モム 員冊 又 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化 ·...

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島根大学地球資源環境学研究報告 22,149~160ページ(2003年12月) Geoscience Rept.Shimane Univ.,22,p.149~160(2003) モム 員冊 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化 入月 俊明*・中村 雄三**・高安 克己***・坂井 三郎**** Faunal changesin Ostracoda(Crustacea)inLakeNaka over the last40years Toshiaki Irizuki*,Yuzo Nakamura**,Katsumi Takayasu***and Saburo S Abstract Sixty-five ostracode species were obtained ffom37su㎡ace sediment samples coll August5to8,2002.The most dominant species is B∫corn況。ソhεrεわ’sαn6ns∫s.This species is a ofthe lake,where oxygen-poor bottom waters develop in summeL Do18ro6塑riα’n磁α∫sh sporadically dominant in relatively low-salinity environments such as river mouth species are rare except at the lake mouth,where high-diversity assemblages compos ostracode species are recognized.To clarify the relationships between ostracode as the last40years,particularly reclamation and freshening projects,we compared p Nakaumi,based on samples collected in l963/1967and l986,with our present result distinguished on the basis of Q-mode cluster analysis.Ostracode assemblages and dramatically between1963/1967and l986,relatedto change inpattem ofbottomwat changed little at from l986to2002,although the areas dominatedby B.わ∫sαn8nsis seem to Key words:Lake Nakaumi,human activity,Ostracoda,faunal change 島根・鳥取両県にまたがる中海は,中国山地を水源とする 斐伊川の河口に位置し,極めて閉鎖的な多塩分汽水湖である (第1,2図).中海では国による干拓・淡水化事業が1963年 から始まり,本格的な工事が1968年より開始され,1972年 には境水道の1麦深,1974年には中浦水門の建設,1981年ま でには中海の北部にあたる本庄工区の堰堤閉鎖,各地の干拓 工事などの大規模な環境改変が繰り返し行われてきた(野村・ 山根,1996;第3図).そのため,工事以前と以後では生物 相に大きな変化が見られ,例えば,高安ほか(1989)は貝類 について,紺田(1988),NomuraandSeto(1992)や野村・山 根(1996)は有孔虫について,鹿島・野口(1988)は珪藻類に ついて研究を行っている. 今回の研究対象である貝形虫類は,淡水から汽水,浅海か 島根大学総合理工学部地球資源環境学科 Department of Geoscience,Faculty of Science and Engineering Shimane University,1060Nishikawatsu,Matsue690-8504,Japan ** @アイテイエス㈱ ITS Co.Ltd.,2-16-20Mejiro,Toshima-ku,Tokyo l71-0031,Japan *** ㍾ェ大学汽水域研究センター Research Center for Coastal Lagoon Environments,Shimane University,1060Nishikawatsu,Matsue690-8504,Japan **** C洋科学技術センター 固体地球統合フロンティア研究システム Institute for Frontier Research on Earth Evolution,Japan Marine Science and Technology Center,2-15Natsushimacho,Yokosuka237- 0061,Japan ら深海までと幅広く生息する微小な甲殻類の仲間である.中 海の貝形虫類に関しては,Ishizaki(1969)の研究が端緒であ る.その後,高安ほか(1990),田中ほか(1998)の研究があ る.Ishizaki(1969)は様々な工事が始まる前の1963年8月 と1967年7-8月に中海全域の47地点から採取した試料を 検討し,そのうちの19地点から貝形虫を報告した.高安ほ か(1990)はほぼ大規模な工事が終了した後の1986年7月17 日から20日に本庄工区を除く中海と境水道を経て美保湾に 至る34地点から採取された表層堆積物(中海・宍道湖自然 史研究会ほか,1987)を用い,そのうち30地点から貝形虫 を報告し,Ishizaki(1969)の研究との比較を行っている.田 中ほか(1998)は1995年10月から1996年8月にかけて,月 1度美保湾から宍道湖に至る一連の水域環境から貝形虫を採 取し,それまで報告の無かった大橋川や宍道湖から中塩分汽 水域の貝形虫群集と環境変化との関連を報告した.しかしな がら,中海に関しては5地点からしか採取を行っていない. そこで,本研究では,淡水化計画による公共事業が行われる 前の1960年代の貝形虫相を代表するIshizaki(1969),本庄 工区の堰堤閉鎖工事が完了した1980年代後半の貝形虫相を 代表する高安ほか(1990)の研究結果と今回の調査結果とを 比較し,過去約40年間に行われた環境改変により中海の貝 形虫群集がどのような変化してきたのかを検討する. 国による中海・宍道湖淡水化事業は,近年の経済状況の変 化や,環境保全意識の向上により,2002年12月に正式に中 止になった.今後,淡水化中止で不用になった中浦水門の撤 149

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  • 島根大学地球資源環境学研究報告 22,149~160ページ(2003年12月)Geoscience Rept.Shimane Univ.,22,p.149~160(2003)

    モム     員冊 又

    中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    入月 俊明*・中村 雄三**・高安 克己***・坂井 三郎****

    Faunal changesin Ostracoda(Crustacea)inLakeNakaumi,southwestJapan,                 over the last40years

    Toshiaki Irizuki*,Yuzo Nakamura**,Katsumi Takayasu***and Saburo Sakai****

                          Abstract Sixty-five ostracode species were obtained ffom37su㎡ace sediment samples collected ffom Lake Nakaumi between

    August5to8,2002.The most dominant species is B∫corn況。ソhεrεわ’sαn6ns∫s.This species is abundant in the central part

    ofthe lake,where oxygen-poor bottom waters develop in summeL Do18ro6塑riα’n磁α∫shi’n8ns6and Cy∫h召r配雌〃媚are

    sporadically dominant in relatively low-salinity environments such as river mouths and the Honjo-koku area.Other

    species are rare except at the lake mouth,where high-diversity assemblages composed of47shallow brackish to marine

    ostracode species are recognized.To clarify the relationships between ostracode assemblages and human activities over

    the last40years,particularly reclamation and freshening projects,we compared published ostracode studies of Lake

    Nakaumi,based on samples collected in l963/1967and l986,with our present results.Six ostracode assemblages are

    distinguished on the basis of Q-mode cluster analysis.Ostracode assemblages and their distribution areas changed

    dramatically between1963/1967and l986,relatedto change inpattem ofbottomwatercirculationJn contrast,they have

    changed little at from l986to2002,although the areas dominatedby B.わ∫sαn8nsis seem to be slightly enlarged.

    Key words:Lake Nakaumi,human activity,Ostracoda,faunal change

    は じ め に

     島根・鳥取両県にまたがる中海は,中国山地を水源とする

    斐伊川の河口に位置し,極めて閉鎖的な多塩分汽水湖である

    (第1,2図).中海では国による干拓・淡水化事業が1963年

    から始まり,本格的な工事が1968年より開始され,1972年

    には境水道の1麦深,1974年には中浦水門の建設,1981年ま

    でには中海の北部にあたる本庄工区の堰堤閉鎖,各地の干拓

    工事などの大規模な環境改変が繰り返し行われてきた(野村・

    山根,1996;第3図).そのため,工事以前と以後では生物

    相に大きな変化が見られ,例えば,高安ほか(1989)は貝類

    について,紺田(1988),NomuraandSeto(1992)や野村・山

    根(1996)は有孔虫について,鹿島・野口(1988)は珪藻類に

    ついて研究を行っている.

