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‐平成 17 年度修士論文‐
スパッタ蒸着を用いた AlGaN/GaN HFET オーミックコンタクトの研究
徳島大学大学院工学研究科電気電子工学専攻 岩崎 聡一郎
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平成17年度 修士論文 内容梗概 電気電子工学専攻
研究題目 スパッタ蒸着を用いた AlGaN/GaN HFET オーミックコンタクトの研究
氏 名 岩崎 聡一郎
はじめに AlGaN/GaN HFET は高飽和電子速度、高破壊電圧などの性質を持ち、高周波、高耐圧、高出力デバイスとして期待
されている。AlGaN/GaN HFET の実用化に際しての問題のひとつにオーミック電極のコンタクト抵抗の低減がある。本研究はスパッタ装置、逆スパッタ機構を用い、コンタクト抵抗の低減を目指して AlGaN/GaN HFET のオーミックコンタクトと金属シート抵抗を検討した。 実験方法と結果
(1)スパッタ蒸着と逆スパッタ効果
スパッタ蒸着で得られたオーミック金属のアニール温度の最適値を求め
た。オーミック金属は Ti/Al/Ti/Au=50/200/40/100nm 蒸着し、アニール温
度は 600℃から 900℃まで窒素雰囲気で行った。コンタクト抵抗の最低値
は 850℃における 0.3Ωmm であった。基板表面酸化膜の除去のため逆スパ
ッタ機構を用いた。サンプルは A と B の 2 種類を用意し、蒸着前に Ar 雰
囲気で逆スパッタを行い、アニール後 TLM 法からコンタクト抵抗を測定し
た(図1)。コンタクト抵抗は逆スパッタを行うと増加した。逆スパッタ時
の基板に対するダメージがコンタクト抵抗の上昇の原因と考えられる。
(2)TiAl 比の依存性 オーミック電極の主構成である Ti と Al の金属構成比をスパッタ蒸着により変化させることによってコンタクト抵抗と
金属抵抗について検討した。実験に用いた金属構成比を表 1に示す。アニールは窒素雰囲気と真空で行い、オーミック金
属抵抗は4端子測定から求めた(図 2)。金属シート抵抗は400℃から 550℃の間で急に上昇し始めた。比較的高抵抗なTi3Al となって温度上昇と共に増加したと考えられる。以上の金属構成比でコンタクト抵抗の最小値はアニール温度 850℃において Ti、Al 比が 1 対 2.2 で約 0.9Ω・mm が得られ、窒素雰囲気と真空アニールの差はほぼなかった。一般に Ti の割合が少ない物はアニール後も金属アルミが残りシート抵抗が
低いがAlGaN界面酸化物と反応しないうちにアルミに取り込まれるためコンタクト抵抗は高く、Ti の割合が多い物はすべてが Ti か Ti3Al となるため金属シート抵抗は高いが、高温までAlGaN界面にTiが存在するため最終的には酸化物はTi3Alに取り込まれ、コンタクト抵抗は低くなること推定される。 まとめ スパッタ蒸着で 0.3Ωmm のコンタクト抵抗が得られた。逆スパッタ機構を用いた場合はコンタクト抵抗の上昇が生
じた。Ti と Al の組成に関して、コンタクト抵抗と金属シート抵抗の変化の仕方を較べることによりTiの挙動が推定できた。しかし、得られたコンタクト抵抗値は電子ビーム蒸
着で得られた値と大きな差は見られなかった。
【大野研究室】
図2 オーミック金属抵抗とコンタクト抵抗
の TiAl 組成依存性
表1 金属構成比
図1 コンタクト抵抗の逆スパッタパワー依存性
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
なし
25W_3min
50W_3min
100W
_3mi
nコ
ンタ
クト
抵抗
(Ω
・m
m)
サンプルA
サンプルB
T=850℃ t-30sec
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
TiAl=1
:1 窒
素雰
囲気
TiAl= 1
:1 真
空
TiAl=1
:2.22 窒
素雰
囲気
TiAl=1
:2.22 真
空
TiAl=1
:4 窒
素雰
囲気
TiAl= 1
:4 真
空
TiAl=1
:6 窒
素雰
囲気
TiAl=1
:6 真
空
コン
タク
ト抵
抗(Ω
・m
m)
0
1
2
3
4
5
6金
属シ
ート
抵抗
(Ω
/□
)
コンタクト抵抗
金属シート抵抗
T=850℃
t=30sec
Ti Al 比 Ti /Al/Ti/Au (nm)1対1 60/100/40/40
1対2.2 50/200/40/401対4 10/200/40/401対6 10/300/40/40
