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393 適応機構の研究が進められてきた [3]。図 1 に比較的研 究の良く進んでいる Bacillus halodurans C-125 株(以下 C-125 株)と Bacillus pseudofirmus OF4 株(以下 OF4 株) のアルカリ pH 適応機構をまとめた(1)。これらの細 菌では,特徴的な Na + サイクルおよび二次細胞壁ポリ マーを持つことにより,高アルカリ pH 環境においても 細胞内 pH を中性から弱アルカリ性に保ち,アルカリ pH 環境に適応していることが明らかになってきた。これら について概説したい。 3Na サイクルによるアルカリ pH 環境適応 典型的な通性好アルカリ性 Bacillus 属細菌は,大腸菌 などの一般的な細菌と同様にべん毛による運動性を持つ が,そのエネルギー源に特徴が見られ,その研究はアル カリ pH 環境適応機構の解明にも役立ってきた [4, 5]大腸菌などの一般的な好中性細菌は,べん毛の回転運 動のエネルギー源としてプロトン駆動力(細胞膜内外に 形成される水素イオンの電気化学的ポテンシャル差)を 用いている。細胞外 pH がアルカリ側になればなるほど H + が少なくなればなるほど)プロトン駆動力は使いづ 1.はじめに 好アルカリ性微生物は,一般的な微生物が増殖できな いようなアルカリ pH 環境で良好に生育する微生物であ り,近年その驚異的なアルカリ pH 環境適応機構が明ら かになりつつある。また,好アルカリ性微生物が生産す る酵素は洗剤に添加されるなど多様な分野で利用されて おり,我々の日常生活に欠かせないものとなっている。 本稿では好アルカリ性微生物,特に筆者が研究を行って きた好アルカリ性 Bacillus 属細菌について,基礎的な科 学研究から産業的な応用までの研究動向をまとめて紹介 したい。 2好アルカリ性Bacillus 属細菌のアルカリ pH 環境 適応機構 好アルカリ性微生物は,大腸菌などの一般的な細菌が 生育できない pH9 以上で生育可能な微生物であり,pH9 以上でのみ生育可能な絶対好アルカリ性微生物と中性 pH 付近でも生育可能な通性好アルカリ性微生物に分類 される [1]。特に通性好アルカリ性 Bacillus 属細菌は, 中性付近の pH を示す土壌からも数多く分離される典型 的な好アルカリ性微生物であり,そのアルカリ pH 環境 Alkaliphiles are microorganisms that can grow under alkaline environments, and their alkaline adaptation mecha- nism has been studied. Their extracellular enzymes are widely used in industry because of their stability under alkaline environment. In this paper I describe the research trends of alkaliphilic Bacillus species from basic research to industrial applications. Keywords : alkaliphile, alkaline adaptation mechanism, enzyme, Bacillus, industrial application 好アルカリ性 Bacillus 属細菌とその酵素の研究開発動向 Shun FUJINAMI Accepted November 11, 2016日本大学文理学部化学科: 156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40 Department of Chemistry, College of Humanities and Sciences, Nihon University 3-25-40, Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550, Japan 日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要 No.52 2017pp.393 396 1 藤 浪   俊 Trends of Research and Development in Alkaliphilic Bacillus Species and Their Enzymes

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Page 1: 好アルカリ性Bacillus属細菌とその酵素の研究開発 …...395 ( ) 好アルカリ性 Bacillus 属細菌とその酵素の研究開発動向 3 おいてテイクロノペプチドを欠損させたりするとアルカ

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適応機構の研究が進められてきた [3]。図 1に比較的研

究の良く進んでいるBacillus halodurans C-125株(以下

C-125株)とBacillus pseudofirmus OF4 株(以下OF4株)

