レオロジーを利用した当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位...

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北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 山口 政之 教授 北陸先端科学技術大学院大学 研究者レポート ジャイスター �� 科学技術のフロンティアを拓く レオロジーを利用した 新しいポリマー材料の創製

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Page 1: レオロジーを利用した当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位 置づけ、新しくそして即社会に役立つ材料やコン セプトの発信を目標に、企業との共同研究を積極

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国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学〒923-1292 石川県能美市旭台1-1  http://www.jaist.ac.jp

先端科学技術研究調査センターTEL:0761-51-1070 FAX:0761-51-1427E-mail:[email protected]アドレス:http://www.jaist.ac.jp/ricenter/index.html

学術協力課 連携推進室 産学連携係TEL:0761-51-1906 FAX:0761-51-1427E-mail:[email protected]

産学連携に関する

お問い合せ

マテリアルサイエンス研究科棟 II 5F TEL/0761-51-1621 FAX/0761-51-1625http://www.jaist.ac.jp/ms/labs/yamaguchi/  E-mail : [email protected]山口 政之

2009年3月発行

北陸先端科学技術大学院大学

マテリアルサイエンス研究科

山口 政之教授

北陸先端科学技術大学院大学 研究者レポート ジャイスター

使用装置 応力ー光学同時測定装置、引張ー衝撃同時測定装置、二軸伸長粘度計、毛管粘度計、多波長型位相差測定装置

キーワード レオロジー、伸長粘度、モレキュラーコンポジット、機能性高分子、高性能高分子、樹脂添加剤、低環境負荷材料、 バイオマス系高分子、 自己修復材料、エネルギー吸収材料、光学フィルム、複屈折制御、CNT複合材料

������������������主 な 研 究 テ ー マ

北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 山口 政之 教授 ● ● ●

図1 PLA中に分散した極細繊維の電子顕微鏡写真 これらのナノファイバーが耐熱性などを向上

図2 核剤を添加した押出シートの引裂き特性 PPよりも優れた強度を示し、かつ、流れ方向に高い引裂き 強度を示すという異常な力学的異方性を示す

図3 スクリュー構成と押出特性の関係 長鎖分岐ポリマーではスクリュー構成を変えるだけで、押出物の外観や溶融延伸に必要な 力(ドローダウン力)を制御することが可能。なお、分子切断や架橋などは生じていない。

������ レオロジーとは物質の流れや変形を取り扱う学問であり、ポリマーの分子・材料設計、特性解析、成形加工の予測・改良などには必要不可欠な情報を与えてくれます。当研究室では、レオロジー特性に基づいた知見を活用することで、ポリマー材料の設計から製造までの幅広い領域に対応した研究活動を行っています。また、実際に役立つ研究を行うために、企業との共同研究を積極的に進めています。企業研究に関して見識を深めたい方、ポリマー材料の研究開発に興味をお持ちの方は、是非、当研究室を訪問してください。私自身、企業での研究経験が15年ありますので、即戦力となるように研究・教育を実施するよう努めております。なお、これまでの専門はまったく問いません。 2005年に開設して以来、幸い明るい学生に多く恵まれ、楽しい雰囲気で研究活動を行っています。是非、先輩とも話をしてください。(メンバー:スタッフ/2名、D3/1名、D2/2名、D1/3名、M2/5名、M1/5名、研究生/3名、2009年3月現在)

1. 環境に優しい次世代型ポリマーの研究開発 ポリ乳酸のように植物を原料とするバイオマス系プラスチック(グリーンプラスチック)では、製造から焼却に至るまでの材料寿命の中で大気中に放出する全二酸化炭素量と、原料の植物が吸収した二酸化炭素量は本質的に同じであり環境に優しい材料となります。最近では、環境問題に対する意識の向上を背景に、次世代のプラスチックとして化石原料由来の材料から急速に代替が進められています。我々は、化石原料系ポリマーで培ってきた知見を応用し、バイオマス系プラスチックの高性能化を目指すと共に各々のバイオマス系プラスチックの特長を最大限に活かした機能性材料の創製にも取り組んでいます。さらに、PETやPPなどのマテリアル・リサイクルにも積極的に取り組むことで、環境負荷を低減する新しい材料設計・プロセス提案を行っています。

2. ポリマー材料の高性能化および高機能化研究 分子・材料設計を行う研究テーマであり、新規ポリマーや既存のポリマーを対象とし、従来までの概念を越えた高性能材料、さらには、特殊な機能を示すポリマー系材料の創製について提案を行っています。また、新しいコンセプトに基づいた研究テーマを推進することで、自動車、電気・電子材料、光学・ディスプレイ材料、機能性繊維などに代表されるような日本の強い技術分野を中心としてさまざまな用途への応用展開を図っています。

