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1 グアニン4重鎖構造の生物学的意義の解明 正井 久雄 (公財)東京都医学総合研究所 ゲノム医科学研究分野 ゲノム動態プロジェクト Key words:グアニン4重鎖、ゲノム複製、染色体高次構造、RNA-DNA ハイブリッド、複製タイミング グアニン4重鎖構造(以下 G4 構造と記載)を形成しうる配列は、ヒト ゲノム上に 37 万カ所以上存在すると推定される(図 1)。最近の研究から、 G4 構造は転写、組換え、転移、エピゲノム制御など染色体の種々の機能 に関与することが示唆されると同時に、その異常な形成は、神経変性疾患 などの原因ともなること示唆されている[1]。しかし、G4 構造の細胞内で の存在、動態、プロファイル、そしてその普遍的な生物学的意義の解明は、 大部分未解決の研究課題である。 私たちは、ゲノム複製の分子機構の解析から、Rif1という進化的に保存された因 子が、ゲノム複製のタイミングの決定因子であることを発見した [2,3,4]。その後の研究から、Rif1 の染色体上結合部位の配列は、G4 構造を形成しうる事、更にRif1 は G4 に特異的に結合することを見出 した[5]。その結果、核内に複製開始に抑制的なクロマチンドメイン を形成する可能性を提案した(図 2)。 最近の高等生物の複製開始部位の網羅的解析から、複製開始領域の近 傍にG4 形成配列が高い頻度で存在することが明らかになった[6]。そ こで、私たちは、大腸菌染色体の通常の複製開始領域 oriC に依存し ない、第二の複製開始機構に着目した。この機構は RNaseH のない株 で効率よく観察される[7]。私たちはこの複製系は、G4 に依存すると 想定し、種々の検証実験を行ってきた。特に遺伝的に要求される配列 内に G4 形成配列が存在すること、またG4 に特異的に結合する未知の 遺伝子産物を同定した。これらの発見は、ゲノムDNA 複製の正及び負 の制御において、G4 構造が重要な役割を果たすことを示唆する(図3)。 G4 構造は、試験管内ではグアニンの連続配列に依存して 1 本鎖 DNA 上に容易に形成されるが、細胞内において2本鎖DNA と競合して、実 際に形成されるのかは、慎重に検証する必要がある。私たちは、種々 の方法を用いて、細胞内における G4 の形成を検証し、実際に G4 構造が細胞内染色体上に形成されることを示す data を得た。 本研究では、G4 構造が、ゲノムの収納、維持、継承において果た す役割を解析し、その普遍的な生物学意義を解明することを目標と する。 方法および結果 Part 1 グアニン4重鎖構造と Rif1 1.分裂酵母及び、マウス Rif1 タンパク質とその標的 Rif1BS-G4 構造との相互作用による核内染色体ドメイン形成の 機構 Rif1 は複製タイミング制御の他に、二重鎖 DNA 切断修復、テロメア制御、転写制御に関与する(図 3)。 (1) 分裂酵母 Rif1(1400 アミノ酸)およびその誘導体を Flag 抗体カラム、ニッケルカラムなどで精製し、それらの DNA v Rif1 3. 複製の正と負の制御における G4 構造の関与 G 3 N x G 3 N x G 3 N x G 3 (x=1~7) G G G G G G G G G G G N N N N N N N N N N N G K+ K+ +,'&# %" !$ 1. グアニン4重鎖(G4) 構造 PP1 PP1 Rif1 Cdc7 P P P P Cdc P P P P P P P P P P P P P c7 Cdc P P P G4 2. Rif1-G4 によるクロマチン構造制御 Rif1 遺伝子間領域に存在する G4 構造に結合し、クロマチ ンを束ねるとともに核膜近傍に複製抑制ドメインを形成する。

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Page 1: グアニン4重鎖構造の生物学的意義の解明 正井 久雄...O N H H M M ¸ 0 V \ ¥ DNA 重鎖 4 グアニン G G G G G G G G G G G Guanine-tetrad AB 転写 不活化プロモーター