のアルカリpH適応機構をまとめた(図1)。これらの細

菌では,特徴的なNa+サイクルおよび二次細胞壁ポリ

マーを持つことにより,高アルカリpH環境においても

細胞内pHを中性から弱アルカリ性に保ち,アルカリpH

環境に適応していることが明らかになってきた。これら

について概説したい。

3.Na+サイクルによるアルカリpH環境適応

典型的な通性好アルカリ性Bacillus属細菌は,大腸菌

などの一般的な細菌と同様にべん毛による運動性を持つ

が,そのエネルギー源に特徴が見られ,その研究はアル

カリpH環境適応機構の解明にも役立ってきた [4, 5]。

大腸菌などの一般的な好中性細菌は,べん毛の回転運

動のエネルギー源としてプロトン駆動力(細胞膜内外に

形成される水素イオンの電気化学的ポテンシャル差)を

用いている。細胞外pHがアルカリ側になればなるほど

(H+が少なくなればなるほど)プロトン駆動力は使いづ

1.はじめに

好アルカリ性微生物は,一般的な微生物が増殖できな

いようなアルカリpH環境で良好に生育する微生物であ

り,近年その驚異的なアルカリpH環境適応機構が明ら

かになりつつある。また,好アルカリ性微生物が生産す

る酵素は洗剤に添加されるなど多様な分野で利用されて

おり,我々の日常生活に欠かせないものとなっている。

本稿では好アルカリ性微生物,特に筆者が研究を行って

きた好アルカリ性Bacillus属細菌について,基礎的な科

学研究から産業的な応用までの研究動向をまとめて紹介

したい。

2. 好アルカリ性Bacillus属細菌のアルカリpH環境

適応機構

好アルカリ性微生物は,大腸菌などの一般的な細菌が

生育できないpH9以上で生育可能な微生物であり,pH9

以上でのみ生育可能な絶対好アルカリ性微生物と中性

pH付近でも生育可能な通性好アルカリ性微生物に分類

される [1]。特に通性好アルカリ性Bacillus属細菌は,

中性付近のpHを示す土壌からも数多く分離される典型

的な好アルカリ性微生物であり,そのアルカリpH環境

Alkaliphiles are microorganisms that can grow under alkaline environments, and their alkaline adaptation mecha-nism has been studied. Their extracellular enzymes are widely used in industry because of their stability under alkaline environment. In this paper I describe the research trends of alkaliphilic Bacillus species from basic research to industrial applications.

Keywords : alkaliphile, alkaline adaptation mechanism, enzyme, Bacillus, industrial application

好アルカリ性Bacillus属細菌とその酵素の研究開発動向

Shun FUJINAMI*

(Accepted November 11, 2016)

* 日本大学文理学部化学科: 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40

* Department of Chemistry, College of Humanities and Sciences, Nihon University 3-25-40, Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550, Japan

日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要

No.52 (2017) pp.393-396

1

藤 浪   俊*

Trends of Research and Development in Alkaliphilic Bacillus Species and Their Enzymes

Page 2: 好アルカリ性Bacillus属細菌とその酵素の研究開発 …...395 ( ) 好アルカリ性 Bacillus 属細菌とその酵素の研究開発動向 3 おいてテイクロノペプチドを欠損させたりするとアルカ

藤 浪   俊

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を要求することが知られている [1-3]。OF4株細胞を

