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アスベスト問題G4(波多野・岡山・一色)
アスベスト(石綿)とは?• 天然にできた鉱物繊維
• 不燃性、耐熱性に優れている
• 柔軟でかつ磨耗に耐える(耐磨耗性)
• 引張り強さが極めて大きい(高抗張力)
• 耐薬品性、耐腐食性、耐久性がある
• 電気を通しにくい(絶縁性)
• 表面積が大きく、他の物質との親和性がよい
家庭用品、建設資材など様々な用途に使われる奇跡の鉱物
アスベストはどこで使われたのか?• 学校をはじめとした各種建築物
• 船舶、鉄道車両
• 理科の実験でビーカーを温めるときの金網
• 絶縁材料
• 自動車など車両系のブレーキパッド、クラッチ板
• 屋根のかわら
http://park3.wakwak.com/~hepafil/file/chap6.htmlhttp://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/report/img/13_zu02_b.gif
アスベストがなぜ健康被害を起こすのか?• アスベストの繊維(約0.02-0.08μm)は肉眼では認識できないほど非常に細かい
※人の髪の毛が(約40μm)
そのため飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸入されて人の肺胞に沈着しやすい。
一部は異物として痰の中に混ざり対外へ排出されるが石綿の丈夫で変化しにくい性質により体内に滞留しやすい。
肺の繊維化、肺がん、悪性中皮腫などを引き起こす原因となる!
しかしアスベスト肺と肺がんの健康被害の相関関係は認められているものの、中皮腫はどのくらい量と期間を満たせば発病するのかよくわかっていないのが現状
http://traum21.blog.ocn.ne.jp/photos/etc/a_18_01_b01.html
アスベストの健康被害とは?• アスベスト肺(肺の繊維化)
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気
職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こる
潜伏期間は15~20年
アスベスト曝露をやめたあとでも進行することもある
• 肺がん
石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていない。
肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされている
アスベスト曝露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間がある
• 中皮腫
心臓及び大血管の起始部を覆う
心膜等にできる悪性の腫瘍
若い時期にアスベストを吸い込んだ方の
ほうが悪性中皮腫になりやすい
潜伏期間は20~50年
http://www.gsic.jp/cancer/cc_27/bsc02/index.html
国の動き
問題の発端 アスベスト死の公表
• 大阪市「クボタ」に情報開示が求められる→H17.6.29 兵庫県尼崎市の旧神崎工場で
78人が死亡していたと公表
• この開示を発端とし、全国の企業が情報開示▫ ニチアス166 人、ミサワリゾート24 人、エーアンドエーマテリアル
23 人、日本バルカー工業20 人、石川島播磨工業20 人、三菱重工業17人、太平洋セメント16 人、住友重機械工業14 人等
• 厚生労働省の発表▫ 統計のある1995 年以降、アスベストが原因の中皮腫の死亡者は
6060 人(1995年~2005年)
• 家族および住民の被害▫ 作業服等に付着したアスベストを吸引したことにより、34人の死亡
アスベストの代替化
• 昭和50年代以降、飛散性アスベスト製品の代替化が進む(人造のロックウールに代替)▫ しかし・・・ 機能やコスト面でアスベストに劣る
