中国の介護市場への日本介護事業者の進出 に関する...

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要約:近年,中国では高齢化の進行により巨大な介護市場が形成されつつあり,政府は積 極的に民間資本や外国資本の参入を推し進めている。それを機に,日本の介護事業者は中 国の介護市場に進出してきた。本研究の目的は,介護サービス事業者の海外進出に関する 調査報告書を一次資料として,中国の介護市場に進出した日本介護事業者の進出現状と問 題点を整理した上で,中国進出にあたっての問題は克服できるものかを考察し,今後の研 究課題を明らかにすることである。考察した結果,日本の介護事業者の工夫により改善で きる問題が 2 点あり,これらの問題を解決するため,日本介護事業者が中国で富裕層だけ でなく中間所得者層までをターゲットにサービス展開ができるか否かを明らかにする研究 と,日本式介護サービスの差別化のための研究という二つの研究課題は必要になってくる。 キーワード:中国,介護市場,日本介護事業者 目次 1.はじめに 2.外資企業進出を取り巻く中国の福祉政策 3.日本介護サービス事業者の中国進出の現状と問題点 3-1.進出の特徴 3-2.進出に伴う問題 4.進出に伴う問題克服に向けての考察と今後の研究課題 4-1.富裕層から中間層に拡大する可能性 4-2.日本式介護サービスの差別化 5.おわりに 1.はじめに 中国では急速な高齢者の増加が大きな社会問題となっている。中国は,過去 30 数年 間に年平均 10% 近い GDP 成長率を達成し,2010 年以降世界第二の経済大国に躍進し たと同時に,人口構造の少子高齢化も急速に進行している。2000 年ごろに中国は高齢 ──────────── 同志社大学社会学部任期付助手 2015 12 8 日受付,2015 12 22 日掲載決定 論文 中国の介護市場への日本介護事業者の進出 に関する研究課題 ──進出に伴う問題の克服を中心として──

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Page 1: 中国の介護市場への日本介護事業者の進出 に関する …...高齢者福祉サービスの実施はそれぞれ独立した枠組みの下で行われている。しかし,国

要約:近年,中国では高齢化の進行により巨大な介護市場が形成されつつあり,政府は積極的に民間資本や外国資本の参入を推し進めている。それを機に,日本の介護事業者は中国の介護市場に進出してきた。本研究の目的は,介護サービス事業者の海外進出に関する調査報告書を一次資料として,中国の介護市場に進出した日本介護事業者の進出現状と問題点を整理した上で,中国進出にあたっての問題は克服できるものかを考察し,今後の研究課題を明らかにすることである。考察した結果,日本の介護事業者の工夫により改善できる問題が 2点あり,これらの問題を解決するため,日本介護事業者が中国で富裕層だけでなく中間所得者層までをターゲットにサービス展開ができるか否かを明らかにする研究と,日本式介護サービスの差別化のための研究という二つの研究課題は必要になってくる。

キーワード:中国,介護市場,日本介護事業者

目次1.はじめに2.外資企業進出を取り巻く中国の福祉政策3.日本介護サービス事業者の中国進出の現状と問題点3-1.進出の特徴3-2.進出に伴う問題

4.進出に伴う問題克服に向けての考察と今後の研究課題4-1.富裕層から中間層に拡大する可能性4-2.日本式介護サービスの差別化

5.おわりに

1.はじめに

中国では急速な高齢者の増加が大きな社会問題となっている。中国は,過去 30数年間に年平均 10%近い GDP 成長率を達成し,2010年以降世界第二の経済大国に躍進したと同時に,人口構造の少子高齢化も急速に進行している。2000年ごろに中国は高齢────────────†同志社大学社会学部任期付助手*2015年 12月 8日受付,2015年 12月 22日掲載決定