pH8.5から急激にpH10.5の環境にさらすと,Na+がある

程度存在する場合には細胞内pHを約8.3に維持すること

ができるが,Na+が存在しない場合には細胞内pHは10.5

まで上昇し生育することができなくなる [3]。このよう

なアルカリpH環境適応におけるNa+要求性は,いくつ

かのNa+の取り込み・排出系から構成される「Na+サイ

クル」にpHホメオスタシスが依存しているためである

と考えられている。OF4株やC-125株では主要なNa+/H+

アンチポーターとしてMrp複合体が存在し,細胞内に

H+を取り込み細胞内を中性化し,Na+を排出を行ってい

ると考えられている。例えばC-125株においてNa+/H+

アンチポーター活性を欠損させるとpH9.0以上では生育

できなくなることが報告されている [9]。その他のNa+

の取り込み系としては,NaチャネルやNa+/溶質シン

ポーターが存在する。例えばOF4株において,Naチャ

ネルであるべん毛モーター固定子タンパク質MotPSや,

電位駆動型NaチャネルNaVBPを欠損させると,運動性

に加えてアルカリpH適応にも異常をきたすことが報告

されている [10, 11]。

らくなるため,その運動性は減少する。しかし好アルカ

リ性細菌は,アルカリpHでも良好な運動性を示すこと

が以前より知られていた。そこでOF4株やC125株の詳

細な運動特性が調べられた。アルカリpHで培養した

OF4株やC125株の細胞をフィルターで集菌し,様々な

条件の培地に再けん濁し,その運動性が調べられた。そ

の結果,OF4株やC125株の運動性はNa+濃度に依存す

ることが報告された [6, 7]。つまり,OF4株やC125株は

べん毛の回転に,プロトン駆動力ではなく,ナトリウム

イオン駆動力を用いることでアルカリpH環境に適応し

ていることが示唆された。大腸菌などではMotAB(H+

チャネルとして機能し,プロトン駆動力をべん毛の回転

力に変換する)がべん毛モーター固定子タンパク質とし

て機能しているのに対し,OF4株ではMotPS(Na+チャ

ンネルとして機能し,ナトリウム駆動力をべん毛の回転

力に変換する)がべん毛モーター固定子タンパク質とし

て機能していることが報告されており [8],運動性にお

けるアルカリpH環境適応機構はほぼ解明されたと考え

ることができる。

OF4株やC-125株は運動性だけでなく,生育にもNa+

典型的なNa+依存性の通性好アルカリ性細菌であるBacillus pseudofirmus OF4株とBacillus halodurans C-125株のアルカリpH適応

機構を図に示した。どちらの細菌もNa+サイクルや細胞壁の二次細胞壁ポリマー (SCWPs),高い膜電位により,アルカリpH環

境 (pH 10.5)においても,細胞内pHを中性から弱アルカリ性 (pH 8.3)に保つことでアルカリpHに適応している。どちらの細菌もべん毛の回転やNa

+/溶質シンポーターによる栄養素の取り込みにはナトリウムイオン駆動力を用いているが,ATP合成にはプロ

トン駆動力を用いているなどの共通点が見られる。異なる点としてはOF4株のべん毛はpHによらず1~2本だが,C-125株のべん毛はpH7で0本,pH10で21本と変化する。また,二次細胞壁ポリマー (SCWPs)として,OF4株は細胞表層タンパク質 (SlpA)やγ -ポリグルタミン酸,C-125株はテイクロン酸やテイクロノペプチドを持つ点が異なっている。しかし,どの二次細胞壁ポリマーも酸性アミノ酸などの酸性化合物を多く含んでおり,それがアルカリpH適応に寄与していると考えられている。

図 1 Bacillus halodurans C-125株とBacillus pseudofirmus OF4 株のアルカリpH適応機構

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好アルカリ性Bacillus属細菌とその酵素の研究開発動向

