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広島大学における学士課程教 育改革の成果と課題ー教養教 育改革を中心にー 広島大学理事・副学長(教育担当) 上 真一

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広島大学における学士課程教育改革の成果と課題ー教養教

育改革を中心にー

広島大学理事・副学長(教育担当)

上 真一

広島大学の理念5原則 1)平和を希求する精神、2)新たなる知の創造、3)豊かな人間性を培う教育、4)地域社会、国際社会との共存、5)絶えざる自己変革

学長のアクションプラン(2008年) 教養教育の充実:想像力豊かで、学問に裏打ちされた問題解決能力を持つ人材を養成するため、知識習得方法の学習能力が身に付く教育を行うことにより教養教育の更なる充実を図るとともに、被爆地広島に根ざす大学の特性に鑑み「平和に関する教育」を明確に位置付ける。

広島大学長期ビジョン(2009年) 教養教育の充実:自ら学ぶ態度を培い、想像力豊かで、学問に裏打ちされた問題解決能力を備えた人材を養成すると同時に、異分野の知を理解でき、多様な考え方を許容できる、高いコミュニケーション能力を有した人材を養成する。このため、学士課程及び大学院課程を通じた教養教育を充実する。

運営会議

学務委員会 外国語教育企画会議

教育研究評議会

教養教育委員会 学士課程会議

教育室

総合科学部 外国語教育研究センター

連携

広島大学における従来の教養教育体制

問題点

1)委員会組織では権限がない:制度疲労?

2)総合科学研究科の設立(2006年):教養教育の弱体化?

3)総合科学部所属教員の他研究科への配属:教員補充の問題

4)教養教育に対する学生と教員の認識のずれ

教養教育は

全学体制 で実施

研究科等(※1) H18分担の方針 H22年度実績

総合科学研究科

1153

1045

1156

1038 外国語教育研究センター 102 114

情報メディア教育研究センター 6 4

文学研究科 20 20 教育学研究科 26 23 社会科学研究科 52 48 理学研究科 56 52 先端物質科学研究科 2 5 保健学研究科 0 0 工学研究科(院) 49 43 生物圏科学研究科 41 41 医歯薬学総合研究科 5 5 国際協力研究科 25 28 法務研究科 4 4 原爆放射線医科学研究所 1 1 病院 0 1 放射光科学研究センター 0 0

自然科学研究支援開発センター 0 0

環境安全センター 0 0 宇宙科学センター 0 0 留学生センター 5 2 保健管理センター 4 1 (教育室)キャリアセンター 6 8 産学・地域連携センター 3 文書館 2

(教育室)アクセシビリティセンター 5

合 計 (※4) 1449 1448

教養教育の分担コマ数一覧

約8割

約2割

教養教育改革の方向性 (教育室 平成21年9月15日)

• 教養教育責任体制の必要性

• 広大リテラシーに照らした“カリキュラムデザイン”を検討し,「広大教養教育スタンダード」構築の方向性を提示する

• 到達目標型教育プログラム(HiPROSPECTS®)における整合性・一貫性に十分配慮した教養教育の到達目標を明確にする

• 授業改善に向けた取組,質の保証のためのシステムを構築する

教養教育本部の設置(平成22年4月)

本部長 理事・副学長(教育担当)

評価・改善部門

各部局

カリキュラム部門

スポーツ科学センター

情報メディア教育研究セン ター

外国語教育研究センター

教養教育会議 DO

ACTION CHECK

PLAN

部門長: 総合科学部長

専任教員

(協力教員)

副本部長 ・評価・改善部門長 ・カリキュラム部門長

教養ゼミ WG

平和科目 WG

パッケージ 別科目WG

総合科目 WG

企画調整会議

教養教育改革の骨子 (平成22年7月20日 教育研究評議会承認)

1. 科目区分の見直し

2. 教養教育科目の明確化と授業科目の改善

3. 履修基準の改訂

4. 高学年次の教養教育

5. 到達目標の設定

6. 学生へのガイダンスの改善

7. 系としてのデータベースの改善

など

• 卒業要件となる教養教育単位数がわずか31単位のプログラムが存在する

• 理系学生はより多くの理系科目を履修:文系科目離れ

• 文系学生はより多くの文系科目を履修:理系科目離れ

• 英語力は弱い:TOEICの点数上がらない

履修基準の改訂 教養教育本部と各部局との協議を実施

教養教育の履修の現状を調査

教養教育の科目区分 履修区分 要修得単位数

教養コア科目

教養ゼミ 必修 2

平和科目 選択必修 2

パッケージ別科目 選択必修 6

総合科目 選択必修 2

共通科目

外国語科目

英語 必修,選択必修 8(注1)

初修外国語 選択必修,自由選択 4

情報科目 必修,選択必修 2(注2)

