農林中金総合研究所 年 月 日号 - nochuri.co.jp · 農林中金総合研究所 2020 年2...

11
農林中金総合研究所 2020 2 14 日号 調査第二部 農林中金総合研究所 無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。 木村 俊文 ≪来週の注目材料≫ イベント ・FOMC 議事要旨(19 日):同会合では金融政策の現状維持を決定し、しばらくの間は政策金利を据 え置くことを示唆した。どのような議論が交わされたのか注目。 ・米民主党の大統領候補者討論会(19日):この会合からブルームバーグ氏が本格参戦する予定。 全米の支持率で第 3 位の同氏がスーパーチューズデー(3/3)に向けて勢いに乗れるか注目。 ・新型肺炎:引き続き動向には要注意。19 日に発表される 1 月の訪日外客数で、中国を中心とする 感染拡大の影響がどの程度現れるか注目。 ・G20 財務相・中央銀行総裁会議(22~23 日):新型肺炎への対応策も協議される予定。 経済指標 ・国内 17 日「GDP(10~12 月期第 1 次速報)」:当総研では、消費税率の引き上げや自然災害・暖 冬による影響などから、5 四半期ぶりのマイナス成長を予想。 ・米国19日「住宅着工(1月)」:低金利を背景に持ち直し傾向が続いているが、市場予想では、 12 月の大幅増(前月比 16.9%)の反動で 4 ヶ月ぶりに減少する見通し。 ≪マーケットの動き≫ ≪来週のスケジュール(2/17~2/23)≫ 月 日 国内の予定 海外の予定 2 月 17 日(月) 「GDP(10~12 月期)」(5p に予測掲載) 「鉱工業生産(12 月確報)」 欧 「建設支出(12 月)」 米 休場(プレジデンツデー、大統領の日) 2 月 18 日(火) 日産自動車の臨時株主総会(横浜市) 5 年利付国債入札(1.9 兆円) 欧 「ZEW 景況感(2 月)」 米 「ニューヨーク連銀製造業指数(2 月)」 米 「NAHB 住宅市場指数(2 月)」 2 月 19 日(水) 「機械受注(1 月)」(5p に予測掲載) 「貿易統計(1 月)」(5p に予測掲載) 「訪日外客数(1 月)」 国庫短期証券(1Y)入札(1.9 兆円) 欧 「経常収支(12 月)」 米 「生産者物価(1 月)」 米 「住宅着工・建設許可件数(1 月)」 米 FOMC 議事要旨(1/28-29 開催分) 米 ダラス連銀総裁講演 米 クリーブランド連銀総裁講演 米 ミネアポリス連銀総裁講演 米 民主党の大統領選候補者討論会(ネバダ州) 2 月 20 日(木) 20 年利付国債入札(0.9 兆円) 欧 「消費者信頼感(2 月)」 欧 ECB 理事会議事要旨(1/23 開催分) 米 「フィラデルフィア連銀製造業指数(2 月)」 米 「新規失業保険申請件数(2 月 15 日週)」 米 「失業保険継続受給者数(2 月 8 日週)」 米 「景気先行指数(1 月)」 今週の実績 14日 午前 来週の予想 (資料)Bloombergより作成 (注)来週の予想は当社予想。 109.56~110.13 109.81 横ばい 小幅上昇 為替レート (1ドル=円) 23,603.48~23,908.85 23,704.59 長期金利 (10年国債利回り、%) 株価 (日経平均株価、円) -0.060~-0.030 -0.030 横ばい https://www.nochuri.co.jp 1

Upload: others

Post on 31-May-2020

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

農林中金総合研究所 2020 年 2 月 14 日号

調査第二部

農林中金総合研究所

無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも

のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。

木村 俊文

≪来週の注目材料≫

イベント・FOMC 議事要旨(19 日):同会合では金融政策の現状維持を決定し、しばらくの間は政策金利を据え置くことを示唆した。どのような議論が交わされたのか注目。・米民主党の大統領候補者討論会(19 日):この会合からブルームバーグ氏が本格参戦する予定。全米の支持率で第 3位の同氏がスーパーチューズデー(3/3)に向けて勢いに乗れるか注目。・新型肺炎:引き続き動向には要注意。19 日に発表される 1月の訪日外客数で、中国を中心とする感染拡大の影響がどの程度現れるか注目。・G20 財務相・中央銀行総裁会議(22~23 日):新型肺炎への対応策も協議される予定。

