中国の少子高齢化と人口政策について ·...

48
中国の少子高齢化と人口政策について 福岡女子大学 2016年7月15日

Upload: others

Post on 24-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

中国の少子高齢化と人口政策について

福岡女子大学尹 豪

2016年7月15日

Page 2: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

一、人口動向

二、少子高齢化の現状

三、人口と「計画生育」政策の推移

四、今後の展望と課題

Page 3: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

一、人口動向

建国初期から高い出生率を維持、

死亡率は著しく低下、急激な人口増加。

1970年代末の改革・開放以降

本格的な人口抑制政策、大きな効果。

出生率の持続的低下、

低出生・低成長段階、少子高齢化の急速な進展。

Page 4: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口転換:

多産多死から少産少死に至る一連の過程

Page 5: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口変動

年次 年末総人口 出生率 死亡率 自然増加率

1950 55,196 37.00 18.00 19.00

1955 61,465 32.60 12.28 20.32

1960 66,207 20.86 25.43 -4.57

1965 72,538 37.88 9.50 28.38

1970 82,992 33.43 7.60 25.83

1975 92,420 23.01 7.32 15.69

1980 98,705 18.21 6.34 11.87

1985 105,851 21.04 6.78 14.26

1990 114,333 21.06 6.67 14.39

1995 121,121 17.12 6.57 10.55

2000 126,743 14.03 6.45 7.58

2005 130,756 12.40 6.51 5.89

2010 134,091 11.90 7.11 4.79

2015 137,462 12.04 7.11 4.96

(万人、‰)

資料:中国国家統計局

Page 6: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

(万人) (‰)

Page 7: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

-10

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

110,000

120,000

130,000

140,000人口

増加率

人口規模と人口増加率(万人) (‰)

年次 人口規模

1950年 5.5億

1981年 10億

1988年 11億

1995年 12億

2005年 13億

Page 8: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口ピラミッド

Page 9: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

2015年の人口動向

総 人 口 13億7,462万人 都市人口 56.1%

出生人口 1,655万人 出生率 12.04‰

死亡人口 975万人 死亡率 7.11‰

増加人口 680万人 自然増加率 4.96‰

60歳以上人口 2億2,200万人 総人口に占める割合 16.1%

65歳以上人口 1億4,386万人 総人口に占める割合 10.5%

Page 10: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

二、少子高齢化の現状

少子化・出生率高齢化・倍加年数

中国人口高齢化の特徴

Page 11: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

少子化

出生率が人口の置換水準以下に下がっている状態。

出生率の低下は結局少子化過程。

(1992年度の「国民生活白書」で使われた語)

Page 12: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

出生率(fertility rate)

出生力の指標のうち、人口のある期間における出生の頻度を率として示すもの。

出生率はさまざまな指標ないし尺度の総称であり、分母となる観察集団のとらえ方により多くの種類がある。

粗出生率(普通出生率)、総出生率年齢別出生率、合計出生率(合計特殊出生率)コーホート出生率、累積出生率、完結出生率

Page 13: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

合計出生率(total fertility rate: TFR)

ある期間において測定された女性の年齢別出生率を再生産年齢(通常15~49歳)にわたって合計したもの。

当該の年齢別出生率にしたがって子どもを生んだ場合に、最終的に生む1人当たり平均の子ども数。

人口再生産指標の1つであり、代表的な出生力指標。合計特殊出生率とも。

Page 14: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口置換水準(replacement-level fertility)

