腹腔内投与後の薬物吸収動態の解析を目的とした …1-b 速度論的解析 10 1-c...

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- 1 - ―目 次― 2 実験方法 3 1 動物実験 3 2 薬物の定量 4 3 モーメント解析 6 結果および考察 7 1 盲腸漿膜表面からの薬物吸収 7 1-a Phenol red の盲腸漿膜表面投与後の体内動態 7 1-b 速度論的解析 10 1-c 投与量依存性 12 1-d 分子量の影響 15 2 腸間膜からの薬物吸収 17 2-a Phenol red の腸間膜投与後の体内動態 17 2-b 腸間膜を透過した薬物の腹腔内への拡散 18 3 腹腔内臓器間における薬物吸収性の比較 22 3-a 臓器表面における phenol red 吸収性の比較 22 3-b 臓器表面における FITC-dextran 吸収性の比較 24 27 29 参考文献 30 腹腔内投与後の薬物吸収動態の解析を目的とした ラット盲腸漿膜表面と腸間膜からの 薬物吸収に関する検討 医療薬剤学講座 (薬剤学研究室) 能勢 誠一

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Page 1: 腹腔内投与後の薬物吸収動態の解析を目的とした …1-b 速度論的解析 10 1-c 投与量依存性 12 1-d 分子量の影響 15 2 腸間膜からの薬物吸収

- 1 -

―目 次―

Ⅰ 緒 言 2

Ⅱ 実験方法 3

1 動物実験 3

2 薬物の定量 4

3 モーメント解析 6

Ⅲ 結果および考察 7

1 盲腸漿膜表面からの薬物吸収 7 1-a Phenol red の盲腸漿膜表面投与後の体内動態 7 1-b 速度論的解析 10 1-c 投与量依存性 12 1-d 分子量の影響 15

2 腸間膜からの薬物吸収 17 2-a Phenol red の腸間膜投与後の体内動態 17 2-b 腸間膜を透過した薬物の腹腔内への拡散 18

3 腹腔内臓器間における薬物吸収性の比較 22 3-a 臓器表面における phenol red 吸収性の比較 22 3-b 臓器表面における FITC-dextran 吸収性の比較 24

Ⅳ 結 論 27

Ⅴ 謝 辞 29

Ⅵ 参考文献 30

腹腔内投与後の薬物吸収動態の解析を目的とした

ラット盲腸漿膜表面と腸間膜からの

薬物吸収に関する検討

医療薬剤学講座 (薬剤学研究室) 能勢 誠一

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- 2 -

Ⅰ 緒 言

薬物の腹腔内投与は、薬理学、毒性学(1)および生物薬剤学(2)の分野で一般

に行われている投与法である。臨床においても用いられており、卵巣癌に対す

る効果が高いことが知られている(3)。また、吸収後の薬物は門脈に移行し、肝

臓に至ると考えられており(4-7)、肝臓への癌の転移を防ぐ作用が静脈内投与よ

り効果的である(8)という報告もある。腹腔内投与された薬物の吸収経路として、

腹腔内の各臓器表面が考えられるが、吸収経路などに関する詳細な報告は少な

い。

当研究室では、新規投与形態として臓器表面への直接投与を提案し、これま

でラットの肝臓(9-14)、腎臓および胃漿膜表面(15)において、これらの臓器表面

からの吸収に関して、様々な知見を得てきた。

本研究では、腹腔内投与された薬物の吸収に対する臓器表面吸収の寄与を検

討するため、ラットの腹腔内に大きな位置を占めている、盲腸漿膜表面と腸間

膜からの薬物吸収の可能性について、臓器表面への直接投与法を用いた検討を

行った。

ラット等の草食動物の盲腸は非常に発達しており(16)、線維の消化などに重

要な役割を果たしている(17)。大きさはほぼ胃ほどあり、その大きさから、盲

腸漿膜表面からの吸収性は腹腔内の薬物の吸収に大きく影響しているものと予

想される。一方、腸間膜は腸を後腹膜に繋げている組織であり、十二指腸から

結腸まで到達している。この中を腸へ供給する血管、リンパ管などが通ってい

る。面積が大きく、また、血管系が発達していることから、腸間膜の吸収性も

腹腔内からの薬物吸収に影響が大きいものと予想される。

さらに、盲腸漿膜表面、腸間膜からの薬物吸収性について得られた結果を、

これまで検討された肝臓、腎臓および胃漿膜における結果と比較し、腹腔内投

与後の薬物吸収に及ぼす臓器表面の寄与について考察した。

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Ⅱ 実験方法

1 動物実験

Wistar 系雄性ラット (250 ~ 316 g)を用い、飼育中は水および飼料 (固形飼料

MF:オリエンタル酵母工業)を自由に与えた。

Sodium pentobarbital (ダイナボット)麻酔下 (50 mg/kg i.p.)、ラットの左大腿動

脈にヘパリン (ノボ・ノルディスク A/S)を満たしたポリエチレンチューブ (内

径 0.5 mm、外径 0.8 mm; Dural Plastics)を、胆管にポリエチレンチューブ (内径

0.28 mm、外径 0.61 mm: Becton Dickinson&Co.)を挿入した。

・静脈内投与実験

静脈内投与は、26 × 1/2”針付きシリンジ (日本メディカル・サプライ)を用いて、

等張リン酸緩衝液 (pH 7.4)に溶解させた薬物 (0.05 mL)を左頸静脈より瞬時に

行った。薬物投与後、経時的に血液および胆汁を採取した。また、実験終了時

に膀胱より尿を回収した。

Fig. 1 Experimental method for drug application to rat cecal serosal surface and mesentery

Diffusion cell

CecumMesentery

Polyethylenecap

: Mesentery with no blood vessel

: Mesentery with blood vessel

Diffusion cell

I.D. : 6 mmArea : 0.28 cm2

Male Wistar rat

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・盲腸漿膜表面投与

盲腸漿膜表面に円筒状のガラス製拡散セル (内径 6 mm、適用面積 0.28 cm2)