経済指標 ・国内 17 日「GDP(10~12 月期第 1 次速報)」:当総研では、消費税率の引き上げや自然災害・暖冬による影響などから、5四半期ぶりのマイナス成長を予想。・米国 19 日「住宅着工(1 月)」:低金利を背景に持ち直し傾向が続いているが、市場予想では、12 月の大幅増(前月比 16.9%)の反動で 4ヶ月ぶりに減少する見通し。

≪マーケットの動き≫

≪来週のスケジュール(2/17~2/23)≫

月 日 国内の予定 海外の予定

2 月 17 日(月) 「GDP(10~12 月期)」(5p に予測掲載)

「鉱工業生産(12 月確報)」

欧 「建設支出(12 月)」

米 休場(プレジデンツデー、大統領の日)

2 月 18 日(火) 日産自動車の臨時株主総会(横浜市)

5 年利付国債入札(1.9 兆円)

欧 「ZEW 景況感(2 月)」

米 「ニューヨーク連銀製造業指数(2 月)」

米 「NAHB 住宅市場指数(2 月)」

2 月 19 日(水) 「機械受注(1 月)」(5p に予測掲載)

「貿易統計(1 月)」(5p に予測掲載)

「訪日外客数(1 月)」

国庫短期証券(1Y)入札(1.9 兆円)

欧 「経常収支(12 月)」

米 「生産者物価(1 月)」

米 「住宅着工・建設許可件数(1 月)」

米 FOMC 議事要旨(1/28-29 開催分)

米 ダラス連銀総裁講演

米 クリーブランド連銀総裁講演

米 ミネアポリス連銀総裁講演

米 民主党の大統領選候補者討論会(ネバダ州)

2 月 20 日(木) 20 年利付国債入札(0.9 兆円) 欧 「消費者信頼感(2 月)」

欧 ECB 理事会議事要旨(1/23 開催分)

米 「フィラデルフィア連銀製造業指数(2 月)」

米 「新規失業保険申請件数(2 月 15 日週)」

米 「失業保険継続受給者数(2 月 8 日週)」

米 「景気先行指数(1 月)」

今週の実績

14日 午前

来週の予想(資料)Bloombergより作成 (注)来週の予想は当社予想。

109.56~110.13

109.81

横ばい小幅上昇

為替レート(1ドル=円)

23,603.48~23,908.85

23,704.59

長期金利(10年国債利回り、%)

株価(日経平均株価、円)

-0.060~-0.030

-0.030

横ばい

https://www.nochuri.co.jp

1

農林中金総合研究所 2020 年 2 月 14 日号

調査第二部

農林中金総合研究所

無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも

のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。

2 月 21 日(金) 「消費者物価(1 月全国)」(5p に予測掲載)

「全産業活動指数(12 月)」

国庫短期証券(3M)入札(4.44 兆円)

欧 「製造業・サービス業 PMI(2 月)」

欧 「消費者物価(1 月)」

米 「製造業・サービス業 PMI(2 月)」

米 「中古住宅販売(1 月)」

米 ダラス連銀総裁講演

2 月 22 日(土) 米 ネバダ州党員集会

G20 財務相・中央銀行総裁会議(~23 日、サウジアラビア)

