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平成 29 年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業 鉱物資源基盤整備調査事業 (鉱物資源の供給安定性評価調査) 報告書 平成 30 年3月 30

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平成 29 年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業

鉱物資源基盤整備調査事業

(鉱物資源の供給安定性評価調査)

報告書

平成 30 年3月 30 日

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目 次 I. 調査概要 .................................................... 1

I-1. 背景と目的 ...................................................... 1

I-2. 検討事項 ........................................................ 3

II. 評価モデルの開発 ........................................... 5

II-1. 評価方法および利用データ ...................................... 5

1. 評価軸の構成要素の選定 .............................................. 5

2. 評価モデルに用いるデータの選定 ..................................... 10

3. 各構成要素間の相関関係の整理 ....................................... 19

4. 評価結果に関する表現方法の整理 ..................................... 23

II-2. 評価結果 ..................................................... 26

1. 各鉱種個別評価(鉱種横断的評価) ................................. 26

2. 各鉱種個別評価(鉱種別評価:データ捕捉率の高い一部鉱種のみ) ...... 38

II-3. 鉱種間及び表現方法の違いによる比較 ............................ 46

III. 海外有識者との意見交換 ................................... 48

III-1. 米国 ......................................................... 48

1. CMI(Critical Material Institute)におけるクリティカリティ評価 ... 48

2. イェール大学 ..................................................... 50

3. 第7回日米欧三極クリティカルマテリアル会議 ....................... 51

III-2. 欧州 ......................................................... 52

IV. 今後の課題 ................................................ 54

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検討会メンバー

(座長)

村上 進亮 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 准教授

(委員:氏名五十音順)

安達 毅 秋田大学大学院国際資源学研究科資源開発環境学専攻 教授

高津 明郎 一般社団法人メタル経済研究所 主任研究員

南斉 規介 国立研究開発法人国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター

国際資源循環研究室 室長

畑山 博樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門

社会と LCA 研究グループ 主任研究員

(オブザーバー:氏名五十音順)

児玉 敬義 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構希少金属備蓄部

企画課 課長

左藤 富士紀 双日株式会社化学本部資源化学品部 エレクトロマテリアル課 課長

関本 真紀 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 調査部

金属資源調査課 課長

成田 正幸 本田技研工業 株式会社 資源循環推進部 技師

堀 琢磨 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構金属企画部企画課

担当調査役

(経済産業省)

大東 道郎 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課 課長

伊藤 文人 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課 課長補佐

門 寛子 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課 課長補佐

大今 宏史 経済産業省製造産業局金属課 課長補佐

大木 章弘 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課企画調整係長

(事務局:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

清水 孝太郎 環境・エネルギー部 主任研究員

大澤 拓人 環境・エネルギー部 副主任研究員

江岸 伸 環境・エネルギー部 研究員

井上 領介 環境・エネルギー部 研究員

迫田 瞬 環境・エネルギー部 研究員

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I.調査概要

I-1. 背景と目的

省エネルギー社会の実現や再生可能エネルギーの導入加速に資する省エネ機

器や再生可能エネルギー関連設備(次世代自動車等に用いられるリチウムイオン

電池・燃料電池・モーター及び太陽光発電パネル等)の製造には、レアメタル等

の鉱物資源が必要不可欠であり、また、そうした鉱物資源の持つ材料としての特

性を最大限に引き出すことで、我が国ものづくり産業は高い産業競争力を生み出

してきた。

上記のように、鉱物資源は我が国の経済活動の基盤を支える一方、その大宗を

輸入に依存しており、供給の不確実性が常に存在することから、鉱物資源の安定

供給を確保していくことが我が国にとって継続的かつ重要な課題である。

この点については、「エネルギー基本計画」(平成26年4月) 1等において調

達先の分散化、上流権益の確保、供給国との関係強化等を通じて資源を安定的か

つ経済的に確保していく必要性が位置付けられているとともに、総合資源エネル

ギー調査会資源・燃料分科会報告書(平成27年7月) 2においても、個々の鉱種

毎に需給構造、市場動向等が異なり、それに応じて具体的な方策も異なり得るこ

とから、鉱種毎に実態を踏まえた戦略的な安定供給確保策を構築する必要がある

とされている。

本調査は、鉱物資源の供給安定性に係るリスク評価手法(以下「評価モデル」

という。)を策定し、鉱種毎の評価を行うことで、エネルギー使用合理化の推進

に必要不可欠な鉱物資源の安定供給確保に必要な施策に反映させることを目的

とする。

昨年度は、鉱種毎の評価を行うに当たり、既往の鉱物資源の評価モデルに関す

る研究の彼我比較や、それぞれの活用目的、評価対象項目、定量可能性、メリッ

ト・デメリット等について調査を行い、あるべき鉱物資源の評価モデルの具体案

について調査及び委員会における議論を行った 3。この検討において、評価に盛

り込むべき構成要素、評価モデルに用いるデータの選定、評価結果の表現方法に

ついては継続して検討課題となっている。

これを踏まえ、今般、有用な構成要素の選定と評価結果の表現方法を含めた評

価モデルの構築と、その評価モデルに従って算出した鉱種毎の評価結果に基づく

1 エネルギー基本計画(平成26年4月)

http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/140411.pdf 2 総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会報告書(平成27年7月)

http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shigen_nenryo/report_02.html 3 平成28年度エネルギー使用合理化鉱物資源開発推進基盤整備事業(鉱物資源基盤整備調査事業(鉱

物資源の供給安定性評価調査)) 報告書

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000341.pdf

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リスク軽減等の対策手段を見据えた実用化への取組が求められるため、本調査を

実施した。

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3

I-2. 検討事項

以下を実施した。

■評価モデルの構築

① 評価軸の構成要素の選定

昨年度の検討結果を踏まえ、重要かつ有効な構成要素の選定を行った。

② 評価モデルに用いるデータの選定

①で選定した構成要素に従い、評価モデルに入力すべき定量化されたデー

タの選定及び試算を行った。なお、本事項の実施に当たっては、公表データに

加え、有料データベースや出版物等(例:SNL Metals & Mining Database、

Mineral Commodity Summaries等)を活用した。

③ 各構成要素間の相関関係の整理 各構成要素間の相関関係整理

各構成要素間の相関関係の整理 各構成要素間の相関関係について整理す

るとともに、鉱物資源の安定供給の確保のために実施している施策がもたらす

効果を定量化するための検討を行った。

④ 評価結果に関する表現方法の整理

構成要素によってもたらされた評価結果を絶対・相対比較することが可能

になるように、評価結果の表現方法を検討した。

■構築した評価モデルに基づく鉱種毎の評価結果の算出と精査

構築した評価モデルを用いて、鉱種毎に評価結果を算出した。対象鉱種は、

Li,Co,Ni,Cu,REE,PGM,W,Mg,Be,Re,Ti,Cr,Mo,Mn,Nb,P,Zn,Sn,Pb,Sb,Ta,In,G

a,C,Ge,Zr,Sr,V,F,Au,Agの31鉱種を基本とし、各鉱種に関するデータの定量

化可否等についても含めて評価した。この結果を踏まえ、下記に記す検討会に

て評価モデルについて精査した。

これらを行うに際しては、「鉱物資源のクリティカリティ評価モデル構築

のための検討会」を設置し、検討会を4回開催した。検討会では、イ) 評価モ

デル構築の考え方、ロ) 評価モデルの構成要素の絞り込みと論点整理、ハ) 評

価モデルの将来にわたる継続改廃方法とその可能性、ニ) 政策展開における鉱

種毎のリスクシナリオの策定及び検討、について検討を行い、評価モデルの構

築の方向性についてとりまとめることとし、検討会において新たに調査すべき

事項が発生した場合は、その事項についても調査を行うものとした。

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■第1回会合

日時:平成29(2017)年10月31日(火)13:00~15:00

場所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)会議室

主な議題:

・ 昨年度検討課題の確認について

・ 資源リスク評価に関して注目すべき事項について

・ 鉱物資源リスク評価手法の開発に向けた展望について

・ 評価軸の構成要素について

・ 指標間の相関関係の整理・取扱い検討について

■第2回会合

日時:平成29(2017)年12月7日(木)13:00~15:00

場所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)会議室

主な議題:

・ クリティカリティ評価のユーザーと各当事者からみたリスクの考え方

について

・ 評価軸を構成する要素(データ)の入手結果・表現方法の比較検討につ

いて

■第3回会合

日時:平成30(2018)年1月24日(水)13:00~15:00

場所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)会議室

主な議題:

・ 評価モデルに基づく鉱種毎の評価結果の算出と精査について

■第4回会合

日時:平成30(2018)年2月28日(水)10:00~12:00

場所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)会議室

主な議題:

・ 評価モデルに基づく鉱種毎の評価結果の算出と精査について

・ 資源リスク評価に関する今後の課題

■検討状況に関する海外有識者との意見交換の実施

米国において、類似する研究を行っている有識者と本検討の状況について

意見交換を実施し、評価モデルの更なる精査に役立てた。

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II.評価モデルの開発

II-1. 評価方法および利用データ

1. 評価軸の構成要素の選定

(1)昨年度の検討結果

昨年度調査 4では評価モデル構築の考え方として、評価軸は国際的に広範に受

け入れられている「供給リスク」と「国内産業への影響度(脆弱性)」の2軸を

採用することが提案された。

図表 1 昨年度検討会における評価モデル構築の考え方

(出所)平成28年度エネルギー使用合理化鉱物資源開発推進基盤整備事業(鉱物資源基盤整備調査事

業(鉱物資源の供給安定性評価調査)) 報告書

評価軸の構成要素である供給リスク(Supply Risk)については、Dewulfら(2016)

の論文に提示されているTERPのフレームワークに沿って既往研究で採用されて

いる要素を過不足なく選定し、その際は探鉱開発の評価、我が国/他国の権益、

リサイクルによるリスク緩和等の要素も考慮することとした。TERPのフレーム

ワークに基づく構成要素(供給リスク)は図表 2の通りである。

4 平成28年度エネルギー使用合理化鉱物資源開発推進基盤整備事業(鉱物資源基盤整備調査事業(鉱

物資源の供給安定性評価調査)) 報告書

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000341.pdf

検討項目 策定の考え方(案)評価に盛り込む要素

評価軸 • 国際的に広く採用されている2軸(供給リスクと国内産業への影響度)を採用

• 環境側面は供給リスク軸に含めて整理評価軸の構成要素 供給リスク

(Supply Risk)• Dewulfら(2016)の論文に提示されているTERPのフレームワー

クに沿って既往研究で採用されている要素を過不足なく選定• 探鉱開発の評価、我が国/他国の権益、リサイクルによるリスク緩和

等の要素も考慮国内産業への影響度(Vulnerability)

