訪問薬剤管理指導業務の事例報告と 在宅医療 在宅緩和医療 の地 … ·...
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訪問薬剤管理指導業務の事例報告と 在宅医療(在宅緩和医療)の地域連携
株式会社ツルハ《調剤薬局ツルハドラッグ上田店(1》
○長井貴之(1 佐藤公則(1 山内信哉(1 高野磨李(1 金原由佳(1
千葉 透(2 後藤輝明(2 《調剤運営本部(2》
~Team Morioka訪問薬剤師として~
現在の担当患者構成(疾患別)
脳血管疾患21%
悪性腫瘍18%
認知症・精神科疾患22%
老化に伴う疾患15%
神経難病5%
呼吸器疾患11%
膠原病疾患3%
心疾患5%
N=111
2007.10.16現在
現在担当する患者は111名。患者死亡、入院などにより患者の入れ替わりは多いが、緩和ケアの患者様は約2割に安定している。
Team MORIOKA 【メンバー】 在宅医療に関わる全ての職種
【趣旨】 病院から自宅へ
~安心して帰るために~
・在宅患者に関わる全ての人々の
ゆるやかなネットワーク
①スキルアップ ー自己研鑽)ー
②病院から自宅への帰し方 ー共通のアイテム(IVH、胃ろう)
③会員相互のネットワーク ー顔見知りになることー
④がん、難病の人達がここちよく家に帰れるように
⑤ケアマネージャーとの関わり方
【メンバー構成】
往診専門医師 4名
開業医医師 3名
病院医師 5名
緩和ケア認定看護師 2名
がん化学療法認定看護師 1名
病院の医療相談室相談員 5名
訪問看護師
(訪問看護ST、ケアマネ) 13名
訪問リハビリ 5名
訪問薬剤師 1名
1:患者宅の状況 ・患者宅に行って初めてわかる服薬状況
・患者宅に行って初めてわかる管理状況
一包化
薬剤師は一包化や粉砕化を医師に提案し、患者が飲むことができる状態で薬を投薬すべきである
粉砕
●患者宅を訪問して感じることは、「薬剤師が思っているほど、患者が薬を飲んでいない」という こと。また「飲んでいない」のではなく「飲めない」状況もある。
●「錠剤は飲めない。飲み込めない。服用時に自分で砕いている」「飲むことができない剤形で 調剤されている」
●「自己判断による調節を行っている」
●「残薬がたくさんありすぎてわからなくなっている」「患者も家族も介護者も高齢者のため、管 理できる状態にない」
・「高齢者に多種類の薬を理解し、その複雑な用法を理解できるのだろうか?」
・「患者が理解できない、飲めない状態で投薬する」というのは、無責任ではなかったか?
93歳(本人)と90歳(妻)のふたり暮らし
「薬がたくさんあってわかんねぇ」
「当然だな、(今まで良くやっていたな)」
「何とかしますから任せてください」
「今まで大変でしたね」
90歳を超えるご年配の患者さんに、何種類もPTPヒートで調剤して無責任。指示通り飲めるわけがない。
患者も家族も高齢者+残薬が多すぎる+服用方法を理解できない
「残薬確認+一包化+服薬ケース設置」で解決。服薬状況も改善した
「間違えて違う日付の薬を飲んだんだわ」
「薬はしっかり飲んでいるわよ」
自己判断による服薬調節+服薬違反+残薬が多すぎる
「服用日を記入してセットしています。何で薬がなくなるんでしょう?」
「おかしいなぁ」
「え~!ウソ~!」
「ずっとそんなことやっていたの」
「一包化+残薬整理+併用薬確認+服薬ケース設置+服用予定日記入」で改善
「おしっこが出ないとき利尿剤を自分で追加して飲むの」
「あ~言わなきゃよかった」
「これとこれが利尿剤でしょ。おしっこ出ない時飲んでるの。」
実は・・・
「目が見えなぐなった」
「どうやんだ?わかんね」
山奥で一人暮らし。(食事は?)「ヘルパーさんや民生委員さんが1日1回届けてくれる」。(ふとんは?) 「ここでこのまんまだ」
後ろから手を取って点眼薬・点鼻薬の使用方法を指導。内服薬は再度持ち帰り一包化。初回訪問時に視力が低下しており、限界を感じた。その後徐々に視力は回復し日常生活が送れるようになっている。
その場にあるもので何とかする。
訪問先に何でもあるわけではない。
2:在宅における麻薬の服薬指導
患者自身が判断するためには、薬を理解するための服薬指導が大切である
①ベースになるオピオイドを理解し、忘れずに定時服用(使用)してもらう。その大切さを知ってもらう。
②レスキューの必要性を理解してもらう。レスキューを上手に使う。
《病室なら・・・》
・毎日薬が届く
・ナースコールがある
・副作用の確認と対処が可能
《在宅の場合・・・》
・患者自身(家族)が服薬管理をしなければならない
・ナースコールはない。痛む時は患者自身が、レスキューを使用しなくてはならない