3. 成形加工技術の深化・構築 高分子材料のもっとも大きな特徴である“からみ合い相互作用”を取り扱うレオロジーは、成形加工分野では極めて重要な学問領域になります。そのため、企業ではレオロジスト(レオロジーの研究者)が研究開発における中心的な役割を担うことが期待されています。我々は、高分子材料の成形加工性および最終製品の諸特性まで意識して研究を進めることで、分子・材料設計へフィードバックできるようさまざまな検討を実施しています。

+核剤

0.4

0.3

0.2

0.1

0

Tear Strength(mN)

PP

MDTD

スクリュー構成 押出物の外観押出物のdrawdownforce

58mN

82mN

異形押出(高吐出が可能)

ブロー、発泡(高延伸が可能)

科学技術のフロンティアを拓く

レオ ロ ジ ー を 利 用した新しいポリマー材料の創製

Page 2: レオロジーを利用した当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位 置づけ、新しくそして即社会に役立つ材料やコン セプトの発信を目標に、企業との共同研究を積極

当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位置づけ、新しくそして即社会に役立つ材料やコンセプトの発信を目標に、企業との共同研究を積極的に進めています。今後は地元企業や環境関連の企業とのコラボレーションを期待しています。(談)

レオロジーを利用した新しいポリマー材料の創製コンセプトは“役に立つ研究”。レオロジーや成形加工に携わった企業時代の経験、技術、知識を基に大学と産業界を結ぶ、実践的な研究活動を展開する。

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北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 山口 政之 教授 ● ● ●

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北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科

教授 山口 政之��������� ������������������

<学位>京都大学工学修士(1989)京都大学工学博士(1999)

<職歴> 東ソー株式会社四日市研究所研究員(1989)北陸先端科学技術大学院大学受託研究員(1995-1996)東ソー株式会社四日市研究所主任研究員(1999)Polymer Processing Institute,Visiting Scientist(2000-2002)大阪市立大学工学部非常勤講師(2002-2007)北陸先端科学技術大学院大学助教授(2005-2007)北陸先端科学技術大学院大学准教授(2007-2009)北陸先端科学技術大学院大学教授(2009-)

<専門分野> 高分子レオロジー、高分子物性、高分子複合材料の構造制御、高分子成形加工、ポリマーブレンド・アロイ・コンポジット

実学として広範な産業分野に役立つレオロジーレオロジー(Rheology)とは物質の変形と流動を取り扱う学問である。学問としての歴史は古くはないが、プラスチックの登場と応用とともに成熟し、現在世界中で研究が行われている。JAISTマテリアルサイエンス研究科でレオロジーを標榜するのが山口政之教授である。JAISTに着任する以前は、化学メーカーの研究員として、パソコン内部に用いられる衝撃吸収材やリサイクルできるゴムなど、レオロジー制御による材料設計と成形加工の研究開発に携わった。15年間の企業時代に得た市場のニーズへの鋭敏な感覚と人的ネットワークが、研究室の大きな強みとなっている。現在実学として役立っているレオロジーの研究対象は幅広く、プラスチックやゴムをはじめ、繊維、塗料、パルプ、油脂、接着剤、食品、薬品などが例に挙がる。これらの物質が示す複雑な力学挙動を分子論的、構造論的に解明し、その成果を技術の革新や製品の改善に役立てていくことがレオロジー研究の目的である。彼が焦点を当て

ているのが後者の研究スタイルであり、「環境に優しい次世代型ポリマーの研究開発」「ポリマー材料の高性能化および高機能化研究」「成形加工技術の深化・構築」という三本の柱のもと、ポリマー材料の設計から製造まで、さまざまなテーマを設定している。

環境を意識した材料開発を展開研究室の具体的なテーマをいくつか紹介する。「環境に優しい次世代型ポリマーの研究開発」では、まずポリ乳酸の高性能化に取り組んでいる。ポリ乳酸はバイオマスから製造されるプラスチックであり、今後使用量増大が予想されているものの、熱に弱い、もろい、成形しづらいなどの問題を抱えている。彼はレオロジー特性をナノオーダーで制御することにより、高剛性、高耐熱性を付与した複合材料を設計したり、形状記憶効果を発現させることに成功している。窒素化合物を無害な窒素に分解する植物製プラスチックの成形技術の開発も手がけており、水質・土壌浄化の事業を行う企業等から大きな期待が寄せられている。またテレビなどの液晶ディスプレイに欠かせな