• 既往研究で採用されている要素を踏まえ、重要性/刷新能力の各要素から過不足なく選定

• サプライチェーンの下流を可能な限りカバー

定量化手法 構成要素を定量化した指標(indicator) • なるべく少ない指標で各要素を表現するのが理想• データのアベイラビリティも考慮

各指標の正規化(Normalization) • 各指標値の最大値と最小値に基づき0~1の値に割付

指標に基づく各要素のスコアの重み付け(weighting)

• まずは重み付けしない(等分重み付けする)方法で試算し、結果を見ながら調整(将来的には、過去のリスクイベントの要因分析に基づく重み付けを実施)

Criticalか否かを判断する閾値(threshold) • 現時点では閾値を設けず、鉱種間を相対的に評価

評価結果の表現方法 • 2軸でのプロットをメインとする• 加えて、重み付けする前の各要素のスコアをレーダーチャートで表現

昨年度の検討事項

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図表 2 TERPのフレームワークに基づく構成要素(供給リスク)

カテゴリ 構成要素

T(物理的な供

給難)

資源枯渇、開発難化 生産量の弾力性不足

水や労働力、インフラ等の副次的開

発リソースの不足

E(経済・資源ナ

ショナリズムに

よる供給難)

埋蔵国寡占 生産コスト

生産国寡占 生産量変化

輸入相手国の集中 副産物としての生産に起因する不

安定性

生産企業寡占 鉱石・地金の生産率

他部門需要との競合 資源ナショナリズム

需給ギャップ 貿易障壁・禁輸

価格の変動 輸入依存度 自国生産割合

新規鉱山開発・拡張投資の程度 自国企業権益の獲得割合

R(社会的要素

による供給難)

自然保護等による土地利用規制 倫理的調達の規制

地域社会の受容の問題 廃棄物からの回収政策不足による

資源流出

人や環境への有害性による事故時

のリスク

P(採掘国、企

業の統治能力

不足)

生産国のガバナンス問題(一般的な

カントリーリスク)生産企業のガバナンス問題

(出所)Dewulf et al. (2016) 「Criticality on the international scene: Quo vadis?」 et al.

を基にMURC作成

国内産業への影響度(Vulnerability / Impact of Supply Restriction)に

ついては、既往研究で採用されている要素を踏まえ、重要性/刷新能力の各要素

から過不足なく選定することとした。その際は、サプライチェーンの下流を可能

な限りカバーすることに留意するとされた。

そして、構成要素を定量化した指標(indicator)の策定の考え方に関しては、

なるべく少ない指標で各要素を表現するのが理想とし、データのアベイラビリテ

ィも考慮する必要があることが指摘されている。

以上のような策定の考え方(案)に基づき、昨年度検討会で採用することと

された構成要素・指標は図表 3の通りである。

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図表 3 昨年度検討会で採用することとされた構成要素・指標

(出所)平成28年度エネルギー使用合理化鉱物資源開発推進基盤整備事業(鉱物資源基盤整備調査事

業(鉱物資源の供給安定性評価調査)) 報告書

評価に盛り込む要素 評価指標案(短期:~10年未満) 評価指標案(長期:10年以上)

供給リスク(Supply Risk)

T資源枯渇、開発難化 - 新規投資の成功率

品位低下 等生産停止 事故の発生頻度 事故の発生頻度

E

供給側寡占 生産国の寡占度(生産量のHHI)3) 生産国の寡占度(埋蔵量のHHI)価格の変動1) 価格のボラティリティ 価格のボラティリティ生産活動の安定性 世界探査投資額/世界生産額 世界探査投資額/世界生産額

自給の状況 自国企業の権益割合×当該鉱山の生産量の総計/国内需要量

自国企業の権益割合×当該鉱山の埋蔵量の総計/国内需要量

R 使用済製品からのリサイクルによる供給2) 二次資源量が全資源量に占める割合 二次資源量が全資源量に占める割合

P 生産国のガバナンス問題(カントリーリスク) WGIを輸入相手国比でHHI化3) WGIを埋蔵量比でHHI化

国内産業への影響度(Vulnerability) 重要性

供給障害によって影響を受ける製品額 市場規模割合×Σ(当該資源の各製品への使用割合×その付加価値額)/GDP

市場規模割合×Σ(当該資源の各製品への使用割合×その付加価値額)/GDP消費量、市場規模

価格の変動1) 価格のボラティリティ 価格のボラティリティ代替可能性 代替可能性(専門家評価) 代替可能性(専門家評価)

※ 指標案については、データのアベイラビリティを見ながら精査する必要あり

鉱物資源政策との関係 ⅱ)備蓄ⅳ)リサイクル

ⅰ)海外資源確保の推進ⅲ)省資源・代替材料の開発

ⅴ)海洋資源開発

1) 価格の変動については、供給リスクとして整理する考え方と国内産業への影響度の要素として整理する考え方があるため双方に記載

2) リサイクルについては、用途によって求められる要求品質が異なるなど考えるべき部分が多く、鉱種ごとに評価することが難しい点に留意が必要

3) 供給側寡占(生産量のHHI)と生産国のガバナンス問題(WGIを輸入相手国比でHHI化)の双方を指標案に含めているが、これらの指標間の相関関係について整理が必要

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(2)本年度における選定プロセス

本年度調査においても基本的には昨年度の検討内容を踏襲し、その際に採用さ

れた構成要素・指標を基に鉱種毎の評価結果を算出することとした。その上で、

昨年度の評価モデル構築の考え方に加味した本年度の評価モデルの構築方針(設

計思想)は以下の通りである。

○ 広範に受け入れられている「供給リスク」と「国内産業への影響度(脆弱

性)」の2軸を評価軸とするクリティカリティ評価モデルを構築する。た

だし、本年度は「供給リスク」に関する評価モデルの開発を優先させる。

○ 重要性とデータ利用可能性を踏まえ、一部の資源については、データ(指

標)の分解能を高めることも視野に入れる(企業レベル>国家レベル)。

○ 国際共通言語としてのクリティカリティ評価も念頭に置き、欧米諸国で採

用されているようなデータ(指標)を選定し、また極力同様な方法で評価

を行うが、一方で我が国が抱えるリスクを具体的に特定し、また必要な対

策を講じやすくするため、独自の評価項目、また必要に応じて精度の向上

ができるようにする。

以上の検討を踏まえ、本年度の調査で実際に鉱種毎の評価結果の算出を実施し

た構成要素・指標は図表 4の通りである。

図表 4 本年度検討会で評価結果の算出を試みた構成要素・指標

(出所)MURC作成

評価に盛り込む要素の候補内容 指標の代替案

T 資源枯渇、開発難化、生産停止

【短】各鉱山事業者の事故の発生頻度

【長】平均鉱石品位の低下全鉱山における直近10年の品位低下率

E

供給側寡占供給者の寡占度(生産寡占度:国別HHI/生産寡占度:鉱山別HHI/埋蔵寡占度:国別HHI/埋蔵寡占度:鉱山別HHI)

価格の変動 ヒストリカルボラティリティ(日変動:2010~2017年)

生産活動の安定性 世界探査投資額が世界生産額に占める割合(投資額/生産額) 可採年数変化率(10年)

自給の状況 (自国企業の権益割合×当該鉱山の生産量)の総計が国内需要量に占める割合 海外自山鉱量が国内需要量に占める割合

R二次原料からのリサイクルによる供給 二次資源量が全消費量に占める割合 スクラップ等(スクラップ・再生地金)再生量が国内需要

量に占める割合

P生産国のガバナンス問題(カントリーリスク) WGI輸入相手国比HHI

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赤字が実際に鉱種毎の評価結果の算出を実施した指標である。各指標に関して、

【短】各鉱山事業者の事故の発生頻度については、データの利用可能性が低いた

めに評価結果を算出していない。また、世界探査投資額が世界生産額に占める割

合(投資額/生産額)は市販データベースを用いても利用できるデータが少なく、

現状ではニッケル、銅、亜鉛、金の4鉱種に限定されているため(それ以外はデ

ータ得られず)、代替案として可採年数変化率(10年)に置き換えている。

同様に(自国企業の権益割合×当該鉱山の生産量)の総計が国内需要量に占め

る割合についても、市販データベースでは利用できるデータが少なく、海外自山

鉱量が国内需要量に占める割合に置き換えている。

このほか、二次資源量が全消費量に占める割合については、スクラップ等(ス

クラップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割合の方がデータの捕捉率が

高かったため後者を採用している。

鉱種個別の評価だけでは、どの鉱種で特に対策優先順位が高いかの判断ができ

ないため、欧州で用いられている方法論 5を参考として、便宜的に統合指標を我

が国においても開発し、これをもとにどの鉱種で取組優先順位が高いかの判断を

行い(フェーズI)、鉱種個別の評価からどのような事項にリスクが潜んでおり、

対応する取組が求められるのかの判断を行うこととした(フェーズII)(図表 5)。

図表 5 供給リスク評価の手順イメージ

5 EU “Assessment of the Methodology for Establishing the EU List of Critical Raw Materials”

(2017)

フェーズⅠ

フェーズⅡ

統合化した指標で、取り組み優先順位の高い鉱種を特定する。

欧州で開発された評価方法を準用する(一部は仮定値)。

計11評価項目の結果をローズチャート(もしくはレーダーチャート)で示し、どのような評価項目でリスクが高くなっているのか、またどのような対策が求められているかを判断する。

データが欠落している評価項目(ローズチャートでは「?」表示)については、その実態把握を進めていくことでリスク評価の精度を高めて行くことが求められる。

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2. 評価モデルに用いるデータの選定

選定した指標の評価では以下に示す計算式及び情報源を用いて、資源ごとに各

項目の評価を行った。資源によってデータの入手状況に差異があるため、項目に

よっては評価結果を算出できない資源もあった。

(1)統合指標による評価

欧州で用いられている供給リスク評価を参考として、我が国における供給リス

ク評価の統合指標を以下のように考えた。評価式は欧州と同様の概念で整理して

いるが、データ利用可能性の制約もあり、用いているデータは我が国独自のもの

が含まれる。

�𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊,𝑡𝑡�𝐺𝐺𝐺𝐺 では、世界銀行「世界ガバナンス指標(Worldwide Governance

Indicators:WGI)」、USGS「Mineral Commodity Summaries」を用いた。

�𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊,𝑡𝑡�𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝑐𝑐𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖 では、同様に世界銀行「WGI」、JOGMEC「鉱物資源マテリ

アルフロー」、財務省「貿易統計」を用いた。𝐻𝐻𝐼𝐼 では、JOGMEC独自調査を用

いた。EoLRIRでも同様にJOGMEC独自調査を用いた。𝐺𝐺𝐻𝐻𝑅𝑅𝑊𝑊𝑅𝑅については、具体的な

値は得られていないため、現時点では全て「1」としている。

𝐺𝐺𝐼𝐼 = ��𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊,𝑡𝑡�𝑊𝑊𝐺𝐺・𝐻𝐻𝐼𝐼2

+ �𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊,𝑡𝑡�𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽・ �1 −𝐻𝐻𝐼𝐼2��・(1− 𝐸𝐸𝐽𝐽𝐸𝐸𝑅𝑅𝑊𝑊𝑅𝑅)・𝐺𝐺𝐻𝐻𝐺𝐺𝑅𝑅

