品質にこだわり「桃太郎」を愛する産地ja新すなが...
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「CF桃太郎ファイト」
と現在の課題
JA新すながわの砂川トマト生産組
合は、発足当時から「おいしいトマト」
を出荷することを追求されてきました。
単に糖度にこだわるだけでなく、適当
な酸味があり、北海道の土壌で作る味
の濃いうまみを重視しての栽培です。
「桃太郎ファイト」の導入は平成13年。
「桃太郎8」で問題となっていたメガネ
果が発生しやすい肥沃な土壌にも適応
し、4月中旬から定植となる当地の夏
秋トマト作型に導入され、砂川地方特
有の主力品種となりました。やがて葉
かび病対策の中で「CF桃太郎ファイト」
へ順次切り替わっていきました。
現在砂川トマト生産組合長を務める
小島和博さんは、「CF桃太郎ファイト」
が当地にマッチした理由について、「食
味のよさ」「肥大のよさ」をあげています。
しかし、低段の肥大のよさと裏腹に中
期以降は、玉が小さくなるので管理技
術が必要だと話していただきました。
↑出荷ケースに記された「桃太郎」の文字と砂川の位置を示す出荷箱。堂々とした自信と歴史を感じさせる。
↑稲作地帯としても有名。
品質にこだわり「桃太郎」を愛する産地JA新すながわ
~「Cシ
ー
Fエフ
桃もも
太た
郎ろう
ファイト」~
30年目の「桃太郎」 JA新すながわ管内は、北海道のほぼ中央に位置し、砂川市、奈井江町の両行政区にまたがる地域です。大陸性気候で夏は高温多雨。石狩川東側に広がる肥
ひ
沃よく
な大地を持ち、米どころでも知られタマネギ、メロン、果樹、酪農と多岐にわたって農業が盛んです。 また、当地は道内でも古くからのトマト産地です。露地栽培から始まったトマト栽培は、マルチトンネル、施設ハウス栽培と変化してきました。品種もそれに合わせ「福寿二号」「ひかり」「米寿」「ときめき」と移り変わってきました。 JA新すながわの砂川トマト生産組合の発足は、昭和61年(1986年)にさかのぼります。「桃太郎」トマト導入が図られたのを機に、生産者5戸、栽培面積1.3haでスタートとなりました。その後「桃太郎8」「桃太郎ヨーク」「桃太郎ファイト」と主力品種を変えながら、現在は「CF桃太郎ファイト」を中心に、出荷ケースに「桃太郎」を明記して出荷を続ける歴史ある「桃太郎」産地でもあります。初代「桃太郎」の発売が昭和60年ですから当地の「桃太郎」栽培の歴史も30周年に当たっています。
(編集部)
農業列島産地ルポ
北海道 空知管内JA新すながわ
トマト
青森県
JA新すながわJA新すながわ砂川市・・奈井江町
北海道北海道
↑おいしいトマトへのこだわりは生産組合の命でもある。
地域概況
2017 タキイ最前線 春種特集号 23
↑主力品種の「CF桃太郎ファイト」。近年の温暖化で定植後5月に上に伸びて根がしっかり張らず、低段が肥大して栄養がとられ上が細くなってしまう傾向が出ている。
↑出荷後の鮮度維持を高めるため、予冷管理も工夫を重ねる。真空断熱パネルを採用し保冷性能が高いスーパーURコンテナで輸送。
↑試作品種の「TTM-111」は節間が短く、中期作の生産者がずり降ろしをしなくてすみ有利。
「桃太郎」へのこだわり
JA新すながわ営農部農産課の山田
厚調査役に、当地のブランド力につい
て話していただきました。
「当地は桃太郎ブランドを守ること
で、販売先から評価をいただいている
と思います。どうしてかというと、販
売先にとっては、『北海道産桃太郎』とし
て堂々とチラシに表記して、集客でき
ることがバイヤーの安心感につながっ
ているようです。『桃太郎』系以外の品
種が混ざってしまう産地ではこうはい
きません。販売先の信頼に応えるため
にも『桃太郎』のおいしさにこだわり、
高い品質で安定販売ができるよう努力
を重ねています」
道内の作型の呼称は、本州とは少し
異なります。当地では、促成(4月中
下旬定植、育苗は加温し、定植後は無
加温トンネル)、半促成(4月下旬~5月
上中旬定植)、抑制(6月上旬定植)、晩抑
制(6月中旬定植)に分かれます。どの
作型も10月20日あたりで切りあがって
しまうのは同じです。早い作型から最
後まで引っ張る場合は長期夏秋と呼称
されますが、最近は長期どりで馬力を
つけるため「グリーンフォース」などの
台木を使った接ぎ木苗も活用され始め
ました。苗代のコストは上がりますが、
秋口までとることで十分採算が取れる
ようです。
山田調査役によると得意先市場から
は、9月いっぱいまで出荷量が欲しい
と要望があるそうです。これに応える
ため、段まきを実施し、水稲後の晩期
作を増やしていきたい考えです。
市場から欲しいと
いわれるトマトを
組合員は50名で決して大きい産地で
はありませんが、後継者も増えてきて
います。小島組合長にも就農7年目の
後継者淳さんがいます。組合の収量目
標は10
a当たり8・5tですが、中に
は12~13tを上げる方もいるそうです。
組合ではJAの営農指導室で各人の出
荷量データを取り、個人面談を実施し
て組合員のレベル向上に努めています。
「品質を落とさず市場から欲しいとい
われるトマトをこれからも作っていき
たい」という小島組合長ですが、新たな
工夫も昨年から始めています。販売先
での使いやすさを追求し出荷規格を玉
数に改めて箱に印字するようにしまし
た。4㎏ケースに12、14、18、20、24、
26、28、32、40個入りで選別していま
す。
「私が入会したのは平成13年で、ちょ
うど『桃太郎ファイト』が導入された時
です。トマトの栽培は難しく苦労しま
したが、作り応えを感じながらここま
で技術を高めました」
こうした思いや努力は、淳さんたち
後継者にも引き継がれていきます。
出荷先は地元砂川や札幌のほか、横
浜、大阪、名古屋の各市場へ出荷され
ますが、今年も9月1日ごろから本州
の出荷先量販で北海道フェアが始まり
ます。それまで如何に出荷量を維持す
るかが産地の課題です。中後期は水稲
に手を取られどうしてもトマトの作業
に手をかけにくい状況になる中で、次
期「桃太郎」品種を含めた産地の総合力
が求められています。
当地で栽培歴の長いこの品種の作り
こなしは、各生産者とも心得ておられ
るようですが、道内でも進む温暖化と、
稲作地帯であるゆえに後半の細かい管
理が遅れがちになることが課題の根底
にあります。そのため、後半まで草勢
維持が容易な「桃太郎セレクト」が一部
導入されたり、現在は試作品種の夏秋
タイプ「TTM︲111」が後半の草勢
維持がしやすく秀品率が高いと次の「桃
太郎」として期待されています。
↑6月22日から共撰がスタート。
↑目標収量10t以上という息子の淳さんとトマト談義の小島組合長。
↑自信をもって市場に出せるトマトの安定供給を支える山田厚調査役。
24 2017 タキイ最前線 春種特集号