降雨・降雪対策の取り組み及び従事者家族への配慮について - …...ut3-5 ut3-...

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1. はじめに 2. 工事概要 平成26年7月10日 平成28年11月30日 (875日間) 富山県黒部市宇奈月町 黒部奥山国有林小黒部地先 2100 1 大高建設株式会社 ○ 現場代理人 監理技術者 清水 栄一郎 古田 和也 降雨・降雪対策の取り組み及び従事者家族への配慮について 小黒部谷第2号砂防堰堤工事 数量 単位 工事場所 工事内容 95 3740 本工事は、黒部川水系支川小黒部谷の砂防事業にあたり、小黒部谷第2号砂防堰堤までの 河床進入路及び本堰堤の左岸側を3ヶ年に渡り構築する工事である。 施工場所は中部山岳国立公園内で険しい急峻な地形であり、工事期間中(6月~11月)は 宿泊を伴う作業となる。 このような条件の下、本工事にて取り組んだ「降雨・降雪対策の取り組み及び従事者家 族への配慮」について報告するものである。 385 1160 1 1 法面整形工 擁壁工 プラント修繕工 1 置換工 15 砂防土工 コンクリート堰堤工 道路土工 掘削(岩塊・玉石) 埋戻し工・残土処理工 コンクリート堰堤本体工(コンクリート) 掘削 路体盛土工 1400 間詰工 運搬工 仮設工 1 位置図 小黒部谷川 シラベ 黒部 680 710 740 760 760 770 810 90 0 7 00 88 0 小黒部谷川 810 750 860 黒部川 欅平橋 黒部渓谷鉄道 600 69 0 730 770 770 施工現場 現場事務所兼宿舎 欅平駅 小黒部トンネル 1号堰堤 小黒部谷川 上流側 下流側

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Page 1: 降雨・降雪対策の取り組み及び従事者家族への配慮について - …...UT3-5 UT3- 6 転流水路 B =4. 0mi 1/ L 転流水路 仮締切 H=4.0m L=120m B C 5 S P 5

1. はじめに

2. 工事概要平成26年7月10日 ~ 平成28年11月30日 (875日間)富山県黒部市宇奈月町 黒部奥山国有林小黒部地先

2100 ㎥1 式

 大高建設株式会社 ○ 現場代理人

監理技術者 清水 栄一郎古田 和也

降雨・降雪対策の取り組み及び従事者家族への配慮について

小黒部谷第2号砂防堰堤工事

工  種 種  別 数量 単位

工 期工 事 場 所工 事 内 容

㎥95 ㎥

3740 ㎥

 本工事は、黒部川水系支川小黒部谷の砂防事業にあたり、小黒部谷第2号砂防堰堤までの河床進入路及び本堰堤の左岸側を3ヶ年に渡り構築する工事である。 施工場所は中部山岳国立公園内で険しい急峻な地形であり、工事期間中(6月~11月)は宿泊を伴う作業となる。 このような条件の下、本工事にて取り組んだ「降雨・降雪対策の取り組み及び従事者家族への配慮」について報告するものである。

385 ㎥

1160 ㎥

1 式

1 式法面整形工

擁壁工プラント修繕工

1

置換工15

砂防土工

コンクリート堰堤工

道路土工

掘削(岩塊・玉石)埋戻し工・残土処理工

コンクリート堰堤本体工(コンクリート)

掘削路体盛土工

1400

間詰工

運搬工仮設工

1 式 位置図

小黒

部谷

シラ

ベ谷

黒部

680

710

740

760

760

770

810

900

700

880

小黒

部谷

810

750

860

黒部

川欅

平橋

黒部

渓谷

鉄道

600

690

7 30

770

770

施工現場

現場事務所兼宿舎

欅平駅

小黒部トンネル

1号堰堤

小黒部谷川

上流側下流側

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3. 取り組みについて

【問題点】

【実施】

【右側】

【左側】 宿舎・プラントを確認できる(写真①-2)設置カメラ

 小黒部谷は険しい急峻な地形であり、近年の異常気象、集中豪雨による大きな出水や土石流の発生が懸念された。 また、本体施工現場は、仮橋を通り河川を横断する必要がある。降雨による増水が予想される場合には、仮橋の通行を禁止するため、仮締切内及び施工現場を確認できない。そのため、復旧作業の段取りが遅れ、工程的にも影響が出る恐れがあった。