𝐺𝐺𝐼𝐼 : 供給リスク �𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊,𝑡𝑡�𝐺𝐺𝐺𝐺 : 世界における当該資源の生産量シェアを二乗したものへWGI

指標(政府ガバナンスに関する指標)を乗じて積算したもの。欧州にお

ける評価では、貿易障害の程度等によってまた補正を行っているが、本

調査では特に補正を行わなかった。 �𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊,𝑡𝑡�𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝑐𝑐𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖 : 我が国が輸入している当該資源の輸入相手国シェアを

二乗したものへWGI指標(政府ガバナンスに関する指標)を乗じて積算

したもの。欧州における評価では、貿易障害の程度等によってまた補正

を行っているが、本調査では特に補正を行わなかった。 𝐻𝐻𝐼𝐼 : 我が国における当該資源の輸入量(鉱石、中間原料等の輸入量を純分換

算)を我が国における需要量(純分)で除したもの 𝐸𝐸𝐽𝐽𝐸𝐸𝑅𝑅𝑊𝑊𝑅𝑅 : 我が国における当該資源のリサイクル率 𝐺𝐺𝐻𝐻𝑅𝑅𝑊𝑊𝑅𝑅 : 当該資源の代替可能性 ※具体的な値は得られていないため、現時点

では全て「1」としている。

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(2)各鉱種個別評価(鉱種横断的評価・鉱種別評価)

① 全鉱山における直近10年の品位低下率

「全鉱山における直近10年の品位低下率」の評価方法は以下に示す通りである。

なお、使用したデータ情報源はSNL「Metal & Mining」である。各鉱山のデータ

捕捉率が必ずしも高くはない鉱種が存在するため、基準年(10年前)と直近年に

おける全世界の平均鉱石品位を計算し、その平均品位から𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔を産出した。

𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔 =1𝑖𝑖�(

𝑖𝑖𝐽𝐽, 𝑡𝑡−10 − 𝑖𝑖𝐽𝐽, 𝑡𝑡𝑖𝑖𝐽𝐽, 𝑡𝑡−10

)𝐽𝐽

𝐽𝐽=1

𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔𝑔: 平均鉱石品位の低下 ※R<0の場合はR=0とした

𝑖𝑖𝐽𝐽, 𝑡𝑡 : t年における鉱山iの鉱石品位(当該資源)※Millhead精鉱品位の場合

と埋蔵品位の場合あり

𝑖𝑖 : 当該資源を産出する鉱山の数 ※品位情報がNAとなっている鉱山を除く

② 生産寡占度:国別HHI/生産寡占度:鉱山別HHI

「生産寡占度」の評価方法は以下に示す通りである。国別のシェアと鉱山別の

シェアでそれぞれ評価を行っている。なお、国別HHIで使用したデータ情報源は

USGS「Mineral Commodities Summaries」、鉱山別HHIで使用したデータ情報源

はSNL「Metal & Mining」である。生産量データが得られていない国、鉱山はシ

ェア0として取り扱っているため、データ捕捉率が低い場合には高くなる傾向が

ある。

𝐼𝐼𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽., 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊 = �𝐽𝐽𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽., 𝐽𝐽2

𝐽𝐽

𝐽𝐽=1

𝐼𝐼𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽., 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊: 生産量をベースとした寡占度

𝐽𝐽𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽., 𝐽𝐽 : 鉱山i(国ベースの寡占度評価にあってはi国)の当該資源生産シェ

ア (0<s<1)

𝑖𝑖 : 当該資源を産出する鉱山(国)の数 ※品位情報がNAとなっている鉱山

(国)を除く

③ 埋蔵寡占度:国別HHI/埋蔵寡占度:鉱山別HHI

「埋蔵寡占度」の評価方法は以下に示す通りである。国別のシェアと鉱山別の

シェアでそれぞれ評価を行っている。なお、国別HHIで使用したデータ情報源は

USGS「Mineral Commodities Summaries」、鉱山別HHIで使用したデータ情報源

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12

はSNL「Metal & Mining」である。埋蔵量データが得られていない国、鉱山はシ

ェア0として取り扱っているため、データ捕捉率が低い場合には高くなる傾向が

ある。

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑔𝑔𝐽𝐽., 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊 = �𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝐽𝐽., 𝐽𝐽2

𝐽𝐽

𝐽𝐽=1

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑔𝑔𝐽𝐽., 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊: 埋蔵量をベースとした寡占度

𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝐽𝐽., 𝐽𝐽 : 鉱山i(国ベースの寡占度評価にあってはi国)の当該資源埋蔵シェ

ア (0<s<1) ※可採ベース

𝑖𝑖 : 当該資源を埋蔵する鉱山(国)の数 ※品位情報がNAとなっている鉱山

(国)を除く

④ 輸入寡占度(純分):国別HHI

「輸入寡占度」の評価方法は以下に示す通りである。なお、使用したデータ情

報源は財務省「貿易統計」、国連「UN Comtrade」、IHS「Global Trade Atlas」

等である。輸入精鉱及び主要な中間原料をそれぞれ1~2種類程度取り上げ、そ

れを純分換算した場合の輸入寡占度としているため、データ入手の関係から部分

的にしか捕捉できていない場合、そもそも輸入データを特定できない場合などは、

結果としてシェア0として取り扱っているため、これらのためにリスクは高く見

える傾向がある。

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑖𝑖𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝑡𝑡, 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊 = �𝐽𝐽𝐽𝐽𝑖𝑖𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝑡𝑡., 𝐽𝐽2

𝐽𝐽

𝐽𝐽=1

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑖𝑖𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝑡𝑡., 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊: 輸入量をベースとした寡占度

𝐽𝐽𝐽𝐽𝑖𝑖𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝑡𝑡., 𝐽𝐽 : i国の当該資源輸入(日本から見た場合)シェア(0<s<1)

𝑖𝑖 : 当該資源を輸入する相手の鉱山(国)の数 ※品位情報がNAとなってい

る鉱山(国)を除く

⑤ ヒストリカルボラティリティ(日変動:2010~2017年)

「ヒストリカルボラティリティ」の評価方法は以下に示す通りである。本指標

では資源価格の日変動を2010年~2017年にかけて捕捉している。また、年間営業

日数を250日と想定し、250の平方根を乗じることで変動幅の年率換算を行ってい

る。使用しているデータ情報源はSNL「Metal & Mining」及びArgus「Argus Metals」

である。

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𝐼𝐼𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔.𝑣𝑣𝐽𝐽𝑣𝑣. = �250𝐽𝐽∑ (𝑐𝑐𝐽𝐽 − 𝑐𝑐̅)2𝐽𝐽𝐽𝐽=1 𝑐𝑐𝐽𝐽 = 𝑙𝑙𝐽𝐽𝑖𝑖𝑔𝑔( 𝑝𝑝𝑖𝑖

𝑝𝑝𝑖𝑖−1 ) 𝑐𝑐̅ = 1

𝐽𝐽∑ 𝑐𝑐𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽=1

𝐼𝐼𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔.𝑣𝑣𝐽𝐽𝑣𝑣.: 相場のヒストリカルボラティリティ(日相場)

𝑐𝑐𝐽𝐽 : 第i日目における前日からの相場変化率 ※対数表示

𝑝𝑝𝐽𝐽 : 第i日目における相場(終値)

𝑐𝑐̅ : 評価対象期間中における𝑐𝑐𝐽𝐽の算術平均

𝑖𝑖 : 評価対象日数(1日あたり1データとしてそのデータ個数)

⑥ 可採年数変化率

「可採年数変化率」の評価方法は以下に示す通りである。本指標では直近10

年間の可採年数変化率を行う。なお、使用したデータ情報源はUSGS「Mineral

Commodities Summaries」である。

𝐼𝐼𝑖𝑖𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝑚𝑚𝑣𝑣𝑔𝑔 =𝐽𝐽𝑡𝑡𝑝𝑝𝑡𝑡

/𝐽𝐽𝑡𝑡−10𝑝𝑝𝑡𝑡−10

𝐼𝐼𝑖𝑖𝐽𝐽𝐽𝐽𝑔𝑔𝑚𝑚𝑣𝑣𝑔𝑔: 可採年数変化率

𝐽𝐽𝑡𝑡 : t年における当該資源の可採埋蔵量(純分換算)

𝑝𝑝𝑡𝑡 : t年における当該資源の採掘量(生産量:純分換算)

⑦ 海外自山鉱調達(海外自山鉱量が国内需要量に占める割合)

「海外自山鉱調達」の評価方法は以下に示す通りである。なお、使用した情報

源はJOGMEC独自調査のデータを用いている。

𝐼𝐼𝑗𝑗𝑝𝑝.𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽. =𝑝𝑝𝑗𝑗𝑝𝑝

𝑑𝑑𝑔𝑔𝐽𝐽𝑖𝑖𝑔𝑔𝐽𝐽𝑡𝑡𝐽𝐽𝐽𝐽

𝐼𝐼𝑗𝑗𝑝𝑝.𝑝𝑝𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽.: 海外自山鉱調達率 (0<R<1) ※R>1の場合はR=1とした

𝑝𝑝 𝑗𝑗𝑝𝑝: 日系権益分の生産量(2015年度ベース) ※実際の輸入分ではなく、日

系企業による権益

𝑑𝑑𝑔𝑔𝐽𝐽𝑖𝑖𝑔𝑔𝐽𝐽𝑡𝑡𝐽𝐽𝐽𝐽 : 当該資源の日本国内需要量(2015年度当該資源の中間原料等生産

量:純分ベース) ※輸出分を除く

⑧ スクラップ等(スクラップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割合

「スクラップ等(スクラップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割合」

の評価方法は以下に示す通りである。なお、ここでのスクラップ等とはスクラッ

プ及び再生地金を意味し、製錬所で発生する製錬残渣は含めていない。なお、使

用した情報源はJOGMEC独自調査のデータを用いている。

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𝐼𝐼𝐽𝐽𝑔𝑔𝐽𝐽𝑟𝑟𝐽𝐽𝑣𝑣𝑔𝑔 =𝐽𝐽𝐽𝐽𝑗𝑗𝑝𝑝

𝑑𝑑𝑔𝑔𝐽𝐽𝑖𝑖𝑔𝑔𝐽𝐽𝑡𝑡𝐽𝐽𝐽𝐽

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑔𝑔𝐽𝐽𝑟𝑟𝐽𝐽𝑣𝑣𝑔𝑔: 二次原料調達率

𝐽𝐽𝐽𝐽𝑗𝑗𝑝𝑝 : 日本国内で消費されるスクラップ等二次原料の調達量(2015年度当該

資源純分ベース) ※あくまで市中くず等スクラップや再生地金の回収量

であり、工程くず等スクラップや製錬残渣等は除く。

𝑑𝑑𝑔𝑔𝐽𝐽𝑖𝑖𝑔𝑔𝐽𝐽𝑡𝑡𝐽𝐽𝐽𝐽 : 当該資源の日本国内需要量(2015年度当該資源の中間原料等生産

量:純分ベース) ※輸出分を除く

⑨ WGI輸入相手国比HHI(輸入相手国ガバナンス)

