庄内の花き園芸...1 庄内における花き生産と流通 Ⅰ 庄内の花き生産状況 1...
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庄内の花き園芸
平成 24 年 3 月
庄内の花き編集委員会
昭和 57 年、庄内の花き生産額は 1 億 4 千万円でした。20 年以上経過した
現在(H18)は 20 億円を超え、庄内の花き園芸は飛躍的な発展を遂げまし
た。
一方、国内経済の停滞、輸入増から、庄内も含め全国的に花き生産が伸び
悩み、流通も含め新たな活路を見出すことが求められています。それには、
古きを温(たず)ね、今を見渡すことがこれからの展望を得る(新しくを知
る)一助となるのではないかと愚考しました。
古きを温ねるは、昭和 58 年度発刊、畑作営農だより(花き特集)「庄内
における花き栽培と流通」(山形県砂丘地農業試験場協力会)があります。
一読、当時の歴史的な記録にうなずかされ、二読、諸先輩・先人の花き園芸
への情熱に圧倒されます。
これを踏まえ、庄内花き生産の発展と現時点の技術をまとめることはでき
ないかと考え、「庄内の花き」編集委員会を立ち上げ、このような冊子を作
成したところです。
構成は「畑作営農だより」を踏襲しましたが、生産者を交えた座談会は組
めませんでした。そのような企画があれば、もっと生産者の息遣いが感じら
れる紙面になったかも知れません。一方、下記の方々から、新しきを知る道
標(みちしるべ)となる稿も含め寄せていただき、目的とした体裁をいくら
か整えることができたのではないでしょうか。厳しい環境ですが、今後の花
き園芸取組みの一助となれば幸いです。
最後になりますが、取材に快く応じてくれた生産者の方々、公私ともに多
忙の折に、執筆くださった皆さんに感謝いたします。
協力者
執筆者:小野恵二氏、柴田早苗氏、石塚正弥氏、寒河江孝氏、寒山氏、
拾得氏
取材協力生産者:高橋助勝氏(ストック)、
工藤豊章氏(トルコぎきょう)、池田善幸氏(ばら)
小林欣二氏(けいとう)、今井茂氏(シクラメン)
データ・資料提供:全国農業協同組合連合会山形県本部庄内統括事務所
編集委員(取材・執筆)
黒坂美穂、佐藤裕則、菅原 敬、高梨良子、吉田祐一、渡部由理
は じ め に
庄内の花き園芸 目次
庄内における花き生産と流通 1
花き園芸の低迷期に県産花きの道標を探す 24
庄内花き生産組織連絡協議会の歩みと 庄内地区花き生産・販売経過 34
山形県花き生産連絡協議会の設立について 40
庄内町花き種苗センターの設立と運営 47
昨今の資材等高騰に伴う施設花き経営への影響 51
(栽培の事例)大規模なストック栽培を可能にした直播き栽培 56
ストックと組み合わせたトルコぎきょう栽培 61
ばら養液栽培 68
ケイトウの直播き栽培 74
シクラメンを主体とした鉢物・花壇苗栽培 78
庄内産地研究室における花き研究の概要(H16~23年度) 85
附表(庄内における花き生産・出荷組織研究会一覧)
1
庄内における花き生産と流通
Ⅰ 庄内の花き生産状況
1 庄内における花き生産現況
平成 18 年、庄内の花の生産額は 20.6 億円(山形県農林水産統計)であり、山形県全体
67.8 億円の 30%を占める。市町別では、鶴岡市 7.0 億円、酒田市 7.1 億円、三川町 0.5
億円、庄内町 3.8 億円、遊佐町 2.2 億円となっている。全農山形(当時全農庄内本部)の
取り扱いは 19.5 億円であることから、統計上の系統取扱率は 95%となる。
系統外では、市場集荷の鉢物、花壇苗生産、独自集荷グループでのばら(事例参照)、
余目町、鶴岡市の小ぎく生産、系統外直売所向け生産などが見られる。
なお、全農山形の取扱いは平成 20 年度に 20 億円を超えたが、平成 22 年度は鉢物、花
壇苗取扱い減少もあり、約 17 億円となっている。
図1 平成22年度全農山形取扱花き販売実績(H22.4~H23.3)
ストック3・7億円
ユリ類3.4億円
トルコギキョウ2.9億円
キク1.5億円アルストロメリア
1.7億円
その他
バラ0.5億円
ダリア0.4億円
サクラ0.4億円
ヒマワリ0.2億円フリージア
0.3億円スターチス0.2億円
宿根カスミソウ0.2億円
花木類0.1億円
鉢物・花壇苗0.1億円
合計17.1億円
2 生産の変化
(1)生産品目の変化
昭和 57 年当時と現在(平成 22 年度)を比較してみると、生産品目は大きく変化し
ている。特に、切り花、枝物では新品目が多く見られる。 近では切り花類では葉ぼ
たん、ダリアが急増している。生産額は小さいものの、ハロウィン需要のおもちゃか
ぼちゃが 近の品目として目につく。
2
写真 1 ハロウィンらしいカボチャを使った飾り付け(横浜市で撮影)
一方、チューリップ、グラジオラスなど、現在栽培されていない品目もいくつか見
られる。以前から、おみなえし、しゃくやく、エレムルス、などの露地に向く品目の
生産が見られないのは庄内特有の強風によるものと思われる。
新てっぽうゆりも遊佐町に栽培者は残っているものの、県内全体を見回してもまと
まった産地が無く、生産量が極めて少ない状況である。露地栽培での雨による花腐れ
によって生産が不安定であったためと見られる。需要量が多い品目なので、雨除け栽
培での産地復活が望まれる。
露地ぎくは、輪ぎくの栽培が減少した一方、他県で生産減少となった小ぎくが土畑、
砂丘地とも急増している。
写真 2 JA庄内みどりでの小ぎく巡回(写真提供 酒田農業技術普及課)
3
枝物は昭和 57 年当時からみれば相当多品目になっているが、‘敬翁桜’以外いず
れも少量生産である。比較的多人数で栽培されたものとしてはスモークツリーがある。
これは平成 16 年頃、JA庄内たがわ管内で転作田での植栽がすすめられたためであ
る。
鉢物・花壇苗は、全国的には毎年新品目が登場している。庄内でも品目の入れ替え
が見られるが、バラエティさが減少し、品目を絞った生産に変化している。なお、シ
クラメンはほぼ共通して生産されているが、それ以外の品目は各生産者で重なってい
ない。現在では栽培が見られないが、表 1 には載せることがなかった、試行錯誤の末
に消えた品目が多々あるものと推測する。
4
表 1 庄内で生産されている花き類
商品
区分
種 類
切
花