子ども世代の人口が、親の世代の人口と同じ規模になるため(人口の置き換え)に必要な人口再生産の水準を指す。

指標として、純再生産率、総再生産率、合計出生率など。

専門的には、純再生産率が使われることが多い。

人口置換水準に対応する合計出生率は、先進国では約2.1弱。

Page 15: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

出生率の推移

年 次 TFR

1950年代 5.87

1960年代 5.68

1970年代 4.01

1980~88年 2.47

1982年 2.58

1990年 2.25

2000年 1.71

2010年 1.18資料:中国2‰出産力抽出調査(1982年)、中国1‰出産力抽出調査(1988年)。

1982年、1990年、2000年、2010年は人口センサス結果。

Page 16: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

出生率変動

年 次 TFR

1950~55 6.11

1955~60 5.48

1960~65 6.15

1965~70 6.30

1970~75 4.85

1975~80 3.01

1980~85 2.52

1985~90 2.75

1990~95 2.00

1995~00 1.48

2000~05 1.50

2005~10 1.53

2010~15 1.55

資料:World Population Prospects: The 2015 Revision, United Nations.

Page 17: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

6.11

5.48

6.15 6.30

4.85

3.01

2.52

2.75

2.00

1.48

1.50

1.53

1.55

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

5.00

5.50

6.00

6.50

Page 18: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口高齢化(population ageing)

人口の中で、高齢者人口の割合が高まっていくこと。

高齢者人口(老年人口)が総人口に占める割合を「高齢化率」。

Page 19: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

高齢化社会と高齢社会

「高齢化社会」(ageing society)人口の高齢化が進行しつつある社会のこと。

「高齢社会」(aged society)人口高齢化がある段階まで進んで、人口全休のなかで

高齢者が占める割合がある水準でほぼ安定している社会。

65歳以上人口の割合が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会。

20%を超えると超高齢社会、あるいは超高齢化社会とも。

Page 20: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

各人口センサス時における年齢構造

年 次 人 口年齢構造係数

0~14歳 15~64歳 65歳以上

第1回(1953年) 59,435 36.3 59.3 4.4

第2回(1964年) 69,458 40.7 55.7 3.6

第3回(1982年) 100,818 33.6 61.5 4.9

第4回(1990年) 113,368 27.7 66.7 5.6

第5回(2000年) 126,583 22.9 70.2 6.9

第6回(2010年) 133,972 16.6 74.5 8.9

(万人、%)

資料:各年次の人口センサス結果。

Page 21: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

総人口と高齢化率(65歳以上)の推移

58,260

69,458

100,818

113,368

126,583 133,972

4.41

3.56

4.91

5.57

6.96

8.87

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

10,000

30,000

50,000

70,000

90,000

110,000

130,000

150,000

1953年 1964年 1982年 1990年 2000年 2010年

(%)(万人)

総人口

高齢化率

Page 22: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

近年の人口高齢化状況

年次65歳以上

人口(万人) 割合(%)

2001 9,062 7.1

2005 10,055 7.7

2010 11,924 8.9

2011 12,288 9.1

2012 12,714 9.4

2013 13,161 9.7

2014 13,755 10.1

2015 14,386 10.5

資料:国家統計局。

Page 23: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

総人口

13億7,462万

1億4,386万(10.5%)

高齢者人口(2015年末)

総人口

13億7,462万

2億2,200万(16.1%)

60歳以上人口 65歳以上人口

Page 24: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

倍加年数

高齢化率が7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数。

フランスが115年、スウェーデンが85年、イギリスが46年、ドイツが40年、

日本は、1970年に7%、24年後の1994年に14%に達し、世界に例をみない速度で高齢化が進行。

中国では今後、日本を上回るスピードで高齢化が進行することが予想される(倍加年数23年)。

Page 25: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

7% 10% 14% 20% 25% 30% 7%→14% 10%→20%

韓国 1999 2008 2017 2026 2032 2039 18 18

シンガポール 1999 2013 2019 2026 2033 2041 20 13

中国 2002 2016 2025 2034 2042 2054 23 18

日本 1970 1985 1994 2005 2013 2024 24 20

ドイツ 1932 1952 1972 2008 2026 2034 40 56

イギリス 1929 1946 1975 2027 2053 - 46 81

ロシア 1967 1979 2017 2047 - - 50 68

イタリア 1927 1964 1988 2008 2023 2033 61 44

カナダ 1945 1984 2010 2024 2038 2095 65 40

アメリカ 1942 1972 2014 2028 2078 - 72 56

オーストラリア 1939 1984 2012 2034 2073 - 73 50

スウェーデン 1887 1948 1972 2016 2059 - 85 68

ノルウェー 1885 1954 1977 2030 2060 - 92 76

フランス 1864 1943 1979 2018 2035 2097 115 75

国65歳以上人口割合(到達年次) 倍加年数(年間)