「WGI輸入相手国比HHI(輸入相手国ガバナンス)」の評価方法は以下に示す

通りである。なお、使用したデータ情報源は財務省「貿易統計」、国連「UN

Comtrade」、IHS「Global Trade Atlas」等である。

𝐼𝐼𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊.𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊 = �𝑊𝑊𝐺𝐺𝐻𝐻𝐽𝐽・𝐽𝐽𝑔𝑔𝑒𝑒𝑝𝑝., 𝐽𝐽2

𝐽𝐽

𝐽𝐽=1

𝐼𝐼𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊.𝐻𝐻𝐻𝐻𝑊𝑊: 輸入相手国ガバナンス指標

𝑊𝑊𝐺𝐺𝐻𝐻 𝐽𝐽 : i国におけるガバナンス指標(PV.EST:2016年ベース)

※ PV.EST: Political Stability and Absence of Violence/Terrorism:

Estimate

𝐽𝐽𝑔𝑔𝑒𝑒𝑝𝑝.,𝐽𝐽 : 我が国におけるi国からの当該資源輸入シェア(2015年度当該資源純

分ベース)

⑩ その他(各評価項目の規格化・補数化・出典等)

最後に、各項目の算出結果は以下の通りに最大値と最小値を基準とした規格化

を行っている。規格化をすることで、すべての項目で1~0の間による数値の評

価が可能となっている。

最大値と最小値を基準とする規格化

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑡𝑡𝑔𝑔.,𝐽𝐽 =𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽.,𝐽𝐽 − 𝐼𝐼𝑖𝑖𝐽𝐽𝐽𝐽

𝐼𝐼𝑖𝑖𝑔𝑔𝑒𝑒 − 𝐼𝐼𝑖𝑖𝐽𝐽𝐽𝐽

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑡𝑡𝑔𝑔.,𝐽𝐽: 資源iに関する規格化後の評価値 (0<R<1)

𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽𝐽.,𝐽𝐽: 資源iに関する規格化前の評価値

𝐼𝐼𝑖𝑖𝑔𝑔𝑒𝑒: 規格化前の評価値のうち最大値(複数資源を対象にした評価値のうち

最大のもの)

𝐼𝐼𝑖𝑖𝐽𝐽𝐽𝐽: 規格化前の評価値のうち最小値(複数資源を対象にした評価値のうち

最小のもの)

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また、「可採年数変化率(10年)」、「海外自山鉱量が国内需要量に占める割

合」、「スクラップ等(スクラップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割

合」、「WGI輸入相手国比HHI」の4つの指標においては、数値化を行う際は以

下のように規格化後に評価値の補数化も行っている。これは本調査全体の評価結

果の表現方法として、1に近づくほどリスクが高いと判断する方針を採っている

ためである。

補数化 𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝑖𝑖𝑝𝑝.𝐽𝐽𝑡𝑡𝑔𝑔.,𝐽𝐽 = 1 − 𝐼𝐼𝐽𝐽𝑡𝑡𝑔𝑔.,𝐽𝐽

𝐼𝐼𝐽𝐽𝐽𝐽𝑖𝑖𝑝𝑝.𝐽𝐽𝑡𝑡𝑔𝑔.,𝐽𝐽: 資源 i に関する補数化された規格化後評価値 (0<R<1)

𝐼𝐼𝐽𝐽𝑡𝑡𝑔𝑔.,𝐽𝐽: 資源 i に関する規格化後の評価値 (0<R<1)

各指標の評価に使用したデータの情報源をまとめたものは図表 6のようにな

る。なお、希土類(レアアース)元素のうち、ランタノイドに属するものは、個

別のデータがほとんど存在しないため、各国の希土類関連データに主要鉱床品位

6を乗じて疑似的な生産量、埋蔵量を得た。

6エヌ・ティー・エス「希土類の材料技術ハンドブック(足立吟也監修)」

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図表 6 指標ごとのデータ情報源

評価に盛り込む要素の候補 使用した情報源

内容

T 資源枯渇、開

発難化、生産

停止

【短】各鉱山事業者の事故の

発生頻度

データなし

【長】平均鉱石品位の低下

①全鉱山における直近10年

の品位低下率

SNL「Metal & Mining」

E 供給側寡占 ②生産寡占度:国別HHI USGS「Mineral Commodities

Summaries」

③生産寡占度:鉱山別HHI SNL「Metal & Mining」

④埋蔵寡占度:国別HHI USGS「Mineral Commodities

Summaries」

⑤埋蔵寡占度:鉱山別HHI SNL「Metal & Mining」

⑥輸入寡占度(純分):国別

HHI

財務省「貿易統計」、国連「UN

Comtrade」、 IHS「 Global

Trade Atlas」等

価格の変動 ⑦ヒストリカルボラティリ

ティ(日変動:2010~2017

年)

SNL「Metal & Mining」

生産活動の安

定性

⑧可採年数変化率(10年) USGS「Mineral Commodities

Summaries」

自給の状況 ⑨海外自山鉱量が国内需要

量に占める割合

鉱物資源課独自調査

R 二次原料から

のリサイクル

による供給

⑩スクラップ等(スクラッ

プ・再生地金)再生量が国内

需要量に占める割合

鉱物資源課独自調査

P 生産国のガバ

ナ ン ス 問 題

(カントリー

リスク)

⑪WGI輸入相手国比HHI 世界銀行「Worldwide

Governance Indicators

(WGI)」

国連開発計画(UNDP)「Human

Development Index(HDI)」

財務省「貿易統計」、国連「UN

Comtrade」、IHS「Global

Trade Atlas」等

(注)T:Technical, physical and geological factors (物理的な供給難)、 E:Economic,

market and strategic factors (経済・資源ナショナリズムによる供給難)、 R:Regulatory

and social Factors (社会的要素による供給難)、 P:Political stability and governance

factors (採掘国・企業の統治能力不足)

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また、図表 6に対応した各資源のデータ入手状況は図表 7のようになる。

図表 7 資源ごとのデータ入手状況

原子番号・資源名 データ入手済み(データ捕捉率>0) データを入手でき

なかったもの (データ捕捉率=0)

(備考)

3 リチウム(Li) -②③④⑤⑥⑦⑧⑨

⑩⑪ - -①

4 ベリリウム(Be) -②④⑧ ※作図せず - -①③⑤⑥⑦⑨⑩⑪

6 炭素(C:グラフ

ァイト) -①⑤⑥⑧⑨⑩⑪

①ダイヤモンドで便

宜的に代用 -②③④⑦

9 フッ素(F:蛍石) -②④⑧⑨⑩ - -①③⑤⑥⑦⑪

12 マグネシウム

(Mg) -②④⑥⑦⑧⑨⑩⑪ - -①③⑤

13 アルミニウム

(Al)

-①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

①③⑤⑥⑪はボーキ

サイト、⑦はアルミ

ニウムで代用

15 リン(P) -②④⑧⑨⑩ -①③⑤⑥⑦⑪

22 チタン(Ti) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

①③⑤⑥⑪はイルメ

ナイト、⑦はチタン

地金で代用

23 バナジウム(V) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

①③⑤⑥⑦⑪はバナ

ジウム地金 -

24 クロム(Cr) -②④⑤⑥⑦⑧⑨⑩

⑤⑥⑦⑪はクロム地

金 -①

25 マンガン(Mn) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

③⑤⑥⑦⑪マンガン

地金 -

26 鉄(Fe) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

①③⑤⑥⑦⑪は鉄鉱

石 -

27 コバルト(Co) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

28 ニッケル(Ni) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

①③⑤⑥⑦⑪はニッ

ケル地金 -

29 銅(Cu) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

30 亜鉛(Zn) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

31 ガリウム(Ga) -②④⑥⑧⑨⑩⑪ - -①③⑤⑦

32 ゲルマニウム

(Ge) -②④⑥⑧⑨⑩⑪ - -①③⑤⑦

38 ストロンチウム

(Sr) -②④⑥⑧⑨⑩⑪ - -①③⑤⑦

39 イットリウム

(Y) -②④⑤⑦⑥⑧⑪ - -①③⑨⑩

40 ジルコニウム

(Zr)

-①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

41 ニオブ(Nb) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

42 モリブデン(Mo) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

③⑤⑥⑦⑪はモリブ

デン地金 -

45 ロジウム(Rh) -⑥⑦⑧⑨⑩⑪ ⑧は白金族全体 -①②③④⑤

46 パラジウム(Pd) -①②④⑤⑥⑦⑧⑨

⑩⑪ ⑧は白金族全体 -③

47 銀(Ag) -①②④⑤⑦⑧ - -③⑥⑨⑩⑪

49 インジウム(In) -②④⑥⑦⑧⑨⑩⑪ - -①③⑤

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原子番号・資源名 データ入手済み(データ捕捉率>0) データを入手でき

なかったもの (データ捕捉率=0)

(備考)

50 錫(Sn) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

51 アンチモン(Sb) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

57-

71

ランタノイド全

般(REE)

-①②③④⑤⑦⑧⑨

⑩ ⑦はランタンで代用 -⑥⑪

ランタン(La)

-②④⑥⑦⑧⑪

(希土類全体の生産

量や埋蔵量に各地の

代表品位を乗じて純

分値を推計)

-①③⑤⑨⑩

セリウム(Ce) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

プラセオジム

(Pr) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

ネオジム(Nd) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

サマリウム(Sm) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

ユウロピウム

(Eu) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

ガドリニウム

(Gd) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

テルビウム(Tb) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

ジスプロシウム

(Dy) -②④⑥⑦⑧⑪ (同上) -①③⑤⑨⑩

73 タンタル(Ta) -①②④⑤⑥⑦⑧⑨

⑩⑪ - -③

74 タングステン

(W)

-①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪

①③⑤⑥⑦⑪タング

ステン粉末(フェロ

タングステンを除

く)

75 レニウム(Re) -②④⑦⑧⑨⑩ - -①③⑤⑥⑪

78 白金(Pt) -①②④⑤⑥⑦⑧⑨

⑩⑪ ⑧は白金族全体 -③

79 金(Au) -①②④⑤⑦⑧ - -③⑥⑨⑩⑪

80 鉛(Pb) -①②③④⑤⑥⑦⑧

⑨⑩⑪ - -

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3. 各構成要素間の相関関係の整理

構成要素を定量化した指標は評価結果の表現方法を見越して、なるべく少ない

指標で各要素を表現することを目標としており、本調査では図表 4に示した通

り、以下の①から⑪の評価項目を取り上げている。

① 全鉱山における直近10年の品位低下率

② 生産寡占度:国別HHI

③ 生産寡占度:鉱山別HHI

④ 埋蔵寡占度:国別HHI

⑤ 埋蔵寡占度:鉱山別HHI

⑥ 輸入寡占度(純分):国別HHI

⑦ ヒストリカルボラティリティ(日変動:2010~2017年)

