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非公開会社の監査の考え方

―親会社の視点から―

公益社団法人 日本監査役協会第 39 期 本部監査役スタッフ研究会

第 3 グループ第 2 チーム

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目次

はじめに 2 頁

第1章 問題意識 2 頁

第2章 取締役による企業集団内部統制システムの構築・運用 4 頁

第1節 企業集団内部統制システム構築の準備 4 頁

第2節 企業集団コンプライアンス体制の構築・運用 6 頁

第3節 企業集団のリスク顕在化予防体制 8 頁

第4節 企業集団の危機管理体制 10 頁

第5節 企業集団の内部通報制度に関する体制 14 頁

第6節 子会社の内部監査 15 頁

第7節 子会社の会計監査 16 頁

第3章 監査役の監視・検証のポイント 17 頁

第1節 企業集団内部統制システム構築の準備 17 頁

第2節 企業集団コンプライアンス体制の構築・運用 17 頁

第3節 企業集団のリスク顕在化予防体制 18 頁

第4節 企業集団の危機管理体制 18 頁

第5節 企業集団の内部通報制度に関する体制 19 頁

第6節 子会社の内部監査 20 頁

第7節 子会社の会計監査 20 頁

第4章 非公開会社の子会社に関するその他のポイント 22 頁

第1節 親会社監査役による子会社調査 22 頁

第2節 子会社の監査役・スタッフ体制 24 頁

おわりに(総括) 26 頁

参考資料 27 頁

監査役関係会社往査事前ヒアリング資料

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はじめに本稿は、第 39 期監査役協会スタッフ研究会(東京)第 3 グループのメンバー内で行っ

たアンケート調査・議論に基づき、主に『親会社の監査役・スタッフの視点から見た非公

開連結子会社の監査の考え方』について述べたものである。

なお、本稿を進めるにあたり、親会社とは公開大会社かつ非公開の子会社を数社~数十

社程度抱える規模の会社を想定し、検討の対象とする非公開子会社は連結範囲の子会社を

前提としている。以下では、親会社取締役・監査役を単に取締役・監査役と表記し、子会

社側については子会社取締役・子会社監査役と表記する。また、対象の非公開連結子会社

を単に子会社と表記する。焦点を絞るため、海外連結子会社は本稿の対象から外した。

 本稿で対象とする子会社は非公開会社であるが、非公開会社とは定款に株式譲渡制限を

定めている会社のことであり、非上場会社と同じではない。従って非上場会社の中には

公開会社と非公開会社が含まれる。こうした法的な定義の違いは本稿の趣旨には関係しな

いので、以下で表現する子会社は非公開会社≒非上場会社として理解していただきたい。

 尚本稿の構成は、『第1章 問題意識』の項で、非公開の子会社に関する問題意識につ

いて述べたのち、『第2章 取締役による企業集団内部統制システムの構築・運用』の項

で、親会社取締役の責務について記述し、『第3章 監査役の監視・検証のポイント』の

項で、取締役が責任を果たしているかどうかについて、監査役がどのように判断するか

についてスタッフの視点も含め考察する。そして、『第4章 非公開会社の子会社に関す

るその他のポイント』において、監査役による子会社調査におけるポイントと、子会社

の監査役・スタッフ体制について考察した。

因みに本稿で表現される『内部統制』は全て会社法で規程された内部統制である。

第1章 問題意識株を公開しない会社には①中小規模のオーナー会社②事業資金が潤沢で資本市場から資

金調達する必要がない会社③経営の自由度を確保するために公開しない会社―など様々な

タイプがあるが、本稿では以下のふたつのタイプの会社を対象とする。

・親会社である公開大会社またはその企業集団内会社が 100%の株を保有する非公開子会

・基本的な構造は①と同じだが、一部外部資本(金融機関など)が入った非公開子会社

これらの子会社は外部の一般株主が存在せず、一般株主に対する責任がないため、会社

法の適用を受けるにも関わらず、コーポレートガバナンス上の責務を簡略化する傾向が

あると考えられる。これは企業集団統治に関わるマンパワーをできるだけ削減し、利益

を生む事業部門に振り分けたいという、営利を目的とした事業会社としては当然の経営方

針で、一般的な企業の考え方であると思われる。

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こうした企業集団構造が一般的である中、最近子会社の不祥事により親会社が不利益を

被り、また社会から指弾される例が増えている。このようなケースでは、親会社に内部

統制システム上の不備がなくとも、結果として親会社のブランドやコーポレートレピュ

テーションに大きなダメージを与えることになる。

つまり、親会社が子会社を管理監督するに当り、法に準じた最低限のグリップをすれ

ば済む時代ではなくなってきており、より積極的にコンプライアンスやリスクマネジメ

ントの面で子会社管理を意識せざるを得ない社会環境になりつつあると言える。

もちろん子会社の監査義務は子会社監査役にあるが、上記のような環境下、監査役には

今まで以上に、子会社の監視・検証を強化する責務が求められていると言える。

ここで監査役の責務、及び取締役の内部統制システム整備に関わる責務を整理すると、

・監査役は取締役の職務の執行を監査する責務がある(会社法 381条)。

・一方、大会社の取締役会は、『取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確

保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法

務省令で定める体制』(以下内部統制システムと表記する)を整備しなければならない

(会社法 362条)。

・この内部統制システムには企業集団内部統制も含まれる(会社法施行規則 100条)。

従って子会社において、内部統制に関わる重大な不祥事が発生して社会問題化した場合、

取締役は任務懈怠責任を問われる可能性がある。取締役が当該子会社取締役を兼務してい

る場合、株主からはより責任が重大であると追求される可能性がある。

一方子会社が重大な内部統制に関わる不祥事を起こしたとしても、監査権限のない監査

役が直接責任を問われることはない(調査権限のみ:会社法 381条)。但し、監査役が

監査すべき取締役の職務範囲に、企業集団内部統制システム整備に関する管理監督責任が

含まれるとすれば、監査役はその部分も含めて取締役の職務執行を監査しなければなら

ないことになる

更に期末に監査報告を作成する際、事業報告に記載された内部統制システムの構築・運

用が適正に行われていることを株主に報告しなければならないが、この評価すべき内部

統制システムの中に、当然企業集団内部統制が含まれる。従って法的に直接の責任はない

ものの、監査役の責務を果たす上で、子会社において内部統制システムが機能している

かどうかをチェックすることは重要なポイントである。

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第2章.取締役による企業集団内部統制システムの構築・運用以下本項では、親会社による企業集団内部統制システム構築・運用のための具体的な施