<1、2年草>アスター、ういきょう、オキシペタルム(ブルースター)、カンパニュラ、き
んぎょそう、けいとう、ごでちゃ、サンダーソニア、シンビジウム、スターチス(シヌアー
タ)、ストック(スタンダード、スプレー)、デルフィニウム、トルコぎきょう、なでしこ、
はぼたん、ひまわり、ブプレウラム、べにばな、やぐるまそう
<球根類>アネモネ、アリウム(コワニー)、オーニソガラム(サンデルシー、シルソイデ
ス、ダビウム)、ダリア、はす(花、実)、畑地カラー、フリージア、マーガレット、ゆり
(OH、おにゆり、やまゆり、新てっぽう)、ラナンキュラス、リューココリーネ
<多年草>、おみなえし、カーネーション(スタンダード、スプレー)、きく(輪ぎく、小ぎ
く、スプレーぎく)、クラスペディア、しゃが、宿根アスター 、宿根かすみそう、スターチス
(ブルファン、キノブラン)、ばら(スタンダード、スプレー)、ヒューケラ、ふとい、ブル
ビネラ、マーガレット、リアトリス、りんどう、ルドベキア、るりたまあざみ
枝
物
あじさい(みなづき、アナベル、がくあじさい、ときわがまづみ、いぬざんしょう、うめもど
き(ベルティシラータ)、うりはだかえで、うんりゅうやなぎ、かまずみ(実付き)、きふ
じ、きり、くろもじ、こくわづる、こぶし、さくら(啓翁桜、紅彼岸桜、染井吉野)、サンキ
ライ、さんしゅゆ、シンフォリカルポス、スモークツリー、ちんしばい、つるうめもどき、ど
うたんつつじ、とさみずき、なつはぜ、ななかまど 、にしきぎ、のいばら、のぶどう、ばい
かうつぎ、はくもくれん、はくれん、はぜ、はなずおう、ビバーナム(スノーボール)ピラカ
ンサ、ヒペリカム、べにすもも、ほうのき、ぼけ、まゆみ、まるばのき、まんさく、実ばら、
むしかり、もも、やまぼうし、ゆきやなぎ(緑、紅葉)、ライラック、りょうぶ、れんぎょ
う、ローズヒップ
葉実
物物
あわ、イタリアンルスカス、おもちゃかぼちゃ、しだ(紅葉)、千成ひょうたん、なるこら
ん、はすは、むぎ
苗
物
アゲラタム、アメリカンブルー、アリザ、インパチェンス、オキザリス、ガウラ、ガザニア、
カリブラコア、ききょう、きく類、きんれんか、クリサンセマムムルチコーレ、クリスマス
ローズ、コリウス、コスモス、さくらそう類、サルビア、ジギタリス、ジニア、スカビオサ、
ダリア(矮性種)、デージー、なでしこ類(せきちくほか)、にちにちそう、バーベナ、はぼ
たん、パンジー、ヒポエステス、プチロータス、ブラキカム、プレクトランサス、ベゴニア
(センパフローレンス)、ペチュニア、ヘリクリサム、ペンタス、マリーゴールド、ミニシク
ラメン、ラベンダー、リビングストンデージー、ルドベキア、ルピナス、ロベリア、Xローズ
鉢
物
アメリカふよう、インパチェンス、オキザリス、オステオスペルマム、オダマキ、おりづるら
ん、カーネーション、ガーベラ、ガウラ、ガザニア、カランコエ、グリーンネックレス、クリ
スマスローズ、クレマチス、コスモス、さくらそう類(マラコイデス、ポリアンサほか)、シ
ーマニア、シクラメン、シクラメン類、しだ類、シネラリア、シュウメイギク(矮性種)、ゼ
ラニウム、チョコレートコスモス、とうがらし類、パンジー、パンジーゼラニュウム、ペチュ
ニア、ベゴニア類(センパ、エラチオール、木立ほか)、ペラルゴニウム、ポインセチア、ホ
クシャ、マリーゴールド(矮性類)、ユーフォルビア、ラナンキュラス、ランタナ、リビング
ストンデージー
球
根
ゆり(OH)
注)平成 22 年全農山形取扱い品目データから作成。ゴシック体で表示した品目は昭和 57 年当時栽培されて
いない品目(大野氏が昭和57年 8~12 月まで、生産者から聞き取りした品目と比較)
5
表 2 内陸で生産され、庄内で現在生産されていないもの
商品
区分
種 類
切
花
<1、2年草>あざみ、あわ、イエローサルタン、おくら、おみなえし、ききょう、こばんそ
う、スィートピー、とうがらし、とうもろこし(ベビーコーン)、ホワイトレースフラワー、
洋種やまごぼう(フィトラッカ)、スカビオサ
<球根類>アガパンサス、エレムルス、グラジオラス
<多年草>エリンジウム、がまほ、くじゃくそう、クレマチス、しゃくやく、ソリダゴ、ソリ
ダスター、たけ、段菊、はなしょうぶ、ふじばかま、われもこう
枝
物
アロニア、いたやかえで、いぼた、おうとう、おおでまり、かりん、ぐみ、くり、さるすべ
り、さんごみずき、しもつけ、ジャスミン、セファランサス、ソラナム、つるばら、ディアボ
ロ(てまりしもつけ)、なら、こなら、のりうつぎ、ビブルナム(キサントカーパム)、ひめ
りんご、ふさすぐり、ふじつる、ぶどう、まつ、ユーカリ、りんご(実、加工)
葉物 あわ、ぎぼうし、ニゲラ(実)、りきゅうそう
苗物 チェッカーベリー
鉢物 セダム、クレマチス、ハイドランジア、洋らん類(シンビジウム)、
球根
注)平成 22 年全農山形取扱い品目データから作成
表 3 かつて生産され、現在庄内で生産されていないもの
商品
区分
種 類
切
花
<1、2年草>あざみ、コスモス、ブルーレースフラワー、ホワイトレースフラワー、スター
チス(カスピア)、やぐるまぎく
<球根類>グラジオラス、すいせん、ダッチアイリス、チューリップ、ばいも、ゆり(新鉄
砲)、ラークスパー
<多年草>ガーベラ、ききょう、ストケシア、ストレリチア、とらのお(ベロニカ)、トリト
マ、はなしょうぶ、ひおうぎ、ひめがま、ほととぎす、モナルダ
枝
物
えにしだ類、せっかんすぎ、ひむろすぎ、なんてん
葉物
苗
物
あさがお、アスター、クレオメ、けいとう、ぼたん、ひまわり、ほうせんか、わすれなぐさ、
しばざくら、しらん、はなしょうぶ、りんどう、ゆり類
鉢
物
アナナス類、アネモネ、アロエ、イングリッシュアイビー、エリカ類、かいどう(ひめりん
ご)、カポック、かんのんちく、クロッカス、サフラン、すいせん、エキザカム、かすみそう
類、カルセオラリア、クレマチス、グロキシニア、クリスマスカクタス、くんしらん、こけさ
んご、さつき、山野草類(さぎそう、ふゆのはなわらび、しゅんらん、えびねほか)、しゅろ
ちく、すずらん、スィートピー、ストック、セダム、セネシオ、ダリア(矮性種)、チュー
リップ、つつじ、つばき、ヒアシンス、ピラカンサ、フリージア、ほおづき、ひめぎきょう、
ボリニアミニばら、モンステラ、薬草類(おうれん、せんぶり、ばいもほか)、ロケア、ロー
ドヒポキシス