2 月 23 日(日) 天皇誕生日

【お問い合わせ先】

お気づきの点やご意見・ご要望がございましたら、お気軽にお寄せください。

調査第二部 木村 03-6362-7766 [email protected] まで

https://www.nochuri.co.jp

2

農林中金総合研究所

1.今週のレビューと来週の指標予測 南 武志

① 今週のレビュー

来週 17日には消費税率引上げ直後である 10~12 月期のGDP第 1 次速報が発表される。マイナス成

長が既定路線であるが、新型肺炎の影響によって足元の 1~3月期も 2 期連続のマイナス成長、さらには

20 年度の成長率もマイナスになるのでは、といった悲観論が急浮上している。その割に、株価は比較的

底堅く、下げ渋っているのは何とも不気味でもある。

この新型肺炎が国内経済に与える影響については、昨年夏頃、視界不良だった米中通商協議と同様、

想定の置き方次第で見通しの数字が全く変わるので、予測担当者泣かせである。はっきり言えば、ヒト・モ

ノ・カネの流れがいつまでどの程度止まり、いつ、どういうテンポで回復するのか、今のところ見当がつか

ない。基本データを眺めると、例えばインバウンド需要関連でいうと、2019 年の中国からの訪日客数は

9,594 千人(全体の 30.1%)、平均宿泊数は 7.4 日(全体平均は 8.8 泊)、旅行消費額は 1 兆 7,718 億円

(全体の 36.8%)であった。仮に、中国からの訪日客が半分になれば、20 年のインバウンド需要は直接的

に 1 兆円弱減る可能性がある。中国以外からの訪日客数も減れば、それ以上の減少となる。五輪開催で

どの程度相殺できるか、といったところか。さらに、間接効果(マイナス面だけでなく、除菌・消毒関連の商

品・サービスの需要が高まるといったプラス面も)を考慮すべきである。さらに、中国での生産活動の停滞

によってサプライチェーン障害が発生すれば、部品供給が止まり、国内の産業活動にも影響が出ている

可能性も考慮しなくてはならない。なお、2009年の新型インフルエンザの際には、国内で200名程度の死

者が出た(今回はまだ 1 名(13 日現在))が、今後の感染の広がりにも注意が必要だ。

さて、政府は 13日には新型肺炎に関する緊急対策の第 1弾を取りまとめた。総額は 153億円で、予備

費から 103 億円を捻出する。その主な内容は、①帰国者等への支援(30 億円)、②国内感染対策の強化

(65 億円)、③水際対策の強化(34 億円)、④影響を受ける産業等への緊急対応(6 億円)、⑤国際連携

の強化等(18 億円)、となっている。そのほか、観光業などを営む中小企業に対して日本公庫などを通じ

て当面の運転資金を確保するための資金繰り支援(5,000 億円枠)を行う、としている。

以下、今週までに発表された主な経済指標を振り返っていきたい。まず、先週 7 日午後に発表された

12月の景気動向指数によれば、CI一致指数は94.7と下げ止まったものの、基調判断は5ヶ月連続の「悪

化」であった。1月分が前月差で 3.3ポイント以上の改善となれば「下げ止まり」へ上方修正されるが、その

可能性は薄いと思われる。一方、10 日に公表された 12 月の OECD 景気先行指数(CLI)では、日本以外

の主要地域では回復の動きを見せるなど、こ

の時点では 20 年入り後の輸出持ち直しを示

唆するような内容であった。さらに、1月の景気

ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI

(方向性)は前月から+2.2 ポイントの 41.9 と、3

ヶ月連続の上昇となった。構成する 3 要素のう

ち、前月から悪化したのは雇用関連 DI(同▲

1.0ポイント)だけで、家計動向関連DI(同+3.2

ポイント)、企業動向関連 DI(同+0.5 ポイント)

98

99

100

101

102

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

OECD景気先行指数(CLIs)

OECD+6主要新興国 米国 ユーロ圏 日本 中国

(資料)OECD (注)6主要新興国:ブラジル・ロシア・中国・インド・インドネシア・南アフリカ

(長期平均=100)

