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学会抄録 東海地方会第139回例会(昭和57年3月130,名市大) D・ペニシラミンによってHerpetlform pemphigus を生じたPSSの1例 柴田正之(名大),伊藤不二夫 (同理学部) 39歳主婦. PSSの診断にてD-penicillamine内服開 始3ヵ月後より,大腿に癈庫性の紅斑,水庖が出現し, 庖疹状皮膚炎様であった.組織:表皮有煉層中層に水庖 を形成し,周囲にeosinophilic spongiosisがみられた. 蛍光抗体直接法で,表皮細胞間にlgGを認め,間接法 40倍陽性であった. 大野盛秀(東海逓信):既往歴に腎機能障害があった が,D-ペニシラミンを使用したのは,使用開始時の腎機 能検査が正常範囲であったからか? PSSの皮膚症状は 改善したのか. 柴田正之:腎機能障害はなかった.D-ペニシラミン治 療前に検査をし,腎機能障害がないことを確かめて, D・ペニシラミンを投与した.D・ペニシラミンによって皮 膚の硬化は少し軽快し,中止によって悪化したと,患者 の訴えがあった. リボスタマイシンによる薬疹 遠藤信夫,安田雅則, 加藤文明,大谷道廣(県立岐阜) 60歳男.初診は昭55年6月8日.耳鼻科にてAM・P C,ホモクロルシクリジルの投薬,リボスタマイシソの 注射をうけた所,露出部を中心に,浮腫性禰漫性紅斑が 出現.検査にて光線過敏はなかった.皮内反応及びパッ チテストにて,リボスタマイシンが遅延反応陽性であっ た.パッチテスト部の生検では,湿疹,皮膚炎の所見で あった. 大野盛秀(東海逓信):皮疹は露出部に限局していた のか.ヒビテこ/グルコネート(原液)で強陽性とあった が,正常人でのデータは如何か.リボスターマイシソ以外 の薬剤で,皮内あるいはパッチテスト陽性に出ていたの は,どう解釈されたのか. 遠藤信夫(県立岐阜):1回目は,耳鼻科で治療に用 いられた全ての薬剤を検査し,2回目は,以前に使用し 1099 た事のない薬剤も含め,種々のアミノダリコシド系抗生 物質の検査を行なった. pmrltlc urticarlal papules and plaques of pregnancy 宇仁田美恵子,小西清隆,日高義子(三 重大) 23歳,妊娠33週の初産婦.5週間前より前胸部に激し い癈岸を伴う茸麻疹様丘疹および紅斑が出現し,躯幹・ 四肢に拡大.ステロイド外用でI週間後皮疹消失.満期 正常分娩で新生児に皮疹認めず.組織:真皮乳頭浮腫と 血管周囲性リンパ球組織球浸潤を認め,直接蛍光抗体法 にて血管壁にC3沈着.血中HCG正常,C3軽度低下. 大野盛秀(東海逓信):診断は,臨床像で行なうの か. 宇仁田美恵子:臨床像で診断を行なったが,現在のと ころ, PUPPPとしての報告例が少なく,今後の症例を 重ねることにより,1つのentityとして確立されて行 くと思われる, 水野 信行(名市大):① 莉麻疹様皮疹の持続は? 皮疹は本当に,暮麻疹か? C3の沈着は,Ⅲ型 アレルギーでもよいのでは? 宇仁田美恵子:① 1時間程度続くので,壽麻疹とは 異る.② Ieukocytoclastic vasculitisの像,および免疫 グロブリソの沈着を認めていないが,関与する可能性は あるかもしれない. 浜口次生(三重大):皮疹そのものは,膨疹というよ りも,募麻疹様の丘疹というべきものである. 臨床像及び組織像の一部で扁平苔癖様皮疹を呈した SLEの1例 長谷川澄子(三重大) 66歳女.顔面,躯幹,上肢に定型的DLE皮疹とは異 る,一見扁平苔癖様の,やや浸潤のある,一部では鱗屑 を伴う皮疹が多発し,又, SLEとしての臨床症状は軽 く,治療によく反応しており,最近の概念であるsuba- cute cutaneous lupus erythematosusに相当し,特に発疹 の上ではpapulosquamous type にあてはまると思われ る.

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  • 学会抄録

    東海地方会第139回例会(昭和57年3月130,名市大)

     D・ペニシラミンによってHerpetlform pemphigus

    を生じたPSSの1例 柴田正之(名大),伊藤不二夫

     (同理学部)

     39歳主婦. PSSの診断にてD-penicillamine内服開

    始3ヵ月後より,大腿に癈庫性の紅斑,水庖が出現し,

    庖疹状皮膚炎様であった.組織:表皮有煉層中層に水庖

    を形成し,周囲にeosinophilic spongiosisがみられた.

    蛍光抗体直接法で,表皮細胞間にlgGを認め,間接法

    40倍陽性であった.

     討 論

     大野盛秀(東海逓信):既往歴に腎機能障害があった

    が,D-ペニシラミンを使用したのは,使用開始時の腎機

    能検査が正常範囲であったからか? PSSの皮膚症状は

    改善したのか.

     柴田正之:腎機能障害はなかった.D-ペニシラミン治

    療前に検査をし,腎機能障害がないことを確かめて,

    D・ペニシラミンを投与した.D・ペニシラミンによって皮

    膚の硬化は少し軽快し,中止によって悪化したと,患者

    の訴えがあった.

     リボスタマイシンによる薬疹 遠藤信夫,安田雅則,

    加藤文明,大谷道廣(県立岐阜)

     60歳男.初診は昭55年6月8日.耳鼻科にてAM・P

    C,ホモクロルシクリジルの投薬,リボスタマイシソの

    注射をうけた所,露出部を中心に,浮腫性禰漫性紅斑が

    出現.検査にて光線過敏はなかった.皮内反応及びパッ

    チテストにて,リボスタマイシンが遅延反応陽性であっ

    た.パッチテスト部の生検では,湿疹,皮膚炎の所見で

    あった.

     討 論

     大野盛秀(東海逓信):皮疹は露出部に限局していた

    のか.ヒビテこ/グルコネート(原液)で強陽性とあった

    が,正常人でのデータは如何か.リボスターマイシソ以外

    の薬剤で,皮内あるいはパッチテスト陽性に出ていたの

    は,どう解釈されたのか.

     遠藤信夫(県立岐阜):1回目は,耳鼻科で治療に用

    いられた全ての薬剤を検査し,2回目は,以前に使用し

    1099

    た事のない薬剤も含め,種々のアミノダリコシド系抗生

    物質の検査を行なった.

     pmrltlc urticarlal papules and plaques of

    pregnancy 宇仁田美恵子,小西清隆,日高義子(三

    重大)

     23歳,妊娠33週の初産婦.5週間前より前胸部に激し

    い癈岸を伴う茸麻疹様丘疹および紅斑が出現し,躯幹・

    四肢に拡大.ステロイド外用でI週間後皮疹消失.満期

    正常分娩で新生児に皮疹認めず.組織:真皮乳頭浮腫と

    血管周囲性リンパ球組織球浸潤を認め,直接蛍光抗体法

    にて血管壁にC3沈着.血中HCG正常,C3軽度低下.

     討 論

     大野盛秀(東海逓信):診断は,臨床像で行なうの

    か.

     宇仁田美恵子:臨床像で診断を行なったが,現在のと

    ころ, PUPPPとしての報告例が少なく,今後の症例を

    重ねることにより,1つのentityとして確立されて行

    くと思われる,

     水野 信行(名市大):① 莉麻疹様皮疹の持続は?

     皮疹は本当に,暮麻疹か? ② C3の沈着は,Ⅲ型

    アレルギーでもよいのでは?

     宇仁田美恵子:① 1時間程度続くので,壽麻疹とは

    異る.② Ieukocytoclastic vasculitisの像,および免疫

    グロブリソの沈着を認めていないが,関与する可能性は

    あるかもしれない.

     浜口次生(三重大):皮疹そのものは,膨疹というよ

    りも,募麻疹様の丘疹というべきものである.

     臨床像及び組織像の一部で扁平苔癖様皮疹を呈した

    SLEの1例 長谷川澄子(三重大)

     66歳女.顔面,躯幹,上肢に定型的DLE皮疹とは異

    る,一見扁平苔癖様の,やや浸潤のある,一部では鱗屑

    を伴う皮疹が多発し,又, SLEとしての臨床症状は軽

    く,治療によく反応しており,最近の概念であるsuba-

    cute cutaneous lupus erythematosusに相当し,特に発疹

    の上ではpapulosquamous type にあてはまると思われ

    る.

  • 1100 学 会 抄 録

     討 論

     北島康雄(岐阜大):DLE, SLEの組織像で,扁平苔

    癖により近い所見は,どれか?

     長谷川澄子:lichen planus様の組織像を呈している

    のは,口腔内白斑である.しかし,これも典型的なもの

    ではなく,あくまでも, lichen planusに類似している

    といった意味である.さらに,前腕の皮疹の組織像も

    LE様ではあるが,詳しくみると,穎粒層の肥厚等の

    LEには,あわない所見もある.

     臼田俊和(中京)z Sjogren 症候群の精査は行なって

    いるか. SS-A, SS-B抗体が陽性だが,その基準血清は

    どこのものをお使いか.抗SS-B抗体が陽性なので,

    Sjogren症候群がおそらく存在していると思うが.

     長谷川澄子:口唇生検,耳下腺造影,シーマーテスト

    を行なったが,異常所見はなかった.しかし,ロ唇生検

    の所見は,うまく唾液腺がきれていなかった.p-ズベ

    ソガール試験は行なっていない.シェーグレンとの関係

    は,今後検討する.

     安江 隆(名大):① Gilliamらがsubacute lupus

    erythematosusとしている症例のなかには, ARAの診断

    基準をみたしていない症例が多く,シェーグレソ症候群

    合併例もある。HLAは, B8, DRW3のことが多いの

    で,この皮疹がシェーグレソ症候群のものか, SLEに

    よるものかには,まだ問題があると思われる.② 扁平

    苔癖様組織反応を示すSLEの特徴は?

     抗SS-B抗体は,やはりシェーグレソ症候群に特異性

    の高い抗体と思う.

     長谷川澄子:① ARAの診断基準をみたさない場合

    のSCLEとの関係はよくわからないが,本例では,診

    断基準をみたすSLEである. Sjogren synd. との合併

    については今後検討する.② SCLEの皮疹が,扁平

    苔癖様の臨床像,組織像をとりやすいのは,免疫ダロブ

    リソのD・E junction への沈着などに関係あると思り.

     浜口次生(三重大):我々がいわんとするのは,普通

    にいうDLE (fixed, scarring)の皮疹とは異なる皮疹

    で, SLEであることの確かな症例であって, Sjogrenと

    SLEとの関係という根本的な問題には,お答えできな

    χ,ヽ.

