クロロフィルaと各水質項目の関連性に関する研究...4.2 クロロフィルaとph...

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日本大学生産工学部研究報告A 2009年12月第42巻第2号 クロロフィル a と各水質項目の関連性に関する研究 保坂成司 ,岩下圭之 ,大木宜章 Correlative Analysis for Evaluating Chlorophyll - a Content Water Body Seiji HOSAKA , Keishi IWASHITA and Takaaki OHKI Human activityhas been discussed as oneoftheenvironmental factors impacting thedeclineofwater quality in the inland water region.Repetitive in-situ measurements of water quality are essential in understand regional inland water environments.This studywas performed to better understand therole of water pollution as the primary causative agent in the eutrophication of the inland water region. M utual multiple regression and statistical analysis were utilized to studythe relationship between algae and several water quality variables. Furthermore, Chl. a present in all botanical plankton was defined as an index to quantify the algae.Due to the enormous quantity of data used in the multiple regression analysis,a new method of arranging the data was also examined. As a result,strong correlations between thequantityofalgaepresent and water qualitymeasurements were obtained.In particular, pH, water temperature, and N/P ratio clearly effect generation and proliferation.As a next step, the results from this study can be applied in future studies making it possible to utilize satellite multispectral data in wide-area region assessments. Keywords: Algae, Chlorophyll-a, Water quality, Multiple regression analysis 1. はじめに 公共用水域の水質汚濁生活環境の保全に関する項目 (生活環境項目)のうち,有機汚濁の代表的な水質指標で ある生物化学的酸素要求量 (BOD)または化学的酸素要 求量 (COD)の環境基準の達成率は平成 18年度において 86.3%と徐々に改善がなされているが,水域別に見ると, 河川 91.2%,湖沼 55.6%,海域 74.5% であり,湖沼な どの閉鎖性水域では依然として低い達成状況である。 湖沼などの富栄養化対策として,下水道整備の推進や 各種汚濁源に対し水質汚濁防止法に基づき窒素およびリ ンに係る排水規制を実施しているが,いまだ窒素規制対 象湖沼は277箇所,リン規制対象湖沼は1329箇所 にも 上っている。これは湖沼などが閉鎖性水域であり,一度 湖沼内に流入したリンなどは水域内に滞留するため,富 栄養化を根本的に解消するためには富栄養化物質を水域 内から除去するなどの対策を必要とするためである。 この富栄養化が進んだ湖沼等においては浮遊性の植物 性プランクトン(藍藻)が大量発生し,水面に緑色のペ 19 日本大学生産工学部環境安全工学科専任講師 日本大学生産工学部環境安全工学科准教授 日本大学生産工学部土木工学科教授

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  • 論 文日本大学生産工学部研究報告A2009年 12月 第 42巻 第 2 号

    クロロフィルaと各水質項目の関連性に関する研究

    保坂成司 ,岩下圭之 ,大木宜章

    Correlative Analysis for Evaluating Chlorophyll-a Content Water Body

    Seiji HOSAKA ,Keishi IWASHITA and Takaaki OHKI

    Human activity has been discussed as one of the environmental factors impacting the decline of water

    quality in the inland water region.Repetitive in-situ measurements of water quality are essential in

    understand regional inland water environments.This study was performed to better understand the role

    of water pollution as the primary causative agent in the eutrophication of the inland water region.

    Mutual multiple regression and statistical analysis were utilized to study the relationship between algae

    and several water quality variables.Furthermore,Chl.a present in all botanical plankton was defined

    as an index to quantify the algae.Due to the enormous quantity of data used in the multiple regression

    analysis,a new method of arranging the data was also examined.

    As a result,strong correlations between the quantity of algae present and water quality measurements

    were obtained. In particular, pH, water temperature, and N/P ratio clearly effect generation and

    proliferation.As a next step, the results from this study can be applied in future studies making it

    possible to utilize satellite multispectral data in wide-area region assessments.