     今回の研究対象である貝形虫類は,淡水から汽水,浅海か

    * 島根大学総合理工学部地球資源環境学科

     Department of Geoscience,Faculty of Science and Engineering

      Shimane University,1060Nishikawatsu,Matsue690-8504,Japan** @アイテイエス㈱  ITS Co.Ltd.,2-16-20Mejiro,Toshima-ku,Tokyo l71-0031,Japan

    *** ㍾ェ大学汽水域研究センター

      Research Center for Coastal Lagoon Environments,Shimane

      University,1060Nishikawatsu,Matsue690-8504,Japan**** C洋科学技術センター 固体地球統合フロンティア研究システム

      Institute for Frontier Research on Earth Evolution,Japan Marine

      Science and Technology Center,2-15Natsushimacho,Yokosuka237-

      0061,Japan

    ら深海までと幅広く生息する微小な甲殻類の仲間である.中

    海の貝形虫類に関しては,Ishizaki(1969)の研究が端緒であ

    る.その後,高安ほか(1990),田中ほか(1998)の研究があ

    る.Ishizaki(1969)は様々な工事が始まる前の1963年8月

    と1967年7-8月に中海全域の47地点から採取した試料を

    検討し,そのうちの19地点から貝形虫を報告した.高安ほ

    か(1990)はほぼ大規模な工事が終了した後の1986年7月17

    日から20日に本庄工区を除く中海と境水道を経て美保湾に

    至る34地点から採取された表層堆積物(中海・宍道湖自然

    史研究会ほか,1987)を用い,そのうち30地点から貝形虫

    を報告し,Ishizaki(1969)の研究との比較を行っている.田

    中ほか(1998)は1995年10月から1996年8月にかけて,月

    1度美保湾から宍道湖に至る一連の水域環境から貝形虫を採

    取し,それまで報告の無かった大橋川や宍道湖から中塩分汽

    水域の貝形虫群集と環境変化との関連を報告した.しかしな

    がら,中海に関しては5地点からしか採取を行っていない.

    そこで,本研究では,淡水化計画による公共事業が行われる

    前の1960年代の貝形虫相を代表するIshizaki(1969),本庄

    工区の堰堤閉鎖工事が完了した1980年代後半の貝形虫相を

    代表する高安ほか(1990)の研究結果と今回の調査結果とを

    比較し,過去約40年間に行われた環境改変により中海の貝

    形虫群集がどのような変化してきたのかを検討する.

     国による中海・宍道湖淡水化事業は,近年の経済状況の変

    化や,環境保全意識の向上により,2002年12月に正式に中

    止になった.今後,淡水化中止で不用になった中浦水門の撤

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  • 150 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    133E

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    第1図 調査位置図.下図の黒点は本研究の対象試料の地点を示す.

    1968年以前の中海島根半島

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    第2図 1968年以前および現在の中海の地形および海洋環境.地図中の数字は水深(m)を示す.左図の水深はIshizaki (1969)より.海流の経路は倉門ほか(1998)をもとに作成.

  • 入月 俊明・中村 雄三・高安 克己・坂井 三郎 151

    境水道浚渫

    中浦水門建設

    大海崎堤防

    弓ヶ浜干拓彦名干拓

    日立安来工場干拓

    森山堤防

    馬渡堤防

    中浦水門撤去工事

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            I        Ishセaki(1969)       1967年7-8月採取

    第3図 中海における人為的環境改変の歴史と試料採取時 期.野村・山根(1996)をもとに作成.

    去が2004年秋から予定されており(第3図),干拓堤防の開

    削もあるかもしれない.今回の調査結果はこのような工事が

    行われる直前のものとして,有意なものであろう.

    た底質堆積物のうち,表層1cmを目安に樹脂成薬サジでサ

    ンプリングを行った.このうち,再堆積が毎年繰り返されて

    いると予想される境水道から中浦水門より北側の6地点(N

    66_71)および水門より南側の4地点の砂質堆積物(N34,N

    46,N50,N54)を除く,42地点の泥質堆積物を対象に研究

    を行った.

     採取した底質堆積物は単位重量あたりの個体数を算出する

    ことを目的として,次のような処理を行った.まず,試料約

    509をとり,70℃の定温乾燥器中で3日間乾燥させ,乾燥

    前後の重量を測定し,含水率を求めた(第1表).残りの湿

    試料の重量を測定し,それを250メッシュ(63μm)の飾上

    で水洗し,生体と遺骸の区別を容易にするため,ローズベン

    ガルで染色した.再び水洗し,乾燥させ重量を測定した.こ

    れらから水洗した湿試料の乾燥重量と含泥率を計算で求めた

    (第1表).貝形虫は200メッシュ(75μm)以上の堆積物よ

    り標本数が200個を目安に分割試料から拾い出した.標本数

    の計数は高安ほか(1990)にあわせ,片殻を1,両殻を2と

    し,遺骸殻,生体殻の区別は行っていない.

    地形・水域環境の概要

     中海は島根半島の南部に位置し,平均水深5.4m,面積86.2

    km2である.北部中央には大根島,江島などの島々があり,

    東部は弓ヶ浜砂州の発達によって,日本海と隔てられている.

    西部の宍道湖とは大橋川を経てつながり,一方,日本海とは

    幅約200-400m,長さ約8kmの境水道を経てつながってい

    る.宍道湖・大橋川・中海・境水道は斐伊川水系の河口部に

    あたる(第1,2図).

     Ishizaki(1969)や倉門ほか(1998)によると,境水道より

    流入する日本海からの酸素に富んだ海水は干拓工事が開始さ

    れる前の約35年前までは大根島と江島を反時計回りに巻く

    ように流れ,大根島南東部で貧酸素水塊を形成していた(第

    2図).しかしながら,1968年から1981年にかけて,大根島

    北部の水域を囲む干拓堤防が建設され,本庄干拓予定地はほ

    ぼ閉鎖された.その結果,海水の流れは大きく変化し,1981

    年以降は中海北東部に位置する長さ約400mの中浦水門を

    通って南下するようになった.このように中海には境水道を

    介して,日本海より海水が流入するために,水深約4mに

    顕著な塩分躍層が発達する.中海の湖心部における底層水の

    塩分は30-33psuで,表層水は底層水よりも約10psu低い.

    斐伊川水系が上流より雪解け水を流出する3-4月頃は塩分

    が低下する.水温については表層,底層とも夏季に25-30℃,

    冬季に約6℃となる.溶存酸素は表層水は年間を通して過飽

    和状態に近いが,底層水は8-9月頃に貧酸素となる場所が

    多く存在する(高安,2001編).

    表層堆積物の採取と処理

     表層堆積物は2002年8月5日~8日にかけて,中海と境

    水道の52地点(うち15地点は本庄工区)より,エクマンバー

    ジ式グラブ採泥器により島根大学汽水域研究センター所有の

    小型船舶上から採取した(第1図,第1表).引き上げられ

    測 定 環 境

     本研究では表層堆積物試料の採取時における水質の測定も

    行った.測定項目は水温,塩分,溶存酸素量,pHで水深1

    mごとに計測した.そのうち,表層と底層における各測定

    値を第1表に示す.

    1.水温

     調査日程中は夏季で晴れもしくは曇りで,表層水温は27.78

    ℃から30.60℃の範囲内であった.底層は表層から徐々にさ

    がり,25-26℃前後となる.また,大橋川河口部および米子

    湾奥部から中浦水門に向かうにつれて水温が低くなる.本庄

    工区の地点H1では13.6℃と周囲に比べ低い.これは排水機

    場が近くにあり,水深も11.6mと深いことに関連している.

