食品放射能汚染対策...

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食品放射能汚染対策 いま必要なことは? 3.生活クラブ生協の放射能汚染対策 201263生活クラブ連合会 品質管理部 槌田博

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食品放射能汚染対策 いま必要なことは? 3.生活クラブ生協の放射能汚染対策

2012年6月3日 生活クラブ連合会 品質管理部 槌田博

歴史 1986~1988 チェルノブイリ原発事故直後 1986年4月26日

旧ソ連のチェルノブイリ原発事故 輸入食品を中心に広範な食品汚染 1986年11月 国は輸入食品に暫定限度

セシウム合計370Bq/kg 生活クラブはその1/10を自主基準と決める

自主基準 セシウム合計37Bq/kg 生活クラブ消費材では、 輸入パスタ類と三重県産お茶が自主基準超

2

3

旧ソ連原子力発電所事故に係わる . 輸入食品の放射能暫定限度 .

厚生省 昭和62年(1987年)10月31日衛検第257号 平成3年8月30日衛検第234号

放射性セシウム ・Cs-134とCs-137の合計

食品全般 370Bq/kg

放射性ヨウ素 ・代表核種 I-131

牛乳 220Bq/kg

野菜 7400Bq/kg

放射性セシウム ・Cs-134とCs-137の合計

全食品 370Bq/kg

チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日発生)の直後の1986年10月31日には、 放射性ヨウ素も含めて、EC基準などを参考に以下のような勧告値を定めている。

出典:滝澤行雄「放射性物質と食品の安全について」 2011年3月23日食品衛生委員会第372回資料13

4

チェルノブイリ原発事故当時の 各国の放射能暫定限度

出典:ATOMICA「輸入食品中の放射能の濃度限度」09-01-04-07 図1

(事故翌々年以降)

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チェルノブイリ原発事故 後の ベラルーシ(白ロシア)共和国の基準値の変遷

食品 1986年 1993年 1996年 1999年

飲用水 370 18.5 18.5 10

牛乳 370 111 111 100

バター 7400 - 185 100

牛肉 3700 600 600 500

子羊 3700 - 600 500

豚肉・鶏肉 3700 370 370 180

芋類 3700 370 100 80

果物 - - 100 40

野生の液果類 - 185 185 185

生鮮キノコ類 - - 370 370

乾燥キノコ類 - 3700 3700 2500

ベビーフード - - - 37

Cs-137汚染限度 (Bq/kg、Bq/L)

出典:ICRP(Publ.111)「原子力事故又は放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」(2008.10) 日本アイソトープ協会仮訳版。

歴史 1988~2011 放射能汚染食品測定室で市民による放射能測定

国や地方自治体の放射能検査では、 暫定限度(370Bq/kg)を超えた結果だけを公表

暫定限度未満の結果公表を求める運動 → 市民による放射能測定の必要性

市民のカンパで放射能汚染食品測定室を開設 請願で小金井・藤沢・柏などに市民測定室を開設

暫定限度未満の検査結果の自主公表がつづく ・輸入品では、きのこ類、ハーブ類、肉類、 粉ミルク、脱脂粉乳など ・国産品でも干し椎茸は、直近まで5Bq/kg前後 ・飼料添加物リン酸カルシウムに含まれる天然ウランなど 6

旧ソビエト連邦チェルノブイリ原子力発電所事故に係る輸入食品中 の放射能濃度の暫定限度を超えた輸入食品一覧(事故翌年) 【出典】厚生労働省医薬局食品保健部http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1108-2.html 2001/11/08

発表回 発表日 食品 生産国 輸入重量 輸入港 放射能濃度(Bq/kg) (134Cs+137Cs)

