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食(仮)
11281032 岡本明
はじめに第1章 食の変化
1-1. 食生活の機能1-2. 昭和の時代にみる食の変化1-3. 平成の時代にみる食の変化1-4. 主要食糧の推移
第2章 安心・安全2-1. なぜ今、安心・安全が問われるのか2-2. 国や民間企業の対応2-3. グローバル化によって問われる安心・安全
第3章 健康(この章はまだです)3-1.
第4章 食育おわりに参考文献
はじめに
後で書きます第1章 食の変化
食の内容は、時代と共に変化している。この章では、我々の食生活の移り変わりを、昭
和の時代と平成の時代に分けて述べる。その前に、食が私たちに何を与えるのか、一般的
な食生活そのものの機能について触れたいと思う。
1-1. 食生活の機能
食生活は、日常生活を送るにあたり、重要であることは言うまでもない。朝食で一日
のエネルギーを蓄え、昼食を摂り午後の仕事を頑張る。そして夕食で一日の疲れを癒す。
現代社会では、朝食を摂らない人が増えてはいるものの1、一日三食が基本の形とされて
いる。食生活論(第 2 版)食の機能と食事観(福田靖子)によると、この大切な「食」に
は、5 つの機能があるといわれている。
第 1 に生理的機能である。これは、体の成長や活動、健康を保持するものである。第 2の精神的機能は、おいしいものや好きなもの、楽しく食べて満足するという、欲求を満
たすものである。第 3 は社会的機能である。これは、食事を通して、人間関係を強める
ものである。食事が社会の構造や仕組みを作る役割を担うというもので、つまるところ 、
食事は人間関係の媒体であり、集団間の結びつきを強める機会として機能するというこ
とである。第 4 は文化的機能だ。これは、よりおいしく、楽しく食べることを人が求め
たときに食文化が発生し、食に対する精神や芸術が展開するというものであり、郷土料
理や行事食食器や食具の選択がこの機能に入る。そして第 5 に教育的機能である。食事は、
家族での団欒の場となることが多いことから、家庭教育の場として位置づけられる。食
を通して、人とのコミュニケーションのはかり方や、人への心遣いなど、人格形成に必
要な基本的なことを学ぶことができるのだ。
1-2. 昭和の時代にみる食の変化
(1)食の簡易化(昭和30年から35年/1956年から1960年)
戦後の農作物の不足で、食生活に変化があった。米の不作により、パンが主流となり、
学校給食でパンが採用され、パンの人気に火をつけるきっかけともなった。米が食卓か
ら消えることはなかったが、パンも米と同様に「国民食」と呼ばれるまでにもなった。
一汁三菜という概念ができたのは、江戸時代のことである。もともと室町時代に、一汁一
菜という日常食の基本ができあがり、時代とともに変化したのである。1951 年に魚肉
ソーセージが登場し、1957 年にはブロイラーが登場した。同年に森永コンソメスープが
誕生し、都市世帯の 5%が朝食を食べないことを背景に、晩御飯だけではなく、朝から
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スープを飲もうと販売促進された。翌年の 1958 年には、日清からインスタントラーメン
が誕生し、人気を集めた。これらの商品を筆頭に、安価な食の洋食化が進み、この「第 1次消費革命前期」から、食の簡易化に歯車がかかった。
(2)厨房の変化とインスタントブーム(昭和36年から40年/1961年から1965年)
1950 年代後半から、「簡便なことは良いことだ」というキャッチフレーズの下、イン
スタント商品が世に普及し、その人気が衰えることはなかった。1964 年に電子レンジが
登場し、食の種類が増えることになる。電気冷蔵庫の普及率は 68.7%、ステンレス流し
台の普及率が 24.2%、換気扇は 10%と、4軒に1軒の割で普及した。ステンレスの流し
台と換気扇という合理化されたキッチンがあることで、作られるメニューにも変化が起
こる。
1960 年から 1970 年代の高度成長期から、食肉の需要が急増することとなる。
(3)厨房の変化と外食産業の幕開け(昭和41年から55年/1966年から1980年)
この時期は、スナック菓子が増え、インスタント食品はグレードアップの傾向にあっ
た。
電気冷蔵庫の普及率は 97.3%、電子レンジ 16.5%と、台所の環境が整ってきている。
冷凍調理済み食品やレトルト食品が急成長した。
1970 年代に入り、外食費が大幅に伸びた(図表 1)。ロイヤルやすかいらーく、ケン
タッキー・フライド・チキンやマクドナルドが日本にオープンしたのもこの時代である。
電気冷蔵庫の普及率は 99.2%、ステンレス流し台は 85.3%と、台所の環境は著しく良
好となった。デパートの食品売り場に惣菜やデリカの店舗が多く並び、デパートの店内
構成も変化した。トマトジュースや野菜ジュースが 1970 年代に入り急速に成長し、健康