     Sjogren症候群の3例 臼田俊和,青山 久,井沢

    洋平(中京)

     ① 38歳女.食思不良,体重著減,関節痛を主訴.顔

    面に肝斑様色素沈着が認められた.② 28歳女.レイノ

    ー現象,関節痛を主訴. SLE様症状を認めるが, ARA

    は3項目しか満足しない.淡い顔面紅斑が認められた.

    ③ 57歳女.全身の関節痛と発熱を主訴.自己抗体は陰

    性.丘疹状紅斑と結節性紅斑様皮疹が認められた.

     討 論

     浜口=次生(三重大):Sjogrenをentityとする根拠は

    何か.膠原病における位置についてどうお考えか.

     臼田俊和:現時点では,外分泌腺の慢性炎症性疾患

    で,自己免疫性の疾患と考えられているSjogren症候

    群とSLEとの異同は,難しい問題であるが,主要病変

    臓器の異なりや,臨床的予後はSjogrenの方がSLEよ

    り良いなど,一応異なった疾患概念とした方が妥当と考

    えている.

     安江 隆(名大):浜口先生の御意見を更に極端にす

    ると,外分泌腺を選択的に侵すエリテマトーデスが,シ

    ェーグレソ症候群とも言えるということになると思わ

    れ, ARAの診断基準を満たさぬSLEの最終診断を何

    によって下すかという問題が,その基盤にあると思う.

    SLEの原因も,シェーグレソ症候群のそれもいまだ不

    明で,免疫反応の遺伝学的素因の違いが両者の差で,原

    因は同じであるといり可能性もあることを考えておく必

    要があると思う.

     relapsing polychondritis の1例 杉本憲治(三

    重大),太田千鶴子(同第二内科)

     62歳男.眼痛,鼻閉,発熱を主訴として来院.入院中

    両側耳介の発赤,有痛性腫脹を来した.耳介軟骨生検の

    組織像は多数の多核白血球浸潤,軟骨細胞の変性,融解

    を伴う一軟骨炎を呈し, alcian blue 染色で染色性の低下

    を認める.眼科的にはブドウ膜炎,強膜炎がある.ステ

    ロイド内服後cauliflower様の耳介虚脱, saddle noseを

    呈した.

     eruptive vellus hair cysts ? 池谷敏彦,水野栄

    二(愛知医大)

     10歳女児.2歳頃より前胸部,四肢に軽度疸埠を伴う

    丘疹ど点状青色斑多発.丘疹は直径1~2mmで常色ま

    たは紅褐色で,頭部に灰白色内容を透視できるもの,臍

    高状を呈するものもみられる.組織:破壊された壁と周

    辺に一異物肉芽反応を認め,内容にコイル状軟毛と層状角

    質塊を容れる拡大した毛包様であった.

     討 論

     柳原 誠(岐阜大):強度の毛包破壊と異物性の肉芽

    腫をみるが,最終的には,毛包は破壊され, alopeciaの

    状態となるのか.

     池谷敏彦:表皮に穿孔したcystsは,軽い癩痕を残し

  • 東海地方会第139回例会

    て治ると思われるので,その部の毛包は閉鎖すると思

    う.

     両側性太田母斑のi例 松崎ひろみ,志賀暁子,矢崎

    喜朔(名保衛大)

     45歳女.21歳頃より両上頬部に,対称性に青褐色米粒

    大色素斑が,散在性に出現.44歳より両側額部に,対称

    性に同色網状色素斑が出現.最近まで新生.生検で,表

    皮基底層にメラニン穎粒増加と,真皮中層を中心に,メ

    ラニソ穎粒を含む紡錘型細胞散在を認む.電顕で成熟メ

    ラノサイトを同定.以上より両側性太田母斑と診断.

     陰部に発生した表在性基底細胞腫 中島幹夫,安江厚

    子(聖霊)

     64歳女.10ヵ月前より左大陰唇上部の皮疹が拡大.

    2.5cm X 1.5cmの網目状の黒色斑で,一部に硬結節を

    触れた.全摘出術を行ない,病理組織で,表在性基底細

    胞腫の像を認めた.

     討 論

     柳原 誠(岐阜大):いわゆるcicatrical BCE との

    鑑別は.

     吉川邦彦(名市大):組織像からsuperficial type で

    ないと思う.

     基底細胞腫の1例 蔡 紹嘉(名大)

     68歳女.左前額部に結節潰瘍型基底細胞腫と思われる

    皮疹があり,左側頭部には脂漏性角化症,ボーエン病が

    疑われる碗豆大の淡褐色局面が2個あり,帽針頭大の丘

    疹が散在する.生検の結果,前者は充実型,後2者は表

    在型基底細胞腫であった.このよう,な合併例は,比較的

    まれと思われるので,報告した.

     毛包様分化を示したcarcinomaの1例 森 也寸

    史,北島康雄,浦田裕次,森 俊二(岐阜大),国藤梅乃

     (郡上八幡)

     83歳男.現病歴:昭55年2月,右耳介上部に丘疹生

    じ,治療に抵抗し拡大.昭57年1月当科初診.現症:右

    耳介上部に潰瘍,隆起性病変を認める.組織:毛包系へ

    の分化を示すcarcinoma・転移は発見されない.治療は

    デルモパンstep IV 1 回線量400R総計10,320Rを照射

    し,腫瘍は消失し,現在経過を観察中.

     左第1指爪甲下の悪性黒色腫 桑名隆一郎(名大)

     62歳女.左第1指指尖の腫脹と爪変形を主訴として来

    院,術中施行したゲフリールにより, amelanotic mel-

    anomaと診断した.手根中手骨関節より指切断,肢高

    リソパ節外側群廓清後, DTIC,ビソクリスチソ, ACNU

    による化学療法, BCG生菌による免疫療法施行.術後

    1101

    6ヵ月の現在,経過良好である.

     討 論

     吉川邦彦(名市大):acral lentiginousmelanoma と

    は考えられたいか.

     桑名隆一郎:斑状の浸潤がrete ridge 3個以内の浸

    潤しかなく,その部にjunctional activityが認められな

    かったため,NMと診断した.手掌,足底に生ずるもの

    のうち,75%がALMであり,他はNMである.

     胃癌の皮膚転移 森 重彰(名大)

     皮膚生検よりBorrmannⅣ型胃癌が判明した1例

    で,背部皮下結節,陰茎皮膚(真皮内)の両者より,印

    環細胞が散見される腫瘍組織を証明した.胃癌の皮膚転

    移は,3%以下とされており,部位的にも,腹部,前胸

    部が多いのに対し,この症例は珍らしい1例と思われ

    る.

     pyode万r’achancrlformis が先行したHodgkin

    病の1例 中野洋子,水谷 仁,浜口次生(三重大),片

    岡吉貴(同第二内科),田中治久(四日市市)

     29歳弧左下顎部に抹指頭大の潰瘍を伴う硬結性紅斑

    性局面を生じ,黄色ブ菌陽性,組織学的に非特異性肉芽

    腫性炎症像を示した.抗生剤にて数週後に癩痕治癒した

    が,4年後にホジキソ病発病(混合型, stage皿SEB),

    化学療法中に顔面,躯幹に同様皮疹の再発をみた.下瘤

    様膿皮症とホジキソ病の関連について考察を加えた.

     juvenile xanthogi・anulc㎞ヽ:aの1例 日高義子,

    中村保夫,谷口芳記(三重大)

     16歳男.高校生.13歳時より頭部,手掌,足底を除く

    全身に孤立性の米粒大黄色丘疹と指頭大黄褐色小結節が

    播種状に出現し,17歳時には萎縮斑を残して完全に自然

    消退した.組織:炎症反応を伴う組織球の密な浸潤,及

    び黄色肉芽腫で,黄色肉芽腫部でPAS(十:y,鉄染色陽

    性物質あり.皮膚外病変はなく,各諸検査は全て正常.

     討 論

     安江 隆(名大):histiocytosis xの浸潤histiocyte

    とjuvenile xanthogranulomaの浸潤hisdocyteのorigin

    の違い,両疾患の原因の違いは? 表皮ラングルハンス

    細胞は成熟細胞であっても,ラングルハンス穎粒を有す

    ると思うか.

     日高義子:histiocytosis x の組織球との差は,ラソ

    ゲル・ヽソス穎粒の有無であるが,モの差の理由は,わか

    らない.

     吉川邦彦(名市大):内臓病変はなかったか.他の成

    人多発例での内臓病変の記載は? JXGの診断は,臨

  • 1102 学 会 抄 録

    床経過によるのか.

     日高義子:内臓病変は認めなかった.臨床像よりJXG

    と診断,

     histlocytosis x の1例 藤井初美,木村鈴代,広井

    潤(名古屋第一赤十字)

     3歳3ヵ月女児.2歳時,紫斑性丘疹,頭部脂漏性湿

    疹様皮疹,間擦疹様皮疹,肝牌腫,貧血,発熱を認め入

    院.皮膚生検にてLetterer-Siwe病と診断し, predonine,

    vinblastineにて一時軽決するも約半年後,頭部皮疹の

    再燃,頭部X線でpunched out lesionが出現.今回,

    組織学的所見が,増殖性から肉芽腫性へと変化してい

    た.

     マンソン孤虫症の1例 杉浦功入,飯田芳樹,上田

    宏(名保衛大),戸谷徹造,長瀬啓二(同寄生虫学)

     20歳女.2年前左胸部に腫瘤出現したが,消失.その

    後,昨年12月に同部に再発.病変は,硬結を伴う紅斑

    で,座作あるも疼痛なし.また,皮疹の移動もない.血

    中好酸球を含め諸検査に異常所見なし.摘出標本より,

    マソソソ孤虫と同定した.なお,既往に,蛙,蛇,鶏肉

    等の刺身を食べたことはない.

     討 論

     水野信行(名市大):スシの白身として雷魚を使うこ

    とがある,ブロイラリュワトリも危険か.

     上田 宏:高校生頃まで,近所の川で泳いでいたとの

    ことで,毛ミジソコの摂取によると考えたい.しかし,I

    鶏肉には虫が居るとのことで,生の摂取は注意すべきで

    ある.

     自傷性皮膚障害 清水正之,谷口芳記(三重大)

     18歳女.2年前より時々みられる意識消失,四肢関節

    の伸展又は屈曲性硬直のため内科入院.皮膚科では10歳

    時より両手関節部の痴皮性小結節多数をみとめ,治療し

    ていたが,1ヵ月前より,肛門部出血,廉爛,さらに突

    然顔面,特に下口唇に小指頭大紫斑多数出現,同時期に

    右上腕数カ所に針の跡をみとめ,炎症性腫脹をみた.

     討 論

     吉川邦彦(名市大):神経症状はヒステリー性のもの

    か.患者には,どのように対処しておられるか.