球根 グラジオラス、すいせん、チューリップ、ばいも(あみがさゆり)
注)大野が昭和 57 年 8~12 月まで生産者から聞き取りした品目のなかで、平成 22 年全農山形取扱いのない
品目を抜き出して作成。輪ぎく、新てっぽうゆりは取扱いがないが、栽培事例があるので、除外した。
6
球根生産は、かつてチューリップの大産地であった。昭和 30 年代に 25ha に達したが、価格低迷
等で昭和 50 年代に姿を消している。平成初期、福花園からグラジオラスの球根生産委託があった
が、定着しなかった。
(2)主な品目の生産の動き
<ストック>
昭和 48 年の試作を経て栽培が本格的に開始されたのは、昭和 52 年頃、旧余目町(現庄内町)で
ある。庄内経済連(現全農山形)で取り扱いが始まった 54 年、取り扱い高 199 万 6 千円であった。
その後、旧余目町を中心に主に水稲育苗用ハウスに拡大していった。
シードテープでの直播きを発案した太田のタネ瀬川氏によると、試作品を持っていき、直播きを
試行したのは酒田市浜中の高山氏である。それは、昭和 62 年であった。土畑中心の栽培がシード
テープとともに砂丘地に徐々に広がっていったのは、平成 2~3年頃である。
シードテープは土畑での育苗用も考案され、平成元年藤島普及所(現庄内総合支庁農業技術普及
課)大場裕子氏が技術導入、翌年庄内経済連(現全農山形)の栽培マニュアル(普及所作成)の技
術に反映させ、普及していった。
系統取扱高は平成 3年 2億円、平成 10 年には 3億円を超えた。これも、シードテープ技術が砂丘
地直播きも含めヒット技術として広く普及したことが大きい。
写真 3 JAあまるめのストック巡回
(写真提供 庄内総合支庁 農業技術普及課)
平成初期の出荷時期はせいぜい 12 月までであった。平成 3年には旧余目町に暖房機が導入、この
ことは、出荷時期の長期化の走りとなった。
平成 7年、旧余目町において種苗供給施設が建設、翌年から庄内町を主にストック、トルコぎ
きょうの苗供給が行われている。施設稼働前は、土畑では出荷時期に極端なピークが見られていた。
だが、稼働後は苗渡し時期が分散、ひいては出荷期分散に貢献することになった。施設建設には、
旧余目町のリーダーシップが大きいが、当時を知るJA庄内たがわ斎藤信哉氏にいきさつなど執筆
7
していただいているので、そちらをご覧いただきたい。
平成初めは、雪波、朝波を主としたスタンダード(1本立ち)が中心であった。平成 6年の試作を
経てスプレー系が平成 8年以降拡大していった。現在(H23)は、庄内全体の面積でスプレー系が6
割、スタンダードが 4割となっている。スタンダードの‘アイアン’シリーズは全国的には遅れて
平成 17 年頃に導入され、スタンダードの主流となっている。
ストック(スタンダード)の栽培体系は、内陸と異なる。例えば、内陸では密植し、一重は早々
に引き抜く。残った八重株に光を当てるためと、ベッドの渇きを早めるためだ。庄内では引き抜か
ず摘心する。引き抜くと風で倒伏するためだ。そのかわり、疎植にする。
ネットの考え方も違う。内陸は草丈伸張に伴い、ネットを上げる。庄内はネットはあらかじめ高
い位置に張る。そのかわりベッドサイドにマイカー線を回す簡単な方法で倒伏防止する。ネット目
も粗い。伸びてきたときのネットへの引っ掛かりで茎折れしにくくするためだ。このような方法は
稲刈りで手が回せないために生まれた農家の知恵である。
今、スタンダードでは‘アイアン’が主流になっている。これまでと全く違い、茎が剛直で倒伏
しづらく、ムダに太りやすい。密植で細くしたい品種だ。また、庄内に適合した作り方が工夫され
るであろう。
<トルコぎきょう>
山形県での 初の生産者は、知る限りでは、昭和 53 年山辺町作谷沢の樋口規夫氏である。庄内で
は昭和 57 年には三川町で栽培が見られている。旧余目町小林金市氏が昭和 62 年に栽培開始、昭和
63 年、庄内経済連の取り扱いが初めて見られている。従って、庄内の導入時期はこの頃かと見る。
平成 2~3年にはすでに育苗はセルトレイを利用していた。当時、藤島普及所は新しい播種技術と
して裸種子をゲルにくるむ方法を実演しながら普及を図っていた。ほどなく、コーティングされた
種子がメーカーから提供、平成 7年には現在の育苗方法であるセルトレイにコーティング種子を播
種する方式が始まった。
現在県内広く普及しているシェード栽培法は山形園試が昭和 62 年に開発した技術である。普及所
が実証ほを通じて推進したのは、平成初めの頃である。平成 3年頃には旧藤島、旧余目町の生産者
が平トンネルを用いた方法で実施するようになった。
その頃、砂丘地農業試験場(以下 砂丘地農試と呼称)においてもシェード栽培を実証・展示し、
庄内産地に刺激を与えていた。
本格的な普及のきっかけは平成 8年鶴岡市佐藤司氏ほ場での小型ハウス型カーテン方式の実証で
ある。カーテン式は比較的安価であったこと、操作しやすいことから、県補助事業を使いながら鶴
岡市に急速に普及、高品質生産の市場評価を受けたことから庄内各地に広がった。
栽培者は年々増加し、平成 7年に 1億円、8年には 2億円、9年には 3億円と系統取扱高が爆発的
に増加、現在では約 4億円までなっている。
育種は平成初め頃には各地で行われ、現在も試行されている。小林金市氏の育成した育種母本が
種苗会社に渡り、品種となった庄内発の品種もある。
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写真 4 JA鶴岡でのトルコぎきょうのほ場格付け巡回
(写真提供 庄内総合支庁農業技術普及課)
<オリエンタルハイブリッド(OH)ゆり>
平成 6年頃には鶴岡市で‘カサブランカ’の試作があったようである。本格的な導入は平成 8年
遊佐、鶴岡市西郷地区でのカサブランカ栽培と見られる。当時、園芸試験場はOHゆりのプレルー
ティング技術を明らかにしていた。この技術を活かすべく、県からJAさがえ西村山に移られた勝
木謙蔵氏がカサブランカの産地化を目指した。さがえ西村山ゆり栽培研究会が発足、‘カサブンラ
ンカ’の産地化がスタートしたのは平成 6年である。庄内の生産者は西村山の‘カサブランカ’を
視察、研究成果とともに技術導入されたものである。
‘カサブランカ’は庄内では高品質生産が難しかった。平成 10 年以降‘シベリア’や‘ソルボン
