間の静電的な相互作用を学び、4...

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6 これま 3 ( 確に ) を学び、4 たらす ( による「 ) が、 るこ した。また、5 学によって めて される () を学んだ。 に、 スピンが 割を たしている た。 げる。 りに して ( ) している。Hobza 、そ review ように している [1]The most recent definition is that it describes an attraction between two species (atoms, groups, molecules) in a structual arragement where a hydrogen atom, covalently bound to more electronegative atoms of one species, is non-covalently bound to a place with excess of electrons of the other species. して あるい びついている。 しており、他 した 位している。】 いかえる をしている をしており、一 、そ をしている (あるい ) している」 きる。 、こ ように を拡 けれ いけ が、 されている。 一つ 、π ある。 π OH(XH) 位している くから によって されていたが、 によって めて確 されている。また、 するこ によって、OH まる (OH エネルギー に移 する) られるように っている。 に引 した Hobza ”Blue-Shifting Hydrogen Bonds”する review かれていた から ってき ている。さらに、 核を ( している OH(FH) している。[2] を以 げる R a -O-H ··· O-R b R c (H 2 O) 2 R a -O-H ··· O=R b (H 2 O)··· O=CH 2 R a -O-H ··· N-R b R c R a R b -N-H··· O-R b R c F-H··· O-R b R c 116

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Page 1: 間の静電的な相互作用を学び、4 章では、共有結home.n08.itscom.net/iwatasue/lecture_note/chapt6.pdf割できる。図4-7 のapvdz(aug-cc-pVDZ) の場合次の表のようになる(ALEx

6 水素結合

これまで、3章では分子の電子分布 (正確には、分子の電荷分布)間の静電的な相互作用を学び、4章では、共有結

合の安定化をもたらす分子積分 (原子価結合法の定義による「交換積分」)が、同時に閉殻系間では「交換反発」の主

要項となることを示した。また、5章では量子力学によって始めて説明される遠距離 (引力)相互作用を学んだ。特に、

「共有結合」と「交換反発」では、電子のスピンが本質的に重要な役割を果たしているのを見た。本章では、水素結

合を取り上げる。水素結合は、名前の通りに水素原子を介して二つの分子 (原子、原子集団)が結合している。Hobza

は、その reviewで水素結合を次のように定義している [1]。

The most recent definition is that it describes an attraction between two species (atoms, groups,

molecules) in a structual arragement where a hydrogen atom, covalently bound to more electronegative

atoms of one species, is non-covalently bound to a place with excess of electrons of the other species.

【水素結合では、水素原子を通して二つの原子、原子群あるいは分子間が結びついている。水素原子

は一方に共有結合で結合しており、他方上の負に荷電した原子と非共有結合的に配位している。】

少し言いかえると、水素結合では「水素結合をしている水素は、水素供与体の隣の原子と共有結合をしており、一

方、その水素と相互作用をしている水素受容体の原子 (あるいは原子集団)は共有結合的に飽和している」とも表現で

きる。近年には、このように定義を拡張しなければいけない例が、実験的にも量子化学計算でも、見出されている。

その一つの例は、π水素結合である。共役π電子に OH(XH)が配位している水素結合系は比較的古くから有機化学

者によって指摘されていたが、最近の高精度量子化学計算によって改めて確認されている。また、水素結合すること

によって、OH結合が強まる (OH伸縮振動が高エネルギー側に移動する)結合も知られるようになっている。上に引

用した Hobzaの定義は、”Blue-Shifting Hydrogen Bonds”に関する reviewの冒頭に書かれていたものから取ってき

ている。さらに、岩田等は、中心に原子核を持たない電子雲 (余剰電子)と結合しているOH(FH)を電子-水素結合

と呼ぶことを提唱している。[2]

典型的な水素結合の例を以下に挙げる

• Ra-O-H · · ·O-RbRc

例 (H2O)2

• Ra-O-H · · ·O=Rb

例 (H2O)· · ·O=CH2

• Ra-O-H · · ·N-RbRc

• RaRb-N-H· · ·O-RbRc

• F-H· · ·O-RbRc

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• (H3N-H)+ · · ·O-RbRc

• Ra-O-H · · ·Cl− (イオン水素結合と呼ぶ場合もある)