に気を遣う国民が増えたといえる(図表 2)。
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図1 食の外部化
図2 カゴメの野菜飲料売上推移(1956-2005年)
1-3. 平成の時代にみる食の変化
平成に入っても、即席麺や冷凍食品など、昭和の時代にできた商品の人気が廃れること
はない。平成に入ってから、即席麺の種類はより豊富になり、外食産業も一定の売り上げ
を保っている(図表 3)。2000 年代前後に週休二日制度が一般化されたことにより、休
日を家族で過ごす機会が増え、これをきっかけに外食産業が成長したという見方もある。
女性の社会進出を背景に、中食業界も成長を続けている(図表 4)。1995 年には 4兆円
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だった市場が、2015 年には、およそ 8兆円の規模に拡大されるといわれているほどだ。
中食市場は 20 年間で約 2倍もの成長を遂げ、今後も市場規模は拡大が見込まれている2。
さらには、コンビニエンスストア(以下コンビニ)が普及したのも平成の時代である
(図表 5)。24 時間お店が開いており、食料だけではなく雑貨や雑誌、生活用品までも
が揃っている。
図3 外食産業売上金額前年比
94年95年
96年97年
98年99年
00年01年
02年03年
04年05年
06年07年
08年09年
10年11年
12年13年
14年
012345678
売上金額前年比
全 体 ファーストフード ファミリーレストランパブレストラン/居酒屋 ディナーレストラン 喫茶その他
図4 外食・中食産業の市場規模推移
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図5 主要10社コンビニ国内店舗数推移
このように、平成の時代に入ってから、食にまつわる生活環境が変化してきた。食生
活に関する言葉として、「こ食」という言葉を聞いたことがあると思うが、これは平成
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に入ってからできた言葉であり、食生活の変化を物語っている。結婚生活や妊娠・出産・
子育てに関するパパ&ママのお悩みを、コラムで解決するQ&Aサイト「パピマミ」によ
ると、「こ食」には 6種類に分けられる。
第 1 に「孤食」である。これは、独りだけで食べることであり、家族が不在の食卓な
ど、生活時間の差が生まれたことによってできた。サービス業は、朝から夕方まででは
なく 24 時間体制へと変化してきた。通勤通学圏の拡大や、通勤通学時間の長時間化が起
こり、家族の一人ひとりがばらばらに食べるという現象が生まれてしまったのである。
その他にも、学生であれば友人と食事をして帰るなどの理由も、家族内での生活時間の差
が生じる原因になっている。第 2 に「個食」である。家族それぞれが、自分の好きなも
のを食べることである。好きなものを食べるだけで栄養が偏り、好き嫌いを増す原因に
もなる。第 3 に、同じものばかりを好んで食べる「固食」である。第 4 に、「小食」で
ある。これは、いつも食欲がなく、少しの量しか食べないことである。第 5 に「粉食」
である。パンやピザ、パスタなど粉を使った主食を好んで食べることである。米に比べ、
粉ものはカロリーが高く、脂肪などが多くなることによって栄養が偏る原因になる。そ
して第 6 に「濃食」である。加工食品などの濃い味付けのものを食べることを指す。塩
分や糖分が多いことにより、味覚そのものが鈍ってしまう傾向にある。
ここで、「こ食」には多くの意味を持つことが分かったが、その中でも「個食」や
「孤食」は、現代社会の生活リズムや、経済状況において両親が共働きをする家庭が多い
ことから言われてきたものである。しかし、それ以外のものは、食が豊かになったこと
により、影響を受けた結果起こっていることである。また、食生活の変化によって、1-1で挙げた社会的機能や教育的機能などの、食生活の機能までもが影響を受けざるを得ない
状態となっている。
戦後の食糧不足から,高度成長期に向け食料が豊かになったことで「豊食」になり、や
がてバブル期に入り,食料が溢れていた「飽食」の時代に突入する。「飽食」とは、あき
るほどお腹いっぱい食べたいだけ食べられて、食物に不自由しないことをいう3。現在は、
今までの「食に対する日本の文化」も含めた「崩食」の時代に入っている。
図表 6 は、日本人一人当たりのカロリー摂取量の推移である。この図表から、1971 年
の 2287キロカロリーをピークに、年々摂取カロリーが減少していることが分かる。最
も注目すべき点は、2010 年の摂取カロリーの 1849キロカロリーは、戦後の 1947 年時
の 1856キロカロリーを下回っていることである。食生活のレパートリーが多様になり、