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目次 第1章 序論 1.1 背景 1.2 目的 第2章 スパッタによる金属蒸着 2.1 はじめに 2.2 スパッタリング現象 2.3 スパッタ装置 2.4 逆スパッタ機構 第3章 スパッタを用いた AlGaN/GaN HFET 上オーミック金属 3.1 はじめに 3.2 コンタクト抵抗 3.3 TLM 法 3.4 金属抵抗測定法 3.5 Au の膜厚比による表面状態の観察 3.6 サファイア基板上オーミック金属シート抵抗のアニール温度依存性 3.7 AlGaN/GaN HFET オーミック金属シート抵抗、コンタクト抵抗の TiAl 比依存性 3.8 スパッタに用いたオーミック金属のアニール温度依存性 3.9 考察 第4章 逆スパッタを用いた AlGaN/GaN HFET 上のオーミックコンタクト 4.1 はじめに 4.2 逆スパッタ後の表面観察 4.3 Ar 雰囲気におけるコンタクト抵抗の逆スパッタパワー依存性 4.4 考察 第5章 まとめ
1
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第1章 序論 1.1 背景 今日のエレクトロニクスの発展を支える半導体材料はシリコン Si である。Si デバイスはこの 4 半世紀の間、微細化技術の向上と共に高密度化、高速化、低出力化を同時に実現した。しかし、Siデバイスは電子飽和速度が 1.0×107(cm/s)と低く、破壊電界も 3.0×105(V/cm)と高くなく、衛星放送の受信機や携帯電話のアンプなど、高周波、高出力デバイスにはガ
リウム砒素 GaAs などのⅢ-Ⅴ族半導体材料が用いられてきた。昨今、同じくⅢ-Ⅴ族半導体材料である窒化ガリウム GaN が注目されている。GaN は青色、紫外光 LED(Light Emitting Diode)やレーザーの製品化で注目を浴び、また高周波、高出力デバイスなどの電子デバイスとして盛んに研究開発が行われている。GaN はバンドギャップが 3.4eV とワイドバンドギャップであることから高破壊耐圧であり高出力デバイスとして適しており、
また他の材料と比べて電子飽和速度が高く、高周波デバイスとしても期待することができ
る。また、Ga を Al や In に置き換えることによってヘテロエピタキシャル成長が可能であり、高電子移動殿のトランジスタ HFET(Heterostructure Field-Effect Transistor)を作製することが可能である。GaN はこのような理由から高出力、高周波デバイスとして有望な材料である。
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1.2 目的 現在、AlGaN/GaN HFET の実用化に際しての問題のひとつにオーミック電極のコンタ
クト抵抗の低減がある。オーミック電極のコンタクト抵抗が大きい場合はデバイスの ON時の抵抗が増加し、また相互コンダクタンス Gm 最大ドレイン電流 IdMAXの減少などの原因となりデバイス特性の劣化を引き起こす。コンタクト抵抗の低減の方法は AlGaN 層へのドーピングによる空乏層幅の薄層化やオーミック金属の変更などが考えられる。しかし、GaNへのドーピングは 1018~1019(cm-3)が限界であり、イオン注入などの選択的に高ドーピングが困難である。金属材料の変更は半導体の電子親和力に近い金属を用いることになるが、
金属材料の種類に依存するため低抵抗化には限界がある。そこで本研究では、スパッタ装
置、逆スパッタ機構を用いてコンタクト抵抗の低減を狙い、またオーミック金属の主構成
比である Ti、Al の比を変更させてオーミックコンタクトとの関係を検討し、電極最上層のAu の膜厚比を変化させることによって表面の状態を観察した。 逆スパッタとは基板側の表面をスパッタし、AlGaN/GaN の表面に存在する絶縁膜を取り
除きコンタクト抵抗の低下を期待している。 Ti、Al のオーミック金属構成図を示す(図 1.1)。最下層の Ti は AlGaN 表面絶縁膜の除
去や窒素空孔の発生の役割を持っていて、2 層目の Al はオーミック金属の主体である。3層目の Ti は 2 層目の Al と 4 層目の Au と混合を防ぎ Al の表面への露出を阻止する。Auの働きはその安定な性質から酸化防止である。そこで、スパッタ装置を用いたオーミック
金属の最下層のTiとAlの金属構成比を変化させることによって金属シート抵抗やコンタクト抵抗の関係を検討した。
