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アグリビジネス創出フェア 2019 出展報告 1.テーマ ・・・ アグリビジネス創出フェア 2019 出展 2.日 ・・・ 2019 年 11 月 20 日(水)~22 日(金) 10:00-17:00 3.場 ・・・ 東京ビッグサイト 西 4 ホール 4.内 容 ・・・ アグリビジネス創出フェアは、農林水産省が主催する、「全国の産学官の機関が 有する、農林水産・食品産業分野などの最新の研究成果を展示やプレゼンテーションなどで分かりや すく紹介し、研究機関間や研究機関と事業者との連携を促す場として開催される技術交流展示会」で、 毎年4万人弱の入場者があります。本年度は全国の大学や公的研究機関、企業などから 134 ブース が出展され、本学からも応用生物科学部の5件の研究テーマを出展するとともに、岐阜大酒(日本酒) の試飲会をおこないました。当日は、本学ブースにも多数の方の訪問をいただき、共同研究に向けて の活発な情報交換を行うことができました。 【出展シーズ】 「岐阜大酒」の開発に向けた新奇清酒酵母のスクリーニングとその分子育種 及び 岐阜大酒の試飲 ・・・応用生物科学部 応用生命科学課程 中川智行 教授 植物を助けるバイオスティミュラント微生物」の探索と応用展開研究 ・・・応用生物科学部 生産環境科学課程 清水将文 准教授 ポリフェノールの多種多様な生理活性と作用のメカニズムの解明、化粧品、医薬品等への応用 ・・・応用生物科学部 応用生命科学課程 山内恒生 助教 農家圃場における作物の収量・品質の変動要因の解明 〜現地試験の方法論の確立に向けて〜 ・・・応用生物科学部 生産環境科学課程 田中貴 助教 インピーダンス測定による農産物の組織状態評価 ・・・応用生物科学部 応用生命科学課程 今泉鉄平 助教

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Page 1: アグリビジネス創出フェア 2019 出展報告...アグリビジネス創出フェア2019 出展報告 1.テーマ ・・・ アグリビジネス創出フェア2019出展

アグリビジネス創出フェア 2019 出展報告

1.テーマ ・・・ アグリビジネス創出フェア 2019出展

2.日 時 ・・・ 2019年 11月 20日(水)~22日(金)

10:00-17:00

3.場 所 ・・・ 東京ビッグサイト 西 4ホール

4.内 容 ・・・ アグリビジネス創出フェアは、農林水産省が主催する、「全国の産学官の機関が

有する、農林水産・食品産業分野などの最新の研究成果を展示やプレゼンテーションなどで分かりや

すく紹介し、研究機関間や研究機関と事業者との連携を促す場として開催される技術交流展示会」で、

毎年4万人弱の入場者があります。本年度は全国の大学や公的研究機関、企業などから 134 ブース

が出展され、本学からも応用生物科学部の 5件の研究テーマを出展するとともに、岐阜大酒(日本酒)

の試飲会をおこないました。当日は、本学ブースにも多数の方の訪問をいただき、共同研究に向けて

の活発な情報交換を行うことができました。

【出展シーズ】

① 「岐阜大酒」の開発に向けた新奇清酒酵母のスクリーニングとその分子育種 及び

岐阜大酒の試飲 ・・・応用生物科学部 応用生命科学課程 中川智行 教授

② 植物を助けるバイオスティミュラント微生物」の探索と応用展開研究

・・・応用生物科学部 生産環境科学課程 清水将文 准教授

③ ポリフェノールの多種多様な生理活性と作用のメカニズムの解明、化粧品、医薬品等への応用

・・・応用生物科学部 応用生命科学課程 山内恒生 助教

④ 農家圃場における作物の収量・品質の変動要因の解明 〜現地試験の方法論の確立に向けて〜

・・・応用生物科学部 生産環境科学課程 田中貴 助教

⑤ インピーダンス測定による農産物の組織状態評価

・・・応用生物科学部 応用生命科学課程 今泉鉄平 助教

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「岐阜大酒」の開発に向けた新奇清酒酵母のスクリーニングとその分子育種

