解釈例規物語...2009/10/01  · 2009.10.1 労働基準広報 35 解釈例規物語 12 12...

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労働基準広報 2009.10.1 34 中川 恒彦 通常支店業務を総括し支店長が事故ある場合は その職務を代行する支店次長は含まれる 〔管理監督者の範囲 ―その5―〕 (昭和52・2・28 基発第105号) 解釈例規物語 解釈例規物語 解釈例規物語 解釈例規物語 §12 2 具体的な取扱範囲の例示 金融機関における資格、職位の名称は企業によってさまざまであるが、取締役、理事 等役員を兼務する者のほか、おおむね、次に掲げる職位にある者は、一般的には管理監 督者の範囲に含めて差し支えないものと考えられること。 出先機関を統轄する中央機構(以下「本部」という。)の組織の長については次に 掲げる者 ① 経営者に直属する部等の組織の長(部長等) 相当数の出先機関を統轄するため権限分配を必要として設けられた課又はこれに 準ずる組織の長(課長等) ①~②と同格以上に位置づけられている者であって、①の者を補佐して、通常当 該組織の業務を総括し、かつ、①の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相 当部分を代行又は代決する権限を有する者(副部長、部次長等) 従って、②の者の下位に属する、例えば副課長、課長補佐、課長代理等の職位は 除外されるものであること。 ⑵ 支店、事務所等出先機関における組織の長については、次に掲げる者 支店、事務所等出先機関の長(支店長、事務所長等)。ただし、法の適用単位と 認められないような小規模出先機関の長は除外される。 大規模の支店又は事務所における部、課等の組織の長で、上記①、②、④の者と 企業内において同格以上に位置づけられている者(本店営業部又は母店等における 部長、課長等) 【都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲】

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労働基準広報 2009.10.134

中川 恒彦

通常支店業務を総括し支店長が事故ある場合はその職務を代行する支店次長は含まれる

〔管理監督者の範囲 ―その5―〕 (昭和52・2・28 基発第105号)

解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語§12

2 具体的な取扱範囲の例示 � 金融機関における資格、職位の名称は企業によってさまざまであるが、取締役、理事等役員を兼務する者のほか、おおむね、次に掲げる職位にある者は、一般的には管理監督者の範囲に含めて差し支えないものと考えられること。 ⑴� 出先機関を統轄する中央機構(以下「本部」という。)の組織の長については次に掲げる者

  ① 経営者に直属する部等の組織の長(部長等)  ②� 相当数の出先機関を統轄するため権限分配を必要として設けられた課又はこれに

準ずる組織の長(課長等)  ③� ①~②と同格以上に位置づけられている者であって、①の者を補佐して、通常当

該組織の業務を総括し、かつ、①の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者(副部長、部次長等)

   � 従って、②の者の下位に属する、例えば副課長、課長補佐、課長代理等の職位は除外されるものであること。

 ⑵ 支店、事務所等出先機関における組織の長については、次に掲げる者  ④� 支店、事務所等出先機関の長(支店長、事務所長等)。ただし、法の適用単位と

認められないような小規模出先機関の長は除外される。  ⑤� 大規模の支店又は事務所における部、課等の組織の長で、上記①、②、④の者と

企業内において同格以上に位置づけられている者(本店営業部又は母店等における部長、課長等)

【都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲】

労働基準広報2009.10.1 35

解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語 §12

解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語§12

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ 第9回(本誌平成21年6月21日付号)で説明したとおり、昭和52年2月28日に出された基発第105号は、「金融機関における管理監督者の範囲について」と題するもので、その内容は、「1 基本的な考え方」と「2 具体的な取扱範囲の例示」とからなり、いわば完結した構成になっていた。 そのうちの「1 基本的な考え方」は、昭和 63 年にそっくりそのまま「基本通達」に取り込まれたため、現在では「2 具体的な取扱範囲の例示」の部分のみが【都市

銀行等以外の金融機関の場合】という標題で現在の解釈例規集に掲載されている(ただし、「2 具体的な取扱範囲の例示」という見出しは取り払われた。)。 いずれにせよ、「基本的な考え方」についてはすでに説明済みであるので、今回は、「都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲」に関する上記通達の内容について説明する。なお、本通達の対象として当時考えられていたのは、地方銀行、相互銀行、信用金庫、信用組合である。

