職員の意識を高める接遇教育の具体策り看護部の新人研修に「病院職員として...

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2病院紹介 当院は,川越市の中核医療機関として 1966年7月に開設されて以来,患者サー ビスを第一に,地域に密着した救急医療, 予防医療などを実践している。病床数は 185床で,一般急性期165床,地域包括 ケア病床20床を有する。国の医療政策 で地域包括ケアシステムが推進されてい ることから,当院も1病棟60床を地域包 括ケア病棟として開設するため,2017 年度から準備を進めているところである。 接遇開発委員会の設立と 年間活動 医療機関における「接遇」とは,利用 者の満足度を上げることはもちろん,医 療者自身にとって楽しく心地よい職場環 境にすることでもあると考える。当院の 病院理念「私たちは,医療の提供を通じ て病院を利用される全ての人々,そして 病院で働く全ての人々の幸せに尽くしま す」の下に,職員に対する接遇教育の充 実を図り,医療現場における接遇の重要 性を認識すると共に,患者サービスの充 実と,医療者自身にとっても楽しく心地 よい職場環境の構築,医療の質・接遇の 向上を目指し,2013年接遇開発委員会 を設立した。 当委員会のメンバーは多職種から選出 し,「病院を利用される人々に信頼感と 好感,安心感を持ってもらえる職員の接 遇対応」「院内職員の円滑なコミュニ ケーションを図り,相手も自分も心地よ い関係をつくる」を目的に,さまざまな 活動に取り組んでいる(表1)。 接遇力向上への取り組みの 概要 当院職員の接遇力については,基本姿 勢や身だしなみを改善できないものかと 感じることがあり,日総研グループの接 遇研修に参加し,看護部職員から講習会 を行い,改善の取り組みを始めた。 当院看護部には,高校卒業後に働きな がら資格を取得する看護学生や看護補助 者もいる。それらの職員に社会人とし て,病院職員としての基本的な姿勢と 「ホスピタリティ」の精神を持って職務 に取り組んでほしいと考え,2013年よ 職員の意識を高める接遇教育の具体策 杉山しのぶ 医療法人武蔵野総合病院 看護部 接遇開発委員会委員長 1996年医療法人武蔵野総合病院入職。現在, 外科病棟に勤務。入職時より教育委員会,看護学生指導講習会 に参加し,院内実習指導者を務める。2012年日総研グループ接 遇インストラクター認定,2013年接遇開発委員会を設立し活動。 病院概要(2017年度) 病床数:185床(3病棟,4看護単位) 診療科:脳外科,外科,内科,整形外 科,形成外科を中心とした10診療科 1日平均外来患者数:330人 平均在院日数:16.5日 施設基準:入院基本料7対1,夜間急性期看護補助体制加 算25対1,DPC対象病院 看護職員数:162人 外来看護職員数:30人(師長1人,主任1人を含む常勤看 護師22人,非常勤看護師5人,看護補助者3人) 継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3 090

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Page 1: 職員の意識を高める接遇教育の具体策り看護部の新人研修に「病院職員として の接遇マナー」を織り込み,院内規定の 身だしなみや医療者としての応対の仕方