い「位相差フィルム」を、セルロースを原料にして溶媒を用いない押出成形で製造する技術の開発にも成功している。現在のフィルムは二枚重ねて使う必要があるが、新技術では一枚で使用可能となり、さらなる薄型化と製造コストの削減が可能になるという。今後はフィルムの製造ラインの確立に向け「国内の企業と積極的に協力したい」と彼は語る。プラスチックのリサイクルという面では、リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)の成形加工性を改善する技術を開発している。現状、リサイクルPETは粘度が低く再成形が難しいことから繊維製品などに用途が限定されている。彼の技術は、日々 大量に回収されている使用済ペットボトルの有効的なリサイクルの道を拓くものである。またPETと並ぶ代表的なプラスチック材料であるPP(ポリプロピレン)のリサイクルについては、従来課題となっていた透明性の確保について、その向上技術を提案している。

ポリマー材料の設計から製造までをカバー「ポリマー材料の高性能化および高機能化研究」では、カーボンナノチューブ(CNT)との複合化と高機能化の研究を行っている。CNTは理想的なナノデバイス材料とされるが、実用化を阻む大きな要因のひとつが非常に高価であるという点である。彼はすでにごく少量添加したCNTを樹脂表面に局在化させる技術を構築してお

り、電気・電子、ディスプレイ、自動車用部材など広範な分野に対してCNT実用化の可能性を示している。同様に広く産業界にインパクトを与えたのが、傷を受けたり物理的に完全に切断されたりしても、破断・切断面を接合し、再び元の形状に戻る自己修復性高分子材料の開発である。従来までに提案されている方法とは全く異なる原理で修復するもので、塗料、壁材、各種表皮材として、さらにはインテリジェントマテリアルとして生体機能材料への応用展開が期待されている。

「成形加工技術の深化・構築」は、ものづくりの現場に密着した研究テーマである。研究室では、一般的な成形加工装置はもちろん、企業からのアドバイスを活かしてオリジナルで製作した引張・衝撃同時測定装置、わずか8g程度のサンプルでフィルム・シート成形に必要な情報を得ることができるように計装化した毛管粘度計等の特殊な装置を揃えている。新しい分子や材料を設計する際に大きな力を発揮するレオロジーの裾野は広がっている。最近は材料メーカーだけでなく、自動車、電気・電子産業などの材料のユーザーもレオロジーの役割を重視している。彼が多くの企業との共同研究プロジェクトを手がけているのはその証である。

� � � � � - 企業へのメッセージ -

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Page 3: レオロジーを利用した当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位 置づけ、新しくそして即社会に役立つ材料やコン セプトの発信を目標に、企業との共同研究を積極

当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位置づけ、新しくそして即社会に役立つ材料やコンセプトの発信を目標に、企業との共同研究を積極的に進めています。今後は地元企業や環境関連の企業とのコラボレーションを期待しています。(談)

レオロジーを利用した新しいポリマー材料の創製コンセプトは“役に立つ研究”。レオロジーや成形加工に携わった企業時代の経験、技術、知識を基に大学と産業界を結ぶ、実践的な研究活動を展開する。

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北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 山口 政之 教授 ● ● ●

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北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科

教授 山口 政之��������� ������������������

<学位>京都大学工学修士(1989)京都大学工学博士(1999)

<職歴> 東ソー株式会社四日市研究所研究員(1989)北陸先端科学技術大学院大学受託研究員(1995-1996)東ソー株式会社四日市研究所主任研究員(1999)Polymer Processing Institute,Visiting Scientist(2000-2002)大阪市立大学工学部非常勤講師(2002-2007)北陸先端科学技術大学院大学助教授(2005-2007)北陸先端科学技術大学院大学准教授(2007-2009)北陸先端科学技術大学院大学教授(2009-)

<専門分野> 高分子レオロジー、高分子物性、高分子複合材料の構造制御、高分子成形加工、ポリマーブレンド・アロイ・コンポジット

実学として広範な産業分野に役立つレオロジーレオロジー(Rheology)とは物質の変形と流動を取り扱う学問である。学問としての歴史は古くはないが、プラスチックの登場と応用とともに成熟し、現在世界中で研究が行われている。JAISTマテリアルサイエンス研究科でレオロジーを標榜するのが山口政之教授である。JAISTに着任する以前は、化学メーカーの研究員として、パソコン内部に用いられる衝撃吸収材やリサイクルできるゴムなど、レオロジー制御による材料設計と成形加工の研究開発に携わった。15年間の企業時代に得た市場のニーズへの鋭敏な感覚と人的ネットワークが、研究室の大きな強みとなっている。現在実学として役立っているレオロジーの研究対象は幅広く、プラスチックやゴムをはじめ、繊維、塗料、パルプ、油脂、接着剤、食品、薬品などが例に挙がる。これらの物質が示す複雑な力学挙動を分子論的、構造論的に解明し、その成果を技術の革新や製品の改善に役立てていくことがレオロジー研究の目的である。彼が焦点を当て