    2.塩分

     表層の塩分は中海南東部の米子湾周辺(N61,N63,N65)

    で最も低く,14.06~19.43psuとなり,また,本庄工区(H1~

    H15)でも同様に18.59~19.02psuと全体的に低くなってい

    た.一方,江島北方域(N66~N68)では24.21~25.07psu

    と最も高く,境水道を含めたその他の地点では1957~24.21

    psuの範囲内で,22psu前後の値を示した.底層に関しては,

    本庄工区以外では水深4m前後に顕著な塩分躍層が認めら

    れ,深い地点では30-32psuとなった.米子湾周辺や大橋川

    河口部(N1,N2)では水深が2-4m前後のため,21~24psu

    前後であった.本庄工区では水深が5-6mもあるにもかか

    わらず,塩分は19.00~23.07psuと低い.ただし,地点H8

    だけは28.89psuと高い値であった.

    3.溶存酸素量(DO)

     表層に関しては,米子湾の地点N65,本庄工区奥の地点

    H1やH2で5.47-5.81mg/1とやや低い値になっていたが,

  • 152 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    第1表 調査地点における各項目の測定値.

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    2002.8.6

    2002.8.8

    7:02

    7:40

    7:21

    16:51

    8:04

    27.296

    28.385

    27.829

    26.203

    28.378

    10.054

    10.688

    10.695

    10.677

    11.31

    6《4681

     663門~

    81.92

    77.73

    79.73

    78.12

    76.4

    97.39

    96.41

    98.92

    89.36

    96.57

    28.32

    28.64

    28。43

    29.37

    28.63

    25.95

    26.05

    25.71

    28.45

    26.04

    22.24

    22.6

    22.38

    23.32

    22.6

    29.27

    30.65

    30.35

    23.65

    30.8

    6.28

    6.25

    6.29

    7.16

    6.39

    0.36

    2.33

    0.74

    5.76

    2.35

      8

    8.01

      8

    8、04

    8.03

    7.57

    7.77

    7.63

    7.97

    7.76

    3膚ノ80《∠

    へ∠へ∠へ∠33

    NNNNN

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    16:09

    15:09

    15:28

    15:50

    16:28

    27.384

    29.456

    28.904

    27.839

    26.742

    1L332

    1L99412.007

    12.006

    1L992

    31う」ワ’1

    6月~7 6

    78.62

    73.15

    74.67

    78.42

    82.18

    98.71

    92.72

    95.2

    98.73

    97.53

    29.49

    29.82

    29.75

    29.63

    29.64

    25.28

    25.78

    25.6

    25.2

    25.8

    22、83

    22.07

    22.07

    22.42

    23.12

    29.53

    31.15

    30.92

    30.32

    28.68

    6.82

    6.86

    6.93

    6.81

    7.1

    0.l l

    3.09

    2.68

    0.16

    0.15

    8.05

    8.05

    8.07

      8

    8.03

    7.57

    7.73

    7.7

    7.52

    7.55

    4580《∠

    33344

    NNNNN

    2002.8.5

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    13:00

    12:20

    11:05

    10:40

    11:57

    30.586

    30.Ol l

    28.384

    27.285

    28.908

    12.392

    12.651

    12.668

    12.669

    13.312

    14.4

    13.3

    7.4

    6.8

    8.1

    42.1

    66.91

    78.39

    79.26

    68.85

    19.1

    87.02

    99.19

    98.1

    67.17

    28.12

    30.6

      29

    29.05

    29.86

    25.9

    24.95

    25.44

    25.12

    25.41

    21.55

    21.74

    22.26

    23.17

    21.65

    32.11

    31.84

    30.99

    30.03

    3L42

    6.36

    6.43

    6.57

    6.29

    6.67

    5.5

    3.24

    2.77

    0.04

    3.53

    8.03

    8.05

    8.06

      8

    8.1

    7.92

    7.77

    7.78

    7.56

    7.8

    46父UO《∠

    44455

    NNNNN

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    10:20

    11:32

    10:03

    9:42

    9:04

    27.831

    29.919

    27.835

    28.38

    27.299

    13.295

    13.974

    13.985

    14.659

    14.62

    44月~73

    膚~6757

    79.56

    42.38

    77.26

    38.9

    69.66

    98.03

    15.94

    97.28

    13.32

    9L72

    29.08

    30.23

    29.69

    29.33

    29.33

    25.22

    24.95

    25.19

    25.05

    25.22

    22.76

    2L6621.37

    20.87

    21.36

    30.54

    31.04

    30.76

    30.83

    30.4

    6.24

    6.64

    6.61

    6.62

    6.49

    0.84

    L981.56

    2.38

    1.16

    8.05

    8.11

    8.13

    8.13

    8.14

    7.65

    7.7

    7.7

    7.73

    7.7

    46ハソー3

    55“》66

    NNNNN

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    2002.8.6

    9:24

    8:45

    8:22

    8:02

    7:33

    27.852

    26.758

    26.256

    25.732

    25.662

    15.296

    15.276

    16.618

    17.267

    18.593

    月ノ618nソ

     6月ノ34

    34.69

    76.41

    77.74

    69.4

    75.93

    14.67

    96.03

    93.98

    74.12

    70.59

    29.48

    29.43

    29.7

    29.89

    29.3

    24.88

    25.35

    24.91

    28.86

    26.7

    20.53

    2L1519.57

    19.43

    14.06

    30.38

    29.37

    29.37

    2L8323.53

    6、54

    6.66

    6.7

    6.41

    7.36

    LO60.88

    0.08

    4.33

    0.29

    8.15

    8.17

    8,23

    8.22

    8.32

    7.66

    7.68

    7、59

    7.95

    7.55

    5678nソ

    66666

    NNNNN

    2002.8.6

    2002.8.5

    2002.8.5

    2002.8.5

    2002.8.5

    7:10

    13:48

    14:10

    14:36

    14:58

    25.103

    31.244

    31.009

    31.13

    3L393

    19.107

    11.17

    11.365

    11.761

    1L751

    3.1

     13

    5.4

     13

    12.3

    60.22

    63.36

    32.92

    63.53

    6L58

    45.26

    78.55

    4.46

    93.78

    89.82

    30.25

    28.59

    28.56

    28.57

    27.78

    29.53

    25.11

    25.67

    25.46

    25.36

    18.67

    24.78

    25.07

    24.21

    22.l l

    2LO532.3

    31.66

    32.23

    32.3

    5.47

    6.11

    6.17

    6.32

    6.3

