自己修復性防食コーティングの開発 - hiroshima university43 a会場(孔雀)...

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43 A 会場(孔雀) ● プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た な防食皮膜が自然に形成する自己修復性が有効である。各種の高分子材料,ナノ粒子, pH 感受性有機補修剤,微粒子コンポジットポリマーの特性を利用した自己修復性防 食コーティングについて述べる。 ● 従来技術・競合技術との比較 これまで,自己修復皮膜としてクロメート化成処理が広く用いられてきたが,環境規 制のためにその使用が制限され,代替処理の確立が急務となっている。 ● プレゼン技術の特徴 ・環境を考慮した金属材料の高機能化表面処理 ・ナノ材料を用いたコーティング技術 ・自己修復性防食コーディングの評価技術 ● 想定される用途 ・自動車用鋼板の塗装 ・家電製品の表面塗装 ・化学装置の材料表面保護 自己修復性防食コーティングの開発 広島大学 大学院工学研究院 物質化学工学部門 准教授 矢吹 彰広 14:20~14:45

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Page 1: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

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A会場(孔雀)

● プレゼン技術の概要金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新たな防食皮膜が自然に形成する自己修復性が有効である。各種の高分子材料,ナノ粒子,pH感受性有機補修剤,微粒子コンポジットポリマーの特性を利用した自己修復性防食コーティングについて述べる。

● 従来技術・競合技術との比較これまで,自己修復皮膜としてクロメート化成処理が広く用いられてきたが,環境規制のためにその使用が制限され,代替処理の確立が急務となっている。

● プレゼン技術の特徴・環境を考慮した金属材料の高機能化表面処理・ナノ材料を用いたコーティング技術・自己修復性防食コーディングの評価技術

● 想定される用途・自動車用鋼板の塗装・家電製品の表面塗装・化学装置の材料表面保護

自己修復性防食コーティングの開発

広島大学

大学院工学研究院 物質化学工学部門

准教授 矢吹 彰広

14:20~14:45

材料・表面処理

Page 2: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

2012/8/1

自己修復性防食コーティングの開発自己修復性防食コーティングの開発自己修復性防食コ ティングの開発自己修復性防食コ ティングの開発

広島大学広島大学 大学院大学院 工学研究院工学研究院広島大学広島大学 大学院大学院 工学研究院工学研究院矢吹矢吹彰広彰広

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Page 3: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

各分野における自己修復材料

●ステンレス鋼,チタンは表面に不動態皮膜を形成する自己修復耐食金属である。保護性さび層を 成する耐候性鋼も自

http://www.kyoei-ind.co.jpより

保護性さび層を形成する耐候性鋼も自己修復耐食金属である。

http://www.kyoei ind.co.jpより

●アルミ電解コンデンサの電解液と接しているため誘電体酸化皮膜は,電圧印加にる 誘電体酸化皮膜 ,電 印より常に修復される。

● クリ ト 内部に未水和セメ トを

http://www.sdk.co.jp/aa/newsより

●コンクリートの内部に未水和セメントを残存させることで,クラック発生後に浸透する水と反応を起こし クラックを修復する

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する水と反応を起こし,クラックを修復する。

http://www.ktr.mlit.go.jpより

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欧米における自己修復研究

●米国においては,国防総省が自己修復構造材料を21世紀の防衛に必要な材料とし,空 海 戦 機 燃料タ 自 修復空軍や海軍で戦闘機用燃料タンク自己修復材料の開発を推進,NASAでは宇宙ステーション 太陽電池パネル スペースシャトル用ョン,太陽電池パネル,スペースシャトル用自己修復材料の研究を推進している。 ©NASA

●ヨーロッパにおいては,オランダのデルフト工科大学が中心になり,大規模の自己修復材料 究プ ジ ク を推進 る 材料材料研究プロジェクトを推進している。材料寿命延長,信頼性向上などの環境や生活者の利便性を視点としているの利便性を視点としている。 ©e-architect

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Page 5: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