第1回 1987.1.9 ヘーゼルナッツ トルコ 30t 神戸/横浜 520/980

第2回 1987.2.6 月桂樹葉 トルコ 52t 神戸/横浜 490/720

セージ葉 トルコ 14.5t 横浜 1,000/2,000

牛胃 フィンランド 1.26t 神戸 440

第3回 1987.2.13 トナカイ スウェーデン 0.2t 成田空港 389

第4回 1987.3.27 タイム フランス 4.02kg 東京 1,715

セージ葉 トルコ 4t 神戸 1,198

第5回 1987.5.8 月桂樹葉 トルコ 28t 神戸/横浜 496/551

セージ葉 ギリシャ 3.77t 横浜 1,758

ヒースの花 フランス 8.5kg 大阪空港 1,425

第6回 1987.5.28 アーモンド イタリア 37.5kg 東京 408

ハーブ茶(カモミール) スペイン 32.4kg 東京 8,780

第7回 1987.6.12 ハーブ茶(ローズヒップ、リンデン) ユーゴスラビア 18kg 大阪 673/955

セージ葉 ユーゴスラビア 99.8kg 成田空港 497

黒すぐりピューレ フランス 1.5t 神戸 425

セージ葉 アルバニア 9.21t 横浜 1,895

第8回 1987.7.24 ヘーゼルナッツ調整品 イタリア 110kg 成田空港 390

ヘーゼルナッツペースト トルコ 5kg 大阪空港 379

第9回 1987.8.20 ドライハーブ フランス 6kg 成田空港 1,072

第10回 1987.9.11 月桂樹葉 トルコ 3.02t 横浜 1,042

第11回 1987.10.21 ビーフ・エキストラクト ブラジル・アイルランド・フランス 2.6t 横浜 622

第12回 1987.10.28 アイスクリームペースト イタリア 576kg 東京 417

ドライハーブ ユーゴスラビア 19.5kg 成田空港 536

第13回 1987.12.22 ヘーゼルナッツペースト トルコ 72kg 神戸 411

セージ葉 アルバニア 4t 神戸 417

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旧ソビエト連邦チェルノブイリ原子力発電所事故に係る輸入食品中 の放射能濃度の暫定限度を超えた輸入食品一覧(事故翌々年以降) 【出典】厚生労働省医薬局食品保健部http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1108-2.html 2001/11/08

発表回 発表日 食品 生産国 輸入重量 輸入港 放射能濃度(Bq/kg) (134Cs+137Cs)

第14回 1988.1.20 きのこ(カノシタ) フランス 17kg 成田空港 636

第15回 1988.2.15 ドライハーブ(西洋オトギリソウ) ユーゴスラビア 98kg 神戸 385

ハーブ茶(ローズヒップ) ルーマニア 2.52t 大阪 467

きのこ(くろらっぱたけ) フランス 9kg 小樽 755

第16回 1988.6.2 ドライハーブ(ジュニパーベリー) ユーゴスラビア 10kg 大阪 423

ドライハーブ(スイカズラ) フランス 5kg 大阪 776

第17回 1988.6.14 セージ葉 フランス 4kg 大阪空港 411

第18回 1988.7.4 ビーフ・エキストラクト アイルランド 216kg 大阪 379

第19回 1988.9.5 セージ葉 ギリシャ 28kg 横浜 397

第20回 1988.9.25 きのこ(あんずたけ) フランス 34kg 成田空港 707

きのこ(あんずたけ) フランス 5kg 成田空港 446

第21回 1988.10.5 ハーブ(エストラゴン) フランス 60kg 東京 432

きのこ(かのした) フランス 3kg 成田空港 562

きのこ(かのした) フランス 3kg 成田空港 458

第22回 1988.12.2 ハーブ茶(ダンデリオン) スイス 51kg 大阪空港 579

第23回 1988.12.28 月桂樹葉 スペイン 10kg 横浜 1,325

第24回 1989.1.11 きのこ(くろらっぱたけ) フランス 10kg 大阪空港 650

第25回 1989.1.23 乾燥ぜんまい ソビエト 180kg 新潟 655

第26回 1989.4.10 乾燥ぜんまい ソビエト 158kg 横浜 379

第27回 1989.10.23 きのこ(あんずたけ) フランス 3kg 成田空港 532

第28回 1990.2.28 ハーブ茶(ダンデリオン) スイス 2kg 成田空港 1,167

第29回 1990.10.3 ハーブ茶(セイヨウノコギリ草) アルバニア 9kg 成田空港 814

第30回 1991.2.14 乾燥きのこ(ヤマドリタケ) ユーゴスラビア 25kg 成田空港 556

第31回 1991.3.13 ミックススパイス フランス 8kg 神戸 1,028

第32回 1994.11.8 燻製トナカイ肉 フィンランド 42kg 関西空港 388

第33回 1998.1.21 乾燥ポルチーニ(ヤマドリダケ) イタリア 21kg 成田空港 731

第34回 2001.11.8 乾燥ポルチーニ(ヤマドリダケ) イタリア 36.1kg 成田空港 418 8

放射能汚染食品測定室 http://www.housyanou.org/

チェルノブイリ原発事故の2年後に、市民や消費者団体のカンパによって設立された、市民のための食品放射能汚染を自主測定する測定機関。代表藤田祐幸(元慶応大学物理学教室) 所在地:東京都千代田区 たんぽぽ舎内 生活クラブ、大地を守る会、パルシステム、グリーンコープ

