量子力学と量子情報処理 - osaka...
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最先端の電子情報工学技術平成26年5月20日
量子力学と量子情報処理
量子力学 情報・通信
量子情報処理
不確定性原理
波動関数
重ね合わせ状態
暗号通信
計算アルゴリズム
量子暗号通信、量子テレポーテーション
量子コンピュータ
量子力学的重ね合わせ
- シュレディンガーの猫 -
確定
または
?
●●●
●●●
●
問い: 箱の中の猫の状態は?
答1: 生きているか死んでいるかのどちらか。決まっているけど見えないだけ。
答2: 生きているかもしれないし、死んでいるかもしれない。
わからないのだからどちらもあり。
古典
量子
死んでいる生きている
●●● ●
量子力学では、どちらの状態もありと考える。=「重ね合わせ状態」
または
観測すると、どちらかに決定
但し、閉じ込めた直後と長時間
経過後だと様子も違うだろう。
重み付け係数 a, bで区別
(箱の中の猫)= a× + b×
(開封後の猫)= ●●● ●
(実は、井戸型ポテンシャル内の電子はこの重ね合わせ状態)
観測
重ね合わせ状態であるためには、
原理的にどちらかわからない事が必要
●●●
タイマー付毒ガス
(時間がきたら必ず死ぬようにセット)
封印状態でも原理的に生死はわかる
重ね合わせ状態ではない
●●●
●
タイマー動作時刻前は
タイマー動作時刻後は
補足
ところで
全てのものはそれ以上分割できない最小単位から成り立っている
減衰板超高感度光検出
時間
検出信号
検出信号は不連続
電子
光子
例1)1光子の分岐
半透鏡
例2)1光子の分岐・合波
減衰
減衰
半透鏡
全反射 全反射
A
B
最小単位(光子)の重ね合わせ状態
出射光子=a×(透過光子)+b×(反射光子)
出射光子=a×(光子@{A, 前})
+b×(光子@{B, 前})
+c×(光子@{A, 後})
+d×(光子@{B, 後})
例3)1光子の分岐・合波その2
A
B
屈折率板
例2と出射状態は違うはず。そこで、係数を複素数とする。
重ね合わせの係数は複素数
出射状態=a×(光子@{A, 前})
+b×(光子@{B, 前})
+ceiq×(光子@{A, 後})
+deiq×(光子@{B, 後})
屈折率板による位相シフト
そして、各状態の確率を複素係数の絶対値二乗とする。
(光子@{A, 前})の確率=|a|2
(光子@{B, 前})の確率=|b|2
(光子@{A, 後})の確率=|ceiq|2 = |c|2
(光子@{B, 後})の確率=|deiq|2 = |d|2
重ね合わせ状態は干渉する
例4)1光子の分岐・合波その3
A
B
L1
L2
Aへの出射状態 = c1×(L1を経た光子) + c2×(L2を経た光子)
= (c1 + c2)×(光子@A)
A@の確率 = |(c1 + c2)|2 = |c1|
2 + |c2|2 + 2|c1||c2|cos(q1 – q2)
1|| 11qi
ecc
2|| 22qi
ecc 干渉項
減衰 B
A
Aを経た光子状態とBを経た光子
状態の重ね合わせ係数が干渉
q1 – q2検出確率
at A
at B
|c1| = |c2| の場合
干渉が起こるためには、どちらを経たか不明なことが必要
B
A
スリット透過状態=a×(A透過) + b×(B透過)
スリット透過状態=(A透過)または (B透過)
観測
B
A
量子力学的重ね合わせを安全な暗号鍵配布システムに利用しよう
量子力学的重ね合わせを超並列計算に利用しよう
量子暗号通信(量子鍵配送)
量子コンピュータ
量子情報処理への展開
量子暗号通信
暗号化
アリス ボブ
復号化
公開鍵暗号方式
暗号化鍵(公開)
復号化鍵(非公開)
アリス ボブ
公開鍵
367× 521 = ? :簡単(答は191207 )
? × ? = 191207 :難しい
原理的には解読可能
現在の暗号通信
秘密鍵暗号方式
秘密鍵(ランダムなビット列)
アリス ボブ
量子力学的に秘匿性が保証された秘密鍵を離れた2者に供給目的
売り文句 安全性は量子力学的に保証
量子暗号(量子鍵配送)
量子暗号システム
秘密鍵(ランダムなビット列)
(安全な秘密鍵を供給)
量子力学的重ね合わせを利用した暗号通信システム
量子暗号(量子鍵配送)
正常時
盗聴されると
?!