を外科用アロンアルファ (三共)を用いて装着し、等張リン酸緩衝液 (pH 7.4)に

溶解させた薬物 (0.05 mL)を拡散セル内に投与した。薬物投与後、経時的に血液

および胆汁を採取した。また、実験終了時に拡散セル内に残存する薬液および

膀胱より尿を回収した。

また、拡散セル内に投与した薬物を、一定時間後回収し、各時間における拡

散セル内薬物残存量を測定した。

・腸間膜投与

Fig. 1 に示すように、腸間膜の血管が存在しない部位 (Mesentery with no blood

vessel)および血管が存在する部位 (Mesentery with blood vessel)にそれぞれ円筒

状の拡散セルを装着し、等張リン酸緩衝液 (pH 7.4)に溶解させた薬物 (0.05

mL)を拡散セル内に投与した。薬物投与後、経時的に血液、胆汁を採取した。ま

た、実験終了時に拡散セル内に残存する薬液および膀胱より尿を回収した。

また、腸間膜を透過した薬物の腹腔内他臓器表面からの吸収の影響を除く目

的で、拡散セルを装着した裏側の面にポリエチレン製のキャップ (PE cap)を貼

った実験系における検討も行った。

2 薬物の定量

今回の実験に用いた薬物とその分子量及び投与量を以下に示す。

Phenol red; PR (ナカライテスク) Mw 354

表面投与: 6, 10, 20 mg/mL × 0.05 mL

静脈内投与: 20 mg/mL × 0.05 mL

Fluorescein isothiocyanate-dextran; FD (Sigma)

FD-4 Mw 4400: 20 mg/mL × 0.05 mL

FD-10 Mw 11000: 20 mg/mL × 0.05 mL

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- 5 -

・PR

PR の定量は Hart と Schanker の方法(18)に従って行った。

血液は遠心し (15000 rpm × 5 min)、上清部分の血漿を採取し定量に供した。

血漿 0.1 mL に 1 N NaOH 2 mL を加え、560 nm における吸光度を測定し (紫外可

視分光光度計: UV-160A, 島津製作所)、血漿中 PR の未変化体濃度を算出した。

胆汁はサンプルを冷却遠心し (3000 rpm × 20 min)、上清 0.1 mL を 2 mL の生

理食塩水に加えて、その内 1 mL を未変化体の定量用として分取し、残りを抱合

代謝物定量用のサンプルとした。未変化体定量用のサンプルには、1 N NaOH 3

mL を加え、560 nm における吸光度を測定し、PR の未変化体の濃度を算出した。

代謝物定量用のサンプルには 2 N HCl 1 mL を加え、30 分間沸騰水浴中で未変化

体へと加水分解した。その後冷却遠心し (3000 rpm × 20 min)、1 mL を分取して

サンプルとした。サンプルに 1 N NaOH 3 mL を加え、560 nm における吸光度を

測定し、サンプル中の PR の総濃度を定量した。得られた総濃度から、未変化体

の濃度を差し引くことで、サンプル中の代謝物濃度を算出した。

尿サンプルは生理食塩水で適当に希釈した後、冷却遠心し (3000 rpm × 20

min)、その後胆汁と同様の操作で未変化体、代謝物および総濃度を算出した。

拡散セル内残存液については、薬液回収後、拡散セル内を生理食塩水で洗浄

し、洗浄液を合わせ 5 あるいは 10 mL とした。その 0.1 mL に 1 N NaOH 2 mL を

加え、560 nm における吸光度を測定し、PR の未変化体濃度を算出した。

・FITC-dextran (FD-4, FD-10)

FD-4 および FD-10 の定量は Kurtzhals らの方法(19)を参考にして行った。

尿サンプルについては、等張リン酸緩衝液 (pH 7.4)を用いて適当に希釈して

蛍光強度 (励起波長 489 nm、 蛍光波長 515 nm)を測定し (分光蛍光光度計: RF-

1500, 島津製作所)、FD の濃度を算出した。

拡散セル内残存液は、薬液回収後、拡散セル内を等張リン酸緩衝液 (pH 7.4)

で洗浄し、洗浄液を合わせ 10 mL とした後、等張リン酸緩衝液 (pH 7.4)で適当

に希釈して蛍光強度を測定し、FD の濃度を算出した。

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3 モーメント解析

得られた血漿中濃度-時間曲線および胆汁中排泄速度-時間曲線については、

以下の式に従ってモーメント解析した。

0 pp dtCAUC

p0 pp AUC/dtCtMRT

ここで、t は時間 (min)、Cpは血漿中濃度 (g/mL)であり、AUCpは血漿中濃度

-時間曲線下面積 (g/mL·min)、MRTp は平均血漿中滞留時間 (min)である。

また、胆汁中排泄速度-時間曲線を以下の式に従ってモーメント解析した。

dtdt

dXAUC

0

bb

b0

bb AUC/dt

dt

dXtMRT

ここで、dXb/dt は胆汁中排泄速度 (g/min)であり、AUCb は胆汁中排泄速度-時

間曲線下面積 (g)、MRTb は平均胆汁中滞留時間 (min)である。PR については、

未変化体 (AUCb,f、MRTb,f)と代謝物 (AUCb,m、MRTb,m)について、それぞれモ

ーメントパラメータを算出した。

モーメントパラメータの算出法はYamaokaらの方法(20)に従い、terminal phase

以前の測定点に対しては台形公式を適用し、terminal phase に相当する部分に対

しては、最小二乗法によって一次速度式に当てはめた後、無限時間までの値を

算出した。

[3]

[4]

[1]

[2]