策について記述する。内部統制には情報の保存・管理体制、職務執行の効率性など様々な

要素があるが、ここでは重大な不祥事を防止する観点から、コンプライアンス、リスク

予防活動、危機管理、内部通報制度、内部監査に重点を置いて考察する。

第1節 企業集団内部統制システム構築の準備

(1)内部統制システム取締役会決議

内部統制システムを取締役会で決議しなければならないのは大会社のみである(会社

法 348条)。従って、法的には大会社以外の子会社に内部統制システムを取締役会で決

議する義務はない。しかし親会社の観点から言えば、自社の内部統制システム取締役会決

議に企業集団内部統制が含まれる以上、何らかの方法で企業集団全体に対する責任を果た

さなければならない。

仮に企業集団内に大会社とそれ以外の会社が混在する場合、忠実に法対応すれば子会社

によって対応が違う事になる。また全ての子会社が大会社以外であった場合、内部統制シ

ステム取締役会決議を行うのは親会社だけということになる。

会社法は便宜上、『資本金 5億円以上か』『負債 200億円以上か』の 2 点で大会社を

定義しているが、会社には規模に関係なく様々なリスクがあり、実質的にはほぼ全ての

子会社において内部統制システムを構築・運用させる必要があると考えられる。従って

その前提として、取締役会を設置した全ての子会社に対して、内部統制システムを取締役

会で決議するよう指示する事が望ましい。

(2)企業集団内各社の取締役会で決議すべき内部統制システムの内容

企業集団内で内部統制システムを構築・運用する場合、基本方針が統一されているかど

うかを確認する必要がある。但し、ここで言う『統一』とは、親会社の取締役会で決議さ

れた内部統制システムの全文言を一致させることではなく、企業集団内で基本的な考え方

や取り組み姿勢を統一するという意味である。従って、親と子の立場の違い、あるいは

業種の違い等の必然性によって文言が変わって然るべきである。

(3)子会社の決裁権限規程

企業集団内の内部統制を適正に運用するためには、子会社の決裁権限規程に関し、企業

集団に重大な影響を与える可能性がある案件については、親会社の所管責任者の決裁を受

けるグループ決裁権限規程が必要である。この点については、多くの会社で既に整備さ

れているものと見られる。

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(4)企業集団内の規程の整備

親会社の経営管理部門が子会社を管理・監督するに当っては、規程類の整備が有効な手

段となる。経理規程、情報管理規程、リスク管理規程などについて企業集団共通で遵守す

べき要件を決め、規程を作らせ、守らせるなどが一例である。企業集団全社で同じ内容の

規程を作り、運用させるのであれば簡単であるが、規模や業種・従業員の雇用形態の違い

などを勘案して親とは違う内容の規程を作る場合、規程作成の全てを子会社に任せるので

はなく、親会社が一定のチェックを行う事が望ましいと考えられる。しかしこの点につ

いては、特に決め事がない会社が多いと推察される。

(5)親会社経営管理部門による管理・監督

親会社が企業集団を率い、リスクをコントロールしながら内部統制を推進していくた

めには、経営管理部門による管理・監督が必要となる。ここで言う経営管理部門とは、人

事・経理・総務・法務・広報・経営企画・関連事業・リスク管理・監査などの部門である

そしてこれらの部門に於いて、①企業集団管理・監督の形が整っている②マンパワーが

足りている③所属部員にその意識がある―の 3 点が満たされている事が重要である。

企業集団管理・監督の形を整えるためには、各部門の職務分掌に『子会社の管理・監督

責任』を明記する必要がある。公開大会社の中には、経営管理部門の職務分掌にこうした

内容が明記されている会社もあれば、そうでない会社もあると思われる。またひとつの

会社でも、部門によって明記されている部門とされていない部門が並立している場合が

あると思われる。

マンパワーが充足しているかどうかを判断するためには、①その部門が子会社の管

理・監督を行うに当ってどこにポイントを置くか②そのためにどのくらいの業務量が発

生するか―の 2 点について方針を出し、検証する必要がある。上記の内、①については

管掌取締役の判断が反映されるべきである。

当該部門に所属する部員の意識を高めるためには、管理職の関与はもちろん、子会社を

管理・監督する担当者を決め、それぞれの業務目標の 1 要素として明記し、評価の対象と

することが望ましい。

親会社の経営管理部門が必要な子会社管理を行うためには、各部門の自主的な活動に期

待するのではなく、曖昧さを排除し、上記のように明確に業務として確定させる事が重

要である。最後に親会社経営管理部門の子会社管理が不十分である事例として考えられる

ケースを提起するので、類似事例がないかチェックする材料としていただきたい。

・ 震災対策 BCP において、親会社は十分な備蓄を用意していたが、子会社の中には備

蓄が

不十分、または全くないという会社が存在する。(総務)

・ 子会社で不祥事が起きた際、マスコミの取材に子会社の判断で応じたが、親会社の取

材マニュアルが徹底されていなかったため、傷口を広げてしまった。(広報)

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・ 親会社の業務交通費請求は電子カードに統一されていたが、子会社の中に自己申告の

まま制度を変えなかった会社があり、交通費の不正請求が発生した。(経理)

・ 業務資料の自宅持ち帰り禁止が子会社で徹底されていなかったため、子会社社員が懇

親会からの帰途、顧客個人情報が入った鞄を電車の網棚に置き忘れた。(リスク管

理)

第2節 企業集団コンプライアンス体制の構築・運用

企業集団コンプライアンス体制の構築は、現在の社会情勢の中で最も強く企業に要請さ

れるものである。最近頻発している製品事故、健康・安全に関る事故、データの改ざん、

粉飾決算などの殆どに何らかの形で法令違反が絡んでいるからである。法令・社会の規範

を無視、または軽視して自社の利益獲得を図る企業を現代社会は見逃さず、許してくれな

い。例え子会社の事案であったとしても、監督不行届きということで親の責任は免れな

い。昨今は監督官庁もコンプライアンスを重視しており、企業集団全体でのコンプライ

アンス体制構築は喫緊の課題である。

(1)企業集団統一のコンプライアンス規程整備

企業集団でコンプライアンスを『ほぼ同じ水準』で推進するためには、企業集団内を

横串した規程類の整備が必要である。例えば『グループ行動規範』『グループコンプライ

アンス規程』などである。但し後者については、企業集団内に所轄官庁の規制が厳しい業

種の会社が存在する場合、注意が必要である。コンプライアンス規程で詳細まで定める

場合は、必ずしも規程内容をグループで統一することが望ましいとは限らない。企業集

団内に金融関係会社がある場合など、親会社よりも厳しいコンプライアンス規程が必要

な場合もありうる。

(2)コンプライアンス体制を維持するための会議体

コンプライアンス体制を維持していくためには、コンプライアンスを審議する会議体

が必要である。この会議体の構築に当っては、

・ 定例会議とするか事案毎に開催する会議とするか

・ グループ統一会議とするか会社別会議とするか

の2点を考慮する必要がある。定例会議のメリットは、常に社内にコンプライアンス意

識を啓蒙する効果が高いことであるが、その間に重大なコンプライアンスに関る事案が

発生した場合、臨時開催に関する条文を規程に盛り込んでおく事が必要であろう。

開催単位の違いは、定例開催か事案毎開催かとも関連しており、定例開催の場合はグル

ープ統一会議とすることで企業集団内のコンプイライアンス意識を平準化する効果が期

待できる。事案毎開催の場合は、子会社の小さな事案まで全て統一会議で取り扱うことに

は若干無理があるので、各社別開催になる可能性が高いと思われる。

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但し、この場合でも、子会社で発生した重大なコンプライアンス事案(親会社・企業集

団全体のブランドやコーポレートレピュテーションに関わるような事案)については、

親会社が関与する仕組みを構築しておく必要がある。また、この場合、『重大かどうか』

を判断するのはあくまでも親会社であり、その意味で子会社のコンプライアンス事案が 、

速やかに親会社に報告されるグループ内ルールを構築し、徹底することが重要である。

(3)コンプライアンスに関する教育

子会社も含めてコンプライアンスに対する意識を根付かせるためには、継続したコン

プライアンス教育の仕組みが必要である。コンプライアンス教育を継続的に行わなけれ

ばならない理由の一つは、企業が業績を上げ、利益を増やしていくこととコンプライア

ンスがトレードオフの関係と誤解されやすいからである。外部の目を気にしない非公開

会社では、社長でさえもストレートに『コンプライアンス=コスト』と誤解する場合が

多いと推察される。

コンプライアンスを一定水準以上で維持するためには、管理部門の要員確保による人件

費負担の増加や監視の強化、業務手順の見直しなどによって、結果として一部業務効率が

落ちる可能性もある。しかし、他のコストと同一視し、コンプライアンスに関るコスト

を削減すればその分、利益が増えると考えるのは間違いである。コンプライアンスとは、

企業を取り巻く環境の良し悪し・業績の良し悪しに関係なく、必要な一定水準に保つこと

が肝要である。

継続的なコンプライアンス教育が必要な二つ目の理由は、従来のように定年まで勤め

上げる正社員比率が高かった時代に比べ、中途入社社員・年契約社員・派遣社員などの比

率が高まっていることである。従って、会社には常に『新たに入ってくる従業員』が存

在する。この新入従業員たちは、法的側面も含めて業務知識に乏しいほか、会社に対する

ロイヤリティも、長く所属する社員に比べて希薄であると考えられる。例えば少額の業

務上横領などは、こうした正社員以外の身分の従業員が起こす可能性が高いと考えられる

従って、こうした新入従業員に対しては、速やかにコンプライアンス教育を行う必要が

ある。

コンプライアンス教育は年に一度、4月に新入社員教育に合わせて行なえば良いという

ものではなく、随時教育が必要である。そしてこの正社員以外の従業員比率は、親会社よ

りも子会社の方が高いのが一般的である。企業集団内で一定以上の水準でコンプライアン

ス教育を継続していくために、親会社は常に情報発信を心がけ、子会社を指導すべきであ

る。

尚、コンプライアンスの教育に関しては、様々な手法が考えられる。一般的な『コン

プライアンス概論』などについては、ベースの資料を親会社担当部門が作成し、子会社取

締役に対しては本社から、子会社従業員に対しては当該子会社の監査役や管理部門などが

行う事が考えられる。具体的な業法対応教育については、基本は子会社が自主的に行う事

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になるが、少なくとも企業集団内に広く関係する法律(労働基準法、労働者派遣法、個人