水素結合は、分子間だけでなく、一つの分子の中でも共有結合では直接につながっていない基間にも見出され、分子

の立体配座を決める重要な因子となっている。水素結合は分子や分子の集合体の構造を決めるのに重要な因子となっ

ているので、分子や分子集合体の化学的物理的性質に影響を与える。この性質を使って、特定な性質をもつ物質設計

が行われている。水素結合は分子・分子集合体全体のみならず、水素結合をしている局所的な性質、特に分光学的な

性質に直接的な影響を与える。振動スペクトルはその中でも最も広く活用されてきた。特に、この 10年余の間に、量

子化学計算による調和振動数計算に対する信頼が、実験研究家の中に (過度な信頼とも言えるほど)高まったことによ

り、振動スペクトルはいっそう水素結合を含む系の研究に活用されるようになった。NMRの化学シフトにも水素結

合は大きな影響を与えるが、量子化学計算との対応は、それほど系統的には報告されていないようである。水素結合

は電子スペクトルにも影響を与える。昔から水素結合形成によって、n− π∗遷移が高エネルギー側に移動して、近紫

外部の吸収スペクトルが消える現象が知られている。π − π∗はその影響をあまり受けないこともあって、溶媒分子と

の水素結合形成によって、最低励起状態やそれに近接する 3重項状態の電子状態の順位が入れ替わり、発光スペクト

ルや光化学反応に大きな変化もたらすことが知られている [3]。

水素結合形成によって、新しい電子的励起状態が出現するか、そしてその状態への電子遷移が観測可能かどうかと

いうことは、水素結合の「原因」を研究する上でも、重要な課題であった [3]。 現代的な実験的理論的手法によるこ

の課題の再訪が必要である。

水素結合は、静電相互作用と「広い意味の」誘起相互作用 (遠距離引力)だけによって形成されているのか、「共有

結合的」性質を持つ「電荷移動電子の非局在」も結合に寄与しているのか?という疑問についても、長い歴史がある。

いわゆる「エネルギー分割」法によっての多くの報告もある。ここでは、詳論を避けるが、1 4章 6節で紹介した LP

MO法において、厳密に電子の非局在を含まない計算では、どんな大きな関数を用いても、水素結合エネルギーを過

小評価することが示すように、電子の非局在 (電荷移動)が水素結合エネルギーに一定の寄与をしていることは明ら

かである。図 4-7で、LP-SCFの曲線と SPTの曲線の差は、すべて電荷移動項からの寄与と見なすことが出来る。摂

動計算 (SPT)では、局在励起からの寄与、水素供与体から受容体への電子移動、水素受容体から供与体への寄与に分

割できる。図 4-7の apvdz(aug-cc-pVDZ)の場合次の表のようになる (ALEx MO)。LP SCFによる結合エネルギー

は-11.28kJ mol−1 であるので、電荷移動項からの寄与の総和は-3.23kJ mol−1 を加えると-14.51となり、CP補正結

合エネルギーは-14.77kJ mol−1 に近くなる。電荷移動項の割合は 22%となる。この計算では、励起軌道も完全に局

在しているので、「純粋に」電荷移動項を見積もっている。図 4-7を丁寧に見ると、このように「厳密」に電荷移動項

1「エネルギー分割」の問題点は、それが、参照関数の取り方に著しく依存していることにある。1電子基底関数の質だけでなく、多電子関数の質にも依存する。さらに、相互作用エネルギーを計算するための展開関数 (摂動関数)をどのように構築するかにも依存する。個人的には、あまり深入りしたくない課題ではある。しかし、分子間相互作用の概念を理解する上では、非常に重要である。

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を定義しても、この項からの寄与は、基底関数に依存していることが分かる。図 4-10a、bと図 4-11に示したように、

イオン-水素結合では、電荷移動項はより重要な役割を演じている。

摂動次数 水素供与体から受容体 水素受容体から供与体 局在励起

/kJ mol−1 /kJ mol−1 /kJ mol−1

2次 -0.18 -2.55 0.00

3次 0.00 -0.42 0.00

4次 0.00 -0.08 0.00

6.1 水 2量体と 3量体

水分子の 2量体は、水素結合系を研究する上で最も基本的な系と言える。量子化学計算の歴史の上でも重要な役割

を果たしている。水を溶媒とするシミュレーションに用いるためには、不可欠であるので、対ポテンシャルエネルギー

関数の構築も古くから報告されている [4]。水 2量体を含む、小さい水分子クラスターについては、Saykallyのグルー

プによって、詳細な振動-回転-トンネル (vibration-rotation-tunnelling, VRT)分光が報告されている。[6],[5],[10]