連合が参画して、検査依頼を継続し、運営を支えてきた。 NaIシンチレーションカウンタ 1台所有

他に、たんぽぽ舎が所有する2台にも検査委託 福島原発事故以前は、1検体20時間測定。

福島原発事故以後は、 1検体2時間測定、夜間10時間測定。 検出下限は、セシウム合計約5ベクレル(2時間) 9

10

「安全・健康・環境」生活クラブ原則 生活クラブ自主管理監査制度(1997/6~) https://seikatsuclub.coop/safe/system.html

① 消費材の安全性の追求 ② 食の自給力を高める ③ 有害物質の削減 ④ 自然資源の持続可能な使用 ⑤ ごみの削減とリユース

⑥ エネルギーの削減 ⑦ リスクの低減 ⑧ 情報の開示 ⑨ 自主管理と監査 ⑩ おおぜいの参加

運動 ①~⑦ 信頼 ⑧~⑩

品質

自主基準書P.1 10

「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を 阻止する全国ネットワーク(略称:阻止ネット) http://www.soshinet.org/

2007年7月設立 呼びかけ団体

生活協同組合あいコープみやぎ 生活協同組合連合会グリーンコープ連合 生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 大地を守る会 特定非営利活動法人 日本消費者連盟 パルシステム生活協同組合連合会

賛同団体・個人 648団体・個人 食品を扱う生協などの消費者団体が、食品の生産者とともに手をむすび、

放射能汚染をおこさないようにするために、「六ヶ所再処理工場」に反対する運動をしてきた。

2011年3月の福島第一原発事故による国土の広範な汚染に際し、 放射能汚染をおこさないようにするために、脱原発の活動にも取り組んでいる。

11

原発のない社会をめざして 生活クラブの脱原発のとりくみ http://seikatsuclub.coop/eco/nonukes.html

2010年 第5次連合事業中期計画 「原子力発電に依存しない、脱原発社会、持続可能なエネルギー社会に向けた取組みを進めます」と、初めて脱原発を明確に方針化。

2011年6月 総会 特別決議(1)「脱原発社会をめざしましょう」

生活クラブ風車「夢風」(秋田県にかほ市) 東京都「原発」都民投票条例 署名活動・本請求 各種の政策提言 さまざまな学習会・講演会・上映会など

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福島第一原発事故 2011年3月

東日本大震災が3月11日14: 46に発生し、その後この地震による津波が福島第一原発を襲った。その間に、原発の冷却システムが破壊され、レベル7の原発

事故が発生した。

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2011年3月11日~福島第一原発 放射能の放出事故

2011年3月11日14時46分 地震(東日本大震災) 緊急停止(スクラム)、外部部電源の喪失、非常用ディーゼル発電機起動 同日15時37分 津波で、全交流電源喪失、炉心への注水が停止

福島第一 1号機 2号機 3号機 4号機

炉心溶融 11日17時頃~ 14日18時頃~ 13日08時頃~ 炉心燃料なし

排気開始 12日14:30 13日11時頃 14日05:20

爆発 12日15:36 水素爆発

15日06時頃 下部で爆発音

14日11:01 水素爆発

15日06時頃 同日09:38火災

核燃料の状態 溶融した燃料の相当量は圧力容器の底に堆積、 一部が格納容器の底に落下して堆積している可能性

注入水の漏洩 (5/31までの)

注入量13700t 蒸発量 5100t 漏洩量 8600t

注入量21000t 蒸発量 7900t 漏洩量13100t

注入量20700t 蒸発量 8300t 漏洩量12400t

出典:原子力災害対策本部「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福島原子力発電所事故について-」平成23年6月 注)この中身についての市民サイドからの検証は終わっていません。ここに記載されている事項は、「大本営発表によれば、」という範囲。

文部科学省などによる航空機モニタリング セシウム蓄積量 空間線量率(1m)

15

16

日本国の暫定規制値 . 厚生労働省 平成23年3月17日食安発0317第3号 平成23年4月05日食安発0405第1号

放射性ヨウ素 ・代表核種 I-131

飲料水 牛乳・乳製品

300Bq/kg 乳児100Bq/kg

野菜類(根菜、芋類を除く) 魚介類(4月5日以降)

2000Bq/kg

放射性セシウム ・Cs-134と Cs-137の合計

飲料水、牛乳・乳製品 200Bq/kg

野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他 500Bq/kg

ウラン 乳幼児用食品、飲料水、牛乳・乳製品 20Bq/kg

野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他 100Bq/kg

プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種

乳幼児用食品、飲料水、牛乳・乳製品 1Bq/kg

野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他 10Bq/kg

福島原発事故を受けて、「原子力施設等の防災対策について」(昭和55年6月原子力安全委員会)中の 「飲食物摂取制限に関する指標」平成10年11月(改訂)を食品衛生法の暫定規制値にした。

