インドネシア国 bop訴求型鶏卵生産販売事業 準備調査 (bop...

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インドネシア国 インドネシア国 BOP 訴求型鶏卵生産販売事業 準備調査 (BOP ビジネス連携促進) 報告書 平成 26 年 3 月 (2014 年) 独立行政法人 国際協力機構(JICA) イセ食品株式会社 14-006 JR 民連

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インドネシア国

インドネシア国

BOP 訴求型鶏卵生産販売事業

準備調査

(BOP ビジネス連携促進)

報告書

平成 26 年 3 月

(2014 年)

独立行政法人

国際協力機構(JICA)

イセ食品株式会社

14-006

JR

民連

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目次 第 1章 鶏卵事業の意義

1-1 意義と背景 1-2 提案事業の概要と目標 1-3 調査団の構成と主な活動概略

第 2章 インドネシア国の現状 2-1 インドネシア国の政治・経済情勢

2-1-1 人口・民族 2-1-2政治情勢 2-1-3 投資環境 2-1-4 周辺諸国の社会経済分析・物流アクセス

2-2 農業及び養鶏場の実態 2-2-1 アチェ州の農業及び養鶏場の現状 2-2-2南スラウェシ州の農業及び養鶏場の現状

2-3 卵の価格及び流通状況 2-3-1 アチェ州の卵流通状況 2-3-2南スラウェシ州の卵流通状況

第 3章 自然条件と養鶏事業 3-1 気温と年間降水量

3-1-1 アチェ州の気温と年間降水量 3-1-2南スラウェシ州の気温と年間降水量

第 4章 環境及び労働力確保 4-1 環境基準

4-1-1 アチェ州における環境基準 4-1-2南スラウェシ州における環境基準

4-2 労働条件及び雇用実態 4-2-1 アチェ州における労働条件及び雇用実態 4-2-2南スラウェシ州における労働条件及び雇用実態

第 5章 現地立地調査の概要 5-1 アチェ州の立地候補地調査の概要

5-1-1 土地と必要設備 5-1-2 飼料調達条件 5-1-3 鶏糞処理の在り方 5-1-4 販売網整備の為の条件 5-1-5 雛鳥調達の方法

第 6章 環境社会配慮 6-1 環境社会影響を与える事業コンポーネント 6-2 ベースとなる環境社会の状況 6-3 相手国の環境社会配慮制度 6-4スコーピング及び影響の予測 6-5 影響の評価及び代替案の比較検討 6-6 緩和策(回避・ 小化・代償)の検討

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6-7 環境管理計画・モニタリング計画(実施体制、方法など)の検討及び予算、財源、 実施体制

6-8 ステークホルダー協議の開催支援

第 7章 事業計画の具体策 7-1 ビジネスモデル、実施スケジュール、事業コストとリスク等 7-2 鶏卵需要予測 7-3 合弁事業の在り方 7-4 現地政府の協力取り付け状況 7-5 事業実施の為の資金計画と財務計画 7-6 運営体制 7-7 BOP層への裨益効果 7-8 事業実施可否判断および残課題

第 8章 長期的な展望と体制作り 8-1 長期的な将来計画とその意義 8-2 JICA事業との連携可能性 8-3 連携事業の実施スケジュール 8-4 インドネシア経済・社会に与える事業の効果

第 9章 結論

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図リスト

図 1 都市部と地方の貧困線の比較 図 2 貧困層の分布 図 3 貧困層の州毎の分布 図 4 食糧の保障(赤:食糧安全保障が不安定な地域) 図 5 年度別都市部と地方の貧困層の人口推移 図 6 アチェ州の原料調達フロー 図 7 鶏卵生産流通プロセス 図 8 鶏卵の消費量比較 図 9 主要タンパク質源から摂取する一日一人当たりの平均タンパク質 摂取量推移(1999 年-2011 年) 図 10 本事業の想定開発効果 図 11 調査団構成 図 12 州別人口密度と人口 100万人以上の都市 図 13 アチェ特別州サバン島地図 図 14 インドネシア回廊(IEDC)構想 図 15 インドネシア周辺の主要港 図 16 アチェ港 図 17 東南アジアと日本の主要港湾のトランシップ貨物量の推計 図 18 マレーシアの主要港 図 19 レムチャバン港から ASEAN域内の主要港までの時間とコスト 図 20 アチェ市郊外の飼料生産設備 図 21 環境基準 図 22 環境適合レベル 図 23 手続きフローチャート 図 24 ガイダンス 図 25 環境保護管理法における規制項目 図 26 主要都市 低賃金比較:法廷 低賃金(月額、横浜=100として算出) 図 27 敷地位置図 図 28 Kurueng Raya敷地写真 図 29 電気探査位置図 図 30 電気探査現地写真 図 31 LineZ地層断面図 図 32 LineY地層断面図 図 33 LineX地層断面図 図 34 LineW地層断面図 図 35 事業対象地の地図 図 36 事業対象予定地 図 37 人口ピラミッド 図 38 インドネシアの失業率の推移 図 39 インドネシア行政組織図 図 40 中央・地方分業 図 41 政府構成 図 42 本事業の推進体制とビジネスモデル 図 43 業界構造分析(5F分析) 図 44 経営課題分析(クロス SWOT分析) 図 45 現地調達資材の例

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図 46 Kurueng Raya候補地 図 47 敷地断面図・レイアウト図 図 48 参加者、副州知事及び畜産局長との面談の様子 図 49 参加者、畜産局幹部との会議 図 50 イセ食品つくばファーム 図 51 宮城県色麻農場 図 52 森のたまご

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表リスト 表 1 インドネシアの民族別人口と割合 表 2 地域別主要統計 表 3 物流効率性指標 2012 表 4 インドネシアと東京 23区の物価比較 表 5 アチェ州における卵の流通価格 表 6 アチェ州における養鶏の飼料価格 表 7 自家配合飼料としてアチェ州にて入手できる飼料原料 表 8 アチェ州にて入手できる少量の飼料原料 表 9 アチェ州にない飼料原料 表 10 表 7-9の原料を調達し自家配合で飼料を製造した場合の飼料費(100kg)345,000ルピア/100kg 表 11 南スラウェシ州の GDPに占める農業の比率 表 12 南スラウェシ州内の鶏卵消費量 表 13 南スラウェシ州内の鶏卵生産量 表 14 南スラウェシ州内の卵用鶏数 表 15 アチェ州の年間降水量、年間気温、年間湿度 表 16 マロス地区の気温の変化(2011年) 表 17 マロス地区の雨量の年間変化(2011年) 表 18 参考:州都マカッサル(ウジュン・パンダン)月別気温 表 19 水質条例 表 20 騒音条例 表 21 汚臭条例 表 22 排水条例 表 23 15歳以上就業者の労働業種別と性別人口 表 24 選定チェック項目 表 25 既存養鶏場と建設中養鶏場 表 26 Kurueng Rayaインフラ状況・チェックリスト 表 27 本事業における影響の範囲 表 28 労働人口及び失業率 表 29 年齢別失業者数 表 30 インドネシア各省庁における環境対策に係る役割 表 31 事業実施による影響の予測 表 32 代替案による環境評価 表 33 モニタリング計画 表 34 マクロ環境分析(PEST分析) 表 35 建築工事費-1 表 36 建築工事費-2 表 37 インドネシア標準工事単価表 表 38 概算工事費 表 39 事業段階とスケジュール 表 40 要員計画(2015年~2019年) 表 41 裨益効果 表 42 今後の課題と内容 表 43 卵と他食品の栄養素比較

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略語表

略語 正式名称 日本語訳 GAM Gerakan Aceh Merdeka 独立アチェ運動 アチェ法

- アチェの統治に関する 2006 年法律第 11 号

BKPM Badan Koodinasi Penanaman Modal

インドネシア投資調整庁

KAPET Kawasan Pengembangan Ekonomi Terpadu

経済統合開発地域

EIA Environmental Impact Assessment 環境アセスメント AMDAL Analisis Mengenai Dampak

Linkungann Hidup 環境影響評価

DIC Disease Investigation Center 家畜疾病診断センター

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第 1章 鶏卵事業の意義 1-1 インドネシアにおける鶏卵事業の意義と背景 世界経済は、2009年のリーマンショック等の影響により世界同時不況を経験したが、一方でインドネシア経済は着実に成長を続けてきた。その背景として、インドネシアは外需

への依存度が低く、堅実な内需が経済を牽引し続けたことが挙げられる。国家としては、

この着実な経済成長は今後も続くことが期待されるが、先進国と比較した国民の生活水準

からすると、未だ新興国と言える段階である。好調な経済を反映して食料品の消費量は近

年急激に伸びている。しかし、鶏卵の消費量は、他の食料品に比べ低い伸びにとどまって

いる。 インドネシアにおける食品類の価格については、野菜、魚などの生鮮食品類は日本のお

よそ 5分の 1以下のものが多いが、鶏卵の価格は日本とほとんど差がない。(後述)つまり、相対的な卵の価格は日本の 5 倍に相当するのが現状である。これは、インドネシアの鶏卵生産力・供給力の弱さが主要因と考えられる。 日本における先進的な大規模鶏卵生産の技術を現地に持ち込み、生産段階の合理化、流

通の改善をもたらすとともに、安定的な供給を実現することができれば、現地の鶏卵価格

の大幅な引き下げにつながる。そうした生産体制の構築に成功すれば、現在は鶏卵に手の

届きにくいインドネシアの貧困家庭層でも購入が容易になる。この結果、現地住民の体位

向上、健康増進に大いに役立つことが期待できる。 また、新たな雇用機会の創出にもつながる。直接的には鶏卵農場の運営・管理・輸送の

ための要員の雇用が期待されるが、鶏卵農場運営のうえで必須となる安定的かつ安価で大

規模な養鶏用飼料工場の設置も併せて必要となる。トウモロコシや大豆、魚粉などの需要

が増加する結果、それらの生産拡大が求められることにより、新たな市場が拡大し、さら

なる雇用増加の要因となりうる。このような貧困層の滋養摂取向上、食生活の安定などの

波及効果も含んだ雇用機会の増大に資するプロジェクトの展開は、BOP 訴求型事業のコンセプトに十分に資するものと考えられる。 以下に、インドネシアの BOP層について示す。

l インドネシアにおける貧困の定義 インドネシアにおける貧困線は、国家中央統計局(BPS:Badan Pusat Statistik)が実

施する社会経済調査(SUSENAS: Survei Social Ekonomi Nasional)のデータに基づく。 1999 年までの貧困線とは、「一人 1 日 2,100 キロカロリー相当の基礎的食糧」の購買力

を基本データとしていたが、それ以降は生活必需品(衣服・住居・教育・交通費等)を得

るのに 低限必要な支出額が加えられて定義されている。 エリアにおいては、都市部と農村部の2つの基準に分類される。 2010年の貧困線は、都市部で 1人当たり月額所得 23万 2,989IDR1、農村部では同 19万

2,354IDRに設定されている。 この貧困線以下の所得の人々を、貧困層(所得貧困 Income Poverty)と定義している。

l インドネシアの貧困状況 貧困率は、1999 年の 23.4%から 2010年の 13.3%へと減少している。(MDG1では、貧

困線以下の人口割合を 2010 年の 13.33%から、2014 年には 8~10%とすることを目標としている。) 一方で、 貧層のおよそ半数は 1 日 13,400IDR 以下で生活しているのが現状である。

加えて、インドネシアの主な特徴として、貧困線付近の所得層が多いことが挙げられる。 「貧困線付近」の所得層について、2006 年の世界銀行のレポートでは、「churning」と

1 平成 26年 3月 参照レート IDR1=0.00878円(JICA 業務委託契約における外貨換算より)

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表記されている。そのため、世界銀行では「貧困線付近の所得層が不安定な状況に置かれ

ている状況であるため、貧困政策の受給者として1日 2 USDの消費額に基準を広げるべき」としている。 貧困線近辺には、人口の 40%が集中していると言われている。 貧困削減に関しては、インドネシアの経済危機(1997年)以後に、セーフティーネットを制度化している。 貧困緩和政策の実施により、貧困率は 1999 年の 23.4%から 2011 年の 12.5%へ大幅に低下することに成功している。前述の通り、「churning」に該当する人々の層は厚く、貧困線の少しだけ上に該当する人々が貧困線を下回る可能性が高いと言われ

ている。例えば、2003 年に貧困線以上であるとされていた世帯のうち、1,300 万世帯が翌年に貧困線以下に陥っている。

図 1 都市部と地方の貧困線の比較

出典:Statistical Year Book of Indonesia 2010 P183

l 地域別貧困層分布 農村部の貧困人口は、都市部の 2 倍近い数に上る。特に、パプア州、西パプア州、

北マルク州、東ヌサ・トゥンガラ州、スラウェシ島といった東部の地方島嶼部及び、ア

チェ、ランポン州等での貧困率は高い傾向が見られる。

図 2 貧困層の分布 出典:OECD(2010) Economic Importance of Agriculture for Sustainable Development and Poverty Reduction:

Findings from a Case Study of Indonesia, p.4

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Aceh 21.0% 2010 13.3%

Sulawesi Selatan 11.6%

3 Ministry of National Development Planning / National Development Planning Agency (BAPPENAS) (2010a)

Report of the Achievement of the Millennium Development Goals Indonesia 2010, p.19 !

Nusa Tenggara Timor NTT Nusa Tenggara Barat NTB

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WFP (2012) Monthly Price and Food Security Update - Indonesia: August 2012 , p.3 !

BOP

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医学信奉は強いものの、その効果が現れない場合伝統的な呪術師に頼らざるを得ない。イ

ンドネシアの病院はその設備に応じてクラス分けされるが、設備の整った病院までの距離

が遠かったり、無料化で患者数が増えたりしたため、BOP 層がアクセスできる医療機関の範囲は事実上限定的である。政府は、BOP 層も含め、全国民に加入を義務づける健康保険制度を 2014年から実施する準備を進めている。しかし、実際の保険適用範囲がどのように定められるかは明らかになっていない。(JETRO インドネシア BOP 層実態調査レポート 2012年) また、乳幼児死亡率も低下傾向にあるものの、地方では未だ高く、妊産婦死亡率も他の

発展途上国と比較すると高い割合となっているのが現状である。

図 5 年度別都市部と地方の貧困層の人口推移

出典:Statistical Year Book of Indonesia 2010 P61 l 行政の対応 政府は、経済危機がもたらす社会的弱者への社会経済的な影響を緩和するために、1998/

99 年会計年度から、食糧安全保障プログラムを立ち上げた。これはソーシャル・セーフティ・ネット(SSN)プログラムとよばれ、15のプロジェクトが実施された。 インドネシアにおいては、基本的に中央、地方の役割分担として、食糧問題は地方の担

当分野とされている。県・市はインドネシアの地方自治の主体であり、行政区域におけ

る基礎的行政サービスを実施している。市では、都市的な行政課題を主に処理するのに

対して、農村部では食糧問題や貧困対策等に主に取組んでいるのが現状である。 我が国でも、対インドネシア共和国 国別援助方針の重点分野(中目標)において食料

安全供給が掲げられており、アジア食料安全保障情報整備強化支援事業が 2011年に実施された。 本事業の中核となるイセ食品株式会社(以下、「イセ食品」という)は、世界で初めて一

羽当たり年間 365 個という卵生産記録を達成した高度な生産技術を保有し、日本における鶏卵企業約 3,000社の中で 大規模を誇る。 日本における卵の価格は、50年間際立って上昇しなかったことを受け「物価の優等生」

と言われることが多い。事実、1955年の卵の平均価格は、1kgで 205円であった。当時の国家公務員の初任給は 8,700円である。2007年時点での卵の平均価格は、1kgで 168円であり、国家公務員の初任給は 202,496円である。卵の価格は下がっているが、価値は30分の 1までに下がっていることが分かる。これは、イセ食品を筆頭に日本が培ってきた近代養鶏技術の貢献だと言える。 本事業は、これまで海外支援という側面からは注目されることが少なかった日本の一次

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産業及びその関連産業の優れた技術やノウハウを活用して、開発途上国の経済振興及び民

生向上に寄与するものであり、開発途上国の実態や現況に即した BOP事業の展開として望ましいものであると考えられる。

1-2 提案事業の概要と目標

l 事業概要 本事業では、インドネシア国アチェ州、南スラウェシ州の二州において同様の養鶏事業

を立ち上げる計画を踏まえ、両州において以下の調査を実施した。

(1)既存情報の収集・現況調査現状分析

(ア) インドネシア国及び周辺諸国の社会経済分析 (イ) インドネシア国の法律・規制等に関する調査 (ウ) インドネシア国及び周辺諸国における物流アクセスの調査 (エ) 自然条件調査 (オ) 当該 BOP ビジネスがもたらしえる開発効果の特定 (カ) 環境社会配慮条件のレビュー (キ) 関連情報の収集

(2)現地調査

(ア) 関係機関へのヒアリング (イ) ベースライン調査の実施(対象となる BOP 層の分析) (ウ) 事業サイトの調査(候補地の比較分析、適地選定、技術調査、用地取得に向けた 手続きの確認等)

(エ) 連携先となる現地企業、NGO 等の活動状況調査 (オ) 労働力調査 (カ) 雇用環境・条件等調査 (キ) 物流・販売網調査 (ク) 需要予測 (ケ) 事業開始のための調査 (コ) 環境社会配慮調査

(3)事業計画の作成

(ア) 原材料・資機材の調達計画(雛鳥、飼料、飲料水等) (イ) 設備投資計画 (ウ) 生産、流通、販売計画 (エ) 要員計画、人材育成計画 (オ) 現地事業パートナー候補企業等の情報収集・分析 (カ) 事業費積算(初期投資資金、運転資金等) (キ) 財務分析(収支計画、事業キャッシュフロー、収益性分析(IRR 等)) (ク) 資金調達計画 (ケ) 許認可関係 (コ) 事業リスク (サ) 事業実施スケジュール (シ) 環境社会配慮

(4)JICA 事業との連携可能性検討

(ア) 連携事業の必要性 (イ) 事業スキーム

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(ウ) 具体的連携事業の内容 (エ) 連携事業の実施スケジュール (オ) 連携による効果の予測

l 鶏卵農場用地選定理由 � 調査対象地域 アチェ州は、面積が日本の九州とほぼ同じと広いが、人口一人当たりの GDPは US$1,930

程度でインドネシアの平均より約 35%低い。同州はインドネシアの も西に位置するスマ

トラ島北西端にあり、首都ジャカルタよりもシンガポールやマレーシアに近い過疎地でも

ある。また、2004年 12月の大震災と津波で大きな被害を受けたほか、それまで中央政府との間で長く独立紛争の渦中にあったため、経済活動は全般わたって未だに停滞しており、

失業率も全国平均の 7.14%を大きく上回る 8.3%と高い水準にある。一方で、農業、水産業などの一次産業については潜在力に高いものがあり、手つかずの広大な用地も多く、鶏卵

農場の建設には適していると判断する。 一方、南スラウェシ州は、ジャカルタの北東方向にあるスラウェシ島の南西半島部を占

める。スラウェシ島では、広く稲作が行われているほか、トラジャ地方は観光やコーヒー

の生産地として知られ、アチェ州と比較して経済水準が高い。将来のインドネシア全域へ

の事業展開を考慮し、南スラウェシ州も有力候補地として調査対象とした。 � 州政府の協力姿勢と経済基盤 鶏卵 BOPビジネスの調査を開始した段階では、アチェ州と南スラウェシ州の両州を候補地として挙げていた。首都・ジャカルタから飛行機で 3 時間ほど掛かり、インドネシアの中心地から遠く離れている点では、両州の条件は同じである。また、当方の州政府への協

力要請についても、両州首脳陣とも口々に「全面協力を惜しまない」との姿勢を示した。 両州の大きな違いは、経済基盤にあるだろう。10年前まで独立闘争に明け暮れ、2004年12 月には大地震と大津波に襲われ、多大の被害を受けたアチェ州は、これらをきっかけに華僑資本も流出したほどで、日本法人の影も薄い。一方で、南スラウェシ州は、人口約 200万人を擁する東部インドネシア 大の都市圏と言われるマミナサタ広域都市圏を擁し、経

済活動も活発で、かねてから日本法人の進出も目立っている。 l 広大な用地と将来性 純粋に商業的な判断をし、鶏卵販売市場としてみた場合、南スラウェシ州の方が圧倒的に有利である。しかし、経済活動が活発で人口も多いということは、人家も多く、鶏卵農

場の候補地が限られてくる。本調査においても、山地が迫り広大な用地が少ないという南

スラウェシ州の地形的な欠点に加え、いずれの候補地も近隣に人家があり、鶏糞の悪臭や

汚水処理、頻繁に出入りする搬送車両の騒音問題などが惹起することが予想される。これ

らの要因は、鶏卵農場建設にあたって も根本的な課題であるともいえる。 l 域内供給力不足のアチェ州 これに対して、アチェ州は南スラウェシ州に比べて経済基盤はやや弱いものの、広大な

用地の確保が可能であり、鶏卵農場を起点に、将来的には孵化場、種鶏場、商品包装工場

を十分に併設できる。さらには、飼料工場やトウモロコシなどの農場も隣接できれば、極

めて効率的な体制が整う。アチェ州にとっても、雇用増加や農業振興につながることが考

えられる。 アチェ州畜産局によると、同州の卵需要は 130 万羽分もあるにもかかわらず、域内での

供給能力は 30万羽に過ぎず、残りは 600 km以上も離れたメダンから持ち込まれているという。これは同州の高い鶏卵価格の要因にもなっており、供給増による鶏卵価格の低下は、

BOP 事業の目的に合致するものと判断した。また、アチェ州はマラッカ海峡を挟んでマレ

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ーシアやシンガポールなどの諸国に近く、卵関連生産物の将来的な輸出先としても期待で

きる。 l 現地での受け入れ態勢等 現地での受け入れ態勢を比較してみても、アチェ州が先行した。まず、現地合弁候補が

アチェ州では調査開始当初から想定できたのに対し、南スラウェシ州では、候補からして

未確定である。今後の事業の確実性を考慮すると、現地を熟知した合弁相手の存在は大き

いと考える。 また、州政府の姿勢にも差が見られた。ともに協力の姿勢は見せつつも、経済基盤が弱

く、鶏卵価格も高水準にあるアチェ州の切実度は高く、その熱意が強く伝わってきた。さ

らに、南スラウェシ州に進出している日本企業の情報収集によると、「州政府からの用地賃

貸は後々にトラブルになるケースもあるので要注意」との指摘もあり、南スラウェシ州よ

りもまずはアチェ州に注力することを決定した。 l 想定ビジネスモデルの提案と課題 調査地域での養鶏施設の典型的なビジネスモデルは、極小規模の施設を運営し、飼料は

500km以上離れたメダンから購入しているのが現状である。 小規模であるため効率化が図られておらず、衛生面の配慮も乏しいことが本調査で分か

った。また、飼料の原料であるトウモロコシや魚粉は調査地域で生産されているにも拘ら

ず、メダンまで飼料の原料として運び、そこで生産された飼料を再び購入している。

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BOP

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100

820 2 6,500 3 13,000

!

