても収束可能であった PSF の修正方法に一致する。

6 初期条件と境界条件

6.1 初期条件

容易な設定でよい結果が得られたものとして、PSF の初期値は、できるだけ小さな限定された広さの平坦 PSF

であり、推定画像の初期値を観測画像とするものである。

PSF 初期値:flat PSF、推定画像初期値:入力画像

それ以外の方法、推定画像を 0、PSF 平坦から開始することは、差のエラーを使う初期の繰返し法において使

われたが、Lucy 法では推定画像の修正は、比エラーと推定画像との相互相関の掛け込みであるから、輝度の総

量を変化させない処理であり、推定画像の初期値を 0 にすることはできない。平坦な推定画像から開始するには

観測画像の平均値を使う必要がある。(又はそれに近い値として、128 が使える。なぜなら、額縁からエラーは消

失していくからである。)

PSFをデルタ、推定画像に平坦な観測画像の平均値を初期値にすることも可能と思う。推定画像の初期値を観

測画像にする場合、PSF の初期値は平坦ではなく、すこし狭めた値から開始するほうがよい可能性もある。

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両方 flat から開始する方法もあり、これは、推定画像の初期値として観測画像を使う (その場合、PSFが対称

的に開始するが、) 方法と比べて、PSF が不要な対称性を失う時間の無駄がないという利点がある。

6.2 境界条件

推定画像は、観測画像より、PSF の幅の 1/2 の額縁を用意し、そこに観測画素を広げる方法をとるか、額縁分

の観測画素を初期設定する方法かが採られた。 Lucy 方法の推定画像の変更方法は、誤差を正規化して分配する

( 2 章の)方法によったので、画像の境界において額縁を含めた推定画像への処理は、閉じている。

6.3 ガンマ特性の扱い

ガンマ特性は、順方向のフィルタ処理の後に clip() 関数と併用して与える方法と、観測画像から逆ガンマ特性

を最初に取り除く方法がある。次の実験結果では、後者の方法が採られている。

7 実験結果

Lucy 法等のエラーの収束の様子について、Lucy 法、式 (8)または、式 (9)においても、その PSF の変化を

2 乗等に加速できる。2,3,4 乗に加速した場合の収束を同時に 図 4. (a),(b),(c) に示す。

”Lucy 法” では、推定画像の変更のあと、PSFの変更を修正後の推定画像を使って行った。”ADL 法” は、同

時変更である。Lucy 法、ADL の方法は類似した処理であるから特性が類似している。ともに 4 乗加速まで利用

可能と思われる。式 (9)の方法は、速い収束をもたらすが 2,3,4 乗に加速すると次第に早期に大きな振動を導く

ことが分かる。1 乗においてもこの現象が現れている。

PSF の修正によって差のエラーが増大したとき、それを以前の PSF に戻す方法によって、この振動現象が避

けられるが、PSF の動きが停止することが多い。そこで、以前の PSF との平均に修正し、PSF 変化を 1/2 だ

け逆戻りさせる方法によって、振動と停止の現象は、共に避けられることが分かった (図 9)。

図 5.6.7.8 に画像回復の例を示す。

8 問題点と議論

8.1 収束性と収束の速度

収束が画像に依存するようである。Lucy の方法の収束性は、証明されているか。

PSF の変化が遅く、推定画像が先に大きく変化してしまう現象:

特に Lucy の比のエラーを使う方法において PSF の収束が遅いという問題がある。PSF の変化の速度が遅くそ

れよりも先に推定画像が大きく変化してしまい、大きく波打つ画像になる場合が多くある。推定画像の変化に対

して、PSFの変化だけを加速する必要があった。そこで PSF の変化を 2 乗、4 乗に加速した方法は、収束がう

まくいくことが多かったが、PSF が一点に収斂する可能性も高いように見える。加速法は、収束性を犠牲にして

いるかもしれない。

分解能を上げる解に収束させるのが目的であり、PSF が一点に収斂し、推定画像が観測画像へ戻ることは避け

たいが、これらの方法はこのトリビアル解を明示的に避ける方法になっていない。

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8.2 PSF の傾向性

画像の輝度の傾斜に左右されて推定 PSF がその逆方向に広がる現象:

画像の明るさの分布の大まかな傾斜に PSF が影響される傾向がある。例えば画像下部が明るく、上部が暗い画

像では PSF が上に広がる傾向がある。明るさの境界部分の画素にとって、中心画素より下の画素が明るく、推

定画像のその部分に重点的に誤差を配分するが、PSFの対する部分にも誤差を配分する方法が明確に示すように

PSF にはその上部に誤差を配分するから、PSF が上に広がるのではないかと思われる。

8.3 PSF の広さ

現状では処理の最初に実際の画像の光の広がりを見て PSF の広さを手動で設定している。ぼけと手ぶれの実際

の大きさに満たない PSF の広さでは、正しく収束せず、それより大きい PSF は、収束が非常に遅い、という現

象がある。PSF の大きさは、繰返しの一回の処理時間だけでなく、収束に要する繰返し回数にも影響し、実際の

処理時間はさらに大きくなる。PSF のサイズを自動設定する方法、広すぎる PSF を断ち切る方法、又は狭すぎ

る PSF を広げる方法を必要とするかもしれない。収束速度が速ければその必要もなく、適当な広さの PSF で、

それより小さな手ぶれに対応するだけでよいかもしれない。

8.4 画像の広さと分割処理

PSFは、画像全体で一定ではない。ぼけは、画像内部の物体の距離によって異なり、手ぶれやレンズ収差は、

画像の部分部分によって大きさが異なる。そのため画像を分割して処理したほうが、場所によって異なる PSF の

影響を避けることができる。画像サイズは、その統計によって画像と PSFを推定するだけの十分な広さが必要で

あり、PSF がその中で同一とみなせるだけ十分狭い必要がある。

画像を単純に分割するとき、推定画像は、観測画像のサイズに PSF 幅の 1/2 の額縁領域を付加して処理され

るが、その額縁部分は、隣接する分割領域の推定画像と重なっている。推定画像はグローバルに他の隣接する画

像領域と共有して、境界を越えて更新処理が行われる方法が望ましい。

しかし、画像の分割処理は、例えば 400x400 程度の適当なサイズで、つねにうまく収束するなら独立にやれば

よいので、重要な問題ではないかもしれない。隣接領域の結果の利用は、多少の効果がある。独立に処理すると

PSF の重心の狂いによって画像の切れ目が見えることがあるからである。適度に収束した左と上の 2 次元的な

隣接領域の PSF を初期値にする方法で PSF 間の連関をとるとそれが避けられた。しかし、逆に、隣接の収斂し

た PSF の影響で正しく収束しないという現象を生み出す。さらに多くの PSF を扱って、個々の領域の繰返し回

数を小さくして、全体での外側の繰返しを使っても、とくに良い結果が得られなかった。まずは、個々の部分で

の確実な収束を解決すべきであり、分割の隣接の利用は、その次の問題と思われる。

9 参考文献

Lucy のアルゴリズムで一番参考になった

(1) F. Tsumuraya, N. Miura, amd N. Baba, ”Iterative blind deconvolution method using Lucy’s algorithm”,

1994 Astronomy and Astrophysics.

Lucy のアルゴリズムの説明

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0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

LUCY1LUCY2LUCY3LUCY4

Fig.4 (a) Lucy-algorithm (Eq.4,5,6)

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ADL1ADL2ADL3ADL4

Fig.4 (b) Additive Lucy-algorithm (Eq.7,8)

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SMPL1SMPL2SMPL3SMPL4

Fig.4 (c) SMPL-algorithm (Eq.9)

Fig.4 Error convergence of Fig.5 image by 3 methods8

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Fig.5 Original degraded image by camera motion (left 512x512) and restored image output (right Eq.(8), iter= 100)

Fig.6 Original degraded image by camera motion (left 512x512) and restored image output (right Eq.(9), iter= 50)

Fig.7 Original degraded image by camera motion (left 512x512) and restored image output (right Eq.(9), iter= 100)

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Fig.8 Original degraded image by camera motion (left 512x512) and restored image output (right Eq.(8), iter= 100)

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ADL4SMPL4LUCY4

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ADL4SMPL4LUCY4

Fig.9 Error convergence of image Fig.8

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2 重星画像のブラインドデコンボリューション

11

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(14) S. K. Saha and P. Venkatakrishnan, ”BLIND ITERATIVE DECONVOLUTION OF BINARY STAR

IMAGES”, arXiv:astro-ph/9910381 21 Oct 1999.

木星とシューメーカレビー彗星の衝突の干渉計像的観測

(15) S. K. Saha and P. Venkatakrishnan, ”Speckle interferometric observations of the collision of comet

Shemaker-Levy 9 with Jupiter”, arXiv:astro-ph/9910510 28 Oct 1999.

IDAC ESO ヨーロッパ南天天文台に使われている、IDAC というデコンボリューションアルゴリズムのユー

ザーガイド

(16) Julian C. Christou, ”The Iterative Deconvolution Algorithm idac - A User Guide”, WWW page of ESO.

M31 (アンドロメダ銀河) のバルジの中の超メタル豊富な星の密度の分解 (MCS法)

(17) P. Jaclonka et al, ”Resolved Stellar Population of Super-Metal-Rich Star Clusters in the Bulge of M31”,

A and A., arXiv:astro-ph/0005040 2 May 2000.

ADONIS (近赤外系適応光学)による大犬座τの分析 – デコンボリューション (MCS法と同じ著者)

(18) Julian C. Christou and Domenico Bonaccini, ”ANALYSIS OF ADONIS DATA / τ Canis Majoris -

Deconvolution”, WWW of ESO

繰返しブラインドデコンボリューションによる天体画像の回復 (MCS と同じ著者)

(19) Stuart M. Jefferies, and Jullian C. Christou, ”RESTRATION Of ASTRONOMICAL IMAGES BY

ITERATIVE BLIND DECONVOLUTION”, AJ 415:862-874, 1993 Oct 1 (AAS NASA ADS)

2 重星カシオペアμの完全な適応光学:軌道と質量 (MCS)

(20) Jack D. Drummond, Jullian C. Christou, and Robert Q. Fugate, ”FULL ADAPTIVE OPTICS IMAGES

OF ADS μ CASSUOPEIAE: ORBIT AND MASSAES”, AS 450:380-391, 1995 Sep. 1 (AAS NASA ADS)

2 重星 9731 の画像のレイリービーコン適応光学:同平面的視野の測定 (MCS)

(21) Jullian C. Christou, Brent Ellbroek, Robert Q. Fugate, Domenico Bonaccini, and Ruggero Stanga,

”Rayleigh Beacon Adaptive Optics Imaging of ADS 9731: Measurement of the Isoplanatic Field of View”, AS

450:369-379, 1995 Sep. 1 (AAS NASA ADS)

クローバー葉の重力レンズの HST 画像デコンボリューション

(22) V. Chantry and P. Magain, ”Deconvolution of HST images of the Cloverleaf gravitational lens”,

arXiv:astro-ph/0612094 4 Dec 2006.

TINY TIM という STSCI (NASA)で使われたソフトウエアのユーザーガイド (ソフトウエアも入手可能)

(23) John Krist and Richard Hook, ”The Tiny Tim User’s Guide version 6.3”, http://www.stsci.edu/siftware/tinytim

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