「豊食の時代」と呼ばれ、豊かな食生活を送っているのにもかかわらず、一人一日当た
りの摂取カロリーは戦後とそれほど変わらない事態になっているのである。
本章の中で、昭和編と平成編に分けて述べたように、昭和の時代に、食生活に大きな変
化が起こり、平成の時代に入った。平成の時代には、食の変化はさほどないが、食の選択
肢やレパートリーが増えた。「豊食の時代」と呼ばれ、豊かな食生活は継続しているが、
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食に関する問題が多数発生する。
具体的には、食品添加物や食の安全、及び健康被害に対しての関心が高まり、よく報道
された。
食品偽装とは、賞味期限や消費期限の偽装、及び産地の偽装のことである。賞味期限が
書かれてあるシールを張り替えて販売をしたり、実際は海外の食品なのにも関わらず、
国産の方がよく売れるからという理由で産地を書き換えたりすることが起こった。これ
らの詳しい内容については、第 2 章で述べることとする。
図6 日本人のカロリー摂取量推移
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1-4. 主要食糧の推移
世帯当たり年間支出金額を記したものが表 1 である。米が減り、パンや麺類の方の年間
支出金額が増え、外食の頻度が多くなったことが分かる。このように、食生活は、米、イ
モ類、豆類、野菜、果物、魚介類、みそ、醤油中心の食卓から、パン、乳製品、肉類、油
脂類中心の欧米化の食卓へと変貌したことが見て取れる。
表1 世帯当たり年間支出金額 単位:千円
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表2 我が国の主要食料の1人当たり年間供給量(単位:kg)農林水産省「食料需給表」
生鮮肉に関しては、所得水準の向上や、食生活の西洋化で、牛肉の消費量は増加してい
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たものの、日本は畜産農家を保護するため、牛肉の輸入数量を制限していたことがある。
しかし、牛肉は米国から輸入自由化を求められ、1991 年に数量制限が撤廃されてから、
輸入関税率も段階的に引き下げられ、牛肉の輸入は 1990 年代に大幅に増加したことが増
加の背景にある。
第2章 安心・安全
第 1 章でそれぞれの時代の食の変化を述べた。昭和の時代に、多くの食の変化があり、
平成の時代に入って、昭和の時代に開発された商品が更にグレードアップするなど、食
は発展を続けている。食が豊かになることに喜びを感じる一方で、安心・安全を脅かす
事件が度々起るようになった。食品の偽装表示や、食品添加物の使用問題、また輸入農産
物の残留農薬問題などがある。最近では、カップ麺や某ファストフード店の商品に虫な
どお異物が混入していたという事件も記憶に新しいだろう。この章では、安心や安全と
いう、消費者が敏感になっている面について述べていきたい。
2-1.なぜ今、安心・安全が問われるのか
安心・安全が問われる理由として、これまでに多くの食に関する事件が起こったこと
が挙げられる。具体的に、どのような事件が起こったのか表 3 を参考にされたい。
表 3 2000 年以降の食品をめぐる主な消費者問題(消費者庁・厚生労働省を参考に作
成)
年代 出来事
2000 年 6月 雪印乳業(株)食中毒事件発生
2001 年 9月 国内で BSE感染牛を確認
12月 中国産冷凍ホウレンソウの 1 割弱が残留農薬基準値(クロルピリホス
等)を超過する事実が判明
2002 年 2月 大手食品メーカーが牛肉の不正表示
8月 無登録の農薬を使用し、自主回収
2003 年 5月 カナダで BSE 7
月
食品安全基本法を制定、食品安全委員会を発足
12月 アメリカで BSE 2004 年 1月 国内で 79 年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが発生
2月 BSE 発生国の牛のせき柱を含む食品等の製造、加工、販売などを禁止
2006 年 5月 残留農薬等のポジティブリスト制度の導入
10月 (株)不二家が賞味期限切れの原料を使用
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2007 年 10月
(株)赤福が賞味期限を偽装
2008 年 1月 中国産冷凍ギョーザにより有機リン中毒事案が発生
9月 ・米の販売・加工業者が非食用米殻を 食用に転売していたことが判明
・大手食品メーカーが中国から輸入した加工食品の原材料の一部に、
メラミン混入が確認され、商品を自主回収
・八王子市において、中国産冷凍いんげんから農薬のジクロルボスが
6,900ppm 検出2009 年 9月 ・消費者庁発足
・飲食チェーン店において、結着等の加工処理を行った食肉の加熱が
不十分であったため、腸管出血性大腸菌 O157 食中毒事件が広域に発