    Keywords:Algae,Chlorophyll-a,Water quality,Multiple regression analysis

    1.はじめに

    公共用水域の水質汚濁生活環境の保全に関する項目

    (生活環境項目)のうち,有機汚濁の代表的な水質指標で

    ある生物化学的酸素要求量 (BOD)または化学的酸素要

    求量 (COD)の環境基準の達成率は平成18年度において

    86.3%と徐々に改善がなされているが,水域別に見ると,

    河川91.2%,湖沼55.6%,海域74.5% であり,湖沼な

    どの閉鎖性水域では依然として低い達成状況である。

    湖沼などの富栄養化対策として,下水道整備の推進や

    各種汚濁源に対し水質汚濁防止法に基づき窒素およびリ

    ンに係る排水規制を実施しているが,いまだ窒素規制対

    象湖沼は277箇所,リン規制対象湖沼は1329箇所 にも

    上っている。これは湖沼などが閉鎖性水域であり,一度

    湖沼内に流入したリンなどは水域内に滞留するため,富

    栄養化を根本的に解消するためには富栄養化物質を水域

    内から除去するなどの対策を必要とするためである。

    この富栄養化が進んだ湖沼等においては浮遊性の植物

    性プランクトン(藍藻)が大量発生し,水面に緑色のペ

    ― ―19

    日本大学生産工学部環境安全工学科専任講師

    日本大学生産工学部環境安全工学科准教授

    日本大学生産工学部土木工学科教授

  • ンキをまいたような『アオコ』の発生を引き起こしてい

    る。

    アオコが発生すると,魚の養殖や,近隣の生活環境,

    観光などへの影響や,水道水の取水源としている場合は

    水道水の異臭や異味の原因となったり,また人畜などの

    健康被害の原因となる。

    例えばアオコ発生の原因プランクトンのうちの1つの

    ミクロキスティス(クロオコックス目)は富栄養化の進

    んだ水域に発生し,有機汚濁に対する耐性が強くミクロ

    シスチンという急性肝障害を引き起こす毒素を産生する

    ほか,発癌性も指摘されている。

    このようにアオコの中には人や動物に甚大な健康被害

    を与えるものも存在する。

    このアオコの定量には一般的に,生きている植物性プ

    ランクトン全てに含まれ,光合成に必要不可欠な葉緑素

    である『クロロフィルa』を用いている。

    クロロフィルaは一般的に,一定以上の濃度(85μg/

    L~100μg/L)を超えるような高濃度になると,人間の目

    視でも判読できるほど『水色』も変化すると報告されて

    いる。

    既往の研究 によると,水の電磁波スペクトル特性

    は水がきれいな場合は0.48μm付近の可視青の色光が

    最も良く透過するが,土砂や有機物,アオコなどが含ま

    れ濁度が増加した場合,最大透過波長が0.58μmへず

    れ,しかも透過率が低下することが確認されている。し

    かしながら,赤潮発生時などクロロフィルa濃度が100

    μg/Lを超えると,0.48μmと0.68μmの可視域の吸収

    が始まり,近赤外波長域の0.70μm付近で非常に反射率

    が高くなるという植生特有のパターンを示すことが明ら

    かとなっている。

    このようにクロロフィルaの含有量の違いと電磁波

    スペクトル特性との関連性が明らかとなっていることか

    ら,クロロフィルaと各水質項目の関連性が判れば,最

    終的にはマルチスペクトルセンサを搭載した衛星データ

    を利用することにより,広域的にかつ周期性をもって水

    質を評価が可能と えられる。

    以上のことを踏まえ,本研究は長期にわたり測定した

    データを基にアオコの発生量と各水質項目との関連性を

    詳細に調査・分析を行い,アオコの発生要因について

    察を行ったものである。また重回帰分析によりアオコ発

    生量と各水質項目との関連性についても解析を行い,さ

    らに重回帰分析に用いるデータ数が多量の場合における

    データの整理方法についても検討を行った。

    2.測定対象池・期間および水質測定項目

    本学図書館脇の池(水域面積:200m,容量100t)を

    理想的な完全閉鎖水域と仮定して,この池を研究の対象

    池とし試料採取ならびに測定を行った。

    この池は午後2時頃までは直射日光が当たり,以降は

    構造物本体の日影となる位置にあることから,現地にお

    ける測定は午前10時とした。また測定期間はアオコの増

    殖が活発になる5月頃から9月頃までを集中的に行うこ

    ととし,それ以外の期間は週1回の測定とした。

    水質測定項目は,①アオコ発生量の指標となるクロロ

    フィルa ②水域の富栄養化の指標となるCOD,TN(全

    窒素),TP(全リン),SS(浮遊物質量),透視度 ③ア

    オコ発生の環境要因と えられるpH(水素イオン濃

    度),ORP(酸化還元電位),水温,電気伝導率とし,同

    条件のもと測定を行った。

    なお,今回分析・解析に用いたデータは2003年~2007

    年の5年間にわたり測定を行ったものである。

    3.水質分析方法

    水質分析は以下に示す分析方法または測定装置を用い

    て行った。クロロフィルaなどの測定項目については試

    料採取後直ちに実験室にて分析を行い,pH,ORP,水温,

    電気伝導率については現地にてセンサーを水面から30

    cm程度の深さに懸垂し測定を行った。

    なお,クロロフィルa,COD,SS,透視度に関しては

    同一サンプルを3回,TN,TPは5回程度測定し,異常

    値を除外したサンプルの平 値を結果とした。

    水質分析方法または測定装置

    ・クロロフィルa・・・アセトン抽出法,および In-Vivoク

    ロロフィル測定法(ターナーデザイ

    ン社製TD-700)併用

    ・COD・・・・・・・・・・・・・・・・・100°Cにおける過マンガン酸カリウ

    ムによる酸素要求量(COD )

    ・TN・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ペルオキソ二硫酸加熱分解-亜鉛還

    元ナフチルエチレンジアミン吸光光

    度(TOA DKK社製TNP-10)

    ・TP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ペルオキソ二硫酸加熱分解-モリブ

    デン青吸光光度(TOA DKK社製

    TNP-10)

    ・SS・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガラス繊維ろ紙法

    ・透視度・・・・・・・・・・・・・・・50cm透視度計(2003年)および

    100cm透視度計(2004年以降)

    ・pH,ORP,水温,電気伝導率

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・TOA DKK社製WM-22EP

    4.水質測定結果

    水質測定結果の一部を Table 1に,測定データの基本

    統計量を Table 2に示す。ここでSSと透視度の値は3

    回測定の平 値であり,TNとTPは5回測定の平 値

    ― ―20

  • である。透視度については,2004年以降は100cmの透視

    度計を用いて測定を行っているが,2003年は50cmの透

    視度計を用いており測定範囲が異なることから参 とし

    て記載した。

    ここでTable 2の最下段には平 値±3σを記してあ

    り,この値の範囲外のデータは異常値と見なせることか

    ら以降の解析においては除外することとした。

    4.1 各水質項目の相関行列

    試料採取および測定の回数は942回であるが,全水質

    項目を同時に測定したのは273回である。

    この273回のデータからTable 2に示した平 値±3

    σの範囲外のデータを除外すると211回となり,この

    データから各水質項目の相関行列を計算した結果が

    Table 3の通りである。

    Table 3の相関行列について無相関の検定(有意水準

    5%)を行った結果,TN-pH,TN-水温,電気伝導率-

    SS,電気伝導率-pH,透視度-電気伝導率,透視度-

    ORPは無相関であった。

    また透視度は測定方法の関係から負の相関となり,相

    関係数0.5以下に注目するとTN,pH,電気伝導率,

    ORPは他の水質項目との関連性が低いと えられる。

    4.2 クロロフィルaと pH

    先の相関行列からはpHと他の水質項目について関連

    性は低いと えられる。しかし文献 によると『夏期の停

    滞期の湖沼ではpHは成層し,表層で高く下層で低い。こ

    れは表層では植物プランクトンの同化作用によって炭酸

    が失われ,水が塩基性に傾く一方,下層では光の不足の

    ため同化作用が行われず,逆にプランクトンの遺骸がバ

    クテリアによって分解され,二酸化炭素や有機酸を生ず

    るために酸性になる。』と記されている。すなわちアオコ

    Table 1 Example of results from chemically analyzed data of water quality items.