      5

    4.74

    5.05

    4.64

    4.8

    8.09

    8.O1

    8.04

    8.07

    8.l l

    8.05

    7.88

    7.91

    7.93

    7.93

    N70N71

    Hl

    H2H3

    2002.8.5

    2002.8.5

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    15:20

    15:45

    7:11

    7:32

    7:49

    3L87832.507

    31.614

    31.888

    3L347

    12.179

    13.195

    10.613

    9.608

    9.681

     10

    9.6

    1L65.2

    5.1

    3L9235.94

    79.94

    72.7

    71.17

    9.31

    16.77

    94.(叫

    90.05

    9L98

    28.82

    28.69

    29.34

    29.29

    29.41

    25.87

      26

    13.64

    28.98

    28.68

    2L922.46

    18.66

    18.59

    18.66

    32.32

    32.33

    23.07

    19.27

    20.78

    6.65

    6.63

    5.59

    5.81

    6.06

    5、73

    6.08

    0.03

    3.35

    1.74

    8.13

    8.14

    7.91

    7.91

    7.95

      8

    8.03

    7.09

    7.67

    7.45

    456月ノ8

    HHHHH

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    8:07

    8:21

    8:39

    8:57

    9:14

    3L2330.882

    30.405

    30.451

    30.813

    10.322

    10.713

    1L17510.401

     9.92

    5.7

    6.1

    5.3

    4.6

     6

    70.95

    73.93

    75.67

    52.39

    76.53

    73.87

    92.17

    95.87

    24.51

    90.34

    29.47

    29.7

    29.76

    29.58

    29.34

    28.94

    28.28

    29.08

    29.1

    28.16

    18.67

    18.67

    18.6

    18.67

    18.73

    20.44

    2L7519.69

      19

    28.89

    6.07

    6.13

    6.13

    6.04

    6.43

    1、19

    1.1

    3.49

    5.03

    0.5

    7.94

    7.95

    7.94

    7.92

    7.97

    7.5

    7.48

    7.7

    7。89

    7.4

     0ーヘ∠3

    Qノーlll

    HHHHH

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    2002.8.7

    9:28

    9:44

    10:00

    10:15

    10:32

    30.451

    30.831

    30.465

    30.06

    29.559

    9.565

    9.122

    8.406

    8.908

    9.477

    46438

    5 

    564

      73

    74.8

    77.4

    75.18

    73.9

    83.55

    98.24

    96.19

    77.56

    77.1

    29.23

    29.34

    29.25

    29.43

    29.93

    28.72

    28.6

    28.96

    28.3

    29.15

    18.73

    18.66

    18.73

    18,87

    18.93

    20.92

    2L69

    2L722.52

    19.62

    6.46

    6.07

    6.41

    6.62

    6.63

    2.21

    1.96

    2.12

    2.58

    2.69

    7.96

    7.92

    7.95

    7.99

    8.O1

    7.56

    7.57

    7.67

    7.67

    7.63

    H14

    H15

    2002.8.7    10:44   29.178

    2002.8.7    10:58   29.531

    9.264

    8.738

    5.8   49.85   23.23

    6.4    77.03   82.31

    29.89    28.23

    29.63   28.36

    19.02

    18.94

    22.03

    22.8

    へ∠∩∠8566

    0.35

    3.39

    8.04

    7.99僧ノ83777

    境水道,中海全域で6-7mg/1の地点がほとんどである.底

    層に関しては,中海中央部で非常に低く,l mg/1以下の地

    点が多く認められ,地点N40では0.04mg/1となる.江島

    北方域や中浦水門付近ではDOの減少は少なく,3-5mg/1

    で,境水道では5mg/1を越える.本庄工区では北部でl mg

    /1前後の低い値を示す場所が多く,大根島周辺部や大橋川

    付近では2-6mg/1前後とやや酸化的な環境になっている.

    4.pH

      表層のpHは中海南東部の弓ヶ浜沿岸域から米子湾にかけ

    て若干高く,8.17~8.32で,また,境水道でも地点70と地

    点71が8.13および8.14とやや高い.一方,本庄工区ではや

    や低く8.00足らずの場所が多い.その他の中海では8.00~

    8.10の場所がほとんどである.底層に関しては,表層から徐々

    に減少し,H lでは7.09と最も低くなっているが,その他で

    は7.5~7.9で,中浦水門付近では8.00前後である.

    2002年における貝形虫群集

      今回検鏡を行った42試料のうち,37試料から65種の貝

    形虫が産出した(第2表).大橋川河口部のN2,南部沿岸域

    のN l9,米子湾最奥部のN65,本庄工区大根島西部のH12

    および大海崎堤防北のH14の5地点からは産出しなかった.

    1.産出貝形虫種

      本調査において圧倒的に多産した種はB∫c・r朋cy∫h8r8

  • 入月 俊明・中村 雄三・高安 克己・坂井 三郎 153

    第2表 産出貝形虫リスト.*は生体が存在することを示す.

    イ㎎沼㏄αρ?sp,

    ・4朋1ρ砂脚加

    ・4贈’ρ而四畑’σ

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    0、742」2     0.B OO.030.51 00.13 0  2.97 00,290.15 0  0.71.26     1.3           L230350、7     0.19 10.520.19 10.23   0.38 10.440.58    0.40、7     026            0.318、65 333 33.2 4.77 38.6 12.6 48、1 17.5 35.4 4.23 7.92 48、7 49,8 2.97 51.9 46,2  2.5 43.7 48.5 8,08 26、3 44,7 4.61  3.8 9.97 15,量 16.8 8.06 14.l l1.2 2.83 }5,1 7,45 52、8 29、4 3、89 16.5  829

    No、of s  imcns!10 s馴m lc    10 12.3 3.61 6.29 2.85 194 13,3 122 67.2 437 477  24  童.2 774  72 9.74 亙20 17.4 4,95 116 20.9 0.22  26 5.26 150 7.28 1,監9 2.48 0.71 13,4 24.7 2.65 169 1.7豊 1.02 12、9 4.26

    わis侃召ns∫s(Okubo)である.この種は日本全国の閉鎖的内湾

    で,水深5~9m,5~7Mdφの泥底で塩分が20~30%・に優

    占する種(池谷・塩崎,1993)で,中海でも最も多くの場所か

    ら産出した.特に,中浦水門から湖心にかけて多産し,独占

    する地点もある.この種よりもやや浅い内湾に生息するとさ

    れている(例えば,池谷・塩崎,1993)5p∫n∫16わ8r∫sg雌4吻。配18伽

    (Brady)やCMh8ro〃30ηワhααc配P配no∫α∫α(Brady)はいくつかの

    地点で確認されたが,個体数は少ない.大橋川の河口部(地

    点N1)では淡水~低塩分性のDo18roc塑riα〃3敵α∫sh枷6ns6

    0kuboやcy∫h6r配rα“3i∫∫(lshizaki)が極めて多い.その他の種

    に関しては地点N35でのみ多くの種,特に,Cy∫h6rθ

    nish∫nψpon’coOkubo,LoxoconchαoP∫∫〃7αIshizakiを始めとす

    る乙oxoconchα属,Pon∫ocy∫hθr6〃1∫麗r8ns∫s(Hanai)を始めとす

    るPon∫ocy∫h8r8属,Trαchy18加r∫s属,X8s∫o18加r’s属などの沿

    岸浅海性種が多産する.堤防閉鎖後初めての調査となる本庄

    工区では,個体数は少ないが,Cαll∫s∫06ッ∫h6r8α1α∫αHamiや

    S.g照4吻。配16億の生体を含む試料が得られた.また,地点

    H1ではC雁i’が圧倒的に多く,地点H9ではB.わisαn8∫s’s

    の遺骸が多く産出した.

    2.群集構造

    (1)種数 中浦水門南の湖口部(地点N35)で最も多く,47

    種に達する.そこから湖心へ向け急速に減じ,地点N34に

    隣接する地点N27や中央部の地点N l6,N30,N38,N44

    などでは1種(B.わ∫sαn8ns∫s)しか産出せず,その他でも10

    種以下である.ただし,大根島南西部の地点N5では例外的

    にやや多く,12種に達する.一方,本庄工区では地点H1

    とH9でやや多く,それぞれ16種と11種であった.その他

    の地点では全て10種以下であった.

