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37 東京モーターショーから見えた 車の“未来” EV 昨年11月23日~12月1日の日程で、東京モーターショー2013が東京ビックサイトにおいて開催された。 世界12ヶ国から181ブランドが参加し、総来場者数は約90万人と前回(約84万人、2011年)を上回った。 「若者の車離れ」が言われ、来場者も1991年の約201万人をピークに減少傾向となっているが、実際訪れ てみると会場は熱気に包まれており、若者含めて車に対する熱意が感じられた。また、今回感じたことは、 電気自動車(以下EV)や燃料電池自動車(以下FCV)など次世代自動車がもはや遠い存在ではない ことである。前回はまだ「夢」段階であったものが、今回は「現実」として目に見えるようになった。そこで、 東京モーターショーで展示された次世代自動車(EV、FCV)を紹介することで、車の“未来”をお伝えしたい。 今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグ インハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動 車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐこ とができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が 高いと考えられるため、以 下では主に純 粋なEVを取り 上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人 の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りが あることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。 (1)メーカー A.トヨタ自動車 トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメイン であったが、EVでは超小型モビリティ (注1) 「i -ROAD」の 展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪 という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」とい う疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾け るアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がるこ とができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha: mo(ハーモ)」の実証実験 (注2) が、コムス(後述)を利用し て行われているが、今年初頭にはこの「i -ROAD」も利用 筆者撮影(以下全写真筆者撮影) トヨタ自動車「i -ROAD」 日産自動車「BladeGlider」

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東京モーターショーから見えた車の“未来”

  EV

昨年11月23日~12月1日の日程で、東京モーターショー2013が東京ビックサイトにおいて開催された。世界12ヶ国から181ブランドが参加し、総来場者数は約90万人と前回(約84万人、2011年)を上回った。「若者の車離れ」が言われ、来場者も1991年の約201万人をピークに減少傾向となっているが、実際訪れてみると会場は熱気に包まれており、若者含めて車に対する熱意が感じられた。また、今回感じたことは、電気自動車(以下EV)や燃料電池自動車(以下FCV)など次世代自動車がもはや遠い存在ではないことである。前回はまだ「夢」段階であったものが、今回は「現実」として目に見えるようになった。そこで、東京モーターショーで展示された次世代自動車(EV、FCV)を紹介することで、車の“未来”をお伝えしたい。

今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

ホンダ「MC-β」日産自動車「NISSAN New Mobility CONCEPT」

日産自動車「e-NV200」

筆者撮影(以下全写真筆者撮影)

トヨタ自動車「i-ROAD」 日産自動車「BladeGlider」

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東京モーターショーから見えた車の“未来”

  EV

昨年11月23日~12月1日の日程で、東京モーターショー2013が東京ビックサイトにおいて開催された。世界12ヶ国から181ブランドが参加し、総来場者数は約90万人と前回(約84万人、2011年)を上回った。「若者の車離れ」が言われ、来場者も1991年の約201万人をピークに減少傾向となっているが、実際訪れてみると会場は熱気に包まれており、若者含めて車に対する熱意が感じられた。また、今回感じたことは、電気自動車(以下EV)や燃料電池自動車(以下FCV)など次世代自動車がもはや遠い存在ではないことである。前回はまだ「夢」段階であったものが、今回は「現実」として目に見えるようになった。そこで、東京モーターショーで展示された次世代自動車(EV、FCV)を紹介することで、車の“未来”をお伝えしたい。

今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

ホンダ「MC-β」日産自動車「NISSAN New Mobility CONCEPT」

日産自動車「e-NV200」

筆者撮影(以下全写真筆者撮影)