    Date Chlorophyll-a

    (μg/L)COD(mg/L)

    TN(mg/L)

    TP(mg/L)

    SS(mg/L)

    Transparency(cm)

    pH ORP(mV)

    Water

    Temperature(°C)

    Electrical

    Conductivity(mS/m)

    6-May-03 9.96 -162 22.4 19.71

    7-May-03 9.97 -165 23.1 19.84

    8-May-03 9.90 -160 21.8 19.57

    9-May-03 9.86 -155 18.1 18.87

    12-May-03 9.81 -152 18.1 18.25

    13-May-03 9.90 -160 20.2 18.48

    14-May-03 10.00 -247 22.3 18.79

    15-May-03 10.06 -247 18.7 17.24

    16-May-03 9.87 -238 18.9 17.43

    19-May-03 9.92 -239 21.1 17.44

    20-May-03 10.06 -249 19.9 18.29

    21-May-03 10.16 -255 20.2 15.95

    22-May-03 10.17 -241 22.4 16.60

    23-May-03 10.36 -250 19.8 17.43

    26-May-03 85.7 10.34 -247 19.9 19.54

    27-May-03 86.2 10.17 -239 20.1 19.21

    28-May-03 88.0 10.08 -231 20.1 19.11

    2-Jun-03 101.3 10.26 -201 22.2 19.48

    28-Aug-03 117.0 1.0 20.0 10.05 -159 25.6 14.60

    29-Aug-03 100.9 1.6 5.0 10.29 -170 28.4 18.70

    30-Aug-03 92.9 1.5 5.0 10.08 -155 25.3 16.50

    31-Aug-03 44.1 1.3 5.0 9.67 -111 21.5 9.40

    1-Sep-03 135.1 1.3 10.0 9.76 -153 25.1 12.70

    12-Sep-03 96.3 2.2 10.0 9.53 -144 27.3 21.80

    13-Sep-03 104.2 2.7 5.0 9.75 -158 28.4 21.90

    14-Sep-03 123.7 2.0 10.0 9.87 -166 26.9 22.70

    15-Sep-03 138.6 1.8 10.0 9.59 -153 26.9 22.10

    16-Sep-03 172.9 2.0 10.0 10.02 -172 26.7 21.80

    17-Sep-03 93.9 2.2 5.0 9.88 -164 25.8 22.80

    18-Sep-03 168.7 2.0 5.0 10.00 -169 26.4 22.80

    29-Jul-04 143.5 5.0 1.040 0.213 14.0 29.0 9.45 36 25.7 22.20

    30-Jul-04 132.8 4.2 0.993 0.140 9.8 31.0 9.29 13 27.1 22.20

    31-Jul-04 209.2 6.8 0.989 0.195 19.3 23.0 9.37 13 27.2 22.00

    1-Aug-04 133.1 3.6 0.672 0.093 9.0 36.0 9.29 12 27.5 23.80

    2-Aug-04 201.7 5.8 0.629 0.100 18.3 22.2 9.48 1 28.3 23.20

    3-Aug-04 236.7 6.6 0.780 0.134 19.5 19.7 9.52 7 27.1 22.70

    4-Aug-04 200.9 5.9 0.779 0.140 15.0 23.3 9.39 -245 26.9 23.40

    5-Aug-04 231.6 6.7 0.707 0.174 22.3 18.0 9.59 -4 28.1 22.20

    6-Aug-04 270.6 7.2 0.893 0.143 22.8 16.3 9.30 22 28.0 22.40

    7-Aug-04 230.4 6.4 0.972 0.148 19.8 19.0 9.27 41 28.1 23.40

    8-Aug-04 187.9 5.5 0.849 0.299 16.0 22.3 9.42 -217 28.0 23.70

    ― ―21

  • 発生(クロロフィルa検出)に伴いpHも変化すること

    から,pHとクロロフィルaの関係についてグラフ化し

    たものが Fig.1である。

    グラフよりアオコ発生時(クロロフィルa検出時)に

    pHがある一定域の値を示しているように読み取れる。

    ここで,本研究においてpHの測定は0.01単位で行っ

    ていることから,pHとクロロフィルaとの大まかな特

    性を知るためにはpHの測定データを整理分類し,いく

    つかのクラスに分け度数分布を調べる方法が適当である

    と えられた。

    よってpHの測定データをある一定区間毎のデータと

    してクラス分けし分析を行うこととした。なおクラス分

    けを行うにあたり,以下のスタージェスの式よりクラス

    を10程度に分けることが適当であることから,pHの区

    間を0.5ピッチ毎に区切ることとした。

    スタージェスの式

    =1+3.3log

    :クラスの数

    :データ数

    この方法により,アオコ発生時(クロロフィルa検出

    時)のpHについて度数を調べた結果が Fig.2である。

    Fig.2よりクロロフィルa検出時のpHはほとんどが

    8.5以上であり,とくにpH8.5~10.5の間に多く集中

    (95%以上が検出)している。

    また Fig.3のpH毎の平 クロロフィルa濃度から

    はpH9.0を境に平 クロロフィルa濃度が急激に上昇

    していることが読み取れる。

    以上のことから,アオコ発生(クロロフィルa検出)

    Table 2 Statistic data of water quality items.

    Basic statistic Chlorophyll-a COD TN TP SS Transparency pH ORP Water

    Temperature Electrical

    Conductivity

    Sample Number 918 801 541 528 858 763 701 645 702 701

    Sum 136300.23352.7615.893 55.356 9941.6 27317.9 6657.86 -25641 15835.5 18254.82

    Average 148.48 4.19 1.1384 0.1048 11.59 35.80 9.498 -39.8 22.56 26.041

    Sample Standard Deviation 103.53512.6423 0.3643 0.0718 7.5088 18.0383 0.5421 119.6855 4.9309 12.5908

    Unbiased Estimate of Variance 10719.52696.9816 0.1327 0.005256.3816 325.3819 0.2938 14324.62 24.3138 158.5273

    Standard Deviation 103.47872.6406 0.3640 0.0717 7.5044 18.0265 0.5417 119.5927 4.9274 12.5818

    Variance 10707.84996.9729 0.1325 0.005156.3158 324.9554 0.293414302.4154 24.2791 158.3012

    Range 909.3 16.8 2.671 0.497 53.0 92.2 3.91 549 22.6 95.98

    Minimum 8.7 0.4 0.091 0.000 0.0 7.8 6.75 -269 7.6 8.50

    Maximum 918.0 17.2 2.762 0.497 53.0 100.0 10.66 280 30.2 104.48

    Median 123.7 3.6 1.088 0.091 10.0 31.0 9.55 -37 23.6 22.20

    Kurtosis 8.45022.3044 1.6843 3.1469 4.1107 2.5477 3.5234 -1.0077 0.1515 6.0020

    Skewness 2.27431.2527 0.8810 1.3872 1.5099 1.4213-1.1879 0.2115 -0.8577 2.0800

    Standard Error 3.41720.0934 0.0157 0.0031 0.2563 0.6530 0.0205 4.7126 0.1861 0.4755