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将来的には、トウモロコシなどの穀物生産・加工へと事業を拡大することも予定している。 飼料に関しては、日本の商社等と連携し、安価で栄養分が豊富は飼料を入手する方向で

検討している。飼料工場の建設により、現地への裨益効果は大きいものがあるが、30万羽のみでは採算に合わないことが本調査で明らかになった。 l 終的なビジネスモデル

30万羽の養鶏施設の運営が軌道に乗り、販路拡大の見通しが立った時に、増産を予定している。敷地は 100万羽以上の養鶏施設と飼料工場を建設できるだけの面積を予め賃貸することを計画している。 後述するが、およそ飼料の 60%程度を占める原料であるトウモロコシの生産は品種等の

改良の余地はあるものの、現地で盛んに生産されており、二毛作が可能である。さらに、

飼料には魚粉を使用する為に漁業従事者にも裨益がある。本事業により、農業や漁業に裨

益が認められるだけでなく、流通及び販売を通して多くの雇用が生み出されることが予想

される。また、輸送距離の短縮や低価格化の実現により、地域住民への貢献は大きいと考

えられる。

図 7 鶏卵生産流通プロセス

l 想定ビジネスモデルの課題 インドネシアに進出するにあたり様々な課題とリスクが想定される。 具体的リスクについては第 7章において記載するが、予め想定されている課題について

はここに示す。 � 人材 衛生的な近代的な施設を運営するには、専門知識の習得が必要となる。できうるだけ地

域住民の雇用を促し、技術習得を速やかに行う為に幾つかの工夫が必要だと考える。まず

は、運営マニュアルの作成を行う予定である。これは、現地語で作成し、図や絵を用いた

分かり易いものを想定している。 また、本邦において工場での研修等も将来的に実施することを予定している。人件費は、

都市部程ではないが上昇傾向にあり、将来的な人件費の高騰については対応の必要性が想

定される。その場合、マニュアル化されているものを一部オートメーション化して実施す

る等の対応が考えられる。 � メンテナンス体制 日本やアメリカにおけるイセ食品の養鶏施設は、オートメーション化が進んでおり、高

度なメンテナンス技術が求められている。しかし、インドネシアにおいては衛生面に配慮

しながらも、マニュアルでの作業工程を増やすことにより雇用者数を或る程度増やすこと

を念頭に置いている。そのため、設備もオートメーション化されている部分を少なくして、

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メンテナンス作業も簡易に行えるような工夫を施すことを想定している。事業開始当初は

イセ食品から技術者を派遣し、メンテナンス技術の習得を促す。 � 設備投資費用 設備投資金額はできるだけ抑えるため、事業開始当初から大規模な 100万羽の養鶏場の

建設や、10億円程度必要とされる飼料工場の建設は行わず、まずは 30万羽規模の養鶏場の建設を行い、経営が軌道に乗るであろう数年後に規模を拡大することを予定している。 � 行政支援 州政府及び畜産局等からは、口頭での支援は取り付けてはいるが、実際の州政府地の用

地提供や税制面での優遇などについて、援助の程度については不透明な部分が多い。また、

許認可についても速やかに取得できるようにどこまで支援を受けることができるかは未知

数である。 � 協業方策 本調査において、既にビジネスパートナーの候補を数社挙げている。特に、流通販売網

の確保についてはビジネスパートナーの協力の度合いにより、販売実績が大きく左右され

ることが考えられる。ビジネスパートナーの選定と連携の仕方については慎重に行う必要

があると考える。 � 競合 調査より、近隣の養鶏施設が幾つか点在していることを確認している。また、メダンか

ら鶏卵や飼料を購入している現状から鑑みると、競合する可能性のある事業者も幾つか存

在している。 本事業は、貧困線以下の人々でも鶏卵を購入できるような低価格の生産販売を実現する

ことや、飼料の調達により、地域の農業及び漁業の活性化を図ることを目標としている。 一方で、イセ食品が進出することにより、競合するであろう養鶏場や飼料生産事業者の

生活が圧迫しないような配慮の必要性も考えられる。これは困難な課題ではあるが、鶏卵

の消費量が人口対比において少ない現状から、例えば食習慣の変革により、鶏卵の消費量

が増加することが考えられる。そして、消費量が増加することにより競合を避けることも

可能ではないかと類推する。飼料工場の共有化、イセ食品の技術の供与等を通じて、良好

な関係を構築することを目指したい。 � 流通・販売網の整備 生産された鶏卵を効率よく流通させる為に、ビジネスパートナーのネットワークを活用

することを検討している。イセ食品は、できるだけ良質で廉価な鶏卵生産を実現すること

に注力し、流通や販売に関しては、ビジネスパートナーを積極的に活用することで分業を

目指す。 � 飼料の入手 設立時のビジネスモデルに記述した通り、養鶏工場に関しては当初設立をしない可能性

が高い。そのため、良質な飼料の入手経路について既に検討を行っており、具体的には日

本の商社と連携しながら、飼料の確保を行う予定である。しかし、飼料の地産地消は現地

の悲願であることも鑑み、将来的な増産の見通しが立った段階で、近隣の農家と品種改良

や委託生産等の協議を進めていきたい。同時に漁業者との魚粉生産についての協議も進め

る予定である。

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� 市場価格 飼料であるトウモロコシや魚粉、鶏卵のいずれも市場価格の変動に晒されている。特に、

本調査対象地域においては、鶏卵を粉卵や液卵に加工する施設がほとんど存在しないため、

市場動向に応じて価格が乱高下しやすい傾向がある。しかしながら、これはインドネシア

だけでなく世界中の養鶏施設運営も同じ状態である。一方で、日本においては、卵は物価

の優等生と謳われるほど、長年にわたり変わらない価格を保持している。これは、イセ食

品が培ってきた飼料価格や運営費の抑制、親鳥の数調整等の生産技術によるものであり、

このノウハウがインドネシアにおける鶏卵生産においても活かされると考えられる。 � 近隣の養鶏場との関係 限られた商圏において、近隣に養鶏場が新設や増設されると、価格競争等に陥る可能性

は否定できない。さらには、養鶏場とは一定の地理的な距離をとらないと、鳥インフルエ

ンザの蔓延リスクが回避しづらくなってしまう。そのため、予め進出する為の用地選定及

び、近隣の養鶏施設等との連携は必要だと考えられる。 � 天災 アチェ州は、2004年のスマトラ島沖地震による揺れと大津波で壊滅的な被害を受けた。

そのため、本調査における用地選定調査では活断層の確認も行っている。将来的な施設拡

大等も睨み、地震や津波等の対策を期したいと考えている。水資源の確保については、地

下水の調査も実施する。また、山火事等の被害に遭わないような地理的な条件に合致する

とともに、建物の構造にも配慮を行う予定である。 � 食習慣 価格の変動に伴って生産量を調整する需給安定システムがうまく機能していないため、

頻繁に供給過剰の問題を抱えることとなる。2007年の 1人 1年当たりの鶏卵消費量は、インドネシアが 6.1kg、フィリピンが 3.5kg、タイが 8.1kgとなっており、特にインドネシアの鶏卵消費量は前年比 20%増加となっている。同国の鶏卵消費量が大幅に増加した理由として、鳥インフルエンザなどの家畜の疾病などの影響により、消費者が鶏卵をタンパク源

として選ぶ傾向にあることが指摘されている。また、2006年のマレーシアにおける 1人 1年当たりの鶏卵消費量は同 3%増の 15.5kgとなった。(独立行政法人 農畜産業振興機構調べ)

図 8 鶏卵の消費量比較

出典:独立行政法人農畜産業振興機構「各国政府統計」 しかしながら、所得が低い農村部においては、卵は未だに高価な食材であり、人々の口

に入る機会は少ないのが現状である。

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図 9 主要タンパク質源から摂取する一日一人当たりの平均タンパク質 摂取量推移

(1999年-2011年) 出典:インドネシア統計庁データより PT MU Research and Consulting Indonesia 作成

インドネシア中央統計局は、平均的な国民がどの程度のタンパク質をどのような食品か

ら摂取しているか、継続的な統計を収集している。図表 1-9によると、過去 30年で全体的に摂取するタンパク質の量が増加していることが分かる。 具体的には、各主要タンパク質源ともに摂取量の増加が見られ、加工食品から摂取するタンパク質の量が急増している。 加工食品の増加傾向の要因としては、近代的小売店の店舗増加傾向や、大都市の勤労層

など、家庭での調理時間が限られている人口層が増えて いることなどが挙げられる。また、国民の所得が上昇するにつれて、肉類への支出に費やす経済的な余裕が生まれたこと、卵

及び乳製品に関しては、健康に良いとされる卵、牛乳や乳製品を摂取する習慣が、大都市

を中心に徐々に普及し始めていることが要因と考えられる。(日本貿易振興機構(ジェトロ)

農林水産・食品部 ジャカルタ事務所 2013年3月調査結果) 今後、さらに一人当たりの鶏卵の消費量は増加する傾向が続くことが想定されるが、そ

の伸び率や食生活の変化に応じて、事業の規模が左右されることが課題であると考えられ

る。 l 本事業の開発効果 プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)に、本事業を実施した際に想定される開発効果を示す。

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図 10 本事業の想定開発効果

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1-3 調査団の構成と主な活動概略 調査団は、日本側は申請企業を中心にコンサルタント、建築家で構成する。現地側は有

識者ならびに地方政府省庁専門家など、幅広い人材を活用していく。 アチェ州では、現地 NGOを中心に調査チームを結成し、調査テーマごとの種類、難易度に合わせて担当を選定し、調査にあたらせた。調査チームには主に農業、畜産分野の人材

を起用した。具体的には、飼料用のトウモロコシの調査の場合、種類、品質、現地取引価

格などの基礎的な情報は学生調査員を起用し、その調査データを基に講師、助教授クラス

の担当者が地域ごとに分析データをまとめさせた。南スラウェシ州では、現地居住の日本

人コンサルタントに主要な調査を依頼した。

図 11 調査団構成

l 各調査団員の役割 ・ イセ食品株式会社:代表法人、財務分析、ビジネスモデルの策定、鶏舎・卵生産工場

建設候補地調査、現地施設調査 ・ 公益社団法人 日本・インドネシア経済事業協力協会:現地情報収集 ・ 補強員(個人):ビジネスモデルの策定補助、現地調査作業調整、基礎情報収集、施行

調査、法令等調査、ローカルパートナーとの連携 ・ 補強員(カーボンフリーコンサルティング株式会社):調査マネジメント、環境社会配

慮調査補助、ローカルパートナーとの連携、報告書作成補助 l 調査事業の実施概要 ① 事前調査:文献調査及び既存飼料の調査。調査方針及び調査項目の精査 ② 現地政府との連携:現地政府及び現地 NGO等のローカルパートナーへの調査協力依頼 ③ 現地調査:調査地域の絞り込み、各調査項目の実施、候補立地の洗い出し等を実施 ④ 国内作業:各回の現地調査による内容を精査し、法や制度の検証及び候補立地のインフ

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ラ精査。 ⑤ 検証:事業計画収支分析等を実施、ビジネスモデル構築 l 活動概略 � 現地での調査協力要請と情報取集(平成 25 年5月~6月) 前年からの事前調査を受け継ぐ形で、BOP ビジネス連携促進のための現地調査団を編成

した。5月 16日から日本大使館、バンダ・アチェ市、アチェ州政府などを訪問し、鶏卵農場用地の候補地や現地農場、卵の流通状況など現地の情報を収集するとともに、BOP ビジネスへの理解と協力を要請した。 シアクアラ大学を訪問し、現地調査における大学職員らの具体的な協力を取り付けた。南

スラウェシ州でも、州政府、鶏卵農家、現地邦人らを訪問した。農場用地の候補地の説明

を受けるとともに、現地に進出している日本法人の経済活動の実態を調査した。同州畜産

局幹部は「州政府の用地を賃貸してもよい」との返事を受けた。現地畜産農家も「事業に

参加したい」と、今後の接触を求められる。 � 情報分析と建設計画策定準備(平成 25 年 7 月~8 月) 5月、6月の調査結果を踏まえて情勢分析を行った。アチェ州政府の協力への前向きな姿勢と用地の広さ等を評価する一方、南スラウェシ州については、現地法人関係者からの情

報等から事業実施地域選定が難航した。また、候補用地についても取り付け道路などのイ

ンフラ整備の遅れ、用地の狭さ等の指摘がなされた。このため、再調査を検討した。 � 農場候補地の決定と合弁相手との交渉(平成 25 年 9 月~平成 26 年1月) 7月、8月の分析結果を踏まえて候補地の具体的な調査に着手した。建築設計の専門業者を交えた調査団を派遣。この結果、アチェ州での用地には問題ないものの、南スラウェシ

州の候補地は近隣に民家があるなどの課題が確認された。同時並行的に、アチェ州での合

弁相手候補との交渉も本格化した。 � 現地州政府の協力確認(平成 25 年 11 月~平成 26 年1月) アチェ州政府の協力姿勢と養鶏農場に対する規制等の有無とその程度を再確認した。ア

チェ州政府要人の中には、個人的に鶏卵農場を経営している人もおり、これらの整合性、

問題点等がないかについても確認作業を行った。 � 調査費用と鳥インフルエンザ対策(平成 25 年 9 月~平成 26 年1月) 事業開始当初の建設費用・農場運営費用等を具体的にチェックした。また、鳥インフル

エンザが蔓延したインドネシアでの対策についても費用と効果等を協議した。

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第 2章 インドネシア国の現状 2-1 インドネシア国の政治・経済情勢 2-1-1 人口・民族 l 人口分布

2000 年に行なわれた国勢調査によると、インドネシアの総人口は 2 億 584 万人であり、 中国、インド、アメリカに次ぐ世界第 4 位の人口規模を有している。 人口はジャワ島に集中しており、2006 年の政府推計によれば、国土面積の 6.95%のジ

ャワ島に人口の 58.51%(約 1 億 3 千万人)が集中している。ジャカルタ首都特別州は、国土の約 0.04%の地域に総人口の 4.0% (約 900 万人)が居住している。人口密度は13,499 人/km2 となっており、過密地域となっている。 民族別にみると、ジャワ人が約 8,600 万人であり、 大民族となる。以下スンダ人 1,120

万人、マレー人 710 万人、マドゥラ人 700 万人、バタック人 630 万人、ミナンガバウ人 560 万人と続く。

表 1 インドネシアの民族別人口と割合

出典:インドネシアの地方自治 財団法人自治体国際化協会

アチェ州は、2009 年の調査では 520 万人が居住しており、面積は 57,365.57 ㎢、90.64

人/㎢となっている。また、南スラウェシ州の人口は、2010年の調べで 803万人の人口である。面積は 62,482.54 ㎢であり、132 人/㎢となっている。都市部の過密地域とは大きく人口分布が異なっている。

図 12 州別人口密度と人口 100万人以上の都市

出典:平成 21 年 3月 国土交通省 国土計画局「諸外国の首都問題等国土政策分析調査インドネシアの国土政策事情」

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l 民族 インドネシアは群島国家である。その地理的背景で、民族特有の言語や文化が発祥して

いる。 インドネシアでは 200 近い言語が存在すると言われており、代表的な言語には、アチェ

語、バタック語(北スマトラ州)、ミナンカバウ語(西スマトラ州)、スンダ語(西ジャ

ワ州)、 ジャワ語(中・東ジャワ)、ササック語(ロンボク島)、ダヤック語(カリマンタン)、トラジャ語(スラウェシ中部)、フブギス語(南スラウェシ)がある。 アチェ州の民族については、インドネシアの中でも特にイスラム信仰が強い地域である。 歴史的には、1471年にチャンパ王国のヴィジャヤ王朝からシャー・パウ・リン(後のア

リ・ムハヤット・シャー)が統治に訪れてイスラムのアチェ王国を興した。そのため、ア

チェ語はチャム語や回輝語と近いと言われる。古来より外部の支配者に対する激しい抵抗

で知られ、オランダとは長いアチェ戦争を行い、現在のインドネシア政府に対しても、自

由アチェ運動が独立を要求して長い内戦状態にあった。しかし、2004年に発生したスマトラ島沖地震による大津波でアチェが壊滅的な被害を受けたことを機に休戦し、2005年8月に政府との間で和平協定が結ばれた。その結果、独立放棄と武装解除に応じ、インドネシ

アの「州」であることに同意した。アチェ語で国家を意味する「ナングロ」とアラビア語

でイスラム教的な幸福に満ちたという意味の「ダルサラーム」を削ることとなり、2009年4月の州知事令で、正式名称が「アチェ州」に改められた背景がある。 アチェ地方には、アチェ人、ガヨ人、アラス人を始めとするマレー系諸民族が住む。そ

のうち人口の約 90%を占めるアチェ人は、一般にスンナ派の中でもシャーフィイー学派に属するムスリムであり、アチェ人の村落集合体の単位であるムキムには少なくとも一つの

モスクがある。 アチェ地方には、大きく分けて4つの言語(アチェ語、ガヨ・アラス語、アヌック・ジ

ャメー語、タミアン語)の他にも各地に方言があり、いずれもオストロネシア語族(ジャ

ワ語もこれに含まれる)に属するとはいうものの、互いに意思を疎通することは難しいと

言われている。 南スラウェシ州の民族については、スラウェシ島はインドネシア中部にある島であるが、

1964年に、南・南東スラウェシ州が南スラウェシ州と南東スラウェシ州に分離している。南スラウェシ州は、民族的に南端部にマカッサル族、中央部にブギス族、北部山間地域に

トラジャ族に分布している。また、2004年10月には、同州から西スラウェシ州が分離した。 スラウェシ島はいイスラム教、プロテスタント、カトリック教と多種であり、言語もマ

カッサル語、ブキス語、トラジャ語、マンダル語に分かれている。近年スラウェシは、イ

スラム教過激派とキリスト教過激派の間での暴力に苦しめられている。1998年と 2001年の間に、1,000人以上がスラウェシ中部で勃発した暴力、反乱によって殺される事件が発生している。 南スラウェシ州は 20の県と 3つの市部に分けられている。広く稲作が行われており、北

部のトラジャ地方は、観光地やコーヒーの生産地として知られる。マミナサタ広域都市圏

は、マカッサル市、マロス県、ゴワ県、タカラール県の1市3県で構成され、人口約 200万人を擁する東部インドネシア 大の都市圏である。

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2

2007 Badan Pusat Statistik Statistik Indonesia 2007

2-1-2 ! 2006 11

19501976 Gerakan Aceh

Merdeka GAM 29

2004 23 GAM

2006 11

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• 地方財政優遇措置 アチェの豊富な天然資源からの国庫収入を地元に還元することを目的として、均衡資 金

の歳入分与のうち、石油鉱業セクター及び天然ガス鉱業セクターからの国庫収入に関 する歳入分与の配分比率について、他の州よりも高く設定されている。また、特別地方自治の

実施資金としてアチェ特別自治実施資金が交付されている 2-1-3 投資環境 l 外国投資全般に関する政策 日本から進出している企業数は 1,255社(2012年9月 ジェトロ・ジャカルタ調べ)で

あり、在留邦人は 12千人を超える。(2011年10月 外務省調べ)現地の日系企業団体である、ジャカルタ・ジャパン・クラブ法人加盟企業数は、536社に昇る。(2013年9月現在) 新たな進出企業は増えているのが現状であるが、進出に関連した特徴や問題点として、

インフラの未整備、税制・税務手続きの煩雑さ、法制度の未整備・不適切な運用が挙げら

れている。(出典:在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査 2012年度調査) l 外資導入政策 � 管轄政府機関 インドネシア投資調整庁(Badan Koodinasi Penanaman Modal、以下 BKPM)が担当

庁である。BKPMは、1973年に設立され、外資の投資促進機関として様々な手続きを担当する政府機関として機能している。その他に、輸出・投資拡大国家チーム、ワンドア統合

サービス、自由貿易地域管理庁が外資による投資を促進する役割を担っている。 (出典:2010年ネガティブリスト ジェトロ仮訳

http://www.jetro.go.jp/jfile/country/idn/invest_02/pdfs/indonesia_list.pdf) BKPMは、日本におけるその出先の機関として、2003年3月にBKPM日本事務所(以下、

BKPM日本)を設立している。BKPMは、インドネシア共和国大統領直属の投資分野の許認可と相談業務を行う政府機関であるとし、BKPM日本では、BKPMの日本における窓口として、インドネシア進出に関する相談を日本にいながらにして行うことを可能としてい

る。 � 外資に関する規制 禁止業種と規制業種が設けられている。禁止業種は 2007年4月26日付第 25号新投資

法第 12条(2)項により、国防産業(武器、弾薬、爆発物、戦争用機材の生産等)への外国資本による投資は禁止されている。この他に、別の法令等により投資が閉鎖される産業

が定められることがある。規制業種は、2010年5月25日付大統領規定第 36号(2010年ネガティブリスト)にて、対象業種毎に規制が設けられている。 また、2007年12月27日付大統領令第 112号において、各種商業施設の立地・設置条

件、事業許可等が規定されている。 � 外国企業の土地所有に関する規制 土地は、1960年政令第 5号「土地基本法」によって管理されていたが、1997年7月8

日付政令第 24号において、土地権利確定手続きの簡素化が図られた。土地基本法の規定により、インドネシア全国土の 高管理権は国家に属している。土地所有権はインドネシア

国民(個人)にのみ認められているため、法人は所有権に代わる権利を得たうえで、工場

を建てる等して操業することができる。 また、1996年6月17日付政令第 41号により、インドネシアに居住する外国人に居住

用住宅の保有が認められることとなった。ただし、利用権が付された土地に限られ、保有

期間は 長 25年となる。継続してインドネシアに居住する限り、さらに 25年の延長が可

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能である。尚、インドネシアでの居住を中止する場合、1年以内に権利譲渡しなければならない。 � 資本金に関する規制 外国投資については、投資許認可の指針と手順に関する投資調整庁長官規定(2013年第

5号)の第 22条 3項により、製造業・非製造業の区別なく、1)土地建物を除く投資額の合計が 100億ルピアあるいは米ドル相当額以上、2)引受資本金と払込資本金は同額で、25億ルピアあるいは米ドル相当額以上を満たす必要がある。また、各株主の出資金額は、1,000万ルピアあるいは米ドル相当額以上となる。(ジェトロ調べ) � 主要な投資促進・優遇策 インドネシアでは、2007年法律第 25号新投資法において、奨励条件を規定したことを

契機に積極的に投資誘致政策を展開してきた。 新投資法第 18条(3)項にて、以下の条件を一つでも満たす事業を奨励する目的で、各

種便宜を供与すると定めた。 ・ 多くの労働者を吸収する ・ 高い優先分野に含まれる ・ インフラ開発を含む ・ 技術移転を実施する ・ 先駆的な事業を実施する ・ 辺境地、後進地、境界地域又はその他必要とみなされる地域への投資 ・ 自然環境保護の維持を行う ・ 研究開発、革新活動を行う ・ 零細・中小企業又は協同組合とパートナーシップを締結する ・ 国産の資本財、機械又は設備を利用 具体的な優遇措置としては、以下の7つが挙げられる。

1. 特定の投資に対する法人所得税一時免税(タックスホリデー)

2011 年8月15日付財務大臣規定第 130 号(No.130/PMK.011/2011)より、パイオニア産業に 1 兆ルピア以上の投資を行う企業に、商業生産の開始から 短 5年、 長 10年にわたり、法人税を免除することを決めた。免税期間経過後、2年間、法人税を 50%軽減する措置もある。 対象は、基礎金属、石油ガス採掘及び石油ガスを源とする基礎有機化学、機械、再生エ

ネルギー、通信機器の5分野となる。 2. 特定業種・地域への投資に対する法人所得税便宜 (タックスアローワンス) 特定の事業分野、特定の地域への投資には法人所得税便宜が供与される。 主な便宜の内容としては、課税所得を投資額の年 5%ずつ 6年間控除したり、減価償却期

間を通常の二分の一に短縮したり、外国への配当にかかる税率を 10%に軽減したりしている。また、適用を受ける為の条件として、工業地帯・保税地区での新規投資であったり、5 年間継続して 500人以上のインドネシア人労働者を雇用することなどが必要とされる。 3. 保税区内の優遇措置 保税区に立地する企業は、原材料や資本財などの輸入にかかる関税を免除され、その他

に輸入にかかる諸税も徴収されない。諸条件はあるものの、輸出、他の保税地区への販売、

自由貿易地域への販売、政府が定めたその他の経済特区への販売を含む前年の実績額の合

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50% 4.

2009 2009 176 No.176/PMK.011/2009 2012 2012 76No.76/PMK.011/2012

5.

2000 2000 1 2000 36 20071 2007 44

70

2000 20002 FTZ

6. KAPET

2000 2000 20 Kawasan Pengembangan Ekonomi Terpadu KAPET

KAPET2

13

Google Map 7.