トヨタ自動車「i-ROAD」 日産自動車「BladeGlider」

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今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

smart fortwo BRABUS electric driveVW「e-Golf」

VW「e-up!」

テスラ「Model S」

BMW「i3」

コラム 自動運転

自動運転と言うと、雑誌等で目にする機会は増えた

ものの、まだまだ遠い話と思うかもしれない。しかし、例

えば海外ではグーグルが2009年から自社内で自動運

転の開発を進め、2012年からは公道で自動運転の

実験を開始、走行距離は60万km以上におよぶ。また、

国内では日産が高速道路での自動運転の実証実験

をスタートさせており、自動運転の法整備が前提条件

ではあるものの、2020年までに発売するとしている。

今回の東京モーターショーでは、ビックサイト屋上展示

場において自動運転デモンストレーションが行われ、

試乗する機会を得た。

筆者が試乗したのは、東京にあるロボット技術を

ベースに自動運転等を研究・開発しているZMPの

「RoboCar® HV」である。コースは屋上展示場を一周

するもので、途中で人を認識、回避するというデモン

ストレーションであった。期待半分不安半分で後部座

席に乗り込み、運転席に座っている方のスイッチオン

で自動運転がスタートした。アクセルを踏んでないの

に止まることなく進み、ハンドルに触れてないのにカー

ブを曲がっていく。人を認識、緊急回避も違和感なく

スムーズにこなし無事終了となった。

今回の試乗で自動運転の完成度が想像より高い

ことに驚いた。もちろん、今回は閉鎖された決められた

ルートの走行であり、街中のような様々な自動車等が

混在している状況での自動運転のハードルは相当高

い。しかし、技術面だけで考えると、完全自動運転まで

いかなくとも、ドライバーをサポートするような半自動運

転の実用化はそれほど遠くないのではないかと感じた。

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今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

smart fortwo BRABUS electric driveVW「e-Golf」

VW「e-up!」

テスラ「Model S」

BMW「i3」

コラム 自動運転

自動運転と言うと、雑誌等で目にする機会は増えた

ものの、まだまだ遠い話と思うかもしれない。しかし、例

えば海外ではグーグルが2009年から自社内で自動運

転の開発を進め、2012年からは公道で自動運転の

実験を開始、走行距離は60万km以上におよぶ。また、

国内では日産が高速道路での自動運転の実証実験

をスタートさせており、自動運転の法整備が前提条件

ではあるものの、2020年までに発売するとしている。

今回の東京モーターショーでは、ビックサイト屋上展示

場において自動運転デモンストレーションが行われ、

試乗する機会を得た。

筆者が試乗したのは、東京にあるロボット技術を

ベースに自動運転等を研究・開発しているZMPの

「RoboCar® HV」である。コースは屋上展示場を一周

するもので、途中で人を認識、回避するというデモン

ストレーションであった。期待半分不安半分で後部座

席に乗り込み、運転席に座っている方のスイッチオン

で自動運転がスタートした。アクセルを踏んでないの

に止まることなく進み、ハンドルに触れてないのにカー

ブを曲がっていく。人を認識、緊急回避も違和感なく

スムーズにこなし無事終了となった。

今回の試乗で自動運転の完成度が想像より高い

ことに驚いた。もちろん、今回は閉鎖された決められた

ルートの走行であり、街中のような様々な自動車等が

混在している状況での自動運転のハードルは相当高

い。しかし、技術面だけで考えると、完全自動運転まで

いかなくとも、ドライバーをサポートするような半自動運

転の実用化はそれほど遠くないのではないかと感じた。

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今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

DURAX「D-face」

トヨタ車体「コムス」(右)とトヨタ自動車「i-ROAD」(左)

コボット「KOBOT θ」

テラモーターズの電動3輪車

プロッツァ「Pecolo」 トヨタ「FCV CONCEPT」

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今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

DURAX「D-face」

トヨタ車体「コムス」(右)とトヨタ自動車「i-ROAD」(左)

コボット「KOBOT θ」

テラモーターズの電動3輪車

プロッツァ「Pecolo」 トヨタ「FCV CONCEPT」

Page 7: f Þ » ³ã T Qh w ° R¡ - okb-kri.jp · 37 38 f Þ » ³ã T _Qh w ° R¡ y + b å D Ô D Ôw Ô p f z Þ » ³ã U f Ï¿«±Ä tSMo 5^ h{H òT ÒåÅïU C`

