オプション取引の仕組み...34 35 Ⅴ デリバティブ取引とは?Ⅴ...

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32 33 デリバティブ取引とは? オプション取引において、コールオプション、プットオプションの買方または売方に、取引対象商品の 価格変動に伴ってどのような損益が生じるかを、有価証券オプション取引を例に見てみましょう。 コールオプション取引の損益 Aさんは○○株を1000円で買う権利を50円で買いました。 Bさんは○○株を1000円で買う権利を50円で売りました。 プットオプション取引の損益 Aさんは△△株を1000円で売る権利を50円で買いました。 Bさんは△△株を1000円で売る権利を50円で売りました。 2.オプション取引 オプション取引の仕組み オプションとは、ある特定の金融商品を、将来のあらかじめ定められた期間ないし期日に、あらかじ決められた価格と数量で買い付け、または売り付けることができる権利のことで、 「買い付ける権利」を コールオプション「売り付ける権利」をプットオプションといいます。そして、このオプションを取引の 対象とするものがオプション取引で、売方が買方にオプションを与え、買方は売方へその対価としてオプ ション料(プレミアム)を支払うことになります。

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Page 1: オプション取引の仕組み...34 35 Ⅴ デリバティブ取引とは?Ⅴ デリバティブ取引とは? 各要因がオプション料の価格形成に 与える影響

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デリバティブ取引とは?

Ⅴデリバティブ取引とは?

オプション取引において、コールオプション、プットオプションの買方または売方に、取引対象商品の

価格変動に伴ってどのような損益が生じるかを、有価証券オプション取引を例に見てみましょう。

●コールオプション取引の損益Aさんは○○株を1000円で買う権利を50円で買いました。Bさんは○○株を1000円で買う権利を50円で売りました。

●プットオプション取引の損益Aさんは△△株を1000円で売る権利を50円で買いました。Bさんは△△株を1000円で売る権利を50円で売りました。

2.オプション取引

オプション取引の仕組み オプションとは、ある特定の金融商品を、将来のあらかじめ定められた期間ないし期日に、あらかじめ決められた価格と数量で買い付け、または売り付けることができる権利のことで、「買い付ける権利」をコールオプション、「売り付ける権利」をプットオプションといいます。そして、このオプションを取引の対象とするものがオプション取引で、売方が買方にオプションを与え、買方は売方へその対価としてオプション料(プレミアム)を支払うことになります。

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デリバティブ取引とは?

Ⅴデリバティブ取引とは?

 各要因がオプション料の価格形成に 与える影響

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11月

10月

満期日

株券オプションの権利行使日

指数オプションの権利行使日

権利行使期間

アメリカン・タイプ ヨーロピアン・タイプ

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●権利行使日 オプションの権利行使可能期間が、取引最終日など1日だけに限られているのをヨーロピアン・タイプといい、一方、取引開始から取引最終日までの間で、いつでも買方(ホルダー)の希望する時に権利行使できるのをアメリカン・タイプといいます。現在、大阪取引所で取引されているオプション取引を見ると、国債先物オプションはアメリカン・タイプとなっていますが、それ以外はヨーロピアン・タイプとなっています。

●証拠金 29ページの先物取引の仕組みにおける証拠金を参照してください。 オプション取引の買方は、損失がオプション料に限定されることから、証拠金を差し入れる必要はありません。

●オプション料の構成要素 オプション料がいくらになるかは、市場での需給により決まりますが、需給に影響を与える要因として、本質価値(取引対象商品の価格と権利行使価格との差)及び取引対象商品の価格が権利行使価格を期限日(まで)に上回る可能性(または下回る可能性)としての時間価値(取引最終日までの長さ、取引対象商品の価格変動性(ボラティリティ))があげられます。