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Ti
Au
Ti
Al
AlGaN/GaN 基板
図 1.1 オーミック金属の構造
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第 2 章 スパッタによる金属蒸着 2.1 はじめに この章ではスパッタリング現象やスパッタ装置、逆スパッタについて説明する。 2.2 スパッタリング現象 スパッタリングは、プラズマ内のイオンをターゲットに入射させたとき、ターゲットの原
子が外へはじき出される現象である。この現象の模式図を図 2.1 に示す。また、今回使用
するスパッタ装置はマグネトロンスパッタ方式を用いた装置である。マグネトロン方式を
用いることにより、10-3(Torr)以下の低い圧力でも安定なプラズマを作ることが可能となる。
図 2.1 スパッタリング現象模式図
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2.3 スパッタ装置 スパッタ装置のおおよその構成を図 2.2 に示す。スパッタ装置は静止対向型でマグネトロンを搭載している3基の電源を持ち、3個のターゲットを装着できる。電源の種類は DC電源 2 基、MAX パワー300W であり、RF 電源は 1 基、MAX パワー200W である。また、逆スパッタ機構を有しているが逆スパッタについては次節の 2.4 節で説明する。前室と成膜室が別れているロードロック方式であり、成膜室は常に真空の状態に保たれているので前
室の真空引き後すぐに蒸着が始められる。
成膜室
基板
S SN
ターゲット
前室
排気
冷却水
ガス
図 2.2 スパッタ装置概要
5
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2.4 逆スパッタ機構 逆スパッタ機構について説明する(図 2.3)。逆スパッタとは言葉の通り、スパッタの逆で基板をイオンを用いてスパッタし、エッチングすることである(図 2.4)。おもな利用法は表面の酸化膜の除去などである。MAX パワーは 200W であり、雰囲気は Ar や N2などが使用可能である。
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マッチング
回路
高周波電源
13.56MHz サンプル
AlGaN/GaN 基板 表面酸化膜
図 2.3 逆スパッタ機構
図 2.4 逆スパッタ現象模式
イオン
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第3章スパッタを用いた AlGaN/GaN HFET 上オーミック金属 3.1 はじめに 本章ではAlGaN/GaN HFET上に形成されるオーミック金属について検証した。今回、AlGaN/GaN HFET 上にスパッタ装置を用いて初めてオーミック金属を蒸着することになった。まず最上部の金の膜厚について検討した。サファイア上に Ti と Al の割合を変化させたオーミック金属抵抗のアニール温度依存性やアニール雰囲気別のアニール温度依存性
について調査した。そこで得られたデータから AlGaN/GaN HFET 上にオーミック金属を蒸着し、オーミック金属のシート抵抗、AlGaN/GaN HFET のシート抵抗、コンタクト抵抗のアニール温度依存性、雰囲気依存性について測定した。EB 装置を用いて Ti/Al/Ti/Au構造のオーミック金属を蒸着した場合、アニール温度の最適値は 850 度であり、先に得られた最適な膜厚比でスパッタを用いて蒸着した場合のオーミック金属のアニール温度依存
性最適値を検証した。
7
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3.2 コンタクト抵抗 電極と半導体の界面について電極の幅 W を考えず2次元モデルとして考えると、図 3-2-1
のようになる。 金属
半導体
図 3-2-1 電極モデル 電極の横方向、長さの微小区間を取り出したものを図 3-2-2 とする。電極の長さを x とし
て電極の単位面積あたりのコンタクト抵抗 ρ c(Ωcm2)、半導体のシート抵抗と Rs とする。
図 3-2-2 微小区間モデル I
dI
Rs
V(x) V(x)+dV
図から考えると以下の式が成り立つ。
c
xVdxdI
ρ)(
= ・・・(1)
RsIdxdV
⋅= ・・・(2)
式(1)を微分して
dxxdV
dxId
c
)(12
2
⋅=ρ
・・・(3)
式(3)に式(2)を代入して
IRsdx
Id