情報保護法、下請け法など)については、親会社が主導し、教育資料を作成すべきだと思

われる。

(4)コンプライアンスに関わる情報の共有

コンプライアンスに関して最も難しいのは情報の共有である。ひとつの子会社で発生

した法令違反事案に関し、企業集団内での再発防止を徹底させようと思えば、事案に関す

る詳細情報をグループ内で共有する必要がある。一方で、これは情報の拡散を意味し、場

合によっては社外に流出する恐れもある。

本来社会に公表すべき情報は自主的に公表するべきであるが、敢えて知られる必要の

ない情報まで外部に垂れ流しになる事は避けたいところである。従って、コンプライア

ンスに関る事案の情報共有の仕方としては、例えば子会社の社長までは詳細情報を伝達し、

各社の社員(または従業員)については咀嚼して必要な情報のみ伝達するという方法も考

えられる。

(5)コンプライアンス規程違反事案発生時の対応

業務上で重大な法令違反を犯した場合は、人事制度上の懲罰を適用するかどうか判断し

なければならない。社員の賞罰を決めるのは人事部門である。従って、コンプライアン

ス規定違反事案を取り扱う会議メンバーに人事担当役員・部長を加えるべきという考え方

がある。またそうでない場合は、事案の詳細を人事部門に説明し、懲罰委員会開催の是非

を決めなければならない。

一方、取締役や子会社社長が関わっている可能性があるコンプライアンス規程違反事案

が発生してしまった場合について、明確な規定に基づく処罰のルールを持つ会社は少な

いのではないか。通常懲罰委員会は社員の事案を取り扱う規程になっている場合が多く、

また取締役会規程で、取締役や子会社社長の処罰を決める道筋を明確に規定している会社

も少ないものと思われる。こうした場合、通常は社長の裁定で処罰が決まる事が多いと

推定されるが、こうしたやり方は恣意性が入りやすく、合理的方法とは言えない。

 従って望ましい形は、コンプライアンス会議体の規程に役員事案も扱う事を明記する

事と考えられる。但し役員処罰の議論は難易度が高く、慎重な調査と高度な判断が求めら

れる。コンプライアンス会議メンバーを役員中心に絞り込むなり、顧問弁護士を加える

なりの手法が考えられる。但し、このケースに限っては、コーポレートガバナンス上の

問題に発展しかねないので、監査役が参画する必要性が非常に高いと考えられる。

社会問題化しそうなコンプライアンス事案の取り扱いについては、企業集団全体をカ

バーする危機管理規程を作成し、その中で社内(社外)調査委員会の設立や顧客・行政・

マスコミ、その他ステークホルダー対応等について詳細に規定すべきである。

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第3節 企業集団のリスク顕在化予防体制

公開大会社の多くは現在、リスクの顕在化を防止するためにリスク予防の活動を行って

いるものと思われる。但しリスクの顕在化は目の行き届かない子会社で発生する可能性

が高い。従って全ての子会社を含めた企業集団全体でこの活動を行う事が重要である。

(1)リスク予防活動の推進方法

リスク予防活動の推進方法については、既に一般的に浸透しているものと思われるが、

望ましい推進方法について簡単に触れる。ポイントは、

① リスク予防活動のスタートは、経営トップの強い意思表示・決意表明で始まるべ

きものであること

② リスク予防活動は必ずPDCAサイクルを回すこと

③ 年間活動の方針指示と結果の総括はトップダウンで行うこと

④ リスクの洗い出しと対策策定はボトムアップで行うこと

⑤ 対策の実施は職制のラインで責任を持って行うこと

などである。

リスク予防活動推進会議は PDCA のサイクルに応じて定期的(年 4回程度)に開催す

べきである。更にリスク予防推進会議は企業集団統一とすることが望ましく、その場合

の議長は親会社社長、招集メンバーは、親会社の主要部門担当役員及び主要な子会社社長

になるものと思われる。

(2)リスク予防活動の推進単位

子会社のリスク予防活動推進単位は、その子会社の売上規模・従業員数や事業内容によ

って判断されるべきものである。単一の事業を小規模に推進している会社の場合は、そ

の会社を一つのリスク予防活動単位と考えてよい。しかし、複数の(リスクの異なる)

事業を展開している会社、あるいは単一の事業であっても大規模に展開しており、営業地

域毎に分ける方が活動しやすい場合などは、複数のリスク予防活動単位に分割すべきで

ある。

(3)対象リスクの選定

企業集団でリスク予防活動を推進する場合、対象とするリスクは当然推進単位毎に議論

し、決定すべきものである。対象リスク選定に当たっては、当該リスクが顕在化した場

合のダメージの大きさと予想される発生頻度を勘案する必要がある。但し、優先される

べき事項はダメージの大きさである。

対象とする具体的なリスクとしては、①法令順守②重大事故の防止③商品・サービスの

安全性・信頼性④業務の効率化⑤部門間連係・情報の共有⑥顧客満足⑦ BCP―などが考

えられる。

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尚、各推進単位で作成したリスク対策シート(リスクが 10~数十項目程度ピックアッ

プされ、その対策が記載されたもの)は毎年同じ時期に、本社リスク管理部門に提出させ

る必要がある。リスク管理部門はそれを元に様々な指導を行い、監査部はそのシートを

材料のひとつとして内部監査を行う。

(4)リスク予防活動の活性化

企業集団全体でリスク予防活動を開始した当初は、活力に満ちた活動が期待できるが、

企業集団内で大きなリスク顕在化事案が発生しないまま数年が経過すると、特に子会社に

置いては『マンネリ化』や『手抜き』が起りやすい。毎年作成するリスク対策シートが

前年と変わり映えしないものであった場合、真剣な議論が行われた結果なのかどうか判

断がつきにくい。こうした事態を防止するためには、親会社のリスク管理部門や監査部

が、時間の許す限り子会社のリスク予防推進会議にオブザーバー参加することが望まし

い。

また推進単位毎の個別リスクとは別に、企業集団で共有できるようなテーマ(情報の保

存・管理、反社対策など)を共通テーマとして親会社から企業集団全体に指示することな

ども活性化策として有効である。

第4節 企業集団の危機管理体制

企業集団全体で活発なリスク予防活動を展開したとしても、リスクの顕在化を完全に防

止する事はできない。これは、①想定できない潜在リスクが存在する②リスク対策が十

分に周知、または実施されない(特に子会社の有期雇用従業員などに対して)③不注意に

よる業務ミスは常に起りうる④確信犯による不正行為などは、発見しにくいケースがあ

る―などの要素があるためである。

従って企業集団内で一定比率の不祥事発生は止むを得ない事とし、発生した場合に如何

に迅速に対応するかが公開大会社の責任として問われる事になる。

(1)危機管理体制の整備

通常、経営規模が大きい公開会社の場合、危機管理本部や緊急事態対策本部など呼称は

様々でも、何らかの危機対策会議体を事案ごとに発足させる規程を持っていると思われ

る。問題は、企業集団内の危機対応が実質的に機能しているかどうかという点である。子

会社にも同じ規程を作らせ、実質的に機能させているか、あるいは親会社の責任として、

企業集団内の危機事案を全て取り扱う旨規定しているか―といった点が問われる。

企業集団内の危機に柔軟に対応できる仕組みは、基本は各社ごとの危機管理体制として

おき、当該危機の重大さ、親会社への影響度合などを総合的に判断して、親会社の社長が

必要と判断した場合は、子会社の事案であっても親会社の危機対応組織で取り扱うとする

ものである。但し、この場合、定量的に仕分け基準を示すことは困難なため、親会社の社

長が判断することになるが、社長に助言すべきリスク管理部門、およびその管掌取締役

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の責任は重い。

更に事前に構築しておくべき要素として、報告体制の整備と周知・徹底がある。子会社

で危機が発生した場合、最初に危機を発見した役職員は誰と誰に報告するのか、報告され

た役職員は、親会社の誰と誰に報告するのかといった点について、相関図のような形で

まとめておくと分かりやすい。社外のステークホルダー(主要取引先・金融機関・顧問弁

護士など)に報告・相談をする必要がある場合も考えられるので、そうした要素も加味

して報告体制を構築すべきである。

(2)危機発生時の初動対応

以下では、子会社で親会社の信用に関る重大な危機が発生し、親会社が関与して解決に

当るケースを想定する。子会社から危機の第一報を受けた社長及び関係部門は、危機の重

大性を判断し、自社で解決に当る事案であると結論付けた場合は、即日危機対策本部を立

上げる必要がある。危機対策本部で対応する当面の課題は、以下のようなものが考えられ

る。

① 事実関係の確認(できるだけ詳細に)

② 被害者がいる場合は迅速な被害者対応(必要な場合は謝罪)

③ 危機が進行中の場合はその対応策の検討と実施

④ 社外のステークホルダー(主要取引先・金融機関等)への報告が必要かどうかの判

⑤ 所轄官庁・証券取引所への報告が必要かどうかの判断

⑥ マスコミ発表が必要かどうかの判断

この中で特に難しいのは、社外に情報を出すかどうかという点である。どの企業も

『自社の恥は知られたくない』というのが本音であり、企業が事故や不祥事を自主的に公

表するかどうかを決めるには難しい判断が必要となる。後日、外部への通報などで発覚

したときに『不祥事を隠した』と社会から指弾されるリスクも踏まえながら判断しなけ

ればならない。

ただ、社会の趨勢は、『企業も社会の公器なので、情報隠蔽は許されない』という方向

に向っているので、社長はこうした傾向も踏まえながら判断する必要がある。特に一般

消費者や顧客に二次被害をもたらす可能性のある健康や安全に関わる問題、大量な個人情

報・センシティブ個人情報の漏洩などは、速やかな公表が必要である。

(3)調査委員会設置の検討

通常子会社で不祥事が発生した場合、親会社は当該子会社からの調査報告を受ける事に

なる。しかし、当該事案が親会社まで影響を及ぼす可能性がある場合などでは、親会社の

監査部・法務部・リスク管理部などが調査する可能性が高くなる。更に事案が拡大し、社

会問題化するような事態になった場合は、早急に調査委員会を立ち上げる必要がある。そ

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して社会問題化してしまった場合の委員会は、第三者委員会でなければならない。

第三者による調査委員会を立ち上げるに当っては、『中立性のある立場から客観的で充

実した調査を行う事ができる』と一般国民が納得するようなメンバリングが重要である 。

具体的には以下のような要素が考えられる。

① 当該事故・不祥事の分野に詳しい知識・経験を持っていること

② 大学教授や弁護士など中立的立場にあること

③ ある程度社会的に知名度がある事(特に調査委員長)

