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市民公開講座_20180223
からだをまもる免疫の研究
おおてき としあき
樗木 俊聡
東京医科歯科大学難治疾患研究所生体防御学分野
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免疫って何?
「免疫って何?」と聞かれて、
みなさんは、答えられますか?
「免疫は何をしてるの?」「免疫はどこにあるの?」
という、免疫を知る上で、もっとも大事なことを
お話します。
日本免疫学会 免疫ふしぎ未来用パネル (河本宏博士作製) より改変
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もし免疫がなかったら?
カビ
細菌
ウイルス
カビ
細菌
ウイルス
免疫あり 免疫なし
「免疫不全症」「エイズ」
つまり、ふだん免疫は何もしていないようでも、じつは、私たち
の身体を病原体から守って、病気にならないように
してくれているのです。
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どうして同じ病原体に2度感染しないの?
むかしかかった病原体をおぼえている
ことを「免疫記憶」といいます。
病原体が感染
回復
同じ病原体
べつの病原体
前に会ったことあるぞ...
こんなの会ったことないぞ...
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どうして同じ病原体に2度感染しないの?
回復
同じ病原体
べつの病原体
前に会ったことあるぞ...
こんなの会ったことないぞ...
死菌・弱毒菌を予防注射
免疫記憶の原理を感染の予防に応用
したのが「ワクチン」です。
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最初のワクチン開発者
(1749生〜1823没)
エドワード・ジェンナー
当時世界中で大流行していた天然痘に対するワクチンを開発し、
この後世界中に広まり、1980年、地球上から天然痘が撲滅された。
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免疫はからだのどこにあるの?
扁桃
気道
肺
リンパ節
骨髄
胸腺
脾臓(ひぞう)
パイエル氏板
小腸
リンパ節
皮膚
泌尿器、生殖器
血液細胞=血球
液体成分=血漿(けっしょう)血液
大腸
白血球を作るところ
白血球が集まっているところ
単球
好中球
好酸球リンパ球
好中球
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赤血球
血小板
白血球
顆粒球
単球
リンパ球T細胞
B細胞
ヘルパーT細胞
キラーT細胞
好中球
好酸球
好塩基球
免疫細胞
いろいろある免疫細胞
樹状細胞
こんなにいろんなのがいるんだね!
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病原体を攻撃する3つの方法
ミエロイド系細胞(マクロファージ・好中球 樹状細胞)
Bリンパ球
抗体
キラーTリンパ球
1. 病原体を食べる
3. 感染細胞を殺す
2. 抗体をつくる
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マクロファージの発見:1892年!
イリヤ・メチニコフ (1845-1916) ロシア(現ウクライナ)の微生物学者・動物学者
1908年ノーベル生理学・医学賞受賞 動き回り、ものを食べる細胞を発見し、マクロファージと命名
ライソゾーム
赤血球
微絨毛・偽足・雛壁 運動能・遊走能ライソゾーム 貪食消化作用・分泌活性
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1670年 レーウェン・フック 単レンズ顕微鏡で歴史上初めて微生物を観察1796年 エドワード・ジェンナー 天然痘予防接種方法(ワクチン)を開発1847年 イグナーツ・ゼンメルワイス 産褥熱感染を研究し、消毒法を発見1853-1856年 クリミア戦争1865年 リスター 傷の手当てに対する消毒法を発見1870年 パスツールとコッホ 病気の病原菌説を確立1881年 パスツール 炭疽ワクチンを開発1882年 パスツール 狂犬病ワクチンを開発
コッホ 結核菌を発見1892年 メチニコフ マクロファージを発見1895年 ヴィルヘルム・レントゲン X線を発見1910年 パウル・エールリヒと秦佐八郎 サルバルサンを合成1914-1918年 第一次世界大戦1923-1927年 ジフテリア・百日咳・結核・破傷風ワクチン開発1928年 アレクサンダー・フレミング ペニシリンを発見
メチニコフの時代
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私は大学を辞職するに至った事件によって受けた心の傷を
癒すために、美しいメッシーナ海峡で休養し、熱心に研究
を継続していた。ある日、家族は猿回しの芸を見物に行き、
私は独りで顕微鏡を覗きながら、透明なヒトデの幼生の中
でよく運き回る細胞を観察していた。ふとある意想が閃い
て、そのヒトデの幼虫に庭のバラの棘を突き刺した。
私の発想は見事的中し、翌朝、棘は運動性細胞によって
包囲されていた。
(メチニコフの伝記より)
マクロファージ発見の日(1892年)
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ヒトデ類の幼生、ビピンナリア
ヒトデの幼生にバラの棘(1892年)
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マクロ(大きい)+ファージ(食べる) (大)食細胞
→慢性炎症巣の清掃者
[ミクロファージ小食細胞=好中球]→急性炎症での食菌
メチニコフの食細胞説(1892年)
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無脊椎動物
アメーバ クラゲ・イソギンチャク タコ・イカ・ウニゾウリムシ 魚・鳥・カエル・ヘビ・哺乳類(ヒト)
内皮細胞
好中球
NK細胞
リンパ球
マクロファージ
単球
樹状細胞
マクロファージの系統発生
脊椎動物
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7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 12.5 16 20
出生
マクロファージの源
単球
脳、皮膚、肝、腎、肺など全身の組織へ分布
組織の働きを維持する
炎症組織へ移動してマクロファージに分化
炎症を誘導
マクロファージの源
EMP細胞
マクロファージの個体発生
胎齢(日)
造血の場
卵黄嚢 一次造血(胎齢7.5日〜)
大動脈・性線・中腎領域二次造血(胎齢10.5〜)
胎児肝臓
胸腺
骨髄
血液の源、造血幹細胞
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造血幹細胞
ミエロイド系前駆細胞
顆粒球
修正型顆粒球-単球前駆細胞
ヒト単球を生み出す 細胞を発見
単球
炎症性腸疾患
キラーT細胞 を抑制
炎症性マクロファージ (腸炎を惹起・増悪)
今回解明した点
がん細胞を攻撃する キラーT細胞
がん組織
腫瘍関連マクロファージ(TAM) (免疫を抑制、腫瘍増大・転移を促進)
破骨細胞 (骨破壊を促進)
骨疾患
単球はがん組織や炎症組織でマクロファージになる
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河本宏博士より提供
感染細胞
樹状細胞
ヘルパーT細胞キラーT細胞
B細胞
抗体
液性免疫細胞性性免疫
刺激
刺激 刺激
刺激
細胞障害
抗体産生
貪食
マクロファージ
病原体
樹状細胞は免疫細胞の司令塔
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樹状細胞の発見:1973年!