概要

研究内容

応用生物科学部 応用生命科学課程 教授 中川 智行

岐阜大学では70周年に向けた大学ブランド「岐阜大酒」の開発を目的に,新奇な清酒酵母のスクリーニングとその分子育種を岐阜県産業技術センターとの共同研究にて行ってきました。本プレゼンテーションでは,地域ブランドの確立に向けた新奇な清酒酵母の開発について解説します。

(1)岐阜大酵母のスクリーニングと遺伝系統解析

(2)岐阜大酵母の清酒発酵特性

4 stra ins w ere selected by fermenta tion ab ility and f lavor

富有柿 郡上の土 モンシロチョ ウ みかん

GY-3 8 GY-1 1 5 GY-1 5 6 GY-1 7 2

K7 3 8 1 1 5 1 5 6 1 7 2

AP

TTC

岐阜県自然環境からのサンプリ ング

酵母株の取得 (約 7 0 0 株)

Saccharomyces cerevisiae 2 5 株

現在まで岐阜県の自然環境から25株の出芽酵母を獲得し、清酒酵母としての特性を持つ4株を選抜しました。

酵母の性質は清酒の風味を左右します。

清酒酵母

吟醸香エタノ ール

C2H 5OH

4 -ビニルグアヤコール( 煙様やスパイス様などの香り )

カプロン酸エチル( リ ンゴ様の香り )

酢酸イソアミ ル( バナナ様の香り )

4-VG有機酸

クエン酸( 爽やかな酸味)

リ ンゴ酸( 爽やかな酸味)

エタ ノ ール( 発酵力)

4株の遺伝系統解析を行ったところ、GY115株のみ清酒酵母のグループに含まれました。

4株のうちGY115

株は4-VGを生産

せず、酸味を効かせたスッキリ感のある清酒を醸造しました。

成分組成

官能評価

分析 GY-3 8 GY-1 1 5 GY-1 5 6 GY-1 7 2 K7

アルコール 1 4 1 4 . 6 6 . 5 1 4 . 3 1 6 . 4

酸度 2 . 5 2 2 . 6 1 2 . 9 6 2 . 8 4 2 . 5 3

アミ ノ 酸度 1 . 5 4 1 . 0 1 1 . 5 2 1 . 4 4 1 . 1 9

香気成分酢酸イソアミ ル 3 .9 2 . 5 2 . 2 4 . 6 7 . 4

カプロン酸エチル 0 .5 0 . 7 0 . 3 0 . 5 2 . 3

有機酸

リンゴ酸 2 6 4 3 0 8 2 3 6 1 7 4 4 5 5コハク酸 3 4 3 6 6 4 1 1 3 6 6 3 6 5 7乳酸 7 2 2 8 3 8 6 9 7 7 1 4 7 0 0

酢酸 1 3 5 3 2 1 7 5 1 5 3 7 9

GY-3 8 GY-1 1 5 GY-1 5 6 GY-1 7 2 K7

香り 4 -VG 香少 4 -VG 4 -VG 吟醸香

味 - すっきり感 甘味強 - 酸味有

GY- 115株を選抜

活用分野・用途・応用例

新たな清酒酵母の育種

接合株

GY-115×G酵母の接合株による醸造

GY-115 G酵母×

GY- 1 1 5×

G酵母

【 キラー性】

岐阜大酵母を用いた清酒の開発

岐阜大酒 「多望の春」

ぎざん

きょくふ

岐阜県産業技術センター共同研究: 岐阜県食品科学研究所

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「植物を助けるバイオスティミュラント微生物」の探索と応用展開研究

概要

研究内容

応用生物科学部 生産環境科学課程 応用植物科学コース准教授清水将文

(1)植物を病原体感染から保護する植物共生微生物これまでに、ウリ類やイチゴの炭疽病、キャベツ黒すす病、トマト青枯病、ウリ類つる割病などの発生を抑制する植物内生放線菌や根圏細菌などの植物共生微生物を多数発見し、特許出願してきました。微生物農薬は、耐性病原菌が出現するリスクが極めて低く、また、農薬の散布回数にカウントされないというメリットがあります。

