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放電表面処理 MSCoating ® 原理・特徴 電極 基材 皮膜 電源 加工液:油 微細なパルス放電 粉末を固めた 粉末成形体 MSCoating 肉盛溶接 曲面、コーナ部への 部分処理例 Ni Co C 10μm 皮膜断面の線分析の結果 1.ワーク全体は常温のままで処理を行うため、熱歪による基材の変形が少ない 2.基材と皮膜の界面で組成が徐々に変化し、密着性の高い皮膜形成が可能 3.マスキングなどの前処理なしでの部分処理、円筒内面などへの処理が可能 皮膜 Co 合金 基材 Ni合金 MSCoating では、粉末材料から構成された電極を使用し、放電加工油中で処理を行います。 電極と被処理材との間に微小なエネルギーのパルス放電を発生させ、そのエネルギーに よって溶けた電極の材料が、被処理材側の溶けた部分に移行し、皮膜を形成します。被処 理材側の溶融した部分の大きさは数10μm程度です。毎秒数千~1万回程度の微小な放電 の繰り返しのため、熱の集中はありません。 MSCoatingとは MSCoatingMicro Spark Coating)は、 微小なパルス放電の繰返しにより金属あるいは 導電性のセラミックスの皮膜を被処理材の表面 に形成する新しい表面処理技術です。 ※MSCoatingは三菱電機()()IHIが共同で 開発を行いました。 TiC皮膜 基材:SKD61 皮膜:TiC

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放電表面処理 MSCoating®

原理・特徴

電極

基材 皮膜

電源

加工液:油

微細なパルス放電

粉末を固めた 粉末成形体

MSCoating 肉盛溶接

曲面、コーナ部への 部分処理例

Ni Co

C 10μm 皮膜断面の線分析の結果

1.ワーク全体は常温のままで処理を行うため、熱歪による基材の変形が少ない 2.基材と皮膜の界面で組成が徐々に変化し、密着性の高い皮膜形成が可能 3.マスキングなどの前処理なしでの部分処理、円筒内面などへの処理が可能

皮膜

Co 合金 基材

Ni合金

MSCoating では、粉末材料から構成された電極を使用し、放電加工油中で処理を行います。 電極と被処理材との間に微小なエネルギーのパルス放電を発生させ、そのエネルギーに よって溶けた電極の材料が、被処理材側の溶けた部分に移行し、皮膜を形成します。被処理材側の溶融した部分の大きさは数10μm程度です。毎秒数千~1万回程度の微小な放電の繰り返しのため、熱の集中はありません。

MSCoatingとは

MSCoating(Micro Spark Coating)は、 微小なパルス放電の繰返しにより金属あるいは 導電性のセラミックスの皮膜を被処理材の表面に形成する新しい表面処理技術です。 ※MSCoatingは三菱電機(株)と(株)IHIが共同で 開発を行いました。

TiC皮膜

基材:SKD61 皮膜:TiC

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TiC皮膜 <耐摩耗> ■膜厚:5~15μm、基材内部:5~10μm ■硬さ:1000~2500HV程度(Fe系基材) ■表面粗さ:5~15μmRz ■耐摩耗性に優れた皮膜 ■皮膜と基材との間に傾斜層を形成するため密着性が高い

硬さ:1000~2500HV 表面粗さ: 5~15μmRz

表面、断面組織(SEM)

表面 断面

・皮膜表面の硬度は、2000HVを超える硬さを有する ・基材内にも10μm程度まで硬化層が存在する ・皮膜形成後、研削等で皮膜を除去しても基材に硬度 の高い部分が残る

厚み方向硬さ分布

基材面からの測定位置(μm)

ビッカース硬さ(HV) (荷重10gf)