    (2)種多様度 種多様度はShannon-Weaver関数によって算

    出した.なお,貝形虫が30個体以上含まれていた地点のみ

    を対象とした.種多様度も種数と同様の傾向を示し,湖口部

    (地点N35)で最も高く,2.87に達する.地点N5でも同様

    にやや高く,2.12という値であった.また,南東部の地点N

  • 154 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    第3表.主な貝形虫種のシノニムリスト.

    Ishizaki(1969) 高安ほか(1990) 本研究

    ∠副1α加i∫          一躍loのノ’n加         一癖1α¢γ〃めα

    Cαll∫s∫・碗hεr徽9・sα   Cα〃∫s∫・αhθrεrμ9・sα   Cα11∫s∫・碗hε7e∫α砂・耀nsls

    Cαll∫s∫・碗hεrec丘.μnぬ1α肋・∫α1∫sCα11’s∫・σ∫hε7εc丘.㍑n4μ1・⑫・∫α1’sCα〃∫s∫・卿hεrε初n4π1α⑫・’α1∫s

    Cαll’s∫・卿hθrεa飾αi・π1伽  Cα〃∫s鱒∫hε7ea任7e伽1伽  Cαll∫s’・碗herθrθ伽1伽

    Cμsh加・n’伽s吻ゆ・n∫・α  P・n∫・碗hεrθs吻ゆ・n∫・α  Pon∫・碗hθrθsp・1

    qγ∫hεre1μ∫θoo醒。∫θn勿on加

    qγ∫hεro吻。ψhαノ¢ρonioα

    Eoh’no碗hεrθ∫sゐ7α御

    地7〃観nπεS∫OSαεns∫S

    Lθ9淵no碗hεrε’sho㎏∫∫

    Cン∫hθrεn∫sh∫n勿on加

    qソ∫hεro規。㌍hααo馴nαα∫o

    P’s∫o碗hθrε∫s伽伽

    Co7nμoo9㍑枷加∫osαθnsis

    B’corn鰐∫hε7εわ∫sαnensis

    qソ∫hθrεn∫sh’n伽on加

    Cン∫hεro〃20ゆhααozψz4no∫o’α

    .P∫s∫o碗hε7ε∫s67α伽

    Cornμoo9躍〃めα∫osαεns∫s

    Bioo7nμ¢ソ∫hεrθわ∫sαnens’s

    Pon1o卯r∫s?sp.A

    助∫n’1εわθr∫s sp.A

    Te∫rαqソ∫he7初rα〃2〃’

    聾αψylθゐεr∫SSOOわroO㍑neα∫α

    乙ケ。¢ソ∫hεre’sη2i∫’

    Cン∫hεr〃rαηπ〃

    万α0妙1eわε7∫5SOαわroOμnεα’0

    飽η2’¢ソ∫hθrθ ?〃2ガ∫

    Polε70のP吻〃2吻’sh’〃2εnse

    ερ∫n∫1εわε7∫S海膨yαεnsis

    Cン∫hθr祝rαη2ii∫

    :7アαohッ1θ加ガssoα加oo㍑nεα∫α+Tish’2αん〃

    勘n嬢hθrε副∫

    56でも1.26という値になったが,その他の地点ではすべて

    LO以下の極めて多様性の低い群集が分布している.本庄工

    区では個体数が少ない試料が多く,判然としないが,地点H

    lおよびH9でそれぞれ,L3,L23という1.0を越える値を

    示した.

    (3)個体数 乾燥重量10g試料あたりに含まれる貝形虫の

    個体数を算出した.結果として,湖口部の地点N35では774

    個体に達する極めて密度の高い群集が存在している.そのす

    ぐ南方にあたる地点N28やN27でもそれぞれ477,437個

    体と多く,ここではB.わ∫Sαn8ns∫Sがほぼ独占した群集となっ

    ている.個体数は湖心から沿岸へ向けて徐々に減少し,南部

    沿岸域や南東部の米子湾周辺では少ない.大橋川河口部の地

    点N lで個体数が多いが,これは,淡水から低塩分性のD.

    配敢α1sh珈6ns8とC〃3∫’iが多数を占めているからである.本

    庄工区では地点H1,H9でそれぞれ150,169個体と多いが,

    その他の地点では25個体未満で,おおよそ数個体程度の地

    点が多い.

    これまでの研究との比較

     干拓事業に関する工事が開始される前の1963年と1967年

    の試料に基づくIshizaki(1969)と工事がほぼ終了した1986

    年の試料に基づく高安ほか(1990)の研究(第3図)と比較す

    るために,これらの論文に示されている貝形虫産出リスト中

    の種名を,最近の分類学的研究成果に基づいて読みかえた.

    第3表は主な種の対照表である.なお,高安ほか(1990)に

    ついては,中浦水門より内側にあたる地点N-01からN-27

    までの試料から産出した貝形虫に限定し比較を行った.

    1.主な種の変化

     第4~7図は主要種の個体数の変遷を示している.個体数

    の算出については,本研究とIshizaki(1969)および高安ほか

    (1990)では方法が異なっている.すなわち,本研究では乾

    燥重量10g試料あたり,Ishizaki(1969)と高安ほか(1990)

    では採取した湿試料25ccあたりの個体数である.さらに

    Ishizaki(1969)では各種の右殻,左殻について多い方の殻数

    を個体数としたが,高安ほか(1990)および本研究では前述

    のように片殻を1,両殻を2としている.このように厳密に

    は各年における個体数の増減に関する議論は行えないが,相

    対的な違いは読みとることが可能である.

     貝形虫種としてBicor朋cy∫h8r召わ’sαn8ns∫sが過去40年間を

    通じて中海で最も多産する種でありつづけたことには変わり

    がない.ただ,その分布の中心が,1963/1967年と1986年

    および2002年とでは大きく変化している.前者では大根島

    北西部より反時計回りに南西部までで,後者では大根島東部

    から南部である(第4図).また,米子湾周辺ではB.わ’sαn8ns∫s

    はもちろん5ρ∫nゴ16わθr’sg照4r’αc配16α∫αなどの他の種も激減し

    ている.本庄工区に関しては,1986年に調査を行っていな

    いので,工事終了直後の群集は明らかではない.今回の調査

    では,地点H9だけ例外的に多くのB.わ加n8ns∫sの遺骸が産

    出したが,他の地点では極めて少ないか,産出していない.

    5P∫n∫181り8r’s9配α4r∫α6麗16α∫αとC』yオhθronlo町ρhααcμP配nc∫α∫αは

    1963/1967年では中海北西部で普通に見られたが,1986年

    および2002年では極めて少なくなっている(第5図).また,

    Cy∫h8ro∫s nαたαno研1’εns∫s Ishizakiのように種名の由来が中海

    にあるCy∫hθroどs属貝形虫も1963/1967年では北西部で見ら

    れたが,1986,2002年では湖口部の地点N35以外では全く

    産出しないか,極めて少ない.これらのCy∫hθro∫s属貝形虫

    を含めたParadoxostomadidae科貝形虫も同様である(第6

    図).やはり閉鎖前には比較的多かったCαll’s∫ooy∫h6rθα1α∫α

    も閉鎖後激減したが,2002年の調査では本庄工区の地点H9

    で生体が確認され,少ないながらも細々と閉鎖された本庄工

    区内で生き延びているようである(第6図).Cy∫h8r況rα〃3∫∫i

    やDo18rocypr∫α1n敵αish∫1n6nsεなどの低塩分性貝形虫は河口

    などの特定の場所に生息している種で,1986年ではそのよ

    うな場所の調査が行われていないが,2002年の結果から判

    断すると,(二〃瑚はそれまで確認されていた弓ヶ浜沿岸部

    からは海水流入経路の変更により姿を消したようであり,逆

    に塩分が低下した本庄工区内では産出するようになった(第

    7図).