ているのが後者の研究スタイルであり、「環境に優しい次世代型ポリマーの研究開発」「ポリマー材料の高性能化および高機能化研究」「成形加工技術の深化・構築」という三本の柱のもと、ポリマー材料の設計から製造まで、さまざまなテーマを設定している。

環境を意識した材料開発を展開研究室の具体的なテーマをいくつか紹介する。「環境に優しい次世代型ポリマーの研究開発」では、まずポリ乳酸の高性能化に取り組んでいる。ポリ乳酸はバイオマスから製造されるプラスチックであり、今後使用量増大が予想されているものの、熱に弱い、もろい、成形しづらいなどの問題を抱えている。彼はレオロジー特性をナノオーダーで制御することにより、高剛性、高耐熱性を付与した複合材料を設計したり、形状記憶効果を発現させることに成功している。窒素化合物を無害な窒素に分解する植物製プラスチックの成形技術の開発も手がけており、水質・土壌浄化の事業を行う企業等から大きな期待が寄せられている。またテレビなどの液晶ディスプレイに欠かせな

い「位相差フィルム」を、セルロースを原料にして溶媒を用いない押出成形で製造する技術の開発にも成功している。現在のフィルムは二枚重ねて使う必要があるが、新技術では一枚で使用可能となり、さらなる薄型化と製造コストの削減が可能になるという。今後はフィルムの製造ラインの確立に向け「国内の企業と積極的に協力したい」と彼は語る。プラスチックのリサイクルという面では、リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)の成形加工性を改善する技術を開発している。現状、リサイクルPETは粘度が低く再成形が難しいことから繊維製品などに用途が限定されている。彼の技術は、日々 大量に回収されている使用済ペットボトルの有効的なリサイクルの道を拓くものである。またPETと並ぶ代表的なプラスチック材料であるPP(ポリプロピレン)のリサイクルについては、従来課題となっていた透明性の確保について、その向上技術を提案している。

ポリマー材料の設計から製造までをカバー「ポリマー材料の高性能化および高機能化研究」では、カーボンナノチューブ(CNT)との複合化と高機能化の研究を行っている。CNTは理想的なナノデバイス材料とされるが、実用化を阻む大きな要因のひとつが非常に高価であるという点である。彼はすでにごく少量添加したCNTを樹脂表面に局在化させる技術を構築してお

り、電気・電子、ディスプレイ、自動車用部材など広範な分野に対してCNT実用化の可能性を示している。同様に広く産業界にインパクトを与えたのが、傷を受けたり物理的に完全に切断されたりしても、破断・切断面を接合し、再び元の形状に戻る自己修復性高分子材料の開発である。従来までに提案されている方法とは全く異なる原理で修復するもので、塗料、壁材、各種表皮材として、さらにはインテリジェントマテリアルとして生体機能材料への応用展開が期待されている。

「成形加工技術の深化・構築」は、ものづくりの現場に密着した研究テーマである。研究室では、一般的な成形加工装置はもちろん、企業からのアドバイスを活かしてオリジナルで製作した引張・衝撃同時測定装置、わずか8g程度のサンプルでフィルム・シート成形に必要な情報を得ることができるように計装化した毛管粘度計等の特殊な装置を揃えている。新しい分子や材料を設計する際に大きな力を発揮するレオロジーの裾野は広がっている。最近は材料メーカーだけでなく、自動車、電気・電子産業などの材料のユーザーもレオロジーの役割を重視している。彼が多くの企業との共同研究プロジェクトを手がけているのはその証である。

� � � � � - 企業へのメッセージ -

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Page 4: レオロジーを利用した当研究室ではレオロジーを材料設計の“手段”と位 置づけ、新しくそして即社会に役立つ材料やコン セプトの発信を目標に、企業との共同研究を積極

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国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学〒923-1292 石川県能美市旭台1-1  http://www.jaist.ac.jp

先端科学技術研究調査センターTEL:0761-51-1070 FAX:0761-51-1427E-mail:[email protected]アドレス:http://www.jaist.ac.jp/ricenter/index.html

学術協力課 連携推進室 産学連携係TEL:0761-51-1906 FAX:0761-51-1427E-mail:[email protected]

産学連携に関する

お問い合せ

マテリアルサイエンス研究科棟 II 5F TEL/0761-51-1621 FAX/0761-51-1625http://www.jaist.ac.jp/ms/labs/yamaguchi/  E-mail : [email protected]山口 政之