・患者自身(家族)が、副作用を判断しなければならない
薬剤師の役割
ポイントは2つだけですが、
服薬管理ができなければ、家にいることはできない。何とかしたい。
・麻薬に対する不安 「こんな薬を使うと、頭がおかしくなるのではないかと思います」
「あまり強い薬を使い続けると体に良くない影響が出るのではないかと思いあまり使う気になりません」
「2種類も麻薬を使って大丈夫なんでしょうか?」
「この薬を使うと言うことは、私もいよいよ終わりですね」
「最近はあまり使わないでfs2くらいまでは我慢するようにしています。薬で抑えることが出来るのは判っているんですが本当に痛い時だけにしたいです。」
「出かけていた際に様子がおかしくなった。痛みが強くて返事ができなかったようだ。
オキノームは使い方が良くわからなかった。」(緊急往診を依頼し、ロピオン施行)
・レスキュー薬の大切さ
患者が、レスキュー薬を理解できていれば、
①患者の苦痛を速やかに取り除くことができる
②医師への緊急連絡となった場合でも、医師の選択肢が増える
③緊急往診が電話のみで解決する可能性もある
患者さんの声
「不安」があって当然。その「不安」を話してもらえることが大切。
・副作用への不安 「こんな薬を使うと、頭がおかしくなるのではないかと思います」
「副作用が心配です。頭が変になって、わからなくなるのでしょう?」
「吐き気がでるそうですね?怖いです。」
「鎮痛補助薬」としての処方を理解し、服薬指導する必要がある。
「こんなにたくさんの種類の痛み止めを飲むのですか?」
「麻薬を飲むのだから、これらの痛み止めは止めていいのではないですか?」
「やっぱり(うつ)にもなりますよね」
「咳はでません」
・鎮痛補助薬
副作用がでることはわかっていますので、副作用対策薬を服薬指導
①便秘(100%便秘の治療はしていきます)②吐き気(長くて2W程度、予防と対をします)③眠気・幻覚(痛みを持った人には主作用しかでません)④呼吸抑制
・痛みの評価 「痛くありません」(しかめっ面)
「妻は我慢強い人です。私に面倒をかけないようにしていると思います。」
フェイススケール(Fs)やVASを使って、痛みを表現してもらう。
いろいろな質の痛みがあることを知ってもらう。
貼替カレンダー
「パッチの貼替カレンダー」に「レスキューの使用状況」を記
入できるように改良
「何とかしたい」
ので工夫しています。
グラフ
3:塩酸モルヒネの持続静注を在宅で実施した事例
《患者情報》 74歳 女性
子宮がん 骨転位 癌性疼痛
胃炎 便秘症 アレルギー性湿疹うつ症状
下腿浮腫 接触性皮膚炎 ・・・
《家族背景》
修道女。
修道院に居住(男子禁制)。介護者は同居するシスター。
妹は看護師。
入院中にデュロテップパッチへローテションしたが、Fsがなかなかさがらなかった。モルヒネの点滴静脈を検討していたが、在宅で行うことは困難だろうと考えていた。しかし平成18年12月に「麻薬管理マニュアルの改正」が行われることを知り、改正後にいつでも開始できるよう準備した。
①塩酸モルヒネのキット製剤(プレペノン)であっても、「アンプル」として扱われる。「調剤の場所(調剤できる場所)」の問題があり、患者宅(調剤不可)で薬剤師がポンプにプレペノンをセットすることはできない。
②塩酸モルヒネアンプルの投薬は、在宅訪問でも外来でも可能になったが、「看護師に手渡し」となると外来投薬が現実的であった。患者の居宅で、わざわざ訪問看護師と落ち合うことが実際は困難であった。
上記①②の理由により、訪問指導はあきらめ看護師が薬局に取りに来る方法を選択した
・オキシコドン(内服)からフェンタニルパッチへとローテーション、増量を行っても疼痛コンロールが不良だったが、塩酸モルヒネ持続静注を行うことで、痛みを取り除くことができた。
・副作用が強くでるようなことはなかった。むしろ、吐き気の症状は軽減した。
・タイミングよく麻薬管理マニュアルの改正があったこと。また、妹が看護師であり、介護者が協力的であるなど恵まれた環境であった。
・マニュアル改訂後も、「調剤の場所」の問題があり、実際は薬剤師が訪問することは困難である。患者宅でシリンジの交換ができないため、PCAポンプが複数台必要(最低でも3台)になる。
・今回、患者家族(妹)が看護師であったが、「医師より医療上の指示を受けている看護師」である必要があるため、「看護師の資格」を持っているだけでは投薬できない。受け取りにきた看護師には、「指示を受けている医師名と受取りの署名をもらい、処方せんと共に保管した。
・by the mouth の原則があるため、モルヒネの点滴静注を選択する時期は、モルヒネ使用量がある程度多くなっていることが考えられる。そのため、シリンジの交換が頻回になる。(プレペノン製剤の用量が小さい)