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

  � 従って、④の者を補佐する者で⑤以外の者(次長、支店長代理等)は原則として除外されるものであること。ただし、④の者に直属し、下位にある役付者(支店長代理、⑤に該当しない支店課長等)を指揮監督して、通常支店等の業務を総括し、かつ、④の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者であって、①、②、④と同格以上に位置づけられているものは含めることができること(副支店長、支店次長等)。

 ⑶� ①~④と企業内において同格以上に位置づけられている者であって、経営上の重要な事項に関する企画、立案、調査等の業務を担当する者(いわゆるスタッフ職)

 注⑴� ②の本部の課長等は、権限分配された職務を実質的に所掌する者であって、その地位にふさわしい処遇をうけている者でなければならない。従って、単なる人事処遇上の実質を伴わない課長等は除外するものである。

  ⑵� 支店次長等支店長の直近下位の職制管理者については、その職位にあるからといって、支店長等の職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有するものとして取扱うものではなく、その代行、代決の権限が明らかなものに限られる。従って、本来なら次長制を必要としないような規模の支店等に名目上の次長を置いたり、形式的に複数の次長を置く等、実質を伴わない補佐役は含まれないものである。

    (昭和52・2・28 基発第105号)

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解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語 §12

解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語§12

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

1� 出先機関を統轄する中央機構(以下「本部」という。)の組織の長については次に掲げる者 ①� 経営者に直属する部等の組織の長(部長等)

 ②� 相当数の出先機関を統轄するため権限分配を必要として設けられた課又はこれに準ずる組織の長(課長等)

 ③� ①~②と同格以上に位置づけられている者であって、①の者を補佐して、通常当該組織の業務を総括し、かつ、①の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者(副部長、部次長等)

  � 従って、②の者の下位に属する、例えば副課長、課長補佐、課長代理等の職位は除外されるものであること。

①� 経営者に直属する部等の組織の長(部長等) 研究所、研修所等付属機構あるいは独立機構のような組織を除き、通常の組織は経営者に直属しているから、「経営者に直属」の意味にあまりに神経質になる必要はない。 いずれにせよ、本部の部長等は、一般的に「管理監督者」に該当するとしている。②� 相当数の出先機関を有する本部の課長等 「相当数の出先機関を統轄するため権限分配を必要として設けられた課又はこれに

準ずる組織の長(課長等)」は、一般的に「管理監督者」に該当する。 都市銀行等は、いずれも相当に規模の大きい企業であり、支店もかなりの数にのぼる。 しかし、都市銀行等以外の金融機関は、比較的都市銀行等に近い規模のものから、信用組合等の場合は支店もあまりないものまで、その規模の差はかなりのものがある。 したがって、ここでは「相当数の出先機関を統轄する」として、支店数の少ない金融機関を除外している。 「相当数の出先機関を有する金融機関」における本部の課長等は「管理監督者」に該当することとなる。 ただし、これら本部の課長等は、権限分配された職務を実質的に所掌する者であって、その地位にふさわしい処遇を受けている者でなければならない。したがって、単なる人事処遇上の実質を伴わない課長等は除外される。③ 本部の副部長、部次長等

 ①~②と同格以上に位置づけられている者であって、①の者を補佐して、通常当該組織の業務を総括し、かつ、①の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者(副部長、部次長等)

 本部の副部長、部次長等は、次の要件の全部に該当する場合は、一般的に「管理監督者」に該当する。a� ①~②と同格以上に位置づけられていること ①は部長等、②は課長等であるから、少

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解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語§12

なくとも②の課長と同格以上に位置づけられていることが必要である。 一般的には、副部長等は、課長より上位にあるのが普通であるから、この条件を満たすことは困難ではない。b� ①の者を補佐して、通常当該組織の業務を総括し、かつ、①の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有すること 「通常当該組織の業務を総括」していなければならないから、事故あるときだけの補佐役では要件を満たさない。 また、部長等に事故あるときは、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有している必要がある。 本部において「管理監督者」として取り扱い得る者は、以上である。 したがって、本部における課長補佐、課長代理等は、「管理監督者」として取り扱うことはできない。

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

⑵� 支店、事務所等出先機関における組織の長については、次に掲げる者 ④� 支店、事務所等出先機関の長(支店長、事務所長等)。ただし、法の適用単位と認められないような小規模出先機関の長は除外される。

