機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に...

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機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について (資料4

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Page 1: 機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に …...機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

(資料

4)

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提案資料 目次

番号 所属機関 役職 提案者

(カッコ内は発表者)

頁 時間

1.個人の健康状態に応じ、健康に役立つ成分を含む農林水産物・食品を消費者に供給するシステムの確立

(1) (公財)日本健康・栄養食品協会 学術情報部長 菊地 範昭 1 13:20~13:28

(2) 神奈川県立保健福祉大学 学長 中村 丁次

(倉貫 早智) 3 13:28~13:36

(3) NKアグリ(株) 代表取締役 社長 三原 洋一 5 13:36~13:44

(4) (独)水産総合研究センター 水産物応用開発研究センター 安全性評価グループ長 山下 倫明 7 13:44~13:52

(5) 東京大学(2件分) 大学院 農学生命科学研究科 特任教授 阿部 啓子 9 13:52~14:08

(6) 東京農工大学 (資料配布のみ) 大学院農学研究院 動物生命科学部門 教授 渋谷 淳 11 -

2.健康に役立つ成分の効果の解明と、成分を増強・安定化する生産技術の開発による新たな農林水産物の開発

(1) 京都大学 農学研究科 食品生物科学専攻 助教 村上 明 13 14:08~14:16

(2) (独)産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 分子生物工学研究グループ長 森田 直樹 15 14:16~14:24

(3) 愛媛大学 農学部 准教授 岸田 太郎 17 14:24~14:32

(4) 京都府農林水産技術センター 農林センター 園芸部 主任研究員 城田 浩治 19 14:32~14:40

(5) 長野県野菜花き試験場 育種部 主任研究員 芹澤 啓明 21 14:40~14:48

(6) (公財)北農会 (資料配布のみ) 会長(黒千石事業協同組合 研究アドバイザー) 三分一 敬 23 -

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3.健康に役立つ成分の効果の解明と、成分を増強・安定化する加工技術の開発による新たな加工食品の開発

(1) 信州大学 農学部 准教授 中村 浩蔵 25 15:00~15:08

(2) 高知大学 教育研究部総合科学系生命環境医学部門 教授 (副学長) (教育研究部総合科学系生命環境医学部門 准教授)

受田 浩之 (島村 智子)

27 15:08~15:16

(3) (株)Harvestech 営業企画マネジャー 木内 高信 29 15:16~15:24

(4) 大分大学 工学部応用化学科 教授 石川 雄一 31 15:24~15:32

(5) 九州大学 大学院農学研究院 教授 立花 宏文 33 15:32~15:40

(6) 京都大学 大学院薬学研究科 准教授 久米 利明 35 15:40~15:48

(7) 亀田製菓(株) お米研究所 主任研究員 渡辺 紀之 37 15:48~15:56

(8) (株)サタケ 技術本部 精米プラントグループ長(執行役員) 水野 英則 39 15:56~16:04

(9) みたけ食品工業(株) 研究開発室 主任 土屋 紀之 41 16:04~16:12

(10) トリエスガイド(株) 代表取締役社長 小沼 政弘 43 16:12~16:20

(11) 京都大学 農学研究科 教授 河田 照雄 45 16:20~16:28

(12) 石川県農林総合研究センター 資源加工研究部流通加工グループ 主任研究員兼グループリーダー

三輪 章志 47 16:28~16:36

(13) (株)TAANE アグリ事業部長 渡辺 弘恵 49 16:36~16:44

(14) (株)島津製作所 分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター長 濱田 尚樹 51 16:44~16:52

(15) 神戸大学 大学院農学研究科 教授 水野 雅史 53 16:52~17:00

(16) 富士フィルム(株) ライフサイエンス事業部 商品グループ 部長 中村 善貞 55 17:00~17:08

(17) (一社)北海道食産業総合振興機構 研究開発部長 山中 芳朗 57 17:08~17:16

(18) 青森県立保健大学 (資料配布のみ) 健康科学部 教授 (社会貢献担当理事、研究推進・知的財産センター長兼務)

藤田 修三 59 -

(19) 神戸大学 (資料配布のみ) 大学院農学研究科 准教授 橋本 堂史 61 -

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1) 個人の健康状態に応じ、健康に役立つ成分を含む 農林水産物・食品を消費者に供給するシステムの確立

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課題提案資料

・研究の現状 農林水産物・食品の機能性評価について、当協会独自の評価システムを開発した。システムの内容は、既に公表されている論文(ヒト試験、動物試験、in vitro試験)を検索・収集し、公平性・透明性のある方法で、評価の対象となる論文の選別を行った後、一報一報について独自の採点表で論文の質を点数化する。その後、論文ごとに有意差によって効果のある・なしに分け、論文の量・質や一貫性を基に定めた評価基準を用い、有識者による第三者評価委員会で、食品成分のもつ機能性について総合評価を行う。また、機能性と安全性・品質は両輪であり、当協会では、文献検索、成分検査等による安全性・品質の確保のシステムも有しており、機能性と安全性・品質の両面からの評価を行う。 ・研究すべき課題の内容 上記の手法を応用して、農産物や食品の機能性について科学的に客観的に評価が可能と考える。これまで、実績として大麦由来ベータグルカン、酵母由来ベータグルカン、にんにくなどをこのシステムにて評価してきた。有効成分が複数で多岐に渡る農産物や食品などは評価が難しく、様々な方向からの検討(総合評価)が必要となる。さらに安全性・品質を確保するための文献収集、成分検査等により安全で有効な農産物・加工品の科学的評価が可能となる。