 ライブカメラ画像は、動画でパソコンやスマートフォンにより確認することができ、監視したい場所にカメラを向けることができる。監視カメラの稼働範囲は、360度回転し、上下方向は130度監視することができる。(写真①-3)

【施工現場降雨時の監視例】

○は監視カメラによる目印の石である。写真①-5のように全体が隠れる場合約150㎥/sの流量である。

写真①-3 パソコンでの確認状況

写真①-4 H28.9.28AM6:30 写真①-5 H28.9.29AM6:20

(1) 現場監視カメラ【ライブ映像】設置

写真①-4は降り始め写真①-5時点では、連続降雨量85㎜、時間雨量9㎜【AM5:00~AM6:00】

 施工現場~仮橋を確認できる(写真①-1)設置カメラ

写真①-1 設置箇所(現場) 写真①-2 設置箇所(プラント上部)

 本体施工現場へ行くことなくプラント、仮締切内、施工現場を確認する(①-1)及び、宿舎を確認する(写真①-2)目的で監視カメラ2台を設置した。

仮橋

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【実施結果】

【問題点】

図② 当初案平面図

図① 横断図

 ライブカメラを設置したことで、早朝や休日、悪天候時に現場へ行くことなく仮締切内外等の確認をすることができた。現場事務所や下山時にカメラ画像を見て、作業内容の変更や上山時及び復旧作業の段取りが可能となった。 さらに、カメラを動かすことはできないモニター監視のみのパスワードを、現場従事者の家族に事前に知らせておけば、家族が宿泊での現場作業でどんなことをしているのかも確認でき、現場従事者家族の安心にもつながった。 以前までは、現場従事者以外知ることができない環境だったが、カメラを取り付けることにより『見える現場』になった。会社からも家族からも見れるため、より一層安全意識が高まったと考えている。

図③ 変更平面図

(2) 仮締切・仮橋の工夫

 【問題点①】本体施工現場の仮締切において、当初は(図①)に示すように仮締切形状が素掘りの土砂法面となっていた。そのため、集中豪雨による出水があった場合には仮締切の崩壊が懸念された。 【問題点②】本体施工現場へは、仮橋(図③)を通る必要があり、同じく出水があった場合には仮橋の流失が懸念された。仮橋が流失すると鋼材の回収が困難であり、仮橋鋼材の調達にも時間がかかり工程が大幅に遅れる恐れがあった。 【問題点③】工事用道路おいて、当初案(図②)は工事用道路が河川に近いため、同じく出水があった場合には、工事用道路の流失、崩壊が懸念された。 本体施工現場は巨石が多く土砂が極端に少ない為、仮締切や、工事用道路が崩壊すると工程的に大きなロスとなる恐れがあった。

700

715

700

695

710

690

685

685

685

683

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687

688

693

688

698

689

715. 80

71 5.50

712 .40

680.75

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681.70

697.59

686.61

683.51

691.21

683.08

681.51

697.57

6

681.90

682.65

687.12

684.36

.69

688.30

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680.10

680.21

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683.83

684.97

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684.56

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691.22

693.57

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698.81

704.10

707.02

686.10

683.87

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694.64

685.61

687.47

688.44

697.56

692.26

691.43

698.77

695.80

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697.62

697.26

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698.25

703.08

708.01

716.32

706.20

699.76

701.51

699.53

695.66

699.51

696.95

698.