     清水正之:患者の環境の変化で,皮疹の軽快をみてい

    る.

     梅毒の治療指針としてのTPHA-IgM抗体について

     大谷道廣,加藤文明,安田雅則,遠藤信夫(県立岐

    阜),富沢孝之,佐藤 隆,萱嶋好子,久保恵美子(富士

    臓器中研)

     現行の梅毒血清反応では,治療の可否のみならず治癒

    判定も困難で,しかも潜伏梅毒という屈辱的な病名を

    生涯背負わされている.そこで, sephacryl S-300で19S

    (IgM)と7S CIgG)に分画し, TPHA抗体価を2年間

    55例について測定し,顕症2,潜伏4,計6例にTPHA-

    lgM抗体を検出し,PC治療によりlgMは消失,完

    治した.

     討 論

     三田一幸(名大):lgM抗体が消失したら菌が消失

    したと判断してよいとする根拠は何か.

     大谷道廣:TPHA-IgMが存在する場合のみ治療の必

    要があると考えられる.

     サラソピリンが奏効したSenear-Usher症候群の1

    例 加藤優,鹿野由起子,福嶋信夫,米田和史(岐阜

    大),常田順子(養老中央)

     77歳女.昭56年9月より背部中央に紅斑を生じ掻破に

    より廉爛を形成.初診昭57年1月.現症:背背部に大小

    の紅斑,一部に脂漏性の痴皮と小水厄ニコルスキー陰

    性. Tzanckテスト陽性.組織:穎粒層と有鈎層上部に

    鯨融解.一部表皮内に好酸球の浸潤.免疫組織で有辣層

    下部にIgG, C3の沈着あり.サラソピリソに著効.

     当科における軟レ線治療 山田晃司,浦田裕次,森也

    寸志,三和敏夫,森 俊二(岐阜大)

     当科で,過去6年間にデルモパソ療法を行なった症例

    は計103例あり,うち99例が悪性ないし良性腫瘍で全体

    の96%と殆どを占め,他に: Hailey-Hailey病と脱毛照

    射が2例ずつある.腫瘍の内訳は,前癌症が23例,上皮

    性悪性腫瘍30例,開葉系腫瘍9例,悪性黒色腫8例,お

    よび良性腫瘍29例で,夫々の照射条件と成績について述

    べた.

     討 論

     清水正之(三重大)zデルモパソ適応として,口唇

    部,あるいは手術的に変形をみるおそれのあるものなど

    に使用しているのか.

     森 俊二(岐阜大):手術にするか,軟レ線にするか

    の決定は,患者の年齢,合併症,部位,希望などの他

    に,当科の入院事情など,種々の点を考慮して決めてい

    る.

  •          北陸地方会第298回例会

    北陸地方会第298回例会(昭和57年1月24日,金沢市)

     先天性示指爪甲欠損症 石崎 宏(金沢大)

     23歳女.生下時より左示指爪に部分的な欠損あり.爪

    は二分され,尺骨側の部分は幅6mm。椀骨側の部分は

    痕跡的.爪の伸びる速度は他指の爪と変わらず,指の運

    動制限はない.X線像では示指骨に異常はない.右示指

    の爪は正常.

     討 論

     福代良一(金沢医大):他の指の爪には出ないか.示

    指爪のみとして,何か特別の理由があるのか.

     金原武司(金沢医大):趾爪には生じないか.

     林 正幸(富山市民):形成外科的治療はあるか.

     石崎 宏:原因は不明.胎生期の何らかの障害と考え

    られる.治療として植爪術が行なわれる.

     柳下邦男(金沢市):足趾の爪を手に移植する試みは

    あるが,成功率はあまり良くない.

     壊疸性膿皮症 大島茂人,加世多秀範,加納千栄美

     (福井県立),嵯峨 孝(同内科)

     54歳男.大動脈炎症候群,胃潰瘍,陳旧性肺結核で治

    療中.昭56年3月頃から右下腿に痴皮・膿瘍よりなる紅

    斑性局面出現.徐々に増悪し結節・痩孔を伴うようにな

    り,手掌大まで拡大してきた. CRP陽性,血沈促進が

    みられたが白血球,免疫グロブリン等は正常・細菌培養

    で黄色ブドウ球菌(十).組織:真皮全層に好中球より

    なる膿瘍とその周りに血管周囲性のリンパ球浸潤.抗生

    剤は効果なく,ステロイド剤が著効した.

     討 論

     松木誠一(富山市民):(1)自己免疫に関する検査

    成績は如何?(2)潰瘍性大腸炎の合併は如何?

     谷口 滋(金沢大):針反応の結果は如何?

     大島茂人:(1)自己免疫に関する検査は不検.(2)

    潰瘍性大腸炎の症状はなかった. (3)針反応は未施

    行.

     イントラリピットが奏効した腸性肢端皮膚炎様症状

    谷口 滋(金沢大),鈴木祐吉,舟橋 隆,宮丸直子(同

    小児科)

     生後23日男児.生後3日目に先天性空腸閉鎖のため手

    術,術後静脈栄養施行後14日目頃に発症.口唇,舌に発

    赤腫脹,頬,陰部,股部,指に境界比較的明瞭な潮紅,

    落屑があり.総ビリルビン16.3mg/dl,総コレステp ―

    ル67mg/dl,燐脂質105mg/dI,血清亜鉛156μg/dl・イソト

    1103

    ラリピッド投与4日後に皮疹は消失.

     討 論

     松本鐙一(富山市民):亜鉛欠乏によるものとの間に

    臨床的相違があるか.

     谷口 滋:差はない.

     Kaposi水痘様発疹症を併発したDarler病の1例

    林 正幸,松本諒一(富山市民)

     29歳女. 5,6歳頃よりほぼ全身に対側性褐色丘疹

     (十),夏季増悪.他方,初診の5日前より発熱と顔面

    の水庖の多発を認め,疼痛(十),眼下,顎下リンパ節

    腫脹(十)となる.丘疹の組織像はDarier病に一致.

    後者の水庖はTzanckテスト陽性であった.約2週間で

    水庖は治癒し,そのあと顔面のダリエー丘疹はかなり

    好転した.なお患者の父方祖父,母および2人の兄にも

    Darier病を認め,兄の一人はKaposi水痘様発疹症を経

    験している.

     討 論

     田辺俊英(金沢大):血中抗体価の動きはどうか?

     林 正幸:発症1週後の単純庖疹ウイルス抗体価(C

    F)は32倍,3ヵ月後64倍.

     皮膚癌を多発した疵贅様表皮発育異常症の1例 米沢

    郁雄,大桑 隆(福井赤十字)

     40歳女.家系に同症なく,血族結婚なし.10歳頃よ

    り,手背・躯幹上部・頚項部・下肢に扁平穏贅様皮疹が

    持続している.後頭部に直径約2cmの脂腺への分化を

    示す基底細胞癌病巣,下腿伸側に直径8mmの浸潤性基

    底細胞応手背に直径5mmのボーエソ病様病巣を認め

    る.いずれの病巣も,主病変部に接した表皮内に澄明変

    性・空胞変性を伴う.ツベルクリン反応陽性, DNCB皮

    膚感作成立,免疫グロブリン値正常.

     討 論

     福代良一(金沢医大);本症では悪性腫瘍の多発は当

    り前ではないか. BCCの併発は多いかどうか.本例で

    は皮膚モのものが異常のようにみえたが,どうか.

     米沢郁雄:(1)皮膚悪性腫瘍多発の報告は多い.

     (2)成書にはSCCが最も多く,頻度は低いがBCC,

    Bowen病がこれに次ぐとある.(3)扁平抱贅様皮疹

    の疎な部位では無疹部は正常にみえた.異常にみえる皮

    膚面には穏贅が密集・融合していた.

     金原武司(金沢医大):ブレオマイシソ使用後,皮疹

  • 1104 学 会 抄 録

    に変化がみられたか.

     米沢郁雄:術後ブレオマイシンを計105mg投与した

    が,把贅様皮疹に変化を認めなかった.しかし,投与後,

    悪性化の疑で採取した丘疹の組織像ではdyskeratotic

    cenを多数認めた.

     石崎 宏(金沢大):パピl=・-マ・ウイルスに対して

    のみ先天的に細胞性免疫能が低下しているとは考えられ

    ないか.

     米沢郁雄z本症患者ではin vivo, in vitro testともに

    細胞免疫能全体の低下を認めたという報告が多い.液性

    免疫は一般に保たれているが,把贅ウイルスに対する抗

    体価か一般の比贅患者より低いという報告はある.

     Micro万sporum万canls感染症熊谷武夫(高岡市民)

     症例1.6歳男児.1週間前捨猫と遊び5日前から顔・

    躯幹・四肢に小指頭大~蚕豆大の紅斑と環状皮疹が多

    発.病巣よりM. canis を分離.症例2. 32歳主婦(症

    例1の母).症例Iに1日おくれて頚・前胸部に紅斑と

    環状皮疹.培養でM. canis(十).猫は不検.当科では

    昭51年秋以降今日までに本例を含めて13例のM. canis

    感染症をみた.病型はいずれも体部白癖.親と子の家族

    内発生は2組.

     討 論

     福代良一(金沢医大):M, canis感染の特徴は炎症

    の強い環状皮疹の多発である.

     福居憲和(富山医薬大)zネコなど動物の治療も一緒

    にすることは多いのか.  ヶ

     熊谷武夫:犬・猫の診療はまだ一度もしていない.患

    者の家族の協力が得られないためもある.

     eruptive vellus hair cyst 小西可南,宮人宏之,

    福居憲和(富山医薬大)

     25歳男.半年前より胸部から上腹部及び右上腕部に膿

    庖様の紅色丘疹性皮疹が多発.次第に浸潤性帯び増大し

    て茶褐色の小結節性皮疹となる.3~7mmの赤~茶褐色

    の充実性に触れる丘疹性,小結節性皮疹が一部臍席性痴

    皮性の皮疹を含めて多数散在.組織:真皮中層に層状角

    化性物質と軟毛を含む上皮嚢腫を認め,毛包の連続,軟

    毛の壁貫通像,脂腺,起毛筋の付着を見る.特異的な臨

    床所見,組織像より表題の診断にした.

     討 論

     金原武司(金沢医大):皮疹の経過は如何?

     小西可南:自然消退もありうる.嚢腫内容の排出後臍

    高性丘疹の持続する場合,切除術後の再発など経過は

    種々である.

     福居憲和:自然消失は異物反応後のelimination現象

    によるといわれる.

     福代良一:皮疹出現に何かきっかけはなかったか.

     小西可南:特に誘因なく発症する.恐らく小児期より

    毛包異常があり,何かのきっかけで発症するものと考え

    られる.