cρ=2
2
・・・(4)
となる。ここで xAeI α= ・・・(5)
と置き、式(5)を 2 回微分して
IAedx
Id x 222
2
αα α == ・・・(6)
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-
式(4)と式(6)より
c
Rsρ
α = ・・・(7)
となる。 xx BeAexV αα += −)( ・・・(8)
x=-∞の時、V(x)=0、x=0 の時、V(x)=V0より A=0、B=V0
xeVxV α0)( = ・・・(9)
式(9)を式(1)に代入して、
x
c
eVdxdI α
ρ 01
= ・・・(11)
積分して
αρ
α
c
xeVxI 0)( = ・・・(12)
式(9)と式(12)より抵抗 R を求めると
Rs
Rs
eV
eVxIxVR
c
cc
c
x
c
x
ρ
ρρ
αραρ
α
α
=
=
=
==
0
0
1)()(
・・・(13)
となり、この抵抗 R はコンタクト抵抗(Ωmm)と呼ばれる。 コンタクト抵抗は式(13)のような関係を示し、シート抵抗のルートに比例する。シー
ト抵抗が大きい場合はコンタクト抵抗が上昇することが分かる。
9
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3.3 TLM 法 コンタクト抵抗の測定方法は TLM 法(Transmission Line model)を用いた。TLM 法は薄膜状サンプルのコンタクト抵抗を評価するのに用いられる最もポピュラーな測定方法と
して Shockley によって考案された。TLM 法は、半導体のシート抵抗と電極と半導体間のコンタクト抵抗を測定できる方法である。オーミック電極間の距離を変化させ、抵抗を測
定する。抵抗値は電極距離 L に比例し、電極幅 W に反比例する。したがって測定される抵抗は以下のように表される。
WR
WLR
R CS2
+= (1)
ここで R=抵抗(Ω) L=電極間の距離(mm) W=電極幅(mm) Rs=シート抵抗(Ω/□)Rc=コンタクト抵抗(Ω・mm)とする。
式(1)より、X 軸を電極間距離、Y 軸を抵抗値としてグラフを書くと、その傾きからシート抵抗 Rs 、Y 軸切片からコンタクト抵抗 Rc を求めることができる。測定に用いた TLMパターンを図 3-3-1 に示す
電極間距離:L
電極幅:
W=100um 5um 10um 15um 20um 25um
図 3-3-1 TLM パターン
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3.4 金属測定法 金属の抵抗は 4 端子測定を行い、図 3-4-1 のパターンを用いて測定した。電極幅 w(μm)をそれぞれ変更した抵抗 R(Ω)を測定した。電極幅は幅の誤差が大きく影響するので補正を行う。横軸を電極幅 w、縦軸を抵抗 R の逆数とし、得られた値を 1 次関数に近似した。(図 3-4-2)得られた式と x 軸の交点との x 座標を⊿wとし⊿w を補正電極幅とする。電極長 L と補正された電極幅を W として、金属のシート抵抗 Rms(Ω/□)を求めると式(2)となる。
(2) / LRWRms = 電極幅:w
100μm 電極長:L
R1
baxy
w
−=
⊿w
図 3-4-1 測定パターン
図 3-4-2 電極幅補正式
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3.5 Au の膜厚比による表面状態の観察 AlGaN/GaN 基板上のオーミック金属 Ti/Al/Ti/Au 構造の最上部 Au の膜厚比を 40nm、60nm、80nm、100nm と変化させ、アニール前とアニール後の表面状態を観察した。Au以外の構造は共通で Ti/Al/Ti/=50/200/40nm を蒸着した。図 3-5-1 に示すプロセスフローに従い、クリーニング、リソグラフィー、スパッタ金属蒸着を行い、リフトオフ法を用いて
パターニングを行った。アニールは RTA 装置を用い、850℃、N2 雰囲気で 30 秒間行った。アニール前とアニール後の Au の量を変化させたサンプルの表面状態を図 3-5-2 から図3-5-6 に示す。ここではアニール前の写真はすべてのサンプルにおいて同じ状態を示したので省略した。
クリーニング アセトン、メタノール、純水
スパッタ蒸着 Ti/Al/Ti/Au (50nm/200nm/40nm/40~100nm)
リフトオフ
RTA装置 850℃ 30sec N2雰囲気 アニール
図3-5-1 プロセスフロー
12
-