2009 39 30 39

"

BKPM

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工品輸出の比率は ASEAN諸国の中では低く、加工品輸出比率の引き上げはインドネシア政府の大きな課題としている。このため、輸出、国内消費を問わず、インドネシア国内で

の加工度を高めることにより、付加価値の増大を始め、国内産業の経営、技術水準の向上、

雇用機会の増加をはかる必要があると述べ、このような事情から、インドネシア政府は日

本からの自動車、エレクトロニクス、機械製造工業分野のサポーティング・インダストリ

ーの資本参入を歓迎しており、外資からの投資を促している。 一方で、インドネシアは世界で も魅力的な新興市場の一つだが、政府が外国資本によ

る鉱山・銀行の保有制限、原材料の輸出禁止、食料の輸入制限といった新たな保護主義政

策を相次いで打ち出したとの声も上がっている。こうした措置の背景には、ユドヨノ大統

領が退任する 14年の大統領選に向けた激しい勢力争いがあるといわれている。政府顧問のエコノミストは、「好調な経済の成果をなぜ外国人が奪っていくのか」と国民は疑問を感

じていると話す。ギタ貿易相は一部の政策に保護主義の傾向があると認めたが、政府の狙

いは経済を深化させ雇用を創出することだとし、「バリューチェーン(価値連鎖)のより

高度な段階を目指す努力と 近の政策は矛盾しない」と主張したとされる。(出典:2012年6月13日 英ファイナンシャルタイムズ) � WTO・他協定加盟状況 WTO、APEC、ASEAN発足当初より加盟。 WTO=世界貿易機関 1995年 1月 1日加盟(ただし GATT加盟は 1950年2月24日) APEC=アジア・太平洋経済協力会議 1989年11月加盟 ASEAN=東南アジア諸国連合 1967年8月8日加盟 OIC(Organization of the Islamic Conference)=イスラム諸国会議機構 1969年加盟 2-1-4 周辺諸国の社会経済分析、物流アクセスの調査 l 物流アクセス調査 本調査においては、海上輸送による物流アクセスを主眼に調査を実施した。背景として、

事業実施当初は国外からの飼料購入が想定されること、設備は日本からの海上輸送が想定

されること、当初予定している 30万羽は、近隣での消費を想定していることが挙げられる。 さらに、赤道をまたがる1万 8千以上の島々を結ぶ広大な地域を保有しているため、海

運が主たる物流手段となる。インドネシアの海上輸送は外国貿易の約 9 割、国内貿易の約 8 割を占めており、サプライチェーンにおける重要な役割を果たしている。 インドネシアの海運の拠点は、首都ジャカルタ及び第2の都市であるスラバヤである。

一般的に、この拠点から主要な島の拠点地方都市(スマトラ島ならメダンやパレンバン、

スラウェシ島ならマカッサル)へ運ばれ、そこから各地方小都市へ運ばれる。ジャカルタ

から陸運で運ばれるのはジャワ島内のほか、フェリーで連絡しているスマトラ島、バリ島

あたりまでとなる。それ以外へは海運が中心であり、一部品物によっては空輸となってい

る。 一般的に、これらの港からは、大型トラック/大型船から小型トラック/小型船 へ、小

型トラック/小型船から乗合自動車/小舟へと、物を運ぶ手段が小型化して積み替えられ

ている。 陸運・海運・空運の利用は、地理的条件にかなり左右されるが、一般に、大量に安く運

ぶ場合は海運、少量を早く運ぶときには空運という区別がされている。陸運では、石炭・

オイルパーム・自動車などを大量に運ぶ場合に鉄道、小口の物を運ぶ場合にトラックとい

う形で利用されている。物流を担う運搬会社は多数存在するが、大規模な会社は少ない。 インドネシアにおいて、対内外国投資を誘致する為にインフラ整備を行なう事が複数計

画されている。その柱の一つがインドネシア回廊構想である。

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図 14 インドネシア回廊(IEDC)構想

出典:経済産業省資料 これは、スマトラ、北ジャワ、カリマンタン、スラウェシ、東ジャワ、パプアの6つの

経済回廊を中心にハードインフラの整備を官民一体(PPP)で推進して行こうとするものである。これは物流インフラ整備に留まらず、東西に細長いインドネシアの国内の連結性

を高める狙いがある。しかし、莫大な資金が必要となる為現在では構想で止まっている状

況である。 l インドネシアの輸出入手続きにおける課題

2012 年10~11月にジェトロが在アジア進出日系企業を対象に実施したアンケート調査によると「物流インフラの未整備が生産面で問題となっている」と回答したイン

ドネシアの企業比率は 37.4%と、先進 ASEAN 諸国の中では非常に高い結果となっている(フィリピン 20.0%、シンガポール、タイ、マレーシアは一桁台)。通関・関税制度に起因する問題、同制度の運用や解釈をめぐる俗人的な対応に起因する問題と、多く

の事項について課題が指摘された。 その反面、アジア諸国の物流効率指標を見てみると、本調査の対象地域であるマレー

シア、シンガポール、タイは比較的上位に位置づけされている。受入側であるインドネ

シアもフィリピンとベトナムと大差は無いように見受けられる。

表 3 物流効率性指標 2012

出典:世銀資料をもとにジェトロ作成

以下にインドネシアの主たる港を記載しておく。アチェ州においては、大型の貨物船

も着岸できる港を現地調査で確認している。

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図 15 インドネシア周辺の主要港 出典:ASEAN・メコン地域の 新物流・通関事情 2013 年6月

日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 アジア大洋州課

図 16 アチェ港

地理的条件を考慮すると、近隣諸国、特にタイ、マレーシア、シンガポールからはジャ

カルタを経由するよりも、アチェ港への直接の輸送が効率的であると言える。

l 周辺諸国:マレーシア、シンガポール、タイの物流(海上輸送) タイ、マレーシア、インドネシア、シンカガポール、フィリピン、ブルネイでは、AFTA

(ASEAN 自由貿易地域)として 2010年にほぼすべての品目において関税が撤廃されているため、物品貿易の自由化が進んでいる。さらに、ベトナム、 カンボジア、ラオス、ミャンマーにおいても 0~5%までの関税の撤廃が実施されており、2015 年には ASEAN 経済共同体(AEC)の形成 に合わせ、一部の品目を除き、関税が完全に撤廃される予定である。人口規模でみるとおよそ 6 億人の経済圏が形成されることになる。流通を考える時には、インドネシア単国で考えるよりも ASEANとして捉えて、今後のモノのやりとりについての動向を調査する必要があると思われる。

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17

: 2013

"

201112 2010 13

17 2010 17 ASEAN 2 3

20 420

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図 18 マレーシアの主要港 出典:ASEAN・メコン地域の 新物流・通関事情 2013 年6月

日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 アジア大洋州課 � シンガポール 言うまでもなく、シンガポールは多くの大手船会社がグローバルなハブとして位置づ

けている。アジアもしくは世界中の航路設計やコンテナ船の運行管理を行っている。前

出した物流効率性指標 2012 においては 1位であり、アジアの中心港であるとみなされている。ASEAN 域内の他の国に比べ、輸送ハブとしての機能は航路の数も多く、各所までの所要日数なでが少ないという利点も評価されているといえるだろう。また、

インドネシアのタンシジュン・プリオク港やマレーシアのクラン港までは、1~2日と海上輸送日数は非常に短い。 � タイ 近年の人件費上昇、労働力不足が課題とされる。タイの中核港であるレムチャハバン港

のターミナルは、複数の民間企業により管理及び運営されているため、接岸・出航や貨

物積みなどは滞り無く行われているのが現状である。現在、同港の収容能力を拡張する

ための開発が行われている。 一方で、バンコク港(クロントイ港)は、河川港であり、接岸できる船の大きさに限界がある。近年はタイなからインドネシアへの輸入が増えて

いる状況が続いている。インドネシアへの輸入の場合、荷主 (通関業者)が通関手続きを終了し、ターミナルからの搬出許可を取得しているが、コンテナが降ろされた時点

から引き取りが可能である。インドネシア国内の他の港も含めて、本船到着翌日には

コンテナ引取りが可能である。

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図 19 レムチャバン港から ASEAN域内の主要港までの時間とコスト 出典:ASEAN・メコン地域の 新物流・通関事情 2013 年6月

日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 アジア大洋州課 2-2 農業及び養鶏場の実態 2-2-1 アチェ州の農業及び養鶏場の現状 インドネシア・スマトラ島の北西端に位置するアチェ州は、数ある同国の州の中でも日

本人にとって聞きなれた州名である。10 年ほど前まで続いたアチェの独立紛争のニュースで「アチェ」の名称が流れたことと、2004年にアチェ州沖で起きた大地震と津波で十数万人の犠牲者を出し、2011年に起きた東日本大震災を機に進めている東北地方との被災地同士の復興協力などにおいても、その名前が挙がるからである。 空から見たアチェ州はほとんど緑一色である。面積は 5万 7956㎢で、九州と山口県、広

島県を合わせたほどの面積で、インドネシア全体の 3%を占める。34ある州の中では平均的な広さの州である。 海岸周辺地域や山間部で市街地がややある以外は、全体の 40.36%がまったく手つかずの

土地であり、次いでプランテーション等が 19.47%、草地・野原 4.09%などが続き、住宅地はわずか 2.21%、工業用地に至っては 0.07%というのが土地利用状況である。 現在のアチェ州は、津波災害からの復興を進めると同時に政治の安定化を足場に新しい

州作りに乗り出している。その柱が農業、畜産、水産など州内に豊富な潜在力を持つ一次

産業の育成である。 l 農業 中央統計局アチェ州事務所の「数字の中のアチェ 2012」によると、2011年の州総生産に

占める農業部門の割合は 27.89%で他の部門より圧倒的に大きい。農業部門には畜産業や水産業も含まれている。次いで商業、ホテル、レストランの 16.03%、3 番目が天然ガスなども含む鉱業部門で 11.64%となっている。 農業部門が経済部門で圧倒的な位置を占める傾向は過去から一貫している。2番目の「商

業、ホテル、レストラン」部門は、その実態は、道端に立ち並ぶ露天商や質素な屋台形式

が大きな割合を占めている。これに対してアチェ州の広々とした農村地帯は、水田をベー

スにした手入れの行き届いた耕作地を有している。 「インドネシア統計 2012」(中央統計局 2012年版)によるとアチェ州のコメの年間生産

量は 190万トンで、34州の中では 10番目の規模である。一方で、州政府が養鶏産業育成

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に期待をかけるトウモロコシは、同 14万 8,000トン余りで、生産規模は全国各州の中で 20番目でしかない。全国規模で有力産地と言える品目は養鶏用の飼料の基となる大豆で、2012年の推定生産量は 5 万 7 千トンに上る。東ジャワ州とは差があるものの、全国で 4 番目の生産規模である。 しかし、キャッサバ、ジャガイモなど他の主要農産物の生産量は全国平均以下である。

年によって生産量のぶれも大きく、長年の中央政府との武力紛争や、2004年12月のスマトラ島沖地震の影響より、農業ばかりでなく経済活動全般が依然停滞気味である。 農業部門において挙げられる課題は、一つ目はアチェ州の地理上の位置である。国内市

場から遠く離れたスマトラ島の北西端にあり、輸送コストの上からも不利な位置にある。

もう一つは、農作物の品目に特色がないため、他州や国外に市場を求めにくいという比較

競争力の欠如である。 2012年の知事選挙で、かつて中央政府と対峙していた GAMの指導者が知事、副知事に

就任して政権基盤が確立した。GAMを母体にしたアチェ党が州議会の議席の 3分の 2近くを占め、それ以来、州政府が経済開発計画の立案の主導権を握る形で行政は進み始めてい

る。そのポイントは、州経済の自立である。隣接する北スマトラ州への依存度を引き下げ、

経済運営の自主性を確保することが行政上の大きなテーマとなっている。政治的には、中

央政府との交渉で他州にはない強い自治権限を確保したものの、経済的には隣州である北

スマトラ州に依存し、事実上の支配を受けているとの思いが今回の経済自立政策の背景に

あるといわれている。 l 畜産業・養鶏産業 アチェ州の畜産業は農業と同じく他州に比べて大きな特色はない。「インドネシア統計

2012」で州別の保有数で取り上げている品目をみるとアチェ州の全国に占める順位は乳牛(なし)、肉牛(7位)、水牛(2位)、馬(9位)、ヤギ(5位)、羊(6位)、ブタ(30位)で、ブタを除き比較的上位にある。ただ、これらの品目はジャワ島各州の保有が圧倒的に

多く、アチェ州の存在感は低い。 一方、地鶏では保有数が全国ランキングで34州中 9 番目と人口とほぼ見合った規模で

あるのに対し、大量生産方式が導入されている卵用鶏では 22 位、ブロイラーでは 24 位と下位グループに近く、アチェ州の保有数の少なさが目立つ。 これに対し、隣州の北スマトラ州は、地鶏は全国で12番目の保有数であり、卵用鶏は

州別で全国 4 位、ブロイラーでも 4 位とトップクラスの保有数であることが明確に示されている。 アチェ州の畜産動物衛生局によると アチェ州の鶏卵需要量は一日 100 万~110 万個と

みられている。このうち、アチェ州内での生産は推定で 20 万~30 万個に留まっている。残りの 8割に当たる 80万個は、州都バンダ・アチェから 500km以上離れた北スマトラ州から送られてきている。アチェ州の卵小売価格は、1個(55g程度)2,000ルピアで、首都ジャカルタ特別州(1,500 ルピア)、北スマトラ州(1,200 ルピア)に比べ割高となっている。 アチェ州の畜産鳥類衛生局は 州の卵価格が他州と比べて高い理由について、二つの理

由を指摘している。一つ目は、生産した卵の供給を北スマトラ州に依存しているための輸

送コストが上乗せされることであり、二つ目はアチェ州内の鶏卵、養鶏企業が飼料の供給

をほぼ全面的に北スマトラ州に依存しているため、高い飼料を利用せざるをえない事情に

あるためである。現地業界関係者によると、アチェ州の不利な状況を打開するため、これ

までも地元実業家がアチェ州内で飼料工場を建設する試みが何度かあった。アチェ産のト

ウモロコシに、ぬか、乾燥野菜、魚粉など地元の各種素材を原料にした鶏卵、養鶏用の飼

料を生産することを目指していた。 この構想は、鶏卵事業者はもとよりアチェ州農家にとっても、トウモロコシを初めとし

て買い付け価格、量ともに安定した販売先を確保し、不安定な北スマトラ州の飼料会社に

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比べて経営も安定するとの期待も大きく、飼料工場建設計画は一時実施に移された。 アチェ側のこのような動きに対して、メダンの飼料メーカーはアチェの養鶏企業向け飼

料を値下げするという対抗策を出し、企業体力がないアチェ州の企業家は工場閉鎖に追い

込まれる事態となった。アチェ側で飼料工場建設の動きが出たのは、2004年12月のスマトラ沖大地震が起きる 1、2年前のことであるが、その飼料工場計画も地震と大津波で崩壊し、それ以降アチェ州側に飼料工場を建設する計画は立ち消えとなった。バンダ・アチェ

市の業界関係者によれば、アチェ州の鶏卵業界は、北スマトラ州の飼料メーカーからやむ

なく購入する状況が今日まで続いている。 l アチェ州政府の鶏卵、養鶏業政策 アチェ州政府は、こうした現状を打開するため、2012年度より畜産局と農業局を初めと

する関連部局や各県と協力し、鶏卵・養鶏産業と農業政策を有機的に結び付けた経済発展

を目指す構想の実現に向け動き出した。具体的には、これまで販路がなく消極的だったト

ウモロコシの栽培を促すため、トウモロコシの受け入れ窓口となる保有数 10万羽の鶏卵工場をバンダ・アチェ郊外に建設し、農業と連携した経済発展を目指す構想である。

図 20 アチェ市郊外の飼料生産設備

こうした州政府の方針も踏まえ、アチェ州では 2012年から再び飼料工場建設の動きが出

始めている。バンダ・アチェ市郊外に現在 3,000 羽の鶏卵工場を建設したある企業は、工場の建屋内に小規模な飼料プラントを設置し、地元農家から直接買い付けたトウモロコシ

を原料に配合した自前の飼料を活用し始めた。 一方、バンダ・アチェ市内海岸部では、本格的飼料生産にはほど遠い規模と設備ではあ

るが、魚粉やぬかなど、手近に調達できる原料を配合して、飼料製造を目指す動きも出て

きている。 アチェ州政府は、こうした動きも踏まえ、2013年にトウモロコシの作付面積を 3,000ヘ

クタールに拡大することを決定した。その第一弾として、都バンダ・アチェ市近隣のアチ

ェ・ブサール圏に 500ヘクタールのトウモロコシを植え付けることを決めた。2014年度には実施する予定である。 採卵鶏、肉食鶏の生産サイクルを完成するためには、飼料供給のほか、種鶏の確保など

さまざまな手を打つ必要がある。州畜産動物衛生局は、こうした問題を解決するため、農

業局ばかりでなく飼料原料である魚粉を扱う水産局や、その他関連部門を横断的につなぐ

組織を開設し、プロジェクトの実現に取組む構えを見せている。

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2-2-2 南スラウェシ州の農業及び養鶏場の現状 南スラウェシ州の面積は、4万 6,700㎢であり、インドネシア全体の 2.44%を占める。3

4州の中では15番目の広さではあるものの、日本の関東地方(1都6県)に山梨県を加

え た 首 都 圏 の 広 さ に 匹 敵 す る 。 そ の 大 半 は 農 地 、 森 林 で あ る 。

また、南スラウェシ州はスラウェシ島にある7州を代表する州でもあり、国軍のスラウェ

シ島軍管区の司令部もマカッサルに置かれている。 南スラウェシ州から見て東方のマルク、パプアとカリマンタン各州を加えた「インドネ

シア東部地域」開発の中心州でもある。インドネシア東部地域は、1993年に当時のスハルト政権が定めた新しい概念で、経済開発が進んだジャワ島とスマトラ島を除き、面積は広

いものの人口が希薄で経済発展が遅れた過疎地域を指す。州都マカッサルは、東部地域の

中心都市として機能しており、マカッサルの空の玄関口であるハサヌディン空港は、イン

ドネシア東部地域のハブ空港でもある。シンガポール、マレーシアなど周辺諸国とも航空

便、海運で直接結ばれている。 こうした地理的な位置により、南スラウェシ州の農業、畜産業、養鶏業はインドネシア

東部地域を中心に広く州外・国外に市場を求められる有利な位置にある。 l 農業 南スラウェシ州は、スラウェシ島ばかりでなくインドネシア全体でもトップクラスの農

地面積と生産力を持つ有力農業州と言える。州都マカッサル郊外はもとより、州北部地方

やボネ湾沿岸には、水田や畑が見渡す限り広がっている。平坦部においても原野や未利用

地が目立つスラウェシ島の他州に比べても、南スラウェシ州の農業が盛んな様子が窺える。 農作物の中心はコメである。「インドネシア統計 2013年」(中央統計局)によると、南ス

ラウェシ州の 2012年のコメ作付面積(見込み)は 93万 5,000ヘクタールで、東部ジャワ州の 196 万ヘクタールを初め、100 万ヘクタールを超えるジャワ島3州に次ぎ全国4位である。コメの生産量は475万トンで、1,000万トン前後を生産するジャワ島3州に続き全国第4位の規模を維持しつづけている。 鶏の飼料原料の約半分を占めるトウモロコシの作付面積は 31万ヘクタールで、州別生産

量では、トップの東ジャワ州の 4 分の 1 の規模ではあるものの、州別ランキングではコメと同じく第4位を占め、生産量も 146 万トンと全国4位の規模である。鶏飼料では原料に大豆の搾りかすを使用するが、南スラウェシ州はその大豆の生産量も 3 万 2,000 トンで、全国6位の規模である。 作付面積及び生産量などから判断すると、南スラウェシ州は鶏卵、食肉用向けなど養鶏

企業家向け飼料の主要原料の生産拠点としての条件を満たしていると言えるだろう。 一方で、南スラウェシ州はコーヒーやカカオ、コプラヤシをはじめとする国際農産物の

生産も活発で、種類も多い。1998年に起きたアジア金融危機でインドネシア通貨ルピアの対ドルレートが短期間で 6 分の 1 程度にまで大暴落した際、南スラウェシ州のこうした国際商品の輸出産地は大変潤った経緯がある。日本との関係においては、高級コーヒーブラ

ンドの生産地としても名前が知られ始めているなど、南スラウェシ州の農業問題を考える

際は、他州とは異なる特色があることを念頭に置く必要がある。 l 畜産業・鶏卵産業 こうした農業分野において強い基盤を持つ南スラウェシ州は、畜産、鶏卵産業の生産量

でも全国でトップクラス、または上位を占めている。畜産業においても、州別にみると全

人口 2 億 4,000 万の半数が住むジャワ島の東ジャワ州、中部ジャワ州、西部ジャワ州の3州が圧倒的な地位を占める中で、南スラウェシ州は州別の生産規模で第二グループのトッ

プクラスに例えられる。 種類別にみると、肉牛が 98万 4,000頭で全国 3位であるほか、ヤギ(主要蛋白源の一つ)

が 46万頭で 10位、ブタが 59万 3,000頭で 4位、そのほかインドネシアで需要がある水牛

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も8位である。インドネシア国内でもあまり知られていないが、馬は 12万 4,000頭で全国1位となっている。南スラウェシ州において、畜産業は農業と密接に関連した主要産業と

も言える。 鶏肉、鶏卵中心とする養鶏業も、重要な位置を占めている。鶏関係の統計は一般に地鶏

(自然飼育によるもの)とブロイラー(大量生産方式による)の2種類に分かれている。

また、産卵鶏は分けられていない場合も多い。 「インドネシア統計 2012」によると、2011年の南スラウェシ州の地鶏の保有(飼育)数

は 1,357万羽となっている。トップの中部ジャワ州(飼育数 3,800万羽)、ジャカルタ特別州(2,645万羽)、東ジャワ州(2,432万羽)に続いて全国第4位の位置にある。 一方、産卵鶏は 681万羽で 2,249万羽の東ジャワ州、1,856万羽の中部ジャワ州、1,206

万羽の西ジャワ州に次ぎ第4位である。しかし、人口一人当たりの飼育数をみると 0.3羽から 0.5羽台にとどまるジャワ島の各州に対し、南スラウェシ州は 0.8羽台と一人当たり産卵鶏の保有数はより多いことが注目される。 中央統計局の 2011年農業統計によると南スラウェシ州の鶏卵の生産量は 4万 9860トン

で前年比 10.8%増である。全国他州と比較するすると1位のジョクジャカルタ特別州(21万 6890トン)、2位のバンテン州(17万 506トン)、北スマトラ州(7万 6,090トン)、西スマトラ州(6万 2,050トン)に次ぎ州別では5位である。 このうちジョクジャカルタ特別州はジャワ島の中心都市地ジョクジャカルタや人口の多

い近隣の中部ジャワ州、東部ジャワ州を市場に控えており、伝統的に鶏卵産業が発達して

いる。一方、ジャワ島西端部に位置するバンテン州はジャカルタ特別州と隣接する強みが

あり、ジャカルタ首都圏を市場とする消費地立地の鶏卵産業を形成している事情がある。

そうした中に南スラウェシ州が入っていることは業界内での位置付けとしては比較的高い

といえるだろう。 l 南スラウェシ州の卵需要 一方、南スラウェシ州畜産動物衛生局販売促進課が 2013年6月~8月を対象に実施した

調査のまとめによると、南スラウェシ州で卵の生産に携わっている卵用鶏は 780 万羽であり、卵用鶏の生産力が衰退した際に新たに投入する生産待機の卵用鶏は 468 万羽となっている。 同じ調査で、鶏卵の生産量見込み(2013年)は 5万トンである。この間の州内の卵消費

量は 3 万 5 千トンであり、南スラウェシ州以外の他州向けが 1 万 5,000 トンと見込んでいる。食肉用の鶏は 2,179万羽で、うち食肉用に 1525万羽が出荷可能な状態である。鶏肉の生産量は 2万 2,881トンで、州内消費は 1万 8,304トン、4,576トンはパプア州など遠隔地も含めた他州へ販売する。南スラウェシ州の鶏卵産業の特徴は州外にも州内と同様に大量

販売していることである。卵と同じように、生産量の 2、3割は州外へ販売をしている。 インドネシア経済全体が高成長を続けるのに伴い、首都ジャカルタから航空機でも数時

間かかる地方経済も活性化しており、広大な国内市場を有する南スラウェシ州の鶏卵ビジ

ネスは将来性が十分あると考える。 l 南スラウェシ州の供給体制 州内における卵用鶏の分布状況は、地鶏とブロイラーとでかなりの違いが見て取れる。

卵用鶏を見ると、州都マカッサルから離れた北へ 200km ほど離れたシドラップ県が全体

780 万羽の半分に当たる 383 万羽を保有している。これは大手の鶏卵農場があることによる。同県の保有鶏は毎年 1割程度伸びている。 南スラウェシ州内の全24県の中で保有数が 100 万匹以上いるのはシドラップ県だけで

あり、他の23県は多くても数十万羽単位である。これら県の大半の養鶏事業者は、保有

数羽単位の零細、小規模事業者が多い。 食養鶏も事情は同じであり、州都マカッサルの隣接しているマロス県は全州 2,180 万羽

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のほぼ半数に当たる 998万羽が集中している。前年比で 15%以上増加している。やはり大手養鶏会社が大掛かりな養鶏場を経営していることによるものである。このほか5県が 100万羽以上の鶏を保有しているものの、農場の大規模化に伴い保有数においても県別格差が

広がる可能性が強い。対照的に、県別に地鶏は、24県の保有規模に大きな差はない。全

体で 2,000万羽である 200万羽強が3県、100万羽以上が4県と飛びぬけた存在はない。 保有羽数が多いのは、州都マカッサル都市圏を含めるタカラール県や、さらにその郊外

のボネ県などで、伝統的に身近な消費地隣接型の中小規模農園が供給者の中心を担ってい

る。伝統的な生産形態を続ける限りは小規模資本でも参入が容易であり、用地選定につい

ても大きな制約を受けずに事業を展開することが可能であるためである。 l 飼料、雛供給 種鳥の育成・供給から飼料供給まで鶏卵産業に欠かせない関連企業は、南スラウェシ州

の州都マカッサルに集中している。オランダ系のジャファ・コンフィード、米国大手のカ

ーギルをはじめとする国際資本は、南スラウェシ州ばかりでなく、スラウェシ島全域、さ

らにインドネシア東部地域全域を生産拠点、営業拠点として重視しているためである。 これまで南スラウェシ州の養鶏農家事業、さらにその前提である農業も含めての事業展

開は、こうした国際資本の存在を大前提に組み立てられてきた。その結果、現地の鶏卵農

家の間では「飼料の原料となるトウモロコシを安く買いたたかれ、出来た養鶏用飼料は高

く買わされるというダブルパンチを受けてきた」との不満が高まりつつある。しかし、そ

うした高コスト構造になっている鶏卵事業を改めていく企画及び実行力が現地にはない、

というのが現状である。 l 南スラウェシ州政府の鶏卵、養鶏業政策 南スラウェシ州はこうした状況を踏まえて、2009 年から 2013 年までの政策展開におい

て、畜産業の振興を健康福祉政策に次ぐ 2番目の重点施策に上げている。 畜産業の重点政策は以下の通りである。

① 家畜用飼料供給体制の確立 ② 国内及び国際市場で競争力のある畜産業を育成のための人材養成 ③ 所得ならびに社会福祉向上のための事業分野の創造 ④ 農業及び畜産ビジネスにおける雇用機会の拡大 ⑤ 畜産関連産業分野の活用と保護保全 ここで注目されるのは②であり、「国際市場での競争力」に触れていることである。畜産