696.89

697.69

688.52

693.34

NO13+10.0

NO14

NO14+10

H.W.L

洪水時堆砂高

平常時堆砂高

副堰堤

T-2

UT3-5

UT3-6

転流水路 B=4.0m i=1/14 L=110m

転流水路

仮締切 H=4.0m L=120m

BC5

SP5

NO15

NO17

NO18

NO19

692.40

NO17+10

EC5

BC6

EC6

SP6

NO16

練 φ1.0~

A=12m2

練 φ1.0~1.5m

A=20m2

空 φ1.0~1.5m

A=106.05m2

L=9.0m

A=20.12m2

A=25.16m2①左側L=15.0m 増水時掘削し

増水時対策A=16.77m2②右側L=10.0m

700

715

700

695

695

690 690

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685

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7 15. 8 0

715 . 50

7 12 .4 0

698.00

694.79

697.59

695.80

686.61

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692.45

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684.97

685.84

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684.80

689.40

688.47

686.96

684.08

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688.35

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689.94

690.33

691.22

693.57

694.27

698.81

707.02

686.10

.87

689.28

692.40

694.64

685.61

687.47

688.44689.69

692.56

697.56

694.32

694.50

692.26

698.19

694.83

691.43

698.77

696.03

695.80

696.63

697.62

697.26

713.59

698.25

703.08

708.01

716.32

706.20

698.31

696.74

699.76

699.64

701.51

699.53

700.86

694.68

695.62

697.79

697.87

697.56

698.21

695.66

699.51

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699.25

702.96

701.12

696.95

697.26

698.60

696.89

693.73

697.69

688.52

693.34

EP

NO13+10.0

NO14

BC5

SP5

EC5

BC6

SP6

EC6

BC7

SP7

EC7

NO14+10

NO15

EC8 SP8

BC8

NO18

NO15+10

NO16

NO16+10

NO17

NO17+10

NO18+10

I=16.0

H.W.L

洪水時堆砂高

平常時堆砂高

UT3-5

UT3-6

=4.0m i=1/14 L=110m

流水路

仮締切 H=4.0m L=130m

tr1

dt

tr2

Gr

rd

Gr

tr2

dt

tr1

推定岩盤線

701.50 1/14

HWL

695.00

1:0.5

1/14 701.50

1:0.5

684.50

677.00

1:0.6

1:0.5

1:0.8

1:0.5

1:0.3

681.00

1:0.6

1:0.6

1:0.6

DL=680.000

1:0.5 1:

1.0

1:0.6

転流水路

0.50

3.50 1:

1.0

仮橋施工現場

水路幅が狭い箇所

仮締切

工事用道路(変更)工事用道路(当初)

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実施対策

【実施①】

【実施結果①】

【実施②】

 H27.10.1~H27.10.2の2日間で149㎜の降雨により上部の土砂部が一部流失。 復旧は仮締切天端まで巨石積を行い補強を行った。(写真②-2) 写真②-2 H27.10.1以後(復旧後)

写真②-5 バイパス水路設置完

 平成28年9月18日(日)~の3日間で240㎜の降雨があり、唯一の交通手段である黒部峡谷鉄道が運休となった。 写真②-3は下山時に(1)の現場監視カメラをスマートフォンにより確認した画像である。この時点で仮締切に異常の無いことが確認できた。

 平成27年10月1日からの出水により、仮締切上部の土砂部が一部流失した。早急な復旧が必要となったが、仮締切の弱点部分がわかり、より強固な仮締切を構築するため復旧時は天端まで巨石積を行い補強した。 復旧後も、集中豪雨が何度かあり、巨石積の一部流出があったが、仮締切本体の土砂が流れるような大きな損壊はなく作業工程の後戻りは無かった。

 通行止めの明示として置石を設置し進入禁止対策とした。

 土砂の流失による仮締切の崩壊対策として3段程度(直高約2.0m~3.0m程度)の巨石積(空)を構築した。(写真②-1) 特に仮水路の幅が狭くなるような箇所や水衝部については、大きめの巨石を利用し積み上げた。

 集中豪雨による出水対策として、仮橋を保護するために、仮橋右岸側にバイバス水路を掘削し流下断面ひろげた。

写真②-4 掘削完了

写真②-1 H27.10.1(以前)