生
2011 年 3月 ・東日本大震災が起こり、放射能問題に不安が広がる
・東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故後、食品中の放射性物質の
暫定規制値を設定
5月 飲食チェーン店において、牛肉の生食による腸管出血性大腸菌 O111食中毒事件が発生
10月 生食用牛食肉の規格基準を設定
2012 年 4月 食品中の放射性物質の基準値を設定
8月 浅漬を原因とする腸管出血性大腸菌 O157 食中毒事件が発生
2013 年 6月 オリエンタルランド、プリンスホテルがメニュー偽装
10月 (株)阪神ホテルズ、(株)ホテルシステムズなどが食品表示問題
12月 (株)アクリフーズの冷凍食品農薬混入事案
2014 年
12月・まるか食品のカップ麺にゴキブリが混入
・日清食品冷凍パスタからゴキブリの一部とみられるものが混入
2015 年 1月
日本マクドナルド チキンナゲットに異物混入
2000 年に雪印乳業(株)が食中毒事件を起こし、翌年 2001 年に国内で BSE感染牛が
確認されてから、国民の食に対する安心・安全の意識が変わった。昭和の時代にも食中毒
や輸入品の残留農薬問題は起こっていた。つまり、問題そのものが平成の時代に入って
から出てきたわけではない。例えば、1945 年以降(昭和 20 年代)は食中毒による死亡
事件、日本経済が戦前の水準に復帰した 1955 年以降(昭和 30 年代)は森永ヒ素ミルク
事件、大量生産大量消費が到来した 1965 年以降(昭和 40 年代)にはカネシ油症事件が
起こった。1975 年以降(昭和 50 年代)には輸入品内の残留農薬問題や発がん性のある
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化合物の毒性に関心が高まった。1985 年(昭和 60 年代)から 1989 年(平成元年)以
降は豊食やグルメ時代に入り、この間に O157 の食中毒事件が起こる。その他にも、遺
伝子組み換え問題、BSE や中国野菜残留農薬、さらには無認可食品添加物及び無登録農薬
など、問題が次々と浮き彫りになった。自己の意志で回避困難なものの事件が多く起こり、
消費者はより、安心・安全という言葉や事実に敏感になった。表 3 を見て分かる通り、事
件の中には BSE や放射能のように自然に起こり、防ぎようがないものをはじめ、異物混
入を例とする、ルールを徹底すれば防ぐことのできる事件など種類は様々である。
消費者が食の安心・安全に敏感になった結果、苦情という形で意見や疑問をぶつけるこ
とが多くなった。これも時代の変化であろう。図 7 は、1987 年度から 2012 年度までの
苦情食品総件数と異物混入食品の件数をグラフで表したものである。異物混入の苦情の中
で最も多いのは、虫の混入で、次いで金属片などの金属類や毛髪の混入がある。 2000 年
に雪印乳業(株)の食中毒の事件から、異物混入による苦情が急増した。新聞やテレビな
どのメディアで食品に関する問題が取り上げられると、消費者に不安が募り、苦情が増
える傾向にある。2000 年になっても、5000件近くの苦情が殺到しており、異物混入の
事件がなくなることは未だない。
図7 1987年度から2012年度までの苦情食品総件数と異物混入食品の件数
2-2.問われる責任-安心・安全を求めて
2-1 で、数多くの問題が起こっていることを説明した。掘れば掘るほど食に関する問題
が出てくる状況に消費者は困惑し、不安が拡がるばかりである。それでは、それらの問
題が起こった際、消費者が求める安心・安全に対して国や政府及び民間企業の対応はいか
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がなものだったのだろうか。国・政府の対策と民間企業の対策の 2 つに分けて説明して
いく。
2-2-1.国・政府の対策
2-2-1-1.食品衛生法
国の食に対する政策の中に、食品衛生法がある。食品衛生法とは、日本における飲食に
よって生ずる危害の発生を防止するための法律である。食品と添加物などの基準や表示及
び検査などの原則を定めるものである。
2000 年に起こった、雪印乳業(株)の食中毒事件をきっかけに、乳及び乳製品の成分
規格などに関する省令及び食品、添加物などの規格基準が改正された。
2003 年 5月に食品衛生法の目的が、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、
公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」から、「食品の安全性確保のための公衆衛生の
見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発
生を防止し、もって国民の健康の保護を図ること」と変更された。2003 年の時点で、食