図 3-5-2 アニール前
図 3-5-3 Au 400Å
13
-
図 3-5-4 Au 600
図 3-5-5 Au 800Å
14
-
図 3-5-6 Au 1000 図 3-5-2 から図 3-5-6 まで考察をすると Au の膜厚が増えると表面状態が凹凸や粒状の塊が大きくなるが分かる。Au の融点は高いが、Au と Al の合金状態図(図 3-5-7)から見るとアニール温度の 850℃では Al が液状化しており、Au と Al が合金化していることが分かるの。Au の量が増えると表面の凹凸や粒状の塊が増えたと推察できる。
図 3-5-7 Al-Au 合金状態図
15
-
3.6 サファイア基板上オーミック金属シート抵抗のアニール温度依存性 サファイア上にオーミック金属と同じ金属構成比をスパッタ蒸着して、アニール温度依
存性や雰囲気依存性について調査した。金属構成比を表1に示す。アニールの雰囲気は窒
素、Ar、真空とし、アニール温度は 250℃から50℃ずつ 900℃まで 30 秒行った。図 3-6-1にプロセスフローを示す。図 3-6-2 に金属シート抵抗のアニール雰囲気、温度依存性を示す。 サンプルカット
クリーニング
リソグラフィー
スパッタ蒸着
アニール
図 3-6-1 プロセスフロー
塩酸処理:純水=1:1 表1
Ti /Al/Ti/Au (nm) Ti Al 比 アニール雰囲気60/100/40/40 1対1 窒素10/200/40/40 1対4 窒素10/200/40/40 1対4 真空10/200/40/40 1対4 アルゴン10/300/40/40 1対6 窒素
15
-
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
850
900
アニール温度(℃)
シー
ト抵
抗(Ω
/□
)
TiAl=1:1
TiAl=1:4窒素雰囲気
TiAl=1:4真空
TiAl=1:4Ar雰囲気
TiAl=1:6
図 3-6-2 金属シート抵抗のアニール雰囲気、温度依存性 Ti,Al 比が 1 対 4 において金属シート抵抗は窒素、Ar 雰囲気において 450℃から 500℃において急に上昇し、真空では 500℃から 550℃の間で急上昇した。これは金属が側面から合金が起こっていることから考えると真空においては熱伝導の違いが発生しているものと考
えられる。いったん急上昇をした後はほとんど金属シート抵抗は変わらないか、徐々に上
昇していき、850℃付近で更に上昇し、約2(Ω/□)まで上昇した。Ti、Al 比が 1 対 1 のものは 350℃から 400℃において急上昇し、その後も上昇しつづけ最終的には9(Ω/□)まで上昇した。比較的高抵抗な TiAl3 が多く存在していると考えられる。TiAl 比が 1 対 6の物は Al が支配的な合金化が起こり、また Al がそのままの金属で存在しているため低抵抗であると考えられる。
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3.7 AlGaN/GaN HFET オーミック金属シート抵抗、コンタクト抵抗の TiAl 比依存性 オーミック電極の主構成であるTiとAlの金属構成比をスパッタ蒸着により変化させることによってコンタクト抵抗と金属抵抗について検討した。図 3-7-1 にエピ構造を示す。図3-7-2 にプロセスフローを示す。また実験に用いた金属構成比を表 2 に示す。オーミック金属抵抗は4端子測定から求め、コンタクト抵抗は TLM 法から求めた。アニールは所定の温度で 30 秒づつ、雰囲気は窒素雰囲気と真空で行った。図 3-7-3 にオーミック金属シート抵抗アニール温度依存性を示す。図 3-7-4 にオーミック金属コンタクト抵抗アニール温度依存性を示す。 アセトン、メタノール、純水 クリーニング
図 3.4 エピ構造
AlGaN 24nm
GaN 3μm
Sapphire Substrate
アイソレーション ICP SiCl4 Cl2 700Å
スパッタ蒸着 Ar 雰囲気
アニール
リフトオフ
図 3-7-1 エピ構造
図 3-7-2 プロセスフロー
Ti Al 比 Ti /Al/Ti/Au (nm)1対1 60/100/40/40
1対2.2 50/200/40/401対4 10/200/40/401対6 10/300/40/40
表 2 TiAl 比
17
-
0
1
2
3
4
5
6
7
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
アニール温度(℃)
シー
ト抵
抗(Ω
/□
)
TiAl=1:4 窒素雰囲気
TiAl=1:4真空
