エネルギー機能材料学特論 第11回目 - hiroshima …...3 静電プローブ •...
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授業の内容
• プラズマ計測・診断(Plasma Diagnostics)– プラズマパラメータ(密度,温度など)を調べる事,また,調べた結果からプラズマの状態を知ることをプラズマ計測・診断という。
– このために各種の測定方法が開発されている。• 計測方法の分類方法
• 一通りではないが,1)何を使用して,2)何を計るかということに尽きる– 1)何を使う?(受動的,能動的)– 光,粒子,電磁場(電極,電磁波,磁場),– 2)何を計る?– 代表的なプラズマパラメータである電子密度,電子温度,イオン密度,イン温度
– その他に,不純物の種類と不純物量,及びそれらのプラズマ中の分布,ラズマの流速,など
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静電プローブ
• 針状の金属(探針という)をプラズマに入れて、電流、電圧特性を調るのが、静電プローブ(Langmuir Probeともいう)といわれるものである(電極と同じ)。
• 今、プラズマ中に図のように探針が入れると、プラズマ中の熱運動している電子もイオンも飛び込んでくる。
• 単位時間当たりに探針に飛び込んでくる電子とイオンの数が計算できれば、電流値が分かる。
金属Plasma
プラズマ―表面相互作用としてシースが形成されるプローブ理論は、シース理論の応用である。
絶縁物
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片側からの流束
• もし、プラズマ中のある面に対して、片側から来るj種粒子の流束φjは、速度分布関数f(v)を用い、
• ここに、 は平均速度である。
注意:通常、正味の流束は、単位時間当たり面を通過する粒子の差し引き
この場合、探針側は固体でプラズマはないと考えている。
0
vv (v) v v v
4jj
j x x y z
nf d d dφ
∞ ∞ ∞
−∞ −∞
= =∫ ∫ ∫
v jX
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探針に正電圧をかけた場合に流れる電流を求める
• 電子がMaxwell-Boltzmann分布しているとすれば、単位面積あたりの電子電流は
• と表される(電子のランダム電流)。
• プローブに印加する電圧(プローブ電圧)を徐々に上げていき、プラズマより正にすることによってプローブ表面に到達するイオンを減速させることができる。
• 最後に、イオンはほとんど来なくなるが、この時、プローブの前面には電子シースが形成されている。次ページ参照
2e
es ee
kTj enmπ
=
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プローブへの電子電流
• シース上の電子による流束(電子束)は、前ページの式で与えられるため、電子のランダム電流を超えない。
• 従って、電子電流は理想的には飽和して、電圧を上げても変わらなくなる。
• 現実には、電圧が大きくなった時にシース領域が大きくなったり、また、シース領域内で衝突電離が起きて、シース自体が破壊される場合があり、電子電流は飽和しない場合が多い。
シース領域
シース端
0
Φ
プローブ
X
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負電圧をかけた場合
• プラズマの電位より負の電位をかけると、電子に対して減速電界となるため、エネルギーの小さな電子から到達できなくなる。
• この電位差に対する流入電子の変化は、電子の速度分布を反映す。Maxwell-Boltzmann分布を仮定すれば、
• すなわち、電圧を下げると電子電流は指数関数的に減少し、最後には、ほとんどの電子が追い返される。この時は、イオンシースが形成される
exp exp2
p pee e es
e e e
eV eVkTj en jm kT kTπ
= − = −
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イオン飽和電流
• イオン電流は、シース条件によるシース端に流れ込むイオン電流となる。
• 実際のプローブ計測では、このイオン飽和電流が測定対象となる場合が極めて多い。
• なぜなら、イオン飽和電流は、電離やシース領域の拡大がおきにくいからである。
eis i
i
kTj Zenm
=
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単針プローブのまとめ
• 探針(プローブ)を一本入れた単針プローブ(Langmuir Probeともいう)の電流電圧特性は以下のような図となり、
• これを測定すれば、プラズマパラメータに関する情報が得られる。
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発展形 ダブルプローブなど
• 直流放電などでは電位の基準となる電極があるが、高周波による放電などの無電極放電では、バイアス電圧を加えることが困難となる場合もある。
• そこで、複数のプローブを使用する方法が考えられた。右の図は二つのダブルプローブの場合である。
• プローブの面積をそれぞれA1,A2、電位をV1,V2とすると、
• V=0の時、V1=V2=Vf (浮遊電位、floating potential)となる。