    Coefficient of Variance 0.69730.6313 0.3200 0.6850 0.6480 0.5038 0.0571 -3.0107 0.2186 0.4835

    Interval Estimation of Population Mean Reliability Coefficient 95%

    Lower Limit 141.78 4.00 1.1077 0.0987 11.08 34.52 9.458 -49.0 22.19 25.109

    Upper Limit 155.17 4.37 1.1691 0.1110 12.09 37.08 9.538 -30.5 22.92 26.973

    Interval Estimation of Population Standard Deviation Reliability Coefficient 95%

    Lower Limit 99.00852.5190 0.3439 0.0677 7.1697 17.1770 0.5151 113.4959 4.6859 11.9648

    Upper Limit 108.49872.7783 0.3874 0.0764 7.8817 18.9913 0.5720 126.5946 5.2031 13.2863

    Average-3σ -161.96-3.74 0.0465-0.1104-10.93 -18.28 7.873 -398.5 7.78 -11.704

    Average+3σ 458.91 12.11 2.2304 0.3201 34.10 89.88 11.123 319.0 37.34 63.786

    Fig.1 Relation between measured Chlorophyll-a

    and pH.

    Fig.2 Frequency of algae generation for each range

    of pH.

    ― ―22

  • に伴いpHも上昇することから,クロロフィルa濃度か

    ら水質が塩基性に傾いているか判断でき,またpHが

    9.0以上であるか以下であるかの判別も可能と えられ

    る。

    なお,Fig.2のデータの区間の級心と度数から求めた

    pHの加重算術平 は9.481であり,測定データのpH

    の平 値9.498(Table 2)とほぼ一致していることから

    ヒストグラムのクラス分けは妥当であると えられる。

    4.3 クロロフィルaと水温

    これまで多くの研究によりアオコの発生に水温が大き

    く関係していることが明らかとなっている。また先に記

    した相関行列からも水温とアオコ発生(クロロフィルa

    検出)に関連性が認められた。

    よって本研究においてもアオコ発生(クロロフィルa

    検出)と水温の関係について分析を行った。

    クロロフィルaと水温の関係について表したグラフ

    が Fig.4である。この時の水温測定は0.1°C単位で行っ

    ており,水温とクロロフィルaとの特性を知るためには

    pHの分析と同様データを整理分類し,いくつかのクラ

    スに分け度数分布を調べる方法が適当であると え,本

    データをクラス分けして検討を行った。なおクラス分け

    はスタージェスの式より10クラス程度に分けることと

    し2.5°Cピッチ毎に区切った。

    クロロフィルaと水温について調べた結果が Fig.5

    である。グラフより水温が15°C以下ではクロロフィル

    a濃度は50μg/L程度であるが,15°Cを超えると約90

    μg/Lまで上昇し,また15°C~30°Cの間で約90%のク

    ロロフィルaが検出されていることから,水温がアオコ

    発生(クロロフィルaの検出)に大きな影響を与えてい

    Table 3 Correlative matrix of water quality items.

    Simple Correlation Coefficient

    Chlorophyll-a COD TN TP SS Transparency pH ORP Water

    Temperature Electrical

    Conductivity

    Chlorophyll-a 1.0000 0.8605 0.2067 0.5244 0.7922 -0.7452 0.3325 0.3484 0.6701 0.2941

    COD 0.8605 1.0000 0.3999 0.6183 0.7726 -0.6564 0.1819 0.4848 0.7077 0.2195

    TN 0.2067 0.3999 1.0000 0.3315 0.4632 -0.2480 -0.0843 0.1895 -0.1406 -0.3008

    TP 0.5244 0.6183 0.3315 1.0000 0.7103 -0.5247 0.2115 -0.2875 0.3534 -0.3732

    SS 0.7922 0.7726 0.4632 0.7103 1.0000 -0.7462 0.2582 0.2315 0.4923 -0.0346

    Transparency -0.7452 -0.6564 -0.2480 -0.5247 -0.7462 1.0000 -0.3958 -0.0947 -0.4378 -0.0743

    pH 0.3325 0.1819 -0.0843 0.2115 0.2582 -0.3958 1.0000 -0.2716 0.2846 0.1086

    ORP 0.3484 0.4848 0.1895 -0.2875 0.2315 -0.0947 -0.2716 1.0000 0.4906 0.4885

    Water

    Temperature0.6701 0.7077 -0.1406 0.3534 0.4923 -0.4378 0.2846 0.4906 1.0000 0.4065

    Electrical

    Conductivity0.2941 0.2195 -0.3008 -0.3732 -0.0346 -0.0743 0.1086 0.4885 0.4065 1.0000

    Fig.3 Change of mean concentration of Chlorophyll-

    a with pH.

    Fig.5 Frequency of algae generation and mean con

    centration of Chlorophyll-a for each range of

    water temperature.

    -

    Fig.4 Relation between measured Chlorophyll-a

    concentration and water temperature.

    ― ―23

  • ることが分かる。

    また当然のことながら,クロロフィルa濃度は水温に

    比例して上昇しており(グラフ中,近似直線),水温がア

    オコ発生量(クロロフィルa濃度)を左右する重要な因

    子であることは明らかである。

    なお,Fig.5のデータの区間の級心と度数から求めた

    水温の加重算術平 は22.418°Cであり測定データの水

    温の平 値22.56°C(Table 2)とほぼ一致していること

    から,2.5°Cずつにクラス分けした本ヒストグラムは測

    定結果をほぼ正確に表していると判断できる。

    4.4 クロロフィルaとN・P

    Nは水中において好気性・嫌気性の状態によって様々

    な形態をとるが,全ての形態のNが直接・間接的に富栄

    養化に関与している。

    Pは植物の生長にとって重要な因子であり,水中には

    1~100μg/L程度しか含まれていないが,リンは窒素と

    ともに水域の富栄養化の原因物質となり,藻類の成長を

    左右する重要な因子となる 。

    このため環境省はNとPに対して富栄養化防止の観

    点から Table 4に示す5つの類型で基準値を規定してい

    る。

    よって測定データからN,Pとクロロフィルaとの関

    係を調べると,先のTable 3『各水質項目の相関行列』か

    らクロロフィルaとTNの相関係数は0.2程度,TPは

    0.5程度であり,TNの寄与度は低いと えられた。

    しかし植物プランクトンは,水中のNとPを一定の

    N/P比7.2(Redfield比)で固定し(アオコに関しては

    13.5),この値を基準として高いとP制限,低いとN制

    限になるとされていることから 本研究においてもN/P

    比に注目し分析を行った。

    本研究においてクロロフィルa,TN,TPを同時測定

    したのは516回であり,クロロフィルaとN/P比の関

    係について表したグラフが Fig.6である。

    Table 4 Environmental Quality Standards for conservation of the living environment.