https://www.nochuri.co.jp

3

農林中金総合研究所

はいずれも改善。ただし、先行き判断 DI は前月から▲3.7 ポイントと 2 ヶ月連続と大きく低下した。

12 月の国際収支統計によると、経常収

支は 1 兆 7,147 億円(季節調整済、以下

同じ)の黒字で、黒字幅は 3 ヶ月ぶりに縮

小。内訳は、貿易・サービス収支が 4,677

億円と 3 ヶ月連続の黒字(うち、貿易収支

は 3,170億円、サービス収支も 1,507億円

と、ともに 3 ヶ月連続の黒字)。第一次所

得収支は 1 兆 3,721 億円の黒字だったが、

11月(1兆 8,265億円)からは大きく縮小。

この結果、2019 年としては、経常収支が

20 兆 597 億円の黒字(2 年ぶりに黒字幅拡大)で、内訳は貿易収支が 5,536 億円(3 年連続で黒字幅縮

小)、サービス収支が 1,758 億円(黒字に転換)、第一次所得収支が 20 兆 7,202 億円(3 年ぶりに黒字幅

縮小)、第二次所得収支が▲1 兆 3,899 億円(3 年連続で赤字幅縮小)であった。

1 月の国内企業物価は前月比 0.2%と 4 ヶ月連続の上昇(消費税率要因を除くベースでも同 0.1%と 3

ヶ月連続の上昇)。前年比も 1.7%(3 ヶ月連続の上昇)で 14 ヶ月ぶりの上昇率となった(消費税率要因を

除くベースでも同 0.1%と 8 ヶ月ぶりの上昇に転じた)。前月と比べて鶏卵、豚肉、牛肉などの農林水産物、

鉄鋼、電気・都市ガス・水道が下落したが、

年末までの原油高に伴って石油・石炭製品、

化学製品が上昇したほか、非鉄金属、生産

用機器も値上がりした。一方、輸出入物価は

前年比でそれぞれ▲1.4%、▲0.7%と、とも

に 9 ヶ月連続の下落ながらも、下落幅は大き

く縮小。さらに、消費者物価の「財」の上流に

位置する消費財についても前年比 0.1%と 9

ヶ月ぶりの上昇となった(うち、国内品は同

0.8%、輸入品は同▲1.8%)。

最後に、2 月 10 日時点の全国レギュラーガソリン販売価格は 150.0 円/と前週から 1.2 円の値下がり(3

週連続)。前年比は 5.4%へ鈍化した。

-15

-10

-5

0

5

10

15

-6

-4

-2

0

2

4

6

2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 2020年

企業物価・消費財価格

消費財指数(左目盛)

うち国内品(左目盛)

うち輸入品(右目盛)

(資料)内閣府、総務省、日本銀行

(%前年比)

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

国際収支の動向

経常収支

貿易・サービス収支

第一次所得収支

(資料)財務省、日本銀行 (注)季節調整済

(億円)

https://www.nochuri.co.jp

4

農林中金総合研究所

南 武志

②来週発表予定の経済指標

10~12月期の GDP第 1次速報【2月 17日(月)8:50】

<当社予測>実質GDP:前期比▲0.4%、同年率▲1.5%(7~9月期:0.4%、1.8%)

名目GDP:前期比 0.1%(7~9月期:0.6%)

GDPデフレーター:前年比 1.3%(7~9月期:0.6%)

消費税率引上げ後に消費水準が大きく落ち込んだが、自然災害や暖冬の影響もあり、その後も戻りは

鈍い。また、住宅投資、民間設備投資も一服したほか、世界経済・貿易の減速継続から輸出も不振であ

ったとみられる。一方、公的需要は消費税対策によって下支え役を果たしたと思われる。以上から、10

~12 月期は 5 四半期ぶりのマイナス成長が見込まれる。

~詳細は本誌 1 月 31 日号 4.①をご参照下さい。~

1月の貿易統計【2月 19日(水)8:50】

<当社予測>貿易収支:原系列▲1兆6,048億円(12月:▲1,525億円)

季調済▲5,752億円(12月:▲1,025億円)

輸出:前年比▲9.0%(12月:▲6.3%)、輸入:同▲4.5%(12月:▲4.9%)

1 月上中旬の輸出入金額は前年比でそれぞれ▲7.3%、▲0.1%と減少が続いており、下旬には東アジ

ア圏での旧正月要因の影響が含まれることから、月全体としては減少幅がさらに拡大するとみられる。な

お、1 月の輸出入物価は前年比でそれぞれ▲1.4%、▲0.7%と下落幅が大幅に縮小したものの、下落

は継続。以上を踏まえると、輸出額、輸入額ともに減少している可能性が高い。1 月の通関貿易収支は

3 ヶ月連続の赤字と予想する。

12 月の機械受注【2月 19 日(水)8:50】

<当社予測>船舶・電力を除く民需:前月比▲10.0%(11月:18.0%)、前年比▲2.4%(11月:5.3%)

11 月分は鉄道車両の大量発注により、現行

統計が遡及可能な05年4月以降で最大の伸

び率となったが、12 月は一転して非製造業を

中心に反動減が出る可能性が高い。また、消

費の持ち直しの鈍さも想定を上回っており、

非製造業の投資マインドを悪化させた可能性

がある。一方、関連指標をみると、12 月の工

作機械受注(内需)は前月比 14.1%(当総研

による季節調整後)、資本財出荷(除く輸送

機械)も同 12.5%と、ともに 3 ヶ月ぶりの上昇

で、製造業では設備投資マインドが持ち直し

たとみられる。以上を踏まえ、12 月のコア機

械受注は 2 ヶ月ぶりの減少と予想する。この結果、10~12 月期としては前期比▲1.2%と 2 四半期連続

のマイナスとなるだろう。

一方、同時に公表される 1~3 月期見通しは前期比 3.0%と 3 四半期ぶりの増加が見込まれる。

1月の全国消費者物価【2月 21日(金)8:30 】

<当社予測>総合:前年比 0.6%(12月:0.8%)、生鮮食品を除く総合(コア):同 0.6%(12月:0.7%)、

生鮮食品・エネルギーを除く総合(コアコア):同 0.8%(12月:0.9%)