⑧ 可採年数変化率(10年)

⑨ 海外自山鉱量が国内需要量に占める割合

⑩ スクラップ等(スクラップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割合

⑪ WGI輸入相手国比HHI

今回採用した各指標は構成要素間・構成要素内の中でそれぞれ独立した意味

を持った項目となっており、相互に影響を与え合わない相関関係が認められない

ものである。したがって、各項目のそれぞれが鉱物資源の安定供給の確保のため

に実施する施策の効果の定量化に資する指標と考えられる。逆に、当初指標とし

て想定していたがデータ利用可能性が低く、評価結果を算出できなかった項目に

ついては、相関があると考えられる類似評価項目で代替をしている。

供給リスクの構成要素「資源枯渇、開発難化、生産停止」のうち、本年度調査

で取り上げる指標は、長期の評価を行う①全鉱山における直近10年の品位低下

率、のみである。短期の評価を行う各鉱山事業者の事故の発生頻度は、データの

利用可能性が低いことから、指標として採用していない。したがって①は独立し

た指標と言える。直近10年の平均鉱石品位の低下を見ることで、①のリスクが

高い場合は、鉱山品位が下がっていることを意味するので、鉱山開発支援の余地

を検討できる。

構成要素「供給側寡占」では、供給者の寡占度として②生産寡占度:国別HHI

/③生産寡占度:鉱山別HHI/④埋蔵寡占度:国別HHI/⑤埋蔵寡占度:鉱山別

HHI/⑥輸入寡占度(純分):国別HHI、を見る。各指標は生産量と埋蔵量、国

と鉱山とを掛け合わせた独立した評価項目となっている。②と③と⑥については、

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国や企業が調達先のポートフォリオを組む際の参考となると考えられる。④と⑤

については長期的指標であるため、埋蔵が偏っていることによる潜在的なリスク

として参考にできる。

構成要素の「価格の変動」のうち、本年度調査で取り上げる指標は⑦ヒストリ

カルボラティリティ(日変動:2010〜2017年)のみである。したがって⑦は独

立した指標と言える。鉱山開発の事業採算性は、資源市況に大きく左右されるた

め、事業化リスクを測る際の参考になると考えられる。また、製造業等が原料調

達コストの増減可能性を測る際の参考にもなる。

構成要素「生産活動の安定性」については、世界探査投資額が世界生産額に占

める割合(投資額/生産額)のデータ利用可能性が低いため、相関があり類似の

評価項目と考えられる⑧可採年数変化率(10年)で代替している。両者は共に

数値が大きいほど、生産活動は安定しておりリスクが低いことを意味する。この

構成要素の中では指標は一つだけであり、⑧は独立した評価項目と言える。可採

年数が下がっている場合には、鉱物資源課やJOGMECによる鉱山開発支援の余地

があることを意味する。

構成要素「自給の状況」では、(自国企業の権益割合×当該鉱山の生産量)の

総計が国内需要量に占める割合のデータ利用可能性が低いため、⑨海外自山鉱量

が国内需要量に占める割合の評価項目で代替している。両者は類似の評価項目と

考えられ、相関があると考えられる。自山鉱比率が低い鉱種は、日本の権益を高

めるための金融支援等の余地があることを意味する。

構成要素「二次原料からのリサイクルによる供給」に関しては、二次資源量が

全消費量に占める割合のデータ利用可能性が低いため、⑩スクラップ等(スクラ

ップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割合の評価項目で代替している。

両者は類似の評価項目と考えられ、相関があると考えられる。スクラップ等から

の再資源化量が少ない場合、リサイクルを促すような技術開発や法整備の必要性

があることを意味する。

構成要素「生産国のガバナンス問題(カントリーリスク)」のうち、本年度調

査で取り上げる指標は⑪WGI輸入相手国比HHI、のみである。したがって⑪は独

立した指標と言える。WGI輸入相手国比HHIの指標を見ることで、調達先のポー

トフォリオを検討する際や、資源外交における重点交渉国を選定する際の判断材

料になる。

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21

図表 8 指標ごとにとり得る対応策

指標 各指標のリスクが高いと評価された場合の

対応策

指標の活用主体

①全鉱山における直

近10年の品位低下率

直近10年の平均鉱石品位の低下を見るこ

とで、①のリスクが高い場合は、鉱山品

位が下がっていることを意味するので、

鉱山開発支援の余地を検討できる。

経済産業省

JOGMEC

②生産寡占度:国別

HHI 国や企業が調達先のポートフォリオを組

む際の参考となると考えられる。

経済産業省

精鉱・原料輸入

事業者 ③生産寡占度:鉱山

別HHI

④埋蔵寡占度:国別

HHI 長期的指標であるため、埋蔵が偏ってい

ることによる潜在的なリスクとして参考

にできる。

経済産業省

精鉱・原料輸入

事業者

製造事業者

⑤埋蔵寡占度:鉱山

別HHI

⑥輸入寡占度(純

分):国別HHI

国や企業が調達先のポートフォリオを組

む際の参考となると考えられる。

経済産業省

精鉱・原料輸入

事業者

⑦ヒストリカルボラ

ティリティ

鉱山開発の事業採算性は、資源市況に大

きく左右されるため、事業化リスクを測

る際の参考になると考えられる。また、

製造業等が原料調達コストの増減可能性

を測る際の参考にもなる。

経済産業省

精鉱・原料輸入

事業者

製造事業者

⑧可採年数変化率

(10年)

可採年数が下がっている場合には、鉱物

資源課やJOGMECによる鉱山開発支援の余

地があることを意味する。

経済産業省

JOGMEC

⑨海外自山鉱量が国

内需要量に占める割

自山鉱比率が低い鉱種は、日本の権益を

高めるための金融支援等の余地があるこ

とを意味する。

経済産業省

JOGMEC

⑩スクラップ等(ス

クラップ・再生地金)

再生量が国内需要量

に占める割合

スクラップ等からの再資源化量が少ない

場合、リサイクルを促すような技術開発

や法整備の必要性があることを意味す

る。

経済産業省

⑪WGI輸入相手国比

HHI

調達先のポートフォリオを検討する際

や、資源外交における重点交渉国を選定

する際の判断材料になる。

経済産業省

精鉱・原料輸入

事業者

製造事業者

上記の各指標について、各項目がサプライチェーン上でどの地点のリスクを評

価したものかを示したものが図表 9となる。

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22

図表 9 各指標が評価しているリスクのサプライチェーン上の位置

(出所)MURC作成

図表 9で示す通り、サプライチェーン上のリスクに対する認識はユーザーによ

って異なる。評価モデルにおけるリスクの考え方において、ユーザー毎のリスク

として整理・分析をした場合、ユーザーはサプライチェーン上で隣接する工程に

おけるリスクに対して敏感となることが想定される。サプライチェーン上で遠い

位置にあるプロセスは、途中でそのリスクを吸収できる機会も多く、結果として

あるユーザーにとっては直接的なリスクと捉えられないことも考えられる(例え

ば、精鉱生産で軽微な事故があったとしても、それに備えた精鉱ストック、素材

や部品のストック、また代替調達先を確保していれば、製造事業者にとってリス

クとはならない)。

このようにユーザーごとにリスクに対する評価の目線が異なることに留意を

しなくてはいけないが、本年度調査では評価モデルの具体的な検証を進める必要

があることから、精鉱・原料輸入事業者の評価に特に集中して評価結果の算出を

行っている。

素材生産採掘・精鉱生産 部品生産 最終製品組立 製品利用

⑤ ⑦

⑨⑥

⑧ ⑪

(上流) (下流)

スクラップ等(スクラップ・再生地金)の再利用

間接的なリスク 直接的なリスク 当事者精鉱・原料輸

入事業者

製造事業者

日本国民

間接的なリスク 間接的なリスク 直接的なリスク 当事者

間接的なリスク 間接的なリスク 間接的なリスク 直接的なリスク 当事者

当事者にまで影響が及ぶような大事故を除き、多くは希釈されてしまう(相対的にリスクになりにくい)

当事者にまで影響が及ぶような大事故を除き、多くは希釈されてしまう(相対的にリスクになりにくい)

当事者にまで影響が及ぶような大事故を除き、多くは希釈されてしまう(相対的にリスクになりにくい)

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23

4. 評価結果に関する表現方法の整理

本調査では、評価モデルに基づく評価結果は次の3つの表現方法で整理してい

る。

(1)縦棒グラフ

評価項目毎に評価結果を鉱種横断的に表現する方法である。各構成要素のリス

クの高低を鉱種横断的に相対的に判断することが可能である。レーダーチャート

とローズチャートと用いられる数値と同値であるが、評価項目ごとに比較しやす

い並べたものである。各評価項目の数値の範囲は0から1の間で規格化され、値

が1に近づくほどリスクが高い表現となっている(元の評価値で最大の鉱種が1

となり、最小の鉱種が0となる)。また、データ入手できなかった鉱種について

は、非表示としている。

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(2)レーダーチャート

各鉱種別に評価結果の全ての項目を同時に並行表示する表現方法である。こ

れにより、各鉱種のリスクの特性を鉱種単体ごとに視覚的に把握することが可能

となる。各評価項目の数値の範囲は0から1の間に規格化されており、値が1に

近づくほどリスクが高いという表現になっている(元の評価値で最大の鉱種が1

となり、最小の鉱種が0となる)。また、データ入手できなかった鉱種について

は、非表示としている。

また、ベンチマークにする鉱種として鉄を選定し、それとの比較からその鉱種

が抱える供給リスク要素にはどのようなものがあるのか、相対的に判断できるよ

うに配慮している。

図表 10 レーダーチャートの表示例(リチウムの場合)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【リチウム】ベンチマークとする「鉄」の評価結果

当該資源の評価結果(外側ほどハイリスク)

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(3)ローズチャート

レーダーチャートと同じく各鉱種別に評価結果を表現する方法である。ローズ

チャートによる表現方法の場合、各項目の数値大小を原点からの距離で評価でき

ることから、レーダーチャートのように並び順が異なることによる印象変化(項

目の順番が変わることで点を結ぶ面積が変化)の問題を回避することができる。

そのため、ローズチャートでは、データ欠落(NA)の項目があってもチャート

の形状に影響しない。また、ローズチャートでは扇形の色調を変える等して各評

価結果だけではなく、その評価結果の質(ここではデータ捕捉率)なども表示す

ることができるという利点がある。レーダーチャート同様、各評価項目の数値の

範囲は0から1の間に規格化されており、値が1に近づくほどリスクが高いとい

う表現になっている(元の評価値で最大の鉱種が1となり、最小の鉱種が0とな

る)。また、データ捕捉率が低い評価項目の扇形は薄い色で表示されるようにし

ており、特にデータを入手できなかった評価項目(データ捕捉率=0)について

は「?」マークを表示させるようにしている。

図表 11 ローズチャートの表示例(リチウムの場合)