論文

中国の介護市場への日本介護事業者の進出に関する研究課題──進出に伴う問題の克服を中心として──

郭 芳†

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化社会に入り,2013年に高齢化率は 9.7%(65歳以上の人口率)になり,高齢化の深刻度は一層増大している。2015年 10月末,中国政府は 36年近く続けてきた人口抑制策である「一人っ子政策」を廃止すると発表した。その背景には,急激な人口減少と経済減速がある。少子高齢化が中国の経済・社会に与える様々なマイナスの影響はすでに顕在化しており,中国が目指している持続可能な発展にとって大きなチャレンジとなっている。今後,少子高齢化が中国の「新常態」(1)(ニューノーマル)の一側面として長期化すると予想され,それによってもたらした各種のチャレンジへの対応は,中国にとって大きな政策課題となっている(王・戴 2015;杜 2014)。現在,中国国内の高齢者福祉体制,特に介護保険制度はまだ検討及び模索段階であり,一定の条件に該当する地方では,高齢者向けの介護補助や介護保険制度を模索・実施しているものの,全国的な政策として取り上げるまでには時間がかかると思われる。こうした状況のなかで,中国政府は高齢者福祉サービス部門への民間資本や外国資本の導入を奨励するなど,高齢者産業促進策を打ち出している。こうした現状を好機と捉え,介護分野への中国の民間企業の参入が相次いでいるが,高齢者サービス事業の運営ノウハウ,サービス提供ノウハウが不足しているといった理由により,厳しい運営状況にある事例が多く,高齢化先進国である海外の高齢者サービスのノウハウに対する期待は中国国内においても高い状況にある。このような状況を踏まえ,海外の民間資本による中国の介護市場への進出が始まった。現在,日本,アメリカ,ドイツ,シンガポールの民間資本による進出は既に始まっているが,そのなかで,日本の介護事業者は一番多く,しかも企業だけではなく,社会福祉法人も日本式介護サービスのノウハウを教える講座を開講し,人材育成に取り組みはじめた。民間資本の活用により介護の市場化を形成していく政策志向が明確にされるなか,中国の公的サービスだけでは賄えない部分での市場サービスの有効利用には考察の価値がある。本稿では,中国の介護市場に進出した日本の介護事業者を中心に,進出の政策環境と進出現状と問題を整理した上で,その解決方法について考察する。以下,2では中国の民間資本・外資企業進出を取り巻く福祉政策の変化及びその背景を整理する。3では介護サービス事業者の海外進出に関する調査報告書を一次資料として,中国に進出した日本介護事業者の進出プロセスと特徴をみた上で,直面している問題を明らかにする。そして 4では,明らかにした問題は克服可能かを考察しながら,今後の研究課題を提示する。最後に,5で考察してきたことをまとめて結びとする。

2.外資企業進出を取り巻く中国の福祉政策

中国において高齢者福祉については,衛生部と民政部によって管理されているため,

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高齢者福祉サービスの実施はそれぞれ独立した枠組みの下で行われている。しかし,国の基本方針および事業計画に関しては,中央政府が「養老事業発展五ヵ年計画」の策定を通して統括している。急速な高齢化が進行する中国では,「中国養老事業発展の第 10

次五ヵ年計画」(2001~2005年)以降,中央政府による高齢者産業促進策が展開されている。なかでも,「中国養老事業発展の第 11次五ヵ年計画」(2006~2010年)及び「中国養老事業発展の第 12次五ヵ年計画」(2011~2015年)では,高齢者産業の発展を重視する姿勢を鮮明に打ち出し,各種強化支援策を実施している。中国政府は高齢者の養老体制を,在宅養老,コミュニティ養老,施設養老に区分のうえ,高齢者の 90%が在宅で,7%がコミュニティ介護施設で,3%が介護施設で老後生活を送るという方針を明示した。在宅介護を基本にし,コミュニティ介護を拠点にし,施設介護を補充とする考え方といえる。また,施設介護には,民間資本の投資を奨励し,在宅およびコミュニティ介護については,公共政策の一環として対応するとの考え方も示した。その他,在宅サービスや高齢者福祉施設経営への民間資本の参入を推進するため,

2012年 7月に「民政部の民間資本の介護サービス分野への参入を奨励・誘導に関する実施意見」を施行した。その主要内容は以下のようになる。

「第一の(一)…在宅およびコミュニティサービス分野への資本参入に対し,政府が財政,サービス購買,評価などの面で支援する。第二の(十)…高齢者福祉施設経営への民間資本の参入を推進する。『外商投資産業指導目録』の定めに従い,外国資本が国内に投資し,高齢者福祉サービス施設を設立することを支持する。国内高齢者サービス機関を対象とする税務上の優遇措置は,外国投資者についても適用される。第三の(十一)政府が所有する新設の高齢者福祉施設におけるサービスについて,入札形式を用い,請負,共同経営,合併,合作などの方式で,民間企業または個人が提供することを認める。第五の(十九)高齢者福祉サービスへの民間資本参入に対し,土地利用税,光熱費など優遇政策を実行する。第六の(二十四)高齢者福祉サービスへの民間資本参入に対する資金面での支援を拡大する。第七の(二十八)高齢者福祉サービスへの民間資本参入に対し,関連法規の整備,資格認証,サービスの標準化など,業界・市場環境の整備を強化する」(2)。