3

おいてテイクロノペプチドを欠損させたりするとアルカ

リpH環境での生育が悪化することから,これらの二次

細胞壁ポリマーがアルカリpH適応に関与していると考

えられている。どちらの二次細胞壁ポリマーも酸性化合

物を多く含んでおり,この陰荷電がOH -の細胞内への流

入を防ぎ,生育に必要なH+やNa+を細胞表層近傍へ引

きつけるのに役立っているのではないかと推察されてい

る。一般的に好アルカリ性Bacillus属細菌の細胞壁や細

胞外に分泌されるタンパク質は酸性アミノ酸名の含有率

が高く,低い等電点 (pI)を示す [22]。このこともこの可

能性を裏付けている。また,OF4株では細胞膜の脂質に

おいても一般的な好中性Bacillus属細菌と比べてカルジ

オリピンなどのアニオン性脂質の含有率が高いことが報

告されており [23],これも同様の役割をもつ可能性が考

えられる。

近年,多数の細菌のゲノム解析が報告され,機能未知

の細胞表層タンパク質をコードすると推察される遺伝子

が多数存在することわかり,注目を集めている [24]。好

アルカリ性細菌においても機能がわかっていない細胞表

層タンパク質が多数存在しており [14, 15, 22],これら

の機能解明が待たれるところである。

5. 好アルカリ性細菌の生産する菌体外酵素の工業

的利用

好アルカリ性Bacillus属細菌の生産する菌体外酵素は,

通常の酵素が失活してしまうpH10程度の洗剤溶液でも

高い活性と安定性をもつという特長があり,衣料用洗剤

の添加物として広く用いられている [1-3]。洗剤用酵素

市場は,工業用酵素市場のなかで最も大きな割合を占め

ており,また,一般の消費者が酵素による生産物でなく,

酵素そのものを消費するという点で着目すべき酵素とい

える。洗剤には好アルカリ性Bacillus属細菌の生産する

アルカリプロテアーゼ,アルカリセルラーゼ,アルカリ

アミラーゼ,アルカリリパーゼなどが添加され,洗浄力

の向上や洗剤のコンパクト化に貢献している。1950年代

には好中性Bacillus属細菌の生産する菌体外プロテアー

ゼが発見され利用されていたが,耐アルカリ性や耐熱性

の面であまり有効ではなかった。1970年代には掘越弘毅

博士により好アルカリ性Bacillus属細菌およびその菌体

外プロテアーゼが発見された [25]。好アルカリ性細菌の

生産する菌体外プロテアーゼはpH11~12,50~60℃で

も高い活性と安定性を持つ上に,SDSなどの界面活性剤

にも耐性があり,洗剤用の酵素として幅広く利用される

ようになった。現在では,遺伝子工学・タンパク質工学

的に改良され,10~20度程度の低温耐性や漂白のため

このようにOF4株やC-125株といった典型的な好アル

カリ性Bacillus属細菌ではナトリウム駆動力や「Na+サ

イクル」によってアルカリpH環境に適応していること

がわかってきた。しかし,これらの細菌においても酸化

的リン酸化によるATP合成においては大腸菌などの一

般的な細菌と同様にプロトン駆動力を用いていることが

示されている [3]。先ほど述べたように,アルカリpHに

なればなるほどプロトン駆動力は使いづらくなるため,

これは合理的でないように思える(実際に一部の嫌気性

好アルカリ性細菌ではナトリウムイオン駆動力により

ATP合成を行っている)。この理由は現在も完全にはわ

かっておらず,アルカリpH環境適応機構研究における

残された課題となっている。近年の研究により,OF4株

の caa3型シトクロム酸化酵素は,アルカリpH環境にお

いてプロトン駆動力を用いて効率的にATP合成を行う

ための機構を持っていること [12],caa3型シトクロム酸

化酵素とATP合成酵素が共局在していることが示唆さ

れた [13]。これらから,電子伝達によって排出される

H+が,細胞外で平衡にならず,直接ATP合成酵素に渡

り利用されているという仮説が提唱されているが直接的

な証拠は未だ得られていない。今後の研究が待たれると

ころである。

また,Na+ではなくK+など他の陽イオンに依存してい

ると思われる好アルカリ性細菌も報告されており,研究

が進められている [14-16]。このような細菌ではH+や

Na+の代わりに他の陽イオンを用いることでアルカリ

pH環境に適応している可能性がある。

4. 細胞壁に含まれる二次細胞壁ポリマーによるア

ルカリpH環境適応

C-125株の細胞壁をリゾチーム処理により取り除きプ

ロトプラスト化すると,中性pH~弱アルカリ性pHで

は細胞壁を再生し生育することが可能だが,アルカリ

pHでは生育することができないことが知られている

[18]。このことから細胞壁もまたアルカリpH適応に重

要であると考えられている。OF4株やC-125株では,細

胞壁の主要な成分であるペプチドグリカンについては一

般的な好中性Bacillus属細菌と変わらないA1γ型構造を

持っているが,細胞壁の最外層 (細胞表層 )にある二次

細胞壁ポリマー (SCWPs)については特徴的な構造を

持っていることがわかっている [19-21]。例えばOF4株

ではγ -ポリグルタミン酸,SlpAなどの細胞表層タンパク

質が,C-125株ではテイクロン酸やテイクロノペプチド

が二次細胞壁ポリマーとして多数存在するという報告が

ある。OF4株においてSlpAを欠損させたり,C-125株に

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藤 浪   俊

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56. 3) T. A. Krulwich, M. Ito, A. A. Guffanti. Biochim Biophys

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(Ed: K. Horikoshi, G. Antranikian, A. T. Bull, F. T. Robb, K. O. Stetter), Springer, 2011, pp.142-158.

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8) M. Ito, D. B. Hicks, T. M. Henkin, A. A. Guffanti, B. D. Powers, L. Zvi, K. Uematsu, T. A. Krulwich. Mol Microbiol, 2004, 53, 1035-49.

9) T. A. Krulwich. Mol Microbiol, 1995, 15, 403-10.10) M. Ito, H. Xu, A. A. Guffanti, Y. Wei, L. Zvi, D. E. Clapham,

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11) S. Fujinami, T. Sato, J. S. Trimmer, B. W. Spiller, D. E. Clapham, T. A. Kr ulwich, I . Kawagishi , M. I to . Microbiology, 2007, 153, 4027-38.