(4)秘匿のない事実関係の確認

第三者調査委員会が組成された場合、所轄官庁や一般国民という力を後ろ盾にして、時

間を掛けて詳細に調査する事になるので、事実関係が明らかになる可能性は高い。一方社

内調査委員会、または社内の担当部門が調査する場合、事実関係を全て解明できない可能

性もある。子会社ぐるみ、あるいはその一部門、または親会社の一部と子会社が共謀して

組織的に真実を隠蔽する可能性も考えられるからである。

従って親会社の社長は、社内調査委員会または調査担当部門に、徹底した調査を行うた

めに必要な権限を与えなければならない。また調査を担当する可能性が高い部門は、危

機発生に備えて調査のノウハウについて研究・検討しておくことが望ましい。

(5)危機が社会問題化した場合の対応

危機が社会問題化してしまい、世間の注目が集まるようになると、企業の逃げ場は狭ま

っていく。この場合、記者会見での社長の発言がその企業への評価に直結する。過去の事

例では、①事実関係を認めようとしない②結果は認めたもののプロセスについて説明し

ない③言い訳に終始する④社長としての自分の責任を明確に言わない―などの傾向があ

り、社会からの批判が増幅する場合がある。損害賠償訴訟が控えている場合など、あまり

自社の責任に言及したくないという心理が働くのは当然だが、一方で訴訟に負けた場合

の支払金よりも、中長期的に影響するコーポレートレピュテーションの低下の方が損害

が大きい場合もあり、最初から情報を全てさらけ出し、潔く全面的に謝罪する事も検討さ

れて良い。

こうした内容の戦略は社長と広報部で話し合われると思われるが、予め専門のコンサ

ルタントと契約しておき、プロのアドバイスを受けながら戦略を決める事も有効である。

(6)不正行為によって子会社が金銭的損害を受けた場合の対応

子会社の役職員による不正行為によって、会社が金銭的な損害を受けた場合、筋を通し

た適切な対応を行う必要がある。特に横領等は犯罪行為であり、刑事告訴するのが筋であ

る。(小額の場合は告訴しない場合もあり得る)

一方告訴とは別に、民-民で損害金の返還交渉を行う必要がある。本人または親族など

から自主的に返還の申し出があった場合は、その内容を文書として残せばよいと思われ

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る。本人に返還の原資がなく、親族にも協力の意思がない場合、損害賠償訴訟の提起が有

効かどうか検討することになる。

(7)再発防止策の策定と周知徹底

事故や不祥事が起きた場合に、適切な再発防止策が策定されるかどうかは、徹底的な原

因解明が行われたかどうかという点にも関わる。例えば、事故や不祥事発生の原因に構造

的な問題が関わっていたり、役員が関わっていたりした場合に、これが社員のミスが原

因だと矮小化されてしまえば、適切な再発防止策は策定できない。再発防止策の策定は、

一般的に危機対策本部が指示し、事故や不祥事を起こした当該部門が作成して本部に提出

し、本部が有効性を確認した上で了解するという手順になるものと思われる。

一方、策定した再発防止策の周知・徹底も重要な要素である。ひとつの企業が同じ過ち

を 2 度繰り返した場合、それが社会や顧客に影響する問題の場合は、2 度目の社会からの

指弾は 1 度目を大きく上回る事になる。また行政からの処分がある場合は、更に重い処分

が下される可能性が高い。従って経営陣は少なくとも数年間、策定した再発防止策が企業

集団内で周知・徹底されているか情報を収集し、確認する必要がある。

(8)関係役職員の社内懲罰

社内で賞罰を行う場合は、常に公正な評価かどうかという問題が付きまとう。特に懲罰

を決める場合、関係法令+社内規程によって社内的な裁判を行うという意味合いがあり、

賞を与える場合以上に公正さが求められる。

懲罰を決めるのは人事部であるため、危機対策本部で調査された詳細情報が人事部に報

告されなければならない。また、懲罰対象者に近い役員等から何らかの圧力があった場

合でも、これを跳ね返すだけの権限が人事部には与えられているはずである。

人事部は懲罰の案を作成した後、社長に報告して承認を得るのが一般的と思われる。従

って人事部と社長は、懲罰に関するバランス感覚を持ち合わせている必要がある。過去

の事案と懲罰内容を列記した資料を参考とし、前例から逸脱しない範囲での懲罰を決める

事が肝要である。もちろん事案の内容が違うので、100%公正な判断を下す事は不可能だ

が、少なくとも恣意的な判断を下したり、当事者との距離感や同情などの要素が入り込ま

ないように留意する必要がある。社員から見たときに違和感のある懲罰が行われると、

自由闊達な社風の会社であっても、徐々に社員が萎縮していく恐れがある。

(9)内部統制システム改訂の必要性検討

企業集団内で大きな事故や不祥事が起きた場合、それが現行の内部統制システムの構

築・運用の不備によるものなのかどうか、取締役は判断しなければならない。取締役の

多くは、危機対策本部のメンバーに名を連ねると思われるので、この会議の中での議論

を通して内部統制システムに欠陥があるかどうか判断する事になると思われる。

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具体的にチェックをする項目は、企業集団全体に関する規程類の整備状況、子会社役員

会の機能状況、リスクに対応した業務手順確立と人員配置の状況、従業員教育、リスクが

顕在化した場合に速やかに報告する体制の整備状況などである。更に検討の結果、内部統

制システムの取締役会決議内容の不備(親会社または子会社、または双方)が原因と判断

された場合、当該会社の取締役は内部統制システムを修正して再度取締役会で決議しなけ

ればならない。

第5節 企業集団の内部通報制度に関する体制

現在、大企業の殆どは何らかの形で内部通報制度を持っているものと思われる。内部通

報制度は職制ラインで言えないことを中立的な第三者が聞くという一種の『目安箱』であ

り、この制度が実質的に機能することで、企業はリスクの芽を早期に摘む事が可能とな

る。

(1)内部通報制度が有効に機能するための条件

内部通報制度が有効に機能するための条件は以下のようなものが考えられる。

① 通報内容が確実に調査されること

② 顕名の通報であった場合は必ず調査結果を通報者に報告する事

③ 調査結果内容によっては、被通報者に対する何らかの処置が行われる事

④ 通報者が確実に保護されること

窓口の部門から見れば些細な問題と判断された場合でも、通報者本人は深刻な事情を抱

えている場合もあり、全ての通報について調査が必要かどうか判断し、調査の必要なし

と判断された場合は、その理由を通報者が納得するよう、感情の問題にも留意しながら分

かりやすく説明する必要がある。

これらを確実に行うためには、通報窓口の信頼性が重要であり、独立性が高く、しかる

べき権限のある組織が窓口を担当すべきである。また、通報窓口は通報の信憑性の判断や

調査方法の検討など、非常に判断の難しい業務を行うため、それに相応しい人材を配置す

る必要がある。また、①通報を受ける電話を無人の小会議室に設置する②セクハラの相談

をしやすいように、窓口担当部門の中に女性社員を配置する―などの細かい配慮が必要で

ある。

(2)通報者の保護

通報者の保護に関しては、通報窓口だけで対応できるものではなく、人事部門との緊密

な連携が必要である。通報者の保護は、その時だけでなく、少なくとも数年は経過を観察

する必要があるからである。

通報者が通報したことによって何らかの被害を受けるような事態が発生し、これが社

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内に伝われば、内部通報制度は瓦解する可能性があるので運用は厳格に行われるべきで

ある。しかしながら通報者の保護に関し、人事部門が内規やマニュアルを持っている会

社は少ないと想定される。通報窓口と人事部門の連係は、多くの会社にとって今後の課題

であると思われる。

(3)社外窓口のあり方

内部通報を受ける社外窓口に関しては、公開大会社の中でも設置していない会社がまだ

少なからず存在するのではないだろうか。設置しない理由としては、

① 内部通報制度のベネフィットを軽視し、コストを抑制したいという意識

② 不祥事情報に係る秘匿意識

などが、考えられが、『火種』はできるだけ小さいうちに消すのが原則であり、そのた

めには社外窓口を設け、可能な限り通報を受ける間口を広くする必要があると思慮する。

また、社外窓口を設けるに当っては、顧問弁護士事務所に通報窓口も兼務してもらうと

いう考え方は自然な流れのように思われる。当該企業の事業内容に通じているという点

では、通報者の訴えを理解し易い面もある。

しかし一方で、通報者が、社外窓口が顧問弁護士である事を知っている場合、第三者性

に疑問を持って通報することを躊躇する可能性もあり得る。本制度にとって、通報され

るべき重要な情報が、通報者の躊躇によって止まってしまう事が最も懸念される事態で

あるので、総合的に判断した場合、社外窓口は顧問弁護士事務所以外が望ましいと言える。

(4)企業集団全体をカバーする内部通報制度の構築と周知

内部通報制度は、企業集団全体をカバーする制度として構築すべきである。この場合の

制度内容は、企業集団内で全て統一すべきである。

子会社は一般的に、業種の広がりや人件費コスト圧縮の必要性などの影響で、年契約社

員・派遣社員・アルバイトなどの正社員以外の従業員比率が高いものと思われる。子会社

において、正社員以外の従業員にどこまで積極的に本制度を周知するかは、通報を受ける

会社側にとって微妙な問題を含む。つまり子会社の非正規雇用従業員にこの制度の積極的

な活用を促した場合、自分の処遇に関する不満等が多数通報される可能性があるからであ

る。これは、内部通報制度が従業員の不平・不満の『捌け口』になるリスクがある事を示

している。

こうしたリスクを勘案しても尚、『より客観的な目で末端の不祥事を洗い出そう』と

いう本制度の趣旨を貫徹するのであれば、できるだけ間口を広げて、企業集団全体の従業

員に積極的に周知できる方法を考えるべきである。

第6節 子会社の内部監査

殆どの公開大会社は内部監査部門を持ち、自社の各部門に対する内部監査を行っている

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ものと思われる。一方子会社に対する内部監査はどうであろうか。毎年全ての子会社に対