     基底細胞癌とBovven病を発生したporokeratosis

    の1例 石倉多美子(公立石川中央),畷 稀吉(金沢

    市)

     54歳男.23歳時包茎手術;25歳時淋疾.39歳頃より陰

    茎包皮に痴皮,徐々に局面形成,最近は原爛(十).現

    症:陰茎背面包皮の冠状溝寄りに30×22mm,淡紅色,

    不整形局面(十),辺縁は褐色調ですこし隆起,中心部は

    やや萎縮性,面内に角化性丘疹数個(十).組織:局面

    の辺縁と角化性丘疹に一致してcornoid lamella(十);

    表皮は不規則肥厚,細胞配列の乱れ・核分裂像・個細胞

    角化等(十);また局面の辺縁の一部に表在型BCCの

    像(十).切除・縫縮,4ヵ月後再発の兆(-).

     討 論

     福代良一(金沢医大):臨床像では辺縁隆起し面内は

    萎縮状で, Bowen病としては異様である.組織像で基

    底層は保持されていたか.

     金原武司(金沢医大)=臨床像と組織像から汗孔角化

    症の悪性化は考えられたいか.

     石倉多美子:不全角化を含む角柱がみられるが,通常

    のporokeratosisにみられるcornoid lamellaよりも大形

    であると思う.

     ”1万ulticentrlcplgmented Bowenタs disease 岡

    田芳子(公立加賀中央)

     27歳女.約2ヵ月前より外陰部に蝉みのある扁平丘疹

    が多発.組織:Bowen病に一致.電気凝固,ブレオ軟

    膏外用を試みるもあまり効果なし.丘疹の1個に対し液

    体窒素による冷凍凝固を5回行なったところ,他の放置

    していた丘疹も同時に消退した,

     討 論

     諸橋正昭(富山医薬大):本症のウイルスは文献的に

    どの位の割合で病巣にみられているか.パポバ・ウイノレ

    ス以外にどんなものがあるか.

     岡田芳子:ウイルスか同定されている例は少ないが,

    パポバ・ウイルス以外に単純庖疹ウイルスという人もあ

    る.

     clear ceU型汗管腫 舘 憚二,藤田幸雄(藤田)

     32歳女.6年前より両側上下眼険皮膚にほぼ対側性

  • 北陸地方会第298回例会

    に粟粒大~半米粒大,正常皮膚色~淡紅褐色丘疹.約70

    個.尿糖(-).組織像:真皮上~中層にclear cenか

    らなる索状または塊状の胞巣が多数あり,内部に小管腔

    もある. clear cellの胞体はPAS(十)(ジアスターゼ

    消化性),アルシャソ青(-),管腔内はPAS(十)(ジ

    アスターゼ抵抗性)ノアルシャソ青(十)(ヒアルロニダ

    ーゼ抵抗性)であった.

     討 論

     松本諒一(富山市民):ステロイド内服で消失した

    由,そのメカニズムは如何.

     舘 憚二:理由は不明。

     eccrlne ductadenoma 藤村啓子(金沢大)

     73歳女.4~5年前右鼻翼に結節が生じ,徐々に増

    大.14×10mm,表面平滑,淡褐紅色,弾性硬の皮内結

    節.自覚症状はない.組織像=真皮中・下層に線維性被

    膜に囲まれた腫瘍塊あり,表皮との連絡はない.2層の

    壁細胞からなる管腔構造が主体で,内腔に面する細胞に

    クチクラ様物あり.所々充実性増殖を示す.間質は粘液

    変性を示す.

     汗器官腫瘍 加納千栄美,高野道夫(金沢医大),亀

    井康二(同形成外科)

     34歳女.3年前に発生.鼻の左側で鼻翼の近くに大豆

    大,半球状隆起の腫瘍の表面に光沢(+)で水っぽくみ

    え,一部に青味が透見.組織:表皮との連絡なく,大小

    の管腔と充実性細胞巣からなる腫瘍,同質の一部は粘液

    腫様・軟骨様.電顕:管腔内側の細胞には短微絨毛・ミ

    トコンドリア・グリコゲソ穎粒等豊富,外側の細胞には

    張原線維とミトコソドリアが豊富. eccrine ductadenoma

    と思われる.

     討 論

     福代良一:本腫瘍には次のような臨床的特徴があり,

    大体の診断がつく.すなわち. (I)半球状隆起, C2)

    表面に光沢あり,多少の凹凸もみられる,(3)水っぽ

    く一部に青味が透見, (4)鼻又は近くに発生.以上.

     nevus Ilpomatosus cutaneus superficialls /j,

    田島陽子,須藤成章,池田和夫(富山医薬大)

     34歳女.発生時期は不明.2歳頃には右腰部に皮膚常

    色隆起性皮疹が存在した,3年程前より黄色味を帯び隆

    起を増しときに掠みを伴った.初診時,大豆大までの淡

    黄色弾性軟の小腫瘤が多数集設し一部融合した.少数黒

    色面飽を伴う.組織:真皮乳頭下層から深層に成熟脂肪

    細胞が集塊を成し多数存在し,小血管,附属器周囲を取

    り囲む所見も認めた.真皮上層血管周囲性に軽度単核球

    1105

    の浸潤をみた.

     angiokeratoma naeviforme 真下昌己,貝原弘章

     (金沢医大),北山和夫(輪島市)

     23歳女.動脈管開存症あり.皮疹は生来性,徐々に増

    加・拡大,時に面皮をつけ,剥がすと出血した.現症:

    左旅寫から乳房外側にかけて,暗紅~紫紅色の小豆大ま

    での比較的軟かい小結節が集合~融合,中心部に黒褐色

    痴皮(十).組織:角質軽度肥厚,表皮非薄,乳頭層拡

    大,そこの血管は拡張・充血;真皮深層から皮下にかけ

    て処々に拡張・充血した血管が多数集合状にある;炎症

    性細胞浸潤なし.

     追 加

     仲村洋一,安井裕子(厚生連高岡):1例を追加す

    る.11歳女児.生来,左頚部に赤色斑あり.蚕豆大の少

    し隆起した紫紅色の局面が2個あり,表面少し穎粒状.

    組織像:ほぼ定型的.ただし皮下にも多数の血管増殖が

    あった.

     米沢郁雄(福井赤十字):血管腫(特に壁のうすい,

    拡張した小血管の増生している例)とリンパ管腫の組織

    学的鑑別のポイントは何か.

     真下昌己:管腔内の赤血球の量では区別出来ないと思

    う.管壁細胞の微細構造で区別出来るのではないか.

     福代良一(金沢医大):小脈管の新生・増殖した処を

    みて小管腔内に赤血球が多少でもあれば,リンパ管でな

    く,血管とみなしてよいと思う.

     リンパ管腫 高野道夫,沢田光夫(金沢医大)

     10歳男児.2歳時,左乳房部皮下の腫瘍を某病院で悪

    性黒色腫の疑で摘除,左旅寫リンパ節郭清術も受けた

     (但,当時の標本をみると,皮下組織内に拡張した脈管

    の集まりのみ).4歳時,左の肢路と肩甲部に皮疹,徐々

    に増加.現症:左肢寓に大豆大丘疹2個,周囲に小水庖

    様皮疹数個;左肩に廉爛・徊皮・小水包様皮疹を伴った

    帯状紅斑.組織像:角層軽度肥厚,一部に錯角化,真皮

    乳頭拡大,そこに拡張した脈管腔,内容は概ね空虚,皮

    下にも大小多数の拡張リンパ管・

     討 論

     舘 憚二:治療はどうしたか.

     高野道夫:服高の腫瘍は切除,他は電気焼却した.

     福代良一(金沢医大):本例のように,表在性リン

    パ管腫にはしばしば深部にもリンパ管腫がみられる.

    angiokeratoma neviforme にもそういう上下の関係があ

    りうるように思われる.

  • 1106 学 会 抄 録

    北陸地方会第299回例会(昭和57年3月21日,金沢医大)

     アトピー性皮膚炎と扁平苔癖の合併例 池田和夫(富

    山医薬大)

     12歳男児.幼児期よりアトピー性皮膚炎あり,3歳頃

    より気管支喘息,アレルギー性鼻炎発症.昭56年10月20

    日,喘息発作のためテオナP,ベネトリソ,イソタール

    開始.1ヵ月後より躯幹に扁平苔癖様皮疹出現し,全身

    に拡大.アトピー性皮膚炎は,扁平苔癖の出現時は軽快.

    テオナPの内服テストにて全身の癈掠感と鱗屑を伴う紅

    斑と扁平苔癖の悪化が出現した.

     討 論

     福代良一(金沢医大):(1)扁平苔癖の皮疹とアト

    ピーの皮疹が逆の消長を示したようであるが,理由は

    何か.(2)テオフィリソによる扁平苔癖は文献にある

    か.

     池田和夫: (1)テオナP,ベネトリソなどの内服に

    より,表皮細胞内のcAMP増加のため扁平苔癖が出現

    したものと考える.(2)テオナPによる扁平苔癖様薬

    疹の報告はない.

     松本諒一(富山市民):扁平苔癖型皮疹が最も著明な

    時期にcAMPの値が低く出ているのは何故か.

     池田和夫:血清cAMPは扁平苔癖の増悪期に高値を

    示す傾向かある.

     分枝状皮斑 増田博司,田辺俊英(金沢大),西部武

    嗣(金沢市)

     23歳女.3ヵ月前前腕と足背に分枝状皮斑,下腿に点

    状出血を伴う貨幣大までの紅斑が出現.便潜血,血尿,

    蛋白尿,神経炎,心血管系異常は認められず.組織:前

    腕の分枝状皮斑では真皮下層の比較的大きい血管の壁に

    フィブリソ沈着,周囲に小円形細胞浸潤あり.下腿の紅

    斑では真皮上~中層の小血管の周囲に小円形細胞浸潤あ

    り.免疫蛍光直接法所見:血管壁にIgM, C,q, C3,フ

    ィブリノーゲンの沈着あり,経過:コルチコステロイド

    の投与後点状出血は消退,分枝状皮斑は残存.

     討 論

     石倉多美子(石川中央):他臓器の病変は?

     増田博司:なかった.

     庖疹状膿痴疹とおもわれた1例 大桑 隆,米沢郁雄

     (福井赤十字)

     33歳女.妊娠9ヵ月目の昭56年7月上旬より,四肢項

    部背部に膿庖を伴う赤褐色の紅斑出現し,癈捺感著しく

    当科受診.全身症状を欠く.下腿患部より採取した組織

    標木ではKogoj海綿状膿庖が主体であり,庖疹状膿痴

    疹と診断したPUVA並びにステl=1イド外用療法施行

    し, PUVAが優位に効果が認められ,出産後,急速に

    症状改善した.

     討 論

     松木錬一(富山市民):(1)本疾患は下腹部や蝋径

    部に好発とされるが,木例にはなかったか. (2)過去

    に乾癖様皮疹の発現はなかったか. (3)軽快後乾癖様

    局面を残さなかったか.