1

グアニン4重鎖構造の生物学的意義の解明

正井 久雄

(公財)東京都医学総合研究所 ゲノム医科学研究分野 ゲノム動態プロジェクト

Key words:グアニン4重鎖、ゲノム複製、染色体高次構造、RNA-DNAハイブリッド、複製タイミング

緒 言

グアニン4重鎖構造(以下G4構造と記載)を形成しうる配列は、ヒトゲノム上に37万カ所以上存在すると推定される(図1)。最近の研究から、G4 構造は転写、組換え、転移、エピゲノム制御など染色体の種々の機能に関与することが示唆されると同時に、その異常な形成は、神経変性疾患などの原因ともなること示唆されている[1]。しかし、G4構造の細胞内での存在、動態、プロファイル、そしてその普遍的な生物学的意義の解明は、大部分未解決の研究課題である。 私たちは、ゲノム複製の分子機構の解析から、Rif1という進化的に保存された因

子が、ゲノム複製のタイミングの決定因子であることを発見した[2,3,4]。その後の研究から、Rif1の染色体上結合部位の配列は、G4構造を形成しうる事、更にRif1はG4に特異的に結合することを見出した[5]。その結果、核内に複製開始に抑制的なクロマチンドメインを形成する可能性を提案した(図2)。 最近の高等生物の複製開始部位の網羅的解析から、複製開始領域の近傍にG4形成配列が高い頻度で存在することが明らかになった[6]。そこで、私たちは、大腸菌染色体の通常の複製開始領域 oriCに依存しない、第二の複製開始機構に着目した。この機構はRNaseH のない株で効率よく観察される[7]。私たちはこの複製系は、G4に依存すると想定し、種々の検証実験を行ってきた。特に遺伝的に要求される配列内にG4形成配列が存在すること、またG4に特異的に結合する未知の遺伝子産物を同定した。これらの発見は、ゲノムDNA複製の正及び負の制御において、G4構造が重要な役割を果たすことを示唆する(図3)。 G4 構造は、試験管内ではグアニンの連続配列に依存して 1 本鎖 DNA上に容易に形成されるが、細胞内において2本鎖DNAと競合して、実

際に形成されるのかは、慎重に検証する必要がある。私たちは、種々の方法を用いて、細胞内における G4 の形成を検証し、実際に G4構造が細胞内染色体上に形成されることを示すdataを得た。 本研究では、G4 構造が、ゲノムの収納、維持、継承において果たす役割を解析し、その普遍的な生物学意義を解明することを目標とする。

方法および結果

Part 1 グアニン4重鎖構造とRif1 1.分裂酵母及び、マウスRif1タンパク質とその標的Rif1BS-G4構造との相互作用による核内染色体ドメイン形成の機構 Rif1は複製タイミング制御の他に、二重鎖DNA切断修復、テロメア制御、転写制御に関与する(図3)。

(1) 分裂酵母Rif1(1400アミノ酸)およびその誘導体をFlag抗体カラム、ニッケルカラムなどで精製し、それらのDNA

テロメア

Rif1PPase

P P

複製開始点

脱リン酸化DNA複製

GGG G

GGG

GG

GG

G

N

HN

N R

N

NHN N

R

NN

H N

NR

N

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HH

NO

N

O

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H

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H

O

OM

M

グアニン4重鎖DNA

GGG

GGG

GGGGGG

G

GGGGGGGGGG

G GGG

GGG

GG GGGGGG

Guanine-tetrad

AB

転写不活化プロモーター

プロモーター

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テロメア

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グアニン 4重鎖 DNA

GGG

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G

GGG GGGGGGG

GGGG

GGG

G GGGG GG G

Guanine-tetrad

A B

転写不活化プロモーター

プロモーター

テロメア

Rif1PPase

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複製開始点

脱リン酸化DNA複製

GGG G

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M

グアニン4重鎖DNA

GGG

GGG

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G

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G GGG

GGG

GG GGGGGG

Guanine-tetrad

AB

転写不活化プロモーター

プロモーター

Rif1�

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図 3. 複製の正と負の制御におけるG4構造の関与

G≥3NxG≥3NxG≥3NxG≥3(x=1~7)�

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K+�

K+�

+-‐‑‒ -‐‑‒,    

図 1. グアニン4重鎖(G4)構造

G

GG

G

GG

GG

GGGG G

GG

GGG

G G GG G GG G G G G G

G

GG

G

GGG

G GG GG

GG

GGG GGGGGGGGGGGGG

Rif1

ssDNA

G-quadruplex

Rif1 - G-quadruplex

− 分裂酵母精製 Rif1

PP1PP1 Rif1

Cdc7

P

P

P

P

Cdc

PPPPPPPPPPPPP

c7CdcPP

P

A B

G4

図 2. Rif1-G4によるクロマチン構造制御 Rif1は 遺伝子間領域に存在する G4構造に結合し、クロマチンを束ねるとともに核膜近傍に複製抑制ドメインを形成する。