 ⑤� 大規模の支店又は事務所における部、課等の組織の長で、上記①、②、④の者と企業内において同格以上に位置づけられている者(本店営業部又は母店等における部長、課長等)

  � 従って、④の者を補佐する者で⑤以外の者(次長、支店長代理等)は原則として除外されるものであること。ただし、④の者に直属し、下位にある役付者(支店長代理、⑤に該当しない支店課長等)を指揮監督して、通常支店等の業務を総括し、かつ、④の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者であって、①、②、④と同格以上に位置づけられているものは含めることができること(副支店長、支店次長等)。

④ 支店長、事務所長等 支店長、事務所長等出先機関の長は、一般的に「管理監督者」に該当する。 ただし、あまりにも小規模の出先機関(労働基準法上の1事業場としての独立性を有しないもの)の場合は、仮に支店長という名称であっても、「管理監督者」として取り扱うことはできない(関連事項につき後述)。⑤ 大規模支店等における部長、課長等 大規模の支店等における部長、課長等で、本部の部長、課長、出先機関の支店長等と同格以上に位置づけられている者は、「管理監督者」に該当する。 ただ、上記要件のかっこ書きに「(本店営業部又は母店等における部長、課長等)」とあるところから、支店のうちでも上位の支店に限られる。⑥ 副支店長、支店次長等 支店長等を補佐する者(次長、支店長代理)は、原則として「管理監督者」に該当しないが、次のaからcまでの要件の全部

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に該当する副支店長、支店次長等の場合は、「管理監督者」に含めることができる。a� 支店長等に直属し、部下を指揮監督すること 支店長等に直属し、支店長代理、支店課長等を指揮監督する権限を有することが必要である。b� 通常支店等の業務を総括し、かつ、その者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有すること 支店長等を補佐し、通常業務として支店の業務を総括していることが必要である。 また、支店長等に事故あるときは、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有している必要がある。c� ①、②、④と同格以上に位置づけられている者であること

 本部の部長、課長等または支店長等と同格以上に位置づけられていることが必要である。 副支店長、支店次長に関し、「同格以上に位置づけられている者」の意味について、図に基づいて説明すれば、以下のようになる(大規模支店の部長、課長等の区分の考え方については、下図の次長Aと同様に考えればよい。)。 支店次長の例は、同一事業場にA例とB例が存在するのでなく、次長についてAのような格付けになっている支店とBのような格付けになっている支店との違いを明らかにするためのものである。 ポストに対応する資格に幅がある場合、「同格以上」とは、そのポストの下限が同格であることが必要である。 次長Aは、「管理監督者」に該当すると

参事1級

参事2級

参事3級

主事1級

主事2級

主事3級

主事補

主事心得

資 格

本 部 支 店

部長 課長 支店長 次長A 次長B 課長次長(副部長)

※ 上図における「資格」の設定は、仮のものである。※ 上図においては、波線の内側が「管理監督者」に該当することになる。

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される本部課長と資格の下限が同じであるところから、同格とみなされる。 これに対し、次長Bは、資格の下限が本部課長より下になっているので、同格とはみなされず、「管理監督者」には該当しないこととなる。 主事1級の資格を持った者が支店次長Bになった場合は、同格とみてもいいのではないかということも考えられるが、そういう考え方はとられていない。主事1級資格を持った者がなったとしても、組織構成上、次長Bの権限、責任は、次長Aよりワンランク低いものであるのが通常であろうということも理由の1つとして考えられる。⑦ その他 支店次長等支店長の直近下位の職制管理者については、その職位にあるからといって、支店長等の職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有するものとして取扱うものではなく、その代行、代決の権限が明らかなものに限られる。したがって、本来なら次長制を必要としないような規模の支店等に名目上の次長を置いたり、形式的に複数の次長を置く等、実質を伴わない補佐役は含まれない(関連事項につき後述)。

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

 1で説明した「金融機関における管理監督者の範囲」に関する通達(昭和52年2月28 日付け基発第 105 号)が出されたあと、いろいろな質問が寄せられた。また、地方労働基準局(現労働局)、労働基準監督署が開催した説明会等においても多くの質問