振興に向け外国市場も視野に置いていることだ。現に南スラウェシ州はシンガポールに生

鮮野菜の輸出も始めており、畜産業にもそうした発想が出ているのは不思議ではない。 南スラウェシ州政府の畜産業への期待を受け、畜産動物衛生局は 2011年に「南スラウェ

シ州における畜産業の潜在力と投資機会」と題した行政方針を銘打った指針を内外に発表

した。骨子は以下の通りである。 ① 畜産業にかかわる資源は、再生可能な資源であり、将来的な継続性が保証されるべきである。

② 畜産はこれまでのさまざまな過去の経験からみて、零細業者の収入増加、社会的な所得格差の縮小にも重要な役割を果たすことが確認されている。

③ 畜産関連のビジネスは将来展望があり、大手企業ばかりでなく、零細農民にも投資を促し、事業への参加を勧めることができる。地域における畜産業の育成を通じ、他州や輸

入への依存を減らすことが出来る。 ④ 事業用地については相対的に余裕があるので、南スラウェシ州の畜産業は大規模に発展

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させることが出来る。 ⑤ 畜産関連品に対しては消費の実態に価格弾力性があるので、社会の購買力増加に応じて需要の伸びも期待できる。

経済成長が著しいインドネシアでは、広範な分野で現状を見直し、より合理的な経済環

境を醸成する動きが一気に動き始めている。典型例が「格安航空便」の一般化である。こ

れまでのビジネス慣行の合理性、善し悪しを徹底的に調べ、改善のための具体的手段を進

める動きが、南スラウェシ州の鶏卵業界にも出始めている。 2-3 卵の価格及び流通状況 l インドネシアの消費者動向 年 5~6%台の成長率で拡大を続けるインドネシアは、世界第 4位の 2億 4千万人もの巨

大な消費マーケットが存在すると言える。世帯可処分所得が年間 15,000USD 以上 35,000USD 以下のアッパーミドル層は、2020 年には 7,000 万人に達するとも言われている。これらを背景に、インドネシアの消費者物価は上昇を続けている。 以下に、ジャカルタと東京 23区との卵の価格を示す。卵の価格は他の項目に比べて非常

に高価であることが言える。

表 4 インドネシアと東京 23区の物価比較 項目 ジャカルタ

東京 23 区

卵(10 個) 150 円 150 円 米(10 キロ) 900 円 2,000 円 たばこ(マルボロ 1 箱) 125円 450円 コカ・コーラ(350ml) 60円 120円 ガソリン(1 リットル) 45円 140円 コーヒー1 杯 (ホテルラウンジ)

600円 800円

タクシー初乗り 60円 710円 レンタカー(ミニバン・1 日) 9,000円 10,000円

出典:岡山県インドネシアヒビジネスサポートデスクレポート Vol.12(2012.7 月号)

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34

2-3-1 アチェ州の卵流通状況 現地調査により、2011 年~2013 年における卵の1個あたり及び 300 個あたりの平均価

格を示す。

表 5 アチェ州における卵の流通価格 %#$$�

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出典:現地ヒアリングにより作成

ラマダンが明けた時に菓子類に鶏卵を使用するため、ラマダンの時期前に鶏卵の需要が

増えるのが通例である。ラマダンは年により異なるが、2013年は7月~8月であった。

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l アチェにおける養鶏事情 アチェ州畜産局の聞き取り調査を実施した(2013年12月3日訪問)結果、以下の点が

明らかになった。 • アチェの現在の鶏卵供給は 130万羽分の需要がある。その内アチェ市に於ける需給は

30万羽程度であり他はメダンから 100万羽分の鶏卵が供給されている。 • 鶏肉は、100万羽飼育しており受給率は 100%となっている。 • その他の畜産としては牛 650万頭飼育している状態である。放牧されている牛は道路

周辺に散見される。 • 養鶏事業に於ける生産資材の供給については、若雌業者がなくメダンからの購入とな

っている。 • 購入価格については 45,000ルピア・羽で購入している。 • 飼料工場はアチェにはなく、メダンから飼料を購入している。 • アチェ~メダンの距離は約 610km(日本で比較すると東京→姫路・岡山市の距離)。 • 廃鶏価格については 27,000 ルピア・羽で取引されている。(日本の価格と比較してお

よそ 10倍高い) • 鶏糞処理に関しては発酵処理(コンポスト)した鶏糞は 1kg800 ルピアにて販売して

いる。日本価格に換算すると 15kg12,000 ルピアとなり 120 円に相当する。これはオーガニックの肥料として高く販売できている状況である。

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表 6 アチェ州における養鶏の飼料価格 .,--�����

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出典:現地ヒアリングにより作成

完全配合飼料は 50kg/袋で販売しており、日本で主流になっているバルク車にて搬送及び、

販売は実施されていない。建設中の養鶏場を視察できたが飼料タンクは設置されておらず、

飼料は袋で積み上げてあった。飼料の腐敗等の恐れがある為、衛生管理の面からみると、

課題が散見された。

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表 7 自家配合飼料としてアチェ州にて入手できる飼料原料

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表 9 アチェ州にない飼料原料

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ルピア/100kg

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� 鶏卵価格と飼料購入価格からみた粗利 【設定条件】 • 飼料要求率 2.2として算出 • 飼料要求率=鶏卵1kg生産するのに必要な飼料食下量 • 飼料要求率 2.2とした場合鶏卵1kg生産するのに飼料 2.2kg必要 • アチェの鶏卵価格・・・・278,636ルピア/300ヶ • アチェの飼料価格・・・・244,727ルピア/50kgを設定条件とする。 【鶏卵重量】 • 鶏卵 300ヶ×62.5g=18.750kg • 鶏卵1kg当たりの売価は 278,636ルピア÷18.750kg=14,860ルピア・kg→トン当へ換算すると 14,860,000ルピア/トン

• 飼料要求率 2.2とし鶏卵 1トン生産すると飼料は 2.2トン必要となる • 飼料価格は 244,727ルピア/50kg→トン換算 4,894,540ルピア・トン×2.2=10,767,988ルピア

【損益分岐の概算】 鶏卵売価-飼料費としてトン当 4,092,012ルピア残る計算になる。 この金額で他の経費をすべてまかない利益を出すことが運営の条件となる。また、鶏卵

売価に占める飼料費は 72.5%となり、飼料費の占有率が高くなる。 (事業収支の詳細については第 6章に記載) 2-3-2 南スラウェシ州の卵流通状況 現地調査により、以下の通り南スラウェシ州における鶏卵消費量、卵用鶏数、農業の GDP

に占める割合等が判明した。

表 11 南スラウェシ州の GDPに占める農業の比率

表 12 南スラウェシ州内の鶏卵消費量

表 13 南スラウェシ州内の鶏卵生産量

表 14 南スラウェシ州内の卵用鶏数

� 南スラウェシ州における養鶏事情 南スラウェシ現地調査(聞き取り調査)を実施した結果(2014 年1月)、以下の点が明

らかになった。 • 南スラウェシ州から他州へ販売される鶏卵の数は公式なデータは存在しない。複数の

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関係者へのヒアリングでは約 3 割が州外へ販売されている可能性が高いということが判明した。

• 州外への売り先としては、スラウェシ島内の5州、カリマンタン、アンボン、ヌサテ

ンガラ等が主な売り先である。(パプアに関してはスラバヤから販売されているとの声

も聞かれた) • 養鶏業者の規模は小規模であり、1千から 8千羽を飼育している。 • 畜産局へのヒアリングにより、養鶏農家は 1,336 世帯あり、業者の過半数が零細業者

であることが判明した。これらの養鶏農家は点在している。そのため、イセ食品の自

社基準である近隣養鶏場との距離を保たなくてはならないという条件に見合う土地を

探す事は厳しいといえる。 • 州内の鶏卵生産の中心は州中央のシドラップ県である。南スラウェシ州内及び東部イ

ンドネシアの鶏卵価格はシンドラップ県内の養鶏価格に左右される。 • 雛鳥は、現在では JAPFA 社が生産販売しており、スラバヤからの購入率は低くなっ

てきている。

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第 3章 自然条件と養鶏事業 3-1 気温と年間降水量 3-1-1 アチェ州の気温と年間降水量

おおむね5月から10月が乾季で、11月から4月が雨季となり、乾季の6月から9月

は南東から風がふき、12月から3月は西風となる。雨季は、午後にはスコールのような

集中的な豪雨があり、湿度も高くなる。9月から12月にかけては、毎月の雨量が 200mmを超え、特に11月は も雨量の多い月であり、2010 年の統計では、400mm を超える雨量を記録している。雨量としては、東京と比較すると、約 2倍以上であると考えてよい。 気温については、 高気温は 32℃から 33℃、 低気温は 20℃から 24℃で、年間を通して、大きな温度差はなく高い気温が続き、特に湿度の高い雨季はかなり蒸し暑くなる気候であ

る。

表 15 アチェ州の年間降水量、年間気温、年間湿度

出典:国家中央統計局(BPS: Badan Pusat Statistik)2012年

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3-1-2 南スラウェシ州の気温と年間降水量 南スラウェシ州は、全域が赤道の南に広がる典型的な熱帯雨林気候地帯に属している。

しかし、北端は赤道ほぼ直下(南緯 2度)ではあるものの、3,000m級の高山が連なる一方、南緯 5度前後の 南端は平野が広がり地形は変化に富んでいる。南北間には 400kmの広がりと高さの違いがあり、雨量、温度ともに地域差が大きい。 州都マカッサルのある州南部地域は、北から南へ伸びる半島状の地形になっている。中

央山岳地帯をはさみ、マカッサル海峡に面した西側地区とボネ湾に面した東側地区に分け

られる。気象状態は、通常、西側地域は5月から10月までが乾季で雨が少なく、11月

から 4月までは雨季で晴れの日が少ない。これはジャワ島と同じ気候パターンである。 東側地区は、その反対に5月から10月までが雨季、11月から4月までが乾季である。

ただ、 近は、乾季の7、8月でもジャワ島と同じように降水量が多い。昨今の世界的な

異常気象が南スラウェシ州ではこうした乾季に雨天増加の形で表れているものとも考えら

れる。過去の乾季と雨季が半年ごとに入れ替わる従来の年間気候パターンからの変化を見

守る必要があろう。

� マロス地区の気温 州都マカッサルの北東郊外にあるマロス県は、同じくマカッサル都市圏に属するゴワ県、

タトカラ県と並び伝統的にマカッサル市への鶏肉や鶏卵の供給地となっている。ここでは

西海岸から少し奥まった平野部のマロス地区を例に気象状況を述べる。 低気温の月別平均は年間を通して、22 度から 24 度台の範囲で推移している。 高温

度も 29 度台から 33 度台までと、日本に比べるとわずかな温度差で推移している。南緯 5度と緯度が低く、日照時間にも一年を通じても 大 30 分程度の僅かな変化しかないため、年間単位でも、一日単位でも温度差は少ない。

表 16 マロス地区の気温の変化(2011年) 月 低 高 平均 1月 23.9度 29.8度 26.0度 2月 23.9 30.3 26.2 3月 24.0 30.0 26.1 4月 24.5 30.5 26.7 5月 24.7 31.6 27.5 6月 23.3 31.2 26.6 7月 22.4 31.2 26.1 8月 22.8 32.9 27.1 9月 23.6 33.3 27.8 10月 24.5 32.4 27.9 11月 24.8 31.4 27.3 12月 24.6 29.6 26.4 年平均 23.9 31.2 26.8

雨量の年間推移は、南スラウェシ州南部西岸部の平坦地域の気候が雨季、乾季の2シー

ズン気候であることを示している。年間雨量は 4,000mmを超え、日本の約 2倍、世界平均の約 4倍に達する多雨地帯である。 ただ、雨の降り方は一日中降り続ける「しとしと」型ではなく、午前から午後にかけて

晴れていて、夕方近くになって一気に大雨が短時間続くケースが多い。特に 2011年のケースは雨季、乾季の差が際立っている典型的な2シーズン気候だったといえる。 しかし、 近では乾季に雨が降る日数が増え、各地で時ならぬ洪水も起きている。

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表 17 マロス地区の雨量の年間変化(2011年) 月 雨量 mm 降雨日数

1月 864 24 2月 502 20 3月 576 27 4月 395 26 5月 206 15 6月 9 3 7月 1 5 8月 0 1 9月 0 1 10月 188 13 11月 470 20 12月 772 28 年平均 331.9 15

出典:イセ食品調べ

表 18 参考:州都マカッサル(ウジュン・パンダン)月別気温 月別 1

月 2 月

3 月

4 月

5 月

6 月

7 月

8 月

9 月

10月

11月

12月

平均 高

気温(℃) 30.7 31 31.3 32 32.1 32.5 32.4 34.3 34.8 34.6 33.5 31.3

平均 低

気温(℃) 23.2 22.7 23.3 23.6 23.4 22.9 21.7 20.1 21.2 21.7 22.7 23

降水量

(mm) 734 533 391 235 127 66 48 15 32 83 273 549

降雨日数

(日) 27 26 23 20 17 8 4 2 4 7 24 25

(注)年間平均=気温 27.5℃、 高気温 32.5℃、 低気温 22.5℃、降水量 3086mm

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第 4章 環境及び労働力確保 4-1 環境基準 4-1-1 アチェ州における環境基準 アチェの環境関連法規として、まず 1.インドネシアの国法である法律 No.32 環境保護

及び管理に関する法律がある。次に 2.法 No.27の環境許可に関する法律、及び 3.No.05の環境アセスメント(Environmental Impact Assessment、以下 EIA)と要求される事業に関する法律。最後に 4.環境許可を取得するために必要な書類手続きを示した法 No.16 のガイダンスから成っている。

図 21 環境基準

出典:スラウェシ大学配布資料 � 環境基準適合レベル 今回のプロジェクトに要求される環境手続きとしては、3種類の環境基準適合レベルの中

で、環境に対する影響が大きくないプロジェクトに該当するであろうことが、現地コンサ

ルタントや、担当官庁である KPTSPの担当者へのヒアリングで明らかになっている。

図 22 環境適合レベル

出典:スラウェシ大学配布資料

� 手続きフローチャート 手続きのフローチャートによれば、EIA が必須であるフローではなく、環境管理及びモ

ニタリングが必須のフローをたどることになり、EME/EME(Environmental Management Effort/ Environmental Monitoring Effort)に準じて書類検査を受け、それが審査されて最終的に許可が下りる流れとなる。

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� ガイダンス 必要書類の種類や作成要領等については、ガイダンスを参照し、必要書類を準備して申

請することになる。環境許可を受けた後は、建築許可も同じ担当官庁で継続して審査が可

能であり、ワンストップでの簡便な手続きで完了することができる。

図 23 手続きフローチャート 出典:スラウェシ大学配布資料

図 24 ガイダンス 出典:スラウェシ大学配布資料

� 環境基準 アチェには、インデネシア国法律 NO.32環境保護管理法に基づいて、排水や汚臭等に関

して規制値を示した条例がある。建設当初の仕様確認だけでなく、完成して運営開始後の

モニタリング等で、その規制値をクリアしているかどうかの確認を定期的に行う必要があ

る。 以下に、主要な規制項目についての条例を示す。

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特に、養鶏場に関しては、1.水質基準 条例 No.82、2.汚臭基準 条例 No.50、7.排水基準 条例 No.11が重要と思われる。

図 25 環境保護管理法における規制項目

出典:現地行政作成資料を独自で翻訳・作成

表 19 水質条例

出典:現地行政作成資料を独自で翻訳・作成

表 20 騒音条例

出典:現地行政作成資料を独自で翻訳・作成

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表 21 汚臭条例

出典:現地行政作成資料を翻訳・作成

表 22 排水条例

出典:現地行政作成資料を翻訳・作成

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4-1-2 南スラウェシ州における環境基準 アチェの環境関連法規と同様であり、1.インドネシアの国法である法律 No.32 環境保護

及び管理に関する法律がある。次に 2.法 No.27の環境許可に関する法律、及び 3.No.05のEIA と要求される事業に関する法律がある。最後に 4.環境許可を取得するために必要な書類手続きを示した法 No.16のガイダンスから成っている。

� 環境基準適合レベル 南スラウェシ州で事業をする場合、業種に関わらず、事業用地が 5 ヘクタール以上の広

さがある場合「環境影響評価」(Analisis Mengenai Dampak Linkungann Hidup、以下AMDAL)の提出が求められる。専門コンサルタントが水質、廃棄物、土壌汚染、地盤沈下、悪臭など多岐にわたり調査した結果をもとに、企業が周辺の環境を汚染、破壊しない旨を

州政府の保証する趣旨である。 事業用地が 5ヘクタール未満の場合は、AMDALより規制の緩い「環境保全努力」(Upaya

Kelola Linkungan)と「環境監督努力」(Upaya Pelestalian Linkungan)の提出が義務付けられている。企業が行政当局に対し提出する工場周辺等の環境を守る措置を取る誓約書

である。 上記の環境保全をめぐる書類が受理されると、事業用地を管轄する市、県当局から一般

の事業認可のほかに、周辺地区の汚染や迷惑をもたらさない方策を行政当局が承認した環

境対策認可証(HO)が発行され 企業は事業を開始することができる。 操業開始後に事業所から悪臭が発生したり、周辺地域に水質や環境などの汚染が発生し

て周辺住民から苦情が出た場合は、市、県当局は 企業が HO に記載された通りの環境保全対策、処理をしているかを調査し、違反が確認された場合は、環境破壊や住民の被害の

程度に応じて企業への警告から、事業認可取り消し処分までの制裁措置を課す。

� 環境基準法令・規則の運用の実態 インドネシアの環境政策は、環境省が環境政策から環境規制基準の策定や法制度の整備

などを政府主導で進めてきた。しかし、スハルト長期政権の崩壊後の民主化、地方分権化

の進展に伴い、南スラウェシ州も含めて環境行政の権限が州レベルから市、県レベルと移

行しており、結果として行政による環境問題への対応の遅れが目立っている。 現地調査において複数の関係者にヒアリングを行った結果、次のようなことが判明した。

マカッサル市や県当局は原則として、企業の環境対策を定期的にモニターはしない。州政

府・畜産動物衛生局によると 鶏、採卵事業も含む畜産業の事業申請の窓口は南スラウェ

シ州の BKPMマカッサル事務所である。しかし、最終的な投資、事業認可は事実上、中央政府の権限になっている。 しかし、BKPM が事業の最終承認が下りた後は、環境対策も含めて事業に関する監督は

南スラウェシ州政府ではなく、下部組織であるマカッサル市や各県の担当となる。このた

め、南スラウェシ州政府ならびに業界の担当部局である畜産動物衛生局は環境保全問題も

含めて、事実上関与はしない。 現地の複数の実業家へヒアリングを行った結果によると、南スラウェシ州政府の環境行

政は大きな課題があると考えられる。水産加工業で明らかに周囲に悪臭をもたらす(現に

周辺住民からの苦情も出ている)ことが予想される工場の場合でも、事業申請する際に何

の規制措置を求められず、操業開始後のモニタリングといった措置も取られなかったとい

う。 また、別の水産加工工場では住民から悪臭に関する苦情が寄せられても、市当局は具体

的な対応は取らずじまいになったまま現在も操業を続けているという。

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4-2 労働条件及び雇用実態 4-2-1 アチェ州における労働条件及び雇用実態 l 概況 長年の懸案だった中央政府とアチェ州の独立紛争は、2005年に結ばれた和平協定により

鎮静化し、アチェ州が経済発展に取り組める政治的、社会環境が次第に整ってきた。外資

も含め天然ガス、石炭、パーム油、水産資源など豊富な資源をめぐる企業の動きも次第に

活発化してきている。日本企業にとっても、過去の実例が少なくあまり知られてこなかっ

たアチェ内の企業従業員の労働条件、雇用実態を押さえることは、アチェ州でビジネスを

行おうとする本邦企業にとっても必須である。 尚、国際協力銀行2010年度海外直接投資アンケートにおいてインドネシアへの進出する

理由の第2位として賃金が安価であることが挙げられている。

図26 主要都市最低賃金比較:法廷最低賃金(月額、横浜=100として算出) 出典:JETRO 第20回アジア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2010年4月)配布資料

l 失業率 インドネシア中央統計局アチェ事務所によると、2013年8月のアチェ州全体の労働人口は 203万 4千人に達する。このうち、何らかの仕事に就いている就業人口は 182万 5千人で、完全失業者は 21万人余りである。8月時点の失業率は 10.30% である。ほぼ同時期の全国平均の 4%よりもかなり高く、その意味では進出企業にとり労働力は買い手市場の状態と言える。 労働-需給の経時変化を見ると、2013 年2月の労働人口は 212 万 3 千人だったので6か月間で 9万人近くが減っている。同時期の就業人口は 194万 4千人で失業率は 8.38%である。就業人口が減ったのは建設部門で 2 万 4 千人が職を失ったことが大きく作用していると見られる。就業機会が少ないアチェ州では建設工事の実施状況といった要因も労働力の

需給状況に影響することが窺える。 アチェ州の失業率が全国平均に比べて常に高いにはいくつかの理由が考えられる。一つ

は、スマトラ島の北西端にあり経済活動も含めて周辺地域との交流が限られるという地理

的な理由とアチェ州自体の市場規模が限られ、外部から製造業をはじめとする企業進出が

限られている点である。 二つ目は、GAM と国軍の間で 30 年近くにわたり断続的に武力衝突が起きていたため、

アチェ州への進出は投資家にとって安全面、治安面での懸念が大きかったことが挙げられ

る。外国企業はもとよりインドネシア国内企業もアチェ州への進出には二の足を踏んでい

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たことで、投資による新規の労働力需要が創出されにくかった事情がある。 一方、アチェ州側からみた場合、首都ジャカルタをはじめとするジャワ島の主要都市ば

かりでなくスマトラ島内部の主要都市とも地理的に離れている。隣接する北スマトラ州の

州都でスマトラ島最大の都市であるメダンからも 500 km以上の距離がある。そのため、移動が困難でコストがかかり、州外の雇用機会に参加しにくい面もある。たとえば首都ジャ

カルタとバンダ・アチェ間の航空機運賃は格安航空機(LCC)利用でもアチェの月間最低賃金を遥かに上回っている。隣州の北スマトラ州への出稼ぎも容易ではなく、アチェ州内

の失業率が高止まりする要因になっている。

l 最低賃金 前述したように、アチェ州の労働市場の需給関係は緩いにも関わらず、最低賃金は上が

りつづけている。2014年の最低賃金は月間 175万ルピア(独身者一人当たり)、あるいは 1日 7万ルピアである。前年(2013年)の月間 155万ルピアから 20万ルピアの大幅引き上げである。実施を義務付けられているのは現地資本の民間企業のほか、国営企業や政府機

関などアチェ州の各種法人すべてが対象とされており、当然、外資企業も含まれている。 最低賃金は単身者が1カ月生活するのに必要な額を賄える額を目安に各州や都市、県な

ど各自治体単位でそれぞれ独自に決める制度である。労働問題を管轄する労働移住省が定

めた方式に従い、政府関係当局者、労働者、経営者それに学識経験者で構成する最低賃金

委員会が現場視察も含めて算出する仕組みである。 2014年の最低賃金決定に先立ち、アチェ州の労働組合側は諸物価の値上がり幅が大きい、

と主張し、最低賃金を前年比で 65万ルピア増の月間 230万ルピアに引き上げるようアチェ州議会に要請した。 これに対し、インドネシア経営者協会(APINDO)アチェ支部は州議会に対して、(最低

賃金の算出根拠となる)生活費はそれほど上がっていない」とし、「230 万ルピアは物価上昇の実態を反映していない」と指摘し、前年比で 10 万ルピア増額の 165 万ルピアが妥当、と主張した。 また経営者側は経済成長率、失業率など経済のマクロデータも最低賃金を

算出する根拠に加えるよう求めた。 アチェ州の最低賃金はこうした労使の攻防の結果、1 カ月 175 万ルピアに落ち着き、ア

チェ州知事名で 2013 年11月に正式に発表された。2014 年のアチェ州の最低賃金決定のプロセスを見ると、物価上昇分が自動的に上乗せとなるケースが定着する傾向にあり、今

後の推移を見守る必要があろう。

l 実態賃金 しかし、こうした最低賃金の制度が存在する一方で、実際の賃金は最低賃金を下回って

いることを示す公式データも発表されている。 最新のデータがそろっている 2012年8月の場合、男子、女子、農村部、都市部の労働者

賃金を合わせた総平均は月間 113 万ルピアである。2012 年のアチェ州の最低賃金である155万ルピアとは大きな差があることが注目される。 内訳を詳しく見ると都市部、農村部の平均は男子が 122万ルピア(労働時間週 41時間)、

女子が 78万ルピア(同 33時間)で、単位当たりの男子の賃金は女子より約 25%高い。また男女を含めた都市部と農村部の比較では都市部が 113 万ルピアであるのに対して、農村部は 108万ルピアで都市部とはおよそ1割の開きがある。 中央統計局「賃金構造統計 2010-2011」の「畜産業における月間給与平均」によると男