アスベストも管理すれば安全という認識
建材ではアスベストは固化されて飛散しない
中小企業の新材料の開発投資が難しい
→結果、代替がなかなか進まない
将来予測
• 疾患の潜伏期間と年間輸入量が30万トンを上回っていた時代(1970年~1990年)を考慮すると、被害は今後増加することが予測される
• 胸膜中皮腫の死亡者数予測▫ 今後三十年間で5万8800人▫ 今後四十年間で10万3000人▫ 2030年~2034年の五年間にピークを迎える
アスベストの法規制1
• 労働安全衛生法▫ H7年 労働安全衛生法施行令を改正し、青石綿、茶石綿を原則使用禁止
▫ 作業衣の着用義務▫ H16年 代替化が可能とされたため、白石綿の使用を禁止
▫ アスベストの含有率が0、1%以上の製品が禁止対象(H18年までは1%以上)
• 結果 輸入量▫ H7年 19万トン→H16年 8千トン→H17年 59トン
アスベストの法規制2
• 石綿障害予防規則▫ 建築物等の解体等の作業における対策強化 石綿使用の有無を事前調査 石綿粉じんの防止対策作業計画の義務付け
▫ 建築物等の解体等の作業を行う仕事の注文者等の措置 石綿の使用状況等を通知する 法令遵守
▫ 石綿等が吹き付けられた建築物等における建築物所有者・管理者の措置 石綿の除去、封じ込め、囲い込み等を実施する。
▫ 取扱い作業一般 作業衣の持ち出し禁止
アスベストの法規制3
• 大気汚染防止法
▫ 建築物の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制
▫ 特定粉じん排出等作業実施届書を県に提出
• 建設リサイクル法
▫ 正式名:「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」
▫ 建築資材に関し、分別解体及び再資源化の促進を図る
アスベストの法規制4
• 廃棄物処理法▫ 正式名:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
▫ 2006年に石綿廃棄に関する処理基準が定められた
▫ 規制物 石綿建材除去事業により生じたもの
石綿付着の恐れがある防じんマスク等
これらの物において安全な処理基準が定められた
労働災害補償• 現在、アスベストは公害認定の対象となっていない
• 労災保険が唯一の補償
• 中皮腫の死亡者数6060人(1995年~2003年)に対し、労災認定者は284人▫ 原因 労災請求自体が少ない
アスベストと病気の因果関係に気づかない
労災請求権の時効(労働者が志望した日から五年)
損害賠償訴訟
• 国や企業に対し、損害賠償を請求するケースがある▫ 米海軍基地じん肺訴訟 石綿粉じん対策が不十分だったためじん肺になったとして、日本人労働者17人が国に損害賠償を求めた
H17年5月 国が原告に総額2億1600万円の和解金を支払うことで結審
事例1.三菱ふそう
• 初のアスベストの労災認定事件。
• 三菱ふそう元従業員の男性は、1962年に三菱日本重工業に入社後、当時の川崎自動車製作所(現在のふそうの川崎製作所)に41年間勤務し、2003年9月に退職したが、2006年8月に中皮腫で死亡。《Response 編集部 2007年1月22日(月) 時点の記事より》
•
その後→
ふそうは、昨年秋にアスベスト含有製品を扱った可能性のある社員の健康診断(胸部直接撮影)を実施。
アスベストを含む自動車部品を総点検し、代替品への切り替えを完了。
アスベスト事件の経緯から解決• 鹿島竹中MH事件<概要>
建設労働者が大手ゼネコン2社(鹿島建設と竹中工務店)を被告として起こした、全国初のアスベスト訴訟。
原告MH氏は昭和39年から約30年間、ボード貼りなどの作業に従事した。
結果アスベストを含む粉塵を大量に曝露し、じん肺の一種である石綿肺などの健康被害を受けたと主張、3300万円の損害賠償請求を求めた。
提訴は2006年2月1日、勝利的和解は2009年11月6日の3年9ヶ月も要した。→なぜこれほど時間がかかったのか?