領域科目 選択必修 注3

健康スポーツ科目 選択必修 2

基盤科目 必修,選択必修 注4

合 計 注5

注1:英語の8単位化が可能な学部から実施し,8単位化が困難な学部については 継続して協議する。 注2:原則として必修又は選択必修 2単位 注3:専門分野以外の分野から履修するように記載する。 注4:基盤科目の上限単位数を20単位とする。 注5:現在40単位を下回っている場合は,できる限り40単位を超えるよう努める。

履修基準の改訂

【教育目標】

自主的な学習によって支えられている大学教育へのオリエンテーション機能を果たすため,入学後の早い段階で,知的活動への動機づけを高め,論理的・批判的な思考法と適切な自己表現能力を育てることを目標とする.また,大学での学習の入り口として,教員および学生相互のコミュニケーションをはかり,学習集団の形成に役立てる.

教養ゼミ (10〜20名の学生を対象とした初修ゼミ)

教養ゼミの改善 -PBLへの期待 -

昭和大学におけるファッシリテータの研修会

• 問題発見能力の育成

• 情報収集スキルの修得

• 自己主導型学習

• 対人関係・協調性の修得

PBLで期待される学習成果

平和科目の新設 平和科目の設立目的

広島大学の理念5原則に「平和を希求する精神」が掲げられているように,学生には平和に対する意識の涵養が求められている。

平和については,戦争の悲惨さを直視し,核廃絶を含む軍縮を展望する視点を育む必要性があることはいうまでもない。しかし,それ以外にも「貧困」,「飢餓」,「人口増加」,「環境」,「教育」,「文化」など多様な観点から広く平和を捉え直していくことも必要である。

このような観点から「平和を考える」場を提供するために授業科目群として提示する。

平和科目の授業計画作成及び 成績評価に関するガイドライン

1.平和科目の設置目的に基づき,各教員は専門とす

る学問分野や視点から教養教育として授業を実施し,

学生に平和を考える機会を提供することを基本方針

とする。

2.平和に関するモニュメントを見学し,これに関するレ

ポートを提出させる。提出されたレポートは,成績評

価の一部に組み込むものとする。なお,当該レポート

を提出しない者には,原則として単位を与えない。

授業科目名 所属 主担当教員 曜日・時限

広島と平和 国際協力研究科 小池 聖一 月1-2

平和を考える 文学研究科 中山 富廣 月1-2

平和と人間A 広島大学マスターズ 金田 晋 月1-2

平和と人権-グローバル化とジェンダー視点

キャリアセンター 森 玲子 月1-2

原爆体験と表象/文学 教育学研究科 川口 隆行 月1-2

グローバル・パート ナーシップ学 国際協力研究科 山下 隆男 月1-2

ヒロシマ学 総合科学研究科 布川 弘 月1-2

戦争と平和に関する総合的考察 総合科学研究科 吉村 慎太郎 月1-2

環境と平和 生物圏科学研究科 中坪 孝之 月1-2

広島と平和 国際協力研究科 小池 聖一 月9-10

ヒロシマ発平和学 平和科学研究センター 川野 徳幸 月9-10

世界大戦の時代 総合科学研究科 安野 正明 月9-10

平和とは何か 総合科学研究科 町田 宗鳳 月9-10

医学からみた戦争と平和(調整中) 原医研 神谷 研二 月9-10

国際関係論 社会科学研究科 永山 博之 水9-10

平和科目の授業(東広島キャンパス 前期)

合計:15科目

英語教育充実の必要性 グローバル化した現代社会で求められる英語力

しかし向上しない学生の英語能力

TOEICスコアの経年変動

1セメ コ_IA コ_IB コ_基礎I

2セメ コ_IIA コ_IIB コ_基礎II

3セメ コ_IIIA コ_IIIB コ_IIIC

4セメ コ_IIIA コ_IIIB コ_IIIC

開設科目

コ_:コミュニケーション

・英語習得単位数の変更:6単位から8単位へ ・英語特任教員(5名)の採用 ・オンライン教材を利用した学習科目(WBT:

TOEICテスト600点相当の語彙や文法の理解を含む)の導入

WBT

WBT

パッケージ別科目の教育目標 複数の授業を有機的に関連付けながら知識の持つ真の意味や広がりを実感し,人類や社会が抱える歴史的・現代的な課題を理解することを目標としている.

パッケージ別科目の仕組み パッケージ別科目では,現代の課題に関係する5つの「テーマ」が設けられており、その下に,学問的に異なる視点を持った複数の授業科目が「パッケージ」されている.一つのテーマを複数の視点から考えることで,「多角的なものの見方」が身につく.

パッケージ別科目の再編

パッケージの数を従来の9から5に再編し,1パッケージにおける授業の多様性を高める.

