イチゴ重要病害診断のための病原 菌検出用pcr...徳島大学総合科学部...
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徳島大学 総合科学部 社会創生学科
准教授 佐藤征弥
イチゴ重要病害診断のための病原菌検出用PCR
ウイルス
糸状菌
細菌
イチゴの病原菌とその診断方法
従来の診断方法
•病徴
•病原菌の同定 分離・培養↓
時間(手間)と熟練が必要
イチゴの病原菌
など
迅速化・簡便化が望まれる
イチゴ炭疽病
・全国の被害額年間35億円
・徳島県における被害は2005年におよそ5億円
炭疽病の被害を受けた圃場
病気が発生したら早めに対策しないと壊滅的な被害を受ける
対象とした糸状菌と病徴
炭疽病を引き起こすもの
Glomerella cingulata
Colletotrichum acutatum(葉枯れ炭疽病)
疫病を引き起こすもの
Phytophthora nicotianae
Phytophthora cactorum
萎黄病を引き起こすもの
Fusarium oxysporum
葉枯れ炭疽病
疫病萎黄病
炭疽病
本圃の土壌消毒
本圃の土壌消毒
本圃育苗圃
育苗苗取り(子苗)
ランナー(匍匐茎)
親株 本圃定植
6月上旬 9月末
育苗圃の土壌消毒
育苗圃の土壌消毒 農薬農薬
・挿し芽前の苗をベンレートに浸ける
・育苗期にセイビアー、アントラコール、ゲッター、デラン等の散布
・挿し芽前の苗をベンレートに浸ける
・育苗期にランマンを潅注
農薬農薬
・定植前にベンレートに浸ける
・定植後にベンレートを潅注
・定植後にセイビアー、ゲッターの散布
・窒素を抑える
・風通しをよくする
・水やりをソフトに
その他その他
予防として有効
予防として有効
予防として有効
予防として有効
予防として有効
予防として有効
イチゴ栽培の流れイチゴ栽培の流れ
病気の防除法病気の防除法
病気により対策が異なり、早期診断・早期対策が被害の拡大防止に繋がる
・本葉2-3枚展開時
に苗を切り離す
排水対策
その他その他
排水対策
炭疽病炭疽病
・水やりをソフトに
収穫
5月
疫病疫病
病気による被害を受けた圃場
萎黄病萎黄病
病 気生理障害
原因:水不足、肥料不足、etc 原因:各種病原菌
親株から採苗した子苗に伝染。子苗間で広がるため発病株の除去と同時に、育苗中の農薬散布が必要。
親株から採苗した子苗に伝染。子苗間で広がるため発病株の除去と同時に、育苗中の農薬散布が必要。
親株から採苗した子苗に伝染。子苗間では広がらないため発病株の除去が重要。
親株から採苗した子苗に伝染。子苗間では広がらないため発病株の除去が重要。
子苗には伝染しない。発病株の除去が重要。
子苗には伝染しない。発病株の除去が重要。
萎黄病 疫病 その他
苗の萎凋
原因の究明
病原菌の特定
対策対策 対策
被害額が大きく、症状が似ている3種の病気
遺伝子診断による迅速化&簡便化
栽培農家にとって最も重要なポイント
健全な苗を本圃に定植
対策が遅れると
・本圃に定植する苗の不足
・本圃に病気の蔓延
・圃場の土壌汚染
・収穫量減少
・土壌消毒にかかるコスト増
・保菌株を次の親株として使 う危険性
農家の減収
安全な苗供給により減収を防ぐ
炭疽病
病気の早期診断の重要性
5.8SITS I5´ 3´26SITS II18S
5.8SITS I5´
3´ITS II18S
FoxyF6
CacuR1
FGC-RF.oxysporum
C.acutatum
Gcin1 FGC-RG.cingulata
Cacu1-1
PcacR1Pcac1P.cactorum
PnicF2 PnicR1P.nicotianae
新技術の原理
病原菌5種のrRNA領域の構造と設計したプライマーの位置
Phytophthora属の2種は他の3種と比べてITS II領域が長いため、別に図示した
26S
200 bp
300 bp
400 bp
1K bp
500 bp
マーカー P.