ヌ’など茎が硬く、生育日数の短い、作りやすい品種に交替していった。砂丘地を中心に栽培者が
増加し、平成 12 年度には全農取扱いで1億円を超えた。その後もゆりブームに支えられ、順調に生
産拡大し、平成 15 年度は 3 億を超えるまでなった。現在(H22)は 3.4 億円の生産額となっている。
ゆりの経営費で大きいのは球根代である。導入当初は球根代が 200 円前後と高く、使用球根を露
地に植えて再利用する形態が見られた。現在は円高により球根代は 100 円を切って入手できるよう
になり、球根養成が行われるのはまれである。
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写真 5 JA袖浦でのOHゆり巡会(写真提供 酒田農業技術普及課)
<アルストロメリア>
昭和 58 年に鶴岡でもペレグリナ系を含めて栽培されていた。昭和 61 年度庄内経済連取扱は 80 万
円であり、この頃が導入期といえる。昭和 62 年、庄内各地 8名がリグツ系を導入しており、生産が
徐々に拡大した。
リグツ系、ペレグリナ系とも1季咲きで、田植え後に収穫する作型である。平成初期には旧余目
町を中心に産地が進展し、平成 6 年同町小林金市氏はリグツ系でいくつか登録品種の作出している。
同じく平成 6年には、遊佐では千葉県の三宅勇氏育成のカリオフィラエア系が導入された。
リグツ系などは花色が透明でカラフルであったことから市場の人気があったものの、平成 10 年以
降栽培が減少し、現在は遊佐町 1 名のみとなっている。これは、1 年間ハウスを占有してしまうこと、
開花期が春に集中するためである。
当時、開花分散のため促成も試みられてもいた。しかし、収穫時期の前進化は田植えシーズンと
重なることになる。これは、稲作農家にとってはマイナスであり、収穫期拡大は難しかったことの
である。
替わって、四季咲き性を有する栄養系が主流になり、現在にいたっている。この系統の導入は平
成 2~3年頃、鶴岡市である。当時は四季咲き性が強いものは多くなく、花色もリグツ系に優るもの
は少なかった。平成 5年以降、‘レベッカ’や‘アモール’など優れた品種が庄内で導入、品種の
ハンディは乗り越えられていった。
鶴岡市、酒田市袖浦地区を中心に生産者が増加、系統取扱高が平成 9年には 1億円、翌年 2億円
を超えるまで成長した。しかし、収益の拡大には価格が良い秋冬期に多く出すことが必要であった。
そのためには地中冷却技術の導入が必要であった。
平成 5年、バイテク基金を活用、電気で冷却水をつくるチラーが鶴岡生産者 3名各 1台導入、
10
‘ウイルヘルミナ’等で地中冷却が試みられた。これは、県内で初めての例であった。
平成 9年頃には酒田市袖浦地区の阿部尚光氏が地下水を用いた地中冷却に挑戦していた。砂丘地
農試は翌年からアルストロメリアの研究をスタート、平成 13 年にはその有効性を証明した。低コス
トの地下水利用が平成 14 年以降砂丘地等に普及。現在、庄内は電気で冷却水を作るチラーが主流で
あるが、地下水利用も含め庄内のアルストロメリアはほとんど地中冷却が行われている。一方、県
内で地中冷却をしない生産者は姿を消した。
平成 17 年以降の燃油高騰により生産を中止する生産者も見られ、現在(H22)は 1.7 億円となって
いる。今後、低コスト生産が産地安定のカギとなる。
地下水利用は、内陸ではほとんど見られない。豊富に得られる砂丘地および湧水する鶴岡市水沢
地区ならではの技術である。高額なチラーは不要で、なによりも省電力である。砂丘地試験場では、
能力を 大限に高める構造も提案している。地下水利用が低コストで、しかも環境にやさしい技術
として見直していいのではないか。
JA庄内たがわでのスプレーぎく現地巡回(写真提供 庄内総合支庁農業技術普及課)
<スプレーぎく>
スプレーぎくがオランダから我が国に本格的に導入されたのは昭和 47 年である。平成初め、鶴岡
市茨新田佐藤豊氏は、「ドラマチック」などの導入品種をすでに栽培していた。
本格的に栽培されたのは平成 4年、ロイヤリティ方式で(株)フィデス(後にキリンビール)の
種苗導入ができるようになってからである。ロイヤリティ方式は、藤島普及所(現庄内総合支庁農
業技術普及課)の希望で庄内経済連が日商岩井と契約を結んだことから可能となった。これは、全
国で戦う戦略上、オランダの 新品種をいち早く入れることがどうしても必要と考えていたからで
ある。一担当者の申し出に即、英断してくれた当時庄内経済連種苗課に感謝したい。
単協の契約例はあるものの、経済連単位での契約は全国初めての例であった。これも、庄内一円
で産地化したかったからである。以降、高額な種苗費負担なく、オランダの 新品種が導入できる
ようになった。ほどなく、庄内経済連は精興園においても同様な契約を締結、さらに多くの品種が
導入可能となった。
11
小型ハウス型カーテン式のシェード装置を旧藤島町上林豊氏と相談しながら事業で導入したこと
も産地化にはかかせないできことであった。大産地の愛知県では暑さのために作れない秋ぎくの前
進出荷をもくろんでいたからである。この産地メリットを活かせるよう、生産者は次の取り決めを
行った。①作型分散のため一定以上の面積を作ること、②シェードの作型を実施すること。設備導
入は、行政の後押しが大きい。藤島町役場小細澤氏が事業に乗ってくれた。
シェード作型の出荷はライバルが少なく高価格で販売された。シェードのできる大型の軽量鉄骨
ハウスも県補助事業で導入、平成 10 年には 1億円を達成。しかし、現在は 1億円弱となっている。
マレーシアキャメロンハイランドからの輸入品の圧迫が課題だ。
品質面でも課題がある。「庄内のものは太すぎる。もっと細いものが欲しい」と山形生花遠藤氏
は語る。巻き返しには戦略(セールスポイント)を見直すときではないか。
<啓翁桜>
昭和 49 年、酒田市東平田の高橋春樹氏が植栽したのが初めである。平成には市場流通が主となる
平成の時代は現在の丸束になっているが、昭和の時代は生け花用の枝折り束であり、必ず使う一木
挿しを加え、池坊でいえば芯・副(そえ)・体に見合う枝を枝折らなければならず、その心得が必
要であった。
庄内経済連の取り扱いが初めて見られるのは平成 4年度、1,014 万円(その他桜も含む。以下同
