マレー半島西側の港湾開発の 現状と課題 ·...

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マレー半島西側の港湾開発の 現状と課題 2012 年 12 月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部 アジア大洋州課

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Page 1: マレー半島西側の港湾開発の 現状と課題 · マレー半島西側の港湾開発の現状と課題を報告する。 (本稿は2012 年11 月19 日から11 月21

マレー半島西側の港湾開発の

現状と課題

2012年 12月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部 アジア大洋州課

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マレー半島西側のアンダマン海を通じてインド、中東や欧州に輸出することができれば、タイ産

業界にとって大きな魅力となる。タイ政府はその玄関ともなるダウェー港の開発に真剣に取り組み

始めたが、プロジェクトの規模も大きく長い年月を要することが見込まれる。また、物流ルート確立

には、総輸送コストの削減、ワンストップ通関など手続きの簡素化、国境でのコンテナ積み替え不

要化など円滑化措置の実施や不確定要素の削減もあらかじめ検討しておく必要がある。今回は、

マレー半島西側の港湾開発の現状と課題を報告する。

(本稿は 2012年 11月 19日から 11月 21日にかけてジェトロの日刊「通商弘報」に連載され

た「マレー半島西側の港湾開発」の内容をとりまとめたものである。)

内容

ダウェー開発、タイ政府が民間投資集めの調整役に ................................................................. 3

貨物・顧客集めが難航するラノーン港 ....................................................................................... 6

ダウェールートで求められる通関・輸送手続きの円滑化 ............................................................ 9

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ダウェー開発、タイ政府が民間投資集めの調整役に-マレー半島西側の港湾開発

(1)- (タイ・ミャンマー)

2012年 11月 19日 バンコク事務所発

タイ政府と産業界の悲願は、マレー半島西側アンダマン海を通じて直接インドや欧州に輸出で

きる環境を整備することだ。タイ南部のラノーン港は輸出拠点として利用するには課題が山積す

る。そのため、産業集積地から最短半日でアンダマン海に抜けられるミャンマーのダウェー港開

発に期待が集まり、タイ政府は同開発について民間投資導入に向けて取り組みを開始した。これ

ら 2つの港湾について、その期待と課題を 3回に分けて報告する。

<ミャンマーのダウェー開発にタイ政府が関与>

タイ政府とミャンマー政府は 11月 7日、ミャンマーのダウェー港と経済特区(SEZ)開発に関する

2国間合同ハイレベル委員会(JHC)(注)を開催した。同開発プロジェクトは総額 500億ドルに上る。

同委員会では、2013年前半までに基本計画(マスタープラン)をまとめた上で、13年 3月に再び

JHCを開催、同プロジェクトの詳細を最終決定することで合意した。

ダウェー港と SEZ開発は、もともとタイ大手ゼネコンのイタリアンタイデベロップメント(ITD)が、ミ

ャンマー政府から最大 75年(30 年リース。さらに 30年延長可。期間終了後さらに 15年延長可)