調達先の寡占状況を踏まえ、基礎的なリスクの把握、またポートフォリオの改善や権益確保の必要性を判断

価格変動の大きさから調達コスト変動のリスク、また事業採算性変化のリスクを判断

鉱山開発支援や権益取得支援の必要性を判断

リサイクル促進(技術開発・制度構築等)の必要性を判断

ポートフォリオの改善、積極的な資源外交の必要性を判断 データ欠落(NA)

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26

II-2. 評価結果

1. 各鉱種個別評価(鉱種横断的評価)

(1)全体概要

全評価項目(①~⑪)の評価結果は、以下のとおりである。一部の鉱種につい

ては、大きな外れ値を示すものもあるため、その場合には次点評価となった鉱種

と同等程度とみなし、極端なばらつきを抑えるようにしている(一定水準を超え

るものについては、次点候補と同等とみなしても取組の優先順位が変わらないも

のもあり(例:十分に供給量がある等)、その場合には次点候補と同等の数値を

代わりに与えることで見易さに考慮している。

図表 12 各評価項目の数値範囲(原データと規格化・補数化後データ)

評価に盛り込む要素の候補 数値の範囲内容 原データ 規格化後

T 資源枯渇、開発難化、生産停止

【短】各鉱山事業者の事故の発生頻度 (なし) (なし)

【長】平均鉱石品位の低下①全鉱山における直近10年の品位低下率

-3.861~0.500※新規鉱山の開発勃興等で異常に低い(品位上昇)REEは次点

のMnと同じとみなした0.000~1.000

E

供給側寡占供給者の寡占度(②生産寡占度:国別HHI/③生産寡占度:鉱山別HHI/④埋蔵寡占度:国別HHI/⑤埋蔵寡占度:鉱山別HHI/⑥輸入寡占度(純分):国別HHI)

②:0.110~0.830③:0.019~1.000④:0.000~1.000⑤:0.026~1.000⑥:0.000~1.000

①~⑥:0.000~1.000

価格の変動 ⑦ヒストリカルボラティリティ(日変動:2010~2017年) 0.089~0.405 0.000~1.000

生産活動の安定性 ⑧可採年数変化率(10年)0.206~2.933

※需要縮小等で異常に高いPとREEは次点のCと同じとみなした

0.000~1.000※補数化

自給の状況 ⑨海外自山鉱量が国内需要量に占める割合 0.000~1.024 0.000~1.000※補数化

R二次原料からのリサイクルによる供給

⑩スクラップ等(スクラップ・再生地金)再生量が国内需要量に占める割合 0.000~0.629 0.000~1.000

※補数化

P生産国のガバナンス問題(カントリーリスク) ⑪WGI輸入相手国比HHI -0.520~1.017 0.000~1.000

※補数化

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(2)全鉱山における直近10年の品位低下率

平均鉱石品位が大幅に上昇している希土類やマンガンでリスク最小となって

おり(希土類はデータ補正)、相対的にその他鉱種はリスクが高い結果となって

いる(グラファイト(C)より右側の鉱種は、希土類ほどではないが、平均鉱石

品位が上昇している鉱種)。多くの鉱種で品位の低下がみられる。

図表 13 全鉱山における直近10年の品位低下率

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00 0.97 0.96 0.96 0.95 0.94 0.94 0.93 0.93 0.93 0.92 0.92 0.91 0.90 0.90

0.81 0.81 0.77

0.62

0.56

0.00 0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Sb Sn V Ag Nb Pb Au Ta Fe Cu Zn Ni Pt W Co Pd C Ti Mo Al Zr REE Mn

①品

位低下

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28

(3)生産寡占度:国別HHI

特定国に生産が集中している鉱種(ニオブ:ブラジル、マグネシウム:中国、

ベリリウム:米国)でリスクが高くなっている。ただし、USGSをもとに評価し

ているため、米国シェアが反映されず、結果としてリスクが高く見えている鉱種

も多い。

図表 14 生産寡占度:国別HHI

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00

0.91 0.90 0.89 0.86 0.86 0.84 0.83

0.81 0.80

0.73 0.69 0.69 0.68 0.68

0.64

0.56 0.52

0.50 0.49 0.48

0.46

0.39 0.38 0.37 0.34

0.30 0.30 0.29 0.29 0.28 0.28 0.27 0.26 0.25 0.23 0.23

0.18 0.18

0.13 0.13 0.12 0.09

0.06 0.04 0.04

0.00 0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Nb

Mg Be La Pr Ce Nd

REE Ga W Eu Sm Sb Gd Tb Ge Pt Tm HoF Y Dy Er V Sr Re Lu Yb Al Li Co P In Pd Cr Pb Ta Mo Zr Fe Sn Zn Mn Cu Ag Au Ni Ti

②生

産寡

占度

(国

別HH

I)

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(4)生産寡占度:鉱山別HHI

個別鉱山に関するデータの欠落が多く、評価できる鉱種は限られているほか、

中国国内の情報も限定的であるため、結果としてリスクが高く見えている鉱種も

多い。

図表 15 生産寡占度:鉱山別HHI

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00

0.76

0.68 0.65

0.61

0.36

0.28

0.22 0.18

0.15 0.12

0.08 0.06 0.03 0.03 0.02 0.00

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Sb Nb Li W REE V Zr Ti Sn Co Mn Al Fe Mo Pb Ni Zn Cu

③生

産寡占度(鉱山別

HHI)

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(5)埋蔵寡占度:国別HHI

特定国に生産が集中している鉱種(ベリリウム:米国)やデータが欠落してお

り、見かけ上特定国に集中している鉱種(ストロンチウム:中国)でリスクが高

くなっている。USGSをもとに評価しているため、米国シェアが反映されず、結

果としてリスクが高く見えている鉱種も多い。

図表 16 埋蔵寡占度:国別HHI

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00

0.91 0.88 0.88

0.69

0.61

0.56 0.56 0.55 0.55 0.54 0.54 0.51

0.48 0.46

0.43 0.41

0.38 0.38 0.37 0.36 0.35 0.34 0.34 0.34 0.32 0.32 0.31

0.28 0.26 0.25 0.24 0.23 0.22 0.18 0.17 0.17 0.16 0.16 0.16 0.15 0.15 0.13 0.13 0.13 0.12

0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Sr Be Nb Pt Pd Ga Ta Lu Yb Er P

Tm Ho Dy Y Zr W Eu Cr Tb LiM

oN

d La Pr V Ce Re Gd Co SmF Sb REE Pb Mn Cu Fe In Ge Zn Al Ti Ag Sn Au Ni

Mg

④埋

蔵寡

占度

(国

別HH

I)

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(6)埋蔵寡占度:鉱山別HHI

個別鉱山に関するデータの欠落が多く、評価できる鉱種は限られているほか、

中国国内の情報も限定的であるため、結果としてリスクが高く見えている鉱種も

多い。

図表 17 埋蔵寡占度:鉱山別HHI

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00 0.99

0.78

0.53

0.34 0.33

0.28

0.22 0.20 0.19 0.19 0.190.16 0.15

0.09 0.09 0.06 0.06

0.03 0.02 0.02 0.01 0.01 0.00 0.00 0.000.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Y Sc C Cr V Ta Li Nb Mn Sb Al REE Sn Zr Ti W Pb Pd Pt Ni Fe Co Mo Ag Au Zn Cu

⑤埋

蔵寡占度(鉱山別

HHI)

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(7)輸入寡占度:国別HHI

輸入精鉱及び主要な中間原料をそれぞれ1~2種類程度取り上げ、それを純分

換算した場合の輸入寡占度であるため、すべての中間原料を対象にしているわけ

ではないが(見かけ上、リスクが高く見える)、大きな傾向を捉えている。

図表 18 輸入寡占度:国別HHI

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00 0.96 0.95

0.91 0.90

0.70

0.61

0.55 0.54 0.50 0.49

0.42 0.38 0.38 0.38 0.38 0.37

0.32 0.31 0.31 0.27

0.25 0.25

0.18 0.16 0.15 0.15 0.15 0.15 0.12

0.10 0.09 0.09 0.09 0.09 0.08

0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

W Mg Nb Y Al Eu C La Pt Li Ge Sb Mn Rh Pr Nd Ni Ce Zr Ta Fe Sr Ga Pd Pb Sn Sm Gd Tb Dy Ti In Cr Mo V Cu Co Zn

⑥輸

入寡占度(国別

HHI)

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(8)ヒストリカルボラティリティ

日変動(前日比)の標準偏差を取ると(年率換算した後に規格化)、値動きの

激しい鉱種(希土類)で、リスクが高い評価結果となっている。

図表 19 ヒストリカルボラティリティ

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 0.99

0.91

0.83 0.82 0.80

0.75

0.70 0.70 0.68 0.67

0.65 0.63 0.62 0.61

0.58 0.55 0.54 0.54

0.50 0.47 0.46

0.42 0.41

0.35 0.340.32 0.30 0.29 0.28

0.23

0.18

0.13 0.11 0.11 0.08 0.06 0.05

0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Ce YSm Eu Tb V Ag La RE

EGd N

iDy Pd M

o Rh Pb Nd Zn Pr Sn Co Fe Cu W Mn Al Pt Sb Cr Er Au In Ta Ti Zr Re Mg Li Nb

⑦ヒストリカルボラティリティ

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(9)可採年数変化率

大幅に需要が減少した希土類、また出典(USGS)における定義変更などの影

響を受け、見掛け上埋蔵量が大幅に増加しているリンは、結果として可採年数が

大幅に増加している(本調査では、少なくとも次点候補のグラファイト程度には

可採年数はあるだろうと仮定し、値は同等であるとみなした)。

図表 20 可採年数変化率

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 0.97

0.90

0.84 0.84 0.83 0.81 0.80 0.80

0.78 0.77 0.77 0.75 0.74 0.74 0.74 0.74 0.73

0.69 0.68 0.67 0.66 0.66 0.64 0.64 0.64 0.63 0.63 0.63 0.62 0.62 0.60 0.58 0.57 0.57

0.55 0.52

0.34 0.32

0.24

0.16 0.15 0.14 0.12 0.11 0.10

0.08

0.00 0.00 0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Ga Co Ge Be Al Ni Sb W Pb Eu Au Ce V Pt Rh Nd Sm Mo Ag Li Yb Dy Er Ta P