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Ⅲ 結果および考察

1 盲腸漿膜表面からの薬物吸収

ラットの盲腸は非常に発達しており、腹腔内に大きな位置を占めている(16)。

したがって、その表面からの薬物吸収性は、腹腔内投与された薬物の吸収に大

きく寄与するものと予想される。そこでラット盲腸漿膜表面からの薬物吸収の

可能性について検討した。

盲腸漿膜表面からの薬物吸収動態を定量的に評価するために、ラット盲腸漿

膜表面に円筒状の拡散セル (内径 6 mm、 適用面積 0.28 cm2)を装着し、拡散セル

内に薬液を投与することにより、吸収部位が盲腸漿膜表面のみに限定された実

験系を確立し検討を行った。臓器表面への直接投与法は、これまで、ラットの

肝臓(9-13)、腎臓および胃漿膜(15)において検討が行われ、各臓器表面投与後の

基本的薬物吸収動態が明らかになっている。今回、これらの結果と盲腸漿膜表

面からの薬物吸収性を比較するため、これまでの検討で用いられた、低分子量

(Mw 354)の有機アニオン系色素である PR をモデル薬物として選択した。PR は

体内動態に関する基本的な情報が既に明らかである(9-11, 13-15, 18, 21)。また、

薬理作用がなく、定量が簡便で代謝能も同時に評価でき、定量性に優れている。

1-a Phenol red の盲腸漿膜表面投与後の体内動態

PR 1 mg (20 mg/ml × 0.05 mL)を盲腸漿膜表面に投与後、360 分までの血漿中濃

度-時間曲線を Fig. 2 に示している。盲腸漿膜表面へ投与された PR は、血漿中

に出現、投与後 60 分で最高値に達し、その後徐々に消失した。これより、拡散

セル内に投与された PR は盲腸漿膜表面より吸収され、全身循環系に移行するこ

とが明らかとなった。

また、胆汁中排泄速度-時間曲線を Fig. 3 に示している。盲腸漿膜表面へ投与

された PR は未変化体および代謝物 (主としてグルクロン酸抱合体(18))両方の

形で胆汁中に排泄された。

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Fig. 2 Plasma concentration of PR after application to rat cecal serosal surface at a dose of 1 mg Each point represents mean ± S.E. of six experiments.

Fig. 3 Biliary excretion rate of free PR (●) and its metabolite (○) after application to rat cecal serosal surface at a dose of 1 mg Each point represents mean ± S.E. of six experiments.

0

1

2

3

0 120 240 360Pla

sma

conc

entr

atio

n (µ

g/m

L)

Time (min)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0 120 240 360

Bili

ary

excr

etio

n ra

te (

µg/

min

)

Time (min)

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PR 1 mg を盲腸漿膜表面に投与後、6 時間の拡散セル内残存率、胆汁中排泄率

および尿中排泄率を Table 1 に示した。盲腸漿膜表面投与時において、拡散セル

内残存率より吸収率は 89.6 %と算出され、極めて高い値を示した。吸収された

PR は未変化体および代謝物のいずれも胆汁中および尿中に排泄された。PR の

胆汁中および尿中への排泄率は、盲腸漿膜表面投与時、やや尿中に排泄されや

すい傾向が見られたが、未変化体および代謝物のいずれも静脈内投与時とほぼ

同様の結果を示した。

Table 1 Recovery (%) of PR at 6 hr after application to rat cecal serosal surface (CS) and intravenous administration at a dose of 1 mg

Route Diffusion cell Bile Urine

Free Total Free Metabolite Total Free Metabolite

CS 10.4 54.1 33.6 20.6 29.4 20.7 8.7 ±1.7 ±2.1 ±1.5 ±1.6 ±2.5 ±2.5 ±1.2

i.v. - 69.2 42.1 27.1 23.1 16.2 6.9 ±4.0 ±2.2 ±3.3 ±5.7 ±4.9 ±1.0 Each value is mean ± S.E. of six experiments.

PR は生理的 pH においてほぼ解離し、水溶性も高いことから、腸管からはほ

とんど吸収されず(21)、非吸収マーカーとして繁用されている化合物である

(22)。これまで検討が行われた肝臓、腎臓および胃漿膜表面からの吸収におい

て、拡散セルの適用面積や投与容量などの投与条件は異なるものの、その吸収

率はいずれも 80 %以上と良好であった。したがって、盲腸漿膜表面をはじめと

する臓器表面への薬物の直接投与法は、このような腸管から吸収されない薬物

の投与経路として、有用であると考えられる。

PR の盲腸漿膜表面投与および静脈内投与時における血漿中濃度-時間曲線お

よび胆汁中排泄速度-時間曲線をモーメント解析し、得られたパラメータを

Table 2 に示している。盲腸漿膜表面投与において、平均血漿中滞留時間 (MRTp)

および平均胆汁中排泄時間 (MRTb,f、MRTb,m)は静脈内投与に比べ、約 80 分延

長した。したがって、PR を盲腸漿膜表面投与した場合の平均吸収時間は、約 80

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分程度であると考えられる。

Table 2 Moment parameters of PR after application to rat cecal serosal surface (CS) and intravenous administration at a dose of 1 mg

Route AUCp MRTp AUCb,f MRTb,f AUCb,m MRTb,m (µg/mL·min) (min) (µg) (min) (µg) (min)

CS 545.0 151.7 354.7 139.9 220.7 149.2 ±30.5 ±15.9 ±16.7 ±4.5 ±17.1 ±9.1

i.v. 1026.3 75.9 457.3 58.4 301.2 80.1 ±132.1 ±9.0 ±32.6 ±4.6 ±38.5 ±6.4 Each value is mean ± S.E. of six experiments.