にわたる深海港建設・運営と工業団地建設・運営のコンセッションを獲得、第 1フェーズとして 85

億ドルの開発を行う予定だった。しかし、ITDは共同出資者を日本や韓国、インドなどから募る姿

勢を示し、多くの企業が関心をみせたが、プロジェクト規模に対して同社規模が小さいこと、財務

面が脆弱(ぜいじゃく)なことなどの不安材料から二の足を踏んでいた。そのため、プロジェクト自

体の信頼感を向上させ、新たな投資家を募るには、ミャンマー・タイ両政府による強い後押しが必

要とみられていた。

今回、JHCの開催によってタイ政府が直接的に関与する姿勢を打ち出したことで、ダウェー開発

計画の注目はがぜん増す一方、タイ政府は直接的な資本投入には後ろ向きだ。JHCでタイ側調

整役を務めるニワットタムロン首相府相は「タイ政府は民間投資を集めるために道を開く調整役。

タイ政府が直接資本を投入することない」と発言している。目玉プロジェクトとしてタイ政府が直接

出資した場合、政権交代を機にプロジェクト自身が凍結される懸念もある。その意味からも政府の

直接的な関与は最小限に抑えることが望ましいとされる。

その一方で、ダウェー開発計画は莫大(ばくだい)な資金が必要なため、民間資金のみでの実施

には依然不透明感が付きまとう。さらに JHCでミャンマー側は、ASEAN域内での敷設が計画され

る高速鉄道について、ダウェーへの接続についても関心を表明するなど、プロジェクト規模がさら

に拡大する可能性がある。そのため同首相府相は「タイ国有企業が共同投資者になる可能性が

ある」と述べた。これは例えば、ダウェー工業団地開発にタイ工業団地公社(IEAT)を、港湾開発・

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運営にタイ港湾公社(PAT)を、それぞれ絡ませる可能性があることを示唆している。現に IEATは

海外で工業団地造成・運営を担う別会社の設置を準備している。同時に、同開発計画に日本や

韓国、その他国際機関などを関与させ、ODAなどの協力を引き出すことを狙う。実際に 11月 10

日、インラック首相はタイを訪問していた韓国・李明博(イ・ミョンバク)大統領との会談後、「李大統

領がダウェー開発計画を支援する準備があると述べた」と明らかにしている。

<軽工業・労働集約的産業のダウェー移転を進める>

JHCで共同議長を務めたキティラット副首相兼財務相は「ダウェー開発計画は莫大なため、まず

軽工業・労働集約的産業の(タイからの)移転から始める。重工業や先進産業はインフラが整備さ

れた後になる」と話しており、全国一律最低賃金 300バーツ(1バーツ=約 2.6円)で、タイ国内操

業が難しくなりつつある軽工業・労働集約的産業のミャンマー移転を促す考えを示した。

また、タイ政府はプロジェクトについても優先順位を付けて実施していく見込み。「バンコクポスト」

紙(11月 8日)によると、タイ官邸筋の話として、発電所開発とタイ国境からダウェー港までの 132

キロの道路建設が優先プロジェクトに含まれるという。

<タイ産業界は強い関心と期待>

太平洋に面するベトナム・ホーチミンからカンボジアを抜けてタイ・バンコクに至る南部経済回廊

が、今後、タイ・カンチャナブリを抜けアンダマン海に面するダウェー深海港まで延伸されれば、イ

ンド市場や中東、欧州向けのモノの動きが劇的に変わる可能性がある。ダウェー港開発と同港へ

のアクセスに対するタイ産業界の期待は強い。実際、ジェトロが 8月に発表したメコンビジネスニ

ーズ調査では、産業界から強い期待が寄せられている。

タイの産業集積の根幹を成す自動車産業からは「インド自動車産業の成長が早いことを踏まえ

ると、インドとタイの相互補完関係の実現化の観点から、同プロジェクトの意義は非常に大きい」と

の声が上がる。また素材産業からも「港湾、アクセス道路、SEZ、貿易・輸送手続きなど必要なイン

フラが適切に整備されれば、ダウェーは理想的な立地場所になり得る」とされる。特に、マレーシ

アなどに比べてインドや中東、欧州向け輸出においてタイは輸送日数面で不利だったが、同深海

港およびタイ国内幹線道並みのアクセス道路が完成すれば、タイの産業集積地からダウェー港ま

で最短で半日で結ばれることになり、タイのサプライチェーンのインドとの本格的な融合が期待で

きる。

<ミャンマー側にダウェー開発の恩恵を示す必要>

ダウェー開発計画の推進には、ミャンマー政府とタイ政府との密接な協調・連携が不可欠になる。

現在、タイ政府が強く推進する姿勢を見せる一方、ミャンマー政府は経済改革を進行中ということ

もあり、経済法制度改革を含めさまざまな解決すべき危急の課題を抱えており、同開発に注力で

きているとは言い難い。

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ミャンマー政府を同開発計画に一層向けさせるには、同開発による恩恵を目に見えるかたちで