して行っている会社、重要子会社に対して行っている会社、子会社に対する監査をあまり

重要視していない会社など様々であると思われる。本項では、子会社に対する内部監査の

重要性について考察する。

(1)子会社の内部監査担当部署

スタッフ研究会の議論の中では、子会社に内部監査部署を持つ企業集団は少数派であっ

た。この点は一般的にも同じ傾向にあると思われ、従って、多くの会社では、親会社の内

部監査部署が子会社の内部監査についても実施するものと推察される。

(2)内部監査の実施頻度

内部監査部署は、会社が重要だと認識した子会社に対しては、毎年内部監査を行うのが

一般的であると思われる。その他の子会社については、2~3年程度に 1回の割合で監査

を実施することが望ましい。監査をすべき対象として重要かどうかの判断は、その子会

社の売上規模や従業員数を参考にするが、一方で仮に規模の小さな会社であっても、事業

の内容を判断してリスクを抱えているとみなされる場合は、監査対象として重要な子会

社となる。

(3)内部監査の実施方法

子会社の事業規模が相対的に大きい場合、業務上関連のあるいくつかの部門を括って 1単位とし、ひとつの会社で複数回の監査を行う必要がある。また監査に当っては監査用チ

ェックシートを作成するが、そのシートは共通項目と個別項目に分けて作成する事が望

ましい。

親会社として全子会社に共通して最低限実施させる必要があるリスクについては、共通

項目としてリストアップする。例えば確実な稟議決裁、法に準じた契約、業務情報・個人

情報の管理・保存、反社会的勢力の排除などである。

一方当該部門の個別チェック項目は、一般的にはリスク予防活動で取り組んでいるテー

マが確実に実施されているかどうかを、書類やヒアリングなどで確認する。またリスク

予防活動で取り上げているテーマ以外でも、リスク管理部門や監査部門が独自にリスクと

判断する要素があれば、それについても追加して確認を行う。

第7節 子会社の会計監査

(1)企業集団における会計監査の考え方

企業集団を構成する会社群の個々の会社の会計監査をどうするかは、主に親会社の経理

部門が方針を立てるものと思われる。会社法(328条)の規程によれば、非公開の子会社

といえども大会社には会計監査人を設置しなければならないが、大会社以外は自由であ

る。一般的な会社の方針とすれば、①できるだけひとつの会計監査人で企業集団をカバー

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する事②企業集団全体でできるだけコストを押える事―の 2 点に留意しながら全体の方

針を検討するものと思われる。

(2)具体的な方法

基本は親会社と同じ会計監査人に大会社である子会社の会計監査も任せるのが自然な考

え方と思われる。この方が連結決算の監査を行うに当っても、会社と会計監査人の意思疎

通が取りやすい。また大会社以外の子会社については、会計上のリスクが潜在するよう

な事業内容の会社については、法的な問題はなくとも会計監査人を付けることを検討す

ることが望ましい。

第3章 監査役の監視・検証のポイント企業集団内部統制の構築・運用ができているかどうかを監査役が判断するためには、

『3.取締役による企業集団内部統制システムの構築・運用』の項で記載された内容が履

行されているかどうかをチェックすれば良いということになるが、本項ではチェックの

ポイントについて記載する。

第1節 企業集団内部統制システム構築の準備

(1)監査の視点・業務

 監査役が期末の監査報告で、事業報告が適正に記述されていると認めるに当っては、内

部統制の整備状況が大きなポイントとなる。そのためには企業集団内で内部統制の仕組み

が統一的かつ実質的に構築・運用されていることを確認する必要がある。

 その第 1段階として、大会社以外も含めた企業集団全体で内部統制システムの取締役会

決議が行われているかどうかを確認する必要がある。もし決議が行われていない会社が

ある場合、その理由について親会社取締役に説明を求め、行わない明確な理由がない場合

は、取締役会決議を指示するよう要請すべきと思われる。

 また内部統制システムの構築・運用に必要な規程類の整備や親会社経営管理部門による

管理・監督が十分に行われているかどうかも確認し、必要な場合は取締役に申し入れを行

う。形式だけの内部統制システム取締役会決議では、企業集団全体のリスクを管理する事

ができないという点について、取締役と意識を共有する事が重要である。子会社に於け

る内部統制システムの実態を調査するためには、内部監査部門や子会社監査役との連係が

重要となる。

 スタッフは、監査役の指示に基づき子会社の内部統制システム構築・運用の実態を調

査・取りまとめ、報告する。また、往査や親会社内部監査部門・子会社監査役からのヒア

リング等について必要な実務を行う。

第2節 企業集団コンプライアンス体制の構築・運用

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(1)監査の視点・業務

監査役にとってコンプライアンスの問題は極めて重要な監査対象である。監査役は

『取締役が企業集団全体を包含するコンプライアンス体制を構築しているか』という視

点でチェックし、企業集団内で必要な体制が構築されているか確認し、不備があると判断

される場合は取締役に助言・提言する。

ここで言うコンプライアンス体制には、企業集団内で統一されたコンプライアンス方

針に基づいて構築・運用される以下の内容が含まれる。

① コンプライアンス関連規程類が子会社も含めて作成され、周知されているか。

② 子会社の事案にも対応できるコンプライアンス会議体の構築、及び規程に基づい

た適切な開催がなされているか。また、親会社コンプライアンス会議が子会社

事案も取り扱う場合、招集メンバーに監査役が含まれているか。

③ 子会社から親会社社長・所管部署・監査役への報告体制が構築されているか。

④ 子会社取締役へのコンプライアンス教育が継続的に行われているか。

⑤ 非定期雇用者が多い子会社従業員への適時・的確なコンプライアンス教育が行わ

れているか。

⑥ 企業集団内で発生した法令違反事案情報を、再発防止の観点から企業集団内で共

有する仕組みがあるか。

⑦ 規程で決められたコンプライアンス会議体は、取締役や子会社社長が主導した法

令違反事案を裁くことが可能な体制になっているか。

スタッフは、親会社及び子会社で策定され、保有しているコンプライアンス規程類を

入手・確認する等、監査役が企業集団コンプライアンス体制の構築・運用ができているか

どうかを確認するための材料・情報を提供する。親会社所管部署・子会社監査役・子会社

管理部などと連携を図り、ヒアリングなどを通じて、必要な情報を収集する。

第3節 企業集団のリスク顕在化予防体制

(1)監査の視点・業務

 企業の事故・不祥事などを事前に防止するためのリスク予防活動について、監査役もそ

の構築状況、運用内容を常にウォッチする必要がある。具体的には、リスク予防活動に関

する体制及び関連規程が整備されているか、その運用状態がどうなっているか、形骸化

していないか、不祥事が顕在化する前のリスクの所在が把握できているかなど、常に最

新の情報を入手し状況を把握しなければならない。

 特に監査役は、リスク予防活動が形骸化していないかどうかを常に確認し、実質的な効

果を上げる活動として PDCAサイクルを効果的に回しているかチェックする必要がある。

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 スタッフは、監査役の業務内容を良く理解し、スタッフはリスク予防活動が企業集団全