1.社会のしくみと科学

3.生命・人間への接近

4.文化の交流と多様性

5.環境・自然との共生

2.知の営みを問い直す

5つのパッケージ

各パッケージから6単位選択必修

・教育と制度 ・市民生活における規範のゆらぎ

・生活から見た日本の近代 ・ヨーロッパ近代と市民社会

・アジアの社会史 ・社会のなかの科学 ・自動車産業と日本経済 ・生活をとりまく家族・地域・産業 ・核時代の科学と社会 ・地域の分析

・環境と化学

P1:社会のしくみと科学 (授業科目名一覧)

・産業と技術 ・市民生活と物理 ・心と社会

健康スポーツ科目の構成と必修化

○講義科目 健康スポーツ ○実習科目 スポーツ実習A スポーツ実習B

選択必修2単位

教養教育の到達目標の設定 (科目区分ごとに)

学士課程教育における主専攻プログラムと教養教育の整合性・一貫性への取り組み

主専攻プログラムの詳述書(実施計画書)には、到達目標、科目の配置、到達度評価の方法などを既に明記している。

主専攻プログラムとの整合性・一貫性を配慮した教養教育の到達目標を明確にする。

科目小区分(新) 目標(新) 到達目標(新)

教養ゼミ

自主的な学習によって支えられる大学教育のオリエンテーション機能を果たすため,入学後の早い段階で知的活動への動機付けを高め,科学的な思考法と適切な自己表現能力を身に付けることを目標とする。

1.基礎的な方法で資料を収集できる。 2.特定の事象から課題を発見し,説明できる。 3.論拠を明らかにした議論や効果的なプレゼンテーションを行うことができる。

平和科目

平和について,「戦争」,「国際紛争」,「軍事」,「核開発」,「貧困」,「飢餓」,「人口増加」,「環境」,「教育」,「文化」など様々な観点から考え,平和に対する理解を深めることを目標とする。

1.多角的な視点から平和について考え,自分の意見を述べることができる。 2.理念と現実の葛藤を含め,平和を妨げる種々の要因とそこでの複雑な様相について理解し,説明できる。

パッケージ別科目

複数の授業を有機的に関連付けながら知識の持つ真の意味や広がりを実感し,人類や社会が抱える歴史的・現代的な課題を理解することを目標とする。

人類や社会が抱える歴史的・現代的課題(社会のしくみと科学の在り方,知の営みの意味,いのちの重み,多様な文化間の交流や対立,自然と共生する意義など)について,多角的な視点から説明できる。

総合科目

現代的かつ学際的・総合的なトピックス,又は研究の最前線や社会問題のトピックスをテーマとして,広い視野から全体像を把握するための総合的な知見や判断力を獲得することを目標とする。

特定の学際的・総合的なトピックス又は研究の最前線や社会問題のトピックスについて,複数の視点から説明できる。

教養教育の目標と到達目標(1)

教養教育の目標と到達目標(2)

外国語科目

グローバル化時代に対応するため,様々な外国語で情報を受信し,発信できるコミュニケーション能力の養成及び知識・技能の習得を目的とするとともに,異なる言語や文化に対する理解を深めることを目標とする。

1.外国語を活用して,口頭や文書で日常的なコミュニケーションを図ることができる。 2.複数の外国語を活用することで,多くの言語や文化を理解できる。

情報科目

問題解決に必要な情報処理を適切に行うための基礎知識や技術の習得,及びネットワーク上のモラルや情報化社会における問題点に関する基礎知識の習得を目標とする。

1.情報を活用するためのモラルと社会的課題について理解し,説明できる。 2.情報に関する基礎的知識・技術・態度を学び,情報の処理や受発信を適切に行うことができる。

領域科目

人間が蓄積してきた知識がどのようにして生まれ,育ってきたのか,その根本の考え方は何であるのかについて,文化的・社会的な視点等を踏まえながら,多様な学問領域の科目を通じて学ぶことを目標とする。

1.各学問領域について,その形成過程・発展過程を説明できる。 2.各学問領域が文化・社会とどのように関わっているのかについて,説明できる。

健康スポーツ科目

体力・健康づくりのための科学的理論を習得するとともに,自己の特性やスポーツの技能水準に適合したスポーツの実践を通じて,生涯にわたってスポーツを楽しむ態度・マナーや協調性などの社会的スキルを習得することを目標とする。

1.体力・健康づくりの必要性を科学的に説明できる。 2.スポーツの実践を通じて,生涯にわたってスポーツを楽しむ意義や,マナー・協調性などの重要性を理解し,説明できる。

基盤科目

専門教育との有機的関連性を持つ前専門教育として,それぞれの専門分野を学ぶために必要な基礎的知識の学習により,基礎学問の論理的骨格や体系及び学問形成に必要な知識・技術を習得することを目標とする。

各科目に応じた基礎学問の論理的骨格や体系及び学問形成に必要な知識・技術を理解・習得し,説明できる。

教養教育の改善は継続的に行われます

ご清聴ありがとうございました

来年度、主専攻プログラム体系図の作成