提示する必要があるといわれる。ヤンゴン周辺のティラワ SEZは総選挙を翌年に控えた 2014年

にも一部工場の稼働が期待でき、現政権の「経済改革の成果」と強調できる。一方、ダウェー開発

は次期総選挙には間に合わず、ティラワSEZに比べ「優先度が落ちる」との見方もある。実際に在

ミャンマー電気・電子部品製造企業も、ミャンマー産業界が同プロジェクトの恩恵を享受するため、

「ヤンゴン~ダウェー間のアクセスを改善する必要がある」と話す。タイ産業界にとって悲願の「ア

ンダマン海」進出は、まだ紆余(うよ)曲折が予想される。

(注)同委員会の下に 6小委員会を設置。a.インフラストラクチャー、b.エネルギー、c.金融、d.法令・

規則、e.工業団地開発、f.コミュニティー開発・環境。調整役はタイ側は二ワットタムロン首相府相、

ミャンマー側は工業相。

(助川成也)

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貨物・顧客集めが難航するラノーン港-マレー半島西側の港湾開発(2)- (タイ・ミャンマー)

2012年11月20日 バンコク事務所発

バンコクとラノーンの中間地点にあるシンコーン国境。これまでミャンマー人のみ通行が許され

たこの地方国境でも、ミャンマーの民主化に伴うタイ政府の期待が垣間見える。一方、インドや欧

州への「ゲートウエー化」を目指したラノーン港は、その思惑とは裏腹に、産業集積地からの距離

やコストを要因に貨物が集まらず、船舶入港数も伸び悩む。

<地方国境を近く恒久的国境に格上げ>

ラノーン港はマレー半島をバンコクから約570キロ南下するが、その中間地点プラチュアップキリ

カーン県に唯一ミャンマーと接するシンコーン国境がある。ただし、国境周辺には物流倉庫やトラ

ック積み替え場などもなく、仮にミャンマー側に抜けてもその近郊にはコンテナを取り扱える港湾

設備はない。地元住民のみが行き来している地方国境であり、入管職員によると、ミャンマー人だ

けがタイ側に入ることができるといい、現時点で外国人のみならずタイ人もこの国境を通じてミャン

マー側に行くことはできない。

タイ税関統計によると、同国境を通じた貿易額は2011年で4,165万バーツ(1バーツ=約2.63円)。

うち輸出は1,983万バーツ、輸入は2,182万バーツだった。輸出された主な品目は自動車、建設機

械、二輪車、ディーゼルオイルなど。一方、輸入は約8割が木材製品。現に国境周辺にはミャンマ

ー産木材で作られた重厚なテーブルや椅子を所狭しと陳列している店が相当数に上る。

現在、タイ政府はタイ・ミャンマー国境の増設と地方国境の格上げを検討しており、シンコーン国

境入管職員によると、早ければ2013年初めごろにも恒久的国境への格上げが実現するもよう。プ

ラチュアップキリカーン県税関事務所によると、恒久的国境に格上げされれば、これまで同県知事

宛てに出されていた事前輸出入申請・許可が不要になる。さらに、恒久的国境への移行に向けて、

第二次世界大戦時代に日本軍が造成した同国境からベイ(Myeik)までの160キロにわたる未舗装