また,2012年 12月に公布,2013年 7月に施行の『高齢者権益保障法』の改正法では,社会サービス(第四章)として高齢者産業の発展を促進することに関する規定(第

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51条)が追加された。そして,同年同日施行の「養老機構(高齢者施設)設立許可弁法」では,外国資本(企業,団体,個人)による独資での養老機構設立も可能とし,日系企業を含む外資は,運営受託会社のみならず高齢者施設本体への独資進出も可能になっている。さらに,これまで議論されてきた介護サービス供給における民間資本の参入促進,いわゆる介護サービスの市場化の是非に関して,2013年に国務院が公布した「養老サービス業の発展を加速することに関する国務院の若干の意見」では,民間資本の活用や介護の産業化という政策志向を明確にした。以上のように,中国政府から民間資本の活用や介護の産業化に関する様々な福祉対策が出されている。これらの対策が出される背景が 3つあると考えられる。まず,大きな背景としては急速な高齢化である。高齢者人口の急速な増加により,従来の高齢者福祉施設が不足になってきた。もう 1つは,救貧性の色彩が強い公的サービスが高齢者の多様なニーズに対応できなくなり,民間資本による私的サービスが登場したと考えられる。そして最後は,高齢者向けの医療・福祉・介護に対する財政支出が増加し続けていたことである(沈 2014 b)。高齢者医療を含む総医療費の支出を例としてみれば,2010年には 1兆 9921億元,2011年には 2兆 4346億元,2012年には 2兆 8914億元に急増した。上記のような背景を踏まえて,中国政府は政府,民間(企業・団体),個人など多方面の積極性と創造性を引き出し,制度化と市場化メカニズムに基づいて社会の介護サービス市場を開拓(王・戴 2015)し,介護サービス事業を発展しようとしている。また,習近平政権の政策指向では,内需を安定的に拡大する投資や建設に取り組むことによって,一定のペースの経済成長を維持することが最優先課題に据えられた(大西 2015)。そこで,民間資本と外資企業の福祉分野への参入による政府の介護サービスの拡充は,公共政策の一環としてのみならず,産業構造の中に位置づけられながら取り組まれるものであり,経済の波及効果が期待されている。

3.日本介護サービス事業者の中国進出の現状と問題点

上記の中国政府が打ち出した福祉対策のなか,現地の民間資本のみならず外国資本の参入も促進することが読み取れる。中国側の理由として,外国資本の協力や外国の介護スキルを利用し,国内の介護事業に刺激を与え,発展させるという方針がある(沈2014 b)。本稿では日本の介護事業者を取り上げて紹介したい。上で述べた「養老機構設立許可弁法」においては独資形式を認めることとなったが,介護分野における日本介護事業者の進出事例は,中国側パートナーとの合弁形態での健常者向け有料老人ホームが大半であり,まだ独資での進出事例(施設)はない(堀川

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2014)。現在中国の介護市場に進出した事業者は 2015年 6月までには既に 10社あり,進出計画中の事業者は 4社ある(表 1)。表 1から,中国に進出した日本の介護事業者の進出地は北京,上海,青島,大連,瀋陽の沿海都市に集中していることがわかる。その理由は,沿海都市の高齢化率が高いことと,日本の介護事業者は富裕層をターゲットにしているので,沿海都市に対象者を確保しやすいからだと予想される。進出事業者が提供しているサービスには大きく介護施設(居住型施設),訪問介護,介護人材育成,福祉用具,コンサルティングの 5種類がある。なかでは,介護施設を運営している事業者が一番多い。また,中国に進出した事業者は企業だけではなく,2つの社会福祉法人も日本式介護サービスのノウハウを教える講座を開講し,人材育成に取り組みはじめたことを指摘したい。