の衛生面だけではなく、食の安全性や飲食の行動に伴う健康面について指摘されるよう
になったのである。また、この目的の改正とほぼ同時期に食品安全基本法が制定されて
いる。
2-2-1-2.食品安全基本法
食品安全基本法は、2003 年に制定されたもので、2001 年から 2002 年にかけての
BSE騒動を教訓に、食品の安全確保のための総合的な推進と食品行政への信頼回復を目的
に制定されたものである。
2-2-1-3.JAS法改正 JAS法とは、正式には「農林物資の規格化等に関する法律」という。
2000 年に雪印乳業(株)の食中毒事件が起こり、その後に乳及び乳製品の成分規格な
どに関する省令及び食品、添加物などの規格基準改正がなされた。
農林水産省によると、この法律は、飲食料品等が一定の品質や特別な生産方法で作られ
ていることを保証する「JAS規格制度(任意の制度)」に関するものであり、この法律で
定められたルールにしたがって身の回りの食品などには、JASマークが付いている。JAS法が制定された 1950 年には、戦後の混乱による物資不足や模造食品の横行による健康被
害等が頻発しており、農林物資の品質改善や取引の公正化を目的として JAS規格制度がま
ず発足した。1970 年には、JAS規格のある品目について表示の基準(品質表示基準制
度)を定めることにより、消費者が商品を購入する時に役立つように改正された。また、
1999 年に消費者に販売される全ての食品に表示が義務づけられるようになり、さらに、
2009 年に食品の産地偽装に対する直罰規定が創設された。
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2015 年の食品表示法の施行に伴い、JAS法の食品表示に関する規定が食品表示法に移
管されるとともに、JAS法の名前が「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法
律」から「農林物資の規格化等に関する法律」に変更となった。
2-2-1-4.食品表示法
食品表示法は、食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選
択の機会を確保するため、商品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定
を統合して食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度である。
図8 現行の食品表示に関する法律(消費者庁より)
2-2-2.民間企業の対策
14
事例1 生活協同組合コープ
生活協同組合(以下、生協)とは、一般市民が集まって生活レベルの向上を目的に事業
を行う協同組合である。生協は、消費者が出資金を出して組合員となり、商品やサービス
などを利用することができる組織である。生協のホームページによると、生協の商品は 、
5 つの安全確認業務の下で管理されている。
第 1 にリスク予兆管理である。産地偽装や原料偽装などの商品事故の発生を防止するた
めに、農林水産省などの行政が発信する情報や産地及び業界の情報を毎日収集している。
第 2 に仕様書点検である。所品の原材料や添加物、アレルゲンなどの情報が記載されたも
のを、県民生協の自主基準に適合しているかを確認する。第 3 に工場点検である。原材料
が仕様書通りに配合されているか、及び向上が衛生的に管理されているかを点検する。
第 4 に商品検査である。微生物検査や理化学検査(残留農薬、抗生物質、産地判別検査、
放射能検査を行い、商品の安全確認を行っている。第 5 にお申し出管理である。商品事故
緊急ダイヤルを設置し、いつでも組合員からのお申し出に対応できる体制を整えている
商品事故の予兆をとらえて被害の拡大を防止するなど、安全管理を強化している。
2013 年 3月 11 日の東日本大震災において、東京電力福島第一原子力発電所の事故が
起こり、放射性物質による健康悲哀や食品への影響が心配された。その際、生協では自主
検査を行うことを組合員に示した。
図9 放射性物質の不安に対する商品の取り扱いについて(生協ホームページより)
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事例2 宅配サービスらでぃっしゅぼーや
らでぃっしゅぼーやは、誰が、どんな場所でどうやって作ったものかを確認すること
が可能なように、国産原料を優先して使用している。また、加工品については、見た目
の美しさよりも安全性を重視し、素材本来の味わいを大切にした、体に優しい加工品を届
けている。また、すべての加工食品について表示義務の有無にかかわらず、製造工程や
原材料などのすべての情報を公開できるように商品規格書を管理し、誰がどこでどのよ
うに作っているのかを確認するようにしている。
事例3 オイシックス
2000 年に創業した企業である。