1 月(中旬速報)の東京都区部消費者物価(除く生鮮食品)は前年比 0.7%と、4 ヶ月ぶりに上昇率が鈍

化した。宿泊料が前年比で下落に転じたほか、電気・ガス代が値下がりしたことが背景にある。消費税率

引上げ後に落ち込んだ消費は持ち直しつつあるとはいえ、暖冬の影響などもあり、不振である。徐々に

進みつつあったコスト高を価格転嫁する動きも頭打ちになっている。こうした状況は全国でも同じである

と思われ、1 月の全国コアは前年比 0.6%へ鈍化すると予想する。

60

70

80

90

100

110

120

130

140

600

700

800

900

1,000

2000年

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

設備投資関連の指標

実質機械受注 (船舶・電力を除く民需、左目盛)

資本財出荷 (除く輸送機械、右目盛)

(2015年=100)

(資料)経済産業省、内閣府、日本銀行 (注)3ヶ月移動平均。機械受注は企業物価の資本財指数で実質化。

(10億円、2015年価格表示)

https://www.nochuri.co.jp

5

農林中金総合研究所

2.国内市場

(資料)Bloomberg より農中総研作成

佐古 佳史

◎市場概況 ( 2/9~2/14 前場)

引き続き新型肺炎への警戒感がくすぶった。日経平均は方向感を欠き、14 日前場は期間を通じて▲

0.56%の 23,704.59 円で取引終了。東証株価指数 17 業種別では、医薬品が▲3.9%、鉄鋼・非鉄が▲

3.5%と弱含んだ。

ドル円相場は、1 ドル=109 円台後半を中心に狭いレンジでの取引となった。12 日は株価上昇を背景

に一時 110 円台に乗せたものの、13 日は新型肺炎の感染者数の上昇を嫌気して、109.70 円を割り込ん

だ。14 日は 109.80 円を中心に推移。

債券相場では、リスク回避の動きから 10 日の新発 10 年物国債利回りは▲0.06%まで低下したが、以

降は米長期金利が上昇したことや、日銀オペ(13 日)で長めの年限で応札が膨らむなど売り圧力が強ま

ったことを受け、金利は上昇傾向となった。14 日は▲0.03%で推移している。

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40

(%)

(年)

日本国債のイールドカーブ

20/2/13

20/1/17

19/11/14

19/8/17

▲ 0.10

▲ 0.05

0.00

0.05

0.10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40 (年)

1週前差 1ヶ月前差 3ヶ月前差

21,500

22,000

22,500

23,000

23,500

24,000

24,500

12月18日 1月6日 1月20日 1月31日 2月14日

(円) 日経平均の推移 25日移動平均

200日移動平均

107.5

108

108.5

109

109.5

110

110.5

12月26日 1月8日 1月21日 2月3日 2月14日

(円) ドル円の推移 25日移動平均

200日移動平均

▲ 0.10

▲ 0.08

▲ 0.06

▲ 0.04

▲ 0.02

0.00

0.02

12月18日 1月6日 1月20日 1月31日 2月14日

(%) 新発10年物国債利回りの推移

https://www.nochuri.co.jp

6

農林中金総合研究所

3-1.海外市場(米国)

(資料)Bloomberg より農中総研作成

佐古 佳史

◎市場概況 (2/7~2/13)