提案者名:公益財団法人 日本健康・栄養食品協会

タイトル:農林水産物・食品の機能性を実証する科学的評価システム

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) 20種類余りの農産物や食品の機能性、安全性・品質について、科学的評価に供することができるデータが蓄積されるものと考える。その際、これまでの食品成分の評価方法では得られなかった知見(機能)が新たに見つかる可能性も考えられる。これらから得られた機能性、安全性の科学的評価結果が、国民に広く認知されることにより、食育にもつながり健康増進にも資するものと考える。

想定される研究費の合計(千円): 100百万円

供給システム確立 (1)

日健栄協 提案資料1/2

1

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評価情報を登録するデータベースへ

医療・栄養指導システムでの活用へ

(1) CONSORT2010 声明:無作為化比較試験の結果を適切に記述し、報告の質を改善するため有識者・生物医学雑誌編集者等の国際的グループが2010年に発表、内容はチエックリストとフローチャート

(2) 座長: 金澤一郎氏 (国際医療福祉大学大学院院長) 他、薬学・統計学・栄養学・毒性学・リスクコミュニケーションの専門家および地方行政官僚等8名で構成 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(2013.3.8.)

「農林水産物・食品の機能性評価を実証する 科学的評価システム」イメージ図

機能性を 担保する 成分検査

機能性成分 の特定と 含量の 確認

科学論文の 検索・調査を中心とする 農林水産物・食品の

安全性確保 の仕組み

動物・in vitro 試験論文 ヒト試験論文

選択基準に則り論文の選別

抄録を確認し不要情報を除外

CONSORT2010声明(1)を参考に設定した 採点表により論文の質を点数化

試験デザインや結果等、個々の論文情報を抽出し、質・効果の有無をレベル分け、整理・集計

評価基準に基づき評価論文全体としての 研究のタイプ・質・数 及び 結果の一貫性 を評価、

有識者で構成する委員会(2)による総合評価 (レベル評価)

選択基準に則り論文データベースを検索(PubMed他)

機能性 安全性・品質

農林水産物・食品を評価

提案分野③ 個人に応じた供給システムの確立 研究内容②・③共通: 健康の維持増進に効果を有する成分の新たな農林水産物の開発・効果を高める加工技術の開発

第三者委員会の評価により、評価結果を機能性・安全性の両面から担保

日健栄協 提案資料 2/2

2 2

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課題提案資料

○研究の現状 神奈川県における「健康寿命日本一を目指す」政策の一環として、県内農水産物の高機能性についての分析研究と、その食品を活用した生活習慣病予防のための健康づくりメニューの開発を行い、県民に普及提供していく取組みを推進している。 【取組み内容】 ・県内産農水産物を中心とした食品の機能性の分析研究 ・機能性食品を活用した生活習慣病予防のための健康づくりメニューの開発 ・県、市、民間と連携したメニューや健康づくり情報の普及提供 ○研究すべき課題の内容 ・県内産農水産物の機能性の分析研究による生活習慣病予防に関する食品の機能性のエビデンスの確立 ・県民が身近な場で健康づくりに必要な情報を得たり、管理栄養士による個人指導を受けることができるとともに、 健康づくりメニューを利用できる医食農連携健康栄養センター機能の構築

提案者名: 神奈川県立保健福祉大学

タイトル: 医食農同源の推進における医食農連携健康栄養センター機能の構築

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) • 県民が健康づくりに必要な情報を得たり、管理栄養士による個人指導を受けることができるとともに、健康づくりメ

ニューを利用できる場として身近なスーパーマーケットや市場、食堂・レストラン等に医食農連携健康栄養ステーションを構築、さらに大学内にステーションを調整・統括するセンターを設置し、県民の健康生活の実現に資する取

組みを推進する。

想定される研究費の合計(千円): 100,000千円

供給システム確立 (2)

3

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医食農同源の推進における医食農連携健康栄養センター機能の構築