  • 入月 俊明・中村 雄三・高安 克己・坂井 三郎 155

                  ●1・・

    鰯讐臨書i熱 翫  響哉・.粥・.・一 麟δ窪い董言論_

           ・●  』識亀 出哩螢湊                                                         相対頻度(%)

                      x   x x ●・    .・鋤.+盤

                                                                                                                               か                                           x          ●    X  x   ・1・10

       2。。2              、、x3、.三鱗謹出                                                                               ロ     +、       10g中の個体数                                                         x

          ・・   ●2・α5・・                      ●x             ●100-200

                  211二ll・   1986              9              !δ二lo           高安ほか(1990)       ●●  ●     +0                           25CC中の個体数               ヌ        + ● ● ● ●●                       ●50α

       x ●●  ●             ●1・㈱・ ギ                          鼠             ●         ●                                    ●50・100                                              1963/1967                じ  ロ                ぴ               十   闘       ×                                    ● 10・50                                              1shセaki(1969)                                    ● 1・10                  ●                                      サ                                                          25cc中の個体数                                    キ  0一一㎞ @    X       x貝形虫無産出    、●・● ●5・か                       干、輸xx・・.葦鮮◇慰

                            一一一一          X      x.●   ・                                                ××  +   ●

                                                  年    ・・

         Bi..rnμσ’hε7εわ’s.nensis          oLユー㎞   9

    第4図 Bicor朋cy∫h8r召わ∫son8nsisの相対頻度(%)(上図)と単位試料あたりの個体数(下図)の変遷.貝形虫の走査型電子

     顕微鏡写真のスケールは0.2mm.

                 相対頻度(%)  撫

    2002本研究     ナ  “●●

          十

     十十

        十    十    十  十  x       十    ●    十

            十

    手 xO   2   4㎞

    一一一一

    2002本研究   十 十十  十

     《x●+  十 x十

        ナ  十x     十

    手 xO   2   4㎞

    一一一一

    十    十

       十

     十

      十 十

    10g中の個体数 ● 10・50 ● 1・10  0-1 + O X貝形虫無産出

    10g中の個体数

     儲二lo + O x貝形虫無産出

     1986高安ほか(1990)

               +    ’     ナ     ナ   . 十   十

    キ xO   2   4㎞

            十

    一一一

     1986高安ほか(1990

    25cc中の個体数     づ 

     !占二P + O X貝形虫無産出

    25cc中の個体数 ● 10-50 ● 1-10  0・1 + O X貝形虫無産出

    勤∫n∫1ε加r∫59襯‘か∫αoπ1εα如

    1963/19671shizaki(1969)          25cc中の個体数

        、●・ ●   ●1・住2・・   x●   轟    ●5か1。o

        .・簿x+騨

               x  X貝形虫無産出

     十十

    Cン孟hεro〃20胆hααo砂初no∫o’o

    x

    ●      ×

       チ

    +       ㎞

    +++㌧

    X十

         ●    x .  ●   × x   十    ●

    年oL一L」㎞

    ×

    x

    x

     十

       ●

         σ     x

    1963/19671shizaki(1969         25cc中の個体数    ●●●・  ●      ●10-50   ×●    睡麟     ●1二lo

        .韓x+支&一出

               x        ×    ●    x    十  X ×   十

    年oL一L」」㎞

    X      x

    ● X

    ザx

    第5図 5p’n’1εわ8r’s g照4r∫αcμ16α∫αとCy∫h8ro配。ワhααo岬朔。∫α孟。の単位試料あたりにおける個体数の変遷.貝形虫の走査型

     電子顕微鏡写真のスケールは0.2mm.

  • 156 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    撫十

    ~韓潅

     十    十

    十     十

    10g中の個体数   エ づ 

     坊二lo + O x貝形虫無産出

        十          十    十  十

         X       十          十       十

            牽

    牛 ×0   2   4㎞

                十

    X

     1986高安ほか(1990)

    碧血

     十

    25cc中の個体数

     ● 10-50  0-1 + O X貝形鬼無産出

     X 十  ■十

     X

    磐oo

    、2本

    x

        十    十    十  十  x       十    ●    十

            十

    手0   2   4km

    一一一

           十    十

    10g中の個体数

     ?IFilo

     +84 X貝形虫無産出

    X

     1986高安ほか(199

    Paradoxostomatidae

    ●      ×

       + +

    +       ㎞

    +++櫨

    25cc中の個体数 ● 10-50  0・1 + O X貝形虫無産出

     x十

     X

    1963/19671shizaki(1969)         25cc中の個体数    +.●. ●    ●10-50   ×●    β     2碍。    .鞠x+支&形虫無産出

              ×  x     ●        x           X    x     ●              十     ナ   × X   十    十    X      X

    年    +x+oL一L』」㎞               ザ

                     X

         Cα〃’s孟。¢ソ孟hεrθα1αホ。

    第6図Paradoxostomatidae科(Pαrα40xos孟。脚,Cy∫hεro’s,Pαrα6y∫h8rois,Sc18rooh∫1配s属)貝形虫とCαll’s∫ocy∫h8r6α1α‘αの単位

     試料あたりにおける個体数の変遷.Paradoxostomatidae科貝形虫の走査型電子顕微鏡写真はCy孟h8ro∫sn磁αno配加8ns∫s.写真

     のスケールは0.2mm.

    1963/19671shizaki(1969          25cc中の個体数    ●●●・ ●   ●1・一5・   x●    撰     旱1’10    .無・×+x貝形虫無産出

              ×     ●       x           X    x     ●              十     十   X X   十    ●    X

    年    +・.一」㎞                ダ

        齷齪. . +

        +   +

      ‘灘++++

    +.++,幅x.+  ㎞

    警、忌

    10g中の個体数

     ●50-100   ゆロ  

     結二iO + O X貝形虫無産出

    + .

    10g中の個体数 ●2・・一5・・

     :占二lo

     + 0 ×貝形虫無産出

    ×

     1986高安ほか(1990)

     十十

    十  十

    が捻

    25cc中の個体数

     +8-1 x貝形虫無産出

     ×十

     X

    x十

    溶岩

     十     十

    十     十

     十    十  十

        十  十     十 十

    ×

     1986高安ほか(1990)

    鼠   一 星井井塾一一i.

      船巌さ.翼   』    三

    +      x

       十

          十

    ++    ㎞

    #手]

    25cc中の個体数

     + O x貝形虫無産出

     X十

     x

    Cン孟hθ7z4roη1’∫i

    五)01εroo塑ガα〃2μ肋’shi〃2εnsε

    1963/19671shizaki(1969+    +    25cc中の個体数

        ナ ナ キ                 づ    x+    謬      ・1-10

        +・懸x・支&形一

              x  ×     十        ×           x    x     十               十     十   × X    ●    十    X

               X

    年    ・xOL一L」㎞                x

    1963/19671shizaki(1969    ナ          ナ    ナ ナ し   x+   6塾    .・蜘×

         十        x    ×     十     十   x ×    ●    十    ×

    隼oL一コ㎞

     25cc中の個体数

       !δ:lo

       + 0   ×貝形虫無産出●

    、十

    X

    XX

    X

    ・ ×

     十

      ×

                                        にド第7図 Cy∫hεr配ro加’iとPolεrooypriα〃3敢α’sh’〃38ns8の単位試料あたりにおける個体数の変遷.貝形虫の走査型電子顕微鏡

     写真のスケールは0.2mm.