特集2

「接遇力」

向上の取り組み

特集2

「接遇力」

向上の取り組み

病院紹介 当院は,川越市の中核医療機関として

1966年7月に開設されて以来,患者サー

ビスを第一に,地域に密着した救急医療,

予防医療などを実践している。病床数は

185床で,一般急性期165床,地域包括

ケア病床20床を有する。国の医療政策

で地域包括ケアシステムが推進されてい

ることから,当院も1病棟60床を地域包

括ケア病棟として開設するため,2017

年度から準備を進めているところである。

接遇開発委員会の設立と 年間活動 医療機関における「接遇」とは,利用

者の満足度を上げることはもちろん,医

療者自身にとって楽しく心地よい職場環

境にすることでもあると考える。当院の

病院理念「私たちは,医療の提供を通じ

て病院を利用される全ての人々,そして

病院で働く全ての人々の幸せに尽くしま

す」の下に,職員に対する接遇教育の充

実を図り,医療現場における接遇の重要

性を認識すると共に,患者サービスの充

実と,医療者自身にとっても楽しく心地

よい職場環境の構築,医療の質・接遇の

向上を目指し,2013年接遇開発委員会

を設立した。

 当委員会のメンバーは多職種から選出

し,「病院を利用される人々に信頼感と

好感,安心感を持ってもらえる職員の接

遇対応」「院内職員の円滑なコミュニ

ケーションを図り,相手も自分も心地よ

い関係をつくる」を目的に,さまざまな

活動に取り組んでいる(表1)。

接遇力向上への取り組みの概要 当院職員の接遇力については,基本姿

勢や身だしなみを改善できないものかと

感じることがあり,日総研グループの接

遇研修に参加し,看護部職員から講習会

を行い,改善の取り組みを始めた。

 当院看護部には,高校卒業後に働きな

がら資格を取得する看護学生や看護補助

者もいる。それらの職員に社会人とし

て,病院職員としての基本的な姿勢と

「ホスピタリティ」の精神を持って職務

に取り組んでほしいと考え,2013年よ

職員の意識を高める接遇教育の具体策杉山しのぶ

医療法人武蔵野総合病院 看護部 接遇開発委員会委員長

1996年医療法人武蔵野総合病院入職。現在,外科病棟に勤務。入職時より教育委員会,看護学生指導講習会に参加し,院内実習指導者を務める。2012年日総研グループ接遇インストラクター認定,2013年接遇開発委員会を設立し活動。

◆病院概要(2017年度)

病床数:185床(3病棟,4看護単位)診療科:脳外科,外科,内科,整形外科,形成外科を中心とした10診療科

1日平均外来患者数:330人平均在院日数:16.5日

施設基準:入院基本料7対1,夜間急性期看護補助体制加算25対1,DPC対象病院

看護職員数:162人

外来看護職員数:30人(師長1人,主任1人を含む常勤看護師22人,非常勤看護師5人,看護補助者3人)

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3090

Page 2: 職員の意識を高める接遇教育の具体策り看護部の新人研修に「病院職員として の接遇マナー」を織り込み,院内規定の 身だしなみや医療者としての応対の仕方

り看護部の新人研修に「病院職員として

の接遇マナー」を織り込み,院内規定の

身だしなみや医療者としての応対の仕方

などを教育してきた。また,質のよい医

療・看護サービスを提供するには,職員

同士のコミュニケーションが円滑に行わ

れることが重要であると考え,全職員を

対象に年に2回の参加型接遇研修を開催

し,グループワークを通して職員のコ

ミュニケーション能力の向上を図ってい

る。2016年度からは看護部以外の新入

職員にも接遇研修を実施している。

 2016年には「第2回接遇大賞」に応

募して,念願の「接遇大賞」を受賞する

ことができた(写真1)。当委員会の取り

組みや来院者満足度調査の結果は,当委

員会広報「おもいやり」に掲載し,職員

全員で共有できるようにしている。

身だしなみを整える ~第一印象が重要!

 身だしなみは,出会った瞬間に示す,

今日会う人への「思いやり」である。で

きて当たり前,できていなければ相手に

マイナスイメージを与えるものであり,

同時に自分自身の仕事の能力や人格を相

手に伝えるツールである。当院では「院

内身だしなみ基準」を作成し,前期と後

期の年2回,全職員の「身だしなみ

チェック」を実施している。

◦前期 「身だしなみチェックシート」(資料1)

を使用し,院内身だしなみ基準に沿っ

て,自分の身だしなみを自己評価,他者

評価,管理職評価の3段階で評価する。

シートは回収して,所属長と各部署の

委員が個々の日頃の接遇対応に関する

コメントを記入し(表2),フィードバッ

クを行って自己の課題としてもらって

いる。

4月 新入職員接遇研修5月 身だしなみチェック・接遇対応確認シー

ト(前期:自己評価,他者評価,管理職評価)