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2

結合能、多量体形成能を解析した。その結果、

G4 結合ドメイン、多量体化ドメインは C 端の

229aa, 91aaに限定された。C端ドメインはその

サイズから 16mer を形成すると推定される。ま

た、N 端 444aa 内にも、選択性がやや減少して

いるが、G4結合能が存在することがわかった(図

4)。

(2) 全長2418 アミノ酸マウスRif1 タンパク質を精製し、これもG4構造に特異的に結合する事を示

した(図5, 6)。また、種々の部分ポリペプチド

を精製し,N 端 HEAT Domain および C 端の領域

にG4結合能を有することを見出した(図5)[8]。

(3) Rif1 は、パラレルタイプの G4 構造がオリゴマーを形成したDNA 構造に高親和性に結合する(ゲルシフトアッセ イに

よる)。

(4) Rif1は、一度に複数のG4構造DNAに結合することができる(ビオチン化された G4 DNA を用いた pull

down アッセイによる)。これらの結果から、Rif1 タ

ンパク質の多量体形成のモデルを提唱した(図7)。

2 分裂酵母及び動物細胞Rif1結合部位の解析

(1) 分裂酵母Rif1 結合部位、Rif1BS の配列には、G5-6を含むRif1CS(consensus sequence)の他に、多くのG3

を含む。これらの配列もG4形成に貢献する。

(2) Rif1BSを有する二本鎖DNAを熱変性し、G4構造を試験管内で形成させた結果、G-rich 鎖および逆鎖の両

者にある種のヌクレアーゼに感受性になることから、

両鎖が特徴的な高次構造を形成することが明らかとな

った。

(3) 二本鎖DNA上での高次構造の形成は、熱変性、グアニン連続配列、K+の存在

への依存性、7’-deaza dGTPの導入に

よる阻害、などによりG-rich鎖上での

G4 構造形成に依存することが示され

た。また、転写によっても同様な高次

構造が形成される。

(4) Rif1BSは、多くの場合(>90%)非コード領域領域の中に存在し、非コード転

写領域に含まれる。

(5) マウス ES 細胞の Rif1 結合領域をChIP-seq で解析した結果、比較的弱い

Rif1 結合部位がゲノム全域に観察され

た。一方、非常に強い結合部位も同定さ

れ、これらの領域にはG4形成配列が存在

(~1100aa)'mouse Rif1

HEAT repeats2418aa

G4

G4

53BP1 /  

TG M 1 4DL

844 999 2273 2418

X

91aa229aa

1400aaFission yeastRif1

HRB

HRB

444aa

図 4. Rif1タンパク質の構造と機能

図 5. マウスRif1タンパク質の生成 全長2418アミノ酸のマウスRif1タンパク質を293T細胞で発現し、精製した。

Fig. 4.

Fig. 4.

Pull down experiments�

図 6. マウスRif1のG4結合ドメインの同定 (文献 8) マウスRif1タンパク質の種々のドメインを精製し、そのG4結合能をプルダウンアッセイで検討した。その結果、N端1151アミノ酸及びC端299アミノ酸ポリペプチド領域のいずれもが、単独でG4に特異的に結合することが明らかとなった。