債券、株ともに方向感を欠く動き。7 日は堅調な雇用統計を尻目に、新型肺炎への懸念から米長期金

利(10 年債利回り)は 5bp 低下。週初もリスクオフの動きが継続した。しかし、11 日以降はパウエル FRB

議長が議会証言にて、利下げ見通しを否定したことや、新型肺炎の感染者数の伸びが鈍化傾向にある

との報道(12 日)から利回りは上昇。一方で、13 日は再び小幅ながらも低下、結局、期間を通じては 2bp

の低下となる1.62%で引けた。株式市場では、12日の主要指数が終値で史上最高値を更新。13日のダ

ウ平均は反落し、29,423.31 ドルで取引を終了し、期間を通じては 0.15%の上昇となった。主要セクター

別では、不動産が+3.7%、消費循環が+2.5%。

1.3

1.5

1.7

1.9

2.1

2.3

2.5

1ヶ月3ヶ月6ヶ月 1年 2年 3年 5年 7年 10年 30年

(%) 米国債のイールドカーブ

20/2/13 19/11/1319/8/16

▲ 0.3

▲ 0.2

▲ 0.1

0.0

0.1

1ヶ月3ヶ月6ヶ月 1年 2年 3年 5年 7年 10年 30年

(%)米国債利回りの変化

1週前差 1ヶ月前差 3ヶ月前差

26,500

27,000

27,500

28,000

28,500

29,000

29,500

30,000

12月20日 1月6日 1月17日 1月31日 2月13日

(ドル) ダウ平均の推移

25日移動平均

200日移動平均

1.5

1.6

1.7

1.8

1.9

2.0

12月20日 1月6日 1月17日 1月31日 2月13日

(%) 10年物米国債利回りの推移

https://www.nochuri.co.jp

7

農林中金総合研究所

3-2.海外市場(欧州、中国) (欧州)山口 勝義(中国)王 雷軒

◎市場概況 (2/7~2/13)

【欧州】

新型肺炎は 2 月後半にピークを迎え 4 月には収束する可能性があるとの中国の見解を材料に、当初は先

週からのリスクオンの動きが継続し株価指数は上昇した。しかしその後は、13 日に湖北省の確認基準の変更

により感染者が急増したことを受け、この動きは幾分巻き戻された。国債市場では、弱い経済指標で利回りが

低下した。12 月の鉱工業生産指数はドイツ、フランス、スペイン(それぞれ 7 日)、イタリア(10 日)で予想を下

回り、ユーロ圏全体(12 日)では前月対比で約4 年ぶりの大幅な低下となった。また、ドイツの CDU 党首が次

期首相候補となることを断念したこと(10 日)なども、国債利回りの低下を促す要因として働いた。期間を通じ

て 10 年ゾーンで、ドイツ国債は 2bp 低下した。なお、ギリシャ国債は 1%を下回る水準にまで利回りの低下が

進んだ。一方、株式市場では、ストックス欧州 600 指数は 1.3%上昇した。このうち主要セクター別では、銀行

が 3.5%、旅行・レジャーが 2.5%、テクノロジーが 2.5%の各上昇、などであった。

【中国】

5 日前後から感染者数の伸びが鈍化したことを受けて新型肺炎の収束期待が高まったほか、10 日から多く

の企業活動が再開したことに加えて政府の景気支援策への期待もあり、上海総合指数は 7 営業日続伸し、

12 日の終値は 2,926.9 ポイントまで戻した。しかし、13 日は、湖北省が感染者の認定基準を変更し、省内の

感染者数が急増したことで新型肺炎をめぐる不透明感が急速に広がったほか、一気に戻したことからの利益

確定売りもあり、下落に転じた。期間を通じては 1.4%上昇に留まった。

(資料)Bloomberg より農中総研作成

https://www.nochuri.co.jp

8

農林中金総合研究所

4.指標分析・注目点 佐古 佳史

① 米国経済:雇用統計、期待インフレ率、CPI

1 月の雇用統計(7 日)では、非農業部門雇用者数は前月から 22.5 万人増と、12 月の同 14.7 万人増

から増加ペースが加速した。また、11,12月分が合計 0.7万人上方修正され、直近 3ヶ月平均では一月当

たり 21.1 万人となった。なお、失業率(U3)は 12 月から小幅に上昇し 3.6%となったが、依然として低い水

準を維持している。労働参加率は全年齢区分と 25~54 歳区分でともに 12 月から 0.2 ポイント上昇し、そ

れぞれ 63.4%、83.1%となった。一方で、賃金上昇率は 12 月から 0.1 ポイント加速し前年比 3.1%となっ

た。12 月の求人労働異動調査(11日)によると、求人数は 11 月から 36.4 万人減となる 642.3 万人となり、

19 年 1 月をピークに減少傾向が続いている。

なお、季節調整に関する年次改定に加え、家計調査の変更、人口推計の更新の結果、1 月の雇用統

計では、12 月時点に比べて雇用者数が 40 万人程度下

方修正されているが、雇用者数の伸びに関しては小幅な

修正にとどまった。また、賃金上昇率についても 19 年半

ばにかけて上方修正されたものの、足元では鈍化してい

る状況に変わりはない。

1 月の期待インフレ率調査(ニューヨーク連銀、10 日)