在宅医療に、塩酸モルヒネの点滴静注の選択肢ができたことは有用なことです。
今のルールの中では、まだ薬剤師が関与しにくいのですが、 痛みに苦しむ患者の苦痛を緩和できたことをうれしく思います。
マニュアルを改訂していただき、ありがとうござました。
平成19年1月の改正では、ケタラールが麻薬に指定されてしまいました。 この患者様に効果を発揮していましたが、中止せざるを得ませんでした。
麻薬管理マニュアルの改正がもたらしたもの(まとめ)
4:在宅医療で感じる法律の壁
在宅医療において患者宅のリビングルームは、病室(個室)。往診医は車に乗って、各病室(患者宅)を回診する。街全体を病院のように考えます。訪問看護STはナースステーションであり、訪問薬剤師は薬剤部である。在宅でも、病院と同じ様な「安心」を提供したい。
在宅医療においては、使用できる注射薬に制限があります。厚生労働大臣の定める注射剤しか処方せんを発行することができない。
【処方できる注射薬(一部)】(詳細は省略)
高カロリー輸液(IVH)関連、塩酸モルヒネ、 サンドスタチン、インスリン、 インターフェロンなど
【処方できるようになってほしい注射薬(一部)】
塩酸モルヒネ以外の麻薬注射剤、3号輸液(維持液)、プリンペラン注、ラシックス注、デカドロン注、ロピオンなどなど・・・・
在宅医療推進の観点から、使用できる注射薬の規制緩和を熱望致します。
薬剤師が、このような提案していくことも必要なのではないでしょうか?
在宅医療推進は緩和医療の推進。緩和医療においても必要なことではないでしょうか?
HELP!
「注射薬の処方制限に対する パブリックコメントをみつけました」
在宅医療推進のため、在宅緩和ケア推進のため
「厚生労働大臣が定める注射薬等を柔軟に対応できるよう改正する必要がある」という意見に賛同いたします
「薬剤師施行の一部を改正する省令(案)
(改正薬剤師法第22条の規定に基づく調剤の場所等)に関する意見募集について」
に対して寄せられたご意見
賛成 賛成
WEB(タイトル) 【Webシステム】メーリングリスト機能
【5】 Webシステムを使った連携者間の情報交換の紹介
「速やかな連携者間の情報交換・情報共有」がなければ、在宅医療チームに最も必要な「機動力」が
発揮できない。
情報のGIVE&TAKE
WEB(MIX)
【まとめ1】訪問薬剤師に大切なこと
・薬理学的な服薬指導に偏らず、患者や患者家族の「本音」に迫るコミュニケーション行うこと
・「患者(人)ごと」よりも、「家ごと」に考慮した服薬管理指導が必要である
患者様は、特に緩和ケアを行っている患者様は、たくさんの不安と負担、痛みを抱えている。「何を不安に感じているのか」「何を負担に思っているのか」「どこが、どれくらい、どんなふうに痛むのか」「身体的な疼痛なのか、心が痛むのか・・・」。たくさん話してほしい。たくさん話をしたい。医師や看護師が聞き出せなかったことを、聞き出したい。
薬局に薬を取りに来ていたひとりの患者様は、家に帰ればその街の住人。町内や家庭の中での立場があり、生活がある。在宅医療においては、患者家族(介護者)の協力が必要。訪問すれば、家族が介護していて、友人が励ましている。患者本人に一生懸命服薬指導をするのではなく、その周りで支える方々も一緒に指導(会話)していきたい。
患者様と患者家族のために。連携するスタッフのために
【まとめ2】地域連携の中での薬剤師の役割
・患者だけでなく、医療チーム内でのコミュニケーションが重要。顔の見える連携者となること。
全ての仕事は患者様のためのものであることは当然であるが、連携する医師、看護師、リハビリ、ケアマネ、ヘルパーなどすべての職種とコミュニケーションが取れるようにすることはとても重要なことです。名前がわかり、顔がわかること。必要なとき、困ったときにすぐに連絡し合えること。このコミュニケーションは、在宅医療において、また緊急事態の多い在宅緩和医療においてとても重要なことだと思います。
・患者だけの薬剤師ではなく、薬局を持たない訪問看護師や介護ヘルパーのための薬局になること
在宅医療で活躍するスタッフのほとんどは、自分の施設に「薬局(薬剤部)」を持っていません。その役割は、私(訪問薬剤師)が担っていると思っています。薬のことで困ったことがあるのは、患者様だけではありません。在宅医療スタッフからも信頼され、頼ってもらえる薬局でありたいと思います。連携していないスタッフでも良いのだと思います。この街の在宅医療に携わる全てのスタッフの薬局になることが、「薬局の役割」だと思っています。