<立証までの障害>
1.建設労働者による訴訟特有の問題として、現場特定の立証
MH氏の記憶だけを頼りに弁護士11人で作業したビルを3~4ヶ月かけて捜し求めた。
600箇所の候補から 初は37箇所、 終的54箇所に絞り込んだ。
2,粉塵職場であることの立証現存するビルへの調査結果は多かったが訴状での特定した現場での調査結果が少なかっ
た。
また元々の現場数の少なさが不安要素になった。
→実際の建築現場で粉塵が飛散している状況をプロの撮影会社に撮影しそれをDVDで証拠として提出。
→MH氏に当時の粉じんのひどさや曝露状況、また、当時の建築現場との違いなども含めて証言
3,予見可能性の立証当時の時点で肺などの影響が予見できたという主張の証拠がなかなか見つからなかった。
→1937年内務省令「土木建築安全及び衛生規則」の建築現場において、粉塵が著しく飛散するため、じん肺に罹患する危険性があるため注水等の防止措置や保護具の支給を義務づけを弁護団に協力していた大阪市立大学の大学院生が見つける。
これらの調査は二社は全て原告側が行うべきと主張し、粉塵も予見可能性もないと主張
終的に裁判所の意向で、本人尋問後の5月以降、MH氏の体調の悪化を踏まえ和解協議を進め6期日を費やし和解成立
和解金額は1300万であり筑豊じん肺控訴審判決の水準(約400万)を超えたため結果企業の責任がはっきりすることなり勝利的和解と言える。
株式会社クボタ
出典Wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Kubota_Headoffice.JPG
クボタショック
~概要~
2005年6月、大手機械メーカーのクボタは「兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の従業員74人がアスベスト関連病で過去に死亡し、工場周辺に住み中皮腫で治療中の住民3人に200万円の見舞金を出す」と公表し、アスベスト問題が再燃(1980年代にはアスベストパニックが起こっている)したこと。
なぜ、クボタショックが大々的に注目されたのか!?
その理由は環境曝露にありま
す・・・
環境曝露??
クボタショックによりさまざまな健康被害が出ているが、それらを一般住民にも現状を報告したこと。
→住民のアスベストへの理解が高まり、アスベストが原因でかかる病気への危険性が年々逓減している。
クボタのHPにある実際の記事
http://www.kubota.co.jp/kanren/index.html
クボタのHPについて
クボタはHPでアスベスト問題への取り組みについて細かくデータをアップしています。
→かつてアスベストを扱ってきた主要な会社としての企業責任を果たしているといえます。さらに、クボタの対応も良いという評価も得ています。
被害は周辺住民だけではない
2005年7月25日
旧尼崎工場(現阪神工場尼崎事業所)に勤務していた従業員1名が、中皮腫により死亡し、労災認定されました。
裁判の行方
~2006年4月17日~
クボタは中皮腫を発症した患者に対し2500万~4600万(平均1人あたり3500万)の救済金を88人に支払うことに決定した。総額32億円。
クボタ側は、工場の影響が『否定できない』として合意。
2011年3月末には、アスベストが原因とされる中皮腫による死亡とされた人の数は、周辺住民148人・従業員152人(労災認定)とされている。
さらに、現在では237人が救済金の受領申請をしていて、212人には救済金制度(2500~4600万)が適応されているそうです。
アスベストを回避するには?
非常に細かい繊維でできているため、空気中に飛散しているものを肉眼で確認することは不可能。
→アスベスト防護服の着用、マスクをつける、解体している建物に近づかない、といったこと以外には効果的なものがない・・・
諸外国におけるアスベスト被害と救済措置
主要国のアスベスト被害
①イギリス
中皮腫での死亡は年々増加。
2020年~2025年には年間2500~3500人が死亡すると推定。
②アメリカ
1940年~1980年の間、2750万人以上が職場でアスベスト被ばく。
年間約4000人が中皮腫により死亡。
③オーストラリア
1945年以降中皮腫で7千人が死亡。
2020年までの死亡者は、中皮腫1万8千人、