体で実質的に推進されているかという観点から情報を収集し、課題を発見した場合は監査

役に報告する。そのための情報ルート作りについて、日ごろから取り組む。

第4節 企業集団の危機管理体制

(1)監査の視点・業務

子会社で、重大な法令違反や製品事故などの不祥事が発生するリスクに対して、監査役

が備えておくべきことや、実際に期中に不祥事が発生してしまった場合に、監査役がと

るべき対応には、以下のような内容が挙げられる。

① 常に企業集団内の不祥事等の情報を入手するルートを確保しておく。

② 子会社における有効な危機管理対応組織の有無を確認する。また、未整備の場合

は速やかな整備を促す。

③ 子会社で不祥事が発生した場合は、取締役等が規程に則り、適切に初動対応して

いるかどうか確認する。

④ 調査委員会が設置された場合には、委員会メンバーの独立性などに問題は無いか

どうか、監査役の立場で判断する。

⑤ 調査委員会の調査結果の信憑性について、監査役の見識で検証する。

⑥ 会社が受けた被害に対して、法務部門や顧問弁護士などと十分に検討を行った上

で、刑事告訴や損害賠償訴訟などを行うか否かの判断がなされているか、恣意性

などは無いか確認する。

⑦ 策定された再発防止策に対して、執行部と違う立場で良く観察し、その妥当性を

検証するとともに、再発防止策の企業集団内への周知徹底を確認する。

⑧ 子会社の役職員による不祥事に対する懲罰が、公正・妥当に評価されたものかど

うか注視するとともに、疑義があると判断したときはその旨、申し入れる。

⑨ 不祥事等の問題が、内部統制システムの不備によるものか否かの検討がなされた

か確認するとともに、必要に応じて適切な措置がとられるように促す。

⑩ 監査報告の内部統制システムの構築・運用の評価は、期中の状況を適切に反映さ

せる。

 期末に監査役が監査報告を作成するに当り、事業報告の監査に関しては上記内容を精査

する必要がある。特に子会社事案が親会社に与える影響、また、内部統制システムとの関

係については監査役の立場で分析する必要がある。

スタッフは、子会社における、重大な法令違反や製品事故などの不祥事に対して、監査

役が速やか且つ効果的に対応できるように、常に企業集団内での人脈構築を意識し、最新

の情報を入手して監査役に提供できるよう努める必要がある。特に親会社とビジネス内

容が遠い子会社、立地が物理的に遠い会社などは、目が届きにくい可能性があるので、ス

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タッフは意識して情報収集を行う。

第5節 企業集団の内部通報制度に関する体制

(1)監査の視点・業務

監査役は、企業集団全体に対する内部通報制度の有効性を確認する必要がある。通常の

通報内容については、月次で担当窓口から概要の報告を受ける程度でも良い。但し、重大

な法令違反に関る恐れのある通報については、通報窓口から速やかに報告を受ける必要

がある。また、監査役は通報者の保護が本制度の有効性を担保するためのポイントであ

る事を理解し、保護の体制に懸念材料がある場合は、取締役に助言して改善を促す。

スタッフは、監査役の指示に基づき、企業集団の内部通報制度の機能状況について調査

し、報告する。また、普段から通報窓口や人事部門との連携を図り、内部通報内容の月次

報告を受けるほか、社員間で交わされる噂話にもアンテナを張っておくなど、非公式な

情報にも関心を持ち、収集に努める必要がある。

第6節 子会社の内部監査

(1)監査の視点・業務

監査役は、その職務を適切に遂行するため、親会社あるいは、子会社の内部監査部署等

関係者との意思疎通を図り、情報の収集に努める必要がある。監査役の子会社調査と内部

監査部署の子会社監査はその対象や内容が異なる点が多いため、情報を交換し、相互補完

することのメリットは大きい。これは親会社の内部監査部署であろうと、子会社の内部

監査部署であろうと同様である。双方の調査結果・監査結果を有効に活用することにより、

企業集団全体の調査・監査の実効性・効率性を高めることができる。

監査役が子会社内部監査結果を聴取する形式は様々あるが、一般的には月例・四半期

毎・半期毎などの定期報告会を持つ会社が多い。

なお、子会社内部監査の実施において、当該子会社に常勤監査役がいる場合はオブザー

バーとして立ち会う事が望ましいが、親会社の常勤監査役がオブザーバー参加すべきか

どうかについては各社各様である。この点については監査役の自主性・感性で決定すれ

ば良いものと思われる。

 スタッフは、子会社の監査を実施している親会社あるいは子会社の内部監査部署と監査

役との情報交換の場をセットする。なお、開催は定期的に行うことが望ましい。会合を

開催した際、スタッフはその議事録を作成するとともに資料等を含めて保管する。

 尚、スタッフ自身も時間が許す限り、子会社監査にオブザーバー参加することが望まし

い。自分の目で確認した子会社の状況を直接監査役に報告することにより、企業集団内部

統制に関する監査の精度を上げる事ができる。

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第7節 子会社の会計監査

(1)監査の視点・業務

連結決算を監査する責任は、会計監査人設置会社においては会計監査人にあるが、監査

役は会計監査人の監査報告が適正かどうかについて、監査報告に記載しなければならな

い(会社計算規則 127条)。従って監査役は、連結経営の視点を踏まえて、子会社の会

計監査についても適正に行われたかどうかを確認することが必要となる。また、監査役

は会計監査人からの報告を受けるだけでなく、連結範囲の子会社の会計について関心を持

ち、子会社監査役に対するヒアリングを行うなど、可能な範囲でチェックする必要があ

ると考えられる。

会計監査人設置子会社の場合は、子会社監査役が会計監査人の独立性や適正な監査環境

が保たれているかどうかを確認するが、監査役は子会社監査役から確認結果について報

告を受ける事が望ましい。監査役は子会社の会計監査人との連係・情報聴取を図ることも

必要であろう。

会計監査人非設置子会社の場合は、会計監査も子会社の監査役が行うことが基本となる

ため、子会社監査役の監査結果が適法意見であることを確認することが望まれる。一方で

当該会社の監査役がどのような監査を行ったのかについても、監査役は確認をする必要

があろう。このためにも、グループ監査役連絡会議や個別面談を通じて意見交換・情報交

換を行い、充分に事実・実態を把握し、連結決算に対する監査役の監査意見を形成するう

えでの合理的根拠を固めてゆかなければならない。

昨今、子会社を悪用した循環取引等による粉飾決算、裏金作りなどの疑い事例がマスコ

ミ報道されるようになってきた。これらの事例では、親会社の一部の役員等の確信犯で

ある場合が多く、また悪用される子会社についても、会計監査人のいない連結外子会社の

場合もあると考えられるので、監査役がチェックすべき企業集団は、連結子会社だけで

良いとも言い切れない。何に注目して企業集団のチェックを行うかは、監査役のスタン

ス・感性にも関わるものと思われる。

スタッフは、子会社会計監査の主体が

① 親会社と同一の会計監査人

② 親会社と違う会計監査人

③ 当該子会社監査役

の 3 つのケースがある事を理解し、監査役の指示のもと、それぞれのケースにおいて必

要な業務を行い、連結における会計監査に対する監査役の意見形成がどのような道筋で行

われるかを理解する必要がある。

また、監査役が会計監査人から連結範囲の四半期決算報告を受ける場合に加え、監査役

の指示に基づいて必要な面談をセットする。子会社の個社ごとの報告を会計監査人または

子会社監査役から受ける場合は、面談のセッティング、面談録作成などの業務を行う。

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第4章 非公開会社の子会社に関するその他のポイント

第1節 親会社監査役による子会社調査

(1)子会社調査の必要性

『監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して

事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況を調査することができる』 (会社法 381条 3 項)。つまり、子会社自体を監査し、意見を述べるのは子会社の監査役の

権限であり、監査役は子会社を常に監査する権限はないが、監査役として職務を行う必要

がある時のために、子会社に対する調査権が付与されているということである。

一方で前述したように、会社法施行規則第 100条 5 項には株式会社の業務の適正を確

保するための体制として「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団に

おける業務の適正を確保するための体制」の整備が取締役に義務付けられており、監査役

の職務が、取締役の職務の執行を監査することである以上、監査役は子会社における業務

の適正性が確保されていることを監視・検証しなければならない。

【参考】

日本監査役協会 監査役監査基準第 22条、「企業集団における監査」には下記のよう

に規定されている。

監査役監査基準第 22条、「企業集団における監査」

1.子会社及び重要な関連会社を有する会社の監査役は、連結経営の視点を踏まえ、取締

役の子会社等の管理に関する職務の執行の状況を監視し検証する。

2.監査役は、子会社等において生じる不祥事等が会社に与える損害の重大性の程度を考

慮して、内部統制システムが会社及び子会社等において適切に構築・運用されているか

に留意してその職務を執行するとともに、企業集団全体における監査の環境の整備にも

努める。

(2) 子会社調査の方法

子会社調査は、往査をもって行うのが一般的である。監査役は通常、重要な子会社には

年 1回程度は往査し、子会社の代表取締役等と面談を行う。

企業集団全社に対して毎年往査するに越したことはないが、年間スケジュール上難し

い場合は、子会社の売上規模・重要性やリスク発生可能性等をランク付けし、優先順位に

基づき往査計画を立てるのが現実的である。

子会社往査は常勤監査役が中心になって行うが、社外監査役にも往査計画を送付し、都

合がつく範囲で参加を要請することが望ましい。

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監査役の子会社往査は、通常代表取締役等との面談で目的を達することができるが、子

会社の業務を管掌する取締役の職務の執行を監査するため必要がある場合は、子会社に対

して業務の報告を求め、またはその業務及び財産の状況を調査する。(但し、正当な理由

がある時は子会社にも拒否権がある)