6月 中途採用職員接遇研修7月 接遇に関するコンテスト

*笑顔★あいさつ あなたは素敵で賞コンテスト*接遇標語大賞

8月 ご来院者満足度調査10月 看護学生対象接遇研修(実習前準備)11月 委託業者対象接遇研修12月 身だしなみチェック・接遇対応確認シー

ト(後期:身だしなみ抜き打ちラウンド)2月 委員会企画講習会 

*2017年度は電話応対方法3月 来院者満足度調査

〈その他〉•あいさつ運動…毎朝9時(始業時)の外来職

員全員による整列あいさつ•掲示物の整理整頓…3回/月•医事課窓口患者応対見学…3回/月•広報「おもいやり」発行…6回/年

当委員会オリジナルキャラクター「おもいやりちゃん」

表1 接遇開発委員会年間活動 写真1 接遇大賞授賞式での一枚

後列左より 新井,隠岐,川瀬,平川,田嶋,山口,大平,川口

前列左より 石垣看護部長,杉山,海津院長,伊藤,予防医療センター井上事務部長

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3 091

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•身だしなみにはいつも清潔感が感じられます。また,明るい笑顔で患者さんをよく見ながら対応している姿勢が素晴らしいです。

•周りの状況をよく見て対応してくれていますね。ありがとうございます。忙しい中で苦労もあると思いますが,頼りにしています。

•とても明るく,私も元気をもらっています。髪色も落ち着き,職場のイメージに合っていると思います。

•スタッフにいつも優しい声かけをしてくれていますね。職場の雰囲気が和みます。

•礼儀正しく,姿勢正しく,見ていて気持ちがよいです。今年も委員会での活動を通し接遇教育をお願いします。

表2 管理職コメントの例

資料1 身だしなみチェックシート

髪は清潔ですか?

顔周りの髪はすっきりとしており,長い髪は束ねていますか?

髪色は茶色(明る)過ぎませんか?(基準に沿っていますか?)

歯はきれいに磨いてありますか?

口臭はありませんか?

鼻毛は伸びていませんか? ※患者目線で下から見上げてチェック

耳は清潔ですか? ※患者目線の距離からチェック

顔色は良いですか?

化粧は濃過ぎませんか?

化粧崩れしていませんか?

ユニホーム(仕事着)は清潔で,しみやしわなく手入れされていますか?

取れかけたボタンやほつれはありませんか?

襟・袖口は汚れていませんか?

靴はきれいに磨いてありますか?

靴下は派手な柄などが入っていませんか?(白色が基本)

名札は患者さんから見やすいよう付けていますか?名札ケースが破れていませんか?

爪は伸びていませんか?

手にメモを書いたり,手が汚れたりしていませんか?

ポケットにペンや物を入れ過ぎていませんか?

アクセサリーは派手ではありませんか?

たばこのにおい,香水,においの強いハンドクリームやボディークリームをつけていませんか?

部署:          氏名:

〈チェック基準〉○…できている △…分からない ×…できていない

〈管理職コメント〉

接遇開発委員会

管理職評価

他者評価

自己評価項目

自己評価で×

を付けた理由を教えてください。

その他

制服

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3092

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 忙しい業務の中で職員一人ひとりにコ

メントを記入してくださる所属長に感謝

している。所属長からのコメントにより,

職員の仕事に対するモチベーションが向

上することは間違いないと感じている。

◦後期 委員による「身だしなみ抜き打ちラウ

ンド」を行い,院内身だしなみ基準を満

たしている好印象の職員には「ピンク

カード」を配る。ピンクカードは「あな

たの身だしなみは美しいです」「あなた

の身だしなみは素敵です」「あなたの身

だしなみは完璧です」の3種類があり,

委員が手作りしている(図)。

 ピンクカードは名札ケースの裏側に入

れ,患者にも表示している。2017年度

で3年目になる身だしなみ抜き打ちラウ

ンドでは,「ピンクカードが欲しいです。

私を見てください!」と委員のそばに来

るスタッフもおり,身だしなみを整える

必要性の認識とピンクカードへの関心が

定着してきたことの表れだと感じている。

 一方で,身だしなみをもう少し改善し

てもらいたい職員には,具体的にどのよ

うなところを改善してもらいたいかをそ

の場でイエローカードに書き込み渡して

いる。受け取った職員は所属長に報告

し,改善に努める。また,イエローカー

ドを受け取った職員が改善できた場合に

ピンクカードを渡すことができるよう,

1カ月後に再ラウンドを実施している。

 このような活動により,スタッフは

日々清潔でさわやかな身だしなみを整

え,業務に取り組んでいる。

「笑顔★あいさつ あなたは 素敵で賞コンテスト」の開催 毎年,接遇に関するさまざまなコンテ

ストを実施している。コンテストは,全

職員が1つのことに向かって取り組める

重要な接遇研修である。2017年度は,

2014年度に実施した「笑顔★あいさつ

あなたは素敵で賞コンテスト」を再び開

催した。

◦目的・褒める風土を醸成する。

・気づく力を養う。

・伝える・伝わる喜びを感じ合う。

◦方法①投票の約束事として,必ず記名する。

②笑顔★あいさつが素敵だと思う職員を

2人選び,投票理由として,日頃の感

謝の思いや気づきなどのメッセージを

書いて投票する。

③上位10人には表彰式を開催し,委員

手作りの賞状を授与する。

④回収した投票用紙は「感謝を伝えるあ

図 身だしなみ抜き打ちラウンドで配るカード

〈ピンクカードの例〉

*種類は3種類。基準をクリアしている人に配布

〈イエローカードの例〉

*改善内容を具体的に伝え,指導を図る。所属長へ指摘を受けたことを報告+改善報告

2017年度身だしなみチェック 接遇開発委員会

2017年度身だしなみチェック 接遇開発委員会あなたの身だしなみは素敵です♪

靴が汚れていました。拭いてきれいな靴を履いてください

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3 093

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りがとう★letter」に姿を変え,投票さ

れた一人ひとりの職員に感謝のメッセー

ジとして封筒に入れて渡す(写真2)。

 表3に示すような心が温かくなる感謝

のメッセージを,2017年度は138人の

職員に渡すことができた。相手に感謝の

気持ちを伝えることで,相手は自信を持

つことができる。また,やる気スイッチ

をオンにし,成長することができる。あ

る研究によると,「褒められること」は

給料をもらった時と同じレベルで脳が刺

激を受け,同じぐらいの喜びを感じると

言われている1)。

 また,「感謝を伝えるありがとう★letter」

は他部署との交流のきっかけの一つとな

り,コミュニケーションの輪が広がって

いる。

職員にやる気を起こさせる 「ご来院者満足度調査」 「ご来院者満足度調査」(表4,資料2)