TiAl=1:6 窒素雰囲気
TiAl=1:6真空
TiAl=1:1 窒素雰囲気
TiAl=1:1真空
TiAl=1:2.22 窒素雰囲気
TiAl=1:2.22真空
図 3-7-3 オーミック金属シート抵抗アニール温度依存性 図 3-7-4 オーミック金属シート抵抗アニール温度依存性
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
500 550 650 750 800 850
アニール温度(℃)
コン
タク
ト抵
抗(Ω
・m
m)
TiAl=1:4
窒素雰囲気
TiAl=1:4
真空
TiAl=1:6
窒素雰囲気
TiAl=1:6
真空
TiAl=1:1
窒素雰囲気
TiAl=1:1
真空
TiAl=1:2.22
窒素雰囲気
TiAl=1:2.22
真空
18
-
金属シート抵抗は 400℃から 500℃の間で上昇を始めた。Ti、Al 比が 1 対4、1 対 6 の物は窒素雰囲気においては 400℃から上昇を始め、真空アニールにおいては 450℃から上昇し始めた。Ti、Al 比 1 対 2.2 のものは 500℃から上昇を始め、緩やかに上昇をしていった。コンタクト抵抗は TiAl 比 1 対 2.2 の物が最小値 0.7(Ω・mm)であった。図 3-7-5 から考えると、Ti の割合が少ない物はアニール後も金属アルミニウムが残りシート抵抗が低いがAlGaN 界面酸化物と反応しないうちにアルミに取り込まれるためコンタクト抵抗は高く、Ti の割合が多い物はすべてが Ti か TiAl3 となるため金属シート抵抗は高いが、高温までAlGaN 界面に Ti が存在するため最終的には酸化物は TiAl3に取り込まれ、コンタクト抵抗は低くなること推定される。
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TiAl=1対6
TiAl=1対4
TiAl=1対1 TiAl=1対2.2
TiAl3
図 3-7-5 TiAl 金属状態図
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3.8 スパッタを用いたオーミック金属のアニール温度依存性 先に得られたコンタクト抵抗の最低値の金属比から、オーミック金属のコンタクト抵抗
のアニール温度依存性を検証し、アニール温度の最適値を検証した。基板は AlGaN/GaN HFET を使用し、図 3-8-1 に基板構造を示し、プロセスフローを図 3-8-2 に示す。オーミック金属の割合は通常のプロセスの場合より Au が 600Å厚く形成した。
ud-AlGaN 6nm
n-AlGaN 12nm
GaN 3.4μm
Sapphire Substrate
ud-AlGaN 6nm
n-AlGaN:Si 4×1018/cm3 図 3-8-1 エピ構造
クリーニング
RTA装置 650℃から950℃30sec N2雰囲気
アイソレーション
Ti/Al/Ti/Au (50nm/200nm/40nm/100nm)
リフトオフ
アセトン、メタノール、純水
スパッタ蒸着
RIE BCl3 500Å
アニール
図 3-8-2 プロセスフロー
19
-
図 3-8-3 に AlGaN/GaN HFET のシート抵抗のアニール温度依存性を示す。図 3-8-4 にAlGaN/GaN HFET のコンタクト抵抗のアニール温度依存性を示す。
350370
390410
430450470
490510
530550
750℃ 800℃ 850℃ 900℃ 950℃
シー
ト抵
抗(R/□
)
シート抵抗
20
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
750℃ 800℃ 850℃ 900℃ 950℃
コン
タク
ト抵
抗(Ω
・m
m)
コンタクト抵抗
図 3-8-3 AlGaN/GaN HFET シート抵抗のアニール温度依存性
図 3-8-4 AlGaN/GaN HFET コンタクト抵抗のアニール温度依存性
AlGaN/GaN シート抵抗はあまり変化がなく、コンタクト抵抗はアニール温度 850℃
において 0.3(Ω・mm)が得られ、電子線蒸着と同じアニール温度となった。
-
3.8 考察 スパッタ蒸着で得られたオーミックコンタクト抵抗はアニール温度 850℃で最低であった。AlGaN/GaN HFET 上でのオーミック金属でコンタクト抵抗において窒素雰囲気と真空アニールの差は見られなかった。金属シート抵抗とコンタクト抵抗の関係は金属シート