子の場合、2011年の畜産業における現場作業員クラスで約 86万ルピア、現場管理職で 160万ルピアである。期間に多少の差があるで、厳密には比較できないものの畜産業における

アチェ州の給与水準は全国水準よりおおむね低いと考えられる。 一方、ここ 2 年の賃金上昇率をみると半年ごとに賃金総額で多少の波はあるものの、男

子で 27%、女子で 23%と増加している。この賃金上昇率は首都ジャカルタよりは低いもの

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の、同期間の全国平均と大差はない。アチェ州は首都から遠い遠隔地ではあるものの、賃

金上昇の例外ではないことが読み取れる。 アチェ州に限らず、最低賃金を採用している企業は外資系、大手企業が中心である。中

小零細企業はそもそも支払い能力に限界があり、とりわけ農業部門は組織化がほとんど進

んでいないため最低賃金は目安でしかない場合も多い。 ジャワ島でも労働者層が重なるメードといった職種では住み込みもあって食費や部屋代

込みの賃金の場合も少なくない。このため畜産業も含めた農業分野ではこうした労働条件

をめぐる議論そのものが難しいのが実情である。

l 雇用実態の展望 アチェ州では、政府軍と GAMの武力衝突が長年繰り返されたため、外国資本はもとより

インドネシア国内からの投資も遠のく状態がつづいていた。現にアチェ州に対する外資の

投資は、少なくとも GAMと中央政府の和解が軌道に乗る 2000年代半ばまでは年間でも数件程度と限られていた。 アチェ州に対するこうした外資企業の懸念はいまでも多かれ少なかれ続いている。現に

かつて GAMを国際社会で代表していたザイニ・アブドラ現アチェ州知事が「アチェ州は平和がすでに実現して治安は問題がない」と言明しても、日本は大手企業ばかりでなく政府

機関の中にもアチェ州を治安に問題があるとの認識を持ち続けて、立入りには組織の事前

許可を取るよう義務付けているところもある。 2006、2007年ごろからアチェ州への投資件数は増える傾向にあるものの、投資金額が限

られており 雇用環境がひっ迫するまでには至ってない。2013年11月には、州庁に多数の学生デモ隊が押し掛け、アブドラ知事に積極的な失業対策を取るよう強く要請したと伝

えられている。 一方、畜産業における労働組合の動きはいまのとろない。「数字に見るアチェ州 2012

年版」によると、アチェ州は13業種を労働組合に関する調査対象としている(2011年)。この調査によると9業種の147労働組合に 3,450 人の組合員が登録されている。しかし輸送、船員、農業(畜産を含む)、医薬保健の4業種、分野については労働組合の数や組合

員数は空欄となっており、現状の実態を確認する必要があると考えられる。 4-2-2 南スラウェシ州における労働条件及び雇用実態 l 概況 南スラウェシ州の労働者の賃金をはじめとする労働条件は、インドネシア経済の中心地

であるジャワ島各州により低く、一方でジャワ島からより離れ経済的発展が進んでいない

マルク諸島方面やパプア地域にある遠隔地各州に比べると高い傾向にある。 労働者の雇用機会も、農業を始めとする一次産業と地元密着型商業、飲食業を中心とす

る伝統的インフォーマル・セクターが中心である。高付加価値型二次産業、サービス産業

の進出もおのずと限定的であり、労働者は新規雇用機会の創出と言う意味で外資を含む州

外からの投資に期待している。 � 最低賃金 労働条件を象徴する最低賃金の水準は、基本的には中央政府の労働移住省が定めた方式

に則り、南スラウェシ州政府担当部局、労働者代表、経営者代表 学識経験者等で構成さ

れる最低賃金制定委員会が毎年11月に決定する。 2014 年 1 月から適用された南スラウェシ州の最低賃金は前年比 25%増の 1 カ月約 180

万ルピア(2014年 1月 20日段階で 1万 6千円)と大幅引き上げとなった。インドネシア経済の中心地であるジャワ島各州と比べると、最も高い首都ジャカルタの 244万ルピア(前年比 11%増)の 4分の 3の水準にあり相対的には低水準と言える。 しかし、過去の最低賃金の流れを見るとこ 10 年ほどで急上昇している。2014 年の最低

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賃金は 2010 年の 46 万ルピアのほぼ 4 倍に当たる。過去 10 年間をみると年により多少のばらつきはあるものの、南スラウェシ州の最低賃金は年間 10%から 20%の幅で確実に上昇しており、こうした傾向は今後も続くものと思われる。 最低賃金は州単位ばかりでなく、市や県単位で定めることができる。南スラウェシ州の

市、県は、最低賃金を 190 万ルピアと定めている州都マカッサルなど一部の例外を除き、独自に最低賃金を独自に定めずに、州の最低賃金をそのまま適用している。このため最低

賃金で見ると自治体間の賃金格差はない。 しかし、実態面では州内労働者の賃金の地域間格差は少なくないと推定される。まず、

最低賃金を採用している州内企業は大手、外資系企業に限られている。事業体の大半を占

める中小、零細企業や個人経営農家、さらに労働実態の把握が難しい農林水産業などでは

この水準に達していないケースも少なくないと推測されている。 現に中央統計局が実施している「賃金構造実態調査」によると 2010年、インドネシア全

国の畜産業における一般の男子日雇い労働者は、月給が約 86 万ルピア、女性は 56 万ルピアで同年の南スラウェシ州の最低賃金水準よりはるかに低いのが実態である。マカッサル

郊外マロス県の農場で卵を手で包装容器に入れる作業をしていた多数の若い女性労働者の

給料は、聞き取り調査に対して 100万ルピアよりかなり低い水準を証言した。 一方、南スラウェシ州の最低賃金はスラウェシ島内の周辺各州と比べると高水準にある。

東隣の東南スラウェシ州は 140万ルピア(前年約 112万ルピア 前年比 20%程度の上昇)、中部スラウェシ州は 125万ルピア(前年 99万 5,000ルピア)にとどまっている。これら隣接州の労働力は南スラウェシ州に労働力として流入しており、南スラウェシ州の雇用状況

に他所の影響を与えている可能性がある。 ※注 最低賃金は、単身者が 1 カ月暮らすのに必要な費用を賄える水準に設定される。最低賃金委員会が住居費、食費、交通費、教育費、光熱費など生活維持に必要な物価、サー

ビス価格の実勢を調べて決める。委員会には政府担当部局、労働者 経営者代表、学界専

門家で構成、労使双方から客観的な賃金基準と受け止められている。調査対象品目は自治

体ごとに決める。一般に調査項目が多いほど最低賃金は高くなる。 � 他の労働条件 インドネシアでは最低賃金以外の労働条件として労働移住省が定めた職務手当、夜間手

当、年次休暇手当など各種の制度がある。南スラウェシ州政府自身、州民の福祉向上の観

点から賃金と並びこうした条件の改善、実施を 2012年度の施政方針でも重点項目として取り上げてはいる。 しかし、実際には州政府が対象事業体あるいは、組織として想定しているのは政府関係

機関の事務所や大手企業、外資系企業である。外資としては米国系ではニッケル会社イン

コや大手穀物資本のカーギル社、動物飼料中心のタイのチャロン・ポカパンが飼料工場を

経営している程度である。大手外資については 10年ほど前に賃金が賃金や労働条件で大きな話題になって以来、大きな問題は報告されていない。 日系企業も限られている。在インドネシア日本大使館在マカッサル駐在官事務所による

と、同州へ進出している日系企業は 10年ほど前には 10数社を数えていたが、現在は 4社で雇用人員は推定 600人である。最近は表面化するほど大きな問題は起きていない。 企業の大半を占める中小企業にはこうした労働条件を必ずしも守り切れていないものの、

雇用情勢が厳しいこともあり、州政府当局も具体的な対応策はとってないのが実情である。 � 雇用実態 南スラウェシ州における雇用実態の一例を州都マカッサル郊外のマロス件を例に見る。

最大部門は農業部門で全体の 25%強を占めている。農業部門には水産業、畜産、林業も含まれており、労働人口の 4人に一人が一次産業に従事していることになる。

2番目は公務、サービス部門で 24%台。3番目の項目は、商業、レストラン、ホテルにく

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くられた部門で 23%台となっており、この3部門で全体の 4分の 3に達し、工業部門は 10%に達していない。 この中で注目すべきは商業、レストラン、ホテル部門である。一般的には流通業やレス

トランなど 3 次産業が盛んな様子がうかがえる。しかし、商業部門の実態は零細な露天商など伝統的な流通形態が大半を占め、レストランとされる項目にも道路わきに軒を並べる

屋台も少なからず含まれている。 工業部門の雇用吸収が 10%以下にとどまっていることは外資も含め製造業が活発でない

ことも示しており、南スラウェシ州の雇用は事実上一次産業及びその加工分野に依存して

いると言え、一次産業分野での新規雇用機会への期待は大きいものと思われる。

表 23 15歳以上就業者の労働業種別と性別人口 男 女 合計 割合

農業 22,316 11,405 33,722 25.38 工業 9,876 2,750 12,626 9.50 商業・ レストラン・ ホテル

13,879 16,892 30,771 23.16

サービス・ 公務

17,703 15,254 32,957 24.81

その他 20,544 2,232 22,776 17.14 一方、こうした南スラウェシ州の農業部門の雇用実態を、労働者の労働時間や収入から

見ると、全国的には一番高いジャワ島の各州に比べて低い水準にある。※(数字は暫定)

労働時間は 1週 40時間前後で、月間給与は 80万ルピアから 100万ルピアの水準にとどまっている。 また、男女格差も大きく、女子労働者は男子労働者に比べ2,3割低い状態にとどまっ

ている。マカッサル東部郊外のゴワ県、南部郊外のタカラール県の状況もマロス県とほぼ

同様である。これらマカッサル周辺地域はマカッサル市と経済圏を構成し、同じ通勤圏に

なっている。賃金水準はこれらマカッサル都市圏から離れるほど下がる傾向にもある。 鶏卵農場は大消費地マカッサルから北部も含めて州全体に分布している。各種データか

ら推測する限り、それら従業員の賃金水準は県単位の水準を反映しているものと思われる。 � 労働界をめぐる一般状況 労働界を代表するインドネシア労働組合総連合は(CITU)は 2013 年10月、日本の連合と共催でマカッサルの労働条件向上を目指す会議を開催した。1日目の基調講演で同連合のルスディ事務局長は、「豊富な自然資源と最大の労働市場・消費市場を持つインドネシア

の潜在的な経済成長力は高い。しかし、1日 1ドルの貧困ライン以下で生活する国民は 2012年9月時点で 2,880 万人もいる。各州平均の最低賃金額は単身者の最低生計費の 89%にすぎない」と指摘。「経済成長には労働者の購買力を高める必要がある。最低賃金額の引き上

げは、政労使の最重要課題である」と強調した。 この会に参加した組織は、主に 2 次産業労働者を対象にしており、畜産業を含む農業に

ついての言及はなかった。しかし、インドネシア労働界は賃上げと同時に 労働者雇用の

「アウトソーシング」反対を労働運動の核にすべく全国的な運動を繰り広げており、こう

した労働条件改善の要求が南スラウェシ州に広がる可能性も高い状況である。

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第 5章 現地立地調査の概要 l 概要 現地調査を進めて行く中で、アチェ州と南スラウェシ州のいずれの立地が事業実施によ

り相応しいか選択を行なった。 選択に際しては、商圏分析の他に、現地関係機関からの要望や、飼料入手、農業規模等、

近隣の養鶏場の事業規模などの他に、物流アクセスが大きな選定基準となった。 初回現地調査と第 2 回現地調査において、南スラウェシの候補地を調査したが、イセ食

品が独自に導入している近隣養鶏場との距離が 5km以上離れている条件に合致する立地は見い出すことが出来なかった。また、物流アクセスの不足が挙げられる。飼料運搬と養鶏

の搬出にはトラック輸送が行なわれるため、前面道路の幅が広くあることと、市中までの

アクセスが良いことが必要である。そのいずれにも見合うことは出来なかった。 背景としては、極めて小規模の養鶏場が複数点在している状態であることが挙げられる。

また、現地からの要望という意味でもアチェ州では州をあげての歓迎の雰囲気が感じられ

るが、南スラウェシに対してはその余り感じられない点も考慮している。 これらの調査結果を鑑み、当面はアチェ州の候補地の調査に集中することとした。

5-1 アチェ州の立地候補地調査の概要 5-1-1 土地と必要設備 l 敷地与条件の設定 敷地選定のための現地調査に先立ち、本事業の養鶏場に必要とされる条件のチェックリ

ストを作成した。チェックリストの条件を確認することで、敷地がどれだけ満足している

かが容易に判断でき、現地チームとの一体感のある調査が可能となる体制とした。 インフラについては、その敷地に電気が、敷地そばまで来ているか、また、水について

は、鶏への水の供給は毎日行われるので、十分な水量の地下水が存在するか、を確認する

ことは必須である。それに加えて、前面道路が十分な幅を持ち敷地に接道しているかどう

かは、毎日トラックが出入りするため、これも必要条件となる。 第 1期で、30万羽の成鶏舎を建設予定であり、そのための敷地面積としては、少なくとも50,000㎡、第2期から第4期までの増設も考慮すれば、合計 160,000㎡の敷地が必要となる。第1期のみでなく、最終的な必要敷地面積を想定して、その面積が確保できることを

確認し、敷地候補地を選定する。 敷地自体の高低差も重要な要素であり、特に鶏舎の配置エリアは同一レベルでの建設と

なるため、造成工事の費用をできるだけ低減するためにも、できるだけなだらかで起伏の

大きくない敷地を選定しなければならない。 敷地選定の際には、敷地測量と地質調査を行い、地下水の有無や、地耐力が建物を十分

支持できる値かどうかを確認する。さらに、インドネシアは地震国であり、アチェ市は 2004年にスマトラ沖地震により多大な被害を蒙っているので、調査項目に、活断層の位置の調

査を含めている。以上の包括的調査により、本事業に最適な敷地を選定するための調査を

行った。

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表 24 選定チェック項目

・ 第1回敷地調査 敷地調査は 2回にわたり行われた。 第1回目の現地調査は、2013年9月4日に行われた。事前に作成された敷地条件確認の

ための、チェックリスト パート 1を用いて、現地チームにより、いくつかの候補地が既に用意されていて、それらの敷地が今回の与条件に適合するかどうかの確認を行った。 第一の敷地は、Blang Bintangにあり、アチェ市内からも、港からも距離的に近く、敷地広さも、要求される 16万㎡の確保が十分に可能と思われた。 しかし、下記のアチェの既存養鶏場のリストに記載されている、Pendaの政府管理の養

鶏場(建設中)が、この敷地に隣接していることが判明した。基本的に、鳥インフルエン

ザ対策から、新養鶏場は、他の養鶏場から最低 5kmの離隔距離をとる必要があるため、この敷地は残念ながら不可とされた。 この Blang Bintangの敷地が不適合だったため、予定には無かったが、調査チームメン

バーの推薦する Kurung Rayaの敷地を急遽、視察した。現地に到着して実際に見て歩いたところ、この敷地は、敷地面積も 16万㎡を十分に確保できると思われ、また、起伏も大きくなく敷地候補として十分条件を満たしているように思えた。しかし、チェックリストで

の確認は未完了であったため、次回までにチェックリストを作成し、条件の確認を行うと

いうことで、候補地として残すこととした。 その他の敷地候補として用意していた Janthoは、アチェから遠く、また、Indra Puri

と Samahamiは近くに人家があるということで、不可とした。

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27

25

2013 Blang Bintang

Penda 3km5km

Kurueng Raya

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図 27 敷地位置図

表 26 Kurueng Rayaインフラ状況・チェックリスト

図 28 Kurueng Raya敷地写真

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l 測量報告概要 � 電気探査

Kurueng Rayaの候補地に対して、測量調査業務を行った。 敷地の地下水の有無は本事業にとって非常に重要であり、そのため、優先的に地下水調査

のための電気探査調査を 2013年11月に行った。 敷地は火山性の安山岩や砂岩を主としており、その上部を砕石や土壌が覆う構成となっ

ている。電気探査は、敷地東側の道路境界線よりほぼ直角に 200mから 300mの長さで、Line Zから Line Wまでの4つのライン上において電気の抵抗値を計測し、その差で地層を判別する調査を行った。 その結果が下記の地質断面図である。これによると、各ラインとも地下 30mまでの深さ

に大きな地下水脈があり、特に LineXと LineWでは、地下 50mを超えて大きな地下水脈があることが分かる。地下水量の最終的な確認にはさらなる調査が必要だが、本敷地には

十分な地下水があることは確認できた。 今後、地質調査及び全体高低測量等を引き続き行い、地耐力確認、敷地平面図の作成を

順次進めていく予定である。

出典:現地調査に基づき独自に作成

図 29 電気探査位置図 図 30 電気探査現地

図 31 LineZ地層断面図 図 32 LineY地層断面図

図 33 LineX地層断面図 図34 LineW地層断面図

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� 活断層 敷地周辺について、事前に活断層の有無の調査も行った。それによると、スマトラ島、

特にアチェは大きな二本の活断層が縦断しており、その東側の一本が、Kurueng Raya敷地近辺を通っていることがわかった。インドネシアでは、活断層の近くでも建設を行うし、

特に耐震性能を上げることも法的に義務付けられてはいない。日本では、徳島県で初めて、

活断層の両側 20mは建設をしないように義務づけた条例が施行されている。本事業の敷地はこれらを考慮し、活断層から少なくとも 100m以上離れているエリアを設定している。 5-1-2 飼料調達条件 飼育の規模については、発足当初は飼育羽数 30万羽を予定している。計画段階では飼料

生産基地は一応国内で確保されているが、飼料工場の採算基準としての最低 100万羽 規模の損益分岐点を大幅に下回るレベルでもあるため、開始時点においてはアチェ州の

隣国から輸入する事を前提としたい。 飼料原料のベースはトウモロコシであり、アチェ地区では年間二毛作が可能である。 しかし現在は、現地の農地の多くが休耕地となっており、養鶏場建設に併行して将来展

望を予測して耕作に向けた農地改良を行う必要がある。現地で生産されている飼料原料(ト

ウモロコシ)を昨年7月時点で入手しサンプルを、(一般財団法人)日本食品分析センター

で、残留農薬 250 項目の分析試験を実施したが、結果は陰性ではあるものの、アフラトキシンB1は、日本の飼料規制値 20ppbに対して 44ppbと高い値を示し、その他各種クリアする課題がある。

表 27 日本食品分析センターの分析試験成績書(別添)

東南アジア地区は、湿度が高いため検出率・検出値が高くなる傾向があることは注記し

たい。 l 世界の飼料穀物の動向 全世界での飼料穀物の生産量は、おおよそ11億トンであり、うち75%がトウモロコシで、

残りが大麦やマイロ等である。この 11 億トンの飼料穀物について、生産量が多い地域は、米国(30%)中国(17%)・EU(13%)であり、残りの 40%は世界中のさまざまな国で生

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産されているが、日本では殆ど作られていない。 世界中で生産される飼料穀物の殆どは、生産した国で自国消費されているのが実態で、

全体の 1 割程度が国外に輸出されている。日本は飼料穀物を殆ど自給していないため、この輸出された飼料穀物を入手消費している。 トウモロコシの需要が近年大きく高まっていることは周知の事実であるが、特に最近は

バイオエタノール燃料の製造の為の需要の急増加が 2006年以降起こり、これが価格高騰の原因にとなった。 トウモロコシの最大の用途は飼料用であるが、アメリカでは飼料用とエタノール用の需

要がほぼ同じ水準にまで伸びている。また、中国の需要が伸びていることも大きい。中国

の飼料用トウモロコシ需要は、この 20年間で 7,000万トンから 22,000万トンと約 3倍に増加している。現在、トウモロコシの最大輸入国は日本であるが、これを中国が抜く日は

そう遠くないと言われている。 このように、トウモロコシの世界的需要・供給バランスを中・長期的に見ると、世界の

飼料穀物、特にトウモロコシの需要については、アメリカでのエタノール需要や中国の畜

産需要が大きく影響する。これらの需要増加に対応するには、アメリカだけでなく、世界

的な飼料穀物の増産なしには応じることが出来ないと言われている。 その為、南米を中心とした国の生産拡大が期待されているが、これらの国は飼料穀物の

生産方式がアメリカほど近代化されておらず、豊作・凶作の変動が激しい。各国内の物流

インフラの整備も遅れており、中間コストが高くなる傾向がある。時期によってアメリカ

産と比べてコスト的な魅力があるが、国際的な競争力が必ずしも高くないのが現状である。 今後、中国の輸入量がさらに増加し、飼料穀物の最大の輸入国である日本を超えること

になれば、国際市場を舞台に飼料穀物の争奪戦が激化するであろう。そのため、アメリカ

産に限らず世界さまざまな産地からコストパフォーマンスに優れた飼料穀物を輸入し、活

用することが求められている。現在業界で注目されているのは、アメリカ以外にはブラジ

ル・アルゼンチン・ウクライナ等が対象になっているが、インドネシアはこれらの諸国か

ら比べて、成長性の高いアセアン地区への供給拠点と成り得る可能性を秘めている。

l アチェ州の飼料穀物の状況 今般の調査でも確認したことであるが、現在アチェ州で生産されたトウモロコシは、大

半は原料として隣国に出し飼料として再輸入している。この間で価格が高騰することにな

り、想像を超える高い価格での購入を余儀なくされている。 アチェ州は休耕地活用により、今後安定したトウモロコシの生産形態を想定しており、

雇用拡大する上で、鶏卵生産以外の農業従事者を増やす事も期待出来るであろう。課題と

してはトウモロコシの品種改良、品質向上を考える事が不可欠となる。BOP ビジネス連携促進を推進している段階でアチェ州から紹介された、シアクアラ大学・農学部から品種改

良も多角的な面から検討している話もあり、将来的には日本向け・東南アジアに適した商

品開発を行い、自給・自足から脱皮したトウモロコシを有力な輸出製品に仕上げることも

検討できるであろう。 5-1-3 鶏糞処理の在り方 鶏糞処理には各種方式があるが、現地の状況を元に飼育方法・糞の成分・処理した廃棄

物の有効的活用等から検討することが必要となる。本件では BOPビジネス連携促進の趣旨から採算面を最優先にすることをふまえ、日本でも一番多く使用されている発酵方式で処

理する方式を基本に考えたい。 具体的には、以下のように考察した。焼却方式は多額な設備投資が必要でかつ高度な運

転技術を要すること、定期的なメンテナンス等本件には不適当であると判断する。日本国

内においても採用しているケースは少ない。産業廃棄物として処理する方法もあるが、イ

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ンドネシアにおいては鶏糞を外部処理することは病原菌を撒き散らす原因ともなり、やは

り不適切と考える。発酵方式は、養鶏場敷地内で管理・発酵・運営等をさせることで、作

業工程も簡便であり、コストアップを避ける点でも最良の方法と考える。また、付随効果

として、周辺農地の農地改良に向け最良の肥料供給が出来るものと考える。 鶏糞処理については、現状で運用可能な案を主体にしているが、合弁相手とも協議の上

最良な手段を模索したい。インドネシア国内で末永く成長する養鶏業の模範となるような

運営方式を実現したいと考える。鶏糞は資源である、との認識を本事業にも活かしたい。 l 鶏糞発酵処理工程 ① 前処理(混合) 生鶏糞1:二次発酵品1

② 一次発酵 10日~14日間保管

③ 切返し

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④ 二次発酵 7日~10日間保管

⑤ 切返し

⑥ 三次発酵・熟成 52日~63日間保管

⑦ 櫛掛け

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⑧ 袋詰め

⑨ 製品

5-1-4 販売網整備の為の条件 販売網確立が本事業成功の最大のカギであり、慎重且つ大胆に推進する必要がある。提

携企業先が食品関連企業であるか否かによって展開方式も変わる。当初想定した提携先以

外にも候補先が挙がっており、さらなる調査を進めながら、多岐に亘る販売ネットを作る

ことを事業化に向けての優先事項としたい。 本事業は、安全・安心な鶏卵供給をテーマに、生産過程から、衛生管理・餌・添加物の

安全性確認・雛の遺伝子調査・流通におけるチルド化・店頭に於ける温度管理等で高基準

を目指し、要員の教育を徹底し、販売網確立を直販・間販二本立てで推進する計画である。 直販のチャネルとしては、現在日本国内で事業展開を行っている企業が既にインドネシ

ア進出を実施しており、これら企業を第一のターゲットとしたい。次にアチェ州の住民の

食生活改善の第一歩として、既存の問屋を活用しての現地消費者向けの卸企業ネットワー

クを構築したい。 安全・安心・信頼を前面に出し、消費者とのパイプを出来るだけ短く、迅速に供給でき

る体制が本事業のポイントであり、そのためにも提携する企業の優位性を有効活用するこ

とが必須であると考える。 イセ食品の海外事業展開の基本方針は次の3点である。

� 競争優位を深める � 競争優位を拡げる � 優位な商品、又はサービスに対する需要を増やす。

競争優位の一つはコスト大きく上回る価値を提供することだが、「深める」とは、その価

値とコストとの格差の拡大を意味する。 そのためには、価値と価格を高めて価格を引き上げるか、コストを押し下げるか、その

両方が必要になる。既存の競争優位を「拡げる」とは、新しい分野、新しい競合市場へ進

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出することで、自社の強み(衛生管理・品質管理)とする。 いずれにしても、イセ食品が保有する販売・生産を活用させることで賢く活用し、行動