は,日頃提供している医療サービスに対

して,来院者がどのように病院を評価

し,どのようなことを望んでいるのかを

把握し,サービスのさらなる向上を図る

ことを目的に毎年実施している。来院者

の「期待どおり」の応対では,相手の印

象には残らない。決して「印象に残らな

い=悪い」というわけではないが,リ

ピーターや新たな来院者を呼ぶという意

味ではよいとは言えない。

 一般的に行われている満足度調査で

は,マイナス評価の項目の改善に注力す

ることによって,来院者全体の満足度を

向上させようとする傾向が多く見られ

る。しかし実際には,来院者の満足度あ

るいはロイヤルティ接遇(期待を上回る

接遇)を向上させるには,マイナス評価

を引き上げるよりも,高い評価をより高

くする方が効果は大きい2)。

 口コミは最強のマーケティングと言わ

れるが,口コミで情報が広まるのは,当

たり前のサービスに遭遇した時ではな

く,印象に残るサービスに遭遇した時で

ある。印象に残る応対には正負2種類あ

る。一つは来院者の期待を上回った応

対,もう一つはその反対で,来院者の期

待を裏切った応対である。来院者の期待

を上回った応対であれば,「また利用し

よう」「知人に紹介しよう」となり,来

写真2 感謝を伝えるありがとう★letter

•○○さん,いつも優しい笑顔で声をかけてくれてありがとうございます。入職したばかりの私ですが,励まされています。

•気持ちのよいあいさつをいつもありがとう。私も自然に笑顔であいさつができるようになりました。

•電話で姿は見えなくても,笑顔が伝わってきて,とても気持ちがよいです。私も○○さんのような女性になりたいと思います。

•いつも医事課に行くと真っ先に声をかけてくださり,姿を見かけると安心します。私も自分から声をかけられるように努力しています。

表3 感謝のメッセージの例

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3094

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〈目的〉•医療サービスの向上。単に来院者の満足度の統計値を取ることではなく,実際に来院者の生の声を聴き,来院者は何について当院を高く評価したのかを探り,その具体的な成功事例を職員全員が共有し,全員が実践できるようになる。

•院長からの表彰と名札に証を示すことにより職員のモチベーションを向上する。

•来院者に信頼・安心してもらうための接遇対応について個々の意識を一層高める。

①短期調査(14日間),年2回実施。②外来受診患者,入院患者,現在入院中の患者の家族に「ご来院者満足度調査」用紙を配布。

③外来受診患者・入院患者自身による記入が難しい場合は,家族による記入でも可。

④アンケートの記入は強制ではない。⑤外来受診患者,これから入院する患者には外来窓口で説明して渡し,入院中の患者には各階の委員が説明して渡す。院内6カ所にアンケート回収ボックスを設置し,投函してもらうか,委員が回収する(投函できない来院者もいるため)。

⑥その内容を整理して公開し,職員全員が成功事例を共有し,それを基に接遇力を高める。⑦「○○さん(職員)の対応が好印象である」と名前をもらった職員に対しては当委員会のオリジナルキャラクター「おもいやりちゃん」のシールを贈呈し,名札に貼って来院者に表示している。また,院内接遇教育担当者に任命し,接遇リーダーとして活躍してもらっている。⑧「おもいやりちゃん」シールは増えていく仕組みで,3枚たまると院長より表彰される。

〈方法〉

表4 「ご来院者満足度調査」の詳細

第2回 ご来院者満足度調査 ご協力のお願い この度,当院では来院される方々に「職員の接遇対応」についてアンケート調査を実施させていただきます。 ご協力いただきましたアンケートにつきましては,今後の職員の接遇教育の参考にさせていただき,患者様サービスなどの充実に努めてまいりたいと考えております。 お手数ではございますが,何とぞご回答のほど,よろしくお願い申し上げます。   月  日(  )1.患者様ご本人についてお聞かせください。 *記入困難な場合はご家族の方がご記入ください。

•性別 男・女  •年齢  歳  •受診された診療科     科•入院されている病棟 2階・3階・4階(○を付けてください)

2.職員の身だしなみ,患者様に対する姿勢・言葉遣い・態度・接遇などはいかがでしょうか?当てはまる欄に○を付けてください。

3.受けたサービスで心に残っていることがありましたら,どのようなことでも構いませんので教えてください。

4.よい印象を抱かれた職員がおりましたら,名前を教えてください。

  ※4でお答えになった職員とは,具体的にどのようなことがありましたか?

5.この病院をお知り合いに紹介するとしたら,どのような点がよいからと勧められますか?