1-b 速度論的解析

PR の盲腸漿膜表面投与後の吸収挙動を明らかにするために、PR の拡散セル

内残存率の経時変化について検討した。Fig. 4 には、PR 1 mg を盲腸漿膜表面に

投与したときの拡散セル内残存率を、時間に対して片対数プロットしたグラフ

を示している。図中には示していないが、投与後 360 分までの残存率をプロッ

トすると、投与後 180 分まではほぼ直線的に減少してたが、180 ~ 360 分にかけ

て残存率の減少が小さくなった。残存薬液量を各時間で比較すると、時間の経

過と共に、徐々に液量の増加がみられた。この原因として、体液成分が拡散セ

ル内に漏出してきた結果、投与薬液を希釈し、見かけ上吸収速度の低下を招い

たことが考えられる。そこで、残存液量の増加の少ない 180 分までの値に着目

した。残存率は直線的に減少し、拡散セル内からの薬物消失、即ち吸収が一次

速度式に従うことが示された。

Xa = Xo · e

-Ka·t [5]

ここで Xa は時間 t (min)における拡散セル内残存量、Xo は投与量、Ka は吸

収速度定数 (min-1)を示す。Fig. 4 に示す回帰直線より得られた Kaは 8.01 × 10-3

(min-1) (r2; 0.94)と計算され、吸収過程の半減期は約 90 分となった。

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Fig. 4 Semi-log plot of time course of remaining amount of PR in diffusion cell after application to rat cecal serosal surface at a dose of 1 mg Each point represents mean ± S.E. of at least six experiments.

Time (min)

Am

ount

(%

)

10

100

0 60 120 180

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1-c 投与量依存性

前項の Fig. 4 より、盲腸漿膜表面からの PR の吸収に 180 分までであるが、線

形性が見られ、受動拡散の寄与が大きいことが推察される。しかし、吸収速度

が飽和しない投与量の領域で検討している可能性もある。そこで投与量を 0.3,

0.5, 1 mg (6, 10, 20 mg/mL × 0.05 mL)と変化させて盲腸漿膜表面からの PR の吸

収性に対する投与量依存性を検討した。投与後 360 分までの血漿中濃度-時間

曲線を Fig. 5 に示している。いずれの投与量においても投与された PR は 60 分

で最高血漿中濃度となり、以後徐々に消失した。最高血漿中濃度は投与量にほ

ぼ比例して変化し、血漿中濃度のパターンに違いは見られなかった。

また、胆汁中排泄速度-時間曲線を Fig. 6 に示している。未変化体 (A)およ

び代謝物 (B)の胆汁中排泄速度-時間曲線についても、投与後 60 分で最高胆汁

中排泄速度に達し、その値はほぼ投与量に比例し変化した。胆汁中排泄速度の

パターンにも投与量による違いは見られなかった。

Fig. 5 Plasma concentration of PR after application to rat cecal serosal surface at doses of 0.3 (▲), 0.5 (○) and 1 mg (●) Each point represents mean ± S.E. of at least five experiments.

Pla

sma

conc

entr

atio

n (µ

g/m

L)

Time (min)

0

1

2

3

0 120 240 360

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Fig. 6 Biliary excretion rate of free PR (A) and its metabolite (B) after application to rat cecal serosal surface at doses of 0.3 (▲), 0.5 (○) and 1 mg (●) Each point represents mean ± S.E. of at least five experiments.

各投与量における拡散セル内残存率、胆汁中排泄率および尿中排泄率を Table

3 に示している。拡散セル内残存率より求めた吸収率は、それぞれ 85.7 %、90.1 %

および 89.6 %といずれも良好で、吸収率に投与量による差は見られなかった。

胆汁中および尿中排泄率においても、1 mg 投与時に尿中への代謝物の排泄率が

やや小さくなったものの、大きな差は認められなかった。これよりこの投与量

領域において、PR の吸収、代謝および排泄過程は飽和しておらず、投与量に

Table 3 Recovery (%) of PR at 6 hr after application to rat cecal serosal surface at doses of 0.3, 0.5 and 1 mg

Dose Diffusion cell Bile Urine

(mg) Free Total Free Metabolite Total Free Metabolite

0.3 14.3 49.6 30.6 19.0 35.3 14.8 20.5 ±3.0 ±2.4 ±2.4 ±1.5 ±3.4 ±2.8 ±2.4

0.5 9.9 54.9 35.2 19.7 30.1 12.3 17.7 ±1.9 ±6.2 ±6.4 ±2.4 ±4.7 ±3.7 ±3.0

1 10.4 54.1 33.6 20.6 29.4 20.7 8.7 ±1.7 ±2.1 ±1.5 ±1.6 ±2.5 ±2.5 ±1.2 Each value is mean ± S.E. of at least five experiments.

Time (min)

(A) Free (B) MetaboliteB

iliar

y ex

cret

ion

rate

g/m

in)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0 120 240 3600

0.5

1

1.5

2

2.5

0 120 240 360

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- 14 -

依存しないことが明らかとなった。

また、各投与量におけるモーメントパラメータを Table 4 に示している。AUCp

は投与量に比例して増大しており、AUCp/Dose を算出したところ、3 つの投与量

において有意な差は認められなかった。MRTp、MRTb,f および MRTb,mにも大き

な差は認められず、胆汁中への PR とその代謝物の排泄にも投与量による影響は

見られなかった。

したがって、この投与量領域において、PR の盲腸漿膜表面からの吸収あるい

は吸収後の体内動態は投与量に依存しないことが明らかとなった。PR の投与量

依存性はこれまで、肝臓および胃漿膜表面では 3 mg、腎臓表面では 1.5 mg まで

の投与量において検討された。その結果、肝臓において PR 3 mg を投与した場

合、胆汁中および尿中への PR 代謝物の排泄率が低下し、代謝の飽和が示された

ものの、全ての臓器において、吸収率に投与量依存性は見られず、検討した投

与量領域において、吸収には盲腸漿膜表面と同様、受動拡散の寄与が大きいこ

とが示された。

Table 4 Moment parameters of PR after application to rat cecal serosal surface at doses of 0.3, 0.5 and 1 mg

Dose AUCp AUCp/Dose MRTp AUCb,f MRTb,f AUCb,m MRTb,m (mg) (µg/mL·min) (min/mL) (min) (µg) (min) (µg) (min)

0.3 178.1 0.59 160.5 102.5 163.7 67.7 168.5 ±18.2 ±0.06 ±30.8 ±8.6 ±28.9 ±7.5 ±23.7

0.5 339.3 0.68 180.9 188.9 152.2 111.6 194.5 ±47.9 ±0.10 ±21.0 ±34.5 ±7.6 ±10.2 ±21.6

1 545.0 0.54 151.7 354.7 139.9 220.7 149.2 ±30.5 ±0.03 ±15.9 ±16.7 ±4.5 ±17.1 ±9.1 Each value is mean ± S.E. of at least five experiments.

