そ菜畑に対するリニュロン、Ⅱ-634の効果について...東北農業研究 第10号...

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東北農業研究 第10号 235 したがって,植穴造成,栽穂は.サブソイラーを利用 した場合.人力に比べて13倍の高い能率化が得られた。 深耕の作業能率 昭和41年に深耕作業の能率をみるために行なった結果 は第4表に示したとおりである。 この表によれは,10アール当りの造成した深耕長は 1,2507花で,破砕体損は150汀戸になり,所要時間は83.3 分であった。 なお,深耕作業中,園地の状態が湿潤のためトラクター がスリップし,また,土壌中の爽雑物が,サブソイラーの 歯部にからみついて,作業能率に多少ロスがみられた。 以上,本試験は実用性をみるため,1ヘクタールを供 試し,その作業性能が高く,能率も人力よりはるかに高 い効果を示し,実用性は大きいと思われる。 3.む サブソイラーの性能については,深耕した土壌の粗密 の程度は,植物板が容易に土壌中にはいる18以下の土壌 硬度よりはるかに膨軟になり,十文字深耕の場合は,一 条深耕の場合にくらぺて,より効果が高い。 また,破砕巾h深さも充分な大きさではないが,リソ ゴ幼木の板群分布からみれば,植生には効果が大きいと 推察される。 したがって,サブソイラーの一条深耕は園地の深耕作 業に,十文字深耕は植穴造成ならびに深耕作業に,実用 化ができると思われる。 サブソイラーによる植穴造成と深耕の能率は,人力に 比べてはるかに高い能率を示し,本試験でとりあげた火 山灰土壌や爽雑物の少ない土壌では,かなり高い利用価 値があり.実用性があると思われる。 なお,今後は深耕部の土壌状態,樹体におよぽす影 響,根群の分布状態などをひき続き検討する。 そ菜畑に対するリニュロン、Ⅱ-634の効果について (宮奴県農試古川分場) 従来ネギ塀,ホウレン草畑の除草剤として,C1-IP C,CATが一般に使用されているが実用上種々の制約 を受けることが少なくない近年,これら除草剤とやや作 用特性を異にするりニュロソ,H-634が開発されたの で筆者がこれまで行なった試験結果について報告する。 1.リニュロンについて 1.試験方法 試験設計の概要は第1表に示したとおりである。 2.試験結果および考察 tl)ニソジソ 除草効果は第2表に示すとおり処理区が無処理に比べ は種後土壌処理で総雑草重比が3%以下となり顔著な差 が見られた。また各薬剤とも処理濃度による差はあまり 明らかでなかったがリニュロソはプロバジンに比べやや 壊れ,特にメヒシバには高い効果が見られた。リニュロ ソの生育期処理では広葉雑草にはかなり穀革効果が認め られるがイネ科には無処理と大差ない。薬害は各処理区 とも認められなく,正常な生育と観察された。収量は無 処理に比べ処理区はいずれも優れ,また各薬剤とも潰度 が高い捏多収が見られるが両剤の間には差は認められな かった。 以上リニュロンはプロバジン同様除草効果および選択 性の高い除草剤として十分実用に供し得るものと考えら れる。使用量は播種直後土壌処理で15~20g(¢当り製 品量,以下同様)。生育期では10~15gが安全な薬量と考 えられる。り二ュロンの生育期の雑草処理では広葉雑草 には強い殺草力が認められるので実用性が期待される。 ほ)タマネギ 第3,4表の成績に示すように除草効果は広葉雑草に は10g処理でも5月中旬頃までほ雑草の発生が見られな かったがイネ科のスズメノテッポウ,こワホコリには10

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Page 1: そ菜畑に対するリニュロン、Ⅱ-634の効果について...東北農業研究 第10号 237 第5表 ネギ収量・および雑草 注.雑草調査 当り 2区平均

東北農業研究 第10号              235

したがって,植穴造成,栽穂は.サブソイラーを利用

した場合.人力に比べて13倍の高い能率化が得られた。

ほ 深耕の作業能率

昭和41年に深耕作業の能率をみるために行なった結果

は第4表に示したとおりである。

この表によれは,10アール当りの造成した深耕長は

1,2507花で,破砕体損は150汀戸になり,所要時間は83.3

分であった。

なお,深耕作業中,園地の状態が湿潤のためトラクター

がスリップし,また,土壌中の爽雑物が,サブソイラーの

歯部にからみついて,作業能率に多少ロスがみられた。

以上,本試験は実用性をみるため,1ヘクタールを供

試し,その作業性能が高く,能率も人力よりはるかに高

い効果を示し,実用性は大きいと思われる。

3.む  す  び

サブソイラーの性能については,深耕した土壌の粗密

の程度は,植物板が容易に土壌中にはいる18以下の土壌

硬度よりはるかに膨軟になり,十文字深耕の場合は,一

条深耕の場合にくらぺて,より効果が高い。

また,破砕巾h深さも充分な大きさではないが,リソ

ゴ幼木の板群分布からみれば,植生には効果が大きいと

推察される。

したがって,サブソイラーの一条深耕は園地の深耕作

業に,十文字深耕は植穴造成ならびに深耕作業に,実用

化ができると思われる。

サブソイラーによる植穴造成と深耕の能率は,人力に

比べてはるかに高い能率を示し,本試験でとりあげた火

山灰土壌や爽雑物の少ない土壌では,かなり高い利用価

値があり.実用性があると思われる。

なお,今後は深耕部の土壌状態,樹体におよぽす影

響,根群の分布状態などをひき続き検討する。

そ菜畑に対するリニュロン、Ⅱ-634の効果について

黒  川  正  志

(宮奴県農試古川分場)

