内容の要旨及び審査の結果の要旨関連電位研究(英文)) 論文審査委員...

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学報(学位論文)6 内容の要旨及び審査の結果の要旨

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首 都 大 学 東 京

学報(学位論文)第 6 号

博 士 学 位 論 文

内容の要旨及び審査の結果の要旨

首 都 大 学 東 京

論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨公表

大学院博士後期課程修了者及び学位論文を提出した者に対し、博士の学位を授与したので、

学位規則(昭和28年文部省令第 9 号)第 8 条及び首都大学東京学位規則(平成17年法人規則

第54号)第22条の規定により、論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する。

目    次

1  学位論文を提出した者

 学位記番号   氏  名    論文名 ページ

人博 第 2 号 髙 祖   歩 美 日本語の文理解における音韻処理:行動研

究および事象関連電位研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

人博 第 3 号 樋 上     昇 出土木製品からみた弥生・古墳時代の社会

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

保博 第 5 号 國 澤   洋 介 頸髄不全麻痺患者の機能障害と歩行能力

との関係

-独立歩行獲得および最大歩行速度に影

響する要因抽出の統計学的分析- ・・・・・・・・・・・・・15

学 位 論 文 提 出 者

氏 名 髙 祖 歩 美

学 位 の 種 類 博士(言語学)

学 位 記 番 号 人博 第 2 号

学位授与の日付 平成20年 9 月18日

課程・論文の別 首都大学東京学位規則第 5 条第 2 項該当

学位論文題名 Phonological Processing in the Comprehension of Spoken Japanese: Behavioral and Electrophysiological Studies (邦題:日本語の文理解における音韻処理:行動研究および事象

関連電位研究(英文))

論文審査委員 主査 教 授 萩 原 裕 子

委員 鳥取大学教授 中 込 和 幸

委員 准教授 本 間 猛

論文の内容の要旨

1 .本論文の目的

本研究は、人間言語の聴覚文理解における音韻情報の処理について、脳内の認知処理過程

を調べることができる事象関連電位(ERP)を用いて明らかにすることを目的とする。具体

的には、音韻情報が聴覚文理解にもたらす影響を、反応時間やボタン押しなどの行動指標と

して、またERPなどの脳内指標として測定できるかを検証した。さらに、それに基づいて、

音韻、意味、統語の処理を体系的に検討するための実験パラダイムを開発し、それぞれの脳

内指標を比較することで処理の相対的な順序を明らかにし、音韻、意味、統語の処理を時系

列から考察した聴覚文理解のモデルを提案した。

2 .本論文の構成

本論文の構成は以下の通りである。

1章 序論

1.1 はじめに

1.2 本章の概観

1.3 音韻部門

1.4 言語の時間的特性

1.5 言語機能の生物学的基盤

1.6 事象関連電位(ERP)

1.7 日本語の特性

1.8 各章の概要

2章 ピッチアクセント情報への反応を行動指標で捉える:実験 1 (行動実験)

2.1 本章の概観

2.2 はじめに

2.3 方法

2.4 結果

- 1 -

2.5 考察

2.6 おわりに

3章 ピッチアクセント情報への反応を脳内指標で捉える:実験 2 (ERP実験)

3.1 本章の概観

3.2 はじめに

3.3 方法

3.4 結果

3.5 考察

3.6 おわりに

4章 音韻処理の時系列:実験 3 (ERP実験)