2009年3月発行

北陸先端科学技術大学院大学

マテリアルサイエンス研究科

山口 政之教授

北陸先端科学技術大学院大学 研究者レポート ジャイスター

使用装置 応力ー光学同時測定装置、引張ー衝撃同時測定装置、二軸伸長粘度計、毛管粘度計、多波長型位相差測定装置

キーワード レオロジー、伸長粘度、モレキュラーコンポジット、機能性高分子、高性能高分子、樹脂添加剤、低環境負荷材料、 バイオマス系高分子、 自己修復材料、エネルギー吸収材料、光学フィルム、複屈折制御、CNT複合材料

������������������主 な 研 究 テ ー マ

北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 山口 政之 教授 ● ● ●

図1 PLA中に分散した極細繊維の電子顕微鏡写真 これらのナノファイバーが耐熱性などを向上

図2 核剤を添加した押出シートの引裂き特性 PPよりも優れた強度を示し、かつ、流れ方向に高い引裂き 強度を示すという異常な力学的異方性を示す

図3 スクリュー構成と押出特性の関係 長鎖分岐ポリマーではスクリュー構成を変えるだけで、押出物の外観や溶融延伸に必要な 力(ドローダウン力)を制御することが可能。なお、分子切断や架橋などは生じていない。

������ レオロジーとは物質の流れや変形を取り扱う学問であり、ポリマーの分子・材料設計、特性解析、成形加工の予測・改良などには必要不可欠な情報を与えてくれます。当研究室では、レオロジー特性に基づいた知見を活用することで、ポリマー材料の設計から製造までの幅広い領域に対応した研究活動を行っています。また、実際に役立つ研究を行うために、企業との共同研究を積極的に進めています。企業研究に関して見識を深めたい方、ポリマー材料の研究開発に興味をお持ちの方は、是非、当研究室を訪問してください。私自身、企業での研究経験が15年ありますので、即戦力となるように研究・教育を実施するよう努めております。なお、これまでの専門はまったく問いません。 2005年に開設して以来、幸い明るい学生に多く恵まれ、楽しい雰囲気で研究活動を行っています。是非、先輩とも話をしてください。(メンバー:スタッフ/2名、D3/1名、D2/2名、D1/3名、M2/5名、M1/5名、研究生/3名、2009年3月現在)

1. 環境に優しい次世代型ポリマーの研究開発 ポリ乳酸のように植物を原料とするバイオマス系プラスチック(グリーンプラスチック)では、製造から焼却に至るまでの材料寿命の中で大気中に放出する全二酸化炭素量と、原料の植物が吸収した二酸化炭素量は本質的に同じであり環境に優しい材料となります。最近では、環境問題に対する意識の向上を背景に、次世代のプラスチックとして化石原料由来の材料から急速に代替が進められています。我々は、化石原料系ポリマーで培ってきた知見を応用し、バイオマス系プラスチックの高性能化を目指すと共に各々のバイオマス系プラスチックの特長を最大限に活かした機能性材料の創製にも取り組んでいます。さらに、PETやPPなどのマテリアル・リサイクルにも積極的に取り組むことで、環境負荷を低減する新しい材料設計・プロセス提案を行っています。

2. ポリマー材料の高性能化および高機能化研究 分子・材料設計を行う研究テーマであり、新規ポリマーや既存のポリマーを対象とし、従来までの概念を越えた高性能材料、さらには、特殊な機能を示すポリマー系材料の創製について提案を行っています。また、新しいコンセプトに基づいた研究テーマを推進することで、自動車、電気・電子材料、光学・ディスプレイ材料、機能性繊維などに代表されるような日本の強い技術分野を中心としてさまざまな用途への応用展開を図っています。

3. 成形加工技術の深化・構築 高分子材料のもっとも大きな特徴である“からみ合い相互作用”を取り扱うレオロジーは、成形加工分野では極めて重要な学問領域になります。そのため、企業ではレオロジスト(レオロジーの研究者)が研究開発における中心的な役割を担うことが期待されています。我々は、高分子材料の成形加工性および最終製品の諸特性まで意識して研究を進めることで、分子・材料設計へフィードバックできるようさまざまな検討を実施しています。

+核剤

0.4

0.3

0.2

0.1

0

Tear Strength(mN)

PP

MDTD

スクリュー構成 押出物の外観押出物のdrawdownforce

58mN

82mN

異形押出(高吐出が可能)

ブロー、発泡(高延伸が可能)

科学技術のフロンティアを拓く

レオ ロ ジ ー を 利 用した新しいポリマー材料の創製