特に、2量体と 3量体の VRT分光によって、クラスター内の分子運動の詳細が解明され、さらに、水分子間相互作

用ポテンシャルの精密化も進んでいる。実験で観測されたスペクトルを再現するポテンシャルエネルギー面の決定に

まで進んでいる。

図 6-1は、水 2量体の構造とその構造を決める 6個の因子を示している。この構造には、水素原子に番号を振ると、

8個の等価な構造が存在する。図 6-2で、酸素 aを水素受容体とする構造は、第 1行の左端と右端の構造およびそれ

らの 3と 4を交換した構造の 4個であり、酸素 bを水素受容体とした対応する 4構造が可能であるので計 8個とな

る。これらの等価な構造は、三つの遷移構造 (峠)で結ばれている。峠を通るポテンシャルエネルギー曲線は、2重

極小 (double minimum)となっていて、それに対応して量子準位はトンネル分裂している。Saykally等は、このトン

ネル分裂を直接観測しているのである。その結果、ポテンシャルエネルギー関数の詳細を「実験的に」決定すること

ができた2。

2「実験的」と「 」をつけたのは、理論計算との共同研究が不可欠であったからである。振動-回転-トンネル運動 VRT(6個の分子内座標と 6個の分子間座標)に対する 12Dシュレディンガー方程式を「解いて」、VRTの量子準位を求め、遷移エネルギーを計算し、実験スペクトルと比較することによって、相互作用エネルギー関数を決めている。

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図 6-1 水 2量体の構造因子 [5]

図 6-2 は、等価な構造間の移動の三経路を示している。Acceptor switching(AS) では、水素 3 を受容している

側の水分子 (a-1,2) の向きが変わり、同時にもう一方の水分子 b が a-b 軸に回転する (構造 1 から構造 2)。Inter-

change(I)では、水素受容体が取り変わる (構造 1から構造 3)。この運動のポテンシャルエネルギー障壁はかなり低い。

図 6-2 異性化 (トンネル)経路 [6] 図 6-3 6個の分子間振動モード [6]

Bifurcation(BT)と呼ばれている経路では、水素供与分子の中で水素結合をしている水素原子が取り変わる (構造 1

から構造 4)。同時に水素受容分子の向きも変わる。図 6-3に図示した分子間振動モードの基準座標と、トンネル運動

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の経路を比較すると、トンネル経路は複数の基準座標の組み合わせとなっていることが判る。これらのトンネル運動

によって、振動-回転の基底量子準位は図 6-4のように分裂する。J = 0、 Ka = 0の準位に着目すると、まず、AS

トンネルによって 580GHzの分裂が起き、ついで、Iトンネルによって 4準位 (内一組は縮重しているので 3本の線が

Fig6-4では書かれている)に分裂する。bifurcationトンネルは障壁が高く準位を移動させるのみで新たな分裂を引き

起こさない。実際の解析では、H原子核は核スピン 1/2、D原子核は核スピン 1を持つことに由来する各量子準位の

核スピンによって遷移の選択律に制限が加わり、スピン重率も適切に考慮しなければならない。スペクトルの解析は

簡単ではないが、きれいな解析が報告されている。図には、Leforestier、Gtti、Fellers、Saykallyによって決められ

たポテンシャル関数から計算された分裂の値も挿入した。この論文では、12次元の振動シュレディンガー方程式を解

いて、実験スペクトルと比較することによって相互作用ポテンシャルを決定している。その際、基礎とした関数形は

MCY(Matsuoka-Clementi-Yoshimine)の関数形

VMCY =different mol∑charged site

qiqj

Rij+ AOO exp(−βOOROO) + AHH

∑i=1,2 j=3,4

exp(−βHHRHiHj )

+ AOH

∑i=1,2

exp(−βOHRObHi) + AOH

∑i=3,4

exp(−βOHROaHi)

− A′OH

∑i=1,2

exp(−β′OHRObHi) − A′

OH

∑i=3,4

exp(−β′OHROaHi) (1)