Plasma
V1 2V V V= −
1 1 2 2 0i i i i+ − + −+ + + =
•今プローブ1,2に流れるイオン、電子電流をそれぞれ、i1+,i1
-,i2+,i2
-とすると、
2 2 1 1( )I i i i i+ − − += + = − +
プラズマのポテンシャルをVsとすると、1,2
1,2 1,2
( )exp s
re
V Vi eA J e
T− − = −
1 1
2 2
expe
i I A eVi I A T
+
+
+= − 1 2tanh ,
2 e
eVI i i iT
+ + + = =
∵
II
If A1=A2
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磁気計測 磁気プローブ
• コイルのループに入る磁束に変化があると、誘導電圧が生じる。この電圧を測定して、コイルのループ内の磁束変化を調べるのが磁気プローブである。
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光計測 ドップラー幅によるイオン温度測定
• 波長λの光を出しているイオンの速度がvの時,速度方向のドップラーシフトは
• であるから、イオンが温度TiのMaxwell分布をしていると、線スペクトルの形I(⊿λ)は
• となる。但し、mはイオン質量、cは光速、λは中心波長。
• 従って、ドップラー全半値幅⊿λDは
vc
λλ
=
2
( ) exp2 i
m cIT
λ λλ
∝ −
1/2 1/21/252(2 ln 2) 17.70 10i iD
i
T Tc m A e
λλ
− = = ×
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全半値幅とは?
• 前項の式を利用したドップラー拡がりの例
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
4994 4996 4998 5000 5002 5004 5006
A=16,Ti=400eV
高さはピークの半分
全半値幅
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注意点
• イオン温度を線幅から求めるためには、他の原因による線幅の拡がりを吟味しなければならない。
• また、水素イオン(プロトン)は軌道電子がないため、線スペクトルを出すことができない。
• 不純物イオンの線スペクトルは良く用いられるが、プラズマイオンと不純物イオンのエネルギー緩和過程を考慮しなければならない。
• 線幅の拡がりの他の原因として、線スペクトルの微細構造、プラズマ中の磁場によるゼーマン(Zeeman)効果、光を出すイオンの場所におけるミクロな電場(荷電粒子の影響)によるシュタルク(Stark)効果ながある。
• 分光学参照
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電磁波による計測 マイクロ波の干渉法による密度測定
• 電子密度nのプラズマの屈折率Nは、振動数fの電磁波に対して
• で与えられる(n:m-3)。但し、fpはプラズマ周波数である。
• f=fpとなるところで、N=0でcut-offとなり、電磁波は浸透しない。• その波長とcut-offとなる密度の関係は、
1/22
1 pfN
f
= −
1/221/2 1
0
1 8.98 ( )2
ep e
e
n ef n smπ ε
− = =
20 32
0.112 10 ( ) ( : )cn m cmλλ
−= ×
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フリンジ数と密度の関係
• 2mmのマイクロ波に対してはnc=2.8×1020m-3である。
• プラズマの大きさをdとすると、プラズマの屈折率による光路長の変化は(N-1)dで与えられる。
• 次項の図に示したマッハーツェンダー干渉計(Mach-Zehnderinterferometer)やマイクロ波干渉計等で、光路長の変化をフリンジ数の変化として観測する。
• 即ち、
•
•
• (d、λ、nはSI単位)
216( 1) 1 4.49 10
2pfN d d d nf
λλ λ
− −≈ ≈ ×
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測定装置の原理
• どちらも光路差による光(波)の干渉を利用している。
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干渉縞の概念
• 位相が合うところは強調され、位相が反転するところは減光する。
0.1フリンジに対応するndは、20
20.1
2.23 10 ( )( )
nd mλ µ
−×=
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フリンジスキャン法(縞走査法)
• 干渉計で得られる干渉縞は,通常,明るさが正弦波状に変化する干渉縞である。従って,着目する点の明るさが分かれば,その点の初位相が分かり,光路差(高さの情報)が得られる。しかしながら,1枚の干渉縞画像から明るさを決定し,初期位相を決定するのは,画面のシェーディングやノイズがあって難しい。初期位相を正確に求めるために考案された方法がフリンジスキャン法である。 参照面または被検面を光軸方向に少し移動すると,両者の間隔が変化し,それに伴って干渉縞が変化して見える。実際には干渉縞全体の形は変わらないが,各点に注目すると明暗が周期的に変化し,干渉縞が走査されて見える。