様)であった。その後、旧八幡町、酒田市砂丘地、旧羽黒町、鶴岡市黄金地区、遊佐町などに植栽
が拡大していった。生産者、生産額が徐々に多くなり、平成 15 年度には 4千万円に少し欠ける
3,945 万円までなった。
昭和 63 年山形園試から山形普及課に移られた小野恵二氏は正月用に咲かせることができる技術を
山形市や東根市で普及させていた。これは、石灰窒素とお湯を使う山形園試開発の画期的な技術で
ある。技術開発後、庄内では簡単な方法の石灰窒素散布は試されていたが、やはり効果は不安定で
図2 全農山形の花き取扱高(1986~2010年)
0
5
10
15
20
25
'86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10
その他
トルコギキョウ
ストック
ユリ類
アルストロメリア
キク類
サクラ
億円
(平成元年) (平成10年) (平成20年)
20.66億円
12
あった。庄内では平成 2年羽黒町斎藤力氏が普及所とともにお湯と併用する方法に取組んでいる。
庄内は内陸より雨量が多いためか枝伸びしやすく、施肥量を抑える肥培管理が主流であった。し
かし、この管理は収穫後の再生力を奪い、生産性が落ちることになる。新植で拡大していくものの、
廃園となるほ場も見られ、さくらの生産額は現在、3,000 万円台が続いている。
庄内でも、花芽の多い枝ぶりの園地が各地に見られる。また、花芽を増加させる環状剥皮の技術
も確立ずみだ。再生力のある肥培管理と組み合わせれば技術的には何の問題もない。実際、好成績
を上げている生産者も庄内にいる。桜は冬季農業の目玉である。足踏みからの脱却が望まれるが、
そのためには、新品種を取り入れるなどの刺激が必要でないか。
<ばら>
昭和 57 年、鶴岡市菱沼の本間松弥氏が自力で鉄骨ハウスを建てて植えたのが始めとなる。翌年の
昭和 58 年には日本ばら切り花協会山形支部が立ち上がり、平成 6年には庄内に 6名の生産者を数え
るまでになったが、現在の栽培者は当時からの栽培者 4名に羽黒町 1名を加えた 5名で栽培されて
いる。
栽培方式は土耕(冬季休眠栽培)とロックウール栽培(周年栽培)の両方式が見られる。ロック
ウール栽培の始まりは昭和 62 年寒河江市である。当初は高木産業のパーパスロックウール栽培シス
テムが導入された。その後、エアリッチカンエキのシステムが導入、県内では主流となっている。
庄内は平成 8年、旧八幡町にエアリッチカンエキが導入されたのが初めになる。ロックウール栽培
は基本的に冬季も生産することから、雇用を前提とした経営が可能となった。このことから、県内
では雇用を前提とする大型経営が出現、6,000 坪を超えるいわば企業といえる形体も見られている。
一方、庄内は 1,000 坪を超える生産者が 大である。
現在栽培されている生産者は 2代目を持つところも見られる。長年の技術蓄積に加え、ヒートポ
ンプなど 新設備が平成 21 年に庄内にも導入、堅実な経営の中でも積極的な新技術導入が図られて
いる。
生産額は系統扱いが約 5,000 万円(H21)であるが、系統外も加えれば、1億以上となるだろう。
<鉢物・花壇苗>
シクラメンは昭和 50 年に三川町押切新田の菅原正紀氏が始まりである。鶴岡市の生産者と 3人で
藤島普及所の柴田稔氏が入り勉強会を重ね、彼らのつながりから同じ三川町や旧余目町、鶴岡市に
生産者が広がった。柴田氏から薦められたと語る生産者もおられた。シクラメン以外では平成初期
には西郷地区でシンビジウムの山上げ栽培も行われていた。
国際花と緑の博覧会(大阪花博)が開催されたのは、平成 2年である。これをきっかけにガーデ
ニングがブーム化、山形県内各地に花壇苗生産組織が生まれた。
松山花壇管理組合が設立されたのは平成 3年である。生産者の多い飯豊町鉢花生産組合、長井市
花き生産組合の設立も同年である。この頃、全国的に花壇苗の生産が本格化した。それ以降、松山
町以外にも、旧櫛引町、酒田市でシクラメン以外の鉢物・花壇苗の生産者が現れた。
生産額は不明であるが、三川町の生産額から推測すると、やはり、1 億円程度はあるのではないか。
なお、表 4に現在栽培されている主な品目の作型を示す。
13
(3)花き栽培における女性の活躍
花き栽培は細かな作業が多いため、女性が常に縁の下の力持ちとなって貢献してきた。外の仕事
はお父さんだが、実際の栽培に詳しいのはお母さんといった農家が珍しくなかった。
転機は直売所の開設だった。平成9年に遊佐町の「ふらっと」、櫛引に「産直 あぐり」、13 年、
鶴岡に「しゃきっと」ができると、女性が主役となる場ができた。はじめの頃は果物や野菜などが
中心だった産直だが、次第に花も売れるようになってきた。 初は“規格外商品を売る“場で、お
母さんの楽しみのように受け取られていたが、しだいに経営の一部門として定着した。お盆、彼岸
前の花市は、庄内各地の直売所で盛況に行われている。「しゃきっと」では“新鮮な花がある”と
の評判が広がり、アレンジメントの販売なども行われるようになり、リピーターが増えて注文が寄
せられるようになっている。
近年は庄内町 PR のための庄内空港飾花を女性農業者が担ったり、鶴岡では花育活動を行ったりと、
さらに活動の場を広げている。
写真6 「産直たわわ」の花市の様子 写真7 直売向け花きの栽培研修会
写真8 女性農業者作成のアレンジメントを庄内町フラワーショーで展示
14
表4 庄内の鉢物・花壇苗の作型(平成23年12月現在 生産者へのアンケート調査)月
種類 生産者名 旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
インパチェンス E氏
オステオスペルマム N氏
オダマキ S氏
カーネーション N氏
ガウラ I氏
サイネリア I氏
シーマニア Ii氏
シクラメン S氏
シクラメン I氏
シクラメン N氏
ミニシクラメン I氏
シュウメイギク N氏
スカビオサ N氏
チョコレートコスモス N氏
デージー S氏
ニチニチソウ E氏
パンジー、ビオラ Su氏
パンジーゼラニウム I氏
プレクトランサス It氏
ベゴニア(冬咲) I氏
ベゴニア Su氏
ペチュニア Su氏
ペチュニア E氏
ホクシャ I氏
ポインセチア It氏
ユーフォルビア I氏
ラベンダー S氏