従来ネギ塀,ホウレン草畑の除草剤として,C1-IP

C,CATが一般に使用されているが実用上種々の制約

を受けることが少なくない近年,これら除草剤とやや作

用特性を異にするりニュロソ,H-634が開発されたの

で筆者がこれまで行なった試験結果について報告する。

1.リニュロンについて

1.試験方法

試験設計の概要は第1表に示したとおりである。

2.試験結果および考察

tl)ニソジソ

除草効果は第2表に示すとおり処理区が無処理に比べ

は種後土壌処理で総雑草重比が3%以下となり顔著な差

が見られた。また各薬剤とも処理濃度による差はあまり

明らかでなかったがリニュロソはプロバジンに比べやや

壊れ,特にメヒシバには高い効果が見られた。リニュロ

ソの生育期処理では広葉雑草にはかなり穀革効果が認め

られるがイネ科には無処理と大差ない。薬害は各処理区

とも認められなく,正常な生育と観察された。収量は無

処理に比べ処理区はいずれも優れ,また各薬剤とも潰度

が高い捏多収が見られるが両剤の間には差は認められな

かった。

以上リニュロンはプロバジン同様除草効果および選択

性の高い除草剤として十分実用に供し得るものと考えら

れる。使用量は播種直後土壌処理で15~20g(¢当り製

品量,以下同様)。生育期では10~15gが安全な薬量と考

えられる。り二ュロンの生育期の雑草処理では広葉雑草

には強い殺草力が認められるので実用性が期待される。

ほ)タマネギ

第3,4表の成績に示すように除草効果は広葉雑草に

は10g処理でも5月中旬頃までほ雑草の発生が見られな

かったがイネ科のスズメノテッポウ,こワホコリには10

Page 2: そ菜畑に対するリニュロン、Ⅱ-634の効果について...東北農業研究 第10号 237 第5表 ネギ収量・および雑草 注.雑草調査 当り 2区平均

東北農業研究 第10号

第1表  試験設計

第2表  ニソジソ収量および雑草量

注.土壌条件は沖積層埴壌土。

注,雑草調査 謡.3区平均,8月26日

第 3表 雑草調査(㌶当り) 6月11日

第 4表  タマネギ収量(5.76万g当り)

区 且凰

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東北農業研究 第10号 237

第5表 ネギ収量・および雑草

注.雑草調査 ㌶当り 2区平均 8月25日

タでは無処理と大差ない。しかし,15,20gと処理濃度  処理に比べ処理区はいずれも多収を示したが.15g処理

が高くなるにしたがって高い除草効果を示した。薬害は

供試濃度では認められないが,活着しないうちに散布す

ると薬害作用を起すことが追試で確められた。収量は無

第 6 表  試

区は最も多収を示した。

以上除草効果,収量より判断すれば定植活着後15gが

有効な処理量と考えられるが,イネ相の雑草を多く発生

験   設   計

第 7 表  ホウレン草畑における雑草調査

項昭    和

\i シ′バ困ホ

41   年

無   処

C1-1PC20g本重

昭和40年度

合 計

2244240.0

本重

gOTAC

H-634 6.25g

〝    12.5g

6.0禾3.3g

注・雑草調査(認諾0.5謡当り 3区平均1〝F当り 2区平均

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238

丁、区

東北農業研究 第10号

第 8 表  ホウ レソ草収量(据当り)

昭  和  40  年 度

株  数 量 比  率 株  数 量 比 率

取IA6

無手CCHクク

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除CT4

処 P 3

埋草膵Og相好紺

2

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する地帯には20g処理が望ましいものと思われる。本剤

はCトI PCよりも殺草力は茎葉処理,土壌処理とも

大きく.また選択穀草性が′トさい点で散布適期が巾広く

残効期間が非常に長い特性を有するので,新型除草剤と

して実用性が高いものと考えられる。

(31ネ  ギ

第5表の成槙に示すとおり.各薬剤とも無処理区に比

べ除草効果が認められた。特にリニ1ロソ,プロメトリソ

処理区は除草効果が鋲者で無処理区に比べ総雑草重は20

%以下であったが,供試薬剤中でリニユロンの効果が優

れ15g処理でも10%程度であった。薬害はリニユロソ

40g処理が初期生育の遅滞が認められた。収量は特にリ

ニュロン 20g,プロメトリン15g区が優れたが,リ

ニュロソはこれより濃度が高くなるにしたがって減収を

示した。

以上の結果より従来ネギ畑除草剤としてCATが一般

に利用されているがリニュロソはCATに比べ除草効

果,収量など優れており,タマネギ同様実用性が高く使

用量は睦間処理で20g,全面処理では15gが安全な藁量

と考えられる。

2.ホウレン苫畑に対するH-634の効果につ

いて

1.試験方法

試験設計の概要は第6表に示したとおりである。

2.試験結果

除草効果は第7,8表の成績に示すとおり,2カ年と

も処理区は無処理に比べいずれも高く,特にH-634は

C1-IPCに比べ顕著であった。薬害は昭和40年度の成

穀ではCATにやや見られ,またH-634の18.8g処理

は初期生育の抑制が認められたが,昭和41年度の試験で

は認められなかった。収量は昭和40年度ではCトIPC

を除いた他の処理区は減収を示したが,CAT.H-

634,18.8g処理を除いた他区は無処理と大差がなかっ

た。また昭和41年度の成顔では無処理,処理区とも差は

少ない。

以上2カ年の結果からH-634はCトIPCより除草

効果が高く安定し,ホウレン草には選択性が高いので播

種後土壌処理として十分実用に供し得る新型除草剤と考

えられる。なお,使用量は10gが適量と考えられる。