抵抗が低くなるとコンタクト抵抗が大きかった。これは Al の量が多いため、金属シート抵抗は下がったが、十分な Ti 量ではなく表面酸化膜を除去するまえに Al と合金化してしまったものと考えられる。Ti の割合が多い物は Ti か TiAl3となるため金属シート抵抗は高いが高温まで AlGaN 界面に Ti が存在するので表面の酸化膜が酸化物となって金属側に取り込まれ、コンタクト抵抗が低下につながったと考えられる。オーミック金属における Au の膜厚の検討は 40nm が最も表面状態が良かった。Au の量が増えるにつれて下部の Al などと合金化してしまう事が分かった。
21
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第4章 逆スパッタを用いた AlGaN/GaN HFET 上のオーミックコンタクト 4.1 はじめに 2章で紹介したスパッタ装置には逆スパッタ機構が備え付けられている。逆スパッタと
は言葉の通り、スパッタの逆で基板側をスパッタエッチングすることである。本章では、
逆スパッタを用いて AlGaN/GaN HFET の表面酸化膜の除去し、コンタクト抵抗の低下を目的とした。AlGaN/GaN HFET を逆スパッタ例は他に見られず、パワーに対するエッチングレートなど不明な点が多い。そこでまず、AlGaN 基板上に逆スパッタを行い、表面やエッチングの深さを観察した。次にオーミック金属蒸着前に逆スパッタを行い、コンタ
クト抵抗の変化を見た。 4.2 逆スパッタ後の表面観察 まず、逆スパッタのエッチングの効果を確認するため、AlGaN/GaN HFET 基板に逆スパッタを行った後顕微鏡や SEM で確認を行った。プロセスフローを図 4.1 に使用するエピ構造図 4.2 を示す。
逆スパッタ Ar雰囲気
クリーニング アセトン、メタノール、純水
リソグラフィー
クリーニング アセトン、メタノール、純水
ud-AlGaN 3nm
Sapphire Substrate
GaN 2μm
n-AlGaN 20nm
ud-AlGaN 5nm n-AlGaN:Si 2×1018/cm3
図 4.2 エピ構造 図 4.1 プロセスフロー
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逆スパッタの雰囲気は Ar を用い、逆スパッタパワー150W を 30 分、60 分、200W を 30分、60 分それぞれ行った。エッチング後の図 4.3 から図 4.6 まで基板表面の写真を示す。
100μm
図 4.3 150W 30 分
100μm
図 4.4 150W 60 分
23
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100μm 図 4.5 200W 30 分
100μm
図 4.6 200W 60 分
24
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エッチング後の図 4.3から図 4.6をみると基板表面がエッチングされていることが目視で確認された。そこでデクタクでその段差を測定したところ、約 10nm から 20nm の段差を確認できた。しかし、基板の表面が荒れており、平坦ではなくことからデクタクの測定法
において正確な測定はできなかった。次にもっともエッチングされていた逆スパッタ
200W60 分の基板エッチング面を SEM で観察した。基板表面には、Au20nm スパッタ蒸着した。図 4.7に SEM を用いて得られた写真を示す。
図 4.7 SEM で観察した断面図 SEM でみた断面図は明確には見えなかったがエッチングされていることは確認された
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4.3 Ar 雰囲気におけるコンタクト抵抗の逆スパッタパワー依存性 オーミック金属蒸着前に逆スパッタのパワーをそれぞれ変化させ、コンタクト抵抗の変
化を測定した。サンプルは 2 種類を用い、サンプル A は 25W3min、50W3min、サンプルB は 100W10min 逆スパッタを行ったのちにオーミック金属を蒸着した。図 4.8 にプロセスフロー、図 4.9 にエピ構造を示す。AlGaN/GaN HFET のシート抵抗とコンタクト抵抗はTLM 法から求めた。図 4.10 に逆スパッタを行った AlGaN/GaN HFET のシート抵抗を示す。図 4.11 に AlGaN/GaN HFET の逆スパッタ依存性を示す。 クリーニング アイソレーション
Ti/Al/Ti/Au (50nm/200nm/40nm/40nm)
逆スパッタ
RTA装置 850℃30sec N2雰囲気