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3

し、実際、in vitroでG4を形成する。

3 動物細胞Rif1タンパク質の挙動の解析

(1) Rif1タンパク質の細胞内挙動を解析するために、Rif1タンパク内の巨大 IDP(天然タンパク質領域)を蛍光分子に置き

換えた組換え Rif1 を動物細胞で発現した。Time laps 観察

を行ったところ、この分子はM-G1期以降時に、多数の細胞

内fociを形成した。これらのfociはERに局在していた。

このfociの形成は、C端領域に依存する。

(2) Rif1 の C端に変異あるいは欠失を導入すると、不溶性画分からの遊離し、大部分可溶性画分に回収され

る。この事は不溶性画分への局在に C 末領域が重要

であることを示す。

Part 2 グアニン4重鎖構造と複製開始 1 大腸菌染色体の第二の複製様式

(1) RNaseH欠損株で観察される複製様式は、DnaA-oriCに依存しないが、ある遺伝的背景では ter領域(複製集結領域)を要求する。

(2) 必要とされる領域にはグアニンの連続配列が存在し、さらに未知

の遺伝子が存在した。その遺伝子産物は G4 構造に in

vitroで結合する。

(3) 第二の複製様式は、染色体上の多数の部位から複製が開始する。しかし、ter領域からの開始(BrdUの取り込み)、

ter 領域への PriA, RecA タンパク質(いずれも第二の複製様式に必

須であることがわかっている)の結合が観察された。

(4) 第二の複製は、G4構造の形成を阻害するLiClの存在下では、阻害された(細胞レベル)。

(5) G4 リガンドの添加により、第二の複製への影響が観察される(細胞レベル)。

2 plasmid DNAの第二の複製様式

pBR322 plasmidも染色体と同様に、RNaseHの欠損下で第二の複製を行う。

この系では、転写により形成されるprimer RNAがG4構造を形成する可能

性を検証した。その結果、下記が明らかになった。

(1) 鋳型上に存在するグアニンの連続配列は複製開始に必要である。 (2) in vitroでのDNA複製系において、G4形成を阻害する7’-deaza GTPを用いてprimer RNAの転写を行うと複製が阻害される。

(3) ある種のG4リガンドは 複製を強く阻害する。 (4) G4リガンドの添加により細胞レベルの複製が阻害される。 これらの結果は、複製開始にG4が関与する可能性を支持する(図8)。

Part 3 グアニン4重鎖構造の細胞内での検出と動態解析 (1) G4を検出する1本鎖ポリペプチド抗体(BG4)に蛍光分子を連結し、動物細胞内で発現し、time laps解析した結果、

S-11

Supplementary Figure S8. A speculative model of mouse Rif1 oligomers. Our analyses indicated that muRif1-NTD is present as tetramer and octamer, and muRif1-CTD behaves as dimer and dodecamer, although the dimer seems to be a minor form (Fig. 3). These results suggest that there may be a muRif1 oligomer bearing an NTD tetramer with two CTD dimers (A). A more complex form of muRif1 oligomers could be generated by assembly of three NTD tetramers and a CTD dodecamer (B), or of an NTD octamer plus an NTD tetramer and a CTD dodecamer (C). An NTD octamer may be formed either by intracomplex (B) or intercomplex (D) interactions, suggesting the possible presence of much larger muRif1 oligomers generated by association between NTD tetramers.

図 7. Rif1タンパク質による多量体形成のモデル 緑色及び青色の楕円は、それぞれN端ドメイン(NTD)の4量体及びC端ドメイン(CTD)の 2 量体を示す。ピンクの線は両者をつなぐ長い天然ポリペプチド領域(LIDと記載)。NTD, CTDともにG4に結合するので、DNAはRif1により複雑に折りたたまれる可能性がある。

GGGGxxxGGGxxxGGGxxxGGGGCCCCxxxCCCxxxCCCxxxCCCC

�����

����

���PriA

?

mRNA

RecA

図 8. 大腸菌の第二の染色体複製開始様式のモデル 転写によりDNA-RNA混合G4構造を含む安定なDNA-RNA ハイブリッドが形成され、それに PriAなどの因子が結合して複製が開始する。

��������

��

B SVOU

P GA424L

regulatory, nucleosome-depleted chromatin regions that are, on average, highly transcribed17. This relationship between G4 structure formation and transcription-ally active chromatin was corroborated by the use of a histone deacetylase inhibitor. Furthermore, G4s identified in this study17 also overlap significantly with G4 sequences that were previously identified by ChIP–seq of the transcription helicases xeroderma pigmentosum group B-complementing protein (XPB) and XPD19.

sequences or structures, the data indicate that their biological functions are linked to G4 structures or genomic regions that are enriched in G4 motifs.

The observation of G4 dynamics using G4 antibody-dependent techniques goes some way towards refuting the idea that G4s may be an artefact of antibody stabilization. Nevertheless, it is important to consider alternative approaches to detect G4 structures in chromatin and in cells to further consolidate these findings.