大学 医食農連携健康栄養ステーションの構築

スーパーマーケット 市場

食堂・レストラン 病院、診療所、福祉施設 薬局・ドラックストア‐

連携

情報提供 保健機能成分およびその活用法

依頼 データの取りまとめ他

県民の身近な施設に医食農連携健康栄養ステーションを構築し、管理栄養士を配置する

管理栄養士による情報提供

生活習慣病のリスクがある人の食生活診断と栄養指導

個々人のリスクに対応した保健機能を持つ食材の紹介およびレシピ提供

定期的な情報提供および問診により健康状態の評価

健康教室、料理教室の開催

医食農連携健康栄養ステーション内をネットワーク化し どこでも個人に対応した情報を提供できるようにする

生活習慣病予防に関する高機能食品のエビデンスの確立およびその活用法について検討

県内農水産物の保健機能成分に関する情報収集

食材及び献立の機能性研究

保健機能成分が含まれる食材を用いたレシピ・メニューの開発

医食農連携健康栄養ステーションを調整・統括するセンターの構築と運営

【行政機関】 神奈川県 横須賀市

農業技術センター

【民間企業】 IT関連企業

流通 食品メーカー

【各種団体】 神奈川県栄養士会 神奈川・食育をすすめる会

NPO その他

県内農水産物の機能性に関する情報および活用について広く県民に普及提供

健康人の増加、生活習慣病予防、健康寿命の伸長 4

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課題提案資料

・研究の現状

民間においても健康に寄与する成分(機能性成分)に着目した機能性種苗の開発は行われており、一部は市場に流通している。一方で、小規模分散型の生産現場という日本の農業の難しさから、その機能性種苗の特性を活用した商品化は進んでおらず、消費者に効果的に訴求できていない。また、生産現場では安定的に農産物を生産する精密栽培技術が開発され植物工場などとして利用されている。また、食品加工メーカーにおいては、品質を維持できる様々な加工・調理方法が開発されている。

・研究すべき課題の内容

本プロジェクトにおいては種苗会社が所有する機能性種苗、生産者の精密栽培技術、食品加工・流通メーカーの高品質加工技術等の実用化されたシーズを組み合わせ、国内農業生産が可能で、かつ、消費者が機能性を実感できる食品を提供するバリューチェーンを構築し、生み出される「機能性食品」を医学分野に提供することで、これら農産物・食品の摂取による生活習慣病リスク低減効果を実証する。

提案者名:NKアグリ株式会社 代表取締役社長 三原 洋一

タイトル:民間が開発した機能性種苗を利用した機能性食品提供技術開発と効果の実証研究

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) 個別の生活習慣病リスクに対応した食品群を開発し、その情報を消費者に提供する。 また生産方法(使用品種、栽培方法、加工方法)までを一体的に開発することで即実用化可能な研究とする。

想定される研究費の合計(千円): 90,000(3年間) 5

供給システム確立 (3)

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民間のシーズを結集してバリューチェーンを構築し、機能性食材を開発

医学部との連携

民間が開発した機能性農産物を利用した食品提供技術開発と効果の実証研究 (種苗会社、農産物生産法人、食品加工会社)

ニンジン タマネギ

トマト コラード

栽培管理:NKアグリ(株) 栽培:NKアグリ、生産者

加工・調理:日本製粉(株)

試験食によるヒト試験

バイオマーカーの分析

種苗・情報の提供: 種苗会社

品質を維持 できる高品質

加工技術

精密管理による 高精度 栽培技術

豊富な 機能性種苗

個別の生活習慣病リスクに対応した食品群の早期実用化

情報共有

6

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技術セミナー資料

研究の現状

・日本人のセレン摂取は、魚介類の割合が高い(35%)。マグロ肉から抗酸化能を有する新規セレン化合物セレノネインを発見(2010)。

・食品によってセレンの化学形態が異なるので、品目毎に機能性が異なる。

・セレンの前立腺がん予防効果:表示レベルB(消費者庁, 2012)。

研究すべき課題の内容:

魚食からのセレノネイン摂取によるレドックス機能の向上と、がん、糖尿病、認知症等の生活習慣病の予防効果を検証する。

1) セレノネインの分析マニュアル作成、分析法の妥当性確認、食品のセレン化学形態別含有量を測定、データベース化。

2) 培養細胞・動物試験でのオミックス解析によるセレノネインの安全性・生体抗酸化作用を評価し、バイオマーカーを開発。

3) 魚食頻度の高い地域住民1000人以上を対象とした疫学調査実施。血中セレノネイン量と生活習慣病との関連性を評価。

4) ヒト介入試験による魚肉・加工品からのセレノネイン吸収・代謝と生体抗酸化作用を解析。

5)セレノネインを含有する高機能・高品質な食品・養殖魚の開発と試験販売。

6) 管理栄養士によるレドックス機能を高めた調理法・食事メニューの設計と栄養指導法の確立。

提案者名:(独)水産総合研究センター中央水産研究所

魚介類由来セレンによる生活習慣病予防効果の解析とレドックス機能を強化した食品開発

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される効果 ◆魚食由来セレノネインの生活習慣病予防効果の科学的エビデンスを得る。 ◆レドックス機能を高めた食品を消費者に提供する。 ◆日本型食生活における魚食の意義を明らかにする。

想定される研究費の合計(千円):300,000千円

供給システム確立 (4)

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魚介類由来セレンによる生活習慣病予防効果の解析とレドックス機能を強化した食品開発

まぐろ、あじ、さば、いわしなど赤身魚に多く含まれます。

新しい抗酸化物質“セレノネイン”

selenoneine 2-selenyl-N,N,N-trimethyl-L-histidine

食品のセレン化学形態別分析とデータベース化 セレノネインの安全性・機能性の評価、バイオマーカーの開発

機能性を高めた養殖魚開発

中央水産研究所・日本食品分析センター

期待される成果 魚食由来セレノネインの生活習慣病予防効果の科学的エビデンスを得る。 ◆レドックス機能を高めた食品を消費者に提供する。日本型食生活の意義。

機能性の評価法開発

魚食頻度の高い地域住民の疫学調査 血中セレン量と生活習慣病との関連性評価

鹿児島大学

セレノネインによる防御効果(仮説) ヘムの自動酸化抑制:心臓病,ミオパチー ROS, NOSの消去:がん,免疫疾患,老化 グルコースラジカルの消去:2型糖尿病 メチル水銀の無機化・排出:解毒