放射能汚染食品測定室 2011年3月の結果(一部)

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日付 サンプル名 都道府県 備考 ヨウ素131 セシウム

134 セシウム

137 セシウム 合計

収穫日 3/18 かぶれ菜 福島県 露地 福島県出荷制限 5800 5100 6700 12000

採雨日 3/22 雨水 千葉県 3800 160 420 580

集乳日 3/23 原乳 千葉県 30 不検出 不検出 不検出

採水日 3/23 水道水 東京都 10 不検出 不検出 不検出

採水日 3/23 水道水 東京都 煮沸5分後 10 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/24 原乳 千葉県 19 不検出 不検出 不検出

輸入日 3/24 養鶏 飼料 群馬県 70 不検出 3 3

集乳日 3/25 原乳 千葉県 24 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/25 原乳 栃木県 20 不検出 不検出 不検出

3/25 水道水 千葉県 2 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/26 原乳 栃木県 14 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/27 原乳 千葉県 12 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/27 原乳 栃木県 14 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/28 原乳 千葉県 8 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/28 原乳 栃木県 11 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/29 原乳 千葉県 8 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/30 原乳 千葉県 7 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/30 原乳 栃木県 8 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/31 原乳 千葉県 5 不検出 不検出 不検出

集乳日 3/31 原乳 栃木県 7 不検出 不検出 不検出

屠畜日 3/31 豚もも肉 栃木県 不検出 不検出 不検出 不検出

出典:放射能汚染食品測定室ホームページ http://www.housyanou.org/home/result

生活クラブの基本方針 2011/3

生活クラブ連合会は、今回の福島第一原発事故に関する対応として、…この間定めてきた自主基準の運用を停止し、「国の暫定基準」に基づく運用方針を採用します。ただし、国の暫定基準値以下であるからよいとする態度ではなく、刻々と変化する事態と情報が錯綜する中にあって、その都度リスク回避のための努力に留意します。そのためにも、私たちができうる範囲での自主検査と、その情報公開の徹底を今回の事態をふまえた運用方針の基本とします。

2011年6月の連合総会で決定した対応方針①

1) 今回の福島第一原子力発電所の事故は、現在もなお 「非常事態宣言」の状態にあります。環境・人体・作物への汚染は続いており、最終的な汚染の範囲と程度を見極めることができない事態のなかに私たちは置かれています が、「安全・健康・環境」生活クラブ原則を追求する取り組みを続けます。この状況下の食品放射能汚染に対して、 従来の平時における自主基準値(セシウム37Bq/kg)にもとづく運用は物理的に不可能であると判断し、やむなく停止せざるを得ません。

2)当面は、原発事故に対応した国の暫定規制値にもとづき、供給を継続します。しかし、これを無批判に運用するのではなく、「放射能汚染が人の健康に与える影響に閾値はなく、より影響を受けやすい子どもや妊婦をはじめとして、できるだけ避けるのが望ましい」という考え方にもとづき、以下の諸対策に全力で取り組みます。

3) 委託による消費材の放射能自主検査を継続しながら、 更に検査対象を拡充するために、2つのデリバリーセンター(消費材全般の飯能DC、青果物の戸田DC)に新たな食品放射能測定装置を自前で配備し、9月からほぼ全品目を対象とする物流品放射能検査を開始します。また、提携生産者にも、共に放射能汚染に立ち向かうために、消費材の原材料や製品の自主放射能検査を引き続き求めていきます。

4) 消費材の放射能検査結果は、組合員ニュースや連合会ホームページに掲載して、組合員に報告し、すべて情報公開します。

2011年6月の総会で決定した対応方針②

2011年6月の総会で決定した対応方針③

5) 自主検査の結果により供給を止めた場合の提携生産者の損失は、まず東京電力と国に対して補償を求めます。 仮にそれが受けられない場合であっても、その損失は組合員カンパなどの資金を充てて生活クラブが保障します。 *暫定基準値以下の対応が課題

6) 生活クラブ連合会自主管理委員会で、放射能汚染状況の全貌を把握し続けながら、放射能に対する共同購入のあり方も含めて検討し、おおぜいの組合員による学習会と討議を重ね深めながら、提携生産者とともに、新たな放射能自主基準を創造していきます。

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消費材の放射能検査(2011年9月~) 【消費材検査】(生活クラブが供給時に実施)