肺がん3~4万人にのぼると推定。
④フランス
年間2~3千人の死者が出ている。
各国の救済措置 ①イギリス
1、使用規制作業場のアスベスト粉塵の許容濃度の規制
1969年→2本/㎤ 1986年→0,5本/㎤アスベスト吹き付けは1986年から全面禁止。
2、労災保険
社会保障法等に基づいて、全被用者を対象とする全額国庫負担の制度。
○被用者の適用範囲①被用者が「指定疾病」にかかっていること。
②被用者が1948年以降、指定疾病の原因業務として定められている業務に従事したこと。
③生じた疾病が業務に起因するものであること。
※指定疾病
①塵肺症
②中皮腫
③アスベスト起因の肺がん
④びまん性胸膜肥厚
○給付額上限額(100%障害、18歳以上)
週123,80ポンド
塵肺症、中皮腫の認定者の場合障害1%~10%→12,38ポンド障害11%~19%→24,76ポンド
死亡時寡婦寡夫手当金週82,05ポンド(+国民保険2000ポンド)母子父子手当金週82,05ポンド
○給付実績
塵肺症 (事例:件) 中皮腫 (事例:件)
■:アスベスト肺が潜在的原因となる死亡□:アスベスト肺が原因の死亡◆:D1(アスベスト肺)認定数※申請数は不明
■:中皮腫による死亡▲:D3 認定数◇:D3 申請数
アスベスト起因の肺がん (事例:件) びまん性胸膜皮厚 (事例:件)
▲:D8 認定数◆:D8 申請数 ▲:D9 認定数◆:D9 申請数
各国の救済措置 ②アメリカ
1、使用規制作業場のアスベスト粉塵の許容濃度の規制
1972年 5本/㎤1976年 2本/㎤1986年 0,2本/㎤1991年 0,1本/㎤
アスベスト吹き付けはすでに1975年に全面禁止。
2、アスベスト被害補償法案労働省内にアスベスト疾病補償局を設立し、補償基金により補償問題を処理。
○補償基金の財源補償基金の規模1400億ドル
①アスベスト訴訟の被告企業(900億㌦)②保険会社(460億㌦)③アスベスト訴訟で倒産した企業等による既存の補償基金からの移管(40億㌦)
○補償の受給要件①医師の診断があること
② 初のアスベスト被爆が診断の10年以上前で
あること
③症状が9レベルの医学的基準のいずれかを
満たすこと
④職種や時代に応じて算定される被爆期間の基
準を満たすこと
レベル 症状/疾病 補償内容
1アスベスト症/胸膜疾患A (肺機能正常)
医学的経過観察
2複合的な疾病 (アスベスト症と他要因による呼吸機能の損傷)
2.5 万ドル
3アスベスト症/胸膜疾患B (肺機能が60%程度に低下)
10万ドル
4重度のアスベスト症 (肺機能が50-60%程度に低下)
40万ドル
5障害をもたらすアスベスト症 (肺機能が50%以下に低下)
85万ドル
6肺がん以外のがん(結腸がん、喉頭がん、咽頭がん、胃がん)
20万ドル
7 胸膜疾患を伴う肺がん喫煙者 30 万ドル、元喫煙者72.5 万ドル、非喫煙者80 万ドル
8 アスベスト症を伴う肺がん喫煙者 60 万ドル、元喫煙者97.5 万ドル、非喫煙者110 万ドル
9 中皮腫 110 万ドル(出典)Senate Report No.97, 109th Congress, 1st Session(2005) p.28,p.46.に基づき作成。
○補償の対象となる疾病とその補償内容
○アスベスト被害補償法案の今後の見通し
①補償対象となる被害者数、基金に拠出する企業名及びその負担額が不明確であること
②基金の財源が枯渇した場合に穴埋めに税金が使われる可能性があること
③被告企業が将来の訴訟から完全に守られるという保証が十分ではないこと
→財源不足に陥る可能性
まとめ
• 諸外国と比べて日本の対策は遅れていた▫ 初期の対策 ヨーロッパ:吹きつけ作業等の全面禁止
日本:保護具や飛散抑制措置
日本はアスベスト対策を放置していた
• これからは周辺住民の健康被害への医療費補償が求められる
• 一時的な補償でなく、国と企業の責任による継続的な補償が必要
参考URL
• 〈http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0495.pdf〉
• 〈http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0502.pdf〉