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- 15 -

1-d 分子量の影響

腹腔内投与への高分子性薬物の適用(23)を考える際、その詳細な吸収動態を

把握するために、盲腸漿膜表面からの吸収における分子量の影響を検討するこ

とは有用であると考えられる。これまで当研究室で検討された肝臓(12)、腎臓

および胃漿膜(15)においては、表面からの吸収に分子量依存性が認められてい

る。そこで、盲腸漿膜表面からの高分子薬物の吸収性について検討するために、

モデル薬物として、分子量の異なる FITC-dextran、FD-4 (分子量 4400)および

FD-10 (分子量 11000)を用い、その吸収性を検討した。

FD-4 および FD-10 を盲腸漿膜表面投与後 3 時間における拡散セル内残存率を

Fig. 7 に示している。FD-4 および FD-10 の拡散セル内残存率から求めた 3 時間

までの吸収率は、それぞれ 24.7 %および 12.8 %と計算され、PR (73.0 %)と比べ、

非常に小さな値となった。

Fig. 7 Recovery of PR, FD-4 and FD-10 at 3 hr after application to rat cecal serosal surface at a dose of 1 mg Each value is mean ± S.E. of at least four experiments.

また、FD-4 および FD-10 の拡散セル内残存量の経時変化を片対数プロットす

ると (Fig. 8)、いずれも直線的な減少が見られた。したがって、FD-4 および FD-10

の盲腸漿膜表面からの吸収が一次速度式に従うことが明らかとなった。さらに

0

20

40

60

80

100

Rec

over

y (%

)

PR FD-4 FD-10

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- 16 -

得られた回帰直線より、FD-4 および FD-10 の Kaはそれぞれ FD-4: 1.62 × 10-3

(min-1) (r2; 0.98)、FD-10: 0.85 × 10-3 (min-1) (r2; 0.92)と計算された。

今回 3 種類の分子量でしか検討していないが、PR (分子量 354)、FD-4 (分子

量 4400)および FD-10 (分子量 11000)の吸収性を比較することにより、盲腸漿膜

表面からの薬物吸収が分子量により規定されることが推察された。

Fig. 8 Semi-log plot of time course of remaining amount of FD-4 (●) and FD-10 (○) in diffusion cell after application to rat cecal serosal surface at a dose of 1 mg Each point represents mean ± S.E. of at least four experiments.

Time (min)

Am

ount

(%

)

50

100

0 60 120 180

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- 17 -

2 腸間膜からの薬物吸収

腸間膜は、腸を後腹壁に固定している組織で、その中に腸へ供給する血管や

リンパ管などを包接している。腸間膜は十二指腸から結腸まで到達しており、

ヒトにおいては起始部 15 cm に対し、辺縁は腸の長さ、3 m にもなる大組織であ

る。面積が大きいため、腸間膜からの吸収は、腹腔内投与された薬物の吸収に

大きく寄与するものと予測される。そこで盲腸漿膜表面同様、拡散セルを用い

た実験系において、腸間膜からの薬物吸収性を検討した。

2-a Phenol red の腸間膜投与後の体内動態

腸間膜は血管系が発達しており、その血管上からの吸収は比較的良好である

ことが予想される。よって、腸間膜については血管が存在しない部位と血管が

存在する部位を区別して拡散セルを装着し、PR 1 mg (20 mg/ml × 0.05 mL)を投

与した。投与後360分までのPRの血漿中濃度-時間曲線をFig. 9に示している。

Fig. 9 Plasma concentration of PR after application to rat mesentery with no blood vessel (A) and with blood vessel (B) at a dose of 1 mg Each point represents mean ± S.E. of at least four experiments.

(A) Mesentery with no blood vessel

(B) Mesentery with blood vessel

Time (min)

Pla

sma

conc

entr

atio

n (µ

g/m

L)

0

1

2

3

0 120 240 3600

1

2

3

0 120 240 360

Page 18: 腹腔内投与後の薬物吸収動態の解析を目的とした …1-b 速度論的解析 10 1-c 投与量依存性 12 1-d 分子量の影響 15 2 腸間膜からの薬物吸収

- 18 -

いずれの部位においても、投与した PR は血漿中に出現、投与後 60 分で最高

血漿中濃度に達し、以後徐々に減少した。Table 5 には、拡散セル内残存率、胆

汁中排泄率および尿中排泄率を示している。拡散セル内薬物残存率より吸収率

はそれぞれ 83.6 %および 92.1 %と算出され、腸間膜のいずれの部位からも PR は

良好に吸収されることを示唆する結果が得られた。

Table 5 Recovery (%) of PR at 6 hr after application to rat mesentery under several conditions at a dose of 1 mg

Application Diffusion Bile Urine

Site cell Total Free Metabolite Total Free Metabolite

Mesentery with 16.4 40.6 24.0 16.6 34.9 22.8 12.1 no blood vessel ±2.8 ±0.0 ±2.4 ±1.8 ±1.8 ±3.3 ±2.2

Mesentery with 7.9 45.3 24.7 20.7 38.0 21.7 16.3 blood vessel ±1.9 ±4.2 ±1.5 ±2.7 ±3.3 ±3.5 ±1.0 Each value is mean ± S.E. of at least four experiments.