飯能DCと戸田DC(青果物)に食品放射能測定装置をそれぞれ導入します。 原発事故による汚染状況の捕捉ができるまでの期間(当初数ヵ月を計画します)は、入荷するほぼ全品目について簡易放射能検査を実施します。

【提携生産者による自主検査】(生活クラブ自主管理監査制度の基準検査に位置づけ)

提携生産者に、その原材料や製品を自主検査するように協力を求めます。

その結果、製品への放射能残留を極力抑制します。

組合員が消費材を注文する時点で、その放射能汚染の程度についての情報を得られるようにします。

生活クラブの自主検査の例

生活クラブ 自主管理制度 基準検査 の優先順位表

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<基準検査項目別の対象一覧表> 自主基準書2011のP.145の⑨放射能検査に■印を追加

検査項目

検査対 大分類

象 中分類 小分類

農産物 青果物 野菜類 ● ● 果物類 ● ○ ● 菌茸類 ● ● ● 穀物類 玄米 ● ◎ ◎ ● ● 麦類 ● ◎ ◎ ● ● 豆類 ● ◎ ◎ ● 大豆 ● ◎ ◎ ● ● トウモロコシ ● ● ● 雑穀類 ● ◎ ◎ ● ● なたね なたね油 ● ● R ● 茶葉 緑茶・紅茶等 ● ● 土壌 ○ ○ ○ △ ○ A △ 水産物 魚類 天然魚 ◎ ◎ ◎ ○ ● △ ● ○ 養殖魚 ● ● ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ● ◎ ○ 養殖飼料 ◎ ● ● ○ ○ ○ ○ ◎ △ ● ● ● ● 貝類・イカ・タコ ◎ ● ◎ ○ ● △ ● ○ 海藻類 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ △ ● 畜産物 牛乳(原乳)・加工乳・脱脂粉乳 ◎ ◎ ○ △ ○ △ ○ ● ● ○ ○ ● 食肉 牛・豚・鶏 ◎ ◎ ○ ○ ● ● ○ ○ 鶏卵 ◎ ◎ ○ ○ ● ● ○ はちみつ ◎ ● ● ● 畜産飼料 ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○ ● ◎ ● ● 加工食品 農産加工品 製品 A ◎ ■ ● ● 原料農産物 原料産地が継続的に特定な場合、農産物の検査項目を参照 水産加工品 製品 A A ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ● ■ ● ● 原料水産物 原料産地が継続的に特定な場合、水産物の検査項目を参照 畜産加工品 製品 A A ◎ ◎ ○ ● ■ ● ● 原料畜産物 原料産地が継続的に特定な場合、畜産物の検査項目を参照 冷凍食品 各加工品の検査項目を参照 ○ ● 飲料 ◎ ◎ ■ ○ ● 容器包装 直接食品に 触れるもの ○ ○ ● ● 実施優先順位:高 ●(■2011/7/28自主管理委員会で追加)>◎>○>△>無印 低 その他の記号:A 検査可能な場合に●印

R 原子力施設・核燃料施設・核廃棄物施設から10km以内での栽培の場合に◎印

自主基準書2011年版 p.145 7/28自主管理委員会で■印追加 ・8月に検査計画登録案内 ・9月末までに検査計画登録 ・10月末までに放射能検査 ・ひきつづき他の自主検査

放射能検査と供給判断 セシウムの場合:国の暫定制限値 500Bq/kg 2011/9~第1ステップ(5分間測定) 2011/11~徐々に第2ステップ(検出限界50Bq目標)

戸田DC・飯能DCでの放射能検査

5分簡易測定(検出限界100Bq/kg)

2時間測定(検出限界5Bq/kg)

供給停止の判断

組合員へ供給

・250Bq・kg未満

・250Bq/kg以上。 ・ピッキング棚から下げる。(一部欠品になる)

・500Bq・kg未満 ・組込再開

・500Bq/kg以上。 ・全部欠品になる。供給済みには電話対応。

・生産者への結果連絡 ・行政への届出 ・対応策の検討 ・安全な処分

700 600

放射能測定結果とHP表示 (2011年9月から2012年3月まで)

~100Bq/kg

100~200Bq/kg

200~300Bq/kg

300~400Bq/kg

400~500Bq/kg

500~ Bq/kg

検出限界100Bq/kg 検出限界10Bq/kg

測定値 (実数)

500

0

100

200

300

400

A

B

C

5分簡易測定 2時間測定

供給停止

例)381Bq/kg

供給再開の3条件

生活クラブの判断 再開する消費材が暫定規制値より低い。 (自主基準制定後は、自主基準に適合。)