⑧可

採年数変化率

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35

(10)海外自山鉱が国内需要量に占める割合

我が国国内需要に比して、日系企業の権益保有が大きいニオブでリスクが最小

となっている。一方、日系企業による権益保有がないか、副産物として取り扱わ

れ、権益保有に関するデータが存在しない多くの鉱種では、見掛け上、リスクが

高く見える結果となっている。

図表 21 海外自山鉱が国内需要量に占める割合

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 0.99 0.99 0.98 0.97 0.97 0.94

0.89

0.81

0.71 0.67

0.39

0.32

0.14

0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Pt Re Ta REE Sb Sn Pd Rh Zr Sr Ge Cr V Ti K P Si F C Mg Ga Al In W Pb Mo Li Co Zn Fe Ni Cu Mn Nb

⑨海

外自山鉱調達

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36

(11)スクラップ等再生

市中スクラップの回収、再資源化の評価をすると、そもそも回収がされていな

い鉱種が多く(ニオブ、ジルコニウム等)、またデータが整備されていないもの

も多く(例:レニウム)、さらには工程内リサイクルが中心で市中スクラップか

らの再資源化が必ずしも行われていないもの(例:タンタル)は、リスクが高く

見えてしまっている。国内需要を中間需要ベース(地金生産原料)で評価してい

るため、アルミニウム等は低い結果となっている。

図表 22 スクラップ等再生

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 0.99 0.97 0.95 0.950.92 0.92 0.91 0.89 0.87 0.87 0.86

0.79 0.78 0.78 0.74

0.67

0.58

0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Re Ta In Nb Zr Sr Ga Co Mn Cr K P Si F C Li Rh Mo Zn Ti REE Ni Ge Sb Fe Pt W Sn Mg Pd V Cu Pb Al

⑩スクラップ等再生

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37

(12)輸入相手国ガバナンス

輸入精鉱及び主要な中間原料をそれぞれ1~2種類程度取り上げ、それを純分

換算した場合の輸入寡占度であるため、すべての中間原料を対象にしているわけ

ではないが(見かけ上、リスクが高く見える)、大きな傾向を捉えている。また、

中国依存の大きい鉱種でリスクが高くなっている。

図表 23 輸入相手国ガバナンス

(注)評価値の得られていないものは除外している。また、数値が大きいほどリスクが高い。

1.00 0.99 0.98 0.97 0.94 0.94 0.94

0.92 0.89

0.86 0.81

0.77 0.77 0.77 0.76 0.76 0.76 0.76 0.76 0.74 0.74 0.74 0.72 0.70 0.70

0.67 0.63

0.61 0.59 0.57

0.51 0.48 0.48 0.48

0.46 0.45 0.41

0.00 0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

Mg Y Al Eu Cr Nb Ni C La Ge Ti Ga Nd Pr Dy Tb Gd Sm Ce Sn Pd V Pt Mo Rh Mn Zn In Sr Cu Ta Sb Co Pb Li Fe Zr W

⑪輸

入相

手国

ガバ

ナンス

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38

2. 各鉱種個別評価(鉱種別評価:データ捕捉率の高い一部鉱種のみ) 7

(1)リチウム(Li)

品位低下に関するデータが欠落している。国別には生産や埋蔵は分散している

が、鉱山別にみると特定鉱山に集中している。自山鉱調達率、またスクラップ等

再生の程度は低い。

図表 24 レーダーチャート方式(Li)

図表 25 ローズチャート方式(Li)

7 レーダーチャート方式グラフにおいて、図中赤線は比較対象として「鉄」の評価結果を示している。

また、ローズチャート方式グラフにおいて、各評価項目で原点からの距離が長いほど(扇型が大きい

ほど)、リスクが高いことを示す(レーダーチャート方式と同様)。扇型の色が濃いほど、データの

捕捉率が低いことを示す(データ捕捉率が0の場合、水色となり、データ捕捉率が100%の場合、濃

紺色となる)。NAの場合「?」を附している。

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【リチウム】

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39

(2)ニッケル(Ni)

生産、埋蔵、輸入相手の寡占度はいずれも低いが、輸入相手国のガバナンスに

ついては比較的リスクが高い。 自山鉱調達率は高い。鉱石品位の低下、可採年

数の低下、スクラップ等再生率などは低い。

図表 26 レーダーチャート方式(Ni)

図表 27 ローズチャート方式(Ni)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【ニッケル】

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40

(3)銅(Cu)

生産、埋蔵、輸入相手の寡占度はいずれも低い。品位低下、スクラップ等再生

の程度、可採年数変化率はリスクが高い傾向に出ている。自山鉱調達率などは比

較的高い(リスクが低い)。

図表 28 レーダーチャート方式(Cu)

図表 29 ローズチャート方式(Cu)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【銅】

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41

(4)亜鉛(Zn)

生産、埋蔵、輸入相手の寡占度はいずれも低い。品位低下、スクラップ等再生

の程度、可採年数変化率、自山鉱調達率はリスクが高い傾向に出ている。

図表 30 レーダーチャート方式(Zn)

図表 31 ローズチャート方式(Zn)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【亜鉛】

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42

(5)ニオブ(Nb)

ボラティリテイは低いが、生産、埋蔵(鉱山別HHIを除く)、輸入の寡占度が

進んでおり、リスクが高く出ている。一方、政府による支援等を受け、海外自山

鉱調達率が高く、リスクは低く出ている。

図表 32 レーダーチャート方式(Nb)

図表 33 ローズチャート方式(Nb)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【ニオブ】

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43

(6)錫(Sn)

生産や埋蔵、また輸入の寡占度は低い。ボラティリティも低い。一方、可採年

数変化率や海外自山鉱調達率、スクラップ等再生の程度はリスクが高く出ている。

図表 34 レーダーチャート方式(Sn)

図表 35 ローズチャート方式(Sn)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【錫】

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44

(7)白金(Pt)

鉱山別に見た場合の埋蔵寡占度は低いが、国別にみた埋蔵寡占度は高い。生産

及び輸入の寡占度は中程度であるが、輸入相手国ガバナンスはやや高い傾向にあ

る。主産物としての海外自山鉱調達率は低い。ボラティリティは低い。

図表 36 レーダーチャート方式(Pt)

図表 37 ローズチャート方式(Pt)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【白金】

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45

(8)鉛(Pb)

生産、埋蔵、輸入の寡占度は低い。品位低下や可採年数変化率はリスクがやや

高く出ている。ベースメタルの中では、海外自山鉱調達率のリスクが高く出てい

るが、スクラップ等再生の程度はリスクが低く出ている。

図表 38 レーダーチャート方式(Pb)

図表 39 ローズチャート方式(Pb)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0①品位低下

②生産寡占度(国別

HHI)

③生産寡占度(鉱山

別HHI)

④埋蔵寡占度(国別

HHI)

⑤埋蔵寡占度(鉱山

別HHI)

⑥輸入寡占度(国別

HHI)⑦ヒストリカルボラティ

リティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナ

ンス

【鉛】

①品位低下

②生産寡占度(国別HHI)

③生産寡占

④埋蔵

⑤埋蔵寡占度(鉱

⑥輸入寡占度(国別HHI)⑦ヒストリカルボラティリティ

⑧可採年数変化率

⑨海外自山鉱調達

⑩スクラップ等再生

⑪輸入相手国ガバナンス

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

Pb

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46

II-3. 鉱種間及び表現方法の違いによる比較

データ捕捉率が高く、またデータ利用可能性も高い鉱種を取り上げ(ベースメ

タルのCu、Zn、Pb、Sn、レアメタルのLi、Ni、Nb、Pt)、それぞれローズチャ

ートで比較すると、それぞれ抱えているリスク要因は異なり、どのような取組が

求められるのか、視覚的に理解することができる。

例えば、ベースメタルではCuの海外自山鉱調達率が高いが、それ以外は比較的

低く、供給リスクの低減の検討時には、これらの相対性を踏まえて対策を検討す

る必要があることがわかる。

図表 40 鉱種間の比較

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47

リスク要因を意識した当初の順番では(左側)、どこにリスク要因があるのか

を視覚的に判断しやすい。一方、類似する対策に注目して並び替えると(右側)、

どのような対策が求められるかを視覚的に判断しやすい。

図表 41 表現方法の違いによる比較

当初の順番で並べたローズチャート様式 類似する対策を隣り合わせて並べたローズチャート方式

埋蔵寡占度:ベースとなるリスクを判断

鉱山開発支援の必要性やその際の事業リスク(ボラティリティ)の高さを判断

リサイクル促進(技術開発・制度構築等)の必要性を判断

調達先の寡占状況を踏まえ、基礎的なリスクの把握、またポートフォリオの改善や権益確保の必要性を判断

価格変動の大きさから調達コスト変動のリスク、また事業採算性変化のリスクを判断

鉱山開発支援や権益取得支援の必要性を判断

リサイクル促進(技術開発・制度構築等)の必要性を判断

ポートフォリオの改善、積極的な資源外交の必要性を判断

調達ポートフォリオの改善余地を判断

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48

III.海外有識者との意見交換

III-1. 米国

1. CMI(Critical Material Institute)におけるクリティカリティ評価

CMIでは、現在も継続的にクリティカルマテリアルの研究が進められている。

クリティカリティ評価を行う対象としては、予め選定した9つのエネルギー技術

(磁石、電池、照明(LED等)、太陽光パネル、EV、エネルギー貯蔵等)におい

て使用されるマイナーメタルである。

基本的に供給リスク(Supply Risk)と供給途絶の影響(Vulnerability)の

2軸でクリティカリティが評価されている。前者は供給途絶が発生する確率、後

者は供給途絶が発生することによる結果(影響)を評価していると言える。

(1)供給リスクについて

供給リスクは、①供給国の集中度、②需要の増加による需給バランス悪化のリ

スク、③副産物としてのリスクの3つの要素から構成される。

現状は①を60%、②を20%、③を20%で統合することで供給リスクが評価されて

いるが、これら3つの構成要素の統合のウェイトは重要な論点となっている。3

つの構成要素のみを考えていることから、国間比較などが容易な点が長所である。

実際に、中国、日本、アメリカ、EUのクリティカリティの比較を行われている。

図表 42 CMIのクリティカリティ評価における供給リスクの構成要素

供給リスクの構成

要素

考え方 統合の配分

①供給国の集中度 HHIやWGIで評価する。 60%

②需要の増加によ

る需給バランス悪

化のリスク(Risk

of Demand Shock)

将来の技術普及シナリオを設定して評価。

IEAのシナリオを用いて、どのような技術

が普及していくかを設定した上で評価す

る。例えば風力発電の技術をとっても様々

な技術普及の可能性があるので、IEAのシ

ナリオを用いるか、Expert judgementしか

方法がない。

20%

③副産物としての

リスク

(Co-production)