By using protein ChIP–seq, the binding sites of endogenous proteins that can bind to or resolve G4s in vitro — such as the human helicases α-thalassaemia/mental retardation syndrome X-linked (ATRX)20 and XPB–XPD19, and the yeast helicase Pif1 (REF. 21) and telomere protein RAP1-interacting factor 1 (Rif1)22 — have been mapped to regions that contain predicted G4 motifs (FIG. 2 g). Although the proteins that feature in these studies might also be capable of binding to other

Nature Reviews | Molecular Cell Biology

Variable regiona Antibody

b Imaging

Conservedregion

scFv

O

N ON

ON

O

N

S

NON

ON

O

N

H

O

H2N

HN

O

NH

O

N

N

N

O ONH2H2N

c G4 ligands

PDS Telomestatin

Lightchain

Heavychain

G4 G4

Fluorophore

g ChIP–seq of G4-binding proteins

G4-bindingprotein

• PDS• Telomestatin and

depletion of FANCJ• Immortalization

d Visualization of G4s in cells

Nucleus

f G4 ChIP–seqe G4-seq

+K+ or PDS

DNA polymerase

G4

FLAG tag

Figure 2 | Visualization and mapping of G-quadruplex structures. a | Schematic representation of an antibody to illustrate the source of the single chain variable fragment (scFv) that is used to detect G-quadruplexes (G4s). b | Visualization of G4 structures can be achieved using G4‑specific antibodies together with secondary or tertiary antibodies that carry a fluorophore. c | Chemical structure of the selective G4 ligands pyridostatin (PDS) and telomestatin. d | The number of G4 scFv foci (red) detected in the nucleus of human cells is markedly increased by treatment with PDS or telomestatin in combination with depletion of the G4-specific helicase Fanconi anaemia group J protein (FANCJ), or by immortalization of normal human epidermal keratinocytes (NHEKs). e | Schematic representation of the G4-dependent DNA polymerase stalling and next-generation sequenc-ing (G4-seq) method. DNA templates are first sequenced under conditions

in which G4s are not stabilized and are then resequenced after the addition of G4 stabilizing agents such as potassium ions (K+) or PDS. Only DNA tem-plates that contain G4 structures will cause polymerase stalling under G4-stabilizing conditions, which enables the selective detection of G4‑forming genomic sequences. f | Schematic representation of G4-specific chromatin immunoprecipitation followed by sequencing (G4 ChIP–seq), in which G4 structures present in isolated chromatin are enriched by immunoprecipitation with a G4-specific scFv and detected by deep sequencing. g | Schematic representation of ChIP–seq of endogen‑ous G4‑binding proteins, in which isolated chromatin is immunoprecipi-tated with an antibody against a G4‑binding protein of interest and DNA sequences associated with these proteins are identified by deep sequencing.

PROGRESS

NATURE REVIEWS | MOLECULAR CELL BIOLOGY ADVANCE ONLINE PUBLICATION | 3

N :FD P

図 9. 細胞内のG4構造の可視化 G4 を認識するポリペプチド抗体 BG4に蛍光分子を連結し、ヒト細胞内で誘導的に

発現し、細胞内のG4を 可視化した。

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核内にfociが観察された。同様に、G4と関連の深いRNA-DNA hybridに結合するヒトRNaseH1 D145N変異体を発現

するヒト細胞株を樹立し、RNA-DNA hybridの細胞内動態を観察した(図9)。

(2) 1)に用いた検出プローブを用いて大腸菌ゲノム上のG4およびRNA-DNA hybridのプロファイルを解析した。

考 察

G4 構造は、ほとんど全ての生物のゲノム上に普遍的に存在し、転写、組換え、エピゲノム制御、転移など、多くの染色体制御に関与することが明らかになりつつある[9]。私たちは Rif1が複製タイミングの制御に関与すること、大腸菌の第二のゲノム複製開始システムにおいて、G4-RNA/DNA hybrid が重要な役割を果たす可能性を見出した。今回Rif1 タンパク質の詳細な生化学的解析から、Rif1 がどのように複製開始が抑制的なドメインを核膜近傍に形成できるかについてモデルを提唱した。また、大腸菌の複製システムをモデルに、G4構造/RNA-DNA hybridに依存して開始する複製の機構を解析した。これらの研究から、G4構造は、それぞれ特異的な G4結合タンパク質に認識され、種々の染色体動態に関与すると考えられる。 細胞内での G4構造の動態を解析することは、G4の未知の機能、作動機構を解明する上で極めて重要である。私たちはG4およびRNA-DNA hybridに結合するプローブ、あるいは その構造的特徴を認識するプローブにより、これらの構造を検出する方法を開発しつつある。今後、細胞内でのG4形成に必要な因子、条件、さらに生体内での機能との相関を解析し、G4構造の普遍的な生物学的機能を解明したい。