  コールの場合

オプション取引の歴史 オプションの起源は、古代ギリシャの哲学者ターレスによるオリーブ絞り機を借りる権利の売買にまで溯ることができるといわれており、17世紀には、オランダでチューリップの球根を、英国では株券を対象として相対によるオプション取引が行われていました。その後、1970年代になって株券のオプションがシカゴオプション取引所に上場されてからオプション取引は飛躍的に拡大し、1980年代前半には、金利オプション、通貨オプション、株価指数オプションの取引が米国で開始されました。我が国でも、1989年に株価指数オプションが大証等で上場されたのを皮切りに、1990年には国債先物オプション、1997年には株券オプションの取引が開始されました。

オプション取引の利用方法 オプション取引も、先物取引で紹介した様にさまざまな利用方法があります。通常の現物取引や先物取引では、買方は価格が上がれば上がるほど利益を得ることができ、価格が下落すればそれだけ損失となります。売方はその逆です。しかし、オプション取引では、価格変動にともなう損失を限定したり、価格の変動性に着目して利益をねらったりすることができます。

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自主規制とは?

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Ⅴデリバティブ取引とは?

●ヘッジ取引 対象商品を保有する場合で、値下がりリスクを回避したい場合は、プットオプションを買い付けることで、値下がり損をプットオプションの権利行使による利益で相殺する方法があります。 また、対象商品を保有する場合で、価格があまり変動しないと予測した場合は、コールを売り付けてオプション料を得ることで、運用益を向上させることができます(カバード・コール)。

●スペキュレーション(投機取引) 取引対象商品の取得を行わずに、相場感に基づいてオプションだけを取引するもので、将来の価格に強気(上昇を予想すること)や弱気(下落を予想すること)の場合は、コールオプションやプットオプションをそれぞれ買い付けることにより、値上がり益や値下がり益を得ることができます。この場合、オプション料の支払いだけで取引が可能で、買付代金や売付商品はオプション取引時には必要なく、また、予想に反して損失が発生した場合でも、その損失はオプション料に限定できます。 一方、将来的に、価格変動が少ないと予想した時は、コールオプション、プットオプションのどちらか、または両方を売り付けることにより、オプション料の獲得を目的とした取引が可能です。 ここであげた例以外にも、オプション取引では、さまざまなオプションを組み合わせたり、対象商品の現物取引や先物取引と組み合わせたりすることによる多様な投資戦略を組むことが可能となっています。

Ⅵ 自主規制とは? 自主規制とは、その名のとおり「自主的な規制」であり、取引所市場における信頼性の確保のため、JPXでは、JPX-Rがその業務を担っています。JPX-Rは、別法人の形態をとることにより一定の独立性をもって中立的な立場から、「上場審査」「上場管理」「売買審査」「考査」の自主規制業務を行っています。

1. 上場審査・上場管理  株式など上場物件は、企業内容を適切に開示するなど投資家が安心して投資できるための体制が整備されているなど、上場にふさわしい適性を備えていることが必要です。このため、新規上場会社が適格性を有しているかをJPX-Rで上場審査を行い、上場審査基準に適合する場合には新規上場を承認します。 また、上場後においては、上場会社には会社情報の適時適切な開示に加え、投資者保護の観点から、企業行動に対して適切な対応を求め、これらに違反することがないか上場管理を行います。その審査の結果、必要かつ適当と認めるときには、改善を求めるなど必要な処分その他の措置の内容を決定します。また、上場会社としてふさわしい適性を喪失し、上場廃止が適当と認められる場合には、上場廃止を決定します。

2. 売買審査

 証券市場の信頼性・公正性を確保するためには、不公正取引をできるだけ排除する必要があります。自然な相場変動ではない、人為的に相場を変動させて自己の利益を図ろうとする行為(相場操縦)や上場会社の関係者が、投資家の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して自社の株式等を売買する行為であるインサイダー取引(内部者取引)など、不公正取引が行われていないかどうか、常に売買審査が行われています。また、不適切な取引が発見された場合には、直ちに証券会社等に注意を促すなどして、不公正取引の未然防止が図られています。

 売買審査のイメージ

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JPXについて

Ⅵ自主規制とは?