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(注1)国土交通省の定義では、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1~2人乗り程度の車両のこと。

(注2)トヨタ自動車が2012年10月より豊田市で実証運用している都市交通システム。「Ha:mo」は、クルマなどと公共交通の最適な組み合わせによって、人にも街にも社会にも優しい移動の実現を目指す交通サポートシステムの総称。道路状況や公共交通機関の運行状況に応じてCO2排出量と利便性の双方に配慮し最適な移動手段の情報提供を行う「マルチモーダルルート案内」、並びに都市内の近距離移動ニーズに対応する小型EVシェアリングサービス「Ha:mo RIDE」を提供している。

(注3)直線上で停止状態からスタートし、ゴールまでの時間を競う競技。距離は1/4マイル(約400m)で行われることが多い。

(注4)日産リーフは、搭載しているリチウムイオン電池容量が24kWhで、最高出力は80kW、最大トルクは254N・m、最大航続距離は228kmである。

(注5)EVの価格はカタログ価格。クリーンエネルギー自動車等導入対策費補助対象車両であれば、購入の際には補助金が交付される。現在は、25年度の補助金が期間延長となった。なお、補助金について詳細は一般社団法人次世代自動車振興センターHPを参照(http://www.cev-pc.or.jp/index.html)。

(注6)いわゆる三輪バイクで、多くが前一輪、後二輪である。ここの「鋼-HAGANE-」は前二輪、後一輪で「逆トライク」とも呼ばれる。

(2014.2.26)共立総合研究所 調査部 河村 宏明

  FCV(燃料電池自動車)

  まとめ

今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

ダイハツ「FC 凸 DECK」

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(注1)国土交通省の定義では、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1~2人乗り程度の車両のこと。

(注2)トヨタ自動車が2012年10月より豊田市で実証運用している都市交通システム。「Ha:mo」は、クルマなどと公共交通の最適な組み合わせによって、人にも街にも社会にも優しい移動の実現を目指す交通サポートシステムの総称。道路状況や公共交通機関の運行状況に応じてCO2排出量と利便性の双方に配慮し最適な移動手段の情報提供を行う「マルチモーダルルート案内」、並びに都市内の近距離移動ニーズに対応する小型EVシェアリングサービス「Ha:mo RIDE」を提供している。

(注3)直線上で停止状態からスタートし、ゴールまでの時間を競う競技。距離は1/4マイル(約400m)で行われることが多い。

(注4)日産リーフは、搭載しているリチウムイオン電池容量が24kWhで、最高出力は80kW、最大トルクは254N・m、最大航続距離は228kmである。

(注5)EVの価格はカタログ価格。クリーンエネルギー自動車等導入対策費補助対象車両であれば、購入の際には補助金が交付される。現在は、25年度の補助金が期間延長となった。なお、補助金について詳細は一般社団法人次世代自動車振興センターHPを参照(http://www.cev-pc.or.jp/index.html)。

(注6)いわゆる三輪バイクで、多くが前一輪、後二輪である。ここの「鋼-HAGANE-」は前二輪、後一輪で「逆トライク」とも呼ばれる。

(2014.2.26)共立総合研究所 調査部 河村 宏明

  FCV(燃料電池自動車)

  まとめ

今回のモーターショーでは多くのメーカーでPHV(プラグインハイブリッド車)が展示されていた。PHVも次世代自動車の主力として今後普及をしていくだろうが、電源に繋ぐことができるHV(ハイブリッド車)ということで既に認知度が高いと考えられるため、以下では主に純粋なEVを取り上げる。なお、会場は一通り巡ったものの、会場の広さと人の多さにより見逃しているものもあること、ページ数に限りがあることから全てを紹介できないことをご了承願いたい。