である (VRT-MYCと呼ばれている)。電荷 qiは、酸素原子核上に−2q、水素核上に+qとする簡単なモデルであり、

全部で9個のパラメーターを持っている。Leforestier等は、この関数形の 9個のパラメータを二通りの方法で決めて

いる。 VMCYの中には、分子内座標 qA, qB が間接的に入っている。MCY-5rでは、qAeq, q

Beq を平衡核配置に固定して

VMCY を計算してパラメータを決定し、一方MCY-5fでは、12次元の問題を解くときに、VMCY の中の qA, qB も変

化させている。図 6-4の挿入表から明らかなように、MCY-5fにおいて著しい改善が見られている。SAPTもかなり

よい結果を与えているのは、注目に値する。

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図 6-4 水 2量体の回転-トンネル準位 [6]

実験のスペクトルと高精度理論計算から、解析的なポテンシャルエネルギー関数を求める試みは現在でも進められ

ている [7]。図 6-4のスペクトルをVRT-YMC並に再現する polarizable ポテンシャル関数を得ている。第 2ビリアル

係数に対しては、この関数を含むこれまでの polarizable関数でも 700K以下では過大評価気味である。水分子の変形

が十分に取り込まれていないためであろうと議論している。

3量体でも、等価な構造間のトンネル経路が多数ある。図 6-5において、異性体を区別する uudという記号は、3

個の酸素原子が作る平面に、水素結合をしていない水素が上を向いているか (u)下を向いているか (d)を区別してい

る。経路 a)は tortional (ring) puckeringであり、水素結合を切らないのでその障壁は低い。この運動に伴う量子準位

についてWalesが 3回対称性を持つ系の擬回転との類似によって解析方法を提案している [8]。 経路 b)は、2量体の

時の bifurcationに対応している構造を経て、水素結合している水素原子が取り変わる。この時、水素を授与する側

の水分子の Hは、ほぼ三つの Oの作る平面上にある (p)。この経路の障壁の値は、2量体の bifurcationと同程度の

値となる。モデルポテンシャル関数や量子化学計算による値の例を表 6-1にまとめておいた。この reviewの段階で

は、MCY-5fを使った値は報告されていない。2004年 9月のGordon会議で、Saykallyは 2量体の関数を基に、3量

体のスペクトルを再現する polarizableモデルポテンシャルを作り、さらにその関数を使って、多量体や液体のシミュ

レーションを報告していた3。3岩田のメモによると、ASPW-IIIと称しているので、ASPWの関数形を使っているのであろう。ASPWは多くの関

数とパラメータを含んでおり、MYC関数形より非常に複雑である。少なくとも J. Chem. Phys.には、まだその論文は発表されていない。(2006年 Jan.12)

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図 6-5 3量体のトンネル経路 [5]

表 6-1 3量体の異性体エネルギー差 [5]

Saykally等はさらに 5量体の研究も報告している。この場合も 3量体の場合の a)と b)に対応して、図 6-6と図 6-7

の運動がある。図 6-5 a)と図 6-6の運動 (水素結合が切れずに、tortional puckering)で、水素結合していない水素原子

(dangling hydrogenという)の向きだけが変わる運動によって、図 6-7のような 6員環と 10員環の運動による量子準位

は、Huckel 行列に類似のモデルハミルトニアンで記述でき、[8],[9] 量子準位は図6-8のように分裂する。観測された

スペクトルは、この量子準位構造によって解析され、ポテンシャル障壁が見積もられている。Bifurcationによるトンネ

ル分裂も観測されており、表 6-2にその障壁を比較した。5量体の障壁が 3量体の障壁より高いのは、5量体では、bifur-

cationが tortional puckeringも伴っているためのようである。図 6-6 5量体の puckering運動 [10]

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図 6-7 3量体と 5量体における bifurcation運動の比較 [10]

図 6-8 3量体と 5量体のエネルギー (bifurcation トンネル)図 [10]

表 6-2 3量体と 5量体の bifurcation barrierとそれによるトンネル分裂 [10]