の効率を2倍・3倍に高めることを戦略として徹底をする。 合弁相手を早期確定し、更なる販売網確立を設定する。

5-1-5 雛鳥調達の方法 イセ食品の過去の経験でも、インドネシアのような高温多湿気候での導入実績はなく、

現在採卵系雛に関する情報を集め、約 30種の品種の中から適性品種を選択抽出しているところである。特に学術的な面で、関係官公庁・大学等の博識者等・インドネシアにおける

雛の生産企業から情報を収集しているが、雛のレベルからの導入は、スタート段階の 30万羽のケースでは難しいと考える 円滑な事業開始を考えた場合、ヒヨコ(日齢 120 日位)をまず導入し、養鶏場の規模が

充実・拡大した時に雛鳥を購入し、安定した衛生管理を含めた生産面の必要な処置を進め

ることとする。 前述の通り、高温多湿に見合った雛の生産実験を行い、あらゆる段階での対応に目途が

ついた時点で、雛からの導入に踏み切りたい。インドネシア国内で養鶏場は一部を除いて

小規模経営であり、数十万羽体制の運営は前例もなく、従業員の基礎教育から、現場体験・

業務連鎖・最終完結に至る生産面の完璧を目指す為には、雛導入に於いて間違った選択は

許されず、調査段階での徹底した情報分析が重要であると考える。 世界第 4位の人口構成であり、市場は豊富で潜在需要を含めて期待は大きいが、産卵率・

死亡率等の多項目に至る調査条項を完全に網羅し分析した上で雛鶏種を選定することが、

本事業成功の絶対条件である。具体的には、家畜畜産予防法における感染率の高い病気に

強い雛鶏を選択することが要諦である。特に鳥インフルエンザは発生後の感染スピードが

非常に速いこともあり、衛生管理面が確立されている雛を選択する必要がある。

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現状では、事業実施候補地 10箇所以上の実査を行なったが、道路アクセス、水利用(上水設備及び井戸水の状況)、排水、市街地からの距離、近隣養鶏場からの距離、地盤、活断

層等の総合的な調査を進めている状況であり特定されていない。 複数の候補地に共通していることは、多少の起伏や土地の形状に差異はあるものの、更地

であり、多くが造成済みの状態である事である。 本事業で想定しているのは、用地の取得ではなく州政府保有地からの賃借であることから

も、すべての候補地に農耕地としての利用や、住居としての利用はみられない。 そのため、本事業の実施に伴い非自発的住民移転は生じない。 また、いずれの候補地からもその 3km以内に住民はいない。 l 自然環境 � 保護区 いずれの候補地も当該国の法律・国際条約等に定められた保護区内に立地していない。

また保護区は近隣に存在していない為影響を与える事可能性はないと考えられる。 � 生態系 いずれの候補地も、原生林、熱帯の自然林、生態学的に貴重な生息地(珊瑚礁、マング

ローブ湿地、干潟等)を含まない。 いずれの候補地も、当該国の法律・国際条約等へ保護が必要とされる貴重種の生息地を含

まない。いずれの候補地も、貴重な野生生物の繁殖の場が存在していない。 l 社会経済状況 • 概要

2000年に行なわれた国勢調査によると、インドネシアの総人口は 2 億 584 万人であり、 中国、インド、アメリカに次ぐ世界第 4 位の人口規模を有している。 人口はジャワ島に集中しており、2006 年の政府推計によれば国土面積の 6.95%のジャワ島に人口の 58.51%(約 1 億 3 千万人)が集中している。ジャカルタ首都特別州は、国土の約 0.04%の地域に総人口の 4.0%(約 900 万人)が居住している。人口密度 は 13,499 人/km2 となっており過密地域となっている。 本調査の対象地は、ASEAN諸国の中では GDPが高いインドネシアであるが、ジャカル

タやスラバヤのような経済的な発展を遂げる大都市と異なる遠方の地方都市である。また、

農業従事者が人口の大きな割合を占めており、所得格差が大きいのが現状である。アチェ

州は 2009年の調べで 5百 20万人の人口である。面積は 57,365.57㎢であり、90.64人/km2となっている。インドネシアの中でもイスラム教が盛んな地域であるアチェは、1950年の特別州の設置後もイスラム教国樹立への運動は衰えず、1976 年には『独立アチェ運動 (GAM:Gerakan Aceh Merdeka)』がアチェ・スマトラ国の建国を宣言し、以後 29 年間に渡って武力衝突が続いた背景がある。しかし、2004 年 12 月 26 日に発生したスマトラ島沖地震の震源地にもっとも近いアチェでは、12,6915 人の死亡が確認され、37,063 人の行方が分からないという壊滅的な打撃を受けた。

• 労働人口及び失業率 世界4位の人口であるインドネシアにおいてはアチェ州であっても労働人口の絶対数は

多い。

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表 28 労働人口及び失業率

出典:インドネシアの地方自治 財団法人自治体国際化協会が 2007年の Badan Pusat Statistik(中央統計局) 「Statistik Indonesia 2007」を基に作成

(注)前述の人口、面積、人口密度とは若干差異が生じている

人口ピラミッドの通り、若年層の比率が大変高いのが特徴である。その反面、インドネ

シア全体の失業率は改善したものの依然として高いのが現状である。特に畜産業従事者の

失業率が高いことと、都市部と農村部の失業率及び賃金の格差が特徴である。

図 37 人口ピラミッド 出典:Badan Pusat Statistik(中央統計局)

また、年齢別の失業者の割合でも 20-24歳の範囲が際立って高いことが分かる。

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表 29 年齢別失業者数

出典:Badan Pusat Statistik(中央統計局)

図 38 インドネシアの失業率の推移

出典:Badan Pusat Statistik(中央統計局) 6-3 相手国の環境社会配慮制度 ①環境配慮(環境影響評価、情報公開等)に関連する法令や基準等 l 関連法制度の概要 環境基本法にあたる法律は2009年法律32号の環境管理法が該当する。1982年に作られた

法が1997年に大改正され、事業活動に対する環境規制強化、罰則強化、紛争処理に関する規定の充実、国民の環境情報に対する権利規定の導入等が行われた。そして2009年の大幅な改正で環境当局の監査権限や罰則が大幅に強化された。 インドネシア政府の環境に対する基本概念が制定されたのは、1945 年であり「全ての

人々は繁栄的且つ健康な環境で生活し、保健のサービスを享受する権利を保有する」と憲

法の第 28 条及び第 33 条 に記載されている。 環境法体系は1998年以降に急速に進んだ地方分権の流れに沿って、個別の水質や大気の

管理等については政令で規定されている。例えば、水質汚濁の防止及び水質管理に関する

政令(2001年82号)、大気汚染防止政令(1999年)、有害廃棄物管理政令(1999年)、環境影響評価政令(1999年)、関係する法律として地方自治法(2004年)、廃棄物管理法(2008 年)などがある。 l インドネシアの環境に関する重点政策

2000年から2004年における環境戦略計画の重点施策は、地方政府能力と住民の能力強化、発生源負荷削減、自然環境保全及び組織強化であった。

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2005年から2009年における環境戦略計画においては、持続可能な開発、天然資源の保全、環境汚染防止などが重点政策であった。

2010年から2014年における環境戦略計画においては、『グリーン経済に重点を置き、信頼される能動的な組織としての環境省を通して、持続可能な開発を実現する』が重点政

策としてあげられている。具体的な活動として、環境省は中小企業におけるクリーナープ

ロダクション(CP)を通して公害対策の推進を目指している他、環境技術認証の検討も進めているのが現状である。また市、県レベルの環境・公害対策としてはランキング制度

(ADIPURA)の導入等を実施している。 • 求められる許認可 承認手続き 本事業はインドネシアの環境保護管理に関する法律第 32号に基づいた手続きを行う予定

であり、その際の環境関連手続きに要する期間は書類準備に 3 ヶ月、許可申請 1 ヶ月の合計 4 ヶ月と見込まれるので、次のフェーズ(養鶏場建設準備段階)において、必要な手続きを行う予定である。 • 事業に際し承認手続きが必要となる環境社会配慮関連許認可 水質管理は2001年政令第82号に基づいている。第2章において (1)州または国境を越え

る水域は中央政府、(2)県または市をまたぐ水域は州政府、(3)県内または市内の水域は県または市が管理権限を遂行するとされている。その他、水質モニタリング(13条)、排水課徴金制度(24条)、排水許可証(40条)などの義務事項がある。この政令についての具体的なガイドラインは「水質汚染防止に関する環境大臣規則」(2010年第1号)に定められている。インドネシアの水質に関する基準No.82に準じて次のフェースにおいて行なう予定である。井戸水は、事前に水質検査等も行う予定である。

• 環境影響評価制度 インドネシアでは、1986年に環境影響評価制度 (AMDAL)が導入されている。これは旧

環境管理法第 16条の規定 (環境に重大な影響を及ぼす可能性のある事業は環境影響評価の実施が義務づけられている)に基づいている。更に、1993年に制定された「環境影響評価に関する政令」(第 51 号)において、スクリーニング工程簡略化や複数の省庁が関係するプロジェクトの審査に関する事が記されている。AMDAL の対象となる事業の種類や規模に関しては、「環境影響評価を実施すべき事業または活動及び規模に関する環境大臣令(2001年第 17号)」に定められている。 ②JICA環境ガイドライン(2010年 4月)との乖離 本事業実施にあたっては JICA 環境ガイドライン及び現地の法規制にに準じて行なう予

定である。(別添チェックリストを参考) ③関係機関の役割

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表 30 インドネシア各省庁における環境対策に係る役割

省庁 役割 公衆衛生省 衛生設備(下水処理) 農業省 再生資源管理、水産資源管理 林業省 森林、自然保護 エネルギー・鉱物資源 省 非再生資源管理、エネルギー及び発電に伴う汚染に係る対策 工業省 産業汚染対策 公共事業省 水質管理、都市計画 運輸・通信省 大気汚染対策、車両騒音公害対策 観光省 娯楽施設の騒音公害対策 人的資源省 労働環境、労働衛生の改善 移住省 土地利用 商業省 保護動植物に関する貿易管理 探査・技術省 地質生態・海洋資源管理 教育文化省 環境教育 司法省 環境立法及び法制化 内務省 地方政府の監視、州及び地方の環境官庁の設立 国家原子力局 放射能に係る対策

出典:ジェームス・イーストコット. 「タイ、インドネシアの環境政策の現状」, 世界の環境法, 国際比較環境法 センター編, 1996.

図 39 インドネシア行政組織図

出典:インドネシアの地方自治/財団法人自治体国際化協会

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l 地方行政制度 地方政府の事務に関する 2007 年政令第 38 号(以下「事務令」と いう)により、次の

31の行政分野の事務を遂行するのが役割とされている。 a.教育、b. 保健、c. 公共事業、d. 住宅、e. 空間計画、f. 開発計画、g. 運輸、 h. 環境、i. 土地、j. 人口・住民登録、k. 女性・子供問題、l. 家族計画、m. 社会 問題、n. 労働力・移住、o. 協同組合・中小企業対策、p. 投資促進、q. 文化・観 光、r. 青年・スポーツ・国民団結・国内政治、t. 地方自治・住民行政・地方財政・ 地方政府機関・公務員・暗号管理、u. コミュニティ、村行政の強化、v. 統計、w. 公文書管理、x. 図書館、y. 情報通信、z. 農業・食糧問題、aa. 林業、bb. エネル ギー・天然資源、cc. 海洋・漁業、dd. 商業、ee. 産業

インドネシアの地方行政は、 1.州政府、2. 県・市、 3. 郡・区・村に分類される。州政府は、中央政府から委任を受けた業務及び県・市を跨がる業務を担当している。県・市

は、地方自治体の行政主体として、管轄する区域での基礎的行政サービスを提供する。(県

の設立には5つ以上の郡を必要としており、市の設立には4つ以上の郡を必要としている)

郡は、県・市行政の一部としての行政施策とともに、区・村の指導を行う。区は、地域住

民にとっての身近な行政単位であり、地域活動の強化等を行う。村は、主に農村部に存在

し、地域住民の利益を調整する共同体を示す。

図 40 中央・地方分業

出典:インドネシアの地方自治/財団法人自治体国際化協会(2007 年政令第 38 号を元に作成 )

図 41 政府構成

出典:インドネシアの地方自治/財団法人自治体国際化協会(団体数は Badan Pusat Statistik(中央統計局) 「Statistik Indonesia 2007」による 2006年末の数値)

6-4 スコーピング及び影響の予測 事業実施による影響を勘案し、以下のように A. B. C.D に分類して、影響の程度及び根

拠を示す。また、それぞれの影響項目にいて、影響の予測について以下に記す。

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表 31 事業実施による影響の予測

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工事中:水の使用は殆どない。

施設運営時:地下水のくみ上げは日量10トン程度の少量で周辺及び下流域への影響は少な

く、また、排水についてもインドネシアの法規制に従って排水基準を遵守して行われる為影響

はないと考えられる。

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11 �Æ D D地下水のくみ上げは日量10トン程度の少量で周辺及び下流域への影響は少なく、また、排水

についてもインドネシアの法規制に従って排水基準を遵守して行われる為影響は殆どないと考

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6-5 影響の評価及び代替案の比較検討

6-4における影響が想定される各項目について代替案を検討した。 代替案を採用することによる影響の評価を以下に記す。

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71

表 32 代替案による環境評価

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6-6 緩和策(回避・ 小化・代償)の検討 本事業実施により影響を及ぼす要因として鶏糞の処理方法及び排水の処理について、以

下のような代替案(緩和策)を検討している。6-5に記した通り、代替案による環境評価の変化の予測はいずれも正であり効果が期待できる。 � 鶏糞の発酵処理について 本事業では発酵方式の導入を検討している。現状で運用可能な案を主体にしているが、

合弁相手とも協議の上 良な手段を模索したい。インドネシア国内で末永く成長する養鶏

業の模範となるような運営方式を実現したいと考える。

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72

� 排水処理について 井戸水等は、タンク貯蔵で大気にふれることなく衛生的であり、また、雨水も十分な排

水勾配をとり、たまり水の無い計画とする予定である。 地下水のくみ上げは日量 10 トン程度の少量で周辺及び下流域への影響は少ない。また、

排水については、事前に適正処理を行ない有害物質の流出を未然に防ぐ設備を導入する予

定である。インドネシアの法規制に従って排水基準を遵守して行われる。 � 労働安全衛生管理 イセ食品が我が国で導入している衛生管理手法(入り口等での消毒の徹底)を導入する

ことにより感染症の蔓延リスクは大幅に改善できると考えられる。また、作業員のマスク

着用、消毒済みの専用の作業着の着用等の義務づけ、作業員への分かりやすいマニュアル

の作成などの実施を予定している。これらにより、感染症蔓延の防止、労働安全衛生の改

善に寄与すると考えられる。 6-7 環境管理計画・モニタリング計画(実施体制、方法など)の検討及び予算、財源、実施体制 環境管理は、専門の担当者を配置し以下のモニタリング計画に則り適性に行なう予定で

ある。また、環境管理に関する費用は、予め予算として計上し施設運営時にも継続的に行

なわれるように徹底する予定である。当初予定の 30万羽規模の施設であれば、担当者の配置は1名を予定している。

表 33 モニタリング計画

6-8 ステークホルダー協議の開催支援 現時点においては立地が確定していない状況である。また候補立地の半径 3km程度に住

民はいないことと等を鑑み、住民集会に関しては今後の調査により確認する予定である。 しかしながら、現在のところ以下のステークホルダーへのヒアリングは既に実施している。 現在のところ、否定的なコメントは一切なく、寧ろ積極的に進出を支援したいとのコメン

トが多数寄せられている。 • アチェ州知事及び副知事 • バンダ・アチェ州議会 議長及び副議長 • アチェ・ブサール 県知事 • アチェ州畜産局(畜産局長及び担当部署) • 地元企業

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73

l アチェ州の一般住民へのヒアリング結果 バンダ・アチェ市内で聞き取り調査を実施した。

表 34 ヒアリング詳細 日時 2013年 12月 1日~12月 15日

場所/人数 シャクアラ 大学

周辺 10名 コタバル 10名 クランラヤ 5名 バンダラヤ 10名 バンダールバル 10名 クタアラム 5名 対象人数合計 50名

ヒアリング内容:日系企業によるアチェ州への鶏卵製造農場進出に対してどのような懸

念があるか?もしくは期待するものは何か? 【コメント】 � 懸念するコメント 0件 � 卵の価格を安くしてほしい 48件 � 雇用して欲しい 50件 � アチェ州の為に貢献して欲しい 27件 � 是非鶏卵を購入したい 9件 � 技術移転を期待している 6件 � 合計 125件 今後ステークホルダー協議の実施日、場所、方法、参加者、協議内容、参加者からのコ

メント、コメントの事業計画への反映等については検討課題としている。 � 用地取得・住民移転について 本事業においては、州政府保有地の貸借を予定しており、土地に対する所有権移転は発

生しない。また、候補地に居住している住民もしくは、近隣に住民が存在していないこと

から、本項目については該当しない。

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74

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environmental$and$social$guideline$published$on$Apr.$2010$by$JICA.

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75

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Any$deterioration$by$the$too$much$pasturage$will$be$appeared$in$the$growing$circumstances$or$be$changed$to$thedesert$?

Any$mesures$will$be$taken$in$case$of$such$deterioraion$to$the$biologilal$system?

In$case$that$the$project$will$lose$the$area$for$the$valuable$wild$animals$to$grow$up$or$to$eat$,$the$alternative$area$canbe$secured$near$the$site

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Any$bad$influence$to$the$fishery$or$use$of$water$in$the$down$stream$area$will$be$appeared$by$the$drawing$up$of$theground$water?

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第 7章 事業計画の具体策 7-1 ビジネスモデル、実施スケジュール、事業コストとリスク等 l ビジネスモデルについて � 第1段階 アチェ州に養鶏所建設・運営 1棟当たり 3万羽の成鶏を収容できる鶏舎を 10棟建設、合計 30万羽の養鶏農場を建設

する。現地でのヒアリングにより、同州の鶏卵需要は現時点でも 130 万羽分に相当しているが、同州内の養鶏場による供給能力は 30万羽分にすぎないため、販売は充分に可能であると考えられる。平成 27年に生産を開始するが、初年度の赤字はやむを得ないものの、翌年 28年には収益面でプラスとしたい。生産・販売量は初年度が 820トン、次年度 6,500トン、3年度 13,000トンと順次拡大していくことができると想定している。 � 第2段階 100 万羽規模への拡張

BOP ビジネスが目標の一つとする鶏卵価格の低下によるインドネシア国民の健康増進寄与という役割から考えると 30万羽の供給は需要を満たしていない。 次の段階としては規模を拡張する事を予定している。 � 第3段階 飼料工場建設 同州内には鶏卵農場にとって基礎的な資材ともいえる飼料工場や若雌業者などがなく、

これらについても 610km遠くにあるメダンから購入せざるを得ない。コスト低減につながる資材の自己調達、州内調達を実現するためにはトウモロコシをはじめとする各種穀物生

産及び加工へと事業分野の拡大を図ることが必要である。さらに、孵化場、種鶏場、成鶏

農場、商品包装工場を併設することも将来の構想として用意していきたい。 上記の3段階を推進して行くと共に、以下の実施を検討している。

� 穀物生産設備・穀物貯蔵設備の建設 � 鶏糞を活用したバイオ燃料製造設備建設 � 余剰生産物の日本への輸出 � アチェ州近隣への販路拡大 � トウモロコシ等の生産・販売・流通等で提携を検討 � 首都ジャカルタ近郊での鶏卵農場建設を推進

• アチェ州とジャカルタの両拠点で人材を共有 • 人材育成の一元化 • 経理や営業部隊の共有 • 飼料等の物資共同購入

� 日本での研修により技術移転を図る

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図 42 本事業の推進体制とビジネスモデル

ビジネスモデル構築を図る為に幾つかのフレームワーク分析を実施した。

表 34 マクロ環境分析(PEST分析)

項目 内容 政治 本調査に明らかになったように、インドネシア政府の外資参入の促進

が図られている。更に今後許認可等で関係があるアチェ州行政機関か

らの強い要望がある事からも、障害が少ない事が考えられる。 経済 スマトラ島沖地震の最大の被災地であり現地経済は疲弊している。失

業率も高く、所得格差も深刻である。しかし、徐々に回復基調を歩み

始めており、インドネシア全体での経済成長のプラスの波及効果がア

チェ州にも浸透してくる事が考えられる。 社会 鶏卵を食するライフスタイルが都市部や富裕層で浸透してきており、

食文化の大幅な変更が見られる。(2-3参照) 技術 イセ食品の技術は世界的に見ても先駆的であり、インドネシアにおい

ては競合する相手は存在しない。

図 43 業界構造分析(5F分析)

同業他社間の競争が激しくなれば、価格競争により自社収益が減少する可能性は否定で

きない。業界内競争で生き残る企業は、大規模事業者であるのが経済原則である。これら

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を鑑みると業界構造分析上本ビジネスのデルに重要な懸念を生じさせる事項は見受けられ

ない。 今後想定されるビジネスモデル上の経営課題を抽出する為のクロス SWOT分析を行なっ

た。

図 44 経営課題分析(クロス SWOT分析)

アチェ州の歴史的背景から政治情勢に拠る影響等の外的要因が今後の成長の阻害要因と

して考えられる。また、地震等の天災に関してのリスクは統計的に他の地域よりも高いこ

とが考えられる。 弱みとしては、販路拡大の課題を克服しなくてはならない。前述の通り、インドネシア

国内の卵消費量は大都市を中心に増加傾向ながら、遠方であるアチェ州においてはまだ波

及してきていない。第1段階では原料の価格軽減等が困難であるため、既存の鶏卵と同じ

価格水準になる事が想定される。そのため、販路獲得の為には価格は優位点にはなり得な

い。具体的な対応としては、「高品質」と「安全性」を前面に出すマーケティング戦略が考

えられる。更に、セールス戦略としては、既に交渉している現地パートナーの役割が大き

い。現地パートナーは販売網を保有しており、今までの協議の結果第1段階の供給には支

障がないと考えられる。

第2段階においてはスケールメリットを生かして、当初の目的であった価格低下の実現

を図りたいと考えている。供給量は増加するが、その分価格低下という優位点が活かせる

と考えられる。

l 建築工事費 建設資材別に、材工工事費について調査を行った。その主なデータを記載する。

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表 35 建築工事費-1

出典:イセ食品調べ

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表 36 建築工事費-2

出典:イセ食品調べ

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表 37 インドネシア標準工事単価表

出典:バンダ・アチェ州政府作成資料に基づいて作成

l 現地の調達可能資材 建築資材は、主な建築基本材料(コンクリート、スチール材、ガラス、レンガ、プラス

ター、塗装材、断熱材、屋根材)は現地で調達可能であるが、スチールサンドイッチパネ

ルなどの工業製品は、調達はできない。そのため、本事業ではできるだけ現地調達可能な

建築資材を用いた建築計画とし、建物としての十分な機能性を確保すると同時に、完成後

のメンテナンス時においても、容易に交換部材が手に入れることができる計画とする予定

である。

図 45 現地調達資材の例

出典:イセ食品調べ

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l 基本スキーム(ケーススタディ) バンダ・アチェの東、Kurueng Rayaの候補地について、ケーススタディとして施設レ

イアウト計画を作成し、合わせてその概算工事費を算出する。敷地は東から西に緩やかな

下降勾配をもち、敷地東には北のブロハン湾の港に続く道路が接道している。最も東側を

第 1期として、3万羽の成鶏舎を 10棟並列配置し、管理事務所・食堂や熱処理室等の GP棟を敷地入口近くに設置する。成鶏舎の周囲は周回通路を設け、各施設間が機能的に統合

できる計画としている。第2期以降は、順次、西へと展開する予定である。

図 46 Kurueng Raya候補地

出典:Google Map

図 47 敷地断面図・レイアウト図

出典:イセ食品調べ

レイアウト図

敷地断面図

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� 施設概要 場所:Kurueng Raya 敷地:第 1期工事敷地面積 55,060㎡(第 1期~第 4期までの合計 約 160,000㎡) 建物: ①成鶏舎 30,000羽/棟w13m x L98m10棟 (床面積 約 1,274㎡ x 10 = 12,740㎡) ②GP棟地上 2階床面積 約 4,200㎡ 1棟 ③鶏糞処理棟床面積 約 1,500㎡ 1棟 外構:敷地外周メッシュフェンス、内部周回舗装道路、外灯、植栽 � 概算工事費 本事業の概算工事費を以下に示す。

表 38 概算工事費

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7-1-1 の建設コストの概算の他に、以下のような前提条件の上で、今後 10 年間の収支予測を算出した。