(1)メーカーA.トヨタ自動車

トヨタ自動車は、EVよりもPHV、HVおよびFCVがメインであったが、EVでは超小型モビリティ(注1)「i-ROAD」の展示があった。このモビリティは2人乗りで、前2輪、後1輪という独特の形である。見た目「きちんと曲がるのか?」という疑問が浮かぶが、曲がる時はバイクのように車体を傾けるアクティブリーンという機構が作動し、安定して曲がることができる。現在、豊田市において都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」の実証実験(注2)が、コムス(後述)を利用して行われているが、今年初頭にはこの「i-ROAD」も利用

1台目はコンセプトカー「BladeGlider」。運転席を中央に置いた3シーターのEVで、上から見ると先端が狭い三角形となっており、ドラッグレース(注3)車両のような形。いかにも空力が良さそうで、運動性能も高そうだ。EVはガソリン車とは「走りが違う」と言われるが、まさにそれを実感できそうな車である。2台目は「e-NV200」。これは現在販売されている「NV200バネット」のEV版である。主に商用車での使用だろうが、商用車は1日当たりの走行距離やルートがほぼ決まっているためEV向きと言われており、e-NV200には期待できそうだ。今年度中に発売される予定である。最後は超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」。前後2人乗りの超小型モビリティで、街中でのちょっとした移動にもってこいだ。現在、横浜市でこの車を利用したワンウェイ型カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」という取組みが、今年11月までの予定で行われている。このような車が普及してくると、移動だけでなく街そのものも変わっていくだろう。

C.ホンダ

ホンダブースでは、「NSX CONCEPT」、「Honda S660 Concept」といったスポーツカーに注目が集まっていた。EVでは、ブース内ではないものの、超小型モビリティ「MC-β」の

できるようになる予定である。なお、トヨタ自動車は、「直感で通じ合えるクルマ」をコンセプトとした「FV2」を出展していたが、見物客が多くて見ることができなかった。

B.日産自動車

三菱自動車「i-MiEV」(2009年発売開始)に続き、2010年に「リーフ」を発売した日産自動車。リーフそのものは直近の月販平均が1,000台程度とやや低調であるものの、EVの「先駆者」としてリーフ以外に3台展示があった。

体験走行が行われていた。これも、先の日産自動車のものと同じく2人乗りの超小型モビリティである。現在、熊本県、さいたま市、宮古島市(沖縄県)の各自治体と共同で社会実証実験が行われている。

D.VW

トヨタ自動車と自動車世界販売台数トップを争うVWは、「e-up!」と「e-Golf」を出展した。これは、一昨年より発売された小型自動車「up!」と世界的な人気車「Golf」のEV

版である。「e-up!」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が18.7kWhで、最高出力は60kW、最大トルクは210N・m、最大航続距離は160kmである(注4)。「e-Golf」は、搭載しているリチウムイオン電池容量が24.2kWhで、最高出力は85kW、最大トルクは270N・m、最大航続距離は190kmである。「e-up!」は昨年欧州で発売開始となり、価格は26,900ユーロ(約370万円)、今年日本でも発売開始となる予定である。「e-Golf」は今年欧州で、日本では今年末~来年にかけて発売開始となる予定である。

E.スマート(ダイムラーAG)

スマートは、高級車部門にメルセデス・ベンツを持つダイムラーAGの子会社である。スマートは、2012年に「smart fortwo electric drive」の発売を開始したが、東京モーターショーでは、チューニングメーカーであるブラバスが開発した「smart fortwo BRABUS electric drive」を公開した。リチウムイオン電池容量は17.6kWhで、最高出力は60kW(ノーマル55kW)、最大トルクは135N・m(同130N・m)、最大航続距離は169km(同181km)である。精悍な外見は、走りの気持ちよさを物語っており、EVの「チューニング」も今後続 と々出てきそうだ。価格は399万円(ノーマル295万円)(注5)で、全国限定80台の販売となる。