  • 入月 俊明・中村 雄三・高安 克己・坂井 三郎 157

    2.貝形虫群集の変化

     Ishizaki(1969)はsimplematching係数に基づくQ-modeク

    ラスター分析により中海の貝形虫の生息場(Biotope)を3つ

    に分類した.高安ほか(1990)では種の組み合わせによる定

    性的な方法により,群集を認定した.前者では貝形虫種の頻

    度を考慮に入れておらず,後者では群集分けが任意になる欠

    点がある.そこで,本研究ではこれらのリストも含めて,30

    個体以上産出したIshizaki(1969)の15試料,高安ほか(1990)

    の13試料,本研究の19試料,合計47試料と,いずれかの

    試料に3個体以上産出する45種の貝形虫を使って,Hom

    (1966)の重複度指数によるQ-modeクラスター分析を行い,

    新たに各年における6つの貝形虫のBiotopeを認定した(A~

    F;第8図).これらのBiotopeはそれぞれ以下のような群集

    を含む(第9図).

    2辮・       ・耳

        蜜・

         o           ●28 ●42       5        15●●21 ●38      ・ ●16 ●30●●48    司1         嘱    ×    ・  e23 ●40  e52

               。      嘱6醸甑

    手         ×0   2   4㎞

    一一一

     BIOTOPENlN56H1312620N42N40N-22N-15N-23

    N28N15N21N-26N-24N・12

    N48N44N38N30N27N16N-13N-11N-0630N52N-21

    N-14

    N23N-05

    H9141318

    15

    19

    N5N35N-2712

    高嬰、鎌,。)

      一㎞猛

    EI

    AIV

    AI

    AII

    AIII

    B

    C

    D

    畿鋸驚   ●13・ eo5     ●23  24∂12e14●2 ●06 ●11     ●15

     X   X

    1963/1967 1shizaki(1969) 14      偽0013□12     x70  β       舞・、ヌ

    × ×

    》㎞』

    eg× e4

    e30 ×

      X

    3

    ×

      X

    ×

    ×

    e21

     ×

    200 X

    0.1   0.2   0.3 0.4   0.5   0.6   0.7   0.8   0.9   1.O

    HORNIS OVERLAP INDEX

    第8図 Q-modeクラスター解析結果.AI~FはBiotope を示す.記号Nの無い番号はIshizaki(1969),N一は 高安ほか(1990),Nは本研究の試料番号を示す.

    X

    X

    圏糊口部砂底群集

    昌糊口部泥底群集

    ●湖心部泥底群集1

    e湖心部泥底群集H

    ○湖心部泥底群集皿

    ○湖心部泥底群集IV

    ▲湖沿岸部泥底群集

    ▽低塩分泥底群集1

    ▽低塩分泥底群集II

    </大橋川河口群集

    。30個体未満試料

    ×無産出

    9

    σ×18

    第9図 中海における貝形虫群集の変遷.数字は各研究における地点番号を示す.

    (1)湖心部泥底群集 Biotope Aに含まれ

    るRわ∫sαn8ns∫sが優占する群集で,中海を

    最も良く特徴づける.Biotope Aは4つの

    sub-biotope(AI~AIV)に細分でき,それ

    ぞれ湖心部泥底群集1~IVを含む.1はほ

    ぼB.わ∫sαn8nsJsが独占する群集(高安ほか,

    1990の1乃’sαn6ns’s群集に相当)で,1963

    /1967年には認められなかったが,1986年,

    2002年では中海では湖心付近で最も広く

    分布する群集となった.IIはB.わ∫s侃εnsis

    の他に&g昭4吻。配18α∫αなどもやや多く伴

    う群集(高安ほか,1990のB.わ∫sαn8nsis.S.

    g照4riαc配1召α餓群集にほぼ相当)で,1963/

    1967年ではこの群集が大根島の南部に集

    中して分布していたが,1986年や2002年

    では湖心に点在している.皿はB.わ∫sαn6ns∫sの他にCα1α∫α,5、g照4riαcμ1εα∫α,

    Cαc塑朔6嬬αを伴う群集からなり,1963/

    1967年には大根島北西部と米子湾に分布

    していたが,1986年では認められず,2002

    年でも本庄工区の1地点(H9)でのみ認め

    られるにすぎない.IVはB.わ’sαn6ns’sの

    他,(二〃1i∫∫を伴う群集からなり,1963/1967

    年の中海南東部(地点20)でのみ認められ

    る.

    (2)湖沿岸部泥底群集BiotopeBに含まれ

    るS.g配α4r∫αc認εα∫αカごB.玩sαn6ns∫sよりも

  • 158 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    多い群集で,1963/1967年には中海南東部(地点19)と大根

    島北西沿岸(地点6)で認められる.2002年では個体数が少な

    いので明確ではないが,地点N61もこの群集を含むと推定

    される.

    (3)湖口部泥底群集 BiotopeCに含まれるB.わ’sαnεnsisの

    他,Pon∫ocy∫h8r8やLox・c・n6加などを多く伴う多様性の高

    い群集(高安ほか,1990のB.わ∫sαn6ns∫s-P.s吻αpon’cα一L.

    op∫枷α群集に相当)である.1963/1967年ではこのような種

    多様度の高い群集は認められなかったが,境水道の1麦深工事

    などに伴い新たに出現した群集であると考えられ,1986年

    と2002年の境水道から中浦水門付近に認められる.

    (4)湖ロ部砂底群集 Biotope Dに含まれるAμr’1αspp.や

    Pon∫ocy孟h6r8spp.などの沿岸砂底種からなる群集で,1963/

    1967年の湖口部(地点12)のみに分布する.今回の調査では

    砂質堆積物は除外したために認められなかった可能性もあ

    る.

    (5)低塩分泥底群集 BiotopeEに含まれるC〃3’∫∫が優占す

    る群集で,付随する種によって1とIIに区分される.1はC.

    ’n’〃がほぼ独占する群集で,1963/1967年では弓ヶ浜の沿岸

    や,南部の河口部に認められたが,2002年では堤防閉鎖前

    には認められなかった本庄工区の北部(排水機場付近;地点

    H1)でも認められるようになった.これは明らかに本庄工

    区の塩分が低くなったことに関連していると推定される.II

    はC配∫’∫の他にB.わ∫sαn8ns∫sを伴う群集で,2002年の中海

    南東部(地点N56)でだけ認められる.

    (6)大橋川河ロ群集 Biotope Fに含まれ,淡水~低塩分性

    種のD.1n漁∫sh∫〃38nsεが優占し,C.〃3∫∫’を伴う群集である.

    2002年の大橋川河口部に認められる.1963/1967年および

    1986年においてはこの群集が生息する地点からの試料採取

    を行っていなかったと推定される.

     他にも個体数が少ないが,5p∫n∫16わ8廊ルr剛α8ns∫sの優占か

    らなる群集が1963/1967年に西部(lshizaki,1969の地点17)

    で認められた.この種も低塩分性種で,2002年でもわずか

    に大橋川河口部の地点N1から2標本得られたにすぎない

    が,ごく浅い潮汐低地に生息するため(lkeyaetal.,1995),1986

    年も今回も生息地での試料採取を行っていなかったと推定さ

    れる.