写真②-3 H28.9.20 PM3:40

置 石

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【実施結果②】

【実施③】

【実施結果③】

(3) プラント冬期防護の強化

【問題点】

【実施】

【実施結果】

 平成27年(冬)からの養生は単管や角材によるサポートだけでなく合板による傾斜屋根を施工した。 ベルトコンベアなどサポートによる養生が困難な箇所を抽出し、取り外し冬季保管を実施した。(写真③-2)

 平成28年度の実施状況としては、バイバス水路の設置・復旧作業を4回行った。実際に設置したバイパス水路(写真②-5)に流れることは無かったが、豪雨による河川の増水時には、バイパス水路を設置することで、仮橋上部が流失する恐れと、管理者としての不安も少し軽減することができた。

写真③-2H28(冬)冬期防護完了

 損壊後、使用不能となった部材を新規で取り替え、冬期防護を改良した。

 平成26年~平成27年の降雪により、プラントのベルトコンベアや手摺等が損壊した。 (写真③-1) プラントが損壊すると、工事の工程に大きな影響が発生するため今後の冬期防護対策が問題となった。

 協議、打ち合せを行い、出水があった場合でも影響の少ない山側に工事用道路を設置することとした。(図③)(写真②-6)

 何度も豪雨により河川が増水したが、工事用道路を山側に設置した効果は大きく、流失や崩壊が無く、工程の後戻りは無かった。(写真②-7) また、川側工事用道路を設置した場合は、多くの盛土材を必要とするため、盛土材の確保が必要不可欠であった。しかし、現場には盛土に使用する土砂が極端に少なく、現場に到達まで多くの課題があったが、山側に工事用道路を設置したことにより盛土材の課題も解決し、工程的にも短縮された。

写真②-7 増水時写真②-6 工事用道路設

 平成27年(冬)の冬期防護時から実施した結果、平成28年(春)確認では、降雪による大きな損壊は無かった。平成28年(冬)施工時では、前年度より更に工夫を行いより強固で工程的にも負担の少ない構造とした。

写真③-1 H27(春)確認状況 骨材製造設備

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(4) 現場従事者家族の現場見学会開催

【問題点】

【実施】

【実施結果】

4. 取り組み結果

5. まとめ

 施工現場では掘削、運搬状況を見学して頂いた。(写真④-3)

 最後になりますが、3カ年通して、無事故・無災害で工事を進めてこれたのも、従事者が一丸となり取り組んだからである。感謝の気持ちを忘れず、これからもより安全・工程・品質の確保に努め現場管理を行って行きたいと考えている。

 本社にて当日の現場作業予定や見学の予定、見学に対しての注意事項を説明状況。(写真④-1)

写真④-1

写真④-2

 工事期間中現場従事者は、家族のもとを離れ現場宿舎での生活となる。このため、現場従事者家族には不安や負担を掛けている。少しでも不安を解消することができる方法がないかを考えた。

(写真④-3)

 従事者家族の理解と不安解消のため、現場、宿舎の見学会を開催することとした。見学会では、現場の施工状況、現場説明、宿舎での食事を実際に体験して頂いた。(平成27年10月10日実施)

多く雨が降り、降り始めも早く、降り終わりも遅くなっている。予想以上の降雨となるため早めの判断が重要だった。監視カメラを設置することにより、早朝、休日を含め現場へ行かなくても現場周辺の河川状況が確認でき、早めの判断に繋がった。仮締切、工事用道路、冬期対策についても大きな損壊は無く効果があったと考えている。 また、宿泊を伴う特殊な環境での工事であり、従事者、従事者家族の理解と支えがあって成り立つ現場だと再確認した。今後も引き続き、従事者家族も安心して家族を送りだせる現場作りをしていきたいと考えている。

 現場事務所に到着後、パソコンを使用して初年度からの現場説明、再度現場見学に伴う注意事項の説明を行った。 (写真④-2)

 従事者家族は、普段見る事の出来ない家族の仕事現場、宿舎内、食事を体験することができ、良い体験ができたと喜んでもらうことができた。今回実施した取り組みにより、従

事者家族にはご理解頂けたり、ご家族の不安が少し解消出来たのではないかと考えている。 

 本工事のような山奥での現場では、日頃確認している天気予報の予想される雨量よりも、