     大桑 隆:略治以後来院せず,経過不明.

     福代良一(金沢医大):妊娠は今回か初めてか.

     大桑 隆:妊娠の既往は不明,出産は初回.

     graft versus host disease 光戸 勇,高田 実

     (金沢大),大竹茂樹,服部絢一,金沢大骨髄移植チーム

     (同第3内科)

     症例1. 33歳男.慢性骨髄性白血病治療のため骨髄移

    植後22日目に手,前腕,前胸,大腿に紅斑が出現.コル

    チコステロイド大量投与により軽快.組織像は表皮下層

    の細胞間浮腫,少数の変性表皮細胞,リソ1パ球走入を示

    した.症例2. 46歳男.急性骨髄芽球性白血病治療のた

    め骨髄移植後32日日に手,前腕,頚部,躯幹に紅斑と小

    水庖が出現.一週後に自然治癒.組織像は前例とほぼ同

    様であった.

     新生児の蜂寞織炎 熊谷武夫(高岡市民),和田直樹

     (同小児科)

     生後28日目の女児.満期安産,生下時体重3,065g.初

    診の4日前から抱くと啼泣する.背の発赤・発熱・嘔吐

    のため小児科受診.麻捧性イレウスとして胃ソソデによ

    る吸引療法をうけた.現症:背の中央と愕部に溺漫性の

    発赤・腫脹・局所熱感・波動あり.膿培養でコアグラー

    ゼ(十)の黄色ブ菌を検出.組織像:真皮全層~皮下に

    好中球を主とした顕著な細胞浸潤.治療:マーキシソ,

    ケフレックス使用.背の潰瘍は手術的に縫縮した.

     討 論

     福代良一(金沢医大):① 菌の侵入門戸はどこか,

    ② 7-グi=zブリソが低かったようであるが,その意味は

    如何?治癒後の値は如何?

     熊谷武夫:① 細菌の侵入門戸は不明.臍も異常な

    く,外傷もなかった.② 7-グl=・プリソは入院中は5%

  • 北陸地方会第299回例会

    位,退院後は不検.

     松本諒一(富山市民)ご線溶系の検査をしたか.

     熊谷武夫:不検.

     Trlchophyton rubmm万によるblack dot ring・

    wor一犬 仲村洋一,安井裕子(厚生連高岡),金原武司

     (金沢医大)

     74歳男.20年来関節リウマチあり,ステロイド関節内

    注射を頻回に受ける.1年前より指趾爪白癖,2ヵ月前

    より顔・前頭部に小膿庖を生ず.後頭・頭頂は毛生粗で

    black dot 多数.Wood(-),毛内外寄生.体に鱗屑と

    一部に紅斑あり,汎発性自癖の状態.各所より同じ真菌

    を培養.T, rubrum・ と同定.ツ反(-),ト反(-).グ

    リセオフルビン5OOmg/0,約3週間で,爪以外は治癒.

     討 論

     米沢郁雄(福井赤十字)z① black dot ringworm例

    に地理的偏りがあるか.② T. rubrura が時に毛内性寄

    生を示すのは,如何なる契機によるか.

     福代良一(金沢医大):① black dot の組織像では

    毛包か屈曲し,毛がとぐろを巻いているのが特徴的であ

    る.それと菌の毛内寄生とど0ような関係にあるか判ら

    ない.② 上口唇の小結節の生検をしたか.どこかに肉

    芽腫はなかったか.③ 米沢博士に:(イ)T. rubrum

    は毛外寄生が普通であるが,稀に純粋な毛内寄生もあ

    りうるとされる. (fi) black dot は九州地方に多いよ

    うであるが,それは原因菌であるT. violaceum の分布

    との関係が考えられる.

     仲村洋一:口囲に毛唐の状態はあったが,他部位に肉

    芽腫を思わすものはなかった.

     若年性黄色肉芽腫(単発例)真下昌己,貝原弘章(金

    沢医大)

     5歳女児.2歳頃発生,次第に隆起.現症:項部に饅

    頭状隆起の大豆大,淡黄色小結節あり,弾性硬,表面に,

    光沢(十),毛生(-).他に結節なし,組織像:表皮非

    薄化,表皮直下から真皮深部まで密な細胞浸潤,主に組

    織球と泡沫細胞, Touton型巨細胞も混在.切除後8ヵ

    月再発なし.

     討 論

     米沢郁雄:わが国では単発例の報告が欧米にくらべて

    少ないとされているが,実際に患者数も少ないのか.

     真下昌己・:本症の本邦報告例は昨年末までに186例,

    うち単発例は68例(約37%).最近5年間では,多発例

    よりも単発例の報告がより多い感じである.

     高田 実(金沢大)s金沢大学の本症30例の集計では

    1107

    やはり多発例の方が多かったが,単発例の割合は従来の

    本邦統計よりもより多かった.

     大槻典男(舞鶴共済):血清脂質値は如何?

     真下昌己:① 血清脂質は不検.② 単発例では血清

    脂質異常の報告はなかったと思う.

     高田 実;以前,血清リポ蛋白異常を合併した本症

     (多発例)を報告したことがある.

     仮性黒色表皮腫(姉妹例)武原秀明(金沢大),中林

    肇(同第2内科)

     症例1. U歳,二卵性双生児の妹.約3年前よりてん

    かんの治療中.約3年前より急に太り,身長149cm,体

    重85kg・項,頚,臍囲に対側性に色素沈着と乳頭状変化

    がある.症例2.症例1の姉.約5年前よりてんかん

    の治療中.身長148cm,体重55kg・皮膚症状は症例1と

    ほぽ同様.2例とも組織像は定型的.T。 T4,血漿テス

    トステロン,尿中エストロゲソ, 17-Ks, 17-OHCS, 50g

    GTT, LH-RH 試験, TRH-プl=1ラクチy試験,及びコ

    ーチソール・血糖. ACTH・HGHのインスリン感性試

    験はいずれ亀正常範囲内であった.

     討 論

     金原武司(金沢医大);肥満の原因は?

     武原秀明:食餌性と考える.

     悪性リンパ腫を合併した特異な配列を示す老人性疵贅

     林 正幸,松本錬一(富山市民),高橋洋一(同内科)

     83歳女.約30年前より躯幹に褐色丘疹(十).最近(こ

    こ1~2年?)急にこの皮疹が増加増大した.組織像は

    老人性抱贅に一致した.一方,最近右胸部に皮内結節と

    右頚部リンパ節腫大を来し,その組織像は悪性リンパ腫

    であったLeser-Trelat徴候の1例と考えられるが腹部

    の老人性抱贅の丘疹があたかも臍上方から泥を投げて飛

    沫が壁に叩きつけられたかのような配列をとっている点

    が特異であった.

     討 論

     金原武司(金沢医大):抱贅に岸みはなかったか.

     林 正幸:なかった.

     乳房Paget病の2例 吉田正美,鍛冶友昭(富山県

    立中央)

     症例1. 63歳女.半年前より左乳頭に廉爛.症例2.

    47歳女.3年前より右乳頭・乳最に難治性の湿疹様病変

    あり.いずれも生検で組織像はPaget病に定型的.乳

    房切断術および飯高リンパ節廓清術施行.症例1は真皮

    中層に面飽癌(十),症例2は下床に癌(-).

     討 論

  • 1108 学 会 抄 録

     石崎 宏(金沢大):連続切片を調べたか.

     吉田正美:できる限り検索したが,下床に乳癌はみら

    れなかった.

     松本諒一(富山市民):本疾患のoriginは比較的浅

    い乳管上皮にあると考えられる.ここから発生したPa・

    get細胞は乳管内で面趙癌の形をとり,まず上方表皮の

    方へ拡大していく.従って下床の乳腺の方に癌形成のな

    い時期は充分あり得ると思う.

     福代良一:導管の途中から発生したPagetは導管を

    伝わってより深部へも進む筈である.

     血管脂肪腫 高野道夫(金沢医大),高野宗一(金沢

    市)

     48歳男.8年前より躯幹と四肢に発生.現症:小豆大

    ~蚕豆大,弾性やや硬,表面平滑,境界比較的明瞭,可

    動性の皮下結節約60個が躯幹と四肢にほぼ左右対側性に

    分布している.少数の結節は皮膚面よりぼんやり隆起.

    組織像:腫瘍は皮下に在り,横に楕円形,結合織性被膜

    に包まれ,成熟脂肪細胞と増殖・拡張した血管より成

    る.

     来状型母斑細胞母斑(Mlescher)?斎藤利子,高野

    道夫(金沢医大),岡田忠彦(同形成外科)

     6歳女児.1歳ごろ発生.鼻背の左側に18×12×4mm,

    卵形,漆黒,表面に多少の凹凸と乾いた鱗屑あり,そこ

    に毛が多い.組織:表皮に多少の偽癌性増殖あり,真皮

    上層から皮下組織にかけて淡褐色・微細な色素穎粒を持

    った細胞が存在,細胞が類円形にみえる処と紡錘形で束

    状をなす処が混在,電顕像:メラノソームはあまり大き

    くなく,かつ大きさやや不揃,数もそれほど多くない.

    細胞質内に細線維(十),小器官はごくわずか.切除7

    週後に再発(-).

     討 論

     福代良一:① 本例で一番困ったのは青色母斑との区

    別であった.しかし,電顕像で区別出来たと思う.②

    Miescherの原著を読むと,束状型としたものがどの程

    度確固たるentityであるか疑問のように思われる.

     Albright's hereditary osteodystrophy 福居憲

    和(富山医薬大),荻野茂継,水村泰治(同第2内科)

     27歳男.3歳,18歳時,てんかん様発作あり.小学生

    頃から頭頂部に骨様硬の小結節あり.2年前より躯幹,

    腕に同様の小結節数個生ず.昨年,筋硬直性発作あり.

    小結節の組織像は骨組織塊よりなる.身長148.8cm,短

    躯幹で円形顔貌,両手中手骨,左第4趾中足骨の短縮あ

    り.空隙歯列,白内障をみる.脳基底核部及び全身軟部

    組織に石灰化像あり. Trousseau現象陽性.血清Ca の

    低下,Pの上昇, Ellsworth-Howard試験で約8倍.

     第8回国際人獣真菌学会のこと 福代良一(金沢医

    大)

     本学会は1982年2月8~12日,ニュージラソドのPal-

    merston North という小都市に在るMasse・y大学で開催

    された.参加者は約270名,うち日本からは約50名で最

    も多かった.取上げられた題目は臨床・病理・opportu-

    nism・疫学・免疫・治療・その他真菌症全般に亘り,シ

    ンポジウム・ラウンドテーブル・ポスターの3形式で行

    なわれた,総会で役員交代があり(新会長はDr. Levi-

    ne),次回は1985年Atlantaと決定,学会賞はStockdale

    及びKwon-Chung両女史に授与された

    山口地方会第67回例会【昭和56年12月】3日,小郡町)

     膿庖性乾癖及び高度の糖尿病を続発し. レチノイドが

    有効であった関節症性乾癖の1例 西岡和恵(山口大)

     51歳男.全身の典型的乾癖皮疹及び手指関節の多発

    性有痛性腫脹を認め,昭52年より関節症性乾癖として

    MTX,ボルタレソ内服,ステロイド外用により加療中.