資料:国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』(2016)

主要国の65歳以上人口割合別到達年次とその倍加年数

Page 26: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

中国の人口高齢化の特徴

1、人口高齢化のスピード

数十年にわたる人口抑制政策の実施により、出生率が急激に低下した結果、今後急速な人口高齢化の進展が避けられない。つまり、少子化のため今後人口高齢化が加速的に進むことが予想される。

2、「未富先老」、「四・二・一家庭」

社会が豊かになる前に急速な人口高齢化を迎えることになる。急速な人口高齢化と高齢者人口の急増に伴い、高齢者の年金、医療、介護に関わる社会保障制度の整備が急務となっている。とくに、家族構成の変化により、高齢者介護問題が家族にも社会にも大きな課題となる。

Page 27: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

少子化と高齢化の趨勢が鮮明になるにつれ、人口抑制政策の見直しへの関心が現れ始めた。

近年人口高齢化の急激な進展への懸念と出生性比の不均衡問題への関心から出産抑制政策の見直しと緩和を主張する動きが活発になり、出産政策の調整または見直しの必要性に迫られるようになった。

Page 28: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

三、 人口と「計画生育」政策の推移

建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。

高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提起され、人口抑制の必要性が唱えられた。

1970年代以来、人口抑制政策が実施され、持続的に効果を挙げている。

Page 29: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口と「計画生育」政策

内容出産抑制晩婚・晩育優生・少産

目的人口の数量を抑制し人口の資質を高める

「計画生育」出産の計画化と管理化

Page 30: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

時 期 内 容

1970年代初め “晩・稀・少”政策

1978年「1夫婦に子ども1人がいちばん望ましく、多くて2人まで」という「計画生育」方針

1980年 “1人っ子政策”を提唱

1982年 「計画生育」政策が基本国策に

1984年 出産政策の調整

2001年 「人口と計画生育法」制定

2013年 「単独両孩」政策

2016年 「全面両孩」政策

人口と「計画生育」政策の推移

Page 31: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

1970年代初め、晩婚、少産、出産間隔の拡大を内容とする人口抑制政策を導入(いわゆる“晩・稀・少”政策)

「晩」:晩婚の意味、男女の初婚年齢を遅らせること。

「稀」:2人の子どもの間の出産間隔を4年前後にすること。

「少」:「少産」、すなわち少なく生むこと。(2人以上の子どもは生まないこと)

Page 32: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

1980年9月“1人っ子政策”を提唱(一对夫妇只生育一个孩子)

(「30年後、現在の厳しい人口増加問題が緩和されると、異なる人口政策が可能になる」)

1984年出産政策の調整が行われる

(農村で女児を出産した場合、第2子の出産を認める)

Page 33: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

1980年代初め20世紀末まで12億を目標に

強力な人口と「計画生育」政策を実施

著しい人口増加抑制効果経済発展への寄与

出生率の持続的低下、急激な少子高齢化

少子高齢化、出生性比不均衡問題「計画生育」政策の見直し議論活発化

人口の数量抑制政策から人口の構造調整政策へと転換

Page 34: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

「単独両孩」政策(2013年11月)

2013年11月「計画生育の基本国策を堅持し、片方が1人っ子である夫婦の場合2子の出産ができる政策」が導入された。

つまり、夫婦の片方が1人っ子である場合、第2子の出産が認められる方針が確定され、各地で順次に実施されるようになった。

Page 35: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

1,604

1,635 1,640

1,687

1,655

1,500

1,520

1,540

1,560

1,580

1,600

1,620

1,640

1,660

1,680

1,700

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

近年の出生人口推移(万人)