が出された。 これらの質問に対する当時の回答の中には、本稿においてほとんど触れていない事項に関するものがあるので、以下、若干紹介しておく。

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

 「基発第 105 号」は、「支店、事務所等出先機関の長(支店長、事務所長等)」は、原則として「管理監督者」に該当するとしつつ、「ただし、法の適用単位と認められないような小規模出先機関の長は除外される。」としている。 小規模の事業場の一般的取扱いについては、

 出張所、支所等で規模が著しく小さく、組織的関連ないし事務能力等を勘案して1の事業という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して1の事業として取り扱うこと(昭和22・9・13 発基第17号、昭和23・3・31 基発第511号、昭和33・2・13 基発第90号、昭和63・3・14 基発第 150 号、平成 11・3・31 基発第 168号)

という通達がある。 それでは、金融機関はどの程度のものが独立性を有するかということについては、金融機関が、

① 預金の受入② 金銭の貸付または手形の割引

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③ 為替取引

の3業務を行うものであることから、これらの業務を行っている限り、たとえ名称が営業所、出張所等であっても独立性を認めることとした。 もっとも、例えば、団地等に設けられた出張所のように単に預金の受払のみを行う出先機関については、上部機構である支店の業務の一部を取り扱っているに過ぎないことから、独立性がないものとして取り扱うことにした。

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

 副支店長、支店次長が「管理監督者」として認められるためには、

①� 支店長等に直属し、部下を指揮監督すること②� 通常支店等の業務を総括し、かつ、その者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有すること③� 本部の部課長等または支店長等と同格以上に位置づけられている者であること

という要件を満たすことが必要であるが、そのうち、「支店長業務の代行または代決権」について、「事故あるときは代行、代決権を付与することでよいか」ということについては、・ 通常、支店業務を総括し、かつ、・� 支店長事故ある時にその職務の全部ま

たは相当部分を代行、代決する権限を付与された者に限って、「管理監督者」と認めることとしているところから、つねづね支店業務全般を総括する立場にあることが必要であり、「事故あるときのみの代行、代決権」では足りないとした。

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

 「基発第105号」の注書きの⑵に「本来なら次長制を必要としないような規模の支店等に名目上の次長を置いたり、形式的に複数の次長を置く等、実質を伴わない補佐役は含まれないものである。」という記述があるが、その「本来なら次長制を必要としないような規模の支店とはどの程度の規模か」という点が問題となる。 これについては、一概に規模何人以下というような線を引くことは困難であり、その支店の業務の実態等を勘案してその必要性を判断すべきであるが、たとえば、支店の規模が10人とか15人の規模で支店長が支店全体の業務や人事、労務管理について十分把握できるようなものは、少なくとも次長制を必要としないと考えられるとした。 つまり、10人~15人程度であれば、管理監督者として扱われるような次長がいなくても、支店長で業務や人事の管理ができると考えたのであろう。もし、そのようなところに次長が配置され、これが「管理監督者」として取り扱われるとすれば、従業員5人~7人に対し「管理監督者」1人ということになる。それでは「管理監督者」が多すぎると考えたものと思われる。

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解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語 §12

解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語解釈例規物語§12

⑴ 本部の組織の長

⑵ 支店等出先機関における組織の長

⑴ 「法の適用単位と認められないような小規模出先機関」とは

⑵ 副支店長、支店次長の職務代行、代決権

⑶ 本来なら次長制を必要としないような規模の支店とは

⑷ 「管理監督者」は労働者の何%が適当か

2 「金融機関における管理監督者の範囲」についての質疑応答

1 都市銀行等以外の金融機関における管理監督者の範囲に関する通達の具体的判断

 金融機関における管理監督者の範囲(都市銀行等以外の場合)

ⅣⅣ

 第9回でその一部を紹介した倉橋監督課長の昭和52年の論文中には、

 昭和30年代後半頃から役付者の範囲が拡大されてきて、極端なところでは全従業員の30%が役付者となり、女子従業員を除くと、男子はほとんどなんらかの肩書を持っているという企業もみられるようになった。