    [From Ministry of the Environment Government of Japan]

    2. Lakes (natural lakes and reservoirs that have 10 million cubic meters of water or more)

    B Item class

    Water use

    Standard value

    Total

    nitrogen

    Total

    phosphorus

    I Conservation of natural environment and uses listed II-V ≦0.1 mg/L ≦0.005 mg/L

    II Water supply classes 1,2,and 3(except special types),fishery class 1,bathing,and uses

    listed in III-V

    ≦0.2 mg/L ≦0.01 mg/L

    III Water supply class 3 (special types)and uses listed in IV-V ≦0.4 mg/L ≦0.03 mg/L

    IV Fishery class 2 and uses listed in V ≦0.6 mg/L ≦0.05 mg/L

    V Fishery class 3,industrial water,agricultural water,and conservation of the environment ≦1 mg/L ≦0.1 mg/L

    Remarks:1. Standard values are set in terms of annual average.2. Standard values are applicable only to the lakes and reservoirs where phytoplankton bloom may occur, and

    standard values for total nitrogen are applicable to lakes and reservoirs where nitrogen limits phytoplankton

    growth.

    3. Standard values for total phosphorus are not applicable to agricultural water uses.Notes: 1. Conservation of the natural environment:Conservation of sightseeing and other environments

    2. Water supply class 1:Purify water using filters and other simple means

    Water supply class 2:Purify water using sedimentation filters and other ordinary means

    Water supply class 3:Purify water using pre-treatment and other advanced methods (a “special item”is a

    special purification means capable of removing odor-producing substans)

    3. Fishery class 1:For such marine products as the Salmonidae (salmon/trout) species, sweetfish, and marine

    products for fishery class 2 and 3

    Fishery class 2:For such marine products as smelt and marine products for fishery class 3

    Fishery class 3:Such marine products as koi and crunian carp

    4. Conservation of the environment:Limit of not disrupting the day-to-day lives of the population (including

    things likes walks along the beach)

    Fig.6 Relation between measured Chlorophyll-a

    concentration and N/P ratio.

    Fig.7 Frequency of algae generation for each range

    of N/P ratio.

    ― ―24

  • グラフよりクロロフィルaとN/P比は負の累乗近似

    の関係を示した。

    また前述の通りアオコの発生にはN/P比が関係して

    いることから,クロロフィルa検出時のN/P比を区間

    毎に分けヒストグラムで表したものが Fig.7である。

    これらのグラフよりN/P比が30以下の時にアオコ

    が発生しやすい傾向を示していることが分かる。

    さらに Fig.8はクロロフィルaの濃度を100μg/L毎

    の区間に分け,クロロフィルa検出時の頻度をN/P比

    の区間毎にヒストグラムで表したものである。

    ヒストグラムよりクロロフィルa濃度が100μg/Lま

    での場合はN/P比は10~30をピークに0~100以上ま

    で広範囲に分布しているが,クロロフィルa濃度が高く

    なるにつれN/P比が低下し,300μg/L以上ではN/P

    比はほとんどが10以下になっている。

    アオコのN/P比は13.5であるが,クロロフィルa濃

    度が300μg/L以上の時N/P比が10以下の低い値を示

    している理由としては以下のことが えられる。

    ① アオコの大量発生により,溶存酸素が減少し水質が

    嫌気性となり脱窒が起きた。

    ② N/P比により発生する植物プランクトンの種類が

    異なる。

    しかし,①はORPの結果からは判断できず,また②に

    ついても植物プランクトンの種類の同定は行っていない

    ため,現在のところこの理由については明らかではない

    が,クロロフィルa濃度が高くなるとN/P比が低下す

    ることは明らかであることからアオコ以外の植物プラン

    クトンが増殖したと えられる。

    なお,一般的にN/P比が高い状態はP濃度が低いこ

    とに起因していると言われており,本分析結果からもク

    ロロフィルa濃度が低いときN/P比が高くなる傾向を

    示していることから,P濃度が富栄養化によるアオコ発

    生の大きな因子であると推察できる。

    5.クロロフィルaを目的変量とした重回帰分析

    前述の通り,アオコ発生(クロロフィルaの検出)に

    は水温が強く関与していることが明らかであり,またア

    オコの発生機構はアオコの純粋培養による微生物学的研

    究により,その増殖特性や垂直移動による集積特性から

    明らかにされている。しかし,各種栄養塩類の濃度など

    環境条件に関しては未だ解明されていない。

    よって本測定データからアオコ発生にどの水質項目が

    影響しているのか重回帰分析により解析を行った。

    5.1 説明変量の選定

    重回帰分析における説明変量の選択については以下の

    点に留意する必要がある。

    ・全く関係のない説明変量でも重回帰分析に加えると決

    定係数や重相関係数が大きくなる。

    ・2つの説明変量間の相関が高い時には多重共線性が生

    じ,求めた重回帰式の信頼性が低下することがある。

    しかし重回帰分析における説明変量の選定は,目的変

    量に影響を与えていると思われる要因は全て選ぶことが

    基本となる。

    ここで本研究における水質測定項目は,クロロフィル

    a,COD,TN,TP,SS,透視度,pH,ORP,水温,電

    気伝導率であるが,説明変量の選択にあたり本研究にお

    Fig.8 Frequency of algae generation for each range

    of N/P ratio under different ranges of concen

    tration of Chlorophyll-a.