正しく受信
観測により、重ね合わせ→確定
光子(重ね合わせ状態)
量子状態の変化から盗聴検知
1光子の量子干渉現象を利用して鍵情報を伝送
量子鍵配送のシステム構成例
検出器A
検出器B
アリス
ボブ
時間軸上の重ね合わせ状態を送受信
パルス光源
位相変調
長経路
短経路
干渉の結果に応じて、検出器AまたはBで光子検出
量子コンピュータ
-量子力学的重ね合わせを利用した超並列計算-
●●●
●
◆量子力学的重ね合わせにより複数の数を同時に表現
◆量子干渉を利用して超並列処理
a×(横偏波) + b×(縦偏波)
光子の偏波状態 電子のスピン状態
原子のエネルギー状態
E2
E1
超伝導電流の向き
量子ビット
-量子計算の基本単位 -
a×(上向スピン) + b×(下向きスピン)
a×(上準位) + b×(下準位) a×(右廻り) + b×(左廻り)
量子ビット2個では
量子ビット n 個では
2n個の値を同時に表現
重ね合わせにより複数の数を同時に表現
a b
「1」
a b a b a b a b
「2」 「3」 「4」
各量子ビットは↑と↓の重ね合わせ状態、よって全体の状態は、
a ba b
| > = c1| > + c2| > + c3| > + c4| >a b a ba b
= c1「1」 + c2「2」 + c3「3」 + c4「4」 4値を同時に表現
古典ビットでは4値のうちのひとつ
f(x)=cを満たすxを見つけたい。
|f> = |x1> + |x2> + |x3> + ・・・ + |xn>
U|f> = U|x1> + U|x2> + U|x3> + ・・・ + U|xn>
|fout> = 0|x’1> + 0|x’2> + 1|x’3> + ・・・ + 0|x’n>
(古典) (量子)
重ね合わせを利用して並列計算
367 × 521 = 191207
191207 = X ×Y
例えば素因数分解
・・・x1
f(x1)
a
x2
f(x2)
b
x3
f(x3)
c
xn
f(xn)
z
・・・
・・・
|1 mod N 〉
|m1 mod N 〉
|m2×1 mod N 〉
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
|mq -1 mod N 〉
周期r
並列処理のイメージ
うまい状態を準備
重ね合わせの干渉現象を利用して一括処理
量子コンピュータの課題
◆有効性が分かっているのは、素因数分解(Shore’s algorithm)とデータ検索
(Grover’s algorithm)だけ。(基本的にはアナログ処理。汎用計算には不向き。)
◆qubitの実現
古典計算より優位になるのはqubit数>100、現状は7が最高(MNR)。
◆デコヒーレンスの克服
2準位系
E
excited
ground
・縦緩和により、上準位→下準位
・外部からの擾乱により位相が乱される(横緩和)
緩和時間>計算時間
(液体ヘリウム使用が常識)
最近の量子コンピュータ研究-量子イジングマシン-
最適化問題:多数のサイトをいかに効率良く組み合わせる(ネットワーク化)するか
例)巡回セールスマン問題 -多数の顧客を効率良く廻りたいー
数学的モデルは、
ij
jiijJH i:各サイトの状態(1 or -1)
Jij:サイト間の結合係数
H:目的関数Hが最小となるiを探索
最適解を得るには全ての組み合わせについてコストを計算する必要。(NP問題)
一方、多体スピン系
ij
jiijJH i:各スピンの状態(↑ or ↓)
Jij:スピン間相互作用
H:相互作用エネルギー
スピン系の状態は、エネルギー最小値に落ち着く。
物理系の最小エネルギー状態 ⇔ 最適解
量子力学と量子情報処理
量子力学 情報・通信
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