12) D. B. Hicks, J. Liu, M. Fujisawa, T. A. Krulwich. Biochim Biophys Acta, 2010, 1797, 1362-77.

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14) S. Fujinami, K. Takeda, T. Onodera, K. Satoh, M. Sano, I. Narumi, M. Ito. Genome Announc, 2013, 1, e-publishing.

15) S. Fujinami, K. Takeda, T. Onodera, K. Satoh, M. Sano, I.

Narumi, M. Ito. Genome Announc, 2014, 2. e-publishing.16) S. Fujinami, K. Takeda-Yano, T. Onodera, K. Satoh, M.

Sano, Y. Takahashi, I. Narumi, M. Ito. Genome Announc, 2014, 2, e-publishing.

17) R. Imazawa, Y. Takahashi, W. Aoki, M. Sano, M. Ito. Sci Rep, 2016, 6, e-publishing.

18) R. Aono, M. Ito, K. Horikoshi, Biochem J, 1992, 285, 99-103.19) R. Aono, T. Sanada. Biosci Biotechnol Biochem, 1994, 58,

2015–2019.20) R. Gilmour, P. Messner, A. A. Guffanti, R. Kent, A. Scheberl,

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21) R. Aono, M. Ito, K. N. Jobline, K. Horikoshi. Microbiology, 1995, 141, 2955-2964.

22) B. Janto, A. Ahmed, M. Ito, J. Liu, D. B. Hicks, S. Pagni, O. J. Fackelmayer, T.A. Smith, J. Earl, L. D. Elbourne, K. Hassan, I. T. Paulsen, A. B. Kolstø, N. J. Tourasse, G. D. Ehrlich, R. Boissy, D. M. Ivey, G. Li, Y. Xue, Y. Ma, F. Z. Hu, T. A. Krulwich. Environ Microbiol, 2011, 13, 3289-309.

23) J. Liu, S. Ryabichko, M. Bogdanov, O. J. Fackelmayer, W. Dowhan, T. A. Krulwich. J Biol Chem, 2014, 289, 2960-71.

24) Y. Katano, S. Fujinami, A. Kawakoshi, H. Nakazawa, S. Oji, T. Iino, A. Oguchi, A. Ankai, S. Fukui, Y. Terui, S. Kamata, T. Harada, S. Tanikawa, K. Suzuki, N. Fujita. Stand Genomic Sci, 2012, 6, 406-14.

25) K. Horikoshi. Agric Biol Chem, 1971, 35, 1407–1414.26) M. Matsuzawa, M. Kawano, N. Nakamura, K. Horikoshi.

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52, 305-17.

参考文献

に添加される酸化剤への耐性を付与されたものも使用さ

れるようになってきている [1-2]。

洗剤添加物以外にはシクロデキストリンの製造に利用

されるCGTase(Cyclodextrin glycosyl transferase)がある

[1-2]。シクロデキストリン はD-グルコースが α(1→4)

グルコシド結合によって結合した環状オリゴ糖である。

グルコースが 6個結合したα -シクロデキストリンは難

消化性で水溶性,7個結合したβ -シクロデキストリンは

難消化性で難水溶性,8個結合したγ -シクロデキストリ

ン消化性で水溶性という多様な特徴がある。そのため各

種のシクロデキストリンが分子カプセルとして,サプ

リメントや練りわさびなどの揮発成分の揮散防止,悪

臭の消臭など多様な分野で利用されている。シクロデ

キストリンは以前より存在していたが,非常に高価で

ありほとんど利用されていなかった。しかしβ -シクロ

デキストリンを効率よく生産するCGTaseが好アルカリ

性Bacillus属細菌から発見されて以来,安価に製造でき

るようになり,幅広く利用されるようになった [26]。シ

クロデキストリンは,近年ますます生産量が増加してお

り,今後も多様な分野で使用が見こまれる。他にもクラ

フトパルプの漂白に使われるアルカリキシラナーゼも好

アルカリ性細菌のものが使用されている [27]。

6.おわりに

このように好アルカリ性微生物,特に好アルカリ性

Bacillus属細菌は産業的な応用が進んでおり,そのアル

カリpH適応機構も明らかになりつつある。また,近年

のゲノム解析技術の進展により研究が促進され,Na+以

外の陽イオンに依存したアルカリpH適応機構の存在も

示唆されており,更なる研究や応用の発展が期待され

る。