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オンライン授業における合理的配慮について
九州大学基幹教育院
キャンパスライフ健康支援センターインクルージョン支援推進室
田中真理
横田晋務
合理的配慮 Reasonable Accommodation
障害者差別解消法 ➡国立大学・公立大学では法的義務
• 目的:障害学生に対して、教育の機会を均等にするための変更調整
• 教育の目的、評価の基準を変えない学びの質を変えたり、評価を甘くする等ではない
• 実施側に過度な負担を課さない物理的、金銭的負担等が過度でない範囲で
例)『聴覚障害で先生の話しが聞き取れないので、説明内容を文字化してほしい』
『難病で90分座り続けることができないため、別室で横になって受講したいので、オンラインで受講したい』
オンライン授業でのメリット
障害種 困難さ メリット*
発達障害環境からの刺激で集中が阻害されるスケジュール管理が苦手
個人特性にあった環境で視聴可能
欠席、遅刻の場合でも授業を全て聴くことができる
精神障害通院、状態悪化による欠席、遅刻大人数教室での受講が難しい
病弱・虚弱 定期通院、急な入院による欠席
肢体不自由車椅子座席の位置によってはスクリーンが見えない
自身のPCで資料をはっきりと見ることができる
*オンデマンド配信によるオンライン授業を想定
対面授業へのアクセスに困難さがある場合にはメリットとなる
オンライン授業でのデメリット
障害種 困難さ デメリット
聴覚障害発達障害
音声言語を聞き取ることが難しい注意を向けることが難しい
受講に必要な情報(視覚的情報・聴覚的情報)がない場合には授業についていけない
視覚障害 資料を読むことができない
発達障害暗黙の了解や指示詞を理解することが難しい
説明箇所と資料の対応がわからなくなる
情報へのアクセスの難しさがデメリットとなる
→個別的な対応(合理的配慮)が必要
オンライン授業と質保証
•合理的配慮:教育目的を損なわない限り、手段の代替が可能
•一方で• 全ての授業をオンライン化することはできない
(大学設置基準では通学制の場合、遠隔は60単位まで *緩和される可能性あり)• 学修時間の担保 (1単位45時間:授業15時間、予習・復習30時間)• 対面授業の正当性の主張:「オンラインでは教育効果が下がる!」
「授業は生き物。対面でしか本質を伝えられない!」
「教室での空気感・臨場感が受講生の可能性を育てる!」 ←本当?
➡ 今こそ、オンライン授業の教育効果の検討を!
■主体的・対話的な学びは、むしろICT技術で高めることができるのでは?
■対面とオンラインでは学習効果はどのように異なるのか?
オンライン化可能な授業とそうでない授業の統一的な線引きが必要?
オンライン授業における合理的配慮の具体例•聴覚障害 / 発達障害の場合 → 聞くことに困難さがある
リアルタイム オンデマンド
教員の対応
要約筆記者に事前に内容を知らせる(筆記者が専門用語などあらかじめ理解する)
➡要約筆記者への資料提供
要約筆記者の手配のために時間がかかるため、リアルタイムで行うか否かがわからないとその準備ができない➡リアルタイム授業を行う旨の事前周知
話したことを文字化する➡字幕挿入➡講義での説明原稿の提供
学生の対応
先生が話していることを文字化したい➡遠隔PC要約筆記の配置依頼➡音声文字変換アプリの使用
音声文字変換アプリの使用
オンライン授業における合理的配慮の具体例•視覚障害 / 発達障害 → 見ることに困難さがある
リアルタイム・オンデマンド共通
教員の対応
PC読み上げ機能などで、学生が音声出力できるように➡テキストデータでの資料提供
図や画像は、学生にはみえないので何が描いてあるのかわからない➡言葉の説明(代替テキスト)をつける
色覚障害で、赤と緑が同色みえて色の区別がわからない➡色使いに配慮、強調のために赤を使用する+下線をひく
先生が「ここをみてください」と言われても、「ここ」がどこかわからない➡指示詞のみでの説明をしない
ex) 「ここを」→「スライドの左側、みっつめを」
➡どこを説明しているか分かるような情報をつけるex) 「次のページにいきます」/「スライド5枚目の説明です」
学生の対応
PC読み上げ機能などでテキストデータの音声出力をする
基礎的環境整備予めアクセシビリティを向上≒ユニバーサルデザイン
•ゆっくりとしたスピードで話す
•聞き取りやすい発話を心がける(マスクは口形から内容が判断できない)
•スライドを示す場合には文字の大きさ、色使い、フォントに注意• 黒板は白と黄色で構成
• ホワイトボードの場合は反射に注意
• 色で強調する(重要箇所は赤字など)のではなく、下線などを使用する
• UDフォントを使用する
•説明内容の原稿を用意しておく
•録音、録画をし、リアルタイムでアクセスできなかった学生へ配信
障害のみならず、留学生、通信障害が生じた場合などのアクセスを保障
オンライン化による注意点• 授業に参加できない、ドロップアウト+それを表明できない
要領を得ない質問/繰り返される質問 例)「どうしたらよいかわかりません」
➡わからなさを解きほぐす対応を
例)「何回目から分からなくなりましたか?」「自分のIDはわかりますか」
➡理解状況をモニタリングできる仕掛けを (クイズ、小テスト)
• 対面授業が始まっても参加できない• 感染リスクの高い疾患のある学生、精神障害などにより不安が高い学生
• 孤立• SNSなど繋がるためのツールを使用していない場合には孤立しやすい• 文字でのやり取りの困難さ(行間を読む・的確に伝える)によるトラブル
• 日常生活の乱れ• 日常生活リズムが保ちづらい、夜型の生活リズムへ• オンデマンド型の場合、後回しにしてしまう可能性
まずは学生の孤立を防ぐ:連絡を取る、相談窓口の紹介
参考情報
• 筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター• https://dac.tsukuba.ac.jp/shien/20200409-1/
• Pepnet-Japan 情報保障コンテンツ集• http://www.pepnet-j.org/web/modules/tinyd1/index.php?id=269&tmid=371
• DO-IT• https://www.washington.edu/doit/programs/accessdl/resources-making-distance-
learning-accessible
• Association on Higher Education And Disability• https://www.ahead.org/about-ahead/about-overview/special-interest-groups/online-
and-distance-learning