【実績】 特許US 6,544,511 B2 特許第 3629212 号 特許第 5380648 号 特開 2011-188761など7件

(2)植物成長を促進する根圏細菌植物根圏(根の周囲)に生息する微生物群の中から、植物の成長を助ける能力を持った新規の有用細菌の探索を進めています。貧栄養条件下での植物生育を助けるユニークな細菌なども見つかっています。化学肥料の使用量を抑えながらも、作物の収量増加が期待でいます。

活用分野・用途・応用例

<微生物農薬・植物バイオスティミュラントとして応用>病害抑制効果をもつ微生物は微生物農薬として、成長促進効果をもつ微生物は植物バイオスティミュラントとして活用できます。これら微生物資材の活用は、農業の省農薬・省化学肥料化や不良環境下での作物栽培の実現に大きく貢献するものと考えています。

当研究室では、植物生育を促進したり、植物を病原体の感染から保護する能力を持つ有用な植物共生微生物を、植物バイオスティミュラントや微生物農薬として農作物生産に有効活用することを目指した研究に取り組んでいます。有用植物共生微生物の探索から、有効施用方法の検討、有用効果のメカニズム解析に至るまでを一貫して行っています。

対照区:半数近くのイチゴ苗が炭疽病を発症 有用放線菌区:発病苗数が7割以上減少

病害抑制効果をもつ植物共生微生物の例

植物成長を促進する植物共生微生物の例

無施肥対照区:シロイヌナズナの成長が大幅に停滞

有用根圏細菌区:生育が改善され、健全に成長を続ける

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ポリフェノールの多種多様な生理活性と作用のメカニズムの解明、化粧品、医薬品等への応用

概要

研究内容

応用生物科学部 応用生命科学課程 分子生命科学コース助教 山内 恒生

(1)インドネシア産薬用植物からメラニン生成を制御する化合物を発見インドネシアの貴重な薬用植物からメラニン生成を抑制するポリフェノールであるウゴニン類と、逆に促進するクェルセチン配糖体を取り出しました。さらに類似化合物を合成し、より活性の強いメチルクェルセチンの合成に成功しました。ウゴニン類は現在広く化粧品として用いられている、アルブチンの数十倍活性が強く、美白剤としての応用が期待されます。また、メラニン生産を促進する化合物は白髪予防剤や白斑病の治療薬に利用することができるのではないかと考えています。

(2)メチルクェルセチンの癌転移抑制及び、神経細胞活性化効果メラニン生成を促進したメチルクェルセチンは、癌の転移を抑制する活性と、神経細胞を活性化する効果があることがわかりました。今後は、様々な作用を示すこの様なポリフェノールが、どの様に細胞内のタンパク質に作用しているのかを探ると共に、動物実験などで効果をさらに確かめていく予定です。

活用分野・用途・応用例

ポリフェノールの多種多様な構造と生理活性、及びそれらの作用メカニズムの解明を目指して研究を行っています。これまでに、様々なポリフェノールをインドネシア産薬用植物から取り出し、類似化合物を合成してきました。ポリフェノールの一種であるフラボノイドが、メラニン生成をコントロールしたり癌転移を抑制したりする可能性が示されました。現在はこれらのフラボノイドが細胞内でどの様に作用しているのかを探っています。

天然から取り出し、あるいは合成したポリフェノールと相互作用するタンパク質が特定されれば、癌細胞に限らず、これまで謎に包まれていた、ポリフェノールの生物活性の核心的な作用メカニズムに迫ることができると期待しています。また動物を用いた応用試験により、これらのポリフェノール及び研究技術が化粧品、医薬品、機能性食品に応用できるのではないかと考えています。