• http://www.fujinon.co.jp/jp/products/laser/kisotisiki5_1.htm• などより
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PZTを用いた変位法
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フリンジから信号の再現
• 干渉縞がちょうど1周期分(2π)走査されるだけ参照面と被検面の間隔を変化させ,その間に,例えば干渉縞がπ/2(1縞の1/4)走査される毎に4回画像を取り込んで(4ステップ法),その明るさの変化から初期位相を計算する。着目する点の明るさが,I0,I1,I2,I3と変化した時,初期位相(φ)は,
• となる。但し,φは-π~πの間の値となるので,隣り合う点に2πの位相飛びがある場合には,2πを足したり引いたりして,位相を繋ぎ合わせる必要がある。この操作を位相接続(位相アンラップ)と言う。
1 3 1
0 2
tan I II I
φ − −= −
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詳細説明
• いま,縞の1周期をM分割して位相シフト2π/Mを与え縞画像をサンプリングするとm番目の縞画像強度Im(x, y)は,
• となる,ここでa(x,y)は背景強度分布,b(x,y)はコントラストむら,ϕ(x,y)が求めたい位相分布である.Brunningらによる手法では,これらの縞画像を用いて
• を計算することで,位相分布が求められる.また,上式に含まれる未知数が3であることから容易にわかるように,計算に必要な最低枚数は3であり,M=4(90度シフト)の場合は,前ページの式となる。
• この計算法は3-step法とよばれ,その後少ない入力縞画像による解析法がさまざま考案され, 最近では5~11-step 法などより高次の誤差補償により高精度な位相解析が行える方法が提案されている.また,連続的に位相を走査し一定位相走査間の干渉縞強度を積分する方法も含む(4区間の場合4-bucket法とよぶ).(加藤純一)
[ ]mI ( , ) ( , ) ( , ) cos ( , ) 2 /x y a x y b x y x y m Mφ π= + +
1m1 0
1m0
I sin(2 / )( , ) tan
I cos(2 / )
M
mM
m
m Mx y
m M
πφ
π
−
− =−
=
= ∑∑
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トムソン散乱による電子温度測定
• レーザー光をプラズマ中に入射すると、プラズマによって散乱される光のスペクトルは拡がる。通常,イオンによる散乱は,質量は電子に比べて大きいので無視できる。
• 電子が速度vで走っている時,散乱光の各周波数ωsは
k・vのドップラーシフトを受け
る。
•すなわち,
•k方向の速度vに関してマックスウェル分布しているとき,分布関数f(v)dvは
142 v sin vsin
2 2s L k θ π θω ω ωλ
= − = ⋅ = =k v
1/2 2v(v) v exp v2 2
e
e e
m mf d dT Tπ
= −
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散乱光の分光強度
• 前ページの式から散乱光の分光強度は
• この議論は,各々の電子が独立に運動できるという仮定の上に成立するので,この散乱を無相関散乱(noninteracting scattering)という
• 微小立体角dΩに散乱する散乱断面積dσ1は
• であるから,一個の電子のトムソン散乱断面積σTは
1/2 2
( ) ( )
exp ( )2 4 sin( 2) 2 4 sin( 2)
e
e e
F d
m m dT T
ω ω
λ λ ω ωπ π θ π θ
= −
2 22 21
021
sinEs Rd
d Eσ α φ= =Ω
228 208 0.665 10 ( )
3T mπασ −= = ×
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実際の例
• 面積Sの広がりを持つ入射光の強度をIとした時、密度ne、
• 入射光に沿っての長さlの部分から立体角dΩ中に散乱される散乱光の単位時間当たりのエネルギーWは、
• 例として、電子密度ne=1020m-3、φ=90°、l=0.01m、dΩ=10-2、と
すると、
• W/IS=0.8×10-13であるので、IS=100MWの時、W=8μWである。• 従って、測定上の注意として、レーザー光をプラズマに当てる時、光が通過する装置の窓等から散乱される装置散乱光(Stray Light)を小さくし、かつ、検出形に入ってこないようにする必要がある。
2 20 sine e
dW In lS d ISn l ddσ α φ= Ω = ΩΩ
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測定装置の例
• 下図は実際の装置の概要である
(Beam Dumps)
(Viewing Dumps)
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レポート
• プラズマ測定について,
– 粒子計測– 光計測– 電磁場計測
• のどれかについて,一つ調べてみよ。