nic
otia
nae
P. c
acto
rum
G. c
ingu
lata
F. o
xysp
orum
C. a
cuta
tum
MIX
761 bp
660 bp
453 bp
382 bp
304 bp
P. nicotianae
G. cingulata
C. acutatum
F. oxysporum
P. cactorum600 bp
700 bp
800 bp900 bp
5種の病原菌を一度に診断
専用プライマーのみでPCR 菌とプライマーをMIXさせてマルチプライマーPCR
イチゴ栽培農家から持ち込まれた病気イチゴ苗への応用
実施例1
苗番号
産地名マルチプライマーPCR法 分離法
F. oxysporum G. cingulata F. oxysporum G. cingulata1 東みよし市 ー + +2 ー ー +3 ー + +4 ー ー x5 吉野川市川島町 + ー +6 ー + +7 ー + 雑菌
8 阿南市那賀川町 ± + 1/8 7/8
9 + + 1/8 6/8
10 ー + 8/8
11 ± + 1/8 7/8
12 + + 1/8 7/8
13 ー + 8/8
14 阿波市土成町 + ー 6/8
15 + ー 4/8
16 + ー 6/8
17 ー ー x18 吉野川市鴨島町 ー ー
19 ー ー
20 三好市 ー + 8/8
21 + ー 6/8
22 + ー 6/8
23 + ー 8/8
24 + ー 8/8
25 徳島市応神町 + ー 8/8
26 + ー 5/8
27 + ー 8/8
28 ± ± 1/8
苗番号
産地名マルチプライマーPCR法 分離法
F. oxysporum G. cingulata F. oxysporum G. cingulata1 東みよし市 ー + +2 ー ー +3 ー + +4 ー ー x
5 吉野川市川島町 + ー +
6 ー + +7 ー + 雑菌
8 阿南市那賀川町 ± + 1/8 7/8
9 + + 1/8 6/8
10 ー + 8/8
11 ± + 1/8 7/8
12 + + 1/8 7/8
13 ー + 8/8
14 阿波市土成町 + ー 6/8
15 + ー 4/8
16 + ー 6/8
17 ー ー x18 吉野川市鴨島町 ー ー
19 ー ー
20 三好市 ー + 8/8
21 + ー 6/8
22 + ー 6/8
23 + ー 8/8
24 + ー 8/8
25 徳島市応神町 + ー 8/8
26 + ー 5/8
27 + ー 8/8
28 ± ± 1/8
マルチプライマーPCR法は従来法と遜色ない検出感度を示した
土壌試料への応用
実施例2
組織 土
組織 土
組織 土
組織 土
組織 土
組織 土
S氏1 S氏2 S氏3 S氏4 S氏5N氏1
農家持ち込み病気苗とその土壌のマルチプライマーPCR
・土壌からも病原菌が検出された。
・土壌においても余計なバンドが出ていない。
萎黄病菌F. oxysporum
組織で検出されて土壌で検出されない・検出感度・感染ルートが土壌由来ではない
組織 土
1 ー F.oxysporum
2 ー F.oxysporum
3 ー F.oxysporum
4 ー F.oxysporum
5 ー F.oxysporum
組織 土
1 ー F.oxysporum
2 ー ー
3 F.oxysporum F.oxysporum
4 F.oxysporum F.oxysporum
5 ー ー
6 ー F.oxysporum
2008年8月21日 2008年10月29日
イチゴ栽培農家Sさん依頼の分析結果
土にいた病原菌が感染した可能性があり、病気の予見・予防に繋がる。
従来技術との比較
従来技術 新技術
病気のイチゴ苗から病原菌を分離・培養し、コロニーの形状や菌の形態から種を同定
病原菌特異的プライマーを用いたマルチプライマーPCR法と電気泳動法により、菌のDNAを検出
方法
新技術のメリット
想定される用途および業界
想定される市場規模
我が国の炭疽病によるイチゴの被害額は35億円、防除に要する
薬剤費は5億円と推定されている(奈良農総研)
想定されるユーザー
・イチゴ栽培農家・JA・種苗会社
イチゴの病気診断サービス
内容
本技術に関する知的財産権
発明の名称: イチゴ重要病害の病原菌検出方法および検出用プライマー
出願番号: 2008-214831
出願人: 徳島大学、徳島県
発明者: 佐藤征弥(徳島大学)、広田恵介(徳島県農林水産技術総合支援センター)、向井真紀子(徳島大学)
お問い合わせ先
徳島大学 知的財産本部
産学連携研究企画部 牧野正
〒770-8506 徳島市南常三島町2−1
TEL: 088-656-9774
FAX: 088-656-7593
E-Mail: [email protected]