� 前提条件 【売上高】 ・ 生産量 x0.98x18.75 ・ 不良率を 0.02%として算出 ・ 販売価格は 2013年の鶏卵相場平均値である 18,750ルピア/kgを使用 【飼料費】 ・ 生産量 x2.217x4.89 ・ 飼料要求率は 2.217を使用 ・ 飼料価格は 2013年の価格平均値である 4,894,540ルピア/トンを使用 ・ 生産量は日本におけるイセ食品の実績値を使用 【経費】 ・ 人件費は 2013 年最低賃金をベースとした年間役職別給与x13 か月を使用(13か月

=イスラム正月、レバランボーナス 1 か月分は法定賃金内のため)賃金上昇率は 5%/年として算出

【減価償却費】 ・ インドネシア税務基準の償却年数を使用(定額法) ・ 建物20年 設備8年、建物の見積は 6-1-1による。 ・ 設備はイセ食品の実績値を使用 【金利】 ・ 過去 5年間の公定歩合及び 2013年12月のバンク・ネガラ・インドネシア貸出金利を

使用 【管理費】 ・ 日本人給与・経費を含めた販売管理費、事務所電子機器、備品、社用車3台などの減

価償却費(償却年数4年) 【その他】 衛生費:2012年イセファーム(日本)の実績数値を使用 水道光熱費:2012年イセファーム(日本)の実績数値を使用 修繕費:2012年イセファーム(日本)の実績数値を使用 自動車諸費:2012年イセファーム(日本)の実績数値を使用 鶏糞処理費:2012年イセファーム(日本)の実績数値を使用 その他:2012年イセファーム(日本)の実績数値を使用 【概要】 生産が安定し販売ルートが確保できるのが 2 年目と仮定している。その場合単年度黒字

は3年目に達成できる見通しである。しかし、初年度及び次年度における累計損失を穴埋

めするには事業開始からおよそ 10年が必要となる。 この予想から明らかなように 30万羽では利益を確保することは難航することが予想される。この規模では、本事業の目標であった鶏卵価格の低下を達成することができない。 また、生産量及び販売量の増加、飼料価格を下げる為に飼料工場の建設が求められるこ

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とも本事業収支分析から明らかになった。

l 実施スケジュール 具体的な事業収支の分析は図表 7-8インドネシアアチェ事業計画(予測)に記載の通りで

ある。この収支分析で明らかな事は、単年度黒字は3年目に達成できたとしても、初期投

資を回収するには 10年程必要となり事業としての採算はあわないという事である。 つまり、第1段階で予定している 30万羽では利益を確保することは難航する事が明らかになった。速やかに第2段階に移行できるかが事業として成り立たせる前提となる。 そのための課題とスケジュールは次の通りである。

表 39 事業段階とスケジュール 事業段階 スケジュール

第 1段階 (初年度〜3年程度)

事業が安定するのに 2年 2年から毎年日本での研修を実施する予定

第 2段階 (4年目〜7年目)

3、4年目に掛けて事業拡大(100万羽) ジャカルタへの進出状況次第だが、鶏卵農場建設すること

が確定すれば、アチェ州とジャカルタの両拠点で人材を共

有、人材育成の一元化、飼料等の物資共同購入等を実施す

る 第 3段階 (8年目〜10年目)

第 2 段階における販売状況や市場予測から飼料工場建設についての経営判断を行なう。鶏糞を活用したバイオ燃料製

造設備建設も視野にいれる。

その他 余剰生産物の日本への輸出 アチェ州近隣への販路拡大 トウモロコシ等の生産・販売・流通等で提携を検討

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l 事業リスク イセ食品の海外事業展開の歴史は古く、昭和 33年には米国へ進出しており、既に昭和 55年位は米国での販売量第 2位になるまでに市場シェア獲得に至っている。また近年では世界 大規模の養

鶏場を中国で建設しており、海外展開における事業リスクについては一定の基礎的知識を保有して

いるが考えている。しかしながら、本調査を通して明らかになったのは、調査地域の地理的要因と

民族的な要因によって、幾つかのリスク要因が存在している事である。まず地理的要因としては、

アチェ州及び南スラウェシ州においては、ジャカルタやスラバヤといった大都市圏から遠いという

事がいえる。また、飼料については外部から購入し、遠方から輸送する必要がある。また、群島国

であり多種多彩の民族と言語が存在しているインドネシアにおいては、鶏卵の消費量を増加させる

為には、価格の引き下げのみならず食生活の変化が必要になる可能性がある。また、史上 大の自

然災害の一つであるスマトラ島沖地震の被害の爪痕が未だに見受けられるアチェ州においては、自

然災害が事業に及ぼす影響は大きいと考えざるを得ない状況である。本事業実施にあたっての用地

選択においては活断層の調査等も含めて自然災害に強い工夫が必要となる。

� 販売価格リスク 鶏卵は世界的な相場の影響を大きく受ける。相場に影響する要因としては、原油価格や飼料の原

料となる穀物の価格のみならず、輸送コストの上下動などが考えられる。さらに、著しい経済成長

を遂げるインドネシアにおいては、物価上昇、人件費の高騰、土地使用料の高騰、為替変動等の外

的要因を受けることになる。しかしながら、本事業で想定しているのは、鶏卵の消費は養鶏場の地

域で行なう事であり、鶏卵を地域外に販売する事は当初は想定していない。本章で記載させていた

だいているように、採算性分析において数年後には黒字化を実現する可能性があると考えている。

コストアップの分は、販売量の増加やコストの削減を実施することでそれを吸収したいと考えてい

る。また、将来的に大規模化が実現し、飼料工場が建設できれば、近隣でのトウモロコシや魚粉を

使用することにより低価格化の実現も可能であると考えている。 � 販売量リスク 本章で記載した鶏卵の需要予測の通り需要が伸びていけば事業の採算はとれると思われる。しか

しながら、前述した通り、本調査では過去のトレンドから分析した簡易的な予測であり、実際には

試験販売等を行なっていない。また、イセ食品だけでなく、近隣に養鶏場が乱立した場合には、市

場規模だけでなくイセ食品の市場シェアは低下する可能性も考えられる。本調査では、価格設定と

共に販売量については事業対象地域となる市場規模から商圏分析を行なった。過去の経験から鑑み

て現実離れした数値ではないが、不確定要素が多いと考えられる。現時点において正確にこのリス

クの対策を立てることは困難であるが、イセ食品が培ってきた販売シェアの獲得の為のノウハウと、

適切な現地パートナーとの連携で、販売量の確保につとめたいと考えている。 � 輸送運賃リスク 第 2章で記述した通り、飼料は海上輸送を想定している。また鶏卵に関しては近隣都市までトラックによる陸送を想定している。本調査地のアチェ州に関しては港の整備及び道路整備が進んでい

る為、輸送については特段の課題は見受けられないが、南スラウェシに関しては道路整備が遅れて

おり、大型トラックが通行できる道路の整備がなされている箇所が少なく、飼料輸送も鶏卵の輸送

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も課題が見受けられる。輸送運賃の上昇は、販売価格、利益に直結する。特に飼料の地域での生産

は輸送運賃リスク軽減の為にも求められることであると考えられる。 � 法規制リスク 第 2章で記述した通り、外国投資に関しては比較的寛容であったインドネシアであるが、近年は保護主義に転換されるような政策転換が一部見受けられる。今まで実施されてきた、外資導入政策

における優遇措置が変更される可能性がある。現在のところ本事業に直接影響のあるリスクについ

ては顕著化していないが、法規制の強化がなされるという可能性はある。どのような規制がなされ

るかによって対応は変わってくるため、このリスクに対して有効な対策もしくは事前に回避するこ

とは困難ではあるが、適時適切に対応していきたいと考えている。また、環境・社会に対する配慮

は、イセ食品は自主的に厳しい基準を設けて今まで適正に実施してきたが、今後さらに環境関連の

法令が強化された場合には、新たな追加的な設備投資やモニタリング体制を構築する必要がある可

能性も否定できない。加えて、アチェ法及び地方財政優遇措置は制定されてまだ日が浅いため、今

後改正された時には影響が発生する可能性があると考えられる。 � 知財面でのリスク インドネシアは、商標違反や模倣品の製造を含めて、知財面のリスクは比較的高いと考えられる。

商標権侵害手口で特殊なものとしては「ハイジャック(乗っ取り)」や「スクワッティング(座り

込み、不法占拠)」とよばれる他人の商標を使用した詐欺行為がある。 これは、合法的な権利所有者がインドネシアにおいて商標登録を行う以前に、 現地企業や個人が先に出願・登録を行い、インドネシアにおける商標権を横取りするものである。 (JETRO: インドネシア、タイ、シンガポールにおける模倣品流通実態調査 2009年3月)事業を運営する上でも対応を迫られる点であると考えられる。実際に我が国を代表する大手企業が、模倣業者との係争で

多くの労力を費やす事態が発生している。近年では、インドネシア知的財産総局が 2013 年10月より、日本国特許庁と特許審査ハイウ ェイ(PPH)試行プログラムに基づく申請の受付を開始している。これは日本国特許庁で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請に

より、インドネシア知的財産総局において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組みを

試行するものであり、改善が期待される。 7-2 鶏卵需要予測 アチェ州の鶏卵事業の現状は、前述の通り 30万個/日をアチェ州で生産し、100万個/日はメダンから輸送しているのが現状である。 卵の価格は日本と殆ど変わらない程高価であり、都市部と地方の所得格差等を勘案するとアチェ

においては大変貴重なタンパク源であることがいえる。130万個を人口で割ると、4日に 1個しか卵を摂取していないことがわかる。 第 2章で示した通り、インドネシアでは国の経済成長と世帯の平均収入の増加に伴い動物性タンパク源である畜産物(肉、卵、乳製品など)の消費量は著しく増加している背景がある。 インドネシア全体では、米の摂取比率は減少しており、タンパク源の摂取が増加傾向にある。 鶏卵の需要の予測を行う上では、これらの食生活の変化は欠かせない要因であるといえる。 需要を左右する主な要因は、1)人口増加、2)食生活の変化、3)鶏卵価格の変化、4)飼料

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価格の変化、5)可処分所得の変化などであり、様々な可変的要素が含まれるため厳密な予測は困

難である。しかし、現在4日に 1個しか鶏卵を摂取できていない状態は改善されることが予測される。 特に、2015年には現在建築中の州の養鶏場が稼動し始める時期である。10万羽規模であるため、

2015 年には 5 万個程度の生産量、消費量の上昇が見込まれる。イセ食品がアチェで稼動する見通しである 2016年には自社養鶏場からの出荷が加わる。 さらに、人口の増加や所得の増加等に要因を鑑みて以下のような予測を立てた。この予測では、

2018年には 2.4日に 1個の摂取が見込まれる。 食生活の変化により更なる上昇は期待できると考えている。

表 40 鶏卵需要予測

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7-3 合弁事業の状況 本事業を展開する初期の段階から、調査対象を養鶏業に限定せず多岐に亘る分野でアチェ州優良

企業の情報を収集してきた中で、 も興味を示してきたのが建築土建業A社であった。現在も引続き同社との協議を続けている。 昨年(2013年後半)においては、アチェ州自身が本養鶏事業を州の中心的な産業に育てたいとの意向を示し、合弁企業の一員としての直接参画を切望している。現在コンタクト中の企業の他にも

州として合弁へ参加したい企業の紹介をしたい旨の申入れをアチェ州畜産局長から正式に受けてい

る。本件に関しては、出来るだけ多くの会社とコンタクトし、今後も継続的に有力提携先を選択す

ることが合弁事業成功への道だと考えている。 事業建設用地に関しても、昨年来の5回の現地調査で10余の候補地を視察した。建設予定地の

近隣の鶏舎から 5km 以上離すことや、水確保・排水処理・電力・環境条件等全ての条件をクリアする候補地を探るため、現地調査チーム・州畜産局等と綿密な打合せを行った。 終的に 適地と

しての州保有地が選定され、それを第一候補として内諾を得た。 既に一部調査は先行実施しているが、本年1月時点で畜産局長からの確約が得られ、詳細調査を

追加し、2014年2月末までに完了することも、州幹部立会いの下に測量会社と確認が出来た。 将来的展望の中で、資本構成、従業員数、事業拡大プランを始め、アチェ州側の関与する条件等

残された課題はまだ山積しているが、引き続き協議を続け本事業のスムースなスタートに尽力した

い。 現在合弁企業の選別・選択については引き続き協議中であるが、事業を推進していく上での蓮券

は綿密に行って行きたい。 後に、アチェ州から熱望されている飼料工場建設に関しても、関係官公庁と連携して推進して

行く方針である。詳細事項に関しては、合弁相手が確定した後に迅速に対応していく予定である。

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7-4 現地政府の協力取り付け状況 本調査において、アチェ州政府に複数回面談を行なった。面談先にはアチェ州知事、副州知事、

バンダ・アチェ州議会議長、副議長、アチェ・ブサール県知事、畜産局長、日本総領事など多くの

関係者が含まれている。

図 48 参加者、副州知事及び畜産局長との面談の様子

図 49 参加者、畜産局幹部との会議

スマトラ島沖地震からの復興の為には、地元での産業構築を進めなくてはならない。 さらに、現状では飼料としての利用が限られているため、農業従事者への安定した収入確保に繋が

っていないのが現状である。さらに、トウモロコシは 600km 以上離れたメダンに送られ、飼料に配合され、それを高い価格でアチェの人々は購入しているのが実態である。 現地でのヒアリングで確認できたのは、アチェ州が抱えるこれらの状況を改善する為に、イセ食品

への期待は大変高いということである。 イセ食品が養鶏場を運営することにより、雇用促進や鶏卵の安価での提供が可能になるばかりで

なく、飼料の原料となるトウモロコシの生産や魚粉の供給により漁業従事者にも裨益が大きいと期

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待されている。実際のところ、将来的に養鶏数を増やし飼料工場建設が可能となれば、さらなる裨

益が増加することが可能になると考えられる。 州政府側からは、イセ食品の養鶏場建設にあたり、25年間の州保有地を無償で貸与することに至っている。 また、合弁会社設立に際し州が参画することを表明しており、2014年中に事業実施に向けて詳細を決めて前向きに進める方針であることを合意している。 7-5 事業実施の為の資金計画と財務計画 農場建設の為の用地はアチェ州側保有地を賃借することになっている。(賃借料については、賃

借期間による変動するため概算を算出している) 建築する鶏舎は、一棟 3万羽の鶏舎を 10棟建てる。什器備品・雛導入・飼料購入・水道・光熱・人件費・管理費等については、別添にて日本レベルの試算表を示す。現在試算した建設総コスト(円

換算金額)は約 11 億円になる。調査する項目が多岐に亘っている。さらに、鳥インフルエンザ・サルモネラ菌・ノロウイルス等の防疫対策費用を追加的に考慮する必要がある。 その他、予定されている州提供の農場用地の整備(鶏舎建設地の土壌調整等)にも追加的費用が

発生する可能性がある。排水状況・土地の重圧数値・環境・原材料の搬入・製品の搬入方式・飼料・

保管倉庫建設・チルド化等詳細に至る概算金額については、事業実施の段階には正確な積算を行な

う予定である。 目下、建築する鶏舎等に関し外地制作の場合と現地製作の場合のコストの相違を含め、合弁相手

先と綿密な討議・検討を行い相互納得した形態を模索したい。 現地サイドへの情報提供が一部停滞していることと、仲介者の動向・活動・信頼等が正確に通じ

てない部分があり、早急に相互信頼を確立し、積極的な方策を定めたいと考えている。また、自己

資金・パートナー資金等の割合等についても意見交換の場を持ち、早い時期に資金分担等を固めて

いく予定である。 財務計画は添付の事業計画(案)に基づき、相互納得の上で方針を確定する予定であるが、防疫

対策等の費用は、その徹底度や手段により金額面での幅が広いため、十分なコンセンサスを得なが

ら、 小投資での 大効果を狙いたい。 資金調達であるが、現在世界銀行グループ 国際金融公社(IFC: International Finance Corporation)と複数回打合せを行なっている。現状では、IFC が中心となりインドネシアの銀行とのシンジケートローンを行なえる可能性が高いとの感触を得ている。 7-6 運営体制 本事業推進の基本方針は、出来得る限りの現地化・融合を念頭に、現地/日本の双方が納得する形で技術水準転移・生産方式・各種運営を進めることである。 建設段階からの現地化を推進する上で、従業員の教育を2~3年掛けて行い、スムースにスター

ト出来る為の現地要員の底上げを図る必要がある。 合弁相手は現在選定中であるが、役割分担を明確化し、相乗効果を上げるような仕組みを構築し

たいと考えている。インドネシアはアセアン地区の模範的職場として、将来予定されるベトナム・

タイ・ミャンマー等近隣諸国へ進出する場合のモデルケースとなることを目標としたい。

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l 要員計画

当初は、日本からの管理者の派遣と、連携予定のパートナー企業との両軸で進めていく予定であ

る。当初5年間の要員計画を下記に示す。 表 40 要員計画(2015年~2019年)

2015 2016 2017 2018 2019 日本人管理者(常駐) 2 2 1 1 1 日本人(長期出張) 2 2 2 1 1 通訳兼営業アシスタント 1 1 1 1 1 インドネシア人管理者 1 1 2 2 3 インドネシア人技術管理職 2 2 4 4 6 インドネシア人営業管理職 2 2 4 4 6 インドネシア人総務管理職 1 1 2 2 3 総務経理担当 2 2 4 4 8 インドネシア人営業 5 5 8 8 10 作業員 40 40 40 50 50 小計 58 58 68 77 89

7-7 BOP 層への裨益効果 前述の通り、スマトラ島沖地震の被災地であるアチェ州に養鶏場を建設・運営する意義は大きい

が、具体的にどのような裨益があるかを項目毎に以下に示す。

表 41 裨益効果 項目 裨益内容

養鶏場 養鶏場での新規雇用創出が見込まれる。 賃金水準は、近隣の賃金体系等により総合的に判断されるが、

低所得者にとっては生活改善に寄与し衛生的で安定した生活

を営める水準まで引き上げる事を前提としている。 農業・漁業従事者 飼料の主要成分であるトウモロコシ及び魚粉の安定した購入

により、農業・漁業従事者への収益の改善に寄与する。 流通関係 原材料搬入及び鶏卵の搬出に係る多くの流通関係者に新たな

職を提供する。 食生活の安定 鶏卵を食するBOP層の滋養摂取向上に寄与する。 養鶏場を建設・運営することは端的に言うと「食」と「職」の提供である。そして、農業、漁業

主体の地域へ安定的な収入をもたらす可能性が高いと考えられる。 7-8 事業実施可否判断および残課題 事業実施に関しては、経済合理性の妥当性と、企業の社会的貢献の両側面から判断する必要があ

る。しかしながら、企業の社会的貢献のための活動であっても、採算性が見合わなければ永続的な

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運営は困難であることは明らかである。 事業採算性については、将来的にはインドネシア国民の鶏卵に対する高い需要が期待できるが、

民間資本単独による事業展開は 30 万羽規模以上の投資ができなければ成立しないと考えられる。しかしながら、それ以上の初期投資を実施したところで、販路開拓や飼料工場建設等が適切な規模

で行われなければそれでも成立しない可能性もある。また、当初からの目的である、鶏卵価格の引

き下げはこれでも実現できない水準である。アチェ州での事業展開の進捗状況に合わせて、大需要

が見込まれるインドネシアの首都ジャカルタ近郊での鶏卵農場建設も検討を開始していると述べた

が、その相乗効果が発揮できれば採算性の分岐点の引き下げに正のインパクトが発生する可能性が

ある。 一方で、本事業を展開した場合の BOP 層への寄与は明らかである。現地住民の健康増進はもちろんのこと、鶏卵農場の建設による直接的な雇用増加、それに伴う流通・販売などの間接的な経済

効果が期待できる。現地の政府の強い要望や大きな期待を鑑みると、社会的意義は極めて高いビジ

ネスであるといえる。 残課題としては、次のようなものが考えられる。

表 42 今後の課題と内容 課題 内容

立地 アチェ州政府側からの無償貸与の申し出があるものの、活断層や水

源の確保等の調査を引き続き実施して適地を選定する必要がある。 現地パートナー選定 販路確保の為に必須の要件である。既に有力な候補者がいるため、

事業実施に向けた更なる協議を進める必要がある。 資金調達 世界銀行グループIFCやインドネシアの有力銀行と相談を続けてい

るが、インドネシアの政策金利が我が国と比べて大変高い水準であ

る為高金利である。為替リスクを回避しながらも低利の資金調達を

実施する必要がある。 ジャカルタでの事業計画 アチェ州とジャカルタでの2拠点体制による相乗効果を得る為に

は、同時並行的に進めなくてはならない。 飼料調達 低価格、適格な配合の飼料を安定的に供給できるルートの確保が必

要である。日本の大手専門商社とは協議をおこなっているが、今後

はより具体的に進める必要がある。 飼料工場 将来的には飼料工場建設が望まれる。飼料工場建設は大きな資金が

必要であるとともに、同時に近隣の農家に適切なトウモロコシの種

類を指示して買い上げる契約を締結する必要がある。 雇用確保 養鶏場運営等に関する人材を確保する必要がある。 人材育成 養鶏場運営等に関する技術を習得してもらう為に分かり易いマニュ

アルの作成や我が国における研修等のプログラム構築が必要であ

る。 環境調査 養鶏場建設・運営の為の一連の許認可取得が必要である。また環境・

社会配慮調査報告書にも記載した通り、必要な環境調査を実施する

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必要がある。

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第 8章 長期的な展望と体制作り

8-1 長期的な将来計画とその意義 l 将来計画 本調査にあたり、アチェ州と南スラウェシ州を対象とした経緯についてはすでに記述したとおり

である。このうち、南スラウェシ州に関しては、①道路整備などインフラ面での問題点が多く、大

規模鶏卵農場建設にふさわしい用地確保が難しい、②州政府の BOP ビジネスへの期待度、支援態勢などでアチェ州に比べて大きく見劣りする―などの視点から、対象からはずすことにしたことも前述したとおりである。つまり、今回のBOPビジネスはアチェ州を起点として展開するわけだが、第 1段階での鶏卵場建設は1棟当たり 3万羽の成鶏を収容できる鶏舎を 10棟建設、合計 30万羽の養鶏農場からスタートする。 アチェ州畜産局によると、同州の現時点での鶏卵需要は 130万羽分に相当しているが、同州内の養鶏場による供給能力は 30万羽分にすぎないという。それ以外の鶏卵需要は遠く 610 kmも離れたメダンからの供給で賄っているのが実状である。本 BOP ビジネスがスタートしたとしても、当面は 30万羽の供給に過ぎず、アチェ州域内の需要の半分にも満たない量でしかない。BOPビジネスが目標の一つとする鶏卵価格の低下によるインドネシア国民の健康増進寄与という役割から考え

ると、なお力不足の感はぬぐえない。 � 100 万羽規模の鶏舎 同州内には鶏卵農場にとって基礎的な資材ともいえる飼料工場や若雌業者などがなく、これらに

ついてもはるか遠くにあるメダンから購入せざるを得ない。こうした背景が、鶏卵価格の高値要因

になっていることは否定しがたい事実であり、州政府関係者も異口同音に訴えている。 コスト低減につながる資材の自己調達、州内調達を実現するためには、前述したように 100万羽単位の生産規模が必要で、30 万羽鶏舎を 100 万羽鶏舎へと規模を拡大することに歩調を合わせる形で、トウモロコシをはじめとする各種穀物生産及び加工へと事業分野の拡大を図ることが必要で

ある。さらに、孵化場、種鶏場、成鶏農場、商品包装工場を併設することも将来の構想として用意

していきたい。 経営的には、平成 27年に生産を開始するが、初年度の赤字はやむを得ないものの、翌年 28年には収益面でプラスとしたい。生産・販売量は初年度が 820トン、次年度 6,500トン、3年度 13,000トンと順次拡大していくことができると想定している。 � 自立化に向けて 将来的には鶏卵ビジネスに関わるすべての面で鶏卵農場が自立することが重要である。そのため

に、事業開始から3年を経過した後は、穀物生産設備、穀物貯蔵施設を早急に建設するとともに、

鶏舎から発生する鶏糞を活用してのバイオ燃料製造施設の設置などを推進していきたい。さらには、

当該ビジネス以外でも不可欠な関連事業については積極的に取り組んでいくことを心掛けたい。た

とえば、穀物生産に関しての生産、流通、販売等を商社などと提携することで農場及び周辺ビジネ

スを効率的に運営することなどが考えられる。 これらの対応を通じて、アチェ州の地域経済に新たな市場、新規雇用、流通・販売網の整備など

の恩恵をもたらし、州経済の底上げ、州民の所得向上に役立つことになる。また、本事業の長期的

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な経営安定化にも大きく資することになる。 l 将来計画とその意義 � 将来計画 • 平成 27年 アチェ州で 30万羽規模の鶏卵農場で生産開始