生産量のうちの副産物として生産される

量の割合を用いる。例えばタリウムは生産

量のうちの98%が副産物としての生産であ

る。

20%

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49

(2)脆弱性について

脆弱性については、その鉱種がもたらすCO2削減効果における代替可能性(他

の鉱種で同程度のCO2削減ができるかどうか)をベースに評価が行われている。

ここで代替可能性については、経済性(費用)と、物性の2点で判断している。

将来の技術導入のシナリオを前提に評価を行っているため、将来の技術シナリオ

が変わればクリティカリティ評価結果も変わることとなる。

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50

2. イェール大学

(1)イェール大学におけるクリティカリティ評価

Graedel教授を中心としたイェール大学におけるクリティカリティ評価では、

供給リスク・供給制約への脆弱性・環境影響の3軸を用いた評価が行われている。

環境影響について評価軸に加えていることが一つの特徴であるが、以下の理由か

ら環境を評価軸の一つとして入れているとのことである。

・ そもそも学科の名称が「School of Forestry and Environmental Studies」で

あるため、環境は中心に据えるべき軸である。

・ 他の2軸に含めることも不可能ではないが、第三軸として入れることで人々の

環境に対する関心を引くために取り入れた。

また、短期の評価だけでなく長期の評価も念頭に置いていること、企業レベル、

国レベル、世界レベルのクリティカリティ評価を行っていることなどが特徴であ

る。

イェール大学では、特にクリティカリティの定義を行っていない。各鉱種を3

次元空間でマッピングし、原点からの距離でクリティカリティを測ることも可能

だが、恣意性を伴うことから避けられている。2軸や3軸で鉱種をマッピングし

た際、距離的に近い鉱種をグルーピングすることは問題ないが、クリティカルメ

タルを1か0かで判断するような閾値(threshold)は設けるべきでないと考え

ているとのことである。

(2)直近の研究動向について

2016年に、Graedel教授の研究室のDr. Barbaraが米国・豪州のクリティカリ

ティの比較研究を行っており、そのような形での国間比較の研究が進められてい

る。国間比較は興味深い結果が得られるものの、一方で比較可能なレベルでデー

タを入手する必要があることから、容易ではない。そのような理由から、もしク

リティカリティ評価のデータ収集や手法に関する国際標準を作ることができれ

ば、データの制約の問題を緩和させることができるだろうとの意見も得られた。

近年は国際的なデータベースの調和の動きも進んでいることから、その流れがク

リティカリティ評価を後押しすることを期待しているとのことである。

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51

3. 第7回日米欧三極クリティカルマテリアル会議

第7回日米欧三極クリティカルマテリアル会議においては、各国からクリティ

カリティ評価についての進捗状況が報告され、意見交換がなされた。

欧州においては、定期的にEC JRC(Joint Research Centre)がクリティカル

メタルの選定を行っており、2017年に改訂版のクリティカルメタルとして27種

類が選定されたとの報告がなされた。供給リスクと影響度の2軸から評価する大

枠は変更されていないが、算定方法に若干の変更がなされた。

その他欧州においては、SCRREEN(Solutions for CRitical Raw materials -

a European Expert Network)と呼ばれるクリティカルマテリアルに係るネット

ワーク強化のプロジェクトが進行中である。本プロジェクトには30ヶ月で300万

ユーロの予算が付けられており、30の機関が参画している。第1段階としてデ

ータ収集段階、第2段階として分析段階、第3段階として活用段階が想定されて

いる。既に第1段階はほぼ終了しつつあり、今後は第2、第3段階に入る予定で

ある。最終的には、欧州におけるクリティカルマテリアル問題を戦略的に捉えて

いくことを目指しているとのことである。

米国においても、DoD(Department of Defense)において隔年で備蓄鉱種の

種類と量を決定するための評価を継続して実施されている 8。注視鉱種(watch

list)から実際の備蓄対象鉱種まで段階を設けて評価されており、埋蔵国の集

中度等でフィルターをかけられている。本評価に基づき、現状の備蓄量のバラン

スと需要量などを加味した上で、備蓄物を売却するか買い増すかの判断が下され

ている。

8 DODでは、“Strategic and Critical Materials Report on Stockpile Requirements”という報

告書で備蓄対象鉱種について公表している。

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52

III-2. 欧州

EUにおいては、EC JRC(Joint Research Centre)がクリティカルメタルの選

定手法の開発を行っており、2017年に新しいクリティカリティ評価手法が公表

された。本評価手法を用いて、クリティカルメタルとして27種類が選定された。

EUにおけるクリティカリティ評価手法は、「Assessment of the Methodology for

Establishing the EU List of Critical Raw Materials – Background report」

と「Assessment of the Methodology for Establishing the EU List of Critical

Raw Materials – Annexes」の2つの報告書に整理されており、ウェブ上からPDF

をダウンロード可能である 9。

今回の改訂のプロセスでは、ステークホルダー(業界団体、製造業、ユーザー

等)と密な議論を交わしながら、クリティカリティ評価の手法開発が進められた。

具体的には、50の関係者/関係団体すべてが改訂内容案を受け取り、各方面の

意見を反映させながら、評価手法の開発に関する合意形成が行われた。

(1)経済への影響度(Economic Importance)について

算定に用いる産業セクターとしては、NACE 10の区分が採用されており、各鉱種

(金属、酸化物等)が直接利用されるセクターが算定に含まれている。例えば、

リチウムの場合は電池等が対象となる。2014年までの評価手法では、より大き

な区分(メガセクター)を用いていたが、今回の改訂でより細かい区分が用いら

れるようになった。

「経済への影響度」では、2014年までの方法では含まれていなかった代替性

が新たに考慮された点が大きな変更点である。代替性評価においては、特許情報

等から判断し、それぞれの商品や技術が代替できることの証拠があれば、代替可

能とみなされる。

(2)供給リスク(Supply Risk)

供給国の集中度に関する評価は、これまでと同様、供給国のWGIへHHIによる

重みづけを与えることで評価される。PPI(Policy Perception Index)、RGI

9https://ec.europa.eu/jrc/en/publication/assessment-methodology-establishing-eu-list-c

ritical-raw-materials-background-report

https://ec.europa.eu/jrc/en/publication/eur-scientific-and-technical-research-reports/

assessment-methodology-establishing-eu-list-critical-raw-materials-annexes 10 欧州における経済活動セクターの統計的分類。

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53

(Resource Governance Index)等を使用することも検討されたが、いずれを用

いても結果に大差がなかった経緯より、WGIが使用されることとなった。

今回の改訂では、当該鉱種の①全世界における供給国の評価と、②EUが実際に

輸入している供給国の評価を区別することとし、これら両方を用いて供給リスク

の算定に用いることとされた。今回の改訂にあたり、EUを含む世界各国へ供給

している国での供給寡占リスク評価と、実際にEU各国が輸入している国のみで

の供給寡占リスク評価は異なる点が論点となったことから、このような手法が採

用された。

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54

IV.今後の課題

本年度は供給リスク評価を中心に開発を試みたが、以下のような課題が明らか

になった。データ利用可能性、また評価方法の改良など、以下のような課題につ

いて引き続きの改善が必要である。

統合指標を用いた評価では、欧州の方式( JRC Technical Reports

“Assessment of the Methodology for Establishing the EU List of

Critical Raw Materials (2017))を参考としたが、世界生産のHHIでは

USGSのデータ、また我が国輸入のHHIでは把握できている一部の精鉱や中

間原料を対象としており、必ずしも欧州で用いられているデータと整合し

ていない。また、リサイクル率のデータもJOGMEC独自調査のものを使用し

ているが、欧州で用いているものとは定義が対応していない可能性がある。

このほか、代替性評価については、全て「1」で仮置きしているため、こ

れのデータ構築が必要である。

「物理的な供給難」における短期的な評価項目である「事故の発生頻度」

については、利用できるデータベースが存在せず、新たに代わりとなるも

のを模索するか、事故情報などをテキストマイニング等の手法でデータベ

ース化するなどの取組が今後必要になる。

鉱山別の評価を行うことで分解能の高い評価ができたものの、一方で利用

するデータベースによって、データ捕捉率が必ずしも高くはなく、一部鉱

山のデータを拾ってすべてを評価することにもなりかねないため、これの

補正方法や注意喚起等の方法を引き続き検討する必要がある。

一つの資源で複数の材料について指標を取ることができる場合、採掘ベー

スのデータで利用できるものは限られているが、製錬ベースでのデータに

は一部利用できるものがあるため(例:単体金属の生産データとフェロア

ロイ等合金の生産データとを区別)、鉱種別ではなく、より細かな材料別

の評価へと発展できる可能性がある。

一部のデータベースには、特定国・地域のデータが欠落している場合があ

り(例:ニューカレドニア、台湾、このほかにUSGSでは「others」とい

う分類が存在)、これをどのような方法で代替、代表させるべきか引き続

きの検討を要する。

「【短/長】二次原料からのリサイクルによる供給」では、JOGMEC独自調

査のデータを利用しているが、ここでは工程くずの利用分が反映されてお

らず、市中くずの回収・利用分しか反映されていないため、これを補完す

るためのデータ、また補完する評価方法等を引き続き検討する必要がある。

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55

多くのデータは、鉱石採掘時点のデータを利用しており、必ずしもすべて

の中間原料等も網羅したデータとなっているわけではない。生産、輸入等

の寡占度を評価する際には、利用できるデータの制約等から部分的にしか

評価していない鉱種も多く(例:主産物鉱石を含む精鉱のほかに副産物と

して生産されるものの評価、他のHSコードに埋没してしまっていて特定の

難しい中間原料輸入の評価等)では、今後はできるだけ網羅性を高めてい

く必要がある。

昨年度の検討課題であった脆弱性評価の手法開発について、次年度以降検討を

進めていく必要がある。具体的には、代替技術脆弱性分析の課題整理とそれらの

解決が求められる(産業連関表の活用、簡易的な分析手法の開発等)。以下のよ

うな課題についての取り組みが必要である。

当初予定されていた資源リスク評価の手法としては、供給リスクと脆弱性

の2軸について、それぞれ評価方法を開発するというものであり、本年度

は特に供給リスクの評価手法開発に注力したところである。

今後は供給リスク評価の手法や表現方法の改善を目指すとともに脆弱性

評価手法の開発も行っていく必要がある。特に脆弱性評価手法は、既往研

究でも対象にできる鉱種が限定的であり、できるだけ多くの鉱種を捕捉で

きるような評価手法の開発が求められる。

供給リスク評価では、多数の評価項目、また鉱種でデータの捕捉率が低い

か、そもそもデータが存在しないというものもあった。そのため、欧州や

米国等でも利用ニーズがあると思われるデータについては、データベース

の共有等を促してく等の取組も求められる(政府、大学、海外研究機関等)。

(以上)

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平成29年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業

鉱物資源基盤整備調査事業

(鉱物資源の供給安定性評価調査)

報告書

平成30年3月30日

発行: 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課

委託先: 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

※無許可の転載・掲載を禁じます。