水 2量体は、大気中にも存在し、均一系における水滴成長の初期過程、HO2生成反応、SO3から H2SO4が作られ

る反応における触媒的役割に寄与している可能性が指摘されている。また、太陽光の大気による吸収量のシミュレー

ションが観測データ一と致しない原因の一つとしても議論されている。2003年、大気の可視部スペクトルによって、

直接観測された。[11] 図 6-9 に示すように、観測された波長領域は、690-760nm、観測された遷移は OHの 4倍音

(Local modeの記述で、|2⟩f |2⟩b、|3, 1⟩、|3⟩f |1⟩b、|1⟩f |3⟩b、|4⟩f |0⟩b、|4, 0⟩±)と帰属されている。吸収強度から、

濃度が見積もられ、20◦Cの飽和条件で∼ 6× 1014cm−3、単量体に対する比は、数 10−3と報告されている。また、水

分子がさらに一つ付くあたりおよそ 10−3 濃度が減少するという見積もりもあり、n ≤ 6 の水クラスターが大気内の

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諸過程に寄与する可能性があると指摘されている。

図 6-9 大気で観測された水 2量体の振動スペクトルとその帰属 (OH伸縮の 4倍音領域)[11]

6.2 (H2O)n の構造と振動スペクトル

中性水クラスターの構造計算については、非常に多くの研究がある。MO法、DFT法による計算に限っても、近

年 nの値はどんどん大きくなっている。水素結合、特に、水分子間の水素結合には、多体的な項が大きい。Xantheas

は、n = 6までについて丁寧に多体項を解析している [12]。図 6-10は、n = 6までの主要な異性体の相対エネルギー

を図示している。( )の中の数字は、3体項の寄与を kcal/molで記している。n = 3, 4, 5では、3体力が異性体間のエ

ネルギー差を決めていることが判る。Xantheasの多体相互作用エネルギーの定義は、5章 5節の定義と一致してい

る。n = 6になると、むしろ 2体力が cageや prismのような 3次元ネットワーク構造をより安定にしていることが、

表 6-4から判る。prism異性体は (da, dda, dda, dda, da, da)、cage異性体は (da, daa, dda, da, dda, da)の構造と

なっており、表 6-4は、dda、daa構造があると 2体項が大きくなることを示している。また、ddや aaだけでは、2

体項は大きくなるが、3体項が不安定に寄与することも読み取れる。

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図 6-10 異性体間のエネルギー差。( )の中の数字は 3体項の寄与。[12]

表 6-3 相互作用エネルギーに対する 2体 3体 4体項からの寄与。[12]

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図 6-11 分子線中およびヘリウム液滴中の水クラスターの振動スペクトル [13]

中性のクラスター (H2O)nの振動スペクトルは、Saykallyグループ以外からの報告も多い。ここでは、He液滴中に閉

じこめられた水クラスターの振動スペクトルとその解析を紹介する [13]。この実験では、(H2O)n−1+(H2O)→(H2O)n

とクラスターが成長していると考えられている。図 6-11では、通常の分子線中の水クラスターのスペクトルと、He

液滴中のスペクトルが比較されている。後者のスペクトルでは、線幅が前者より狭いのに加えて、n = 6と帰属され

ている 3335cm−1が顕著である。量子化学計算やこれまでの実験から 3、4、5量体は、水素結合ネットワークは環状

に形成しているが (図 6-10, 表 6-4参照)、6量体では、上記のように cage、prismと呼ばれている 3次元的にネット

ワークが成長した構造がより安定である。n = 5に帰属できる 3353cm−1(普通の分子線では 3360)のわずか 18cm−1

低波数に観測される吸収帯を環状 6量体と帰属すると、(H2O)5[cyclic]+(H2O)→(H2O)6[cyclic]という生成過程が極

低温の He液滴中で進行していることになる。

Xantheas等は、(H2O)n−1[cyclic]+(H2O)→(H2O)n[cyclic]という過程が、極低温で進行し得るか(反応エネルギー

障壁がないか、著しく低いか)を確かめるために、簡単なシミュレーションを行っている [13]。ポテンシャルエネ

ルギー関数として、彼らが決めた TTM2-F という分極項を含むものを用い、(H2O)n−1[cyclic] から 20A 離れたと

ころに H2Oを置き、単純な構造最適化を実行し、落ち着く構造を決めている。1000個の初期構造を試した結果到

着した構造が図 6-12 で、L1, L2, L3、、、と記されている。図の下の% は到着した確率である。n = 3 → n = 4

と n = 4 → n = 5 では、エネルギー障壁なしに環状ネットワークが構成されることが判る。彼らの予想に反し

て、n = 5 → n = 6では、環状 6量体に達することはできなかった。どのような機構で、環状 6量体が成長し観測

にかかったのかは、この論文では不明であるとされている。量子力学的トンネル効果の可能性があるように思える。

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表 6-4 図 6-11の吸収帯と計算の比較 [13]