(3) 子会社調査の事前準備

子会社往査を行う際は、事前に調査票(※)を送付して回答を得てから面談することが

望ましい。調査票の内容は、コーポレートガバナンス・内部統制・コンプライアンス・

リスクマネジメントなどが考えられる。監査役監査の目的を理解せず、監査役が子会社

の業績に関心があると勘違いする子会社社長も少なからず存在するため、面談の目的を

お互いにはっきりさせておくためにも調査票は必要なものだと言える。

※ 調査票のサンプルについては、参考資料「監査役関係会社往査事前ヒアリング資料」

をご参照頂きたい。

(4)子会社調査の記録

子会社社長面談録(往査調書)は、必ず記録し、保管する(紙媒体、デジタル媒体は問

わない。監査調書については「監査調書のあり方」参照)。面談録はスタッフが同行した

場合はスタッフが作成し、監査役の承認を受けた上でスタッフが保管する。

(5)子会社監査役との情報交換

企業集団の全監査役(常勤・非常勤問わず)との情報共有のために情報連絡会を年 2~

4回開催し、情報交換を行うのも子会社の状況を把握するのに有効な手段である。また、

子会社の常勤監査役にすれば、日頃あまり入らない親会社の情報を入手できる良い機会で

あるという意味合いもあって、お互いにメリットがあると思われる。

また定期的な情報交換会とは別に、監査役と子会社監査役は必要に応じて随時連絡を取

り合うことが望ましい。こうした場で監査役は、監査役協会『内部統制システムに係る監

査の実施基準』に示されている以下の項目を見逃さないよう、密な情報聴取を行う必要が

ある。

① 子会社に対して達成困難な事業目標や経営計画を設定し、その達成のため当該子

会社または企業集団全体の健全性を損なう過度の効率性が追求されていないか。

② 子会社を利用した不適正な行為に関して、会社がその状況を適時に把握し、適切

な改善措置を講じる体制が構築・運用されているか。

③ 会社に親会社がある場合、少数株主の利益を犠牲にして親会社の利益を不当に図

る行為を防止する体制が構築・運用されているか。

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第2節 子会社の監査役・スタッフ体制

(1)子会社の監査役体制

子会社の監査役体制については、その人数、および常勤監査役を置くかどうかなどの選

任基準があるか否かが一つのポイントになる。明文化された規程などを持っている会社

は殆どないと思われる。また常勤監査役を置く場合においても、1 社のみに常勤する場合

と、常勤 1 社のほかに何社かを兼務する場合がある。この辺はあるべき論を展開するだ

けの材料がなく、親会社の考え方次第であろう。

研究会での議論では大半の会社には基準がないとのことであったが、研究会のある会

社では、

① 株式非公開会大会社は 2名② ① かつ US-SOX404条対象会社は 2名で、内 1名は常勤監査役

とし、基本的に経理・財務経験者あるいは内部監査部門経験者としていた。ひとつの参考

となるだろう。

次に、常勤監査役を置けない子会社の場合、次の 4 つのケースが考えられる。

① 親会社監査役が兼務する

② 親会社監査役スタッフが兼務する

③ 親会社経営管理部門(経理部など)社員が兼務する

④ 他の子会社常勤監査役が兼務する

一概には言えないものの、概ね会計中心に監査する子会社の場合は、親会社経理系社員

を兼務監査役で置くケースが多いと推定される。一方、取締役の職務監査に加え、内部統

制システムの構築・運用をきめ細かく監査する必要がある子会社の場合は、①、②、④を

使い分けるものと思われる。

親会社経営管理部門社員が子会社監査役を兼務する場合、取締役会への出席と会計のチ

ェックが精一杯であり、特に決算時期の繁忙期は親子で重なるため、過大な負担が掛かる

可能性がある。こうした環境下で子会社監査の責任を果たすためには、親会社の社員とし

て評価する場合に、子会社監査役としての職務を明確に区別して評価・処遇すべきであろ

う。

監査役は子会社の監査役(スタッフ)体制について評価・分析し、恒常的なマンパワー

の不足がないかどうか確認することが肝要であろう。マンパワーに不足があり、企業集

団全体の監査活動に支障を来たすと判断される場合は、親会社に提言することも検討すべ

きである。

(2)子会社のスタッフ体制

子会社に監査役スタッフを置くかどうかについても、監査役同様、グループ内アンケ

ートで殆どの会社で基準を持たないとの結果が出た。また子会社に監査役スタッフを置

いている会社も極めて少数派であり、一般の非公開子会社においても、スタッフを置い

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ているのはレアケースと思われる。またスタッフを置く場合でも、兼務スタッフとなる

場合が多いと推察される。

これは子会社の場合、公開会社である親会社とは残すべき調書や証跡のボリュームが違

うため、常勤監査役がいる場合はスタッフを必要とせず、常勤監査役がいない会社につ

いては、スタッフのみを置くのは不自然であり、まずは常勤監査役設置(兼務も含め)

を優先して検討するということであろう。

但し、子会社に内部監査部門を置かない(置けない)企業集団は多いと推察され、常勤

監査役を置かずにスタッフのみ置いて、内部監査の実質的な機能も兼務させるケースは

あり得る。この点に関しては、今回の検討グループ内の会社の中にも、内部監査機能と監

査役スタッフ機能を兼務する社員を子会社に置いているという会社もあった。

(3)子会社の監査役・スタッフ選任基準の必要性

子会社の監査役・スタッフについては、親会社人事部の政策(役員・管理職経験者処遇

等)、あるいはメインバンクからの人材受け入れなどの要素によって決定されるケース

もあると考えられる。一方、企業集団内の優秀な若手・中堅社員にこうした経験をさせ、

将来の幹部・役員候補として育成していくためのキャリアパスとする前向きな考え方も

ある。それぞれの企業集団の事情もあると思われるが、公開親会社の傘下にある非公開子

会社の監査役・スタッフ体制の望ましい選任基準については、今後大いに研究されるべ

きであろう。

(4)子会社監査役の業務マニュアル

子会社の監査役業務マニュアルについては、作成していない会社が多いものと思われ

る。一言で子会社監査役と言っても、機関設計や規模、常勤か非常勤かなどによって、監

査役が行っている業務の内容は様々なのが実態である。従って、マニュアルをまとめる

としても、親会社主導によって、ある程度共通する事項をまとめた簡易版を作成する程度

で良いのではないだろか。

(5)企業集団内の監査役の情報交換

大半の会社で、監査役と子会社監査役との情報連絡会を、年 2~4回程度実施している。

スタッフは、連絡会の日程調整・議事録作成などの実務を行うばかりでなく、子会社監査

役・スタッフと日頃から連携を取り、連絡会以外でも随時相談し合えるような関係を構築

すべきである。

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おわりに(総括)本稿では親会社から見た子会社である非公開会社の監査のあり方について考察してきた。

その元になったのが、研究会のグループで行ったアンケートと議論である。そこから明

らかになったことは、グループ参加各社の対応がまちまちであり、一律でないことであ

った。 

その原因として考えられる事は、等しく会社法の適用を受ける立場でありながら、非

公開連結子会社の場合、外部株主を意識する必要がないという点と思われる。従って各社

とも、非公開連結子会社の監査のあり方については、望ましいあり方、具体的にはどの

くらいのマンパワーが必要かという点について、模索している状況と言える

 親会社の視点から子会社の監査について述べると、子会社の業務執行について親会社監

査役に直接的に監査する義務を課すものではない。しかし、子会社における不祥事が企業

グループ全体に損害を与える危険性を念頭に、監査役は親会社が企業集団内部統制を適切

に構築・運用しているかを確認する必要があると考えられる。日本監査役協会の最新の監

査役監査基準においても、企業集団の監査の基本として、「連結経営の視点を踏まえ、取

締役の子会社等の管理に関する職務の執行の状況を監視し検証する」とされており、子会

社を有する親会社の監査役の職責は大きいと言わねばならない。

昨今、親会社が子会社を利用する形での不祥事がいくつか報道されており、こうした事

態を防ぐためには、親会社からの視点と子会社からの視点で監査役監査を概観し、お互い

に連携を深める事が重要になってくる。親会社の視点からは本稿で述べているので、子

会社の視点で見た場合は、第 1 チームの報告に譲ることとする。

最後に、親会社の視点からもう一言述べると、今後『多重代表訴訟制度』が導入される

ような事があれば、各社とも、子会社取締役人事はもちろん、子会社監査役人事について

も、『どこまで常勤監査役設置会社を広げるか』『子会社監査役に相応しい適性とは何

か』『子会社監査役にマニュアルが必要か』『子会社監査役の育成をどのように進める

か』などの課題に直面する事になると思われる。こうした局面にスムーズかつ柔軟に対

応するためには、日頃より親会社の立場から『子会社の監査のあり方』について研究・検

討しておく事が望ましいのではないだろうか。

―以上―

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■ 参考資料

監査役関係会社往査事前ヒアリング資料

お手数ですが、監査役の往査ヒアリングの際の事前資料とするため、回答期限までに下

記の項目についてご回答いただき、メールに社長捺印済PDFを添付するか、または社内

便にて○○監査役室にお送りいただきますようお願いいたします。 

回答期限 ○年○月○日 (株)○○監査役室 御中(○○宛て)           年  月  日

会社名

記入者               印

社 長               印

*下記質問に関し、「はい」又は「いいえ」のどちらかに○を付け、( )内には差し支

えない範囲で具体的にご記入下さい。

1.コーポレートガバナンスについて1)適正・適切な意思決定① 取締役会開催回数    回/前年度  

 監査役出席人数 延べ  人/前年度

② 取締役・監査役は制限なく自由に発言し、意思決定が適正に行われていますか。

                             はい ・ いい

2)監査役の業務環境について① 監査役が、取締役・執行役員・社員からいつでも必要な情報を収集できる体制が整備

され、十分な情報を収集できていますか。

はい ・ いいえ

② 社長と監査役との定期的会合が設定されていますか。

はい ・ いいえ

 昨年度、定期・不定期に関らず、会合があった場合はその回数をご記入ください。

(     回/年)

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2.内部統制について1)業務の有効性・効率性①貴社の組織、業務フローは、事業目的を達成するために有効、かつ効率的ですか。

はい ・ いいえ

いいえの場合、何か具体的に課題を抱えていますか。

                                       )

② 人員は過不足なく適正に配置されていますか。

はい ・ いいえ

いいえの場合、何か具体的に課題を抱えていますか。

                                       )

2)財務報告の信頼性①決算の体制(手続規程、マニュアル、システム等)が整備されていますか。

はい ・ いいえ

② 上記体制の適宜見直しを行っていますか。            はい ・ いい

③ 親会社への連結決算用データの適時提出の体制は整備されていますか。

はい ・ いいえ

④単独で納税している会社にお聞きします。税金計算・納税手続きに関する体制(手続

規程、マニュアル、システム等)は整備されていますか。

はい ・ いいえ

⑤連結納税を実施している会社にお聞きします。連結納税のために必要な情報・その報

告ルールやルートが明確になっており、適時に報告できる体制になっていますか。

はい ・ いいえ

⑥公認会計士または監査役による昨年度の会計監査で、財務情報に関する指摘を受けた

事項がありますか。

はい ・ いいえ

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はいの場合、指摘の具体的な内容をご記入下さい。

                                       )

3)法令遵守① 法令遵守に関し、貴社で行っている施策を全て選んで四角の中にレ点を入れるか、ま

たは黒く塗り潰してください。貴社の事業内容に該当しない項目は無視していただいて

結構です。

    □建設業法の遵守

    □下請法の遵守

    □宅建業法の遵守

    □マンション管理適性化推進法の遵守

    □独占禁止法の遵守

    □環境関連法令の遵守

 □個人情報保護法の遵守

    □労働基準法の遵守

□労働安全衛生法の遵守

□特許・著作権等の知的財産権関連法の遵守

□法人税法等、関係税法の遵守

□その他業法の遵守(旅館業法・保険業法等)