3-1.進出の特徴すでに中国に進出した日本介護事業者の情報を先行調査報告と WEB 検索の情報を参考して日本事業者の中国進出の背景,事業形態,提供サービスなどを表 2のようにまとめた。これを参考に中国に進出した日本介護事業者の特徴を検討したい。第 1に,進出背景について,個人のネットワーク,社長の意向,中国パートナーの視察など様々なパターンがあるが,最終的に進出を決定した理由はやはり中国の急速な高齢化による介護市場の創出であろう。第 2に,事業形態に関して,上述したように,中

表 1 中国進出の日本介護事業者の所在地と提供するサービス

進出状況 企業名 所在地(日本) 進出地(中国) 提供するサービス

進出済

①株式会社リエイ 千葉県浦安市 北京・上海 介護施設・訪問介護②株式会社ニチイ学館 東京都千代田区 北京 介護施設③株式会社ゲストハウス 兵庫県神戸市 上海 介護施設④株式会社ウイズネット 埼玉県さいたま市 大連 介護施設・コンサル

ティング⑤ロングライフホールディング株式会社 大阪市北区 青島 介護施設⑥有限会社ブリッジ 茨城県那珂郡 瀋陽 介護施設・訪問介護⑦メディカル・ケア・サービス株式会社 埼玉県さいたま市 上海 介護施設⑧フランスベッドホールディングス株式会社 東京都新宿区 南通 福祉用具⑨株式会社日立システムズ 東京都品川区 上海 介護システム管理⑩株式会社コミュニティネット 東京都千代田区 北京・寧波・昆山 コンサルティング⑪社会福祉法人旭川荘 岡山県岡山市 上海 人材育成⑫社会福祉法人「創生会」 福岡県福岡市 北京・杭州 人材育成/介護施設

進出予定

⑬株式会社 HCM 東京都港区⑭ワタミの介護株式会社 東京都大田区⑮日本介護福祉グループ 東京都墨田区⑯エフビー介護サービス株式会社 長野県佐久市

出所:みずほ情報総研(2014)「介護サービス事業者の海外進出に関する調査研究事業」,WEB 検索より作成

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国側の「養老機構設立許可弁法」においては外資企業の独資形式を認めることとなったが,現在の段階でまだ独資での進出施設はない。その理由は,中国では,福祉事業は非営利組織でないとできないことがあるからである。進出した日本事業者は合弁会社を設立し,合弁先が施設を保有した上で,合弁会社がサービス提供部分を受託する方法をとるケースが多い。例外的に,株式会社ウイズネットと株式会社リエイは独資で進出しているが,事業の形態は中国の民政部で登録した介護施設ではなく,工商部で登録した会社(企業)である。そして第 3の提供するサービスについては,介護施設(有料老人ホーム)が一番多いため,入居サービスが中心になっている。介護人材育成サービスがその次に続く。また,介護人材育成サービスを提供している事業者の多くは同時に介護施設の運営も行い,育成した介護人材に自社の施設で働いてもらっている。第 4,利用料金に照らせ

表 2 日本介護事業者の中国進出のプロセスと特徴

会社名 進出背景事業形態

提供サービス 利用料金 介護人材会社性質 形態

ウイズネット

・日本での事業を支援してくれた人が大連出身・日本で雇用した中国人留学生も大連出身

独資(大連) 会社 コンサルティング ― 日本の大学院を卒業した人

日本の施設で勤務経験がある人合弁会社

(大連) 社区養老施設訪問サービス 15元/時間介護人材育成 ― ―

リエイ 社長の意向によるところが大きい

独資(北京)

小規模多機能施設

ショートステイ入居サービス

毎月5500~12000元 現地スタッフ採用

責任者は日本での勤務経験あり合弁会社

(上海) 介護施設 入居サービス毎月6000~7000元

ロングライフホールディング

パートナーが日本に視察にきて,進出の話が出たのはきっかけ

合弁会社(青島) 介護施設 入居サービス 入居保証金

9000元/月

日本の教育プログラム採用日本で資格を取ったスタッフ多数

ゲストハウス中国の介護市場を調査して,現在は参入するチャンスと考えた

合弁会社(上海)

ヘルパー養成学校 介護人材育成 ― ―

ディサービス,介護施設 ― 10000元

/月 介護人材育成学校の卒業生

ニチイ学館(ニチイケアネット)

