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1 パリ協定に⾄る道 WWFジャパン 気候変動・エネルギーグループ リーダー ⼭岸 尚之 2016510⽇(⽕) スクール・パリ協定

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Page 1: パリ協定に⾄る道 - WWFジャパンLPAA Lima Paris Action Agenda の略。様々なアクターが、国の 標の内外で採る温暖化対策を集積するものとして2014

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パリ協定に⾄る道

WWFジャパン 気候変動・エネルギーグループ リーダー ⼭岸 尚之

2016年5⽉10⽇(⽕)

スクール・パリ協定

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全体的な流れ –  国際的な気候変動対策の体制の全体像

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UNFCCC→京都議定書→パリ協定

国連気候変動 枠組条約

1992

京都議定書1997

コペンハーゲン合意 2009

カンクン合意 2010

1995-現在まで

第1約束期間 2008-2012

第2約束期間 2013-2020

⾃主⽬標 2013-2020

1992 2010

パリ協定 2015

2020以降・・・

2015 2020

ダーバンプラット・フォーム 2011

ADP

2005

► 「条約」「議定書」「協定」と呼び名は違っても、「国際条約」であることは同じ。

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全体としての「2℃未満」「1.5℃未満」⽬標

► 頑張ってCO2を削減するシナリオで2℃。このままいって4℃の上昇(産業⾰命前と⽐較して)。�

►  2℃と4℃の間では、影響に⼤きな差があることが知られている

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論点

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世界全体で必要な削減量

(出所) Rojeri, et al. (2015)

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「差異化」は何が「衡平か」を反映する

全ての国が協⼒して 取組むべき問題

「どの国が」 「どれくらい」やるべきか

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全てにつながる「差異化」をめぐる論点

差異化

削減⽬標の形式 (e.g. 総量か原単位か、BAU⽐か、

基準年⽐か)

削減⽬標の性質・義務 (e.g. 国によって義務かどうか

違う?LDCは?)

資⾦⽀援の義務・規模 (e.g. 誰がどれくらいの資⾦⽀援をするのか)

削減⽬標に⽀援有無条件をつけるか? (e.g. ここまでは独⼒で、ここからは⽀援

があれば)

サイクル (e.g. 先進国・途上国で分

ける?それとも?)

⻑期⽬標 (e.g. ピークの時期が違

う?)

適応の扱い (e.g. 途上国は適応⾏動計画だけでもよい?)

遵守における扱い (e.g. 遵守制度の対象と

なるのは?)

「先進国(developed countries;Annex I Parties)」と「途上国(developing countries;Non-Annex I Parties)」という⾔�は使い�けるのか?�

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主要グループ

G77+中国 EU

アンブレラ・グループ

EU28カ国

アメリカ、オーストラリア、⽇本、ニュージーランド、ロシア、ウクライナ、ノルウェー、カザフスタン・・・

AOSIS BASIC

ツバル、フィジー、モルディブ等、約40カ国

バングラデシュ、ネパール、エチオピア、ソマリア等、約50カ国

LDC

AILAC チリ、コロンビア、コスタリカ、ペルー、パナマ、グアテマラ

ブラジル、南アフリカ

LMDC

サウジアラビア

ボリビア、キューバ、ニカラグア、ベネズエラ、・・・

中国、インド

ALBA

アンティグア・バーブーダ、・・・

EIG

韓国、メキシコ、スイス、リヒテンシュタインなど

※この図は網羅的はありません。また、⼀部、メンバー国の重なりを反映できておりません。

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⼯夫として出てきた (I)NDC

�����C�

2025/2030 に向けての⽬標�•  緩和(排出量削減)⽬標が中⼼だが�•  「適応」「資⾦」なども含む�•  「事前に」出す�

�nten�e�� ��tion���� �ete�mine�� Cont�i��tions�

パリ協定までは「案」

各国が 国内プロセス

で決める

Commitments と Action の�間をとって�

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必要な資⾦の流れ

カンクン合意(COP16決定・1/CP.16・パラ98〜100)