によると、1 年先、3 年先ともに 12月から変わらずの 2.5%

となり、依然として低い水準にとどまっている。財別にみる

と、医療費についての 1年先の期待インフレ率が、19年 1

月の 8.3%から足元では 5.7%へと大きく低下した。

次に、1 月の消費者物価指数(13 日)を確認すると、総合は前年比 2.5%と 12 月から加速した一方で、

食品・エネルギーを除くコアは 12 月と変わらずの同 2.3%の上昇となった。項目別にみると、エネルギー

が同+6.2%、医療サービスが同+5.1%と大きく、中古車・トラックが同▲2.0%、アパレルが同▲1.3%と 1

年前から価格が低下している。

最後に、家計の債務と信用レポート(Household

Debt and Credit Report、ニューヨーク連銀、11 日)を

確認すると、米国家計の債務は 19 年 10~12 月期に

1,930 億ドル増加し 14.15 兆ドルとなった。名目値で

の比較とはなるものの、08~09 年の金融危機前のピ

ーク(12.68 兆ドル)を 1.5 兆ドル上回っている。内訳

をみると学生ローンの増加が顕著であり、ローン返済

における遅延率も高い。学生ローンの全額免除を表

明しているサンダース上院議員が、民主党候補者指

名争いの初戦において高い支持を集めた背景の一

つと考えられるだろう。なお、現時点ではサンダース

議員の主張は左派過ぎるため、トランプ大統領には勝てないのではないかとの評価もある。

0

2

4

6

8

10

12

14

16

'04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16 '17 '18 '19

(兆ドル) 家計負債残高

その他 学生ローンクレジットカード 自動車ローンHEリボルビング 住宅ローン

(資料)NYFed、Bloomberg

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

'06/1 '08/1 '10/1 '12/1 '14/1 '16/1 '18/1 '20/1

(%) 期待インフレ率の推移

ミシガン大学調査 期待インフレ率(5~10年先)

インフレスワップ(5年先,5年間)

ニューヨーク連銀調査 3年先期待インフレ率

(資料)ミシガン大学、NYFed、Bloomberg

https://www.nochuri.co.jp

9

農林中金総合研究所

区分 人物 鷹/鳩 日付2/11

2/12

1/9

1/14

1/9

1/31

12/18

2/5

1/17

2/11

2/6

2/13

1/10

2/11

11/26

1/3

1/3

1/9

12/18

1/3

1/13

2/3

1/15

2/10

10/30

1/14

1/9

2/11

12/17

1/13

21年は、メスター、ハーカー、カプラン、カシュカリ総裁に代わり、エバンス、バーキン、ボスティック、デイリー総裁に投票権

非FOMCメン

バー

投票権なし

連銀関係者の発言など

発言、投票現行の金融政策スタンスは引き続き適切となる公算が大きい

金融政策の枠組み変更は、慎重に考慮すべき

経済成長率は2%のトレンドへ。インフレ率は2%目標間近

20年のGDP成長率を2~2.25%と予測

期待インフレは低くない。10月利下げは反対だが、きわどい判定(close call)

パウエル議長

ウィリアムズ総裁(ニューヨーク)

クラリダ副議長

デイリー総裁(サンフランシスコ)

-1

-1

-1

-1

?

ブレイナード理事

ボウマン理事

クオールズ副議長

FOMCメンバー

投票権あり

次回の景気悪化時には、フォワードガイダンスとQEを利用する予定

より緩和的な政策の道筋を維持することが適切   →ハト派化

フェイスブックの仮想通貨リブラに反対

金融業界の非倫理的行動を指摘

リブラを念頭に、仮想通貨についてFRBの研究を紹介

金利調整の前に、十分にデータを見極めるべき

?

1

0

-2

銀行監督が業務の中心で、政策金利については合意形成重視?

昨年の利下げは良いタイミングで実施された。金融政策は良い状況

新型肺炎で米経済が1、2四半期停滞しても、経済見通しを変えるべきでない

当面は金利据え置きが妥当。利下げ余地にも含み

新型肺炎は米国経済にとってもダウンサイドリスクとなる可能性

新型肺炎への評価は時期尚早

銀行監督が業務の中心で、政策金利については合意形成重視?

2

0

0~1

-1

(資料)各種報道 (注)鷹/鳩の評価は農中総研による。+はタカ派、-はハト派の意。

ジョージ総裁(カンザスシティー)

ブラード総裁(セントルイス)

ローゼングレン総裁(ボストン)

1金利据え置きが妥当。20年の成長を楽観視。   →ハト派化?