生産量 820トン • 平成 28年 生産量 6,500トン • 平成 29年 生産量 13,000トン • その後

• 穀物生産設備・穀物貯蔵設備の建設 • 鶏糞を活用したバイオ燃料製造設備建設 • 余剰生産物の日本への輸出 • アチェ州近隣への販路拡大 • トウモロコシ等の生産・販売・流通等で提携を検討 • 首都・ジャカルタ近郊での鶏卵農場建設を推進

� 意義 • 鶏卵価格の低下・安定化によるインドネシアBOP層の身体改善・生活安定などに貢献 • 農場建設のほか、穀物生産、魚粉活用などを通じて現地の農・漁業の振興と雇用増進に寄与 • 日本の先進的な鶏卵・養鶏技術の普及・伝達による現地での安全・衛生意識の向上・広がり • インドネシア国民の日本での研修・滞在等を通じての両国間国民の理解・相互信頼の向上 • 10年前に大地震と津波被害に遭遇したアチェ州経済の一段の復興と周辺地域の治安安定化 � アチェ州近隣への拡大

100万羽規模まで鶏卵農場を拡大すれば、遠く離れたメダンから供給している鶏卵の需要量を埋めることができる計算だ。また、将来的には本ビジネス以外にもアチェ州での鶏卵供給が増えるこ

とは確実で、アチェ州内での需要を上回る鶏卵供給が可能な時代を迎えることも見通せる。こうし

た将来の需給見通しを前提に、いずれはアチェ州近隣への供給拡大も目指したい。 メダン―アチェ間は日本でいえば東京―姫路間の距離を上回る遠い距離にあるもので、両地域間にある地域への鶏卵供給はBOPビジネスの延長線上にあるものと考える。メダンとアチェからの鶏卵供給によって鶏卵価格の値下がりは十分に予想され、BOPビジネスの狙いの一つであるインドネシア国民の健康増進の範囲を拡大することに寄与することができよう。 養鶏業界には「養鶏業は掛け算」という格言もある。1個あたりの儲けは少なくても、販売個数

を多くすれば多くする程利益は増えることになる、いわゆる「薄利多売」との意味で、養鶏農場の

経営安定化には規模の拡大は必須である。この点でも、100万羽への拡張、アチェ州近隣への商圏拡大は望ましいものといえよう。 � 飼料工場建設―アチェ州の要望 アチェ州政府にとっては、飼料工場建設が、かねてからの悲願でもあった。工場建設により高値

で安定している飼料価格の低下を図ることができるだけでなく、州内の農業や漁業従事者から飼料

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の原材料となる穀物や魚粉などを買い取ることで、これら従事者の収入の拡大・安定に大きく寄与

することが期待できるからだ。しかし、飼料工場建設には莫大な投資金額が必要である(15億円程度)。前述したように「養鶏は掛け算」という薄利多売の業界に身を置くイセ食品単独での建設は、

容易なものではなく、将来の採算性との兼ね合いで検討していく必要があろう。 � コスト削減効果のあるジャカルタとの 2 拠点化 繰り返しになるが、インドネシアの人口は 2億 4000万人で、世界第 4位の巨大な市場である。国民の所得増加なども考え合わせると、市場としての将来性は十分な魅力を備えている。アチェ州を

起点とした本事業は、インドネシア国民の食生活改善の範囲を広げていくためにも他地域への拡大

が望ましいと考えられる。大規模な養鶏施設運営には、大規模な消費地が近隣にあることが必須の

条件となってくる。その場合において重要な存在なのが、人口密度の高い首都・ジャカルタの存在

だ。 イセ食品は、アチェの鶏卵農場の運営を進めると同時に、ジャカルタ近郊においても鶏卵農場建

設の検討を始めている。アチェ州とジャカルタの両拠点で人材を共有できるほか、人材育成の一元

化、経理や営業部隊の共有、飼料等の物資共同購入が可能になり、大幅なコストダウン効果などが

期待できる。 � 生産物の輸出と人材育成 本事業が軌道に乗り、鶏卵や鶏卵を活用した食品類の生産体制が整えば、アチェ州、ジャカルタ

周辺はもちろんのこと、インドネシア近隣国への輸出も可能になると見込んでいる。また、アチェ、

ジャカルタでの鶏卵農場の人材育成のためには、日本での研修等も必要で、これらの事業を通じて

現地への技術移転が促進されると考えられる。 8-2 JICA 事業との連携可能性 今回の鶏卵農場建設は一連の調査の結果として、まずバンダ・アチェ市で実施する方針を固めた。

これを第1弾として首都ジャカルタ地区で第2の鶏卵農場建設も検討している。これらのプロジェ

クトを通じてインドネシアの経済発展、国民の雇用促進、健康増進に大きく寄与することは確かで

あり、日本のインドネシア国援助の一翼を担う役割を十分に果たすことができると考えられる。ま

た、インドネシア国に対する日本の国別援助方針に合致するものでもあり、JICA 事業との連携を探るうえで重要と考えられる。 l 我が国の国別援助方針との整合性 インドネシア国に対する「我が国の国別援助方針」との整合性を分析すると、今回のバンダ・ア

チェでの鶏卵農場建設プロジェクトは、地域の雇用・所得増、最新の鳥インフルエンザ対策導入な

どにより、「同国が中長期的な安定を確保するためには、継続的な経済成長の実現とその地方への波

及を通じた国内の所得格差・地域格差の是正、雇用機会の確保、災害や感染症に対する脆弱性の克

服等が重要である」の趣旨に沿うものである。 l 調査対象地域における JICA 事業について

2011年度のインドネシアに対する我が国の無償資金協力は 15.54百万ドル、技術協力 117.62百

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万ドル、JICAの円借款 655.25億円、JICAの無償資金協力 8.36億円、技術協力経費 92.47億円(以上外務省資料より)であり、日本は大きなドナー国である。日本は 50 年近くにわたり、インドネシアの発展に寄与する為に資金や技術の提供を行なってきた。また、災害被害を受けた人々への支

援でもインドネシアに対する支援を実施してきた。多くの事業が実施されてきたが、調査対象地域

で本事業と関連が比較的深いと考えられる具体的な事業は以下の通りである。

l 具体的連携事業の内容 現在においても実施されており、連携を図れる事業や本事業に関係する事業、若しくは過去の事

業でも活用できる可能性があると考えられるものを以下に示す。 � アチェ復興計画 本事業は、スマトラ沖大地震・津波災害の被災地であるナングル・アチェ・ダルサラム州の復興

及び平和構築支援のため、道路、排水路等を整備するものである。直接的な連携ではないが、本事

業実施にあたりインフラが整っている事は大きな検討要因である。特に道路が整備されているかど

うかは、資料の輸送や鶏卵の配送に大きな影響が発生する。本調査においてアチェ州の事業予定候

補地周辺の道路整備は進んでいることが明らかになった。 � 鳥インフルエンザ・サーベイランスシステム強化プロジェクト 本調査の対象地域の一つである南スラウェシ州で実施されたプロジェクトであり、保健省疾病対

策環境保健総局の要請により実施された。背景には、インドネシアにおいて 2005年7月にヒトへの鳥インフルエンザ(AI:Avian Influenza)感染例が確認されて以降、感染者の報告が続いている事があげられる。日本をはじめ現在でも大きな話題となっているが、ヒトへの感染の拡大は感染

力の強いウイルス(新型インフルエンザ)への変異を引き起こし、インドネシア国内のみならず世

界中に多大な感染者と死者を出す可能性が危惧されている。本プロジェクトでは、2006年に政府より発効されたAIサーベイランスの国家ガイドラインを基本にして、AI患者の早期発見・早期対応により鳥インフルエンザの蔓延を防止することを強化する内容であった。

JICA事業 • アチェ復興計画(有償) 2007~2016年 • アチェ復興支援関連(マルチ) 2011年以前 • 鳥インフルエンザ・サーベイランスシステム強化プロジェクト(2008年10月~2011年10

月) • 家畜衛生ラボ能力向上及び地方家畜衛生システム整備プロジェクト (技プロ)2010年~

2015年度まで • アチェ州住民自立支援ネットワーク形成プロジェクト(2007年3月~2009年3月) • バンダ・アチェ市と宮城県東松島市における住民主体での地域資源利活用による相互復興

推進プログラム 2013年10月~2016年3月 (草の根技術協力-地域経済活性化特別枠) • アチェ・ブサール県農業訓練センター整備計画 2009年(草の根・人間の安全保障無償資

金協力)

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養鶏場を運営するにあたり、鳥インフルエンザへの対応は、事業の根幹に関わる。南スラウェシ

州での本強化プロジェクトの成果を、今後本事業予定地域であるアチェ州にどのように適用するか、

検討を続けたい。 イセ食品としては、鳥インフルエンザ対策は日本国内でも重要な取組として早くから対策を打っ

ており、世界でも最先端の鳥インフルエンザ対策を確立していると自負している。インドネシアで

の鶏卵農場建設でも、こうした最先端の技術を導入し、現地の鳥インフルエンザ対策に大いに役立

てる意向である。本事業から得られる知識も期待できるが、逆に、実践している対策を伝えること

により相乗効果が得られる可能性があると考えられる。

図 50 イセ食品つくばファーム

出典:イセ食品

� 家畜衛生ラボ能力向上プロジェクト 本プロジェクト実施地域は、西ジャワ州スバン、メダン及びランプンであったが、その家畜疾病

対策能力向上プロジェクトは、本事業対象地においても適用できると思われる。 インドネシアには、現在家畜疾病対策支援のために家畜疾病診断センター(Disease Investigation

Center、以下DIC)が農業省動物衛生総局下全国に8箇所設立されている。本プロジェクトにおいて「鳥インフルエンザ等重要家畜疾病診断施設整備計画」(2009年 無償資金協力プロジェクト)により、西ジャワ州スバンに新設のDIC施設整備を行い、併せて、既存のメダンDIC及びランプンDIC施設の改善を行った。本プロジェクトの一連のプロセスは、本事業においても一定の効果があると考えられる。 � アチェ州住民自立支援ネットワーク形成プロジェクト(2007 年3月~2009 年3月) バンダ・アチェ市、アチェ・ブサール県、ピディ県、アチェ・ジャヤ県、アチェ・バラット県、

ビルン県、アチェ・テンガー県ウレレ地区における復興モデル活動を他地域に展開する事業は、こ

の中から3県を対象として実施されたプロジェクトである。本プロジェクトの目標の一つである、

「住民による自助・共助キャパシティの強化を通した住民自立による生計向上、復興の実現』は本

事業の目指す方向性と重なる部分があり、本プロジェクトの実施方法等を参考に事業展開を図りた

いと考えている。

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� バンダ・アチェ市と宮城県東松島市における住民主体での地域資源利活用による相互

復興推進プログラム 2013 年10月から 2016 年3月(草の根技術協力(地域経済活性化特別枠))

本事業は、復興ノウハウの共有と東松島復興モデルの海外展開を目指すものである。既に両

市の間で研修員の相互受け入れ等を実施している。 イセ食品の主力商品の一である、森のたまごは 1990 年に杜の都・仙台で「森のたまご」として誕生し、2010年秋に販売 20年を迎えたブランド卵である。イセ食品と宮城県の関係は深く、仙台に営業所がある他、宮城県加美郡に色麻パッキング工場及び色麻液卵工場が稼働している。 宮城県の色麻農場は全長 4km、総面積 36万坪であり、生産から販売までを一貫して行なう近代的な大規模システムである。

図 51 宮城県色麻農場 さらに、復興支援として、鶏卵数万パックを被災地に寄贈した実績もある。また、東日本大震災

で失われた美しい自然や町並み、人々の笑顔を再び取り戻したいとの想いから、2011年 4月 20日から 12月 31日までの期間、「森のたまご」の売上の一部を義援金として被災地に贈る取組を実施してきた。(義援金総額:22,853,443円)

図 52 森のたまご

出典:イセ食品HP

アチェ州に進出する数少ない日系企業であり、被災地との関係も深い為、本事業との連携を強化

したいと考えている。特に、次の点で連携を図れるのではないかと考えている。 � 天災発生時に避難所としての施設の一部を提供。 � 貴重なタンパク源である鶏卵の提供。

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� 復興時期においては、職業訓練及び雇用創出。 これらは、本事業の規模や進捗状況等により大幅に変化する可能性はあるものの、今後協議を進

めていきたいと考えている。スマトラ島沖地震の震源地にもっとも近いアチェでは、死者は 12 万8,575人、行方不明者は 3万 7,063人を数えたほか、インフラ等の社会基盤施設が破壊され、物理的にも大きな被害を受けた。 アチェ州での事業を推進して行くには、防災対策は大きな課題であるのは言うまでもない。 本事業は「四つの主要課題(持続可能なまちづくり、地域防災、コミュニティ・ビジネス、機能

的な地域行政組織作り)に関して住民主体での活動継続・拡大のためのアチェ市と東松島市の両市

民の主体者意識と具体活動手法の理解が向上する」ことが目標になっている。本事業である養鶏場

運営は端的にいうと「食と職」をアチェ州内で創出することである。本プロジェクトへの具体的な

貢献として相互に連携を取り合いたいと考えている。 8-3 インドネシア経済・社会に与える事業の効果 本事業のインドネシア経済や社会に与える効果について、まず、アチェ州をビジネスの開始地点

に選んだ意味は大きいものであると考えている。2004年に発生したスマトラ沖大地震・津波災害の最大の被害地域の一つが、アチェ州であったことがその主たる理由である。前述の通り同州は長く

独立をめぐって中央政府との間で闘争を続けてきたが、大震災をきっかけに紛争停止の機運が広が

った経緯がある。 こうした紛争停止による治安安定化を今後も確実に強めていくことはインドネシア国だけでなく、

日本など国際社会にとっても重要な関心事でもある。アチェ州が接するマラッカ海峡は、日本の船

舶が頻繁に行き来する海上交通の要所で、海賊等の出没も多い。アチェ州の経済的な安定、BOP層の生活向上は、マラッカ海峡の交通安全にも間接的に資すると考えられる。 l 鳥インフルエンザ対策への貢献 インドネシアでは、2005年7月にヒトへの鳥インフルエンザ(AI:Avian Influenza)感染例が確認された。それ以降も、感染者の報告が相次いでおり、鳥インフルエンザ流行国の一つと言って

もよい。ヒトへの感染の拡大は感染力の強いウイルス(新型インフルエンザ)への変異を引き起こ

し、インドネシア国内のみならず世界中に多大な感染者と死者を出す可能性さえ危惧されている。 今回の調査でも、インドネシア国内の鶏卵農場のシステムは、日本でいえば 40年前にさかのぼったような前近代的なもので、そのためおざなりな鳥インフルエンザ対策しか採用していない状況

にあることがわかった。これは、現地の資本力、知識力の不足による面が大きく、鳥インフルエン

ザの世界的な蔓延を防ぐためにも、イセ食品のような日本の大手が、先進的な農場を建設すること

で有効な鳥インフルエンザ対策を示すことの意味は大きい。 もちろん、養鶏場を運営するにあたり鳥インフルエンザをいかに防ぐかは事業の根幹に関わる事

であり、本 BOP ビジネスでも重要な要素となる。イセ食品は、全米でもっとも厳しいと言われるペンシルバニア州の品質保証プログラムよりもさらに厳しい基準を自主的に設けており、今回の農

場建設後もその実践運用を通じて、地元関係者に極めて高い影響を与えるものと考えられる。たと

えば、イセ食品は鳥が介在する鳥インフルエンザやサルモネラ菌による汚染を防ぐためにウインド

ウレス(窓のない)鶏舎を導入するなど、徹底した管理手法を導入している。現地農場はいずれも

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カラスなどの鳥や害虫が出入り自由な明け放しの鶏舎が殆どで、その差は大きい。インドネシアで

のイセ食品方式の鶏舎の普及が望まれる。 l インドネシア国民の健康増進への寄与 インドネシア国内における卵の小売価格は、ほぼ日本の価格と同じ水準にある。他の食品類が日

本の販売価格の 5分の 1程度かそれ以下という低い価格帯にあるにもかかわらず、鶏卵の価格だけが際立って高いといえる。 その要因については、すでに前述している通りだが、問題は BOP 層にとっては手の届きにくい水準にあることだ。 鶏卵は、雛鳥が成長するために必要な栄養分をすべて兼ね備えている「完全栄養食品」と言われ

る。タンパク質、カルシウム、鉄分などの栄養素だけでなく、人間の体内では作成することができ

ない8種類の必須アミノ酸を含んでおり、ヒトの免疫力を高め、風邪などのウィルスの撃退、体力

維持などに効能がある。 BOPビジネスをきっかけに鶏卵の供給量が増加することによって、インドネシア国民の鶏卵入手の機会が増すことになり、それだけ健康増進につながる。鶏卵の供給力増強だけでなく、イセ食品

が検討している穀物生産設備や穀物貯蔵施設、さらには飼料工場の建設などが広く展開されるよう

になれば、現在は高水準の価格となっているインドネシア国内の飼料の価格が下がり、鶏卵価格の

引き下げにつながることが想定される。

表 43 卵と他食品の栄養素比較

成分 単位 鶏卵 牛肉 豚肉 マグロ 牛乳 エネルギー kcal 162 207 267 133 59 タンパク質 g 12.3 19.2 17.0 28.3 2.9 脂質 g 11.2 13.3 20.5 1.4 3.2 糖質 g 0.9 0.3 0.4 0.1 4.5 カルシウム mg 55 4 5 5 100 リン mg 200 164 147 280 90 鉄 mg 1.8 2.1 1.1 2.0 0.1 ナトリウム mg 130 53 43 50 50 カリウム mg 120 329 251 420 150 ビタミンB1 mg 0.08 0.08 0.85 0.10 0.03

出典:四訂食品成分表より。可食部100g当たりの数値

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第 9章 結論

l 総括 本調査事業は、2013 年 5 月から本格的にスタートした。現地インドネシアへの調査団派遣は、首都ジャカルタ、アチェ州、南マカッサル州を主な対象に 6回にのぼる。日本からの派遣調査団を中心に、現地契約の調査チームを駆使して当該事業展開の課題と問題点を探った。特に、採算性に

ついては、事業継続性の問題や現地政府・資本の日本企業への信頼性に関わるとの視点から重点的

に調査した。 事業採算性については、第 7章で詳細に記述している通り、本提案事業に基づいて民間資本として継続性を維持できる収益をそれなりに確保できるかというと、道路などのインフラ設備の不足、

流通経路の不備など様々な障壁が存在する。将来的にはインドネシア国民の鶏卵に対する需要の高

さは十二分に期待できうるものの、これら障壁を勘案すると、民間資本単独による事業展開は難し

いと言わざるを得ない。 しかしながら、鶏卵に対する需要の高さやこれら事業を展開した場合のインドネシア経済に与え

る影響がきわめて高いことは明らかである。インドネシア政府や現地のアチェ州、南スラウェシ州

の幹部高官たちが口をそろえて当該事業の進出に期待を寄せるのも、鶏卵の供給増加による現地住

民の健康増進はもちろんのこと、鶏卵農場の建設による直接的な雇用増加、それに伴う流通・販売

などの間接的な経済効果が計算出来るからでもある。さらに、現地インドネシア側の期待の目は、

鶏卵農場の拡大に伴う飼料工場や鶏卵関連の製品化工場の建設・資本投下などの将来性の高さにも

向けられている。現地経済の拡大、大幅な雇用増加などによるインドネシアの安定は、日本にとっ

ても有益であることは明らかである。 このような現地の政府や民間資本側の強い要望や大きな期待を鑑みると、日本資本の参加による

鶏卵農場建設は大きな意義のある事業と言える。今回の調査団の中核をなすイセ食品としても、イ

ンドネシアへの鶏卵農場進出を前提にさらに前向きに検討したい意向である。また、アチェ州での

事業展開の進捗状況に合わせて、大需要が見込まれるインドネシアの首都ジャカルタ近郊での鶏卵

農場建設も検討を開始している。インドネシアにおける鶏卵生産は日本に比べはるかに前近代的で、

鳥インフルエンザ対策、国民の健康増進への寄与度という観点からは非常に低い水準にあると言わ

ざるをえない。インドネシア最大の人口密集地であるジャカルタ近郊での近代的な鶏卵農場建設は、

採算性のみならず衛生面からも急ぐ必要があると考える。これらの検討にあたり、過去現地で実施

された我が国ODA事業との連携を検討していく(第 8章 8-2に詳述)。 インドネシアでの鶏卵事業の必要性については、第 1章で記載したが、同国の鶏卵価格は日本の物価水準に比較して、鶏卵価格はほぼ同じである。食品類をはじめとして他の物価が日本に比べは

るかに安いことから判断して卵の異常な高さが目につく。たとえば、卵 10 個の価格はジャカルタも、東京 23区も 150円である。一方、コメは 10キロで東京が 2,000円なのに対し、ジャカルタでは 900円と半分以下である。また、タクシー代の初乗り料金はジャカルタが 60円で、東京 710円の 10分の 1にも満たない。この点については第 2章で詳細に記載している。 インドネシアにおいて鶏卵価格が他の物価に比較して異常な高さにあるのは、供給能力の不足だ

けでなく、現地の穀物飼料が高いことなども背景にあげることができる。今回の調査対象地域であ

るアチェ州の場合、同州畜産局の推計では 130万羽相当の需要があるにもかかわらず、域内供給量は 30万羽で、残りは 600 km以上離れたメダンから搬送されているのが実情だ。同州では養鶏飼

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料も入手が難しく、これも遠く離れたメダンから買い入れている。鶏卵価格のコストアップ要因で

ある。こうしたことを受けて現地州政府首脳を中心に、鶏卵農場建設への期待は熱いものがある。 一方、インドネシア国はASEAN最大の人口を有し、世界最大のイスラム人口を抱える国であるが、好日の国民が多いことでも知られている。また、同国の近年の経済成長ぶりは目を見張るもの

があり、今後の成長も期待される。しかし、2億 4,000万人の人口を抱える同国の失業と貧困は依然として高く、2期目を迎えた現在のユドヨノ政権の重要な課題となっている。それだけに、日本

からの支援に対する期待は大きい。 特に 2004 年に大地震と大津波で甚大な被害を受けたアチェ州の経済基盤強化は、マラッカ海峡という日本にとっても重要な交通の要所に接しているだけに必須の課題であろう。今回の BOP 調査では、南スラウェシ州も対象としたが、アチェ州に比べると経済圏も大きく、日本の商社、企業

の進出も目立っている。 第 3章にあるように、現地の気候条件も養鶏に大きな支障はないものと判断している。インドネシア国や進出対象州の環境基準、諸規制などについても調査したが、いずれも日本の基準から見て

クリアできる水準である。これらについては 3章から 5章にかけて詳細に記述した。 今後の課題は、鳥インフルエンザと資金面である。インフルエンザ対策のためのコスト、想定さ

れる事業計画に伴う資金調達について慎重な計画が求められる。しかし、第 7章および第 8章で記載しているように、BOPビジネスの意義と将来計画を考慮すれば、インドネシアでの卵ビジネスは、今後の拡大と安定が可能と判断できる。 l 今後の事業展開 以上の調査結果を踏まえると、イセ食品としては、現地に強い販売網を保有しているパートナー

企業と組んで事業を進めることが必須要件であると考えられる。現地従業員の対象者を日本国内の

鶏卵農場で研修させるとともに、現地での教育・訓練を実施する。こうしたテスト事業を通じて、

現地アチェ州やジャカルタ近郊での更なる適地発掘、入念な市場調査や把握が容易になるうえ、現

地関係者に対する提案や広報活動にも役立つことになる。 この際、民間連携ボランティア制度を活用してイセ食品社員を期間1~2年程にわたってバン

ダ・アチェ市畜産局に派遣することも検討したい。これは、現地側の鶏卵農場運営に関する人材育

成や維持管理体制の構築に役立てるというソフト面での補完が狙いである。 養鶏飼料の 60%はトウモロコシだが、ほかには魚粉などを活用する。自社による飼料工場の建設は、養鶏のための飼料価格の抑制につながるだけでなく、トウモロコシ栽培を通じての農業振興、

魚粉活用による漁業振興につながる為大きな裨益が期待できる点も大きいと考えられる。アチェ州

のバンダ・アチェ地区は肥沃な土壌と温暖な天候に恵まれ、トウモロコシの栽培が盛んである。繰

り返しになるが、生産されたトウモロコシは 600 kmも遠く離れたメダンにいったん輸送されたのちに飼料として加工される。この飼料がバンダ・アチェで販売される段になると価格が跳ね上がり、

高い鶏卵価格の要因になっている。ひとえに飼料工場がバンダ・アチェ地区にないことが原因で、

BOP 層の底上げにつながる廉価な鶏卵の提供には飼料工場の建設は欠かせないと言っても過言ではない。このことは、魚粉を提供している地元の水産業にもあてはまる。魚粉を安定的に購入する

飼料工場の建設は、地元水産業の発展にも役立つものである。 イセ食品としても、安価な飼料が安定的に確保できるのであれば、当然、生産原価の引き下げに

直結するとの考え方で一致しており、鶏卵農場、飼料工場の併設は BOP 事業にはきわめて有効と

Page 115: インドネシア国 BOP訴求型鶏卵生産販売事業 準備調査 (BOP ...インドネシア国 インドネシア国 BOP訴求型鶏卵生産販売事業 準備調査 (BOPビジネス連携促進)

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判断している。