生産者の判断 対応策を完了し、出荷する意思がある。

行政の判断 出荷制限等を解除している。

生活クラブ ホームページ http://www.seikatsuclub.coop/

27

28

29

生活クラブ 放射能検査結果Web検索 http://www2.seikatsuclub.coop/housha/

30

放射能検査結果Web検索 消費材から検索画面

32

食品と放射能問題検討共同テーブル http://seikatsuclub.coop/coop/press/20111121t.html

2011年11月 開始 参加団体

生活クラブ、大地を守る会、カタログハウス、パルシステム 目的

食品における放射能物質の規制はいかにあるべきか?「暫定基準見直し」を国にまかせず、「公的基準」の考え方と物差しづくりをすすめる

活動内容 ・ 放射能の食品基準に関わる情報収集・勉強会 ・ 放射能汚染情報・測定結果についての情報交換 ・ 公的基準に関する政策提言案の作成

33

生活クラブ自主基準制定までの道のり 2011/3 従来の37Bq/kgの自主基準の停止 2011/6 「原発事故への対応の基本方針」を総会で特別決議 2011/7 放射能基準検討専門委員会・準備会を設置 事故直後に想定した最悪の事態に鑑み、全品目検査に優位性 チェルノブイリ事故直後からの周辺各国の基準値の変遷を確認 食生活のバランスを崩さないことが、放射能に向き合ううえで重要 放射能の7割以上は海側に流れ、国土の汚染は当初想定より少ない 検査の結果として、一部の消費材を除き、高い濃度の汚染はない 厚生労働省が新基準として、4月内部被曝年間1mSvの方針発表 2011/12 放射能基準検討専門委員会を開始 自主基準を作る視点(根拠と目的)を討議 自主基準値の設定についての討議 検査体制と生産者補償についての討議 2012/4 自主基準の暫定運用開始 組合員討議、提携生産者との合意形成、補償の検討、暫定運用の点検 2012/8 自主基準の理事会決定の予定

34

生活クラブ自主基準値 と 国の新基準値 (2012年4月から)

35

生活クラブの自主基準値 国の新基準値

食品区分 基準値(Bq/kg)

食品区分 基準値(Bq/kg)

飲料水

10

飲料水 10

牛乳(原乳)・乳製品①

牛乳 50

乳児用食品

乳児用食品

一般食品 100

鶏卵・鶏肉・豚肉・牛肉 20

乳製品②・青果物・魚介類・ 加工食品

50

きのこ類 100

生活クラブの放射能検査件数

36

2012年4月 の検査数 単位:検体

種別 測定場所 戸田 飯能 測定室 その他 合計

検査テスト 27 4 0 0 31

消費材検査 903 722 12 0 1637

生産者原料 1 0 1 37 39

単協独自品 0 88 0 0 88

東北支援 0 6 0 0 6

合計 931 820 13 37 1801

2012年4月 末までの総検査数 (2011.3.11以後実施分) 単位:検体

種別 測定場所 戸田 飯能 測定室 その他 合計

検査テスト 58 9 0 0 67

消費材検査 10225 7079 873 10 18187

消費材調査 47 0 19 16 82

生産者原料 4 3 17 1041 1065

生産者製品 0 0 3 226 229

単協独自品 2 635 2 2 641

単協独自米 3 12 18 12 45

東北支援 0 27 0 0 27

合計 10339 7765 932 1307 20343

37

低線量被曝の影響 直線しきい値なしモデル(LNTモデル)

直線: 線量(Sv)を合計すると、影響の合計になる 個人の被曝=内部被曝+外部被曝+自然被曝

しきい値なし: どんなに少ない線量でも、足し合わせられる。

集団積算線量:発がんする人数が同じ。 100人が100mSv=1万人が1mSv どちらも、その中の1人ががんになる。

そして、その半分が死亡する。 参考文献:崎山比早子「放射線は身体にどのような影響を与えるか」2011.3.28

ICRP(Publ.99)放射線関連がんリスクの低線量への外挿

38

放射線被曝量とがん死の増加 1mSvあたり1万人に1人のガンが増え、その半分がそのガンで死亡する。

被曝量 その被曝による 別理由 による ガン死

ガンの 死者数

ガンの 死亡率 ガン

発病 ガン死 の増加

0mSv 0 0 3000 3000 30.0% 2mSv 2 1 3000 3001 30.0%

10mSv 10 5 3000 3005 30.1% 20mSv 20 10 3000 3010 30.1%

100mSv 100 50 3000 3050 30.5%

1万人が同じ量の被曝をしたときの人数(人)、

• 10mSvでも20mSvでも、ガンの死亡率は30.1%で変わらないように見える。 • 1万人の子どもが20mSv被曝したとき、そのガン死の増加は10人だが、 3010人のお母さんが「あのときの被曝で子どもが死んだ」と思うだろう。