魚食の疫学調査 ヒト介入試験:魚食による生体抗酸化作用の評価管理栄養士による調理法・メニューの設計と試験販売

女子栄養大学

栄養指導

水産総合研究センター

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課題提案資料

・研究の現状

20世紀型機能性農産物・機能性食品素材については、Pubmedからも知られるように、枚挙の暇がないほどの開発・評価研究が国の内外で行われている。しかし多くの研究は、単一の機能性因子の効果・効能をin vitro, in vivo(ヒト介入試験を含む)で検証するに止まっている。今後、より重要なのは、異なる単一因子同士が共存した際(すなわち実際の食事形態)での相乗・相殺効果であるが、未だほとんど行われていない。しかも、検証されつつある効果・効能は抗糖尿・抗肥満・抗加齢などのメタボリック・プロセスの改善に限局されている。これが現在の機能性食品研究の姿である。

・研究すべき課題の内容

生活習慣病のリスク軽減を20世紀型機能性食品研究だとすれば、次世代(21世紀型)機能性食品研究は、より広い視点から私たち各世代のQOLの改善・向上を目指したものでなければならない。そのためには、機能性に栄養性、嗜好性、そして安全性を加えた wholesome-ness兼備の食品を、農水省がリーダーとなって開始する必要がある。各論的には(1)ストレス緩和、認知・記憶の維持、感覚応答劣化防止など脳神経系効果を持つ機能性食品因子の発見と利活用すなわち脳科学・技術の導入、 (2)筋力低下(sarcopenia)、免疫力の制御などの細胞・身体生理効果、 (3)未利用・廃棄成分の機能性成分の抽出と利活用、(4) 幼児、若年女子、中年者、高齢者など年代・性別の個人に対応した機能性食品・農産物開発である。最終的にヒト介入試験が必要なことは自明の理で、いまさら特段にそれを強調するのは却っておかしい。QOL改善・向上のため、科学的エビデンスに基づいたwholesomeな機能性農産物・機能性食品素材を開発し、工業生産に導くことは国際的にも大いに注目され、年70億ユーロ(1兆円)の経済効果[Uniliver社試算(Brit. J. Nutr., 2002)]が見込まれ、その実現は食品産業界の最大の突破口の1つと見なされている。わが国の医療費削減に寄与するのも明らかである。

提案者名: 阿部啓子(東京大学・特任教授 / (財)神奈川科学技術アカデミー・プロジェクトリーダー)

タイトル: 次世代機能性食品の開発と用途展開

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) ①脳神経緩和(ストレス軽減)の機能をもつ香気成分、例えばR-(-)およびS-(-)リナロールを多量に含む果汁が開発される。②脳神経活性化を通じて代謝調節(肥満予防)に寄与する甘味料が開発される。③脳の可塑性(plasticity)を改善する離乳食が開発され、食育の科学に新たな概念が与えられる。④リグナン由来のポリフェノールなどにエピジェネティクスな解毒機能のあることが解明され、コンジェナーを利用した新食品が開発される。⑤コーヒーのクロロゲン酸が抗酸化機能以上の効能(抗がん)があることをゲノミクスで検証し、このポリフェノールの新しい用途が開発される。⑥「1個のリンゴで医者知らず」といわれるように、ポリフェノールの酵素褐変を阻止する果実の加工技術の開発により、新しい抗がん飲料が作製される。高度の農産科学・技術の展開こそ次世代機能性食品の誕生を可能にする。

想定される研究費の合計(千円): 1000,000 9

供給システム確立 (5)

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次世代機能性食品の開発と用途展開

子供

中年

柑橘香 (R)-(-)-リナロール (S)-(-)-リナロール

β-クリプト キサンチン

EPA, α-リポ酸

ミネラル ( Fe, Ca, Mg, Zn, P)

ポリフェノール (フラボノール, カテキン, リグナン, クロロゲン酸)

電解水素水

多糖 (フコイダン, アルギン酸)

ハーブ、杜仲茶

桑葉

自然薯 (ムカゴ)

農林水産物 食品因子 科学的 エビデンス の実証

ストレス

認知

感覚応答

脳機能

細胞・身体機能

筋肉・骨

免疫増強・

消化・吸収

糖・脂質代謝

メタボ機能

生体応答

高齢者

若年女性

抗メタボに加え、脳機能および細胞・身体機能改善のための“Quality of Life (QOL)”を対象とした 次世代機能性食品を開発する。とくに個人個人のQOLの向上のための農林水産物を国民に提供する

抗アレルギー

ヒト介入テスト

商品開発・提供

データベースの構築・提供

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課題提案資料

・研究の現状

東京農工大学農学部では、これまでに高収益「果樹工場」モデルの都市型先進ブルーベリー工場を設置し、農業情報統合管理システムを利用した「超節水精密農業技術の開発」、医農連携の機能性病院食開発に向けた「アグロメディカルイニシアチブ」を推進している。また、専門病院や地域病院との連携による川崎病や慢性感染症等の調査研究、脳発達障害、糖尿病、骨粗鬆症、発がん等の実験的リスク評価研究、伴侶動物の慢性疾患治療について実績が豊富である。