    3.群集構造の変化

     第10から12図にはそれぞれ種数,種多様度,個体数の変

    化を示す.

    (1)種数 Ishizaki(1969)のリストを再検討した結果,1963/

    1967年における貝形虫は22種であった.高安ほか(1990)

    では41種で,本研究では66種となり,全体的な種数につい

    てみると,明らかに1960年代よりも1986,2002年のほうが

    多くなっている.しかしながら,それは中浦水門付近の試料

    (高安ほか,1990の地点N-27と本研究の地点N35)に限っ

    てのことで,それ以外の試料では決して増加してはいない.

    また,米子湾では明らかに減少している.

    (2)種多様度 1963/1967年では境水道からの海水の流入経

    路に沿って,湖口部で最も高く,徐々に減少し,米子湾でも

    1.0前後の値を示すのに対し,1986,2002年では本庄工区を

    除くと,中浦水門付近と,大根島南から南西部で局所的にや

    や高くなっているだけで,海水経路に沿って徐々に減少して

    いくようなことはなく,中海湖心で急激に多様度は低くなっ

    ている.

    (3)個体数 個体数に関しては,前述のようにIshizaki(1969)

    や高安ほか(1990)と算出方法が異なり,直接的な比較を行

    えないが,やはり,流入経路の変更により,1963/1967年と

    1986,2002年とでは多産する場所が異なっている.また,米

    子湾においては貝形虫が激減している.

    考 察

     以上のように各種の分布,群集組成や群集構造に関して

    1963/1967年と1986年の間では劇的な変化が起きている.こ

    のことはすでに高安ほか(1990)や田中ほか(1998)でも指摘

    されているように,本庄工区の締め切り堤防と中浦水門の建

    設により,境水道からの海水の流入経路が変更した結果,貝

    形虫の分布地域もそれに伴って変化し,また,中海水域が全

    体的に閉鎖的になったため,単純な組成の貝形虫群集に変化

    した.このような変化は有孔虫類でも同様に認められている

    (Nomuraand Seto,1992).さらに,境水道と中浦水門付近の

    浚渫により,中浦水門周辺に限っては日本海からの海水流入

    量の増加によってLoxoconc加属やX8s∫olの8r∫s属をはじめと

    する多様性の高い海生種が生息できる環境が広がったが,一

    方で,それまでよりも深くなった中海内部では夏場に発生す

    る貧酸素化した高塩分水塊が底層に停滞するようになった

    (高安,2001編).今回DOが1mg/1以下のこのような調査

    地点から採取された試料中にも湖心中央部泥底群集を代表す

    るB’cor朋oy∫h6r6わ∫sαn6ns’sの軟体部がそろった保存の良い

    標本が抽出された.軟体部が残存している個体は採集日に生

    存していたのかそれとも夏場に貧酸素水塊が発達したため

    に,それまで生息していたが,死んで間もない個体なのかは

    定かではない.しかしながら,いずれにせよ他の種が全くい

    ないこのような場所で多産することから,貧酸素水塊に極め

    て耐性を持った種であると推定される.流路の変更は1963/

    1967年には貝形虫がほとんどいなかった大根島南東部に貝

    形虫が住める海域を拡大させたが,そこはほぼB.わ∫sαn8ns’s

    しか住めないような環境になったことになる.このB.

    わ’sαn8nsガsが独占する海域が2002年では1986年よりも若干

    増えたことはさらに貧酸素水塊の発達により,他種が住めな

    くなっていったことを示唆しているが,基本的には1986年

    以降貝形虫にとって中海はあまり変化しない閉鎖的な環境が

    続いていると判断される.米子湾も工事直後に減少した貝形

    虫類がここ15年あまりで増加することは無かったようであ

    る.本庄工区に関しては若干の種(Cαll’s∫ocy∫h6r召α1α∫α,

    勘∫nilの8rlsg雌4r’αo配18α∫α)の生体が確認され,閉鎖後も細々

    と生存できる環境ではあったようであるが,本庄工区は中海

    中央部との出入り口が狭く,約4mと浅いため,境水道か

    ら湖心を経て流入した高塩分水が浸入せず,塩分の低い表層

    水のみが本庄水域の水塊と交換していること(高安,2001編)

  • 入月 俊明・中村 雄三・高安 克己・坂井 三郎 159

    観瞥

    ●×

    と.●噌^

    逸る●

      一㎞㌧

         糞.、

    .  醗i

    ●      ●

      ● ●

    ●      ●      ●      ●   ■

    X

    ●姻9●3“39

    ●2か29

    ●10-19

    ●6.9● 2-5・ 1

    × 0

    ×

    観瞥

    《  ●   ・騰 ×   ・鐡琿

    ×

      , ㎞慧

    ×

    十    十

     十

              繍

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    第10図 中海における貝形虫の種数の変遷. 第11図 中海における貝形虫の種多様度の変遷.

    により,塩分が底層でも一部を除き20psu程度である.こ

    の塩分が低いことにより,多くの内湾性貝形虫種が生息でき

    ないか,あるいは繁栄できないと推定される.逆に低塩分泥

    底群集を代表するcy∫hεr配m〃1’iiが1963/1967年にはいな

    かった本庄工区で認められるようになった.

    ま と め

    1.2002年8月5日から8日に本庄工区を含む中海全域から

     採取され,検鏡した42地点の試料のうち,37地点から66

     種の貝形虫が得られた.

    2.過去の貝形虫に関する研究(lshizaki,1969および高安ほか,

     1990)のデータもあわせて過去40年間に存在した貝形虫

     のBiotopeはQ-modeクラスター分析により大きく6つに

     区分され,それぞれ特徴的な貝形虫群集を含む.

    3.本庄工区の堰堤閉鎖前と後では,日本海の高塩分水の流入

     経路の変更に応じて貝形虫の主たる生息場所が大きく変

     わった.すなわち,閉鎖前は中海の北部から西部に分布の

     中心があり,中海南部の米子周辺でも貝形虫は多く生息し

     ていたが,閉鎖後は中浦水門周辺と中央部に分布の中心が

     移動し,北部の本庄工区や米子周辺では貝形虫が激減した.

    4.閉鎖前は捌corn鷹ッ∫hεrεわ∫sαnεnsisの他にも,Cαll’s∫ocッ‘h8r8

     α1α∫α,Trochy18加r∫s属5ρ’n∫1εわ8r∫sg照4r’αc配18α館,Cy∫h8ro’s

     属なども比較的多かったが,閉鎖後はこれらが激減し,外

     洋からの海水流入の直接の影響を受ける中海中央部の泥底

     は,ほとんど貧酸素水塊に対しても強い種であるB.

     わisαn6ns∫Sしか適応できない環境に変化した.一方,中浦

     水門付近は閉鎖前よりも種多様性が高くなった.これは,

  • 160 中海における過去約40年間の貝形虫(甲殻類)の群集変化

    観瞥

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    第12図 中海における単位試料あたりの貝形虫個体数の変遷.

     日本海からの海水の影響が以前よりも増したことを意味す

     る.

    5.1986年~2002年までの16年間では貝形虫の種構成,群集

     構造については大きな変化は認められないが,2002年の

     ほうがB.わ∫s侃6ns∫sが独占する地域が増え,また生息域も

     南部へ広げているようである.

    謝 辞

     島根大学汽水域研究センターの瀬戸浩二助教授には中海の

    水質環境などに関して議論していただいた.ここに記して感

    謝の意を表します.

    引 用 文 献

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    (受付:2003年10月10日,受理:2003年11月25日)