「先進国」から「途上国」へ、2020年までに年1000億ドルの資⾦の流れを作り出す。公的資⾦や⺠間資⾦を含んだ数字。�

► 現状では約600億ドルあると試算された。�

► しかし、2℃に抑えるためには、2030年までには、年7000億必要だとの試算も・・・(世界経済フォーラム)。�

(出所) OECD-CPI (2015) ;WEF (2013)

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COP21とパリ協定

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•  議⻑国であったフランスの巧みな采配。

•  「先進国」と「途上国」の対⽴を超えた歩み寄り。

•  「グローバルな合意」を求める気運。

パリ協定の合意

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© IISD

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象徴的な出来事としての「⾼い野⼼連合」

時期 経緯 会議以前 EUおよびアフリカ・カリブ海・太平洋諸国(79カ国)からなるグループ

12⽉9⽇ アメリカ、コロンビア、メキシコ、ノルウェーが加⼊

12⽉11⽇ ブラジル、フィリピン、セイシェル、ルクセンブルグ、チリ、フィジー、グレナダが加⼊

12⽉12⽇ ⽇本、オーストラリアなどが加⼊

“Coalition of High Ambition”

UNFCCC Webcast より

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パリ協定の全体像

気温上昇を1.5℃/2℃未満に抑える世界

温室効果ガス 排出量削減 今世紀後半 実質ゼロ

気候変動影響 の軽減対応 発⽣被害へ

の救済等

緩和 適応 損失と被害

各国の排出量削減⽬標 +適応・資⾦・技術・キャパシティ・ビルディング

NDC(国別⽬標)

資⾦ 技術開発・移転 キャパシティ・ビルディング (⼈材育成等)

5年ごとの ⾒直し

世界全体での進捗確認

段階的な改善 (2025・2030年 以降も視野に)

国連外の取り組み(企業・⾃治体・NGO)の取り込み

メカ

森林

「透明性」 枠組み

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⽬指している所と現実

2030年時点での INDC実施後の排出量と 各シナリオとの差

INDCなし ⇧33億トン

総INDC 562億トン

2℃に必要 ⇩152億トン

1.5℃に必要 ⇩226億トン

※4⽉4⽇までに提出された161のINDC(189カ国をカバー)

(出所) UNFCCC Secretariat (2016)

► 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が、COP21決定を受けて、昨年の「統合報告書」をアップデート。

► 現在の各国の2025/2030年⽬標では、「2℃」は不可能にはならないものの、強化しなければ達成は厳しい、という結論。

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NDCを考慮した気温上昇の予測例1:Climate Action Tracker

(出所) Climate Action Tracker (2015)

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NDCを考慮した気温上昇の予測例2:Climate Interactive

(出所) Climate Interactive (2016)

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「2℃/1.5℃」⽬標と「実質ゼロ」⽬標の意味

-10

0

10

20

30

40

50

60

1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

排出量(単位:

10億

tCO

2��)�

2℃/1.5℃��を���るシナリオ��

��の排出量�2 ºC 1.5℃

►  2℃・1.5℃⽬標を達成するためには、今世紀後半には温室効果ガス排出量はゼロにしなければならない。

(出所) 上記の2℃未満/1.5℃未満シナリオは、UNEP (2015) の中央値を使⽤。 

今世紀後半

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パリ協定の⽬標の性質

京都議定書 パリ協定

名前 QELROs (削減数値⽬標)

NDCs (国別に定める貢献)

⽬標を持つこと 義務 義務

⽬標の達成 義務 義務でない

⽬標の達成のために 国内対策をとること 義務 義務

⽬標の形式 1990年を基準として、

2008年〜2012年の5年間平均の排出削減%

基本要素はあるが、 原則各国⾃由

遵守 守れなかった場合の 罰則あり

罰則は作られない予定 ただし、国際的なレ

ビューを受ける

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5年ごとの⾒直しによる強化

国別⽬標2

国別⽬標1

国別⽬標3

2015 2020 2025 2030

国別⽬標の 提出・事前協議

2035 ….

グローバル・ ストックテイク

2018 促進的対話

2019-20 2030年⽬標の

(再)提出・更新

2023 グローバル・

ストックテイク

2028 グローバル・

ストックテイク

2033 グローバル・

ストックテイク

2024-25 2035年⽬標?

の提出

2029-30 2040年⽬標?

の提出

2034-35 2045年⽬標?