とある。 また、第10回(本誌平成21年7月21日付号)で参考判例として掲載した静岡銀行事件における静岡地裁判決(昭和53・3・28判決)においても、

 なお、付言するに、被告銀行には、昭和50年8月1日現在で用務行員を除いた一般男子行員が2746名在職し、うち支店長代理以上の地位に格付けされている者が1090名存在するので、仮に支店長代理以上の者が全て労基法第41条第2号の管理監督者に当たるとすれば、被告銀行の一般男子行員の約 40 パーセントの者が、労基法の労働時間・休憩・休日に関する規定の保護を受けなくなってしまうという、全く非常識な結果となるであろう。

といっており、男子の30%、40%という役付者の割合は論外であるという認識が窺える。 「105号通達」発出後の質問にも「管理監督者の全労働者に占める割合は何%ぐらい

が適当か」といった質問は多く、行政は次のように答えている。

 管理監督者の範囲は、その職務の内容、責任と権限、勤務態様等に基づき判断すべきものであってその割合は何%が適当であるとは一概にはいえないが、105 号通達を厳格に適用するならば、地銀、相銀については、その割合が少なくとも2桁台になることはないと考えている。

 つまり、昭和52年当時、地方銀行、相互銀行における「管理監督者」の従業員に占める割合について、行政は「ほぼ10%程度を上限とする」という考え方で臨んでいたことがわかる。「10%が上限」ということは、おおざっぱにいえば部下10人程度ということになる。 金融機関の組織構成は、当時と比べある程度の変化はみられるが、全く様変わりしているというほどでもないと思われる。 また、昭和52年に出された「金融機関における管理監督者の範囲に関する通達」は、現実には当てはめについて若干の調整が必要であろうが、現在有効な通達として機能している通達である。 ということは、金融機関でなくても、各企業において、昭和52年当時の金融機関と現在の自社の事業内容、組織構成、管理監督者の権限等を比較考量し、自社においてはどの程度の比率が妥当であるか検討してみるのも1つの有効な方法ではなかろうか。 ただ、割合というのも、あくまで参考事項の1つに過ぎず(「基本通達」にはその点に関する記述はない。)、主としては、職

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務内容、責任と権限、勤務態様、待遇等を勘案の上判断されることとなる。

 さて、5回にわたり「管理監督者」の範囲に関する「基本通達」を中心に検討してきた。 基発第 105 号と同日付けで「労働基準法第41条第2号の「監督又は管理の地位にある者」の取扱い範囲について」と題する通達(基発第 104 号の2、内容は都市銀行等における管理監督者の範囲に関するもの)が出されているが、これに関する解説は省略する。 また、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(平成 20・9・9 基発第0909001 号)の通達は発出されたばかりであり、現時点で「解釈例規物語」に取り入れる必要はないと思われる。 他にも多くの解釈例規が存在するところから、「管理監督者」に関する通達の検討はこれをもって終了することとする。

 なお、「管理監督者」に関する裁判例は、40件を超えている。 筆者の知る範囲では、そのうち6件が「管理監督者性」を認めている(2件については、第10回で紹介した。)。これら裁判例の検討も「管理監督者」の範囲を考えるに当たっては欠かせないものであるが、本稿は解釈例規の検討が主眼であり、裁判例を紹介するコーナーではないので、やめにする。もし興味があれば拙著をお読みいただきたい。…………………………………………………●中川恒彦(なかがわ・つねひこ) 昭和43年労働基準監督官任官。労働省労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、同賃金課主任中央賃金指導官、滋賀労働基準局長などを歴任。平成10年6月退職。主な著書・「残業手当のいらない管理職」(労働法令協会)・「賃金の法律知識」(労働法令協会)・「派遣受入企業のための労働者派遣法の実務解説」(労働法令協会)

《余論傍論》

 「都市銀行等における管理監督者の範囲に関する通達」の説明は省略することにしたが、

一点だけ付言しておく。

 「都市銀行等における管理監督者の範囲に関する通達」と「都市銀行等以外の金融機関

における管理監督者の範囲に関する通達」は、同日付けで出されているが、前者が、職

名を指定しただけに等しい程度に極めて明確に管理監督者該当の有無を判断しているの

に対し、後者は少々慎重な表現になっている。

 これは、都市銀行等はいずれも大規模の企業で組織体制も似通っているのに対し、そ

の他の金融機関のほうは、大は都市銀行に匹敵する地方銀行から、小は総員合計しても

数10人といった信用組合も含まれることから、単純な割切りが困難であったためである。