39

概算暗算のすすめ(1) 外部被曝 空間線量の換算

空間線量の単位: μSv/h(1時間あたりマイクロシーベルト)

年間外部被曝量の単位: mSv/年(1年あたりのミリシーベルト)

1年=365日×24時間=8760時間≒1万時間 1mSv=1000μSv なので、 X μSv/h ≒10X mSv/年 0.2μSv/hのところで1年生活すると、2mSv/年 3μSv/hのところで1年生活すると、30mSv/年

40

概算暗算のすすめ(2) 内部被曝 放射能に汚染した食品

汚染濃度: Bq/kg(1kgあたりベクレル) 食べる量: kg ベクレルとシーベルトの概算換算式

50Bq ≒ 1μSv (50で割るとマイクロシーベルト) (ヨウ素とセシウムの経口摂取実効線量係数は、約2×10-8Sv/Bq。) 1年の食事回数=365日×3食≒1000食/年 1mSv=1000μSv 年間内部被曝量の単位:mSv/年(1年あたりのミリシーベルト) なので、 X Bqを食べる ≒ X/50 μSv X Bqを毎日3食食べる ≒ X/50 mSv/年 200Bq/kgの肉を100g(0.1kg)なら、

20Bq ≒0.4μSv ≒柏市に1時間居るのとおなじくらい 100Bq/kgのご飯を毎食茶碗1杯140g食べると、

14Bq×毎日3食≒0.28mSv/年≒ 0.3mSv/年

参考文献:中山幹夫(神田外語大学)「原発と放射線」

41 41 http://www.enecho.meti.go.jp/e-ene/handbook/06_cycle/6101_cycle_b.html

軽水炉の核燃料 と 使用済み核燃料

ウラン235 3%

ウラン238 (劣化ウラン) 97%

ウラン235 1%

死の灰 3%

プルトニウム 1%

ウラン238 (劣化ウラン) 95%

核分裂生成物(死の灰) 問題になる放射能 半減期が数日以上の核種 生成量が多い核種 …つまり、具体的には、

ヨウ素131 (8日) セシウム134 (2年) セシウム137 (30年) ストロンチウム90 (29年) トリチウム(H-3) (12年) クリプトン85 (10年)

42

NaI(Tl)シンチレーション検出器 測定サンプルから出るガンマ線 ヨウ化ナトリウムの結晶に当たる ヨウ化ナトリウム結晶が蛍光発光 光電子倍増管で増幅 検出器で検出 発光のエネルギーと発光数を測定 横軸にエネルギー、縦軸に発光数

のグラフにする。 ヨウ素131、セシウム134、セシウム

137から出るガンマ線のエネルギーに相当する位置の発光数を集計する。

測定サンプル内の放射能量を算出

外部からのガンマ線を遮る遮蔽体 43

ヨウ化 ナトリウム の結晶

測定サンプル V11容器(900ml)

鉛の遮蔽体

光電子 倍増管

検出器

食品放射能測定器 CJ-NAI NaIシンチレーションカウンタ

飯能DCに配備した NaIシンチレーション測定器

45

飯能DCに配備した NaIシンチレーション測定器

キャンベラジャパン社 食品放射能測定器 CJ-NaI 検出器:NaI(ヨウ化ナトリウム) シンチレーションカウンター 検出器サイズ:2inch 測定容器サイズ:V11容器(800ml) 検出限界:10分間測定 Cs-137 30Bq/kg 4月から40分間測定 セシウム合計37Bq/kg目標

46

戸田DCに配備した NaIシンチレーション測定器

47

戸田DCに配備した NaIシンチレーション測定器

キャンベラジャパン社 食品放射能測定器 特注品 検出器:NaI(ヨウ化ナトリウム) シンチレーションカウンター 検出器サイズ:3inch 測定容器:V11容器(800ml)、3Lマリネリ容器 検出限界: 4月から30分間測定 セシウム合計20Bq/kg目標

48

49

食品放射能の測定 (放射能汚染食品測定室)

ヨウ素131

拡大: セシウム134と137

カリウム40:天然成分

牛乳の測定結果 新生酪農(株)栃木工場 3月20日製造

検査結果 I-131:78Bq/kg Cs合計:12Bq/kg 測定時間: 72000秒=20時間

測定装置の本体

ガンマ線のエネルギー (keV)