ンで発電用エンジンを搭載すると546万円となる。EV市場が期待したほど盛り上がっていない中、VW、BMWといった海外勢の参入により、ようやくEV市場が活気付きそうだ。

F.BMW

BMWは、今年4月に発売される「i3」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は18.8kWhで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m、最大航続距離は160kmである。この車の特徴は軽いこと。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ボディとアルミニウム合金製のシャーシを組み合わせた「LifeDrive」構造により、車両重量は1,260kgと日産自動車のリーフ(1,430kg)より軽く、走りは相当期待できそうだ。購入申込み受付は既に始まっており、価格は499万円で、オプショ

G.テスラ

2008年に最初の生産車両「Roadstar」を発売したテスラは、アメリカのEVベンチャー企業である。同時期には少なくないPHVを含めたベンチャー企業が設立されたものの、メーカーとして今なお存在感があるのはテスラくらいである。そのテスラは、今春にも日本導入予定の5ドアハッチバックセダン「Model S」を出展した。搭載しているリチウムイオン電池容量は60kWhと85kWhの2仕様で、アメリカでの価格は69,900ドル、79,900ドル(約720、820万円)

である。最大航続距離は370~480kmとガソリンエンジン車並み、最高出力は225~310kW、最大トルクは430~600N・m、0-97km/h加速は4.2~5.9秒、最高速度は193~210km/hと性能はスポーツカー並みである。テスラ車は、アメリカのセレブの間で大人気だそうだが、この人目を引くデザイン、高い走行性能で、日本でも人気となりそうだ。

(2)メーカー以外でのEV出展EVはガソリンエンジン車のような垂直・摺り合わせ産業ではなく、パソコンのような水平・組立て型産業である。そのため、商品となる「車」を製造できるかは別として、企業規模、業種問わず参入しやすい市場である。今回のモーターショーでは、超小型モビリティではあるが、いくつかの中堅・中小企業から出展があったので紹介する。いずれも既存の車にこだわらない斬新なモビリティである。

A.トヨタ車体

2012年7月に発売開始したコムスは1人乗りの超小型モビリティである。セブンイレブンが宅配用として採用したため、街中で見かけた方もいるかもしれない。現在、一般向けの「P・COM」、業務用の「B・COM」が販売されているが、東京モーターショーでは前後2人乗りモデル「T・CO

M」を初公開した。車は、日常1人で乗る事が多いと思われるが、1人乗りはやはり制約が大きく市場は小さいと考えられる。2人乗りであれば利用の制約が少なく、購入層が広がることが予想される。現在、コムスは前述の豊田市での実証実験「Ha:mo(ハーモ)」で使用されているため、ご興味があれば一度利用してみてはいかがだろうか。

B.DURAX LLP(有限責任事業組合)

DURAX LLPは、D Art(関市)、Design&Realizations

(西宮市)、U‘eyes Design Inc.(横浜市)の3社が立ち上げたものである。ちなみに、D Artは前2輪、後1輪のトライクバイク(注6)「鋼-HAGANE-」を製造、販売していることでご存知の方もみえるかもしれない。そのDURAXは、超小型モビリティ「D-Face」を出展した。このモビリティの特徴は車両前部が開閉し、そこから乗り込むことである。このことによって、乗り降りの身体負荷が少なく、雨の日の乗り降りも快適だ。また、中の計器はタブレットPCであり、車の未来を先取りした感じだ。EVと発電機搭載のものを検討中で、2014年モニター販売、2015年に量産開始予定である。筆者は超小型モビリティ含め数多くのEVを見てきたが、このモビリティは非常にユニークで早く街中を走り回る姿を見てみたいと思った。

C.プロッツァ、テラモーターズ

プロッツァは一宮市にある会社で、2013年にカー用品業者であるプロスタッフのEV事業が独立したものである。テラモーターズは電動バイク製造等を手掛ける東京の会社である。新興国では、自動車の普及とともに排気ガス等による大気汚染等が問題となっており、タクシーの電動化などが進められているが、この2社の電動3輪車はこれに対応したもので、それぞれフィリピンで導入されている、または導入予