播種 挿し木 仮植 定植 摘心 鉢上げ 鉢替え 出荷 冷蔵開始 入室(加温)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
株分け
苗入荷
株分け
一部6寸
15
表5
主
要品
名別
栽培
者戸
数・栽
培面
積の
推移
(単
位:戸
、a)
年
度
品
名
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
スト
ック
167
2073
258
2881
246
2910
231
3094
231
3103
204
2204
344
2965
トル
コギ
キョ
ウ92
1088
219
1930
217
1830
206
1936
197
1850
91
1059
220
1847
ユリ
類5
205
16
279
30
427
30
582
33
725
59
795
59
806
アル
スト
ロメ
リア
13
394
36
839
33
819
27
774
23
695
43
685
46
722
キク
類90
718
137
1269
139
1468
145
1588
137
1534
33
555
133
1399
バラ
160
2121
4148
4164
486
399
6166
フリ
ージ
アー
80
41
419
43
373
42
390
41
321
47
351
46
322
りん
どう
ー50
ー70
ー70
ー70
ー44
110
110
ヒマ
ワリ
22
698
43
891
72
735
71
680
62
697
165
617
178
637
ラナ
ンキ
ュラ
スー
ーー
ーー
ーー
ーー
ー24
200
21
220
ダリ
アー
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
ー
ケイ
トウ
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
プリ
ムラ
520
520
520
520
520
ーー
520
カス
ミソ
ウ16
211
34
259
26
223
20
174
18
106
16
96
27
141
スタ
ーチ
ス14
30
17
41
11
34
617
313
ーー
723
チュ
ーリ
ップ
37
13
315
315
13
ーー
13
デル
フィ
ニュ
ーム
7183
4172
9113
11
119
776
955
22
104
カー
ネー
ショ
ン8
37
14
82
14
82
10
68
11
68
ーー
748
キン
ギョ
ソウ
ーー
19
264
13
52
12
40
14
48
14
55
16
59
シン
ビジ
ウム
255
682
682
682
257
ーー
12
127
その
他切
花ー
950
27
1285
ー1275
ー1192
ー815
46
531
46
632
花木
10
2250
10
2470
22
2943
22
2880
20
1950
12
580
26
1933
苗・鉢
860
19
19
ーー
428
ーー
428
合計
463
9169
890
13386
894
13628
851
13885
813
12239
767
7892
1227
12212
注:H
14
まで
戸数
は鶴
岡地
区の
み、
面積
は庄
内全
体。
JA
、市
町村
に照
会し
、普
及課
で取
りま
とめ
たも
の
平成
16年
度平
成14年
度平
成15年
度平
成10年
度平
成11年
度平
成12年
度平
成13年
度
16
表5
続
き
主
要品
名別
栽培
者戸
数・栽
培面
積の
推移
(単
位:戸
、a)
年
度
品
名
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
スト
ック
358
2976
361
301
337
632
98419
357
237
334
43572
335
9
トル
コギ
キョ
ウ21
31787
209
1647
206
1738
214
1832
200
1574
197
1579
ユリ
類49
797
4478
938
826
3480
235
819
3782
8
アル
スト
ロメ
リア
45
730
4571
642
761
3558
335
586
3151
0
きく類
103
1138
103
109
597
1120
117
126
811
013
41105
141
1
バラ
6166
616
66
166
616
56
165
616
5
フリ
ージ
ア40
280
4226
039
260
3424
529
210
2616
2
りん
どう
38
437
438
ーー
ーー
ーー
ヒマ
ワリ
123
550
101
506
66
361
5829
548
268
4824
1
ラナ
ンキ
ュラ
ス24
215
2121
519
165
2117
522
181
1916
5
ダリ
アー
ーー
ーー
ー14
164
13
159
1115
4
ケイ
トウ
24
125
3418
333
220
3341
934
398
2932
2
プリ
ムラ
520
520
520
ーー
ーー
ーー
カス
ミソ
ウ26
134
3112
926
134
2511
923
9118
78
スタ
ーチ
ス20
124
2110
814
5314
76
17
7613
72
チュ
ーリ
ップ
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
デル
フィ
ニュ
ーム
12
8213
81
865
ーー
ーー
ーー
カー
ネー
ショ
ン5
187
26
632
ーー
ーー
ーー
キン
ギョ
ソウ
14
49
17
73
15
65
15
65
14
52
13
34
シン
ビジ
ウム
16
26
14
ーー
ーー
ーー
その
他切
花28
627
3356
726
414
103
756
79
665
77
639
花木
23
1674
35181
342
2089
46215
543
2232
45231
6
苗・鉢
430
430
430
1918
919
189
1415
8
合計
112
6115
3611
3811
480
107
3118
5912
0712
880
110
0124
4912
6112