エロージョン(材料の機械的損傷)キャビテ シ ン エロ ジ ンの潜伏期間の推定法

コロージョン(液流動下での腐食)高温高圧液流動 (ボイ )における腐食

材料の損傷解析

・キャビテーション・エロージョンの潜伏期間の推定法・エロージョンに及ぼすインヒビターの影響・セラミック材料のキャビテーション・エロージョン・固体粒子衝突エロージョンにおける臨界衝突速度

セラミック材料 高分子のスラリ エロ ジョン

・高温高圧液流動下(ボイラ)における腐食・銅合金,アルミ合金のエロージョン‐コロージョン・流動シミュレーションによる材料劣化評価・製塩環境における銅合金の流れ誘起腐食

・セラミック材料,高分子のスラリーエロージョン

材料の表面処理・高機能化

自己修復コーティング・アルミ合金の防食ポリマーコーティング(自己修復)・亜鉛のフルオロカ ボン表面処理

材料の表面処理 高機能化

陽極酸化(高硬度・高耐食)・有機溶媒中でのアルミニウムの陽極酸化

・有機溶媒中でのマグネシウムの陽極酸化

プリンテッドエレクトロニクス

・亜鉛のフルオロカーボン表面処理・アルミ合金のナノコンポジットコーティング・マグネシウムのナノ粒子と修復剤によるコーティング・アルミ合金の導電性コーティングによる防食・アルミ合金の吸水性高分子自己修復コ ティング

・有機溶媒中でのマグネシウムの陽極酸化

プリンテッドエレクトロニクス・銅ナノ粒子の導電性ペースト処理技術・銅錯体におる銅配線技術

・アルミ合金の吸水性高分子自己修復コーティング・鉄鋼材料のナノファイバー自己修復コーティング

インヒビター(腐食抑制剤)アルミ ウムのフルオロカ ボンインヒビタ・アルミニウムのフルオロカーボンインヒビター

・鉄鋼材料のホスホン酸インヒビター(液流動化)

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Page 6: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

予防グバリアコーティング

表面処理

診断,解析

超音波探傷腐食・劣化解析

修理 修復修理,修復

再コーティング,設計変更自己修復性コ ティング自己修復性コーティング

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Page 7: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

金属

欠陥が生じても…

自然と修復する

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Page 8: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

表皮

血管 「血液中に血小板があること」

真皮

皮下組織

→ 修復剤に何を使うか

「血管の構造」

修 剤→ 修復剤をどのようにコーティング中に入れるか

かさぶた「血液が出ること」液が出る と」

→ 傷が入ったときにどうやって修復剤を溶出させるかて修復剤を溶出させるか

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Page 9: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

修復剤は?

修復剤の入れ方

修復開始を修復開始をどうする?

どんな修復形態?

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Page 10: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

多孔質多層単層

混合

構造と担持方法 粒子担持 カプセル封入

修復開始

pHの上昇電位の変化

水や空気の接触 太陽光,UV

修復開始

修復形態

酸化型(無機膜)

吸着型(有機膜) 遮断型

修復形態

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Page 11: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

・ 軽い (比重:1.75(Mg) , 2.70(Al) , 7.86(Fe)) 利点

マグネシウムの特徴

・ 金属光沢

・ 耐食性に劣る欠点

化成処理,陽極酸化 etc 表面処理法

従来法

方法 電解液 有害

(化成処理)

方法 電解液 有害

クロム系 クロム , フッ素化合物含有 有

リン酸マンガン系 リン酸 , マンガン,フッ素化合物含有 有

環境対応型皮膜プロセス10

Page 12: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

チタニア粒子カゼイン

pH4 pH5 pH7 pH10 pH12

カゼイン(ミルクプロテイン)

p p p p p

pH 上昇

pHの変化によってミセルの凝集と分散が生じる

チタ ア構造膜にカゼインを担持させた自己修復

凝集と分散が生じる

チタニア構造膜にカゼインを担持させた自己修復膜を作製する。カゼイン溶液のpHの影響を調べる。

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Page 13: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

チタニア粒子 カゼイン (液中で担持)

AZ31 (Mg 96.3%,Al 2.8%,Zn 0.81%) 試験片

(ディップ法) ( )

pHcid調整

チタニア粒子(270 )濃度 1 wt%

粒子

10 mm/sec引き上げ速度

チタニア粒子(270 nm)