    -

    ― ―25

  • ける分析結果および過去の知見から検討を行った結果,

    以下の点を 慮した。

    ① pHはアオコ発生に伴い変化するためアオコ発生の

    要因ではない。

    ② ORPは酸素の供給がほとんど無い閉鎖性水域にお

    いて酸素欠乏状態に陥り還元状態になりやすい。つ

    まりORPは水の嫌気性,好気性の状態を表す指標

    である。

    ③ 電気伝導率は大まかな水中の溶存イオン量を計るも

    のであり,また温度の影響を受けやすく(1°Cの上

    昇により約2%増大)電気伝導率によって水質を調

    査することは不向きである。

    ④ 透視度は現在100cmの透視度計を用いて測定を

    行っているが,以前50cmの透視度計を用いてお

    り,この時の透視度が50cm以上でも50cmで表さ

    れることから解析に悪い影響を与える恐れがある。

    以上のことからpH,ORP,電気伝導率,透視度の4項

    目は目的変量とは関係が少ない,または説明変量として

    不向きであり解析に加えるべきではないと判断し,説明

    変量はCOD,TN,TP,SS,水温の5項目とした。

    また重回帰式を求める時の多重共線性を避けるため,

    説明変量の選択は偏回帰係数の検定統計量から説明変量

    を選択するステップワイズ法を用いることとした。

    5.2 重回帰分析結果

    重回帰分析に用いたデータは,クロロフィルa,COD,

    TN,TP,SS,水温の6項目について同日測定を行った

    サンプルから,先に記したTable 2の平 値±3σを除

    外した283サンプルを用いて行った。

    統計量および相関行列・分散共分散行列は Table 5の

    通りであり有意水準1%で無相関の検定を行った結果,

    TNと水温のみ無相関であった。

    次に重回帰分析を行った結果が Table 6である。前述

    の通り多重共線性を避けるため,説明変量の選択は偏回

    帰係数の検定統計量から説明変量を選択するステップワ

    イズ法を用いた結果,説明変量はCOD,TN,SSの3項

    目となった。なお重回帰式は以下の通り表され,修正(自

    Table 5 Statistic,correlative& variance-covariance matrix of water quality items.

    Sample statistic

    Chlorophyll-a COD SS TN Water

    Temperature TP

    Sum 44493.0 1285.2 3531.2 287.420 7033.6 27.017

    Average 157.22 4.54 12.48 1.0156 24.85 0.0955

    Standard Deviation 70.5858 1.9403 6.7231 0.2445 2.8074 0.0522

    Sample Number 283

    Correlation Matrix・Variance-Covariance Matrix

    Chlorophyll-a COD SS TN Water

    Temperature TP

    Chlorophyll-a 4982.3512 0.8419 0.7351 0.1986 0.4473 0.4991

    COD 115.3078 3.7648 0.8149 0.3818 0.4523 0.5905

    SS 348.8702 10.6299 45.2007 0.4249 0.3076 0.6702

    TN 3.4278 0.1812 0.6985 0.0598 -0.0769 0.3414

    Water Temperature 88.6446 2.4640 5.8060 -0.0528 7.8814 0.3348

    TP 1.8403 0.0599 0.2354 0.0044 0.0491 0.0027

    Table 6 Results from multiple regression equation and analysis of variance.

    Multiple Regression Equation

    Variable

    Name

    Partial

    Regression

    Coefficient

    Standard

    Partial

    Regression

    Coefficient F-Value T-Value P-Value Judgment

    Standard

    Error

    Partial

    Correlation

    Coefficient

    Simple

    Correlation

    Coefficient Lower

    Limit

    Upper

    Limit

    COD 26.9554 0.7410 196.9335 14.0333 0.0000 ** 1.9208 0.6433 0.8419 23.1742 30.7365

    TN -49.3626 -0.1710 25.5838 5.0580 0.0000 ** 9.7592 -0.2898 0.1986 -68.5737 -30.1515

    SS 2.1419 0.2040 14.3225 3.7845 0.0002 ** 0.5660 0.2210 0.7351 1.0278 3.2560

    ConstantTerm 58.2128 37.1211 6.0927 0.0000 ** 9.5545 39.4047 77.0209

    Accuracy Analysis of Variance Table

    Coefficient of Determination

    Adjusted Coefficient of Determination

    0.7399

    0.7371Factor

    Sum of

    Squared Degree of

    Freedom

    Mean

    Square F-Value P-Value Judgment

    Multiple Correlation Coefficient 0.8601 Regression Sum of Squares 1043197.075 3 347732.358 264.4905 0.0000 **

    Adjusted Multiple Correlation Coefficient 0.8585 Residual Sum of Squares 366808.302 279 1314.725

    Total Variation 1410005.377 282

    Significance Level **:1% *:5%

    ― ―26

  • 由度調整済)重相関係数は0.8585と比較的高い値を示し

    た。

    重回帰式

    =26.9554 -49.3626 +2.1419

    +58.2128 (1)

    =0.8585

    ここで,

    :クロロフィルa(μg/L)

    :COD(mg/L)

    :TN (mg/L)

    :SS(mg/L)

    この重回帰式の検定を有意水準1%行った結果は

    Table 6の分散分析表に示す通り,

    =264.4905≧ 0.01=3.7816

    であり,重回帰式は有効であると判断できる。

    6.重回帰分析に用いるデータの整理に関する

    検討

    先の重回帰分析において以下の問題点が えられた。

    ① 重回帰分析に用いたデータは,クロロフィルa,

    COD,TN,TP,SS,水温の6項目について同日測

    定を行ったデータから異常値を除外した283回の

    データであり,重回帰式の精度がこのデータに左右

    され低下する懸念がある。

    ② 個々の測定データは詳細に分析しており全体の傾向

    がつかみにくく重回帰分析には不向きと えられ

    る。

    ③ 各水質項目の測定回数(サンプル数)は先のTable 2

    に示した通り528回から918回と各水質項目によっ

    て試料採取および測定の回数は異なる。

    これらの事項を踏まえて検討を行った結果,重回帰分

    析に用いるデータを次に示す方法で整理し用いることに

    より,より精確な重回帰分析が可能であると えられた。

    6.1 クロロフィルa濃度の区間平 による分析

    本研究において行った重回帰分析に用いるデータの処

    理方法は以下の通りである。

    ① 全データをクロロフィルaの濃度で10μg/Lピッ

    チで区切る。

    Table 7 Mean of each water quality item rate of Chlorophyll-a concentration.