2-b 腸間膜を透過した薬物の腹腔内への拡散

前項の Fig. 9 より、腸間膜の血管の存在する部位、しない部位に関わらず、投

与された PR の速やかな吸収が認められた。ところが、腸間膜に拡散セルを装着

し、in vitro で PR の透過性を検討したところ、明らかに PR が透過しているのが

確認できた。この結果は、投与した PR が腸間膜を透過し、他臓器表面から吸収

された可能性を示している。したがって、厳密に腸間膜のみからの吸収を評価

するためには、透過した PR の腹腔内への拡散を遮断する必要がある。

そこで Fig. 1 に示すように、拡散セルを装着した裏側の面に PE cap を貼り、

腸間膜を透過した PR の腹腔内への拡散を遮断した実験系において、検討を行っ

た。

この場合の、血漿中濃度-時間曲線を Fig. 10 に示している。PE cap を用いた

場合、腸間膜の血管の存在する部位においては、PR の血漿中への出現が減少し

(Fig. 10B)、血管の存在しない部位においては、PR の血漿中への出現がほぼ完

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- 19 -

Fig. 10 Plasma concentration of PR after application to rat mesentery with no blood vessel (A) and with blood vessel (B) at a dose of 1 mg ●; Without PE cap ○; With PE cap Each point represents mean ± S.E. of at least four experiments.

Fig. 11 Biliary excretion rate of PR after application to rat mesentery with no blood vessel (A) and with blood vessel (B) at a dose of 1 mg ●, ▲: Free ○, △: Metabolite Each point represents mean ± S.E. of at least four experiments.

Time (min)

Pla

sma

conc

entr

atio

n (µ

g/m

L)

0

1

2

3

0 120 240 3600

1

2

3

0 120 240 360

(A) Mesentery with no blood vessel

(B) Mesentery with blood vessel

Time (min)

Bili

ary

excr

etio

n ra

te (

µg/

min

)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0 120 240 3600

0.5

1

1.5

2

2.5

0 120 240 360

●, ○ : Without PE cap

▲, △ : With PE cap

●, ○ : Without PE cap

▲, △ : With PE cap

(A) Mesentery with no blood vessel

(B) Mesentery with blood vessel

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- 20 -

全に消失した (Fig. 10A)。

また、胆汁中排泄速度-時間曲線を Fig. 11 に示している。胆汁中への排泄に

おいても血漿中濃度と同様の傾向が見られた。即ち、腸間膜の血管の存在する

部位においては、PR の胆汁中への排泄が減少し (Fig. 11B)、血管の存在しない

部位においては、PR の胆汁中への排泄がほぼ完全に消失した (Fig. 11A)。

したがって、拡散セルのみを装着した実験系における結果は、腸間膜を透過

し、腹腔内に拡散した PR が他臓器表面から吸収された分を含んだものであるこ

とが示唆された。

Table 6 には腸間膜投与時の拡散セル内残存率、胆汁中排泄率および尿中排泄

率を、投与量 1 mg で検討した盲腸漿膜表面での結果と合わせて示している。

腸間膜に拡散セルを装着しただけの実験系においては、拡散セル内残存率よ

り求めた吸収率は、いずれの部位に投与した場合も高い値を示し (Table 5)、盲

腸漿膜表面における結果同様、吸収が良好であることを示唆する結果が得られ

た。

Table 6 Recovery (%) of PR at 6 hr after application to rat mesentery under several conditions and cecal serosal surface (CS) at a dose of 1 mg

Application Diffusion Bile Urine

Site cell Total Free Metabolite Total Free Metabolite

Mesentery with 16.4 40.6 24.0 16.6 34.9 22.8 12.1 no blood vessel ±2.8 ±0.0 ±2.4 ±1.8 ±1.8 ±3.3 ±2.2

with 91.7 - - - - - - PE cap ±0.5

Mesentery with 7.9 45.3 24.7 20.7 38.0 21.7 16.3 blood vessel ±1.9 ±4.2 ±1.5 ±2.7 ±3.3 ±3.5 ±1.0

with 33.1 32.4 20.3 12.1 28.2 17.3 11.0 PE cap ±5.3 ±4.0 ±2.3 ±1.8 ±1.6 ±1.2 ±1.1

CS 10.4 54.1 33.6 20.6 29.4 20.7 8.7 ±1.7 ±2.1 ±1.5 ±1.6 ±2.5 ±2.5 ±1.2

Each value is mean ± S.E. of at least four experiments. - : not detected.

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- 21 -

ところが、PE cap を貼った実験系において吸収率は、血管の存在しない部位

および血管の存在する部位について、それぞれ8.3 %および66.9 %まで減少した。

これに伴い、胆汁中および尿中への各排泄率も大きく減少し、血管の存在しな

い部位においては PR の排泄が認められなかった。

また Table 7 にはモーメントパラメータを、投与量 1 mg で検討した盲腸漿膜

表面での結果と合わせて示している。PE cap を貼ることにより、AUCp、AUCb,f

および AUCb,mにも大きな減少が見られた。

Table 7 Moment parameters of PR after application to rat mesentery under several conditions and cecal serosal surface (CS) at a dose of 1 mg

Application AUCp MRTp AUCb,f MRTb,f AUCb,m MRTb,m Site (µg/mL·min) (min) (µg) (min) (µg) (min)

Mesentery with 573.1 220.2 271.4 183.7 196.1 205.9 no blood vessel ±29.7 ±25.7 ±21.4 ±8.8 ±22.9 ±9.6

Mesentery with 493.7 177.0 269.1 158.1 229.0 175.4 blood vessel ±61.1 ±26.1 ±16.5 ±18.8 ±29.2 ±17.7

with 326.7 171.9 240.2 208.7 145.2 218.5 PE cap ±53.7 ±17.0 ±24.5 ±15.8 ±21.3 ±14.3

CS 545.0 151.7 354.7 139.9 220.7 149.2 ±30.5 ±15.9 ±16.7 ±4.5 ±17.1 ±9.1 Data of mesentery with no blood vessel with PE cap are not shown because PR was not detected in plasma and bile Each value is mean ± S.E. of at least four experiments.