表 6-5 各種の polarizable 解析的ポテンシャル関数による結合

エネルギーとMP2/CBSによる結合エネルギーの比較 [13]

図 6-12 「反応」生成物。シミュレーションの仕方は本文参照。[13]

6.3 H+(H2O)n の構造と振動スペクトル

強い水素結合ネットワークによって構成されるイオンクラスターの例として、最近報告されたヒドロニウム (オキソ

ニウム)水クラスターH+(H2O)nの研究を紹介する。宮崎、藤井、江幡、三上による論文(図 6-13, 6-14)と、Johnson、

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Duncan、Jordanの 3グループによる共著論文 (図 6-15, 6-16)が Scienceに同時に出版された。[14],[15] n = 1はヒ

ドロニウムイオン(オキソニウムイオン)H3O+である。n = 2では、(H2O)H+(OH2)のように、対称な水素結合系

を形成している。n>2のクラスターのイオン中心がH3O+である (Eigen)か、(H2O)H+(OH2)である (Zundel)か議

論されてきたが、現在では nが大きくなるにつれて Eigen系がより安定になることが知られている。もちろん、動的

な観点からは、クラスターが内部エネルギーをもっている時には、プロトン移動が頻繁に起き、イオン中心はクラス

ター内を激しく動いていると予想される。H+(H2O)nクラスターは、強い水素結合のネットワークによって構成され

ている。Scienceの二つの論文は、質量選別したクラスターの赤外吸収を測定し、その解析から、水素結合ネットワー

クが、nとともにどう成長していくかを調べている。彼らが着目しているのは、水素結合をしていないOH(dangling

OH、f)の振動帯 (3600cm−1より高波数領域)の変化である。水素結合をしたOHの伸縮振動は、より低波数領域に

あり、多くの場合幅広い吸収帯となっている (図 6-15の Aを参照)。

図 6-13(左)と 6-14(右) 水素結合をしていない (dangling)OHの振動領域の n依存性と、推定されている構造 [14]

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図 6-15 赤外スペクトルに相当する解離励起スペクトルのサイズ依存 [15]

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図 6-16 n=20, 21のスペクトルの比較と推定構造 [15]

6.4 変則的、青方移動水素結合 (Improper、blue-shifting hydrogen bond)

水素結合の一つの特徴は、結合の形成によって、X-H伸縮振動が低エネルギーに移動 (赤方移動、red shift)し、X-H

結合距離が長くなることである。ところが、逆にX-H伸縮振動が高エネルギーに移動 (青方移動、blue shift)する例が

報告されている [1]。理論的研究が多いが、実験的な証拠も見出され始めている。水素供与体がYC-H (Y=F, Cl, Br)

の場合がほとんどであることが、この種の水素結合系の特徴である。例えば、Cl− · · ·H3CBrやH2O· · ·HCF3がその

例である。表 6-6では、3組の水素結合系の構造変化と振動数変化を示している。一方の系は、通常の水素結合系で

ある。∆p(dimer)は、結合因子 (距離、角度)のmonomerからの変化量 (MP2/SDD**)、∆p(qdimerMK )と∆p(qmonomer

MK )

は、水素受容体に対して静電荷分布のみを仮定して、水素供与体の構造を最適化した場合の変化量である。正の値は結

合が伸びたことを示している。qdimerMK と qmonomer

MK の違いは、電荷分布を計算する (Merz-Kollmanの fitting法という

のを用いている)波動関数の違いである。∆p(qdimerMK )と∆p(qmonomer

MK )の差は、いずれの場合でも小さい。∆p(dimer)