農薬をできるだけ使用せず、添加物のチェックも厳しく行うとともに、放射性物質検
査を流通前に実施している。Oisix 安全基準という独自の基準を設けており、消費者に安
心して食を楽しんでもらえるように努力している。
2-3.グローバル化により問われる安心・安全
日本が、様々な分野でグローバル化の道を歩んでいることは承知の事実である。その
中でも、食に対するグローバル化は著しく進んでいる。日本の食料自給率は年々減少傾向
にあり、2014 年のカロリーベース総合食料自給率は 39%4しかない。これは先進国の中
で最低の水準となっており、つまるところ、国内で賄える食品の量が少ないため、国外
に頼る形となっている。
図8 我が国と主要国の農産物輸出入額及び純輸出入学(2009年)
4
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加工や生産のプロセスが増加したことにより、問われる安心・安全
中国の農薬の基準や、輸入したときにどのように検査しているのか
2-4.海外の政策と日本の政策比較
アメリカに FDA(Food and Drug Administration)という政府機関がある。食品や
薬品を中心に、化粧品やたばこなど、消費者が接する機会の多い製品の認可や違反取り締
まりを行う。FDA は、輸入規制をどのように行っているのだろうか。
FDA は、食品安全強化法の適切な機能を発揮するために、外国政府機関との協力を
行っている。
FDA の政策内容
FDA と日本の政策の類似点
輸入に関する食の安全管理
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ここから下はまだです。
2-3. 安心・安全に対する取り組み
トレーサビリティシステムは、BSE 事件を受け、2006 年に作られた、trace(追跡)
と ability(可能)を足した造語である。トレーサビリティは、だれから買って誰に売っ
たのかという流通経路に関する情報を明らかにするものである。「食品とその情報とに
ついてフードチェーンの各段階で追跡できること」と定義されており、各段階とはつま
り、生産から加工、流通、販売、廃棄までの過程のことである。
トレーサビリティは、食中毒の食品事故が発生したときに、食中毒の原因の解明がより
速やかに行われるだけでなく、問題のある食品の回収がより速やかに行われるようにな
ることや、産地などの表示偽装の疑惑が生じたときに、記録に基づく事実の解明がより
速やかに行われるようになるため、重要なものだと考えられている。
第3章 健康
ファストフード(1975年)とスローフード(1985年)について
食生活への影響が大きかったのはファストフードの出現である。ファストフードとは、
注文するとすぐに供される食品のことで、ハンバーガーやホットドッグ、牛丼などがそ
の仲間である5。また、客単価が 700円未満で、料理提供時間が 3 分未満、そしてセルフ
サービス方式を導入しているという条件を満たしているものとされている 6。ファスト
フードは、イギリス産業革命以降、食品産業の技術開発の発展や、加工の手間が省けたこ
となどの要因が重なり、大量生産が可能になったことからできたものである。
ファストフードに対して出現したのが、スローフードである。スローフードは、1986年にイタリアのカルロ・ペトリーニによって提唱され拡がった、国際的な社会運動だ。
スローフードには、いくつかの機能があるとされている。第 1 に各地域の伝統的な郷土
料理や食材を守ること、第 2 に地域の中小生産者を守り、消費者へは質が良く安全な食材
を提供すること、第 3 に消費者の食に関する意識を高めること、そして第 4 に、現代食
による、偏った食環境を見直すことである。
図 8 から分かるように、ファストフードの市場規模は、2007 年には、2.6兆円程度の
市場だったものが、2014 年には 3.1兆円を超えるものとなった。ハンバーガーチェーン
店が続々と閉店に追い込まれるなど、各ブランドの危機で成長に伸び悩んでいるにしろ
市場は、非常に大きいものだとわかる。スローフードは、いわば、ファストフードとい
う流行に逆行する取り組みである。スローフードという概念が誕生してから 25 年が経過
した現在、スローフード運動は 150カ国以上に 1500 を超える支部を持ち、その会員数
56
18図8 ファストフードの国内市場推移
は、料理人、農家、漁師、活動家、研究者、生産者など、食に強い関心を持つ人々を含め
数百万人にのぼるという。
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http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/number.html(最終閲覧日:2015 年 6月 8 日)
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