193
平成
17
年度
平成
18年
度平
成19年
度平
成20年
度平
成21年
度平
成22年
度
17
(4)地域別での主な品目
表 6から、地域別の主な品目の生産状況が読み取れるので、ここでは、詳述しない。
内陸地域では、産地が特定の地域に集中している例が多い。寒河江市三泉、山形市高瀬のきく、
寒河江市高屋のばら、東根市の敬翁桜、山辺町作谷沢、山形市蔵王のりんどう、山形市東金井のフ
リージア、新庄市昭和のトルコぎきょうと、枚挙にいとまがない。鉢物・花壇苗も地域集中がある。
飯豊町、長井市の鉢物・花壇苗産地がそうだ。
一方、庄内は内陸と異なり生産者が散在していた。特定地域に集中しているのは、三川町の鉢物、
昭和 48 年 30 名で産声をあげた旧余目町の大和園芸組合を覚えるのみである。
昭和 53 年設立の庄内花き生産者組合(庄内花き生産者組合連合会の前身)も各JAに花き部会な
るものはなく、散在している生産者が個人ごとに参加した組織である。これは、短時間で広範囲に
情報が伝わる内陸と異なる庄内稲作文化・伝統が背景にあろう。
このことは、有利な品目となれば、急激に生産が増える庄内産地の特徴も説明できる。
庄内一円で生産されている品目はストック、トルコぎきょう、ゆり、宿根かすみそうがあげられ
る。一方、ひまわり、けいとうはほとんどが砂丘地での生産である。これは、砂丘地が品質面、作
業面で有利なためである。アルストロメリア、ラナンキュラス(要確認)、デルフィニウムは土畑
よりも砂丘地で多く作られている。園芸の歴史が土畑よりも長いことや、稲作の競合など種々の理
由によるものであろう。
啓翁桜はかつて砂丘地にも栽培が見られたが、現在はほとんどが山間部である。風のあるところ
が枝の締まりや病害発生が少ない点で有利に働くこともあろう。だが、樹勢コントロールしやすい
有利な点もある。砂丘地でのリバイバルを願うものである。
18
表6
庄内
地域
の花
き生
産戸
数及
び面
積(平
成22年
)
区分
種類
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
戸数
面積
切花
きく類
輪菊
(露地
)0
0
輪菊
(ハウ
ス)
16
542
648
スプ
レイ
ぎく
10
206
10131
446
457
12
773
26
210
40
531
小ぎ
く9
100
250
26
403
222
437
881
210
114
25
10
110
66
832
スト
ック
(ス
タン
ダー
ド)
50
354
210
26
28
53
621
739
313
25
531
17
73
73
295
918
225
1,4
73
(ス
プレ
イ)
76
924
14
422
320
30
206
762
644
15
520
12
69
77
475
25
136
247
1,9
87
トル
コぎ
きょ
う17
106
325
213
46
583
738
318
820
422
763
69
539
31
152
197
1,5
79
アル
ストロ
メリア
620
02
922
300
11
31
510
ゆり
類(新
鉄砲
ゆり
)2
73
55
12
(H
B他
)7
224
1265
312
18
298
317
32
816
フリ
ージ
ア2
15
212
12
529
スタ
ーチ
ス7
27
338
13
24
13
72
宿根
カス
ミソウ
426
112
13
27
12
13
825
18
78
ケイ
トウ
28
320
12
29
322
きん
ぎょ
そう
10
29
23
12
13
34
ひま
わり
15
81
12
12
18
93
25
17
15
13
735
110
48
243
ダリ
ア11
154
11
154
ラナ
ンキ
ュラス
16
150
315
19
165
ばら
283
118
226
141
6168
その
他切
花20
210
110
625
28
259
25
213
439
328
318
12
730
77
639
枝物
花木
779
04
300
1334
10
385
2150
2150
110
19
297
46
2,4
16
鉢物
シク
ラメ
ン3
341
25
459
鉢物
120
不明
不明
334
454
花壇
苗不
明不
明不
明不
明6
456
45
不明
不明
645
645
277
3,6
88
24748
17
151
8370
524
275
3,4
16
48502
24
336
25
222
930
10
54
38
257
53
332
264
1,755
77
426
1,1
54
12,3
11
普及
課調
査(J
Aか
らの
聞き
取り
、J
Aで
取り
扱っ
てい
ない
もの
は市
町村
等に
照会
して
取り
まと
め)
合計
立川
地域
新余
目
合計
櫛引
地域
朝日
地域
温海
地域
三川
地域
JA
庄内
たが
わJA
あま
るめ
酒田
地域
遊佐
地域
八幡
地域
松山
地域
平田
地域
鶴岡
地域
藤島
地域
羽黒
地域
JA
そで
うら
・J
A庄
内み
どり
JA
庄内
みど
りJA
鶴岡
鉢物
・苗
物
農協
地域
名
19
Ⅱ 庄内の花きの流通の実態
畑作営農だより 44 号(昭和 58 年度山形県砂丘地農業試験場協力会発行)に、過去の流通の記載
があるので、抜粋する。
「昭和 30 年代、チューリップ球根販売を除けば、生産者から消費者あるいは小売商(花屋)に直接
販売するいわゆる直売方式であった。その後、昭和 43 年頃から少人数による組織的な積極栽培が始ま
り、小売商が直接生産者へ出向いて買い付けるなどの動きが見られたが、基本的にはやはり直売方式
であった。昭和 47 年頃からは、庄内各地に生産者が増加し、品目も生産量も飛躍的に増加してきた。
この時期から遅らばせながら市場出荷の気運が盛り上がり、品質や産地体制を世に問うようになった
ようである。」
その後を見ると、昭和 49 年、三川町に公設庄内青果市場開設、当時、花屋を回って相対販売で残っ
たものを市場に運ぶようになっている。昭和 53 年には庄内花き生産者組合が発足、翌年から庄内経済
連で取り扱いが始まった。当時の荷受市場数は東京 4社、仙花、庄内青果の 6社であり、スタート時
は品目がストックと枝物、金額は 3,321 千円であった。