    Chlorophyll-a(μg/L)

    COD(mg/L)

    SS(mg/L)

    TN(mg/L)

    TP(mg/L)

    pH

    Water

    Temperature(°C)

    Electrical

    Conductivity(mS/m)

    ORP(mV)

    Transparency(cm)

    15.38 1.20 1.50 1.1808 0.0235 8.163 18.73 15.367 203.7 100.0

    24.59 1.41 1.94 0.9843 0.0269 8.546 20.46 20.478 114.0 90.5

    36.75 1.23 4.00 0.9625 0.0368 96.4

    44.40 1.92 3.80 0.9784 0.0446 8.470 20.90 28.535 144.8 71.5

    55.86 2.28 4.58 0.9422 0.0437 8.990 24.33 31.850 67.3 62.7

    64.29 2.23 6.00 0.9486 0.0599 9.236 23.97 41.076 12.3 52.4

    74.88 2.50 7.17 1.0320 0.0667 8.789 23.37 28.339 53.8 46.5

    86.03 2.73 7.09 1.0773 0.0620 9.006 24.59 34.813 5.3 44.5

    94.31 2.91 6.93 1.0066 0.0528 8.997 24.75 32.717 -100.8 45.3

    104.12 3.58 8.08 1.1114 0.0776 8.689 24.88 33.259 12.2 35.6

    114.91 4.10 8.92 1.1377 0.0971 9.459 24.96 39.073 74.7 36.6

    123.60 4.03 9.94 1.0038 0.0811 9.376 24.04 39.609 82.5 31.7

    134.24 4.05 10.15 1.1002 0.0878 9.316 24.16 33.383 77.6 32.1

    145.03 4.54 12.65 1.1182 0.0899 9.402 23.10 39.048 43.6 29.5

    154.87 4.76 13.41 1.1034 0.0887 9.226 23.83 39.104 80.1 26.1

    164.82 4.86 12.96 1.0123 0.1059 9.608 26.06 37.450 50.3 27.7

    173.46 5.46 14.72 1.1951 0.1144 9.415 24.87 37.231 82.1 23.1

    184.55 5.40 14.35 1.0688 0.1137 9.422 26.39 30.734 31.3 25.6

    194.60 5.11 13.22 1.1786 0.0931 9.375 24.25 40.948 55.5 25.0

    204.85 5.89 16.04 0.9804 0.1236 9.402 26.59 29.600 -59.9 22.9

    214.29 5.68 15.29 1.0823 0.0948 9.476 25.99 32.515 46.1 23.9

    224.58 5.88 18.15 1.2020 0.1056 9.458 25.25 31.748 70.7 24.0

    232.91 6.38 16.44 1.2481 0.1247 9.545 28.50 29.633 -11.8 23.3

    244.02 5.97 14.50 1.0671 0.0937 9.538 26.01 40.944 101.0 24.0

    253.81 5.96 16.53 1.3317 0.1369 9.447 25.37 36.033 81.7 27.1

    262.89 6.86 19.33 1.1181 0.1458 9.620 26.11 31.973 97.3 21.5

    275.02 6.25 17.57 1.0127 0.1060 9.480 26.73 33.148 57.5 22.0

    286.13 7.26 21.63 1.2157 0.1601 9.998 27.78 28.124 80.4 19.3

    295.53 8.03 22.83 1.4327 0.156710.340 23.00 45.900 159.0 16.9

    303.20 7.88 21.93 1.2023 0.1250 9.463 27.83 29.700 61.0 15.6

    312.07 6.30 18.73 1.1240 0.14239.2800 28.20 24.10 86.0 23.1

    ― ―27

  • ② このクロロフィルaの濃度区間毎に各水質項目の

    平 値を算出する。

    ③ この区間毎の各水質項目の平 値をその区間の代表

    値として分析を行う。

    この方法でデータ整理を行った結果が Table 7であ

    る。なおクロロフィルa濃度が310 /Lを超えると各

    区間のサンプル数が3以下となり平 値の信頼性が低下

    するためクロロフィルa濃度310μg/L以上のデータは

    除外した。

    この結果をもとにクロロフィルaと各水質測定項目

    の関係を示したグラフが Fig.9である。

    グラフよりクロロフィルaとCOD,SSは非常に高い

    Fig.9 Relation between Chlorophyll-a concentration and several kinds of water quality measurments.

    ― ―28

  • 相関を示し,TPも比較的高い相関を示したが,TNにつ

    いては先の分析結果同様,相関が低かった。なお無相関

    の検定を1%の有意水準で行ったところ無相関は電気伝

    導率とORPであった。

    6.2 区間平 データを用いた重回帰分析

    次にTable 7の値を用いて重回帰分析を行うこととす

    る。

    説明変量は先の『5.クロロフィルaを目的変量とし

    た重回帰分析』と同様,COD,TN,TP,SS,水温の5

    項目とし,多重共線性を避けるため説明変量はステップ

    ワイズ法を用い選択した。

    Table 8が統計量および相関行列・分散共分散行列で

    あり Table 9が重回帰式および分散分析表である。

    重回帰分析の結果,説明変量はCOD,SS,水温の3項

    目の次の重回帰式で表され,修正(自由度調整済)重相

    関係数は0.9759と良好な相関を示した。

    重回帰式

    =19.0440 -7.5209 +3.5187

    -102.7295 (2)

    =0.9759

    ここで,

    :クロロフィルa(μg/L)

    :COD(mg/L)

    :SS(mg/L)

    :水温 (°C)

    この重回帰式の検定を有意水準1%で行った結果は

    Table 9 の分散分析表に示す通り,

    =194.1911≧ 0.01=4.6366

    であり,重回帰式は有効であると判断できる。

    6.3 区間平 データによる重回帰式の検証

    6.2で求めた区間平 データによる重回帰式の検証を

    先の5.2で用いた283サンプルを用いて行った。

    検証結果は Fig.10の通りであり近似直線を切片0で

    表すと =1.0465 =0.8350 となり,5.2で求めた

    重回帰式の重相関係数 =0.8585と大差ない結果と

    なった。

    以上のことから,データを区間毎に区切りその区間平

    値をその区間代表値として重回帰分析を行うことによ

    り,データ全体の傾向を推測することが可能であると言

    える。

    Table 8 Statistic,correlative& variance-covariance matrix of water quality items.

    Sample statistic

    Chlorophyll-a COD SS TN Water

    Temperature TP

    Sum 5063.24 141.41 376.38 33.1968 745.00 2.8446

    Average 168.775 4.714 12.546 1.1066 24.833 0.0948

    Standard Deviation 87.3252 1.8764 5.8718 0.1118 2.1736 0.0359

    Sample Number 30

    Correlation Matrix・Variance-Covariance Matrix

    Chlorophyll-a COD SS TN Water

    Temperature TP

    Chlorophyll-a 7923.8339 0.9739 0.9740 0.5612 0.7560 0.9203

    COD 168.7855 3.7863 0.9890 0.6001 0.7365 0.9426

    SS 518.5254 11.4744 35.6457 0.5942 0.7258 0.9471

    TN 5.8955 0.1375 0.4159 0.0127 0.1480 0.6106

    Water Temperature 143.4965 3.0038 9.2633 0.0360 4.7245 0.7315

    TP 3.0340 0.0678 0.2089 0.0026 0.0571 0.0014

    Table 9 Results from multiple-regression equation and analysis of variance.