道路の舗装・拡幅工事が進められている(注)。

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<ラノーン港の整備進むも利用伸び悩み>

ラノーン港は、タイ唯一のマレー半島西側アンダマン海に面した港湾で水深は8メートル。ラノー

ン港の対岸はミャンマー最南端の街コートーン(Kaw Thaung)だ。ラノーン港はBIMSTEC(ベンガ

ル湾多分野技術・経済協力イニシアチブ)諸国へのゲートウエーを目指し、これまで港湾までのア

クセス道路や港湾設備の整備を進めてきた。

バンコク首都圏からラノーン港までは568キロ。10月下旬にバンコク~ラノーン間をワゴン車で走

行したところ、総走行距離はバンコク中心部から602キロ、実質走行時間は7時間49分だった。首

都高速以外は一般道を走行するが、主要な市街地周辺を除き信号は少なく、休憩や給油以外は

ほぼノンストップで走行可能。バンコクからは平坦な道路が続き、その多くで片側2車線化が実現

している。これまで片側1車線だったラノーン県近郊の山間部でも、多くの部分で2車線化工事が

進められているなどアクセス道路整備が進む。

一方、港湾設備について、多目的バース(幅26メートル・長さ134メートル)には500総トン未満の

貨物船であれば同時に2隻が接岸できる。コンテナターミナル(幅30メートル・長さ150メートル)は1

万2,000GWTの貨物船が接岸可能。同ターミナルは連絡橋(幅8メートル・長さ210メートル)でコン

テナヤード(1万1,000平方メートル)とつながっている。また、同港には税関、食品医薬品局(FDA)、

商務事務所、入国管理局、植物検疫所、動物検疫所、県魚検査事務所、ラノーン港金融会計部

が常駐するワンストップサービスセンターを設置している。

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このように道路や港湾整備は進んでいるものの、それに比べて船舶入港数が伸び悩む。これは、

バンコク周辺の産業集積から遠方に位置していること、ラノーン周辺にはゴムやパームオイルな

どを除き目立った工業がないことなどから、BIMSTECのゲートウエーを目指す思惑どおりには進

んでいない。2010年度の船舶入港数は321隻だったが、12年度は210隻にとどまった(表参照)。

特にコンテナ船の入港はわずか1隻。これまでインドのGATIが不定期でポートブライア経由のチェ

ンナイ港とラノーン港を結んでいたが、コンテナ船の入港数からもその苦心ぶりがうかがえる。そ

の一方、新たな動きとして近年、ラノーン港からミャンマー向けの一般貨物船が増えているという。

(注)ベイから60キロの拡幅・補修工事は既に終了。同地点からシンコーン国境まではタイ企業が

整備中。15メートル幅の道路は主にアンダマン海からの海産物輸送に使われる。

(助川成也)

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ダウェールートで求められる通関・輸送手続きの円滑化-マレー半島西側の港湾開発(3)- (タ

イ・ミャンマー)