    昭55年11月全身倦怠,ロ渇及び体重減少を訴え,血糖値

    888mg/dl.糖尿病の併発としてイソシュリソでコントロ

    ール中.昭56年6月38°Cの発熱とともに全身の紅斑増悪

    し膿庖多発,レチノイド(R. 10-9359)投与により皮疹

    は著明に軽減,関節痛は持続.HLA-B27(-).

     掌趙膿庖症のリポ蛋白異常の面からの検討 永井純子

    (山口大)

     掌鶏膿庖症の病因には病巣感染説や金属アレルギー説

    など種々あるが,これをリポ蛋白異常の面から検討した

    報告はみられないので,本症の10余例について脂質化学

    分析とともにリポ蛋白のPAGディスク電気泳動を行な

    ってみた.

     丹毒の6例 師井庸夫(宇部市)

     最近丹毒が急増し,今夏(昭56年5月末~9月)に6例

    を経験した.症例.50歳女(左頬~左耳介).症例2.

  • 山口地方会第67回例会

    17歳女(右下腿).症例3. 53歳男(左頬).症例4.2

    歳男(左下腿).症例5.9歳男(左前肢).症例6. 28

    歳女(腰部).いずれもミノマイシソかビクシリソ7日

    ~10日の内服で加療したが,2例目は20日後に再発した

    のでその後22日間内服させた.なお1例日と2例目はミ

    ノマイシソ内服9日目より全身に中毒疹様の発疹が発生

    し,薬疹を疑ったが,2例目は内服テストで薬疹ではな

    いことを確めた.

     痔痩の4例 内平孝雄(県立中央)

     症例1.5歳男.肛囲3時方向の小豆大丘疹.1歳時

    同部に肛囲膿瘍.症例2. 29歳男.会陰部の痩孔.痩孔

    形成4ヵ月前,同部に圧痛を伴う指頭大皮下硬結.症例

    3. 29歳女,4年来,外陰部に痩孔.症例4. 48歳女.

    6ヵ月前より腎部に痩孔.いずれも手術療法施行.肛門

    から遠位の部に痩孔形成をみた場合でも,痔崖を考慮す

    べきことを述べた.4ヵ月男児の抗生物質投与による保

    存的療法例追加.

     poststerold panniculitlsの1例 原 曜子(山口

    大)

     11歳女児.ネフg-ゼ症候群のため小児科入院中.約

    6ヵ月間ステロイド内服治療施行.ステロイド内服中止

    後2日日より躯幹上部,下顎部に表面発赤を伴った有痛

    性硬結が多発.組織:脂肪織炎及び脂肪細胞内の針状結

    晶様構造が認められた.約1週後に硬結は縮小し始め

    た.3週後には,ネ症候群増悪のためプレドユン再投与を

    始めたところ,皮疹は消失した.

     lupus erythematosus profu:ndusの1例浪花志

    郎(山口大)

     44歳女lupus erythematosus profundus.若干の文献的

    考察とともに報告.27歳頃より,明らかなSLEやDLE

    を伴うことなく,頭部,顔面,頚部,上肢に軽度陥凹性

    の癩痕性局面の多発をみた.前頭骨直上に巨大な層状の

    石灰化巣がみられ,鼻根部では膿排出を伴い,この石灰

    化巣に連続する痩孔を合併していた.

     DLEと類天庖庸との合併例? 白石達雄,原 紀正,

    浪花志郎(山口大)

     65歳男.初診1年前より顔面,上肢に浸潤性色素脱出

    斑及び米粒大から栂指頭大までの疵状角化性丘疹が出

    現.また初診1ヵ月前より躯幹,四肢に緊満性水庖を伴

    う浮腫性紅斑が出現.水庖の生検では表皮下水庖,色素

    脱出斑の生検では表皮の萎縮,液状変性,色素失調およ

    び血管周囲性細胞浸潤.蛍光抗体直接法で無疹部,皮疹

    部ともに基底膜部にIgG, IgA, C3, C,qの沈着が認め

    1109

    られた.抗上皮基底膜抗体陽性DDSが水庖に有効.

     水庖性疾患の蛍光抗体法による検討 原 紀正,白石

    達雄(山口大)

     パラフィソ包埋切片の蛍光抗体法により,天庖厨群10

    例,類天庖唐7例,庖疹状皮膚炎5例,妊娠性庖疹,

    transient acantholytic dermatosis およびeosinophi】ic

    spongiosisを呈した表皮内水庖症の各1例,計25例の水

    庖性疾患の免疫グロブリソについて観察した所見を報告

    した.類天庖厨は7例仝例に,天庖厨群は10例中6例

    に,庖疹状皮膚炎は5例中3例に,その他の疾患では各

    症例すべてに疾患特異的な陽性所見が認められた.

     clear十cellを伴ったsquam万〇us cell carclno万ma

    の1例 山本俊比古,山口康則(山口大)

     83歳女.右耳介外側にI5mmx24mm,扁平隆起性,淡

    紅色,弾性硬の腫瘤.表面に潰瘍形成.組織:゛空胞状

    あるいは泡沫状の胞体を有し,核小体の明瞭な異型性の

    強い腫瘍細胞が索状に増殖, SudanⅢ染色で弱陽性,電

    顕:デスモソーム,トノフィラメントを有した細胞で,

    脂質滴は認められなかった.

     表皮および毛嚢の画像解析による検討 越智敬三(山

    口大)

     2種類のcomputer systemを使って,正常被覆表皮

    および正常外毛鞘中間部上皮のHE染色組織像の計測

    学的検討を行なった.被覆表皮のうち真皮乳頭頂より上

    部の細胞では,それらの細胞および核は角層に近づくに

    っれてしだいに,① 細長くなること,② 傾きが角層

    に平行になること,また中間部の細胞は角層に近づくに

    つれてしだいに大きくなり,それにつれて核細胞面積比

    はしだいに小さくなることが統計学的に明らかにされ

    た.

     足躊あるいは爪床の前癌性黒子例 西山和光(山口

    大)

     症例1. 31歳女.1年前より右Ⅳ指爪に色素線条が生

    じ徐々に幅が増大.症例2. 37歳女.1年前より左足底

    に黒色斑が生じ徐々に拡大.前者は爪母を含めて切除,

    後者は3cm離して切除.いずれも軽度の異型性を有し

    たメラノサイトの表皮内増殖像.

     melanotic whitlowの1例 山田健一(山口大)

     65歳女.約1年前左第2指爪甲に縦走する黒褐色色素

    斑に気づいた.この斑は漸次拡大約半年前には爪甲が脱

    落し易出血性の潰瘍を形成.初診時周囲に黒色斑を伴

    う黒褐色腫瘤・あり,親指大の所属随高リンパ節1個を触

    知.所属リソパ節廓清を含めMP jointより切断し術後

  • 1110 学 会 抄 録

    DTIC I クール施行.病型はPSM・細胞型epithelioid

    type・ pTNM 分類pT.N^M,

     エックリン汗腺の増生を伴った血管腫の1例 今村隆

    志(山口大)

     14歳女.3歳頃からみられた左小指背部の紅色皮疹

    に,1年前より圧痛を来した.局所性多汗なし.初診

    時,皮疹の一部に小紅斑を伴った指頭大の軽度隆起性,

    ほぽ常色の結節.組織:真皮中・深層に,ほぼ正常のエ

    ックリソ汗腺の増生があり脂肪織中には血管腫巣を合

    併. eccrine angiomatous hamartoma と考えた.

     Schwannomaの1例 久本和夫,山口康則(山口

    大)

     64歳男.左上腕内側に55×52×llmmおよび48×32

    ×3mmのいずれも半球状に隆起した腫瘤を各1個認め

    た.正常色,表面平滑,弾性硬,境界比較的明瞭,下床

    との癒着(十),疼痛(-),神経症状(-).手術的切

    除に際し正中神経との連続を認めた.組織:Antoni type

    Aおよびtype B の混在したschwannoma・電顕的には,

    光顕上のVerocay body はシュワソ細胞の細胞質突起の

    重層banded structureやaxonは認められなかった.

     爪下外骨腫のi例 内平孝雄(県立中央),江間 昭

     (防府市)

     24歳男.3年前より左I趾爪尖下に腫瘤.次第に大き

    さを増し,小豆大となる.圧痛あり.約10年前同爪部に

    外傷.X線所見:腹背方向像で末節骨末端内側の骨内に

    楕円形の帽針頭大骨陰影像.側面像で趾尖に向けてオノ

    状の骨陰影像.抜爪後腫瘍骨を骨鋏で切断,切断面を骨

    ノミ’で削った.組織:中心の骨組織を肉芽腫性結合織が

    包囲し,その結合織は真皮に移行している.軟骨帽は欠

    如.

     myxoid Uposarcoma の2例(附)電顕的観察

    木下敬介(長門市)     十

     症例1. 49歳女.左大腿内側~会陰部の径約7cmの

    半球状皮下腫瘤で,初診の朝,気づいて来院.摘出2年

    4ヵ月後現在再発なし.症例2. 31歳男.左大腿伸側の

    筋肉内の多発腫瘤で,約2年6ヵ月前発症に気づき,こ

    れまで2回の摘出術を受けたがいずれも再発.3回目の

    摘出術5ヵ月後現在再発なし.2例とも病理組織学的

    にmyxoid liposarcoma・電顕的観察で,脂質滴あるいは

    basal lamina が見出されたことにより,脂肪細胞由来

    の腫瘍と確診.

     チオラによる薬疹の|例 倉田三保子(山口大)

     78歳女.10年前よりチオラを内服.40日前より扁平苔

    癖型皮疹が四肢,顔面に出現.貼布試験,内服試験は

    いずれも陽性.本症の本邦報告例22例につき検討した結

    果,皮疹出現までの投薬期間は1~2週間で,播種状紅

    斑丘疹型が多くみ.られた.貼布試験, skin window test

    の陽性率が高く内服試験では少量の薬剤内服後数時間で

    再現されることから本症の発症にはアレルギー性機序の

    関与が考えられた.

     金製剤による薬疹の教室例 内田 寛,西岡和恵(山

    口大)

     最近6年間に経験された金製剤による薬疹の自験1例

    を含む7教室例について報告した.病型は,紅皮症型4

    例,多型惨出性紅斑型1例,紅皮症型に扁平苔癖型を伴

    ったもの1例,毛孔性紅色枇糖疹型1例であった.検査

    ではpatchテストおよびscratchテストは7例全てに

    陰性skin windowテストは,4例中1例に陽性,リン

    パ球幼若化テストは,4例中1例に陽性であった.