    Multiple Regression Equation

    Variable

    Name

    Partial

    Regression Standard

    Partial

    F-Value T-Value P-Value Judgment Standard

    Error

    Partial

    Correlation

    Simple

    Correlation Lower

    Limit

    Upper

    Limit

    COD 19.0440 0.4092 2.1597 1.4696 0.1537 12.9586 0.2769 0.9739 -7.5928 45.6808

    SS 7.5209 0.5057 3.4108 1.8468 0.0762 4.0723 0.3405 0.9740 -0.8498 15.8916

    Water Temperature 3.5187 0.0876 2.1348 1.4611 0.1560 2.4082 0.2755 0.7560 -1.4315 8.4689

    Constant Term -102.7295 3.9801 1.9950 0.0566 51.4929 -208.5748 3.1157

    Accuracy Analysis of Variance Table

    Coefficient of Determination

    Adjusted Coefficient of Determination

    0.9573

    0.9523Factor

    Sum of Squared

    Deviation Degree of

    Freedom

    Mean

    Square F-Value P-Value Judgment

    Multiple Correlation Coefficient 0.9784 Regression Sum of Squares 218996.8720 3 72998.9573 194.1911 0.0000 **

    Adjusted MultipleCorrelationCoefficient 0.9759 Residual Sum of Squares 9773.7395 26 375.9131

    Total Variation 228770.6115 29

    Significance Level **:1% *:5%

    ― ―29

  • 7.まとめ

    本研究は2003年から2007年までの夏期において閉鎖

    性水域の水質測定を行い,データを分析・解析したもの

    である。

    本研究結果より,

    ① pHはアオコ発生(クロロフィルa検出)に伴い上昇

    することから,クロロフィルa検出により水質が塩

    基性に傾いているか判断でき,またクロロフィルa

    濃度からpHが9.0以上であるか以下であるかの判

    別も可能と えられる。

    ② 分析結果より,水温15°C~30°Cの間で約90%のク

    ロロフィルaが検出されていることから,水温がア

    オコ発生(クロロフィルaの検出)に大きな影響を

    与えており,また当然のことながらクロロフィルa

    濃度は水温に比例して上昇することから,水温がア

    オコ発生量(クロロフィルa濃度)を左右する重要

    な因子であることは明らかである。

    ③ NやPは富栄養化原因物質であり,水質汚濁防止法

    に基づく排水規制の対象とされ個別に環境基準値が

    定められているが,N/P比に注目し分析を行った結

    果,P濃度が富栄養化によるアオコ発生の大きな因

    子であると推察された。

    ④ クロロフィルaを目的変量とし,COD,TN,TP,

    SS,水温を説明変量としてステップワイズ法を用い

    重回帰分析を行った結果,以下で表される重回帰式

    を得た。

    =26.9554 -49.3626 +2.1419

    +58.2128 (3)

    =0.8585

    ここで,

    :クロロフィルa(μg/L)

    :COD(mg/L)

    :TN (mg/L)

    :SS(mg/L)

    ⑤ さらにクロロフィルaの濃度を区間毎に区切り,各

    水質測定項目の平 値を用いて重回帰分析を行った

    結果,以下で表される重回帰式が得られた。

    =19.0440 -7.5209 +3.5187

    -102.7295 (4)

    =0.9759

    ここで,

    :クロロフィルa(μg/L)

    :COD(mg/L)

    :SS(mg/L)

    :水温 (°C)

    本式に,実際に測定したデータを代入し,検証を行っ

    た結果,先の (1)式とほぼ同等の相関係数が得られた。

    このことから,データを区間毎に区切りその区間平

    値をその区間代表値として重回帰分析を行うことによ

    り,データ全体の傾向を推測することが可能であると言

    える。

    また本研究においては重回帰分析の目的変量をクロロ

    フィルaとしたが,クロロフィルa以外の水質測定項目

    を目的変量として用いることにより,CODや SS,TNな

    どの濃度がクロロフィルaなどから推測できる可能性

    も示唆された。

    すなわち本研究結果より,最終目標である人工衛星を

    利用したリモートセンシング技術による広範囲における

    水域の水質評価が可能であるといえる。

    謝辞

    本研究は平成19年度 日本大学学術研究助成金〔一般

    研究(個人研究)〕により行われた。

    参 文献

    1) 環境省編,平成20年度版 環境・循環型社会白書,

    ぎょうせい,2008.5

    2) Robert R.Bukata, John H.Jerome, Kirill Ya.

    Kondratyev, Dimitry V.Pozdnyakov:Optical

    Properties and Remote Sensing of Inland and

    Coastal Waters,New York CRC Press,1995,p362

    3) Keishi Iwashita, Katsuteru Kudoh, Hisao Fujii,

    Hajime Nishikawa:Satellite Analysis For Flow-

    ing Mechanism of the Inbanuma-focused on

    Trophic State Index-, The Official Journal of

    Advances in Space Research,Vol.33,2004,pp.284

    -289

    4) Keishi Iwashita, Eric Keith Dean, Tomas Good-

    man:MODIS Normalized Water-leaving Radi-

    ance Algorithm Theory by Filament-shaped

    Fig.10 Correlation between measured concentration

    and estimated concentration from multiple

    regression analysis in Chlorophyll-a

    ― ―30

  • Methodology Researching Unit, EPA (US Envi-

    ronmental Protection Agency) Star Grand

    Research Report,2006,pp.1-104

    5) 半谷高久,小倉紀雄 共著,水質調査法 第3版,

    丸善,平成7年,p189

    6) 半谷高久,小倉紀雄 共著,水質調査法 第3版,

    丸善,平成7年,p256

    7) 藤本尚志,福島武彦,稲森悠平,須藤隆一,全国湖

    沼データの解析による藍藻類の優占化と環境因子と

    の関係,水環境学会誌,第18巻 第11号,1995,

    pp.901-908

    (H21.6.10受理)

    ― ―31