以上の結果より、腸間膜からの PR の吸収に対し腸間膜自身は寄与しておらず、

腸間膜に存在する血管表面からのみ吸収が起こることが推察された。吸収への

寄与が示唆された血管表面の面積は、腸間膜全体に比べ非常に小さなものであ

り、腸間膜全体としての薬物吸収への影響は小さいものと予測される。

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- 22 -

3 腹腔内臓器間における薬物吸収性の比較

薬物の腹腔内投与は、薬理学、毒性学(1)および生物薬剤学(2)の分野で一般

に行われている投与法である。しかし、腹腔内投与後の詳細な薬物動態を、腹

腔内臓器表面からの直接的な薬物吸収の寄与という面から考察した報告は少な

い。当研究室ではこれまで、肝臓、腎臓および胃漿膜表面からの薬物吸収が良

好であることを示してきた。本研究において新たに、盲腸漿膜表面からも 3 種

類のモデル薬物が吸収されることを示した。腹腔内投与された薬物の吸収には、

このような臓器表面からの良好な薬物吸収の寄与するところが大きいと考えら

れる。

3-a 臓器表面における phenol red 吸収性の比較

腹腔内のあらゆる臓器について、その表面からの薬物吸収の可能性は否定で

きないが、本項では、これまで検討された 4 つの臓器について、表面からの薬

物吸収性を比較した。まず 4 つの臓器において、その吸収性に関して様々な検

討が行われた PR について比較を行った。これまでの検討では、それぞれ用いた

拡散セルの適用面積や薬液の投与容量などの実験条件が異なっている。薬物吸

収性を臓器間で比較するために、式 6 および 7 に示すように、それぞれの臓器

表面において求められた Kaを用い、見かけの吸収クリアランス CLa,app と透過係

数 Papp (単位面積当たりの吸収クリアランス)を算出し、臓器間の吸収性を比較

した。

CLa,app = Ka· Va

Papp = CLa,app / A

ここで、A は拡散セルの適用面積 (cm2)、Va は薬液の投与容量 (mL)である。

Table 8 に示すように、拡散セルの適用面積、薬液の投与容量を考慮したパラ

メータである Papp は、腎臓で最も高く、単位面積当たりの吸収が最も良好であ

ることが分かった。その他の肝臓、胃漿膜および盲腸漿膜表面における結果に

[6]

[7]

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- 23 -

は大きな差は見られなかった。

次の段階として、実際、腹腔内投与された薬物の吸収にどの程度寄与するか

を評価するために、Papp に臓器の表面積(24)をかけ、臓器表面全体の吸収クリア

ランス CLa を算出した (Table 9)。

Table 8 Pharmacokinetic parameters of PR after application to rat various surfaces at a dose of 1 mg Route A Va Ka CLa,app Papp

(cm2) (mL) (min-1x10-3) (mL/minx10-3) (cm/minx10-3) Liver 0.64 0.10 9.2 0.92 1.44

Kidney 0.28 0.05 13.7 0.69 2.45

Stomach 0.64 0.10 8.8 0.88 1.37

Cecum 0.28 0.05 8.0 0.40 1.43 Ka value ; Liver : obtained from curve-fitting data Kidney, Stomach and Cecum : obtained from recovery ratio in diffusion cell Ka of liver reference (10)

Table 9 Absorption clearance of tissue of PR after application to rat various surfaces at a dose of 1 mg Route Papp Surface area CLa

(cm/minx10-3) (cm2) (mL/minx10-3) Liver 1.44 71.7 103.1

Kidney 2.45 13.0 31.8

Stomach 1.37 16.3 22.3

Cecum 1.43 25.2 36.0 Surface area of tissue ; Liver, Stomach and Cecum : reference (24) Kidney : calculated from ratio rat kidney weight to rat liver weight multiplied rat liver surface area Rat liver and kidney weight reference (25)

Table 9 より、CLa はその表面積の大きさから、肝臓が最も高いことが示され

た。

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- 24 -

3-b 臓器表面における FITC-dextran 吸収性の比較

次の段階として、各臓器における高分子化合物の吸収性について比較を行っ

た。4 つの臓器表面において検討された、FD-4 および FD-10 について、PR と同

様に Papp および CLaを算出し、考察した。FD-4 における結果を Table 10 に、FD-10

における結果を Table 11 にそれぞれ示している。FD-4 および FD-10、いずれの

場合においても、Papp が最も高かったのは腎臓であり、高分子に対する吸収性も

他の臓器より高いことが示された。PR における結果同様、その他の 3 つの臓器

には大きな違いは見られなかった。

腎臓表面からの吸収性が他臓器よりも高いことは、以前、肝臓および腎臓表

面において求められた、吸収の可能な上限分子量の結果からも推察される。様々

な分子量のモデル薬物について、肝臓および腎臓表面からの吸収性を検討した

結果をもとに、分子量の平方根の逆数 ( MW/1 )に対して、各モデル薬物の Ka

をプロットした閾値より、腎臓表面からは比較的大きな分子量の薬物も吸収さ

れうることが示唆されている。

Table 10 Permeability coefficient and absorption clearance of tissue of FD-4 after application to rat various surfaces Route A Va Ka CLa,app Papp CLa

(cm2) (mL) (min-1x10-3) (mL/minx10-3) (cm/minx10-3) (mL/minx10-3) Liver 0.64 0.10 1.57 0.157 0.245 17.59

Kidney 0.28 0.05 3.97 0.199 0.710 9.23

Stomach 0.64 0.10 1.80 0.180 0.281 4.58

Cecum 0.28 0.05 1.62 0.081 0.289 7.29 Ka values are obtained from recovery from diffusion cell. Ka of liver reference (12)

また CLa は、表面積の大きさから、肝臓で最も高い値を示した (Table 10, 11)。

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- 25 -

Table 11 Permeability coefficient and absorption clearance of FD-10 after application to rat various surfaces Route A Va Ka CLa,app Papp CLa

(cm2) (mL) (min-1x10-3) (mL/minx10-3) (cm/minx10-3) (mL/minx10-3) Liver 0.64 0.10 0.92 0.092 0.144 10.31