の提出

京都議定書第2約束期間

カンクン合意⾃主⽬標

カンクン合意/ 京都議定書 パリ協定

世界全体と国別の2つのレベルで

強化が検討される

※アメリカ等を除き、多くの国は2030年⽬標を持っている

・・・・

 「前進性」の原則

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政府以外の主体の重視

► ⽇本からは、75の⾃治体、167の企業、19の投資機関が参加(2015年年4⽉現在)。

NAZCA

LPAA ►  Lima Paris Action Agenda の略。様々なアクターが、国の⽬標の内外で採る温暖化対策を集積するものとして2014年に設⽴。

► 上記LPAAの下で様々なアクターが約束する対策・イニシアティブを登録する登録簿として2014年に設⽴。

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⽇本の⽬標とその評価

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⽇本の現在の温室効果ガス排出量削減⽬標

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

温室効果ガス排出量

(百万

t-CO

2eq)�

2030年までに 2013年⽐で 26%削減�

2050年までに 80%削減�

2020年までに 2005年⽐で3.8%削減�

NDC�

第4����本���

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Climate Action Tracker による評価

お⼿本(Role Model) 該当なし

充分(Sufficient) ブータン、コスタリカ、エチオピア、モロッコ、ガンビア

中程度(Medium) ブラジル、中国、EU、インド、カザフスタン、メキシコ、ノルウェー、ペルー、フィリピン、スイス、アメリカ

不⼗分(Inadequate)

アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、インドネシア、⽇本、ニュージーランド、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、韓国、トルコ、UAE、ウクライナ

►  欧州系の複数の研究機関による合同評価。

►  「2℃未満」を達成できるようなシナリオを前提としている。

►  必要な削減量を各国でどう分担するべきかは、既存の様々な評価⼿法を幅を使っている。

(出所) Climate Action Tracker http://climateactiontracker.org/countries/japan.html

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国連会議の構造

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会議の構造

COP (「枠組条約」の締約国会議)

COPMOP (「京都議定書」の締約国会議)

CMA (「パリ協定」の締約国会議)

SBI (実施に関する補助機関)

APA (パリ協定特別作業部会)

SBSTA (科学・技術の助⾔に関する補助機関)

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国連会議の流れ

開幕の総会 

↓ 

議題の採択等�

国連会議の流れ�

閉幕の総会 

↓ 

合意⽂書の採択�

議題事項A�

議題事項B�

議題事項C�

コンタクト・�グループ� インフォーマル�

コンタクト・�グループ�

コンタクト・�グループ�

コンタクト・�グループ�

コンタクト・�グループ�

コンタクト・�グループ�

► 基本は以下の流れ�► 開幕総会での議題(アジェンダ)の採択�► 各議題事項ごとに分かれての交渉�► 閉幕総会での「決定」の採択�

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これからもご⽀援をどうそよろしくお願い申し上げます

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参考資料

•  Climate Action Tracker (2015) Effect of current pledges and policies on global temperature. Climate Action Tracker. http://climateactiontracker.org/global.html

•  Climate Interactive (2016) Climate Scoreboard – UN Climate Pledge Analysis. Climate Interactive. https://www.climateinteractive.org/programs/scoreboard/

•  Global Carbon Project (2015) Carbon budget and trends 2015. http://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget

•  Grassi, Giacomo and Dentener, Frank. (2015) Quantifying the contribution of the Land Use sector to the Paris Climate Agreement. Joint Research Center, European Commission.

•  IEA (2016) World Indicators. IEA World Energy Statistics and Balances (database). DOI: http://dx.doi.org/10.1787/data-00514-en (Accessed on 21 January 2016)

•  OECD-CPI (2015) Climate Finance in 2013-14 and the USD 100 billion goal. OECD. •  Rojeri, et al. (2015) Info sheet: Timetables for Zero Emissions and 2050 Emissions Reductions: State of the

Science of the ADP Agreement. Climate Analytics. •  UNFCCC Secretariat (2016) Aggregate effect of the intended nationally determined contributions: an

update Synthesis report by the secretariat. (FCCC/CP/2016/2) UNFCCC. •  World Economic Forum (2013) The Green Investment Report. World Economic Forum.