子会社は中国で福祉用具の販売事業を通じて中国でのネットワークを広げた

合弁会社(北京) 介護施設 入居サービス ―

現地スタッフ採用責任者は日本での勤務経験あり

メディカル・ケア・サービス

中国の介護市場に注目した

合弁会社(上海) 介護施設 訪問サービス

療養施設サービス16000元

/月

日本の資格を持つ社員を派遣現地スタッフ養成

社会福祉法人旭川荘

もともとアジアで人材育成をやっていた。支援団体から資金を集めた

― JICA 草の根技術協力事業

介護・障害児教育人材育成 ― ―

社会福祉法人創生会

中国の介護市場に注目した

合弁会社(北京,杭州)

国際養老管理EME 研修事業 介護人材育成 ― 日本で研修を受けたスタッ

介護施設 入居サービス ―日本で研修を受けた社員を派遣現地スタッフ養成

出所:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2013)とみずほ情報総研(2014),WEB 検索より作成

中国の介護市場への日本介護事業者の進出に関する研究課題6

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ば,日本の介護事業者が中国の富裕層をターゲットに介護サービス事業に参入していることがわかる。例外的に,株式会社ウイズネットと株式会社リエイの 2社は自社の対象者は富裕層高齢者ではなく中間層高齢者であると認識している(3)。全高齢者ではなく高所得高齢者をベースとした理由は,中国では日本と異なり介護保険がほとんど存在せず,民間の高齢者向けサービスの潜在顧客は支払い能力のある所得層に限られると想定されるためである。最後に第 5,介護人材に関して,すべての事業者が日本で介護を学んだ人や日本での介護経験がある人を雇用している。中国現地のスタッフを採用している事業者でも日本の教育プログラムを用いて人材育成をしている。介護は対人サービスであるので,サービス提供の勝敗はサービスを提供する人にかかわると考えられる。まとめると,日本の介護事業者の中国への進出背景には,その事業者と中国の交流や社長の個人的なネットワークがあるが,日本の介護事業者に対する根本的な進出魅力はやはり中国の介護市場の規模ではなかろうか。ほとんどの事業者は中国側のパートナーと合弁会社を設立し,介護施設の入居系の施設サービスを提供している。サービスの対象者は富裕層をターゲットにしている事業者が多い。そして,中国では介護保険制度が存在しないため,全額自費でのサービス提供を行っている。スタッフについて,日本で介護を学んだ人や日本での介護経験がある人は優先的に雇用され,彼らは中国現地スタッフの指導を担当している。

3-2.進出に伴う問題日本の介護サービスの水準の高さが注目されていると同時に,日本特有の背景を踏まえた特徴を有しており,中国進出に際しては越えなければならない問題がある。みずほ情報総研は,介護事業者の海外進出にあたっての問題を,①現地パートナーの選定・関係構築,②現地スタッフの確保・育成,定着,③価格に見合う顧客ターゲットの精緻化,④日本式介護サービスのプロモーションの 4点から整理を行っている。具体的に,①について,上でみたように日本の事業者は現地事業者と共同出資して合弁会社を設立するケースが多くみられる。現地パートナーに介護事業の経験があるとは限らず,また文化や価値観が異なるため,パートナーの事業運営方針や理念,具体的なプロセスなどをめぐってトラブルになるケースも少なくない(みずほ情報総研 2014)。パートナーの慎重な選定,そのパートナーとの良好な関係構築がカギと言える。②に関して,介護サービスの海外進出において,現地スタッフの確保と育成は,サービスの差別化のポイントが人的資源の質の良さに関わることが大きいことから重要である。しかしながら,中国では,介護人材が不足している(王 2008;沈 2014 a;陳 2013)。現在政府は,2002年に創設された介護の国家資格「養老護理員」保有者の増加を目指している。日本の介護事業者は現地スタッフを採用して日本の教育プログラムを用いて人材育