利下げ反対

インフレ率が2%を上回ることを歓迎(welcome)

金融の安定について懸念。資産価格について考える必要がある

低賃金労働者の賃金上昇率が高く、悪性のインフレを懸念。

19年の利下げで景気後退リスクは回避できた公算。マイナス金利に否定的

バーキン総裁(リッチモンド)

ボスティック総裁(アトランタ)

インフレ率が2%をやや上回る方が、やや下回るより望ましい(far better)

-2

貿易をめぐる不確実性の解消と経済への波及を確認したい

FOMCメンバー

投票権なし

20年の経済成長率は2~2.25%程度を予想。上振れも

インフレ率は徐々に加速し、21年に安定。イールドカーブはフラット化へ

新型肺炎への評価は時期尚早

イランとの対立で原油価格が上昇しても、米経済は堅調さを維持できるエバンス総裁(シカゴ)

0~1

ハーカー総裁(フィラデルフィア)

カプラン総裁(ダラス)

カシュカリ総裁(ミネアポリス)

0

メスター総裁(クリーブランド)

経済は好調。金利調整の必要なし。

イランとの対立は米経済への脅威となりうる

https://www.nochuri.co.jp

10

農林中金総合研究所

4.指標分析・注目点 王 雷軒

② 中国経済:新型肺炎対応関連会議

19年12月に新型肺炎が発生後、共産党中央政治局常務委員会は、新型肺炎対応等に関する3回の

会議を開催した。1月25日に開催された第1回会議で湖北省に中央指導チームを派遣し、新型肺炎への

対応を強化することが決定された。2月3日の第2回会議で今回の新型肺炎が中国の統治体制および統

治能力にとって大きな試練と強調された。そして、2月12日の第3回会議で景気対応策についても言及さ

れた。以下は、第3回会議のポイントをまとめてみる。

まず、新型肺炎感染の現状について、「これまで打たれた対策の効果がすでに出ており、良い方向に

向かっている」という情勢判断を示した。一方、新型肺炎の感染拡大防止対策への取り組みについて現

在は最も困難な状況にあり、重要な段階を迎えているとの認識も示された。

一方、感染拡大防止対策への取り組みを今後も気を緩めず進めていくと同時に、より大局感をもち、今

年(20年)の経済成長目標を達成するため、地域の感染状況により適切な対応をとることが重要であると

強調された。具体的には、感染が深刻ではない地域では、防止対策の実施とともに、経済活動の再開を

行うことが重要で、必要以上に外出規制や道路通行止め等の過剰な対応をしないことが挙げられている。

会議では、今年は13次5か年計画の最終年で百年目標の第1である「全面的な小康社会」の達成年で

あり、掲げる目標を達成するため、新型肺炎による経済への影響を最小限に抑えることが重要とした。そ

のための対策は、肺炎による経済への影響を真摯に分析したうえでマクロ経済政策の調整度合いを大き

くすることである。

具体的には、①財政政策の役割をさらに発揮し、支出拡大を通じて新型肺炎対策に必要な資金の供

給を確保すること、②ダメージを受けた企業の経営を支援するため、今後は段階的、かつ影響が大きい

業界に絞った企業を対象に減税・負担軽減措置を導入すること、③穏健な金融政策を維持しながら、政

策調整の柔軟性を高め、新型肺炎対策に必要な資材生産を行う企業への資金支援(金利優遇措置)を

行うほか、深刻な影響を受けた地域では、係る業種や企業への特別な金融支援措置を実施すること、④

雇用を促進するため、中小企業向けの政府支援、金融面での支援策を実施するほか、新型肺炎対策を

しっかり行ったうえで、国有企業等の秩序のある企業活動を再開するようにすること、とりわけ大卒等の就

職の安定化を図るために、多様な措置を講じることなどの内容が決定された。

とくに、積極的に内需拡大、外需の安定化をはかることが重要で次のような取り組みを行う。①地方政

府が発行するインフラ投資等を行うための専項債券による資金を重要な分野へ投下することを進めるほ

か、中央政府予算内の投資額の投下や民間投資の活性化を通じて、重大な公共事業の建設の推進を

加速すること、②新たな消費需要を作り出すこと、③急いで輸出企業の操業再開を促し、貿易促進の金

融支援策を拡充すること、④国際協調に積極的にかかわり、貿易環境の改善を図るほか、中国への直接

投資を促進するため、外商投資法等を通じて海外企業の権益を保護すること、が挙げられている。

なお、2月5日前後から1日の感染者の増加数が減少に転じたことで収束期待が高まった。しかし、湖北

省で実施されていた感染者の認定基準を厳しくしたことで、12日、湖北省で感染者が14,840人と急増した

ため、累計で48,206人、うち死亡者が1,310人となった。同日現在、全国では、認定された感染者は

59,883人、うち死亡者が1,368人となっている。

https://www.nochuri.co.jp

11