腎臓内科医師として、臨床と研究の15年 · 日本腎臓学会 西部学術集会...
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背景
1. 女性医師の医師全体に占める割合は少ない。 2. 女性は結婚、出産、育児、介護など、人生の転機が多い。
年齢が進むにつれて似た状況の人が少なくなる。 人生の転機において、相談したり、お手本になる人が少ない。
仕事を続けにくい。
厚労省「医師・歯科医師・薬剤師調査」平成22年
日本医師会【女性医師の勤務環境の整備に関する講習会用スライド】より
36% 25% 20% 32%
16% 13%
10%
9.5%
9.5% 7.7% 8.2% 12% 15%
年齢が進むにつれ、女性医師率は低下する
「医師・歯科医師・薬剤師調査」平成22年 ~主たる診療科より
※内科(呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、神経内科、糖尿病内科、血液内科、感染症内科含む)、皮膚科(アレルギー科含む)、精神科(心療内科含む)、外科(呼吸器外科、心臓血管外科、乳腺外科、気管食道外科、消化器外科、肛門外科、脳神経外科、小児外科含む)、整形外科(リウマチ科含む)、形成外科(美容外科含む)、産婦人科(産科、婦人科含む)、その他(リハビリテ―ション科、放射線科、麻酔科、病理診断科、臨床検査科等)
日本医師会【女性医師の勤務環境の整備に関する講習会用スライド】より
内科の女性医師率は低い
日本医師会女性医師支援センター 九州大学大学院医学研究院保健学部門臨床研究支援看護学 教授 樗木 晶子先生の発表より
日本医師会「女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書」 平成21年3月
日本医師会【女性医師の勤務環境の整備に関する講習会用スライド】より
女性医師の人生には転機が多い
休職・離職の理由
腎臓内科医のスタート
1. 重症の患者さんが多く、夜間緊急透析で呼び出しがあったり、昼夜問わず働いた。
2. 腎センター8名の医師の中で、女性医師は3人。3人のうちの一人が現在KSWNを主宰されている、東医療センター片渕律子先生だった。
3年目
腎臓内科医ってやりがいがあるなあ。
1. 結婚は漠然と考えていたが、このペースで働き続けられると思っていた。
基礎大学院進学 4年目
1. 元来研究には興味があった。 2. 基礎研究室のスタッフには医学部以外に農学部、理学部、
薬学部など様々な分野の方がおり、女性の割合も多かった。
1. 時間が自由になる大学院時代に結婚、育児をするのはよいかもと考えた。
2. 実際に育児をしながら研究をされている方がおり、お手本にしようと思った。
私にもできそう!
大学院3年、長男出産
1. 今までのように深夜までの実験、夜の外勤ができなくなった。
1. 保育園のお迎えまでにすべてを終わらせなくてはいけない。時間から逆算して自分で実験計画をたてることができない。
2. 研究のスピードが低下した。 3. 急な子供の病気の時の外勤の代医や病児デイケアの空き
を探すのがストレスだった。
6年目
時間のやりくりができない!自分は半
人前だ。
いったん地域の病院へ 1. 大学院4年間で学位取得は間に合わず。 2. 急に人員の空きを埋めるため内科医として地域医療に携わる。
1. 育児中の短時間勤務などを積極的に考慮していただいた。勤務時間内にきちんと診療することを学んだ。
2. 育児で苦労した分、患者さんに優しくなった自分に気づく。
3. 自分を頼ってくれる患者さん、医療スタッフに勇気づけられる。仕事で感謝されることのすばらしさ。
8年目
やっぱり臨床医はいいなあ。私にもできることがあるかも。
学位取得、次男出産、研究再開
1. 次男出産後、共同研究として大学院時代に在籍した基礎研究室に戻って研究を開始する。
1. 実験計画を立て、自分のペースで研究ができるようになった。
2. しかし外部資金(科研費など)の申請を行うが、年齢、業績いずれも条件が不足していることを思い知る。
3. どんなに研究を頑張っても論文が出なければ評価されない。
9年目
研究はスピード、結果がすべて。
夫婦でアメリカNIHへ留学 1. 夫も私同様、学位取得後、業績を上げたい、世界のトップレベ
ルの研究に触れたいという希望があった。
1. 夫婦で協力することの難しさと生産性の高さを学ぶ。 2. トップレベルの研究者のすごさを実感。 3. アメリカでは夜遅くまで働かないが、今までの経験から限られ
た時間で効率よく実験ができた。
12年目
自分ひとりでは何もできないが、協力すれば何かできるかも。
NIHのラボで
大学病院へ戻る 1. 留学後、九州大学へ戻って、臨床、研究、教育に携わる。
1. 長い研究歴で学んだ実験手法、思考を大学院生に教える。 2. 大学病院のカンファ、回診で最新の臨床の知見を多くの先生
に教えてもらえる。 3. 医学部の学生教育。思考や記載を論理的にすることなどは
研究とも共通したこと。
15年目
臨床教室での研究、久しぶりの臨床、学生教育、チャレンジしてみよう。