0

500

1000

2000

2500

3000

-15 -10 -5 0 5 10 15

1500

皮膜を表面から3μmずつ研削して、厚み方向の硬さ分布を測定

ボールオンディスク試験における 比摩耗量と摩擦係数

ディスク材 コーティング ボール材 比摩耗量 摩擦係数

SUS440C なし SUS440C 7 1.0~1.2

↑ CVD-TiC ↑ 2 0.4~1.4↑ MSC-TiC ↑ 1 1.0

比摩耗量:固体同士を摩擦するとき単位摩擦距離,単位荷重あたりの摩耗体積

基材:SKD11

研削前後の硬さと表面粗さ

SKD11にTiC皮膜を形成しナガセインテグレックス製超精密研削盤 により#2500まで研削後基材表面の硬さと粗さを評価

細長いワークへの処理

外径φ2mmのエジェクタピン表面、先端から14mmまでの外周にTiC皮膜を形成

円筒内面への処理

TiC皮膜

内径φ20,長さ70mmのSUS316製パイプの 内面長さ50mmの領域にTiC皮膜を形成

MSCoatingによるTiC皮膜の摩耗量は、 コーティングなしの1/7 CVDによるTiC皮膜の1/2

処理後に熱変形は発生しない

L60

φ2

深さ/直径:2以上の円筒内面にも処理可能

L70

内径φ20 速度0.5m/s、押し付け力9.8N

20μm 10μm

皮膜

基材:S45C

曲面に皮膜を形成した後、皮膜を研削 研削後も超硬並みの硬さを維持

特性研削前処理面

研削後処理面

硬さ(HV) 1800 1400

面粗さ(μmRz) 7.0 0.1

基材表面

5~15μm5~15μmRz0.7~1.3μmRa

5~10μm

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Si皮膜 <耐食・耐エロージョン>

厚膜技術 <肉盛>

硬さ:800~1000HV(Fe系基材の場合) 表面粗さ: 1~3μmRz

耐食性 王水に1時間浸漬し耐食性を評価

基材部:腐食あり (厚さ0.15mm減)

Si皮膜部:腐食なし

SUS316

王水に1時間浸漬後も、腐食されない

基材:SUS630 MSC皮膜:Si 比較材:ステライトNo.6 試験条件 ノズル径:0.25mm 水圧:100MPa ノズル先端-サンプル間距離: 20mm 試験時間:60sec

ウォータージェット試験

硬さ:795HV 面粗さ:0.97µmRz

Si皮膜 (基材SUS630) SUS630

硬さ:383HV 面粗さ:0.32µmRz

ステライトNo.6

38μm

硬さ:497HV 面粗さ:0.22µmRz

61μm

Si皮膜は高圧液滴による耐エロージョン性に優れる

損傷なし

ノズル

ノズル

サンプル

表面 断面

耐エロージョン性

低圧タービン動翼(インターロック)への 耐摩耗皮膜(Co合金)の形成

溶接 MSCoating ・従来溶接で耐摩耗材料を肉盛りしていた工程を MSCoatingに置き換え、インライン化 ・溶接では必要な、前処理・後処理が不要 ・MSCoatingでは、必要な箇所に必要なだけ肉盛りが可能 ・従来材料に比べ、耐摩耗性が大幅に向上

20μm 基材:SUS316 10μm

表面、断面組織(SEM)

2007年 FAA(米国連邦航空局)より認定を取得

腐食液:王水

Si皮膜

■表面改質層:5~10μm ■硬さ:800~1000HV程度(Fe系基材) ■表面粗さ:1~3μmRz ■耐食性、耐エロージョン性に優れた皮膜 ■Siが基材表面に濃化した形態となっており密着性が高い

5~10μm1~3μmRz0.2~0.4μmRa基材表面

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〒336-0027

埼玉県さいたま市沼影1-18-6

東日本メカトロソリューションセンター

電話番号:048-710-5610

〒451-8522

名古屋市西区牛島町6-1 (名古屋ルーセントタワー)

電話番号:052-565-3112

〒660-0807

兵庫県尼崎市長洲西通1-26-1

西日本メカトロソリューションセンター

電話番号:06-4868-8653

本社 中部支社 関西支社

お問合せ

インターネットでのMSCoating情報サービス

http://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/mecha/msc/

三菱電機 MSCoating 検索

装置外観

■流れ生産ラインに適合した間口の狭い装置 ■NC制御により、高精度に処理位置決めが可能 ■プログラムを組むことで、多数個の連続処理が 可能 ■電極を交換することで、1台で複数種類の皮膜 形成が可能 ■加工槽内形寸法(幅×奥行き×高さ) 770×500×250mm ■ワーク最大寸法(幅×奥行き×高さ) 740×470×150mm ■ストロークX軸300mm、Y軸250mm

1995

他の処理方法との比較

三菱電機株式会社

溶射 めっき 溶接肉盛 PVD CVD MSCoating

密着性 × △ ◎ △ △ ○基材への熱影響 △ ○ × △ △ ◎前処理が不要 × × △ × × ○円筒内面への処理 × ○ × × △ ◎大面積 ○ ○ × △ ○ ×部分処理 △ △ ○ △ △ ○