1 wt% 12→10

pH

粒子

濃度12→7 10 mm/sec 引き上げ速度 pH

焼成 (空気中) 120 ℃, 30 min 12→5

12→4

4 h 浸漬時間

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Page 14: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

自己修復性試験自己修復性試験

スクラッチ付与 交流インピーダンス測定

ポテンシォスタット0.9 mm /s

10 g

周波数応答

10 g

周波数応答解析装置

0.0005 M 食塩水(35 ℃,空気飽和) 測定時間 48 hr

規格化

各時間の腐食抵抗

試験片によりスクラッチ部の面積が違う

浸漬直後の腐食抵抗腐食抵抗比

各時間の腐食抵抗

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44腐食試験液:0.0005 M NaCl

チタ ア膜+カゼイン ( H5)

3

/ -

チタニア膜+カゼイン (pH5)

2比R

/R0

/

pH72

食抵

抗比 pH7

1腐食

pH10

0

pH4

0 10 20 30 40 50時間 / h 14

Page 16: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

3 μm 3 μm 3 μm

スクラッチ直後 4時間浸漬後 48時間浸漬後

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Page 17: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

pH 上昇

−+ +→ eMgMg 22アノード反応

カゼイン

上昇

凝集 分散

−− →++ OHeOHO 2221

22カソード反応

チタニア粒子カゼイン

凝集 分散

pH上昇

グネシウム合金マグネシウム合金

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Page 18: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

・アルミニウム 利点・・・軽量 熱伝導性スト

防食ポリマーコート・銅

・ステンレス鋼コスト

多管式熱交換器

(海水環境下)・チタン

多管式熱交換器

従来技術

高耐食化(自己修復)単層化(熱伝導性↑)バリア ト

バリアコート

従来技術

アルミニウム合金

単層化(熱伝導性↑)(コスト↓)

プライマー

バリアコート

アルミニウム合金アルミニウム合金 アルミニウム合金

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Page 19: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

バリア性 自己修復金属粒子

修復自己修復性金属粒子

or金属酸化物粒子

粒子を添加した場合粒子を添加した場合の効果を調べる

ポリマー中に微粒子を混合したコンポジット材を

材料表面にコートして自己修復性の検討をする材料表面にコ トして自己修復性の検討をする

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Page 20: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

試験条件試験条件

:ニッケル粒子, チタニア粒子, シリカ粒子 (添加量 0-10vol%)添加粒子ポリマー :ビニルエステル樹脂 (膜厚約50 μm)

基材 :アルミニウム合金 A5083

試験時間 :48時間

試験および評価方法

Al合金

スクラッチ付与ポテンショスタット

腐食抵抗の測定コーティング

導線Al合金

自然乾燥

FRA

粒子 人工海水塗料 埋込樹脂粒子 人工海水(30 ℃,pH8.2,空気飽和)

塗料 埋込樹脂

試験片によりスクラッチ部の面積が異なる

浸漬直後の腐食抵抗腐食抵抗比

各時間の腐食抵抗

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Page 21: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

腐食液:人工海水(空気飽和,30℃)10

/ -

粒子添加量:3 vol%膜厚:約50 μm8

比R

/R0

/

6 樹脂+チタニア粒子

食抵

抗比

4 樹脂+ニッケル粒子

樹脂のみ

腐食

2

基材0

0 10 20 30 40 50

浸漬時間 / h

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Page 22: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

埋込樹脂

塗膜皮膜

基材

20 μm

21100 μm

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Page 23: 自己修復性防食コーティングの開発 - Hiroshima University43 A会場(孔雀) プレゼン技術の概要 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり,欠陥が生じた場合に新た

−− OHOHO 442

アノード反応

カソ ド反応

−+ +→ eAlAl 33

O2

→++ OHeOHO 442 22カソード反応

低pH 高pH

OH-

pH上昇

修復

pH上昇

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広島大学産学・地域連携センター国際・産学連携部門TEL 082-424-4302FAX 082-424-6189E-mail : [email protected]@ jp

広島大学大学院工学研究院物質化学工学部門 矢吹彰広TEL 082-424-7852E-mail : [email protected]

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