・研究すべき課題の内容

ヒトと伴侶動物の健やかな共生社会を目指し、本学農学研究院のライフサイエンス研究機能をコアとして、農学部附置研究施設のそれぞれ特化した機能の有機的な連携を図る。即ち、年間を通じて安定生産可能なアントシアニン高含有ブルーベリーの生理活性探索を多角的に展開し、その成果を元に、実際に地域拠点病院と連携して小児や高齢者、動物医療センターを通じて伴侶動物に食品あるいはサプリメントとして提供した際の、疾患や病態の予防ないし改善に関する有効性評価システムを構築する。更に、先行するアグロメディカル・イニシアチブと連携して、新しい病院食やペットサプリメントの開発と病院内植物工場の提案を行い、人材養成・技術普及・新市場開拓のモデル事業の設立を図る。

提案者名:渋谷 淳、渋澤 栄、荻原 勲 (東京農工大学)

タイトル:抗酸化成分アントシアニン高含有ブルーベリーの医学的エビデンスに基づいた都市型安定供給システムの開発

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) ブルーベリーを食べることにより小児や高齢者の慢性感染症、川崎病、脳発達障害、糖尿病、骨粗鬆症、発がんや視力障害の発生リスクを下げ、伴侶動物の慢性疾患も寛解できる。病院内植物工場による供給体制の構築を目指した、病院食としても取り入れられるような新しい機能性食品やペットサプリメントの開発が可能となり、人材養成・技術普及・新市場開拓のモデル事業組織設立に繋げる。

想定される研究費の合計(千円):441,600

供給システム確立 (6)

11

Page 16: 機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に …...機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

抗酸化成分アントシアニン高含有ブルーベリーの医学的エビデンスに基づいた都市型安定供給システムの開発

大学内付置研究施設連携リングの形成

先進植物工場 精密農業生産

農学研究院 抗酸化成分の有効性探索・評価

動物医療センター 伴侶動物の慢性疾患に対

する有効性の評価

国際感染症センター 小児や高齢者の疾患の防止・改善効果の評価

・有効成分高含有植物栽培技術の開発 ・超節水・低エネルギーのモバイル植物 工場モデルの開発

適用可能な疾患や病態の探索

慢性疾患や発がんの防止効果

神経発達保護効果

川崎病や感染症、慢性疾患を対象 ・大規模な疫学調査の実施 ・地域拠点病院と完全連携 ・次世代シークエンサーによる ウイルス感染評価

例:先天性門脈シャントによる 肝障害の寛解評価

抑制

傷害

アントシアニンの 生体調節作用 に着目

アグロセラピーを通じたヒトと伴侶動物の健やかな共生社会の実現

*新しい病院食やペットサプリの開発 *病院内植物工場の提案

モデル事業の展開へ

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Page 17: 機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に …...機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

2) 健康に役立つ成分の効果の解明と、成分を増強・ 安定化する生産技術の開発による新たな農林水産 物の開発

Page 18: 機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に …...機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

課題提案資料

・研究の現状

メタボリックシンドロームを抑制する食品成分の既知の作用機構として、例えば脂質代謝遺伝子の変動など、表層的な知見しか集積されていない。また、「何のために脂肪が減少するのか?」に対する本質的な理由や必然性は未だ不明である。薬剤とは対照的とも言える、このような作用機構の不明瞭性は、過剰摂取による副作用問題や近年の健康食品の市場規模の縮小傾向にも直結していると考えられる。

・研究すべき課題の内容

上記の問題は、我々が最近発見した、ファイトケミカル(PC)のプロテオストレス(PS)効果*に着眼したアプローチで解決できる可能性がある。第一に、 PCの脂肪燃焼作用がPS効果に由来することを確証する。次に、緑茶やショウガ類などに注目し、PS効果に優れた食素材や品種を見出す。さらに、血清マイクロベジクルなどを対象としてPSマーカーを探索し、種々の病態や加齢との相関性を解析すると共に、マーカーのモニタリングによって個々の摂取条件の最適化を図る。*Ohnishi et al., PLoS ONE, in press.

提案者名:村上 明(京都大学大学院農学研究科)

タイトル:食品のプロテオストレス効果によるメタボリックシンドロームの制御

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) 1. PS効果で脂肪が燃焼するという包括的なメカニズムを証明する。2. 食品企業や研究機関で活用できるPSマーカーを発見し、適正摂取条件の決定に寄与する。3. 本成果を社会にわかりやすく説明することで健康食品への信頼とその需要を回復させ、同時に過剰摂取などによる副作用問題を低減化する。

想定される研究費の合計(千円):45,000(3年間)

農林水産物開発 (1)

13

Page 19: 機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に …...機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

食品のプロテオストレス効果によるメタボリックシンドロームの制御

ポリフェノールなどの ファイトケミカル(PC) は動物にとっては異物

■研究背景

■PS効果を有する抗メタボ食品

■期待される研究成果とその波及効果

・植物が環境適応のため合成 ・体内吸収効率が低い ・速やかに解毒・排出される

(NARO HPより)

茶品種・ショウガ類などを評価

■PSマーカー測定による個々の適正摂取量の推奨

個人差のあるストレス耐性能をPSマーカーで評価

✓新奇な抗メタボ食品の創成 本質的な作用機構が提示でき、エビデンスの乏しい健康食品は淘汰される。健康食品への不信感が軽減され、当該産業の再活性化が期待できる。

✓ストレス耐性能の評価技術 ✓目に見える食育への貢献 加齢や健康状態、さらには摂取する食品により変動するストレス耐性能マーカーの評価法が商品化され、食品企業、保健機関、大学などで活用される。