共同研究者・謝辞

東京都医学総合研究所 ゲノム動態プロジェクトの共同研究者の加納豊博士、田中卓博士、森山賢治博士、松本清治博

士、吉沢直子博士、小林駿介さん、覺正直子さん、深津理乃さん、伊藤さゆりさん、関由美香さん、鷺朋子さん、に感

謝します。また研究室の他のメンバーの有益なdiscussionに感謝します。また、G4リガンドを提供してくださった東

京農工大の長澤和夫教授、ゲノム解析で協力してくださった東大定量生物学研究所、白髭克彦教授に感謝いたします。

文 献

1)Hänsel-Hertsch R, Di Antonio M, Balasubramanian S. DNA G-quadruplexes in the human genome: detection, functions and therapeutic potential. Nat Rev Mol Cell Biol. 2017 May;18(5):279-284. Epub 2017 Feb 22. Review. PubMed PMID: 28225080. doi: 10.1038/nrm.2017.3. 2)Hayano M, Kanoh Y, Matsumoto S, Renard-Guillet C, Shirahige K, Masai H. Rif1 is a global regulator of timing of replication origin firing in fission yeast. Genes Dev. 2012 Jan 15;26(2):137-50. PubMed PMID: 22279046; PubMed Central PMCID: PMC3273838. doi: 10.1101/gad.178491.111. 3)Yamazaki S, Hayano M, Masai H. Replication timing regulation of eukaryotic replicons: Rif1 as a global regulator of replication timing. Trends Genet. 2013 Aug;29(8):449-60. Epub 2013 Jun 25. Review. PubMed PMID: 23809990. doi: 10.1016/j.tig.2013.05.001. 4)Yamazaki S, Hayano M, Masai H. Replication timing regulation of eukaryotic replicons: Rif1 as a global regulator of replication timing. Trends Genet. 2013 Aug;29(8):449-60. Epub 2013 Jun 25. Review. PubMed PMID: 23809990. doi: 10.1016/j.tig.2013.05.001. 5)Kanoh Y, Matsumoto S, Fukatsu R, Kakusho N, Kono N, Renard-Guillet C, Masuda K, Iida K, Nagasawa K, Shirahige K, Masai H. Rif1 binds to G quadruplexes and suppresses replication over long distances. Nat Struct Mol Biol. 2015 Nov;22(11):889-97. Epub 2015 Oct 5. PubMed PMID: 26436827. doi: 10.1038/nsmb.3102. 6)Cayrou C, Ballester B, Peiffer I, Fenouil R, Coulombe P, Andrau JC, van Helden J, Méchali M. The chromatin environment shapes DNA replication origin organization and defines origin classes. Genome Res. 2015 Dec;25(12):1873-85. Epub 2015 Nov 11. PubMed PMID: 26560631; PubMed Central PMCID: PMC4665008. doi: 10.1101/gr.192799.115.

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7)Masai H, Asai T, Kubota Y, Arai K, Kogoma T. Escherichia coli PriA protein is essential for inducible and constitutive stable DNA replication. EMBO J. 1994 Nov 15;13(22):5338-45. PubMed PMID: 7525276; PubMed Central PMCID: PMC395490. 8)Moriyama K, Yoshizawa-Sugata N, Masai H. Oligomer formation and G-quadruplex binding by purified murine Rif1 protein, a key organizer of higher-order chromatin architecture. J Biol Chem. 2018 Mar 9;293(10):3607-3624. Epub 2018 Jan 18. PubMed PMID: 29348174; PubMed Central PMCID: PMC5846147. doi:10.1074/jbc.RA117.000446. 9)Moriyama K, Lai MS, Masai H. Interaction of Rif1 Protein with G-Quadruplex in Control of Chromosome Transactions. Adv Exp Med Biol. 2017;1042:287-310. PubMed PMID: 29357064. doi:10.1007/978-981-10-6955-0_14.