□その他関係法令の遵守(消防法・食品衛生法・人材派遣法等)

以上の法令に関し、過去 2年間で監督官庁、税務当局等から立ち入り調査、行

政指導・処分等を受けたことがありますか。

はい ・ いいえ

     はいの場合、その時期と内容をご記入下さい。

    (

                                 )

    □役職員の諸経費の不正使用、及び業務上横領等をチェックする仕組みがある。

(会社法、刑法等の遵守)

    「仕組みがある」にチェックした場合、何か具体的な取り組みをされています

か。

    (

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                                       )

    □寄付、政治献金、諸団体への入会、株主への利益供与、役職員のインサイダー

取引等についてチェックするしくみがある。

    □上場会社としてのHCが、重要な子会社情報を適時開示するための報告体制の

     整備

② 業法等の法令を遵守しながら業務を推進するために、どのような従業員教育を行って

いますか。

( 

                                       )

4)資産の保全① 会社の有形資産(保有不動産、固定資産等)について何か問題はありますか。ある場

合は具体的にご記入下さい。

                                       )

② 会社の無形資産(人材、知的財産権、ノウハウ、ブランド、コーポレートレピュテー

ション等)について何か問題はありますか。ある場合は具体的にご記入下さい。

                                       )

5)統制環境①貴社のトップは朝礼等の場で自社が向うべき方向について分かりやすく説明し、その

方向性が全役職員で共有されていますか。

はい ・ いいえ

②貴社の企業風土で何か気になる点はありますか。ある場合は具体的にご記入下さい。

                                       )

6)リスクの評価と対応① 取締役会で決定すべき案件について、事前にリスクを分析する組織があり、機能して

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いますか

□組織があり、機能している(組織名            )

□組織はあるが、あまり有効に機能していない(組織名             )

□組織がない

②貴社の役員はリスク予防活動の内容を把握していますか。

□トップ始め、全役員が良く把握している

□一部、無関心な役員がいる

□リスク予防活動に関して役員はあまり熱心ではない

③ 貴社の事業において、現在最大のリスクと考えているものは何ですか。

                                       )

④ 貴社は地震や新型インフルエンザ等に対応する事業継続計画(BCP)を策定しまし

たか。

□ 策 定 済 ( テ ー マ :

 )

□まだ策定していない

⑤ まだ策定していない会社にお伺いします。今後策定の予定はありますか。

□ある(                 のテーマに関して      頃策定予

定)

□ない

□現在策定中(              のテーマに関して      頃完成予

定)

⑥ 貴社が入居する事務所ビルに関して心配事はありますか。

□ 新耐震以前のビルなので、耐震性に不安がある

□ 消防設備の不備、防火訓練の未実施等、火災に不安がある

□ セキュリティが弱く、防犯に不安がある

□ そ の 他 (

 )

⑦ 貴社には、危機に遭遇した時、それにタイムリーかつ的確に対応する仕組み(危機管

理規程、マニュアル等)がありますか。

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ある ・ ない

7)統制活動①貴社は、内部統制システムが適正に運用されるための規程・マニュアルその他社内ル

ールを整備していますか。

はい ・ いいえ

②貴社の事業を推進する上で、各業務の責任者が誰であるか明確になっていますか。

はい ・ いいえ

③貴社の業務の中に、誰も責任を持たない空白域はありますか。

□ あ る ( 具 体 的 に

 )

□ない

□把握できていないが、空白域が存在する可能性はある

④貴社の取引相手について、信用調査・反社チェックを行う仕組みがありますか。

【信用調査】

□新規取引先のみ行っている

□新規取引先に加えて、既存取引先についても定期的、または懸念がある場合には調査を

行う

□信用調査は行っていない

【反社チェック】

□新規取引先のみ行っている

□新規取引先に加え、既存取引先についても定期的、または懸念がある場合にはチェック

する

□反社チェックは行っていない

⑤全国の自治体で暴力団排除条例が施行されましたが、貴社はこれに対応していますか。

□新規契約について、暴力団排除条項を入れている

□新規契約に加え、締結済の契約についても順次、排除条項を入れた内容に変更している

□暴力団排除条例には対応していない

8)情報と伝達①貴社のトップから担当者に至るまでの上下間において、情報の伝達・報告体制はタイ

ムリーに機能していますか。

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□問題なく機能している

□基本的には機能しているが、少し問題を抱えている

□問題がある

問題がある場合は具体的にご記入下さい。

                                       )

②貴社の組織において、部門間の横の情報交換、またグループ会社間の情報交換はタイ

ムリーに機能していますか。

□問題なく機能している

□当社内の組織間情報交換に問題がある

□グループ会社との情報交換に問題がある

問題がある場合は具体的にご記入下さい。

                                       )

③ 社外との情報交換はタイムリーに機能していますか。

□ 問題なく機能している

□ 基本的には機能しているが、少し問題を抱えている

□ 問題がある

問題がある場合は具体的にご記入下さい。

                                       )

④社外との会議や打合せを行った場合、必ず議事録や面談録等を残すように指示してい

ますか。

□ 指示しており、実際に残している

□ 指示はしているが、なかなか徹底していない

□ 特にそのような指示は出していない

⑤クリーンデスクを啓蒙し、業務に関わる資料(紙情報)は、夜間・休日の社員不在時、

施錠管理していますか。

はい ・ いいえ

9)モニタリング①貴社は内部監査規程を策定し、独自に監査活動を行っていますか。

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はい ・ いいえ

はいの場合具体的にご記入下さい。

                                       )

② 親会社(HC、HA)が監査を行う場合に、サンプルの提出等、タイムリーに協力す

る体制はできていますか。

はい ・ いいえ

③ 監査法人等が監査を行う場合に、タイムリーに協力する体制はできていますか。

はい ・ いいえ

10)ITへの対応①貴社の業務を効率化し、信頼性を高めるために情報システムを活用していますか。

はい ・ いいえ

②貴社は情報システムの構築・運用・メンテナンスに十分な予算を確保していますか。

□十分な予算を確保し、問題はない

□予算が十分に確保できないので、一部問題がある

□情報システム構築に回す予算がないので、人海戦術に頼っている部分がある

③サーバーのセキュリティ確保、サーバーへのアクセス制限、対外メールのセキュリテ

ィ確保、ワードやエクセルデータの捏造防止等、ITを活用する上でセキュリティを確

保するように指導していますか。

はい ・ いいえ

3.コンプライアンスについて1)役職員教育貴社では役職員に対するコンプライアンス教育を行っていますか。

□役員、社員、その他従業員全員に教育を行っている

□役員、社員には行っているが、その他従業員までは行っていない

□コンプライアンス教育は特に行っていない

2)社外利害関係者に対するコンプライアンス①貴社には、顧客やその他利害関係者からのクレームや意見を受け付ける組織・窓口は

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ありますか。

ある ・ ない

② 現在、顧客またはその他利害関係者と係争になっている案件はありますか。

ある ・ ない

「ある」の場合具体的にご記入下さい。

                                       )

3)従業員に対するコンプライアンス① 従業員の労働時間管理に何か問題はありますか。

ある ・ ない

「ある」の場合具体的にご記入下さい。

                                       )

② 従業員の健康管理、メンタルケアに何か問題はありますか。

ある ・ ない

「ある」の場合具体的にご記入下さい。

                                       )

③職場でのハラスメント(セクハラ・パワハラ)の問題にどのように対応していますか。

□ハラスメントは発生していない

□懸念はあるので、兆候があった場合は担当役員や人事担当者がヒアリングしている

□ハラスメント事例が発生し、現在対応している

□可能性はあるが、実際に発生しているかどうか職場の状況を把握していない

④貴社の内部通報制度の窓口はどこですか。

□HCリスク統括部

□HAリスク統括部

□貴社独自窓口

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⑤内部通報制度について、従業員に対して制度の説明を行うなど周知への対応はされて

いますか。                          

はい ・ いいえ

⑥過去1年間の通報受信回数は把握していますか。          

□把握している(   回)

□把握していない    

通報があった場合、その内容と対応を差し支えない範囲でご記入ください。

                                       )

4)コンプライアンス対策委員会2010年度、及び 2011年度現在までにおいて、コンプライアンス対策委員会は開催され

ましたか。

はい ・ いいえ

「はい」の場合は開催時期と概略をご記入下さい。

                                       )

その他のリスク項目や問題と考えておられる懸念事項があれば下欄にご記入ください。

以上

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本部監査役スタッフ研究会 平成 24年度第 3 グループ第 2 チーム メンバー表

会社名 氏名 備考

㈱小松製作所 色摩 健夫 幹事

㈱長谷工コーポレーション 山田 政一 グループリーダー

曙ブレーキ工業㈱ 鎌子 健

味の素㈱ 広瀬 文則

キリンビバレッジ 石井 孝明

西武鉄道㈱ 荒井 啓一

セントラル警備保障㈱ 寺田 晶

全日本空輸㈱ 渡部 浩志

西松建設㈱ 那須 功司

日産トレーデイング㈱ 河口 裕昭

日立キャピタル㈱ 中島 雅昭

富士ゼロックス㈱ 石井 秀明

平和不動産㈱ 溝渕 英之

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