『…「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる…』

(食育基本法の前文より)

不足・過剰 適量 ‘’多けりゃ効く’’ ものではない

’’タンパク質修復に必要な ATPを脂肪燃焼により供給’’

PCによる プロテオストレス(PS) (※本提案者が発見)

タンパク質

変性 修復 ATP*

仮説

根拠 *β酸化によって

>100ATP/脂肪酸 を産生できる

14

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課題提案資料

・研究の現状

核内受容体は発生、恒常性、代謝など、生命維持の根幹に係わる遺伝子転写に関与している重要な転写因子群であり、主として医薬品開発に現在用いられている。ヒトに対する作用は非常に多様であるが、食品素材の機能性という観点では、多くの人が感じ、予備軍が多いと言われる生活習慣病に関わる症状の穏やかな改善が望まれる。しかし、これまでに食品の機能性評価や品種改良に、この様な手法が利用されたことはない。

・研究すべき課題の内容

これまで医薬品開発に用いられてきた核内受容体活性化の評価を農林水産物・食品開発へ応用する。従来と異なる点は、医薬品開発では対象疾病は一つだが、食品・食品素材の機能がよく知られている訳ではないので、今回は多種の核内受容体を用いることにより網羅的に探索する(産総研では現在12種の評価系が稼働中)。また、品種の評価を行うためには、様々な栽培環境、保存環境が可能な限り管理された素材を用いなければ、成分が変化する可能性がある。そこで、様々な作物品種を有する農研機構北海道農研と連携し、核内受容体活性化を指標とした食品素材の機能性評価の技術およびそれを品種改良技術について新たに開発する。

提案者名:森田直樹(独立行政法人産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門)

タイトル:核内受容体を用いた農産物の機能性評価と新品種育種への応用

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) 概ね300種以上の作物品種の核内受容体活性化評価を行うとともに、有用品種に対しては栽培方法、貯蔵方法等が活性化に及ぼす影響も明らかになる。これら結果をフィードバックすることで、これまでにない品種選別及び育種に繋がることが期待できる。また、このようなデータを示すことは、日本産農産物のブランド力の更なる向上に繋がり、農産物等の輸出を視野にいれた産業振興への発展が期待できるとともに、評価手法のグローバルスタンダード化にも繋がると期待できる。

想定される研究費の合計(千円): 30,000千円 15

農林水産物開発 (2)

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核内受容体を用いた農産物の機能性評価と新品種育種への応用

コア技術のイメージ

核内受容体活性化と関連疾患

核内受容体活性化評価

核内受容体アッセイ法による

機能性評価

候補作物の選別

解析結果からの育種への活用

解析結果の提供

解析用試料の提供

農業生産者 食品加工メー

カー

農産物・食品による国民の健康増進を目指す

農作物の専門家が選定した品種と栽培が確定した試料

様々な作物品種、 ミュータントライブラリー、 履歴がはっきりした試料、 etc

独)産業技術総合研究所 北海道センター (生物プロセス研究部門)

独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 芽室研究拠点

農産物・食品の隠れた機能性が予測できる

評価手法のグローバルスタンダー

ド化

有用品種の開発、既存食素材の 差別化・ブランド化

消費者

有用作物情報

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課題提案資料

・研究の現状 古くより食用されているアマニは不飽和脂肪酸やリグナン含量が高く、健康促進効果が注目されている。愛媛大学農学部で

は、この点に着目して、リグナン化合物のフードファクターライブラリーの構築と機能性スクリーニングにより、セコイソラリシレジノールの抗メタボリックシンドローム機能を発見した。さらに、

① 機能性食品素材の開発に向けた機能性成分の精製技術の確立に成功した。 ② 農、医、理工、文の総勢40名による学際的医農連携共同研究チームによる研究拠点の形成として、平成25年4月1日より愛

媛大学農学部附属食品健康科学研究センターを設立する。 同センターを活用し、機能性研究を進めることで新産業の創出も可能と思われたが、アマニは北海道以外の温暖な地区では生

育しない。Breakthrough → 愛媛大学ではSpeaking Plant Apploach (SPA、太陽光利用型知的)植物工場による植物機能性物質の生産性向上モデル研究を行っている。植物工場は、高付加価値作物種の選定が大きな課題。

・研究内容 ① 植物工場でアマニ栽培の実現とSPAで担保する機能性成分含量を高める栽培法の確立 ② リグナンの作用メカニズム解明 ③ 社会科学的調査に基づくマーケティングと製品開発企画(試作開発) ④ ヒト臨床試験(疫学調査および介入試験)による効果の検証 → トクホ申請用データ取得へ

提案者名:愛媛大学(農) 岸田太郎、仁科弘重、菅原卓也、(医) 満田憲昭、日本製粉 間和彦

タイトル:SPA植物工場技術と医農連携による健康科学研究が融合した愛媛大学オリジナル次世代農業モデルによる機能性食品の開発研究

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) リグナンを含有するトクホ食品の開発が最終目標。SPA植物工場により、周年・高効率リグナン強化原料の生産を実現し、その加工食品を開発する。アマニ由来リグナンを摂取することによる、生活習慣病予防(特に脂肪蓄積)効果を臨床的に実証する。研究と人材育成機能を有する植物工場研究と医農連携による機能性食品研究の両者を活かした愛媛大学独自の次世代農業モデルを提案する(SPA植物工場の優位性:周年栽培、環境汚染に強い、復興促進等)。

想定される研究費の合計(千円):300,000千円

農林水産物開発 (3)

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抽出・分離・精製技術 を用いた素材化・製品化

高リグナン食品素材の開発

日本製粉㈱

医学的データの取得! 作用メカニズムの解明! リグナン高含有植物・

製品の開発!!