     LAIテストによる薬剤アレルギーの検討 岡崎泰典,

    浪花志郎(山口大)

     LAIテスト(leukocyte adherence inhibition test)は,

    細胞性免疫能の一つの指標とされ悪性腫瘍例に関する成

    績が報告されている.我々はこれを,薬剤アレルギーの

    診断に応用出来ないかを知るため検討している.今回は

    13例の薬疹例についてLAIテストを行ない3例(23.1

    %)に陽性の結果を得た,内訳は多型惨出性紅斑型2

    例,紅皮症型1例で,多型溶出性紅斑型では施行例3例

    中2例に陽性であった.

    山口地方会第68回例会(昭和57年2月14日,山口大)

     薬疹例の貼布試験 安野秀敏(山口大)

     最近7年間に当科にて経験された薬疹の確診例のうち

    貼布試験が施行された103例中21例(20%)に同試験が

    陽性であった.皮疹型別では,播種状紅斑丘疹型にては

    51例巾15例(29%)に,苔癖型にては11例中2例(18%)

    に,紅皮症型にては12例中2例に,多型紅斑型では9

  • 山口地方会第68回例会

    例中1例に陽性であった.薬剤別では,ペニシリソに

    て17例中9例(53%),チオラにて9例中5例(55%),

    アミノグリコシド4例中2例に陽性であるのが顕著であ

    った.

     toxic epidermal necrolysis 原 紀正(山口大)

     最近経験した2例を含むTEN教室例10例について検

    討した.年齢では18~85歳で70歳以上が半数,性別では

    男4例,女6例.原因は薬剤性と確診したものが1例

     (Chlormezanone)あった.ステロイド初期投与量はプ

    レドニン換算40~320mg.死亡率50%であり,皮疹の

    分布範囲,病理組織像および肝・腎等重要臓器への侵襲

    度は予後を反映する指標として重要と考えられた.

     herpetiform. pemphigusの1例 原 曜予(山口

    大)

     87歳女.ほぼ全身に癈掠性浮腫性環状紅斑が多発し,

    一部紅斑の辺縁では小水庖か環状に配列しジューリング

    庖疹状皮膚炎様を呈した.組織:eosinophilic spongiosis

    像を示しacantholysis ( ―).蛍光抗体法所見:直接法

    で表皮細胞間及び表皮真皮接合部にIgG, IgAの沈着.

    間接法で抗表皮細胞間抗体(-)。DDS及びヨードカリ

    は無効,ステロイドにのみ反応した.

     acute generalized pustular bacterldの1例 山

    本俊比古,山口康則(山口大),未富淑子(小野田市)

     72歳女.上気道感染に続いて,紅斑を伴った米粒大膿

    庖が全身に播腫.検査では白血球14,000/mm',好中球

    70.6%,ASL0 500単位,CRP+6.扁桃の腫大発赤を認

    めた.抗生物質投与により膿庖は約10日間で消槌.組

    織:Kogojの海綿状膿庖で,真皮に血管周囲性リンパ

    球浸潤,一部血管壁の膨化を認めた.

     皮膚筋炎教室例の検討 岡崎泰典(山口大)

     昭46~56年までの11年間に,当教室において経験した

    皮膚筋炎胞者10例について,初期像(CPKアルドラー

    ゼ等の酵素値,組織所見),治療,予後,悪性腫瘍合併

    の有無などについて検討した.

     ベーチェット病教室例 波多野 裕,山口康則(山

    口大)

     昭39年~56年までの18年間におけるベーチェット病教

    室例14例について検討した.初発症状では,口腔粘膜症

    状が14例中10例と最多で,他にCRP陽性,血沈完進,

    7-グロブリン上昇を示す症例も多くみられた.ベーチェ

    ット病の治療は確立されていないが,教室例では,種々

    の対症療法の他,エンドキサンやコルヒチソの使用が多

    く,特にエソドキサソにより完全寛解を維持している1

    nil

    症例が注目をひく.

     亜急性原発性紅皮症の疑われたi例 永井純子(山ロ

    大)

     73歳男,初診の半年前より顔面,頚部に振庫性紅色皮

    疹が出現し約1週間で紅皮症化.先行皮膚疾患や薬剤投

    与の既往はなく,内臓悪性腫瘍の合併は見出されなかっ

    たので,亜急性原発性紅皮症と診断した.副腎皮質ホル

    モソ剤の外用は無効であったため, etietinate投与を1

    日50mgより開始したところ,数日後より皮疹の改善

    を認めた,現在1日25mgで維持療法中.

     prurigo plgmentosaの1例 山口康則(山口大)

     17歳女学生.背部,両肩,乳房間部に紫褐色の樹枝状

    ないし網目`状色素斑が散在ないし集膜し,膨疹状丘疹お

    よび掻痕が散在性に混在.全身状態良好で,臨床検査成

    績で特別な異常所見なし.組織:表皮の細胞間浮腫,基

    底層液状変性,真皮上層のリンパ球を主体とする血管周

    囲性細胞浸潤および組織学的色素失調.抗ヒスタミソ剤

    あるいは副腎皮質ホルモソ剤の内服無効DDS lOOmg

    →50mg/日内服にて皮疹の新生なし.

     慢性侵蝕性膿瘍性膿皮症の1例 今村隆志(山口大)

     24歳男.約10年前より両殿部に排膿を伴う有痛性紅色

    皮疹出現.難治で軽快増悪を繰り返し,漸次拡大.初診

    時,腎部・肛囲に暗褐色色素沈着,小癩痕,面飽,二重

    面飽,硬結がみられ圧痛を伴う,分泌物・組織の菌培養

    で表皮ブ菌を分離,嫌気性菌(-),抗酸性菌(-),真

    菌(-).硬結の切除および面鮑の液体窒素凍結療法で

    治療し略治.

     Pityrosporum foUlcuUtisの8例 師井庸夫(宇

    部市)

     躯幹,該などに夏期に発生する紅色丘疹,膿庖性丘疹

    で,その雨出内容物から酵母型胞子を認めた8例につい

    て報告した.ナイスタチン内服やエソペシドクリーム外

    用,または両者の併用により2例に著効,4例に有効で

    あったが,2例には無効であった.

     vasculitis allerglca cutisの1例 内田 寛,西

    岡和恵(山口大)

     84歳女.9ヵ月前より両下腿に点状出血斑を伴った浸

    潤性紅斑が出現.その後四肢末端関節の腫張および両外

    果部に潰瘍を形成した.組織:乳頭層より真皮中層にか

    けてフィブリノイド膨化および核破壊を伴う好中球浸潤

    が認められた.入院時より,LE細胞陽性で, SLEの

    合併が示唆されたが,肺癌のため死亡. DDSが有効で

    あった.

  • 1112 学 会 抄 録

     pltyriasls lichenoldes et variollformls acuta

    教室例の検討 久本和夫,山口康則(山口大)

     昭49年より現在までに当教室で経験された本症の4例

    について検討した.各例は10~20歳代の若年者で,皮疹

    は体幹・四肢に分布.組織:各例とも血管周囲性リンパ

    球浸潤がみられ,血管壁の変化は4例中3例にextra-

    vasationは4例中2例に観察された.治療では, AB-PC,

    DDS,ステロイドとDDSの併用のいずれかが有効であ

    ったもの各1例がみられた.

     malignant lymphoma の1例 白石達雄,浪花志

    郎(山口大)

     43歳男,初診4ヵ月前に両側頚部にリンパ節腫出現.

    他院にて悪性リンパ腫としてCHOP 2クール施行する

    も無効.初診時,皮膚病変はみられず,リンパ節腫は手

    拳大で有痛性.生検にて溜漫性中細胞型.蛍光抗体間接

    法所見では,抗T血清により膜陽性であったが,抗B血

    清では,ほぼ陰性.放射線及びペプレオマイシソはやや

    有効で, VEMPは無効.初診5ヵ月後,肺炎合併し死

    亡.

     エックリン汗器官癌の1例 内平孝雄(県立中央)

     71歳女.10年来,左腰部に皮疹あり.初診時,径3cm

    大,不整形,黒色~褐色調の現状扁平隆起性皮斑,一部

    小指頭大半球状に隆起,廉爛形成.左蝋径部にリンパ節

    触知.組織;扁平隆起部では表皮内に異型性を示す基底

    細胞様細胞がPaget病様に,また半球状隆起部では真

    皮中層まで主として異型性の強い錬細胞様細胞が塊状に

    腫瘍巣形成.一部管腔形成,リンパ節は前述と同様の基

    底細胞様細胞で殆んど置換され,一部では韓細胞様細胞

    もみられる.他臓器には癌巣なし. eccrine poroductoc・

    arcinoma (eccrine porocarcinoma が主体)と診断した.

     乳房外Paget病の1例 内平信子(防府市),内平孝

    雄(県立中央)

     62歳男.4~5年前より右陰嚢部に湿疹様病変あり,

    次第に拡大.径6cm大の不整形皮斑となり,一部慶

    爛.約8ヵ月前,その一部がカリフラワー状を呈し,径

    2.5cm大の隆起性腫瘤となった.腫瘤近くに指頭大ま

    でのリソパ節数個触知.直腸鏡倹査異常なし.皮疹の

    3cm外周で皮下脂肪組織を含め切除.局所リyパ節廓

    清.組織:表皮内に空胞状原形質を有する大型異型細胞

    が胞巣形成,腫瘤部では同様の異型細胞が真皮内に浸

    潤.リンパ節転移なし.

     乳癌皮膚転移の教室例 越智敬三(山口大)

     最近10年間に,山口大学皮膚科において経験した6例

    の乳痛皮膚転移例について臨床的検討を行なった.50~

    77歳,全例女.転移部位は全例同側の胸部ないし脈高.

    5例死亡(死亡まで2ヵ月~4年),残り1例は治療中√

    死亡例中4例は痛性胸膜炎を併発後腫傷死,残り1例は

    軽決後肺炎にて死亡,局所療法(手術,放射線,抗癌剤、

    注人),MFCイヒ学療法およびチオデロソによるホルモ

    ン療法が一部の症例で対症的ないし延命効果を有した.

     sebacleous ePithlellon1万aの1例 酉山和光(山口

    大)

     56歳男.左眉部に生じた小豆大黄色調結節,近時増大

    の慎向はなし.組織所見では脂腺細胞様細胞の増殖部と

    基底細胞様絹胞の増殖部が混在した腫鋸巣が表皮と連統

    性に真皮内に不規則に増殖していた,

    山口地方会第69回例会(昭和57年6月13日,山口大)

     化学熱傷の3例 山田健一,浜中すみ子(山口大)

     最近経験した強アルカリ(NaOH),強酸(HF),農

    薬(CH3Br)による化学熱傷の3例について報告した.