ラルフ・スタインマン(1943-2011) カナダの免疫学者・細胞生物学者
2011年ノーベル生理学・医学賞受賞 マクロファージとは異なる大型星状細胞を発見し、樹状細胞と命名。
FIG. 1. Phase-contrast micrographs of dendritic cells isolated from peripheral lymphoid organs and fixed in glutaraldehyde. Figs. 1 a-d are from spleen, (e) from cervical lymph node, and (f) from Peyer's patch. The nucleus is large, irregular in shape, and has a refractile quality. The cytoplasm is arranged in processes of varying sizes and shapes, many of which contain spherical phase-dense mitochondria. Occasional refractile lipid granules are also present. A medium size lymphocyte in Fig. 1 b can be used as a size comparison. (a) X 4,500; (b) X 3,500; (c) X 3,200; (d) X 4,600; (e) X 3,200; (f) X 3,200.
1145
on September 24, 2017
jem.rupress.org
Dow
nloaded from
Steinman and Cohn et al., J Exp Med, 1973
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• ⾻髄で作られる
• 全⾝の組織(脳、肺、リンパ節、脾臓、胸腺、⾻髄、腸管、⽪膚、筋⾁など)に分布する
• からだの中でもっとも強⼒な抗原提⽰細胞 = 免疫の司令塔
• 抗原を捕まえて、所属リンパ節に移動し、T細胞に抗原を提⽰する
樹状細胞とは?
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T
T
T細胞
輸入リンパ管
T
T
皮膚・粘膜�
樹状細胞
全身の組織・臓器
T cells, B cells
リンパ節
血液
血液
骨髄
働けるT細胞
輸出 リンパ管
樹状細胞は T細胞を働かせるために必要不可欠!
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• 数が少ない:末梢⾎全⽩⾎球の0.1%
• 寿命が短い:せいぜい数⽇
• 樹状細胞を投与しても、⽬的組織に到達する効率が極めて低い
克服すべき問題点
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赤血球 血小板T細胞
B細胞
NK細胞
顆粒球
マクロファージ
従来型 樹状細胞
形質細胞様 樹状細胞
CDPは樹状細胞だけを⼤量に作り、他の⾎液細胞はまったく作らない
樹状細胞だけを大量に生み出すCDPを発見!
CDP
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- 1個のCDPから500~1,000個のDCがつくられる -
CDP
従来型 樹状細胞
形質細胞用 樹状細胞
CDPは9〜10回分裂する
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腸内細菌のおはなし
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全身の免疫細胞の60%以上を占め、全抗体量の60-80%を生産
免疫細胞の数は 1011以上
“内なる外”の面積=テニスコートの約1.5面分 =皮膚の約200倍
約7m
“内なる外” (粘膜)
TT IgA+B
IgA+B
T
T
T T
粘膜には最も多くの免疫細胞が存在する
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腸内細菌(1,000種類)
共利共⽣関係
腸の上⽪
⾷べ物
Th1 �
Th17 � Th2 �
Treg �
ILC �IgA+B�
樹状細胞
➡ IBD, 糖尿病, 関節リウマチ, アレルギー疾患, がん等
共利共⽣関係の破綻
⾊々なリンパ球
腸の免疫細胞と腸内細菌の関係
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炎症性腸疾患(IBD)
若年成人に好発し、罹患数は増加傾向にある。症状は、粘血便、下痢、腹痛、発熱など。
潰瘍性⼤腸炎(UC) クローン病(UC)
口腔から肛門までの消化管全域に非連続性の炎症および潰瘍を起こす。症状は、腹痛、下痢、体重減少、発熱、倦怠感など。 クローン病が頻発 する3つの場所
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謝辞
内藤 眞先生(新潟大学名誉教授) 故高橋 潔先生(熊本大学名誉教授) 河本 宏先生(京都大学) 東京医科歯科大学 医科学数理分野:宮冬樹、角田達彦 生体防御学分野:川村俊輔、小内伸幸、佐藤卓、倉林和隆、 四元聡志、黒田聖子 関東甲信越ブロック血液センター:峯元睦子、伊藤みゆき