と ∆p(qdimerMK )の差が、電子の非局在化(電子分布移動、Electron Density Transfer EDT)による構造の変化といえ

る。通常の水素結合でも変則的水素結合でも、電子の非局在の効果が有意である。ただし、NBO解析による電子移

動量 (EDT)とは必ずしも強い相関を保っているわけではない。変則的水素結合の構造因子の変化で顕著なのは、水

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素結合に参加しているX-H結合が短くなり (負になり)、振動数変化が正 (青方移動)となる一方、水素結合には直接

に関与していない C-F, C-Br結合が長くなっている。実際、実験的観測がある (CH3)2O· · ·HCF3では、図 6-17に示

すように、CH振動は高波数に移動し、CF振動は低波数に移動すると共に強度が著しく増えている。水素受容体の

振動も低波数に移動しているのが顕著である。

表 6-6 青色移動水素結合の例 [16]

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図 6-17 (CH3)2O· · ·HCF3 の赤外吸収スペクトル [17]

Hobzaらは、変則的な水素結合の原因を、2段階モデルで説明している [1]。水素受容体の孤立軌道から水素原子

供与体のハロゲン原子の「孤立軌道」への電子移動と、それによってもたらされる 2次的構造変化と説明している

ようである (The charge transfer from the lone pairs of the electron donor is mainly directed to the lone electron

pairs or antibonding orbitals in the remote (nonparticipating) part of the complex, which causes the elongation of

bond(s) in that part of the complex. This primary effect is accompanied by the secondary effect of the structural

reorganization of the proton donor, resulting in the contraction of the X–H bond and the blue shift of the X–H

stretch frequency)。「軌道相互作用」をきちんと勉強しているならば、このような文章を書くことはできない。被占

軌道と被占軌道の相互作用では、系は安定化しない。電子を受け取るとされるハロゲンの孤立軌道は 2重に被占され

ているので、電子を受け取ることができない。

Cl− · · ·H3CBr の場合が理解しやすい。H3CBr の LUMO(最低空軌道)の主要な性質は σ(CBr)∗ であり (節目が

C-Br間にある)、軌道係数の重みは C側に偏っている。この LUMOは、部分的にC-H間にも分布しているが、C-H3

間には節目がない (なぜかというと、H3をひとまとめに考えると、C-Br間にもC-H3間にも節目がある軌道はより不

安定であるから)。従って、LUMOへの電子移動は、C-Brを弱め、C-Hを強めると考えられる。次章で扱う電荷移

動理論の簡単な応用(HOMO-LUMO相互作用)で、変則的水素結合は説明することができる。この考え方は、「水

素供与体をH-X-Yと書くと、LUMOがX-Yの反結合性でかつH-Xには結合的であるとき、水素結合形成によって、

H-X結合は短くなり調和振動数は高く (blue shift)なり、X-Y結合は長くなり調和振動数は低くなる」と一般化出来

る。Yが Xより電気陰性度が大きいと、X-Yの結合性被占軌道は Yの方に偏っている。その結果、X-Yの反結合性

空軌道は、X側に偏ってH-X方向の外側に拡がった軌道となる。この軌道と水素受容体のHOMOとが電荷移動相互

作用をしていると考えると、Blue-shifted水素結合は、何ら変則的な水素結合ではなくなる。

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6.5 相互作用エネルギーの近似的見積もり [18]とベンチマーク計算 [19][20]

相互作用エネルギーの計算では、計算基底関数依存性が大きい。分子軌道法に基づく理論計算では、基底関数依存

性がかなり規則的である。図 6-18には、Formamide-Formamide対に対して、MP2と CCSD(T)法による結合エネ

ルギーの基底関数依存性が調べられている。特に、MP2と CCSD(T)の差は小さい上に基底関数依存性は少ない。基

底関数依存性がなめらかであるので、各種「外挿法」が開発されていて、Complete Basis Set Limit (CBS)と称さ

れている。Hartree-Fockエネルギー EHFと電子相関エネルギー∆EcorrM ≡ EcorrMethod − EHFに対しては、外挿式

を適切に選択することが好ましい。Dunningらが決定した cardinal (主系列) basis setsと呼ばれている cc-pVxZ、

aug-cc-pVxZ (x = D,T,Q, 5, 6)[21]で一連の計算を行い、外挿する。

1) Helgakerの方法

EHF(x) = EHFCBS + A exp(−αx) (2)

∆EcorrM(x) = ∆ECorrMCBS + Bx−3 (3)