期待できる成果

産学官連携による革新的な食品開発研究モデルの確立

フードファクターライブラリー からのスクリーニング

高リグナン含有機能性素材の新規原料作物の検索

愛媛大学農学部・ 食品総合研究所・愛媛県

植物工場によるリグナン高含有植物の 栽培法の検討

愛媛大学植物工場研究センター・ 愛媛県

食品機能性・安全性

リグナンの生体調節機能の解析

リグナンによる生活習慣病予防効果検証のための観察および介入研究

愛媛大学農学部・ 大学院医学系研究科等

食品健康科学研究センター

血中

アマ

ニリ

グナ

ン濃

最高:15.1 nM

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課題提案資料

・研究の現状

京都府や奈良県では、地域資源である「伝統野菜」の機能性を高める栽培・加工方法の研究を行い、伝統野菜復活活動や生産振興、商品開発を進めている。また、消費者からの信頼を得るため、機能性成分の特定、エビデンス取得を進めている。さらに、植物工場と連携し、機能性に関する基礎的なデータ収集も行っている。

・研究すべき課題の内容

全国の各地域が保有する、味や香りなど独自色の強い地方野菜(伝統野菜)の機能性評価を行い、それらを活かす栽培法、加工法を検討し、生産振興や加工品開発に活用、ひいては消費拡大へと繋げる。

この際、機能性の中でも、分析・評価方法が標準化されているもの、また、エビデンス収集が比較的容易なものから始める。葉菜類など、栽培が容易なものについては、植物工場を活用し、栽培条件と機能性成分の関係を明らかにし、有望品目については植物工場での栽培実証を進める。

提案者名: 京都府農林水産技術センター 園芸部 城田浩治

タイトル: 地方野菜の機能性とその利活用

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) ・地方野菜の「機能性」をキーワードとした付加価値化、マーケティングへの利用等による生産拡大、地 域振興。 ・地方野菜見直しを契機とする全体的な野菜摂取量の増加(目標摂取量350gを目指す) 、このことによ る疾病リスク軽減。

想定される研究費の合計(千円): 100,000

農林水産物開発 (4)

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目的 全国各地の特徴ある地方野菜(伝統野菜)を対象に機能性を検索し、これを高める栽培法や加工法を確立する。さらに、エビデンスを取得し、地方野菜を機能的に評価することで、生産振興、加工商品開発ひいては地域振興につながり、最終的に、野菜全体の消費量の増加に役立てる。

効果

・ 地方野菜に新たな付加価値を付与でき、生産振興に繋がる。 ・ 地域資源の再評価、地域振興に繋がる ・ 野菜全体の消費量増加に繋がる

機能性を維持する新商品開発 生産現場への普及

地方野菜を機能性で評価

エビデンス 実験動物等を用いたエビデンス収集

機能性評価・分析 評価・分析法が標準化されているもの

地方野菜の機能性とその利活用

京の伝統野菜 桂ウリ 佐波賀ダイコン

大和野菜 大和マナ 大和イモ

なにわの伝統野菜 碓井エンドウ 大阪シロナ

丹波地域 特産野菜 ヤマノイモ 黒大豆枝豆 岩津ネギ

栽培条件・加工条件 植物工場等の活用、高機能野菜作出

例)

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課題提案資料

・研究の現状 多くの研究結果から野菜類ではアブラナ科、セリ科、ナス科、ユリ科などの重要度が高いとされている。長野県野菜花き試験場はアブラナ科(キャベツ・ケール)、ナス科(加工トマト)、セリ科(セルリー)、ユリ科(アスパラガス)を研究対象としており、これまでに機能性成分として広く認知されているグルコシノレート類のグルコラファニンを高含有するケール品種「ハイパール」や「カロテノイド類のリコペン」を高含有する加工トマト品種「リコボール」を育成してきた。 これまでの育成品種は各々が加工用品種として地域産業で利用されているが、品種特性の高度利用や原料等の組み合わせによる複合的な製品開発などは行われていない。 一方、機能性成分に関しては含有量の向上のみが研究目標とされ、機能性成分の持つ効果、有効性、利用法や植物体内に含有される有害成分について十分な研究が出来ていない。特に、ヒトに対してどれくらいの効果や影響があるか必要な検討がなされていない。また、実際の生活の中でそれらの成分をどれくらい、どのようにして何から摂取すれば効果的かつ容易に活用できるか具体的に示しているものは少ない。 ・研究すべき課題の内容 (1)野菜類に含有される機能性成分のヒトでの有効性の検証 (2)機能性成分を定量・定性する分析技術の開発 (3)機能性食品(加工品を含む)の原材料となる機能性成分高含有品種の開発 (4)機能性成分高含有品種に適した栽培技術の確立 (5)開発した機能性成分高含有品種を利用した加工食品や新しいメニューの開発