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Ⅶ JPX について

1. JPXの役割・仕事

 証券に投資をする人(投資家)が、いつでも安心して取引することができるためには、流通市場が十分に機能していなくてはなりません。例えば、お金が必要になった時にすぐ証券が売れなかったり、適切な価格で売買できなかったりすると、証券投資をする人は少なくなってしまいます。そして、流通市場が機能しなくなれば、企業は証券を発行しにくくなってしまいます。多くの注文が市場に集約され、投資家がいつでも自由に取引できる環境を整えることは、市場の利便性を考えるうえで非常に重要な要素です。JPXは、投資家がいつでも安心して証券等の取引ができるよう、子会社・関連会社を含めた全体で、流通市場の開設・運営、また多くの取引の清算・決済・記録を集中的に処理するなど取引所市場インフラを提供しています。 このように JPX は、取引所市場を支える重要な役割を担う公共性の高い事業を行っています。これらの事業において創造的かつ魅力的なサービスを提供し、市場の持続的な発展と豊かな社会の実現に向けて貢献することが JPXの目的です。

2. JPXの収支

 JPXはどのようにして利益を出して運営しているの?との質問をよくいただきます。 答えは、主に証券会社から売買代金等に応じていただく負担金、上場会社からいただく上場料、コンピュータ等の設備利用分担金によって、JPX における取引施設の維持費やシステムの開発・運営費、人件費などの経費をまかなっています。

 売買審査の結果については、不公正取引の摘発などを行う証券取引等監視委員会(SESC)にすべて報告され、証券取引等監視委員会における市場監視活動をサポートしています。 また、取引参加者である証券会社に対しても、法令違反行為やそのおそれのある行為、また社内管理体制が不十分であると認められた場合には、注意の喚起などが行われています。

3. 考査

 投資家からの注文は取引参加者である証券会社等を介して取引所に発注されることから、証券市場の信頼性確保のためには、取引参加者が投資家からの注文を適切に受託、執行することが極めて重要です。このため、取引参加者の店舗に赴き、法令や取引所の規則を遵守して適切に業務が行われているかについて、帳簿書類の調査や担当者に対するヒアリングにより考査を行っています。また、不備が認められた場合には、注意の喚起等を行い改善を求めています。  

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Ⅶ参考

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ZAIBATSUFAMILY

明治 11 年 5月東京株式取引所創立

明治 11 年 6月大阪株式取引所創立

明治 5年我が国最初の国債発行

明治~大正財閥の形成・・・しかし株式はほとんど市場に出回らず

昭和初期戦時色強まり戦時債券が大量発行される

明治20年~30年代鉄道ブームで日本鉄道(現在のJR)が大人気

民主化運動

民主化運動

株券

証 券 よ こ ん に ち は

○×証券会社

□△証券会社

免許外国株

DON!!DON!!

昭和 24 年 5月証券取引所での取引再開

昭和 30 年代高度成長期株式ブーム

昭和 22 年財閥解体と証券民主化運動

昭和48年国際化時代到来、外国株が東証に上場

昭和 50 年代国債大量発行

昭和 40 年証券不況、以後証券会社は免許制へ(昭和 43 年)(平成 10 年再び登録制へ)

FreeFairGlobal

昭和 60 年 10 月東証で国債先物市場開設 ~平成元年

バブル時代の株式ブーム

昭和 63 年 9月大証で日経 225 先物市場開設

平成 10 年金融ビッグバン本格化

平成 12 年 5月 東証 ARROWS 開場

平成 25 年 1月株式会社日本取引所グループ設立

平成 11 年~平成 18 年頃新興市場ブーム

平成 11 年 4月株券売買立会場閉場

ざいばつ

めんきょせい

昭和 63 年 9月

JPX誕生

参 考 証券市場の歩み