資料: 国家統計局

Page 36: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

「全面両孩」政策

2015年末政策転換、新しい人口政策を確定

「全面両孩」政策:すべての夫婦に子供2人の出産を全面的に認める政策。

「人口と計画生育法」を修正2016年1月より全国で実施を開始

Page 37: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

これは、1組の夫婦が子供2人を持つ

ことが一般的に認められることを意味。

1980年代初めから実施されたいわゆる「一人っ子政策」の終了。

新しい人口政策のスタート。

Page 38: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

四、今後の展望と課題

政策の行方と人口動向

少子高齢化社会の諸課題

Page 39: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

人口問題は中国社会が直面している

全局的、長期的、戦略的問題

将来相当長い期間において人口が多いという基本事情に根本的な変化なし

人口の経済社会発展への圧力に根本的な変化なし人口と資源環境との緊張関係にも根本的な変化なし

「計画生育」の基本国策は今後も堅持すべし

Page 40: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

今後の見通し

今後毎年新生児250万人増加

2050年まで労働年齢人口が約3000万人増加

2030年前後人口規模がピーク(14.5億)に達す

2050年の総人口は13.8億に減少

Page 41: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

資料:World Population Prospects: The 2015 Revision, United Nations.

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

800,000

900,000

1,000,000

1,100,000

1,200,000

1,300,000

1,400,000

1,500,000

2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065

(千人)

将来人口と高齢化率

(%)

14.2億

12.4億

Page 42: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

高齢者人口(千人)

年 次 60歳以上人 口 80歳以上人 口

2015 209,239 22,360

2020 245,203 26,915

2025 293,907 31,522

2030 358,144 41,405

2035 409,791 59,972

2040 431,209 72,704

2045 450,076 92,270

2050 491,532 120,571

2055 506,754 140,167

2060 493,433 141,203

2065 476,486 145,701

資料:World Population Prospects: The 2015 Revision, United Nations.

Page 43: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

資料:World Population Prospects: The 2015 Revision, United Nations.

平 均 寿 命(年)

Page 44: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

1980年代初めより、20世紀末までに総人口規模を12億に抑えるという人口の数値目標を掲げて、強力な人口抑制政策を実施してきた。

その過程で、人口問題の性格は数量の問題から構造の問題へと変わりつつある。

出生率低下による少子化のため、これからも人口年齢構造は急激な変動を続け、高齢化が加速的に進むようになる。

Page 45: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

将来の人口規模と高齢化率

年次人口規模(億人)

高齢化率(%)

2020年 14.03 12.1

2030年 14.16 17.2

2040年 13.95 24.6

2050年 13.48 27.6

2060年 12.77 32.9

資料:World Population Prospects: The 2015 Revision, United Nations.

Page 46: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

総人口:2030年の14億1554万人をピークに減少に転じ、2060年には12億7600万人台に縮小し、現在より約1億人減ることになる。

今後超高齢社会と人口減少時代に向かう。

「人生80年時代」を迎えると同時に膨大な規模の高齢者人口を抱える「高齢人口大国」に。

Page 47: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

これからの少子高齢化社会に向け、年金、

医療、介護を含む高齢者のセーフティーネット

の構築が喫緊の課題。

急速な人口高齢化と人口減少は、経済社会

の持続的発展に大きな影響を及ぼす。

Page 48: 中国の少子高齢化と人口政策について · 建国以来の人口政策は紆余曲折を経ている。 高い出生率と急激な人口増加が続いた1950年代 に、人口問題への関心が高まり、人口抑制思想が提

今後の課題

1、年金、医療、介護を含む社会保障制度の整備

2、年金「双軌制」問題の解消

3、定年年齢延長および年金支給開始年齢の延長