2012年11月21日 バンコク事務所発

ダウェー港(ミャンマー)は、ラノーン港(タイ南部)に比べバンコク首都圏から約230キロの距離

を短縮できるものの、2国間陸上輸送の不確実性は小さくはなく、あらかじめ通関手続きや積み替

えなしでの輸送など円滑化措置を検討しておく必要がある。これらがなければ、ダウェー港もラノ

ーン港同様、期待に反して貨物が集まらず、その結果、コンテナなど定期船も寄港しない事態に

なりかねない。シリーズ最終回。

<オフショア石油採掘の資材供給に注力するラノーン>

インドや欧州への「ゲートウエー化」が道半ばのラノーン港は近年、オフショア石油採掘地への

資材供給拠点の役割を強めている。現在、アンダマン海ではPTTエクスプロレーション&プロダク

ション(PTTEP)をはじめ複数社が海底油田探査と採掘を行っている。2011年度は寄港船舶の実

に半分がオフショア供給船になった。ラノーン港関係者によると、現在までにラノーン港を石油採

掘の資材供給基地としている企業は、PTTエクスプロレーション&プロダクション、トタルE&Pミャ

ンマー、ペトロナス・チャリガリ・ミャンマー(香港)、トウィンザ・オイル(アジア)、大宇インターナショ

ナル(ミャンマーE&P)の5社。

ラノーンは2011年、東西経済回廊西側ターク県メソット国境が長期間にわたり閉鎖されていたこ

ともあり、パイプラインで天然ガスを輸入するカンチャナブリ県サンクラブリ国境を除いて、ミャンマ

ーとの最大の交易拠点だった。2011年の往復貿易額は253億3,408万バーツ(1バーツ=約2.63

円)、うち233億3,117万バーツをタイからの輸出で占める一方的な輸出超過となっている。輸出品

はディーゼルオイルを筆頭に、鉄鋼および同製品、ベンジンオイルと続く。

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<ダウェー港利用には通関コスト含めたリスクも>

タイ政府が真剣に取り組み始めたダウェー開発。仮に順調に進んだとしても、プロジェクト規模

からかなりの年月を要することが見込まれる。また、ダウェー港の本格的利用には、実際の輸送

コストをベースに慎重に検討する必要がある。特に日数短縮メリットが国境通関コストを含めた総

輸送コスト上昇やリスクを上回る必要がある。

タイで唯一アンダマン海に面しているラノーン港もインドや欧州へのゲートウエーを目指している

ものの、その距離と内陸輸送コストから目標までは道半ばにとどまっている。バンコク首都圏~ラ

ノーン港間は国道4号線で568キロ(注1)である一方、同じくダウェー港間はカンチャナブリを経由

し約330キロ(注2)で、ラノーン港と比べ短縮できる距離は230キロ余り。タイ国内のみを陸上輸送

するラノーン港ルートに対し、ダウェー港ルートは2国間陸上輸送となり不確実性は決して小さいと

はいえない。

ダウェー港の物流ルート化の確立には、総輸送コストの削減に加えて、ワンストップ通関など通

関手続きの簡素化や国境でのコンテナ積み替えなどの不要化など、円滑化措置の実施や不確定

要素の削減をあらかじめ検討しておく必要があろう。これらがなければ、ダウェー港もラノーン港

同様、政府の期待や意気込みに反して貨物が集まらない事態になりかねない。

(注1)バンコク中心部からは実走距離で約600キロ。

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(注2)バンコク~カンチャナブリ間128キロ、カンチャナブリ~ミャンマー国境間70キロ、国境~ダウ

ェー間130キロで計約330キロ。

(助川成也)

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※本レポートは、ジェトロのニュースサービス「通商弘報」で2012 年11月19日から11月21日かけ

て掲載された記事をまとめております。

通商弘報では、70 ヵ所を超えるジェトロ海外事務所の駐在員から送られる国際ビジネス関連情

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日配信(土日祝祭日除く)されます。購読方法など詳細については、ジェトロのウェブサイト

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アンケート返送先 FAX: 03-3582-5309

e-mail:[email protected]

日本貿易振興機構 海外調査部 アジア大洋州課宛

● ジェトロアンケート ●

調査タイトル: マレー半島西側の港湾開発の現状と課題

ジェトロでは、マレー半島西側の港湾開発の現状と課題をお伝えすることを目的に本調査を実施

いたしました。報告書をお読みいただいた後、是非アンケートにご協力をお願い致します。今後の

調査テーマ選定などの参考にさせていただきます。

■質問1:今回、本報告書で提供させていただきました「マレー半島西側の港湾開発の現状と課

題」について、どのように思われましたでしょうか?(○をひとつ)

4:役に立った 3:まあ役に立った 2:あまり役に立たなかった 1:役に立たなかった

■ 質問2:①使用用途、②上記のように判断された理由、③その他、本報告書に関するご感想を

ご記入下さい。

■ 質問3:今後のジェトロの調査テーマについてご希望等がございましたら、ご記入願います。

■お客様の会社名等をご記入ください。(任意記入)

ご所属

□企業・団体

□個人

会社・団体名

部署名

※ご提供頂いたお客様の情報については、ジェトロ個人情報保護方針(http://www.jetro.go.jp/privacy/)に基づき、適正に管理

運用させていただきます。また、上記のアンケートにご記載いただいた内容については、ジェトロの事業活動の評価及び業務

改善、事業フォローアップのために利用いたします。

~ご協力有難うございました~