4.1 本章の概観

4.2 はじめに

4.3 方法

4.4 結果

4.5 考察

4.6 おわりに

5章 総合考察

5.1 本章の概観

5.2 聴覚文理解のモデル

5.3 聴覚ERP実験特有の方法論とその問題点

5.4 日本語に類似した言語の特性を活かしたERP実験

6章 結論

6.1 各章のまとめ

6.2 おわりに

参考文献

付録

3 .本論文の概要

第 1 章 序論

本章では、本論文を通して扱う概念や背景知識を理論言語学、心理言語学、神経言語学の

知見をもとに概説する。

人間言語は、音韻、意味、統語などの様々な種類の情報から構成されていると考えられて

おり、母語であれば無意識かつ一瞬のうちにそれを理解できる。言語の生物学的基盤を追求

する生成文法理論では、それを可能にする仕組みが脳内に備わっていると仮定し、近年、そ

の仕組みを解明するための科学的研究が行われてきた。

ERPとは、脳波の一種であり、外部の事象や刺激に反応して変化する脳内で発生する微弱

な電位のことで、言語等の認知活動を調べるための有効な手法である。その時間分解能の高

さは、瞬時の言語処理の変化を捉える手法として最適であり、これまでに、意味処理や統語

処理の脳内指標が次々に提案され、文章理解におけるそれらの相対的な時系列が明らかにな

- 2 -

ってきた。その一方で、言語を構成する音韻情報の処理については、韻律処理の研究は散見

されるものの、それ以外の音韻特性に関する研究は皆無に等しく、脳内指標、および意味処

理や統語処理との相対的な順序については不明な点が多い。

本論文では、音韻情報の一例として日本語の語彙のピッチアクセントを取り上げて、その

処理を反映した脳内指標および意味や統語処理と比べた場合の処理の相対的な順序を検討す

る。日本語は代表的なピッチアクセント言語であり、語を構成する最小単位(モーラ)がそ

れぞれ固有の音の高さ(高 / 低)を持つ。日本語ではこの音の高さの変化に基づいてアクセ

ントが実現されることによって、同音異義語が識別される(例えば、飴;低→高, 雨;高→

低)。その他にも日本語には膠着性(接辞や形態素が付加される現象)や主要部後置型(句や

文の主要部が線形的に最後に位置する)という特性がある。これらの特性は、聴覚文理解に

おいて音韻処理の相対的な時系列を検討する上で重要な意味を持つ。

第 2 章 ピッチアクセント情報への反応を行動指標で捉える:実験 1 (行動実験)

先行研究によれば、日本語の語彙のピッチアクセントは、語彙認識の過程に影響を及ぼす

ことが知られている。本章の実験 1 では、聴覚文理解においても語彙認識と同様に語彙のピ

ッチアクセントが影響するか否か、そしてその影響が反応時間や選択回数などの行動指標と

して測定できるかを日本語の一段活用動詞を用いて検証した。

日本語の一段活用動詞には、アクセントを有しないもの(例えば、「借りる」)とアクセン

トを有するもの(例えば、「食べる」)の 2 種類が存在する。特にアクセントを有する一段活

用動詞は、動詞の接尾辞の変化(-る/-た)に伴ってアクセント位置が変化する(-る:後

ろから 2 番目のモーラ、-た:後ろから 3 番目のモーラ)。実験文は、アクセントを有しない

一段活用動詞とアクセントを有する一段活用動詞 2 種を含む 3 条件から成り、それぞれの条

件文では動詞の接尾辞を欠いていた。課題は、この不完全な文を完成させるために「-る/-

た」の接尾辞をボタン押しで選択することであった。結果は、アクセントを有する 2 条件の

反応時間がアクセントを有しない条件より有意に速いことと、「-た」を選択する割合が、ア

クセント位置が語末から 3 番目のモーラにある動詞を含む条件文、アクセントを有しない条

件文、アクセント位置が語末から 2 番目のモーラにある動詞を含む条件文の順に多いことが

示された。この結果から、語彙のピッチアクセントは聴覚文理解にも影響し、その影響は行

動指標として測定できることが確認された。

第 3 章 ピッチアクセント情報への反応を脳内指標で捉える:実験 2 (ERP実験)

本章では、前章の結果を受けて語彙のピッチアクセントが処理される過程を脳内指標とし

て測定できるかどうか、ERP実験(実験 2 )により確かめた。

実験 1 と同様に、実験 2 でも日本語の一段活用動詞の接尾辞とアクセントの関係を利用し、

それぞれの要因を掛け合わせることで、アクセントが正しい動詞を含んだ条件(「ご飯をたべ.