    いずれも組織破壊が強く真皮中層以下に及んでいた.

    HFによるものでは壊死は一部筋層にまで及び,筋肉の

    部分切除を必要とした. NaOHに.よるものでは,顔面

    のため,植皮に加え,鼻翼,口唇の形成術を必要とし

    た,

     サクラソウ皮膚炎の1例 久本和夫(山口大)

     61歳女.農業.両手背の暗赤色紅斑.サクラソウ(Pri-

  • 山口地方会第69回例会

    mula obconica, Primula malacoides. Primula polyan-

    th)の花,葉,茎による貼布試験はそれぞれ強陽性.

    Primula obconicaの葉をエチルエーテルで抽出後,エ

    チルエーテル層成分および水層成分の希釈系列による貼

    布試験を施行.エチルエーテル層成分では陽性,水層成

    分では陰性であった.

     エポキシレジンによる職業性接触皮膚炎 西岡和恵,

    倉田三保子,藤田英輔(山口大),渡辺 裕(興産診療所

    健診センター)

     35歳男.エポキシレジソを扱う作業に従事中.顔面及

    び両手に痰諦性紅色皮疹を発生.パッチテストでは,患

    者の接触した数種の液中,エポキシレジソ含有の2種

    に,また標準アレルゲソ中,エポキシレジソ,ウルシ

    オール及びpoison ivy にアレルギー性と思われる陽性

    反応がみられた.同じ職場勤務者の4例についても同様

    の検討を行なったところ,1例のみにエポヤシレジソ含

    有液で陽性反応がみられた

     苔癖型薬疹例の臨床的検討 安野秀敏(山口大)

     最近7年間に当科で経験された誘発試験陽性苔癖型薬

    疹10例について報告した.年齢は52歳より78歳に及び,

    性差はなかった.原因薬剤は,シソナリジソ(4例),

    塩酸’ピリチオ吊シソ(2例),チオプロニソ(2例),エ

    タゾブトール(1例),テトラサイクリン(1例)であ

    った.9例中の2例にGPTの上昇を,8例に末梢血好

    酸球増多を,また4例に組織好酸球浸潤を認めた.貼布

    試験はチオプロニソによる2例にのみ陽性であった.

     免疫異常を伴ったUchen planus の1例 白石達雄

     (山口大)

     60歳女.昭55年1月頃よりRaynaud症状,約2年後

    に初診.初診の7ヵ月前より両手背に紫紅色,扁平隆起

    せる米粒大前後の丘疹と手のこわぽり感.6ヵ月前よ

    り多発性関節痛.入院時頃より両大腿の筋肉痛,検査

    上, RNP抗体81,920倍,Sm抗体陰性,抗核抗体50,000

    倍,抗DNA-テスト160倍,臨床症状,検査所見より

    MCTDが最も疑われた.皮疹の組織像,蛍光抗体所見

    はlichen planus に典型.

     PSSとSLEのoverlap症候群? 今村隆志,白

    石達雄(山口大)

     31歳女.5年前よりレイノー様症状.以後,徐々に顔

    面・四肢の皮膚硬化,手指拘縮.昨年より関節痛,嘸下

    困難,便秘,検査所見:赤沈114mm/時, ANF 105倍,

    (homogenous pattern)抗DNA抗体80倍,抗ENA抗

    体(-),LE細胞(十), CH30 9.6,高r-gl血症,貧

    1113

    血,白血球減少,蛋白尿(十).皮膚蛍光抗体直接法に

    てBMZにIgM, C,g の沈着.以上よりover≒)症候

    群(PSS十SLE)と考えた.

     anがokeratoma corporls circumscriptum ne-

    viformeの1例 倉田三保子(山口大)

     48歳男.生下時より右大腿部に暗赤色斑がみられた

    が,成人後一部に中心治癒を伴う紫黒色調の角化性局面

    を形成した.組織:hyperkeratosis, acanthosis,真皮乳頭

    層~脂肪層の血管の拡張・増生.本邦報告例54例につ

    いてみると,性比は男性にやや多く,発症年齢は生下時

    よりみられたものが半数以上を占め,72%は下肢に発生

    していた.文献上,皮疹が列序性に拡大した例はある

    が,中心治癒を示した例は自験例のみと思われる.

     ボーエン病の1例 岡崎泰典,浪花志郎(山口大)

     66歳女.3年前に左頬部の赤褐色皮疹に気づく.以後

    皮疹は次第に増大して13×22mm,ほぼ卵円形の落屑性

    赤褐色斑となった.治療は腫瘍の外側lcmの部で手術

    的に切除した.組織:表皮内に細胞の配列の乱れ,核の

    大小不同,細胞分裂の軽度増加,個細胞角化及びPAS

    陰性の空胞細胞が認められた.ボーエソ病で,しばしば

    みられるinternal malignancyの合併はみられなかっ

    た.

     石灰化上皮腫の1例 永井純子(山口大)

     56歳女.約2ヵ月前,前頭部の隆起性皮疹に気づい

    た.外傷の既往なし.現症では前頭部に指頭大ドーム状

    暗紅色結節を認め,表面はやや浮腫状,一部に血性痴皮

    を伴い,周囲皮膚面にも隆起性変化を認めた.硬度は

    弾性硬で下床との癒着なし. proliferatingtrichilemmal

    cystの疑いで切除したが,組織像は石灰化上皮腫に典

    型.被髪頭部に発生し比較的急速に増殖したため,この

    ような臨床像を呈したと考えられる.

     ”lallgnant trichile.・lunoinaの1例 山口康則(山

    口大)

     80歳女.右頬部の境界明瞭な18×26min,不整形,浸

    潤性紅斑様局面で表面は麿爛性で,一部に痴皮を附着.

    局面内に4×7mm,卵円形結節.臨床診断:ボーエン病.

    組織学的にグリコーゲン含有のclear cell,trichilemmal

    keratinization,basaloidcellの楯状配列clumping cell,

    個細胞角化が認められる.腫瘍細胞の増殖は毛嚢中心性

    で,毛襲間の表皮では軽度。

     computer systemを用いた組織病理計測学的研究,

    (1)方法および正常被覆表皮の解析 越智敬三(山口

    大)

  • 1114 学 会 抄 録

     細胞,核などの大きさ,形状,染色性および配列など

    の組織病理学上の定量的所見が,各種皮膚疾患の鑑別診

    断や腫瘍の悪性度評価などに意義をもつ場合は少なくな

    い.そこで, luzex 500およびdiditizer systemを用い

    て組織病理学的所見の計測学的研究の第1報として,測

    定方法および正常被覆表皮について検討した結果を述べ

    る.

     Bloch型老人性疵贅の電顕的,画像解析的検討 西

    山和光(山口大)

     光顕像上の基底細胞様細胞及び空胞化細胞の微細構造

    的相異で定量的に解析するため,両細胞の核・細胞質

    比,核小体・核比及び張原線維来・細胞質比を画像解析

    装置を用いて計測した結果,空胞化細胞は基底細胞様細

    胞に比べてこれら3種のパラメータに関する値が小さい

    傾向がみられた.

     サットン白斑の治癒経過及び寄生菌性毛唐例 師井庸

    夫(宇部市)

     症例1.3歳男児.上口唇のサットソ白斑.中心部の

    黒子を電気焼灼して色素の発生が始まり,3ヵ月後略

    治.1年後再発なし.症例2. 56歳男.寄生菌性毛豚

    上口唇の紅斑落屑.デルマシド軟膏外用とグリセオフル

    ビン内服にて一時膿庖の発生をみたが4週間後全治.菌

    の同定結果T.rubrumであった.

     帯状庖疹様皮疹を呈したスポロトリコーシスの1例

    内平信子(防府市)

     78歳女.初診昭57年1月.その約1ヵ月前,左前順に

    皮疹が生じ医治を受けるも漸次拡大.初診時,左前額か

    ら左上眼険にかけて帯状庖疹を思わせる浮腫性紅斑,丘

    疹,小水庖,痴皮,把状丘疹より成る局派疼痛(-),

    水痘・帯状庖疹ウイルス抗体価4倍以下.組織:真皮に

    ラ氏型巨細胞を伴う肉芽腫. PAS染色で,表皮内膿庖

    および真皮に遊離胞子(十).培養でSporothrix shenckii

    と同定.ヨウ化カリウム総量150g内服で略治.

     カポジー水痘様発疹症 内平孝雄(県立中央),藤原邦

    彦(光市)

     最近8年間にeczema vaccinatum, eczema herpeti-

    cumあるいは上記疾患と診断した15例を一括して報告

    した.年齢別では1歳未満6例,1歳3例,最高年齢は

    18歳.性別では男7例,女8例.先駆疾患はアトピー皮

    膚炎14例.熱発は6例あった.仝例とも予後良好.熱発

    等の全身症状を伴わない症例,口唇ヘルペスの先行した

    症例あるいはherpesvirus hominJs 以外の感染と思われ

    る症例についてカポジー水痘様発疹症の診断名を用いて

    よいかを問うた.

     重症水痘の治験 荒木勲生(国立下関)

     61歳男.初診の5日前から高熱,高度な全身倦怠感と

    皮膚ならびに口腔粘膜に小指頭大の水庖ないし膿庖を形

    成.入院の上,シタラビンとガソマーグロブリンとの併

    用療法を行なった.水痘ウイルス抗体価陰性.

     癌岸性皮膚疾患に対するパシフラミンの効果について

    浪花志郎(山口大)

     パシフラミソ(パッシフローラエキス製剤)を皮膚癈

    捺症を始めとする癈捺を伴う各種皮膚疾患計29例に投

    与し,その鎮静作用による止捺効果について検討した結

    果,一口量3錠ないし6錠の投与で,比較的早期に止捺

    効果が発現し,併用された抗ヒスタミソ剤,ヽマイナート

    ラソキライザー,またはステロイド剤の有する止掠効果

    に補助的に作用する傾向がうかがわれた.副作用は認め

    られなかった.

     直腸癌を合併したDuhrlng )g疹状皮膚炎の1例

    内田 寛,西岡和恵(山口大)

     73歳男.昭57年2月下旬より,両足内課部に小水庖を

    伴った癈庫性環状紅斑が出現し,その後同様の紅斑が全

    身に拡大.組織:真皮乳頭層に好酸球を主体とした小膿

    庖を認め,蛍光抗体法では,基底膜にlgAの線状沈着

    を認めた,1年前より血便があり,生検により直腸の管

    状腺癌が発見され,手術的切除を行なった.術後2ヵ月

    現在, DDSを投与しないにもかかわらず,紅斑,小水

    庖の発現を認めない.

     DDSが奏効したbullous万pemphlgoldの