定である。法規制等で日本での販売は難しいと思われるが、日本でも観光地等をこの電動3輪車で巡ってみたいものだ。

D.コボット

コボットは、名古屋市の医薬事業等を手掛ける興和と宗像市(福岡県)のロボット開発・製造・販売を手掛けるテムザックが合弁で2011年に設立した「興和テムザック」が2012年に社名変更した会社である。前回の2011年東京モーターショーでも出展していたが、今回は最新モデルを出展した。コボットは、自動車メーカー以外の企業が製作した組立車として全国初で九州運輸局から超小型モビリティ認定を受けたものであり、現在、宗像市と糸島市(福岡県)において実証実験が進められている。日常使用ではこのような超小型モビリティで充分であり、今後このような超小型モビリティが普及すれば、交通システムそのものも大幅に変わっていくだろう。

性能を考えると、ガソリンエンジン車の代替となる次世代自動車はFCVであろう。また、FCVはEVと違い従来の摺り合わせ型であり、高度な技術を必要とするため、日本

の優位性を保つことができる。今回のモーターショーでは市販レベルのFCVが登場し、普及へ向けて第一歩が記された。ただし、FCVはインフラ等を「ゼロ」から造らなければならないという大きな課題がある。

(1)トヨタ自動車今回のトヨタ自動車の目玉はFCV「FCV CONCEPT」

である。トヨタは、2008年に特定ユーザー向けに「FCHV-adv」を発売しているが、これはそれを進化させたものである。搭載している燃料電池は、小型・軽量化が図られながらも出力を向上させており、実用航続距離は500km以上、水素充填時間は約3分とガソリンエンジン車並みの性能である。すぐにでも市販可能なレベルであると感じたが、市販は2015年予定。価格は未定であるが、トヨタはプリウス発売時に思い切った価格設定をした過去があり、今回も同じ戦略を取る可能性もある。次世代車に関しては、FCVは次世代車の本命と言われながら、EVに比べると「遅れている」感じを受けていた。しかし、「FCV CONCEPT」によりようやく市販の道が見え、普及へ向けてスタートを切ったと言える。

(2)ダイハツダイハツは、コンセプトカー「FC 凸 DECK」を出展した。

これは、独自技術の貴金属フリー液体燃料電池を搭載した軽規格のFCVである。FCVが高額なのは、燃料電池に触媒として白金を使用していること、水素タンクに炭素繊維強化プラスチック等を使用していること等が要因であるが、ダイハツの燃料電池は貴金属フリーかつ燃料が液体ということで低コスト化が可能だ。また、燃料タンクを使用できるため、コンパクト化も可能である。FCVは、燃料電池や水素タンクなど大きな構成部品が必要であるため、採用されるのは中型車以上と思っていたが、このシステムなら軽規格でも充分である。近い将来、軽FCVが発売されれば、次世代車を巡る競争が一段と激化しそうだ。なお、ダイハツではこの技術を利用した発電機も出展しており、車だけでなく様々な分野へ拡がっていくことが期待できる。

冒頭にも記したが、2年前の前回と比べると次世代自動車はもはや夢ではなく現実ということを感じるモーターショーであった。訪れた人の数と熱気はこれから車に起こる変化への期待を表しているのではないだろうか。今回はEVとFCVのみ取り上げたが、展示車はもはや

HV、PHVは当たり前で、車の「電動化」が急速に進んでいること、車単体ではなくインフラ等様々なものに繋がる新しい社会の到来を感じた。ただし、車の電動化が進むということは、既存の自動車産業の有り方も変わるということだ。その変化に対応するための時間的な猶予は、もはや残り少ないのではないかと強く思ったモーターショーであった。

ダイハツ「FC 凸 DECK」