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成をしている。ただし,文化の違いにより中国人に日本式介護の介護人材を期待するのには困難があるとの現場からの声が聞こえる。一方で,中国人ではなく,日本人が現地スタッフの仕事を行うと,コストに見合わない。現地スタッフの確保は今後も事業者を悩ませる問題であろう。③について,中国には公的な介護保険制度がなく,年金の受給者も限定されている。そのため,日本の介護事業者が採算をとるためには,富裕層に対象を限定し,彼らに特化した事業を展開する必要がある。しかし,富裕層に対象を限定したサービスであっても,既存の競合・類似サービスが存在していることが多く,それらとの差別化が課題である。④の「日本式介護サービスのプロモーション」課題というのは,「日本式介護サービスとはどのようなサービスであるか」,「日本式介護の質の高さ」が現地で十分に認知されていないことである。上記で述べたように,日本の介護事業者の中国展開に関しては,介護サービス事業者の海外進出に関する調査(みずほ情報総研 2014)や中国高齢者産業調査(日本貿易振興機構 2013)といった調査報告書では,日本介護事業の進出現状と問題点を整理しているが,問題の克服についてまでは検討されていない。しかし,中国における日本介護の発展の可能性をみるためには,事業者進出にあたっての問題が克服可能かを検討しなければならない。4点の問題について,1点目の「現地パートナーの選定・関係構築」と 2点目の「現地スタッフの確保・育成,定着」は進出する地域の状況(外部環境)を考慮した上で解決できる問題であって,総括的に論じがたい。それに対して,3点目と4点目は,日本の介護事業者の工夫により改善できる問題と考えられる。次に,この 2

点の問題に関する解決方法について考察したい。

4.進出に伴う問題克服に向けての考察と今後の研究課題

ここでは,3で提示した日本介護事業者の海外進出にあたっての問題を基に,問題の③と④にしぼって,どのような解決方法があるかを考察し,今後の研究課題を提示する。

4-1.富裕層から中間層に拡大する可能性問題③の「価格に見合う顧客ターゲットの精緻化」について,日本の介護事業者は富裕層向けのサービスがメインであるが,一方で,中国現地にある既存の競合・類似サービスが存在していることが多く,一部都市では富裕層向けの高級介護施設は供給過剰になっている(みずほ銀行)。そこで,この問題を克服するためには,価格のみに注目するのではなく,対象者の拡大も考えられるのではなかろうか。

中国の介護市場への日本介護事業者の進出に関する研究課題8

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現在,中国の富裕層高齢者は日本企業を含む民間事業者から手厚い介護サービスの提供を受け,低所得者層は国家の保護の元でサービスを受けている。しかし,中間所得者層は介護サービスの空白地帯となっている(郭 2014 b)。所得層別にみた中国の高齢者サービス供給の全体像は図 1のようになる。図 1で示したように,富裕層高齢者に対して,中国現地の民間事業者と日本を含む外国事業者が,住み込みメイドサービスや訪問介護,高齢者サービス付き住宅などのサービスを提供している。貧困層高齢者に対して,従来存在している低所得者(「三無老人」と「五保戸」)を対象にしている「敬老院」「福利院」(福祉施設サービス)がある。また,都市部では 80年代から社区(コミュニティ)サービスセンターが設立され,一部の貧困層高齢者に対応している。富裕層高齢者と貧困層高齢者に対して,中間に位置する中間層高齢者の介護問題は課題となっている。現在,貧困層高齢者を受け入れた「敬老院」「福利院」は一般高齢者に開放されたが,生活保護者への救済の色彩が強いため,一般高齢者の入居率は高くない。また,中国政府が重点を置く通所型及び在宅型の分野においては,地方都市で政府による社区サービスセンターの設立が近年盛んに行われ,低所得者や中間所得者を対象としたサービスを行っている。ただし,社区サービスは模索段階にあり,自立度の高い高齢者向けの娯楽サービスが多いなど限定的である。農村部の中間層高齢者の介護サービスの対応について,筆者は日本の小規模多機能ケアを参考に「村宅老所サービス」モデルを構築した(郭 2014 a)が,実践に至ることができなかった。

図 1 中国の高齢者サービス供給システム出所:筆者作成

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以上の状況から,中間層高齢者向けの介護サービスは不十分であることがわかる。そのため,日本の介護事業者は高額な費用を負担できる富裕層だけでなく,介護サービスのニーズのある中間所得者層までをターゲットにサービス展開したほうが今後の発展に繋がるのではなかろうか。しかも,中国の介護市場は完全に新しい市場ではなく,競合や類似サービスの存在する既存市場である(みずほ情報総研 2014)。中間所得者層に対する中国国内および外資の介護サービス事業はまだ競争が少ない。そこで,日本介護事業者は低価格でも利潤が見込まれるサービスを考案することにより,競争の少ない中間所得者層の市場開拓を行うことができると考えられる。以上の考察を踏まえて,今後の 1つの研究課題は日本介護事業者が中国で富裕層だけでなく中間所得者層までをターゲットにサービス展開ができるか否かを明らかにすることである。その可能性を検証する際,富裕層を対象にしている日本介護サービス事業が,はたして,中国の法規制,ニーズの違いに十分配慮した市場進出となり得ているのかをみる必要があり,サービスを中間所得者層に広げる際に,事業のサステナビリティがあるか,収益が見込まれるかを検証する必要があると思われる。