昭和 56 年には山形生花地方卸売市場庄内分場が開設、市場出荷が拡大していった。
平成初めは埼玉県長井が中継地点であり、ここで分荷し、東京各市場に運んでいた。しかし、相対
取り引きでは早い時間の着荷が求められ、平成 5 年、その対応から市場直送体系が始まった。この頃、
内陸に先駆け、冷蔵輸送も実施されている。
図3 庄内JAの地域別花き販売割合
3%
18%
11%
3%
44%
21%
65%関東
東北
近畿
北海道
その他
東京都中央卸売市場
その他関東
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(1) 切花(平成 22 年度)の流通状況
<市場>
全農山形において、切花出荷は花き市場を中心に 53 社と取引を行っており、庄内では主に 31 社
に出荷されている。オークネットなど庄内だけの取引市場もある。内陸たけの出荷市場もある。福
岡県花き(約 1億 5千万円)名港フラワーブリッジ(約 2.5 千万円)等がそうだ。
地域別出荷割合は東京都が中心で、44%となっており、関東も含めると 65%になる。次に多いの
は東北で 18%を占め、仙花、庄内生花を中心に出荷されている。内陸地方と異なり山形生花は少な
い。次に多いのは近畿地域であり、鶴見花きを中心に出荷されている(図 3)。全農山形全体では、
も多いのは関東が 63%、次いで東北 17%であり、庄内と変わらない(詳細データ省略)。
東京都には、現在中央卸売市場が 5市場ある。大田、板橋、世田谷、北足立、葛西の市場である。
花き卸売会社として 8社が入り、切花、鉢物等の取扱いを行っている。庄内はそのうち鉢物専門の東
京砧花き(世田谷市場)を除く 7社に出荷を行っている。これは、内陸も同様である。
その中で、庄内がもっとも多く取引しているのは太田花き(3.0 億円)である。次いでFAJ(フ
ラワーオークションジャパン)(1.6 億円)、世田谷花き(1.3 億円)の順となる。この順位は全農
山形全体でも同様である。
太田花きはJA鶴岡を除く庄内4JAで取引がある。JA鶴岡はFAJが中心であり、市場の住み
分けが行われている。鶴岡を除く庄内4JAは太田市場が中心ではあるが 1番手、あるいは 2番手が
重なっておらず、市場住み分けがなされている(表 5)。
写真 9,10 JA庄内たがわでのストック目揃い会
(写真提供 庄内総合支庁 農業技術普及課)
<輸送・出荷形態>
輸送形態として、湿式、乾式がある。各市場で指導があり、それに応じた輸送形態をとっており、
湿式においても種々の方式があり、JAによって採用している方式は異なっている。例えば、JA鶴
岡では平成 13 年度からFAJ向けに湿式のエルフシステムを採用しているが、JA庄内みどりでは
大田花き向けが中心となり、エルフ方式以外の輸送形態となっている。
箱については、平成 5年、庄内花き生産者組合連合会において「庄内の四季彩(いろどり)」の名
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称が印刷された白箱を使うことで統一した。現在はJA鶴岡が別箱となっており、また、他JAも白
箱のほか、茶箱も使っている。
輸送については、主に(株)全農ライフサポートが受け持っている。例えば東京方面出荷では遊佐
(9~10 時頃)から鶴岡(3時頃)に回って集荷される。冷蔵車は 5~10 月に使用されている。
手数料は市場 9.5~10%、JA手数料は各単協で異なり、全農 0.5(地場)~1.5%である。
<市場以外の流通>
昔ながらのふれ売りや、系統出荷者であっても実需者からの直接注文に応じた流通が見られる。さ
らに、 近、直売場への持ち込みが増加しており、下位品の救済に大きく貢献している。
インターネットの発達から販売ネット直販(例:敬翁桜)の流通形態もみられるのが 近の動きで
あろうか。このように、流通チャネルは市場を柱にしながらも、新しい流通形態を加え、多様化して
表5 平成22年度の庄内JA別の主な出荷先市場(全農山形取扱い5百万円以上)地方名 市場名 鶴岡 庄内たがわ あまるめ 庄内みどり そでうら北海道 札幌花き ③ 〇東北 仙花 ③ 〇 〇
山形生花 〇 〇庄内生花 〇インターファーム 〇 ②秋田生花 〇青森生花 〇 〇
関東 太田花き ② ① ① ①FAJ ① 〇世田谷花き ③ 〇第一花き ② 〇東京フラワーポート 〇 ② 〇 〇東日本板橋花き 〇 〇オークネット ②南関東 〇 〇 〇埼玉園芸 〇青梅インターフローラ 〇 〇 〇宇都宮花き 〇立川生花 〇 〇川越花き 〇TFC多摩生花 〇 〇水戸中央花き 〇北関東花き 〇フロリード 〇 〇横浜花き園芸 〇
中部 浜松生花 〇長野中央園芸 〇 〇
関西 鶴見花き ① 〇なにわ花いちば 〇梅田生花 〇姫路生花 ③京都生花 〇 〇 〇
注)①~③は販売金額の大きい上位3市場の順位を表す。
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いるように見受けられる。
(2) 鉢物・花壇苗
鉢物・花壇苗は主に、市場が回しているトラックでの集荷が主である。取扱い市場は地場である庄
内生花、山形生花のほか、仙台、福島、盛岡、秋田、新潟の近隣市場、東京(FAJなど)や埼玉の
関東市場となっている。このほかに、地元直売場を中心に出荷されている生産者やJAを利用してい
る生産者もいる。
(3)市場の動き・要望
全農山形発行「庄内の農家の友」に市場側から庄内切り花産地へのメッセージが掲載された。長期
予約相対に答える戦略を産地が組めるか、これが課題だ。
30 年近く前、小野恵一先輩とストックの産地、信州松本平に勉強しに行ったことがある。そこでは、
ストック部会長が色バランス、出荷時期を考え、部会員に有無をいわさず品種別に播種時期を割り当
てていた。「君たちは無理だろう」。部会長の挑発的な言葉と顔を思い出す。前提として出荷時期の
コントロールが必要だ。我々もコントロール技術開発のあがきを心してこれからも続けるつもりだ。
(文責 寒山ほか)
写真 鉢物もアイデア次第。癒し系こけ玉モスビー君(ネットでも入手可)。
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全農山形発刊「庄内農家の友」平成 24 年 1 月号から引用