Kidney 0.28 0.05 2.18 0.109 0.390 5.07

Stomach 0.64 0.10 0.41 0.041 0.064 1.04

Cecum 0.28 0.05 0.85 0.043 0.152 3.83 Ka values are obtained from recovery from diffusion cell. Ka of liver reference (12)

しかし、CLaの比較は、投与薬液が腹腔内に一様に分布し、全ての臓器表面の

全ての面に均一に接している場合を想定しており、実際の腹腔内投与後の薬物

吸収を正確に反映するものではない。そこで PR、FD-4 および FD-10 における

結果ついて Papp に着目した。

Fig. 12 には各臓器表面における PR、FD-4 および FD-10 の Papp を、各モデル

薬物の分子量の平方根の逆数に対してプロットしている。既述のとおり、いず

れのモデル薬物においても、Papp は腎臓における値が高いものの、他の 3 つの臓

器における結果に大きな差は見られず、単位面積当たりの吸収がほぼ同程度で

あることが示された。

この結果は、今回検討した各臓器表面に同じ面積だけ薬液が接した場合、そ

の吸収性はほぼ同程度であることを示唆している。したがって、腹腔内投与法

により標的部位への薬物送達を考える際、適切な投与部位および投与容量の選

択、さらには標的部位への滞留性を向上させる製剤的工夫などが重要になると

思われる。

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- 26 -

Fig. 12 Permeability coefficient (Papp) of PR, FD-4 and FD-10 across liver (●), kidney (○), stomach (▲) and cecum (△) in rat

0

1

2

3

0 0.02 0.04 0.06

Mw/1

FD-10

FD-4

PRPap

p (c

m/m

in×

10-3

)

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- 27 -

Ⅳ 結 論

1 盲腸漿膜表面からの薬物吸収

盲腸漿膜表面からの薬物吸収の可能性を検討するために、拡散セルを用い、

吸収部位が盲腸漿膜表面のみに限定できる実験系を確立し、検討を行った。

モデル薬物として選択した PR は、盲腸漿膜表面投与後 360 分で約 90 %が吸

収された。吸収された PR は血漿中に出現し、未変化体および代謝物、両方の形

で胆汁中および尿中へと効率よく排泄された。これより、盲腸漿膜表面からの

薬物吸収の可能性が示された。PR の拡散セル内残存率の経時変化を時間に対し

て片対数プロットしたところ、直線的な減少が見られたことから、吸収が一次

速度式に従うことが明らかとなった。また、投与量を 0.3, 0.5, 1 mg と変化させ

て検討を行った結果、吸収率、血漿中濃度パターンなどに投与量依存性は認め

られず、受動拡散の寄与が大きいことが示唆された。

さらに、水溶性高分子 FD-4 および FD-10 を用いて盲腸漿膜表面からの薬物吸

収に及ぼす分子量の影響を検討したところ、一次吸収速度定数は分子量の増大

に伴って減少し、盲腸漿膜表面からの吸収に分子量依存性が認められた。

2 腸間膜からの薬物吸収

腸間膜からの薬物吸収の可能性を検討するために、盲腸漿膜表面投与時と同

様の実験系を確立し、検討を行った。腸間膜は血管系が発達しており、その吸

収性に差があると思われる、血管の存在しない部位および存在する部位それぞ

れについて検討を行った。

いずれの部位においても、拡散セルのみを装着した実験系においては、腸間

膜からの良好な吸収を示唆する結果が得られた。ところが、腸間膜を透過した

PR の腹腔内への拡散を防ぐために PE cap を貼ると、血漿中および胆汁中への

PR の出現は、血管の存在する部位では大きく減少し、血管の存在しない部位で

はほぼ完全に消失した。したがって、薬物吸収に対して、腸間膜自身は寄与し

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- 28 -

ておらず、腸間膜に存在する血管表面のみが寄与しており、その吸収有効面積

が小さいことから、腹腔内投与された薬物の吸収に及ぼす腸間膜の寄与は少な

いことが推察された。

3 腹腔内臓器間における薬物吸収性の比較

肝臓、腎臓、胃漿膜および盲腸漿膜表面からの薬物吸収性を比較し、腹腔内

投与された薬物の吸収に対する寄与について考察した。透過係数 Papp (単位面積

当たりの吸収クリアランス)を比較した結果、PR、FD-4 および FD-10 のいずれ

においても最も大きな値となったのは腎臓であった。他の 3 つの臓器、肝臓、

胃漿膜および盲腸漿膜表面における結果はほぼ同じ値を示した。一方、いずれ

のモデル薬物においても臓器表面全体の吸収クリアランス CLaが大きかったの

は、その表面積の大きさから、肝臓であった。

Papp の比較より、各臓器表面における単位面積当たりの吸収性は、腎臓で最も

高く、他の 3 つの臓器ではほぼ同じであることが示された。この結果は、今回

比較した各臓器表面に同じ面積だけ薬液が接した場合、その吸収性はほぼ同程

度であることを示唆している。したがって、腹腔内投与法により標的部位への

薬物送達を考える際には、適切な投与部位および投与容量の選択、さらには標

的部位への滞留性を向上させる製剤的工夫などが重要になると思われる。

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Ⅴ 謝 辞

終わりに臨み、本研究に際して終始御懇篤なる御指導、御鞭撻を賜りました

長崎大学薬学部 中村純三教授、西田孝洋助教授、川上茂助手、京都大学医学部

附属病院核医学科 向高弘助手、並びに長崎大学医学部附属病院薬剤部 佐々木

均助教授、中嶋幹郎助手に衷心より深甚なる謝意を表します。

本論文を作成するに当たり、御校閲並びに御助言いただきました、長崎大学

薬学部薬品分析化学研究室 黒田直敬教授に心から感謝の意を表します。

また、実験の一部にご協力いただきました堀本知美学士、津輪元理華氏、久

満暁子氏に心から感謝いたします。

さらに、種々の有益な御助言と御指導をいただきました嶺豊春学士、目良国

寛学士、藤原里恵学士をはじめとする長崎大学薬学部薬剤学研究室員一同に深

く感謝いたします。

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