4-2.日本式介護サービスの差別化問題④の「日本式介護サービスのプロモーション」というのは,「日本式介護の質の高さ」が現地で十分に認知されていない,「日本式介護は質がよいが,費用が高い」といったイメージのみで語られることが多い。すなわち,日本式介護は質がよいが,どこがよいのか,具体的な内容について日本の事業者も説明できず,中国の高齢者も理解していない。その結果,進出事業者は運営している介護施設の入居率が低く,利用者獲得に苦慮している。中国においては,高齢者の面倒は家族が見て当然という考えが一般的であり,高齢者を施設に預けることへの抵抗感も強いことから,外部の第三者が提供する介護関連サービスへの理解と利用には一定程度の時間を要すとの見解も少なくない(沈 2007;王2008)。しかし,一人っ子政策を背景とした少子化や子どもの都市への移転などの影響により「空巣世帯」と呼ばれる高齢者だけの世帯は増加しており,子どもが親の面倒を見ることが困難になってきている。さらに,「失能高齢者」と呼ばれる自立生活能力喪失者なども増加(表 3)しており,老人ホームなど施設への理解や需要は高まっている。特に,中国では寝たきり高齢者への対策は政府の大きな課題となっている(中国老齢科学研究センター 2010)。これを解決するには,まず,外国経験や外国資本によるこの分野への対応が求められる。先行して高齢化問題に直面する日本は中国より認知症や重度の寝たきり高齢者に対する介護のノウハウを多くもっている。日本の介護事業者はこの点についてアピールが必要になってくるのではなかろうか。

中国の介護市場への日本介護事業者の進出に関する研究課題10

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また,中国では高齢者施設が量的に増える一方,空きベッド問題が生じている(郭2014 b)。その理由は高齢者にサービスの質の低い施設入所への抵抗があるためである。それに加えて,中国現地の施設サービスが,自立度の高い高齢者に居住の場や娯楽をするスペースを主に提供している。訪問サービスは「訪問介護」という名称でありながら家事支援が中心となっている。上記で述べたように,「空巣高齢者」と「失能高齢者」の増加により,今後,中国の高齢者が求める高齢者福祉サービスは単純な「居場所」だけではなく,専門職による身体介助と介護サービスであると予想される。しかし,中国の高齢者は現在の居場所提供や家事援助のようなサービスを受け入れてはいるが,専門職による身体介助や介護の重要性と有効性等についてまだ認知していない。日本の介護事業者は日本式介護の技術を活かして中国で介護事業を展開しようと考えたが,中国現地にある既存の類似サービスとの差別化が課題となっている。上記のような状況を踏まえて,日本式介護サービスの差別化が今後もう 1つの研究課題になる。具体的に,日本式介護サービスが中国で認知されるように,まず何をもって日本式介護サービスというのか(日本式介護サービスの定義)を示す必要があり,さらに何をもって質が高いと言えるか(効果の実証)を明らかにする必要がある。ただし,日本式介護サービスの定義については,海外進出した日本式介護サービスは進出国の諸環境・制度,文化・習慣に影響を受けると考えられる。そこで,今後の研究では,日本で行う介護サービスと中国に進出した日本式介護サービスの違いを検討する必要性も出てくる。つまり,日本式介護サービスの中国における位置づけを明らかにすることはこの研究課題を解明する前提項目になると思われる。

5.おわりに

人口高齢化の進展にともない,世界中で介護サービスを必要とする人の数は大幅に増加すると見込まれる。中国はそのなかの一大国として,介護需要の飛躍的な高まりに対応した介護システムを確立することが大きな課題となっている。すでに高齢化社会を迎えた日本においては,介護保険制度の導入により,介護サービス市場が形成された。本

表 3 中国の失能高齢者人口変化状況(%,万人)