ガンマ線のカウント数

不検出 検出

50

スクリーニング検査 5分間簡易測定での不検出と検出

測定時間と感度

5分間測定 10時間測定

51

• 5分間測定では、セシウム合計で約150Bq/kg程度を検出できる。 この例では、自動計算では不検出だが、人の目でみて痕跡検出を判定。

• 10時間測定では、セシウム合計で約10Bq/kg程度を検出できる。 同じサンプルで、セシウム134:27Bq/kg、セシウム137:36Bq/kg、合計63Bq/kg

第2ステップ サンプル重量と測定時間 と 目標感度

目標感度 目標150Bq/kg 目標100Bq/kg 目標75Bq/kg 目標50Bq/kg

設定値 1.00 1.50 2.00 3.00

サンプル重量[g]

1000 [g]以上 5 [分] 5 [分] 5 [分] 9 [分]

950 [g]以上 5 [分] 5 [分] 5 [分] 10 [分]

900 [g]以上 5 [分] 5 [分] 5 [分] 12 [分]

850 [g]以上 5 [分] 5 [分] 6 [分] 13 [分]

810 [g]以上 5 [分] 5 [分] 7 [分] 14 [分]

770 [g]以上 5 [分] 5 [分] 7 [分] 16 [分]

730 [g]以上 5 [分] 5 [分] 8 [分] 17 [分]

690 [g]以上 5 [分] 5 [分] 9 [分] 19 [分]

660 [g]以上 5 [分] 6 [分] 10 [分] 21 [分]

630 [g]以上 5 [分] 6 [分] 11 [分] 23 [分]

590 [g]以上 5 [分] 7 [分] 12 [分] 26 [分]

560 [g]以上 5 [分] 8 [分] 13 [分] 29 [分]

540 [g]以上 5 [分] 8 [分] 14 [分] 31 [分]

510 [g]以上 5 [分] 9 [分] 16 [分] 35 [分]

480 [g]以上 5 [分] 10 [分] 18 [分] 40 [分]

460 [g]以上 5 [分] 11 [分] 19 [分] 43 [分]

440 [g]以上 6 [分] 12 [分] 21 [分] 47 [分]

410 [g]以上 6 [分] 14 [分] 24 [分] 54 [分]

390 [g]以上 7 [分] 15 [分] 27 [分] 60 [分] 52

福島第一原発事故以後の 消費材の放射能測定方針の変遷

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2011年3月~第0ステップ 放射能汚染食品測定室へ委託 • 毎日3検体の検査枠。 • 原乳2検体、畜産物1検体。

2011年9月~第1ステップ 自前の測定器で全品目検査 • 毎週600検体の測定。 • 1検体5分のスクリーニング。 • 検出したら判定検査(2時間測定、10時間測定)を実施する。

2011年11月~徐々に第2ステップ 検出下限の向上 • 容器にいれることのできたサンプル重量により、測定時間を延長。 • 検出下限を50Bq/kg目標に設定。

2012年4月~第3ステップ 自主基準の暫定運用開始 • 測定時間を固定し、計画的に検査を実行。 • 自主基準に対応した検出下限目標

生活クラブのパスチャライズド牛乳 の放射能汚染濃度の推移

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生活クラブのパスチャライズド牛乳 の放射能汚染濃度の推移(2)

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生活クラブのパスチャライズド牛乳 の放射能汚染濃度の推移(3)

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放射線被曝に対する態度

国や御用学者の態度 100mSv程度までの

影響は判別できない。 したがって心配ない。

平時の規制値は1mSvであるが、

緊急事態に鑑み、 10~50mSvでよい。

今後1mSvを目指す。 安心して食べてください。

生活クラブの態度 どんなに微量でも、

それに比例して確率的に発ガン性、発達障害などの影響がある。

しかしながら、福島原発事故により、汚染のない食材だけを調達することができなくなった。

知って・わかって・食べる。

生活クラブのこれからの取り組み (加藤会長講演スライドより)

● 「購買力の結集」による「自給」「循環」問題への挑戦 ・重要な指標は「利用高」と「主要品目の利用人員率」 ・この数字に裏づけられた運動と社会的な提案 ・「南」の人びととの連帯(「自給」で内向きにならない)

● “大ぜいの私”による「FEC自給圏」(内橋克人氏)づくり ・組合員の共感、「自覚的消費者」を主体とする 「食」「環境」「地域(市民参加型)福祉」の実践 ・「協同組合セクター」の共通課題へ

☆ 原則(使命)を堅持し「強み」をさらに強める