高齢透析患者への -...

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高齢透析患者への FX-180HDFの臨床評価 医療法人清陽会 ながけクリニック 田淵裕哉 門崎弘樹 藤中正樹 逸見典子 高尾愛莉 林望海 松本和広 長宅芳男

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高齢透析患者への

FX-180HDFの臨床評価

医療法人清陽会 ながけクリニック

田淵裕哉 門崎弘樹 藤中正樹 逸見典子

高尾愛莉 林望海 松本和広 長宅芳男

目的

高齢者にオンラインHDFを施行する場合、 アルブミン漏出量が多いと低栄養状態になる ことが懸念されている。

そこで今回、Alb漏出量が少ないと言われて いるニプロ社製 FIX-170Eeco (FIX) と フレゼニウス社製 FX-180HDF (FX) を使用し、 除去性能と、膜変更による栄養状態の変化に ついて比較検討した。

対象・方法

対象:同意を得られた維持透析患者3名、

年齢:77.8±4.1歳、 透析歴:4.6±4.1年、

原疾患:糖尿病性腎症2名、腎硬化症1名

使用膜: ニプロ社製 FIX-170Eeco (以下 FIX)

フレゼニウス社製 FX-180HDF (以下 FX)

方法: on-line HDF 前希釈48L/session、 透析時間4時間

QB250mL/min、 QD500mL/min

【除去性能】

測定項目:s-un、Cre、UA、iP、β2-MG、PRL、α1-MG、Alb

評価項目:除去率、クリアランス(治療開始60分後)、

除去量、Alb漏出量

≪栄養状態≫

評価項目:血清Alb値、nPCR、GNRI、CRP、週初めの体重増加量 の平均 を膜変更前後の推移と5ヶ月間の平均で比較した。

62.5%

9.9%

32.1%

0.6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

s-un Cre UA iP β2-MG PRL α1-MG

除去率 % n=3

0

50

100

150

200

250

s-un Cre UA iP β2-MG PRL α1-MG

クリアランス(治療開始60分後) mL/min n=3

除去率・クリアランス

FIX FX

除去率は、 s-un、Cre、UA、iP、β2-MGで両者に有意差は認めなかった。

PRLの除去率 FIX:62.5±5.5% FX:32.1±5.1% α1-MGの除去率 FIX: 9.9±2.2% FX: 0.6±0.8% であった。

クリアランスは全ての項目で、両者に有意差は認めなかった。

β2-MGの除去量では、両者に有意差は認めなかった。

α1-MGの除去量 FIX:53.0±39.5mg FX:20.4±14.2mg

アルブミン漏出量 FIX:1.7±1.2g FX 0.6±0.6 g

α1-MGの除去量、アルブミン漏出量ともに、FIXが高値であった。

[値]

[値]

[値]

[値] 0

50

100

150

200

250

β2-MG α1-MG

除去量 mg n=3

除去量・アルブミン漏出量

[値]

[値] 0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

アルブミン

アルブミン漏出量 n=3 g

FIX FX

血清Alb値は、

FXへ膜変更後5ヶ月(11月~)の推移で、

1名が上昇したが、2名に変化はなかった。

各5ヶ月の平均では、

FIX:3.5±0.1g/dL FX:3.6±0.1g/dL

で有意差を認めた。

[値] [値]

3

3.2

3.4

3.6

3.8

4

6-10月 11-3月

血清Alb値 平均 n=28 g/dL

t-test p<0.05=*

*

血清Alb値

3

3.2

3.4

3.6

3.8

4

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

血清Alb値 g/dL n=3

FIX FX

nPCRは、

FXへ膜変更後5ヶ月(11月~)の推移で、

3名すべてに変化を認めなかった。

各5ヶ月の平均では、

FIX:0.7±0.08 g/kg/day

FX:0.9±0.04 g/kg/day

で有意差を認めた。

[値]

[値]

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

1.2

6-10月 11-3月

nPCR 平均 n=15 g/kg/day

*

t-test p<0.05=*

nPCR

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

1.2

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

nPCR g/kg/day n=3

非糖尿病透析患者リスク基準

糖尿病透析患者リスク基準

FX FIX

GNRIは、

FXへ膜変更後5ヶ月(11月~)の推移で、

2名が上昇し、栄養障害リスクの基準値の

92以上を示した。

各5ヶ月の平均では、

FIX:91.1±0.8 FX:92.4±1.8

で有意差を認めた。 [値] [値]

86

88

90

92

94

96

98

100

6-10月 11-3月

GNRI 平均 n=28

*

t-test p<0.05=*

GNRI

86

88

90

92

94

96

98

100

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

GNRI

FIX FX

栄養障害 リスク基準値

n=3

GNRI=14.89×血清Alb値(g/dL)+41.7×(DW÷*理想体重) *理想体重=身長(m)2×22

CRPは 、

FXへ膜変更後5ヶ月(11月~)の推移で、

全例で有意な変化は認めなかった。

各5ヶ月の平均では、

FIX:0.3±0.2mg/dL FX:0.4±0.2mg/dL

と有意差は認めなかった。 [値] [値]

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

6-10月 11-3月

CRP 平均 n=29 mg/dL

p<0.05=* t-test

n.s

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

CRP n=3 mg/dL

FIX FX

CRP

週始めの体重増加量の平均は 、

FXへ膜変更後5ヶ月(11月~)の推移で、

1名が上昇したが、2名に変化はなかった。

各5ヶ月の平均では、

FIX:2.6±0.4kg FX:3.1±0.3kg

で有意差を認めた。

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

体重増加量 月平均 n=3

FIX FX

[値] [値]

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

6-10月 11-3月

体重増加量 5ヶ月平均 n=15

kg

* p<0.05=* t-test

体重増加量 kg

考察

● FIX-170EecoはPVPを含有せずFIXシリーズの中で最もAlb漏出量を抑えたマイルドな膜であるため、我々は、循環動態安定を 目的として高齢者に対して first choice として使用してきた。

● 今回の検討では、 FIX-170Eeco からFX-180HDFに変更したところ、nPCRや体重増加量が上昇し、食事量の増加が認められた。

● FX-180HDFは、FIX-170Eecoに比べ、α1-MG以上の分子量の物質の除去を低く抑えたシャープな分画特性であった。従来は、PRLやα1-MGなどの低分子蛋白領域の物質の除去が上昇すると、食事量の増加に繋がるとされていた。

● しかし、今回の検討では、低分子蛋白領域の物質の除去がより少ないFX-180HDFのほうが、食事量の増加を認めたため、その

詳細な機序は不明と言わざるを得ない。仮説として、低分子蛋白 領域に食事量を上昇させる物質があり、その除去が過度になると、 食事量が低下するのかもしれない。

結語

FX-180HDFは、FIX-170Eecoよりも低分子蛋白の除去量やAlb漏出量が少ない。

FX-180HDFは、 PVPアレルギーの心配がない高齢透析患者に対して、 栄養状態の改善が期待できる膜であると思われる。

日本透析医学会

CO I 開示

筆頭発表者名: 田淵 裕哉

演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある

企業などはありません。