2000年 2006年 2010年 2015年重度失能 0.50 0.68 0.84 1.08

中度失能 0.34 0.33 0.32 0.31

軽度失能 5.83 5.41 5.15 4.83

失能人口 846 910 1084 1240

出所:景,李(2014)「中国失能老年人構成及び長期養護の必要性分析」p 57より

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稿でみてきたように,中国においても市場化メカニズムに基づいて社会の介護サービス市場を開拓している。すなわち,介護サービスという社会保障政策の範疇ととらえられがちな領域について,中国という特殊な環境で,市場サービスの可能性を認めている。ただし,日本と異なるのは,中国は民間資本だけではなく,外国資本の導入も視野に入れている。そうする理由は,急速な高齢化問題に対応するため,外国資本の協力や外国の介護スキルを利用し,国内の介護事業に刺激を与え,発展させる方針だからである。これまで多くのノウハウや実践を蓄積してきた日本の介護サービスは,いち早く中国の介護市場に進出した。中国に進出した日本介護事業者は富裕層をターゲットに介護施設や訪問介護,介護人材育成などの事業を展開している。ほとんどの事業の形態は中国側パートナーとの合弁会社になっている。異なる環境・制度,文化・習慣の国での事業展開は,現地パートナーの選定・関係構築,現地スタッフの確保・育成,定着,価格に見合う顧客ターゲットの精緻化,日本式介護サービスのプロモーションなどさまざまな問題があった。今後の事業展開のため,様々な問題を解決しなければならないが,本稿では日本介護事業者の視点から「価格に見合う顧客ターゲットの精緻化」と「日本式介護サービスのプロモーション」の 2点の問題の解決を検討し,今後の研究課題を提示した。一つは,日本介護事業者は富裕層をターゲットにしているが,実際に中国の中間層高齢者はニーズがあり,サービス需要は高いということであり,日本介護事業者が中国で富裕層だけでなく中間所得者層までをターゲットにサービス展開ができるか否かを明らかにすることを最初の研究課題にした。二つ目は,日本式介護サービスの良さは中国で認知されておらず,既存の類似サービスとの差別化が課題となっているので,日本式介護サービスの差別化のための研究が次の研究課題になる。

注⑴ 中国の習近平国家主席は,2014年 5月に河南省を視察した際,「わが国は依然として重要な戦略的チャンス期にあり,自信を持ち,現在の経済発展段階の特徴を生かし,新常態に適応し,戦略的平常心を保つ必要がある」と語った。さらに,習主席は,2014年 11月に北京で開催された APEC 会議の講演で,中国経済が高速成長から中高速成長へ移行している現在の段階を「新常態」(ニューノーマル)と表現した。これを受けて,「新常態」という言葉は,中国経済を議論する時のキーワードとして,中国国内外で流行するようになっている。

⑵ 「民政部の民間資本の介護サービス分野への参入を奨励・誘導に関する実施意見」の内容の翻訳は「中国高齢者産業調査報告書」p 24ページを参照した。

⑶ みずほ総研が行った日本介護事業者へのインタービュー調査のなかでは,株式会社ウイズネットは「事業の対象を,いわゆる『富裕層』に設定するのではなく,『中間層』としている」と答えている。株式会社リエイは「上海の施設は中間層向けと考えているが,公立の高齢者入居施設が月額 2000元前後に対し,当社の施設では月額 6000~7000元に設定したいと考えている」との回答になっている。

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A huge nursing market has been formed due to China’s aging population in recent years,and China’s government actively promotes private capital and foreign capital participation. TheJapanese nursing enterpriser has found Chinese nursing market as an opportunity. The purpose ofthis research is to make the future’s research task clear. First, clean up the current status andproblems of the Japanese nursing enterpriser which entered the Chinese nursing market. Then ex-plore the problems which can be resolved when entering China. As a result, The Japanese nurs-ing enterpriser should consider two points when resolving issues before entering the Chinesemarket. In order to resolve these problems it is necessary to complete the following two researchtopics. One is a study which makes it clear whether service development of a Japanese nursingenterpriser can target a middle income earners as well as the wealthy classes in China, and thesecond one is the study of the differentiation of Japanese-style nursing services.

Key words : China, Nursing market, Japanese nursing enterpriser

A Research Task about the Advancement ofJapanese Nursing Enterpriser on China’s Nursing Market :

Focusing on Market Entry Issues

Guo Fang

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