天然物

OOH

OH

OHOH

O

OOH

OH

O

OH

O

OOH

OH

O

OH

O

OH

OH

OHOH

O

O

OH

OH

O

O

O

CH3

CH3

CH3

メラニン生産促進

O

OOH

OH

OHMeO

メラニン生産抑制

O

OOH

O

OH

OH

神経突起伸長促進

O

O

OH

OH

O

O

O

CH3

CH3

CH3

癌細胞転移抑制

樹状突起伸長

PC12細胞

がん細胞ウゴニン類

メチルクェルセチン

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農家圃場における作物の収量・品質の変動要因の解明

〜現地試験の方法論の確立に向けて〜

概要

研究内容

応用生物科学部 生産環境科学課程 植物コース 助教 田中貴

(2)リモートセンシングによる収量ムラの可視化と空間統計モデルの応用人工衛星やドローンを用いたリモートセンシング技術により,圃場間・圃場内の作物(水稲・小麦・大豆等)の収量を推定し、空間統計モデルにより処理を効果を検討できます。

(1)農家を主体とする現地実証試験の実施方法農家圃場における作物生産は,土壌・気象・農家が採用する栽培技術など複数の要因の影響を受けますが,簡易的な栽培試験でも、後述(2) によって収量変動要因を解析できます。

活用分野・用途・応用例

スマート農業に係る新技術を農家圃場で実証する試験研究が急増していますが、その効果を正確に検証する手法が確立していません。そこで、農家を主体とする現地実証試験の計画・実施・評価手法の確立に向けて、リモートセンシングや収量コンバインから収集される膨大なデータを対象に空間統計モデルや多変量解析を用いた研究を行っています。

作物の収量・品質ムラを是正する可変量管理技術(施肥・播種等)の開発や実験計画法の導入が困難な圃場スケールの試験研究(e.g. 自動給水栓による異なる水管理の水稲収量・品質への影響)の検証を可能にします。

農家による簡易的な栽培試験の例

Easting

No

rth

ing

3895550

3895600

3895650

3895700

3895750

651700 651750 651800 651850 651900 651950

0

100

200

300

400

500

600

空間統計モデルによる解析方法UAVリモートセンシングから推定した小麦収量マップ 枕地を除く区間で栽培管理の

処理を設定

メッシュごとの収量データを取得

空間統計モデルを適用Z = a ×施肥量 + u

収量コンバインのデータも利用可能

施肥量に応じて収量がどれぐらい増減するのかが分かる!

疑似反復となり従来の統計手法(分散分析など)が適応できない

実験計画法に基づかない圃場試験

実験計画法に基づく圃場試験乱塊法の例:施肥水準3反復3

土壌要因

地力・地温などのムラ

土壌要因が測定すれば、通常の回帰モデルで解決できるかもしれないが、これも大変収量 = a×施肥量 + b×土壌要因 + u

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インピーダンス測定による

概要

研究内容

応用生物科学部 農産食品プロセス工学研究室 助教 今泉鉄平

活用分野・用途・応用例

農産物の組織状態評価

農産物内部に微弱な電流を流し,その流れ方を解析することで,品質評価への利用可能性を検討しました。農産物の組織構造について電気的特性として表し,さらに,食感などの品質項目との相関性を明らかにしました。

味や食感などの品質化学分析や機械的測定によって評価

食品製造現場で利用可能な簡便,迅速な方法が求められています。

インピーダンス法の利点

装置が安価,小型

非破壊計測が可能

迅速,簡易な測定

人体用体組成計と同じ原理

農産物の品質評価法として利用が期待されます

本研究の目的

インピーダンス法により得られた電気的特性と,組織構造や食感との関係性を明らかにします。

結果

等価回路解析によって,青果物の電気的特性を導くことができました。

細胞外抵抗Reは,空隙率や弾性率と高い相関を示しました。

Cm

Ri Re

細胞構造に基づく等価回路モデル

現在までに,インピーダンス測定を利用したものとして,人体用体組成計や魚肉の脂のり測定機器が実用化されています。農産物においても同様のデバイスを開発し,飲食店や食品加工工場,市場,出荷場,貯蔵施設,農場などでの利用が期待できます。