私たちは患者様と一緒によい病院づくりを考えていきます。  接遇開発推進委員会

①医師について②看護師について③薬剤師について④放射線技師について⑤検査技師について⑥栄養士について⑦リハビリテーションスタッフについて⑧医事課について(受付・会計)

満足 やや満足 普通 やや不満 不満

資料2 「ご来院者満足度調査」用紙

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3 095

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院者が増える要因となる。期待を裏切っ

た応対であれば,「二度と使わないよう

にしよう」「知人にも利用しないように

忠告しておこう」となり,実際に利用し

た人はもちろんのこと,まだ利用してい

ない人をも失うことになる。

 当院の満足度調査では,「よい印象を

抱かれた職員がおりましたら,名前を教

えてください」「その職員とは,具体的

にどのようなことがありましたか?」と

いった質問をしている。来院者によい印

象を抱かれた職員は,名札に委員会オリ

ジナルキャラクター「おもいやりちゃん」

のシールを貼り(写真3),各部署で接

遇リーダーとして活躍してもらっている。

 2016年度は「ご来院者満足度調査」用

紙を2,250枚配布し,回収率80%,40人

の職員が好印象であるとの回答をもらっ

た。調査結果や来院者の生の声は,院内

に掲示し公開している(写真4)。

 接遇は日々の努力の積み重ねである。

接遇対応が相手に思いやりとして伝わっ

ている職員を表彰することは,接遇が重

要であることの意識を高め,今後の目標

の明確化につながると考える。また,他

職員の模範となることは間違いない。

まとめ 当委員会活動においては,看護部,コ

メディカル,医事課などの多種職の結集

が職員間の交流を深め,職員の接遇意識

を高めるサイクルができた。医局の委員

会への参加は困難ではあったが,接遇活

動には協力が得られた。接遇活動によ

り,接遇改善に対する認識と向上してい

こうという気運が高まったと感じている。

 接遇対応の成果は一朝一夕で見えるも

のではない。そして,接遇の良し悪しは

自分たちが決めるものではなく,相手が

決めるものである。よい接遇対応を行っ

ていても,相手に伝わっていなければ意

味がなく,よい接遇とは言えない。

 私たちは接遇活動の中で,職員の日々

の努力を認め合い,ねぎらって褒め合

い,気づく力を養っている。また,来院

者から意見をもらい,求められる病院を

一緒に目指すことで,職員の接遇に対す

る意識強化とレベルアップ,そして個々

の目標の明確化につながった。今後も,

病院理念の下,地域に密着した医療の提

供に努め,信頼感と好感,安心感を持っ

てもらえる職員の接遇対応を目指し,当

委員会が来院者に喜んでもらえる大切な

活動となるよう邁進していきたい。

写真3 名札に貼った「おもいやりちゃん」シール

写真4 調査結果や来院者の生の声の公開

〈公開テーマ〉思いやりを乗せて空高く舞い上がれ!

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3096

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 医療機関は「よい接遇対応」が

あって当たり前と言われるこの時

代。私は接遇の重要性と接遇力の必要性

を感じ,接遇インストラクター研修を受講し

ました。接遇インストラクターの認定を受け

ましたが,組織の中で何かを新しく始める,

立ち上げるには理解者が必要です。私には,

研修に行くことを応援し,理解してくれる上

司がいました。上司はすぐに私の接遇活動

を斡旋してくださり,委員会を結成して活動

を行うことができました。接遇とは,よい

人間関係を築いていく,思いやりの心に基

づく行動を言うのだと考えます。私が上司に

していただいたことこそが「接遇」そのもの

だと改めて実感しています。

 まだまだ未熟な私ですが,このような機

会を与えてくださったことに感謝し,今後も

来院者に安心していただける接遇対応と,

職員が気持ちよく働ける職場環境の構築に

日々精進していきたいと思います。

 本稿の執筆に当たり,ご指導・ご協力い

ただいた方々に感謝いたします。

引用・参考文献1)五感プロデュース研究・研究員荒木行彦2)システム環境研究所:医療機関における職員をやる気にさせるアンケート調査

 http://www.syskan.com/img/report/pdf/5.pdf(2017年6月閲覧)

3)高橋啓子:看護・介護職の接遇インストラクター指導者マニュアル,日総研出版,2003.

4)高橋啓子:心が笑顔になる実践型「接遇」,日総研出版,2010.

5)疋田幸子:看護・介護の快適コミュニケーション55のルール,日本看護協会出版会,2012.

執筆後記

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.3 097