提案者名:芹澤啓明

タイトル:野菜類の機能性成分を利用した野菜の消費拡大と健康長寿な国づくり

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) (1)機能性成分高含有のアブラナ科・ナス科野菜およびその加工食品を食べることにより、メタボ予防、 ピロリ菌増殖抑制、血圧上昇抑制、花粉症、骨粗鬆症などの症状軽減などの疾病発生リスクを軽 減を実証できる。 (2)カット野菜、野菜ジュースのような簡便で安定的に入手可能な供給体制をモデル的に構築できる。 (3)新たな機能性成分高含有育種素材を開発できる。

想定される研究費の合計(千円):23,000 21

農林水産物開発 (5)

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野菜に含有される機能性成分の医学的検証と 機能性成分高含有系統育成など活用に関する研究

(1)アブラナ科野菜に含まれるグルコシノレート類「グルコラファニン」 (2)ナス科野菜に含まれるカロテノイド類「リコペン」

貯蔵や加工が成分含有量 に及ぼす影響評価

機能性成分高含有農産物・加工食品の開発

貯蔵や加工が成分含有量 に及ぼす影響評価

ヒト介入試験等により、抗メタボ、抗炎症作用を検証する。

ヒト介入試験、栄養疫学研究を実施し、野菜類の グルコシノレート・カロテノイド類の抗メタボ、抗ピロリ菌、 免疫調節作用を実証する。

②普及活動 農業改良普及センターでの栽培技術指導、地域保健センターでの健康・栄養指導

①啓蒙活動 大学医学部、農業関係試験場、地域保険センターや病院主催の研修会開催

③販売促進 コンビニ、ドラッグストア等への情報発信や病院、介護施設へのサンプル提供

農産物・食品による野菜の消費拡大と健康長寿社会の実現を目指す

2.機能性成分の生態調節機 能の解析

3.機能性成分高含有品種の 検索および開発、加工生産 技術の開発

1.機能性成分分析技術の開 発、データベースの構築

高含有品種の育成と 長野・茨城・千葉な どの産地活性化

高機能・高品質な農 産物・加工食品の提 供と消費拡大

機能性農産物による 健康維持・増進への 貢献 22

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課題提案資料

・研究の現状

各種の健康機能性成分を高く含有するが、極晩生・耐倒伏性弱で収量と成分が不安定な「黒千石」を、北海道北竜町の黒千石事業協同組合と連携して改良するために、早生品種との交配を行って選抜固定を進めてきて、現在は雑第4世代~第7世代・150系統を保有している。実用形質の遺伝的固定はほぼ満足すべきレベルに達したので、本年(平成25年)から3ヶ年の目標で生産力と成分分析を行い、品種候補となる有望系統を育成するとともに、機能性成分をより向上させるとともに安定した収量を得るための栽培技術の開発が必要である。

・研究すべき課題の内容

1.「黒千石」の主産地(北竜町、岩見沢市)にて、安定多収でかつ機能性成分の高い系統の育成試験を継続するとともに、品種化に向けて試験地点を増やして生産力検定および現地適応性試験を実施、機能性成分の分析点数を増やす。

2.有望系統について機能性成分を向上・安定化させるための播種期、施肥量、裁植密度、植物調節剤 の効果を明らかにするために栽培試験を実施する。

提案者名: 三分一 敬 (公益財団法人 北農会 会長・黒千石事業協同組合研究アドバイザー)

タイトル: 極小粒・黒大豆品種「黒千石」の機能性成分向上のための品種改良と安定栽培技術開発

農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」

期待される研究成果(おおむね3年以内で達成可能なもの) アントシアニン、抗酸化機能、免疫機能性を向上させる成分を高く含有する「改良黒千石」を安定して生産、供給することにより、国民の健康の維持増進に必要な大豆健康食品の生産と流通・消費拡大が可能となる

想定される研究費の合計(千円): 9,000 千円

農林水産物開発 (6)

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Page 29: 機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に …...機能性を持つ農林水産物・食品開発において 早急に解決すべき研究課題について

極小粒・黒大豆品種「黒千石」の機能性成分向上のための品種改良と安定栽培技術開発

「黒千石」は他の豆よりも機能性成分の含有率が高く、抗酸化力が大きい

ORAC:活性酸素吸収能力 極晩生で収量と品質が不安定などにより生産量が少ない 希少性が高い代わりに、一般消費者への流通が限定

早生品種との交配 選抜 固定 第4世代 ~ 第7世代 150系統を保有 (実用形質の遺伝的固定はほぼ達成)

生産力検定 機能性成分の分析

新品種「改良黒千石」を実現

今後 3年間

・7~10日早生化

・収量30%アップ

・耐倒伏性が強

・機能性成分向上 栽培技術開発

播種期、施肥量、裁植密度 植物調節剤の効果

新品種「改良黒千石」の普及により ・栽培面積の増加と生産量拡大 ・高付加価値大豆の安定的供給 ・「幻の黒大豆」が復活

多様な高機能健康食品の開発と、六次産業化による流通量の増大と消費拡大

品種まで後一歩 試験を加速

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