2) Truhlarの方法

EHF(x) = EHFCBS + Ax−α (4)

∆EcorrM(x) = ∆ECorrMCBS + Bx−β (5)

x は基底関数の中で最大の角運動量子数である。EHF と∆EcorrM と別の外挿式が用いられる理由は、理論的な解析

によって収束性の角運動量依存性がことなるからである。cc-pVxZのシリーズでは、x=Dでは x=2、x=T, Q, 5と

なるにつれ、xは 1づつ大きくなる。実用的な方法は、Helgakerの2点外挿式を使って aug-ccVDZと aug-ccVTZの

2点の計算から∆EcorrMを見積もる方法である。また、図 6-18の結果 (Formamide-Formamidine対)を参考にして、

CCSD(T)を見積もる方法として、

∆ECCSD(T)CBS = ∆EMP2

CBS +{

∆ECCSD(T)(x) − ∆EMP2(x)}

(6)

が提案されている。

3)Ruedenbergは、Helgakerの電子相関項の式にX−5を加え、3点外挿をつかって、Ar-Ar間のポテンシャル関数

を求めている [22]。

∆EcorrM(x) = ∆ECorrMCBS + Ax−3 + Bx−5

表 6-7では、Formamide-Formamide対と Formamidine-Formamidine対について基底関数と電子相関の効果が調べ

られている。aug関数は、SCFレベルの結合エネルギーに影響するだけでなく、電子相関項にも大きな影響を与えて

いる。ここでは、言及されていないが、また、BSSEを著しく減少させる効果がある。水素原子上には augを加えな

くてもよいことも確かめられている。

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図 6-18 Formamide(FA)と Formamidine(FI)対の水素結合エネルギー:基底関数依存 [18]

Phenol2量体は、回転構造が実験的に決定されている数少ないベンゼン環を持つ 2量体である。表 6-8に示されて

いるように、基底関数を TZVPP(文献があがっていないので正確な関数形は不明だが、triple zetaであることは確

か。RI-MP2は、MP2計算に必要な 2電子分子積分を Resolution of identity法によって近似計算していることを意

味している)にすることによって著しくよい一致が得られている。実験では回転定数しか決められないが、実験値と

計算値との一致から、計算で得られた図のような構造をしている (π − π相互作用のない)と言える。Hobzaは、こ

の reviewの中で、Counterpoise correctionを加えた構造最適化によって、実験値との一致がいっそうよくなると記

載している。

表 6-7 フォルムアミド 2量体とフォルマミディン 2量体の結合エネルギー [18]

N-H· · ·π水素結合が構造を決めているか、π − π相互作用が構造を決めているかを、理論計算だけで判断するのは

大変難しい。Hobzaは、Benzene-indole対の計算を報告している (表 6-9)。 aug-cc-pVDZと aug-cc-pVTZから見積

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もった CBS MP2エネルギーでは、π−π型がより安定であるが、CCSD(T)の補正(上記の式を使い 6-31G**基底関

数で見積もられた)と零点振動エネルギーからの寄与を加えると、安定性は逆転する。Hobzaの論調では、N-H· · ·π

水素結合が実際の最安定構造であるようになっているが、π − π相互作用に対する高次の電子相関項の研究は少ない

ので、理論計算だけでは、結論を急ぐことはできないと思う。しかし、N-H· · ·π水素結合がかなり大きな安定化をも

たらすという事実は、生体分子内の相互作用を考える意味で重要であろう。Hobzaらは、これら一連の研究から、核

酸の塩基対を含む簡単なモデル錯体に対するMP2と CCSD(T)法による CBS極限の相互作用エネルギーの S22とい

うデータベースを構築して、今後の新しい手法のベンチマークを提供している [19]。

表 6-8 フェノール 2量体の構造。分光学的に得られた回転定数との比較。[18]

表 6-9 インドールとベンゼンの錯体。水素結合系とπ型の錯体のどちらが安定か?[18]

S22の中の代表的な錯体について、LP MO摂動法を適用した。表 6-10にその結果を示す。分散項を加えたE3SPT+Disp

は基準となっている結合エネルギーとよく一致している。

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表 6-10 S22[19]の代表例に対する LP MO摂動法の適用 [23]。単位は kJ mol−1。

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