リフトオフ
アセトン、メタノール、純水
スパッタ蒸着
RIE BCl3 500Å
Ar 雰囲気
アニール
図 4.8 プロセスフロー
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ud-AlGaN 6nm
n-AlGaN 12nm
GaN 3.4μ
m
Sapphire Substrate
ud-AlG
n-AlGaN:Si 4
aN 6nm
×1018/cm3
ud-AlGaN 10nm
n-AlGaN 15nm
GaN 2μm
Sapphire Substrate
ud-AlGaN 3nm
n-AlGaN:Si 2×1018/cm3
サンプル A サンプル
B
図 4.9 エピ構造
27
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430
440
450
460
470
480
490
500
なし
25W_3min
50W_3min
100W
_3min
シー
ト抵
抗(Ω
/□
) A
B
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
なし
25W_3min
50W_3min
100W
_3min
コン
タク
ト抵
抗(Ω
・m
m)
A
B
図 4.10 AlGaN/GaN HFET シート抵抗逆(スパッタ後)
図 4.11 AlGaN/GaN HFET コンタクト抵抗逆スパッタ依存性
28
-
29
図 4.10 からみると AlGaN/GaN HFET のシート抵抗はほぼ変化は見られなかった。図4.11 からコンタクト抵抗の逆スパッタ依存性を見ると各サンプルとも逆スパッタなしとありを比較すると逆スパッタありのコンタクト抵抗の上昇が見ら、最大で約 0.9Ω/□の上昇が確認された。コンタクト抵抗の上昇の原因として考えられることは、逆スパッタされた物
質が膜に堆積、基板に対するダメージなどが考えられる。基板に対するダメージは基板の
結晶性の悪化や逆スパッタ時の Ar ガスが基板に入り込んでいる可能性が考えられる。逆スパッタの雰囲気の Ar ガスからの変更、金属蒸着後のアニール雰囲気の検討や温度の検討が考えられる。 4.4 考察 逆スパッタのエッチングの効果を確認した。逆スパッタを用いてコンタクト抵抗の低下
を目指したが、逆スパッタすることによって逆にコンタクト抵抗は上昇した。コンタクト
抵抗の上昇の原因として考えられることは、逆スパッタされた物質が膜に堆積、基板に対
するダメージなどが考えられる。基板に対するダメージは基板の結晶性の悪化、AlGaN の結晶配列の悪化や逆スパッタ時のArガスが基板に入り込んで影響を及ぼしていると考えられる。今後の課題としては逆スパッタの雰囲気の変更やアニールの改善が考えられる。
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第5章 まとめ スパッタ蒸着で 0.3Ω・mm のコンタクト抵抗が得られた。Ti と Al の組成を変化させたことによって金属シート抵抗とコンタクト抵抗の変化の仕方が分かった。そこから比べる
と Ti の挙動がコンタクト抵抗の低減には非常に重要な働きをしている事が分かり、Ti の挙動を推定できた。Au の膜厚は薄いほど表面状態は良く、40nm の厚さが最も良い表面状態であった。逆スパッタ機構を用いた場合はコンタクト抵抗の上昇が生じた。本研究で得ら
れたコンタクト抵抗値は一般の電子ビーム蒸着で得られた値と大きな差は見られなかった。
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本研究を進めるにあたり終始懇切なる御指導を賜りました徳島大学工学部電気電子工学
科 大野泰夫 教授に深く心より感謝いたします。 本研究を進めるにあたり終始懇切なる御指導を賜りました徳島大学工学部電気電子工学
科 敖金平 助手に深く心より感謝いたします。 本研究を進めるにあたり親切なる指導を頂いた 電気電子工学科 酒井志郎 教授 並びに富永喜久雄 助教授、直井美貴 助教授、西野克志 助教授、川上烈生 助手に心より感謝いたします。 本研究を進めるにあたり装置の取り扱いなど指導を頂いた文部科学技官 稲岡 武氏 桑原 明伸氏、山中 卓也氏に心より感謝いたします。 実験の指導、貴重なアドバイス、装置の取り扱いなどの指導を頂いた大野研究室 菊田大悟氏、岡田政也氏、高木亮平氏、をはじめ大野研究室、酒井研究室、富永研究室の
皆様に心より感謝いたします。
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