る」、「ご飯をた.べた」)とアクセントに違反のある条件(*「ご飯をた

.べる」、*「ご飯をたべ

た」)の聴覚刺激文を用意した。参加者は、実験室内でスピーカから音声刺激が流れたあと

に、画面上に表示される単語が、今、聞いた音声の中に含まれていたか否かという課題を遂

行した。この間に継続して脳波を記録して、その後、データを分析した。動詞のアクセント

- 3 -

に誤りのある違反文を聞いている時のERPは、正しい文を聞いている時に比べて、動詞の語

頭から約400-800ミリ秒後の時間帯(以下、潜時とする)において、前頭部でやや振幅の大き

い陰性成分(AN)が観察された。この陰性成分は、先行の、語彙のストレスアクセントを操

作した文を用いたフランス語のERP研究の結果と矛盾しないものであり、聴覚文理解におい

て日本語の誤ったピッチアクセントに対して得られた脳内反応と考えられた。これにより、

語彙のピッチアクセントが処理される過程を脳内指標として捉えることができた。

第 4 章 音韻処理の時系列:実験 3 (ERP実験)

実験 3 では、実験 2 で得られた音韻処理の脳内指標に基づいて、音韻的に逸脱のある文、

意味的に逸脱のある文、そして統語的に逸脱のある文を聞いた時に観察されるERP成分の開

始潜時を検討して、音韻処理の時系列を探求した。

音韻条件では、実験 1 と 2 で用いた日本語の一段活用動詞の接尾辞とアクセントの関係を

用いて、ピッチアクセントの逸脱文(「*ご飯をた.べる」)と正しい文(「ご飯をたべ

.る」)を聞

かせた。意味条件では、文末動詞の接尾辞を変えて動詞を非単語に変えた意味的に逸脱した

文(「*毛布をあとで運る」)と意味的に正しい文(「毛布をあとで運ぶ」)を聞かせた。統語条

件では、疑問詞(いつ)と終助詞(-の/-よ)の統語的関係を操作して統語的に逸脱した文

(「*穴をいつ掘るよ」)と正しい文(「穴をいつ掘るの」)を聞かせた。参加者は、実験室内で

スピーカーから音声刺激が流れたあとに、画面上に表示される単語が、今、聞いた音声の中

に含まれていたか否かという課題を遂行した。この間に継続して脳波を記録して、その後、

データを分析した。その結果、音韻条件の逸脱文では正しい文に比べて前頭に陰性成分AN

(潜時約400-750ミリ秒)と後方にP600(潜時約750-900ミリ秒) が観察され、陰性成分は、

語彙の誤ったピッチアクセントに対する反応だと考えられた。意味条件の逸脱文では、正し

い文に比べて全頭に広がるN400(潜時約450-750ミリ秒)とP600(潛時約750-1200ミリ

秒)が観察され、N400は非単語によって阻害された意味処理を反映するものだと解釈さ

れた。最後に、統語条件の逸脱文では、正しい文に比べて全頭に広がるP600 (潜時約

700-1100ミリ秒) が惹起された。全条件を通して観察されたP600については、誤った文

を解釈しようとするためにかかる統合の負荷と解釈された。開始潜時については、陰性成分

のそれを比較したところ、音韻処理の陰性成分の方が意味処理のそれよりも開始潜時が速い

ことが示され、音韻処理が意味処理に先行すると解釈された。

第 5 章 総合考察

本章では、実験 2 および実験 3 で得られた結果から聴覚文理解のモデルを提案し、聴覚ERP

実験に特有な方法論とその問題点や、日本語のような印欧諸語とは特徴の異なる点を活かし

たERP実験について考察した。

実験 2 と実験 3 の結果より、語彙のピッチアクセントのような音韻情報の処理を反映する

脳内指標として、前頭の陰性成分が存在することが確かめられた。また、実験 3 では、この

ような音韻情報の処理が意味処理に先行して起こることが示唆された。これらの結果より、

音韻処理(脳内指標:AN)→意味処理(脳内指標:N400)→統合処理(脳内指標:P6

00)という時系列で処理が進む聴覚文理解のモデルが提案された。また、このモデルでは

- 4 -

統語処理については触れられていないので、それは今後の課題として残された。次に、視覚

ERP実験と比較して聴覚ERP実験の特徴をまとめるとともに、今後聴覚実験を実施する上で

の留意点や方法論的な問題点を取り上げて議論した。最後に、日本語のような主要部後置型

で膠着性言語の特性を活かすことのできる実験案について考察して今後のERP研究の課題と

して位置づけた。

第 6 章 結論

本章では、第 1 章から第 5 章までの各章の内容をまとめて論文を締めくくった。

- 5 -

学位論文審査の要旨

4 .審査結果

言語処理過程の行動研究、脳内指標の解析は、ヒトに固有とされる言語機能を解明するた

めの重要な課題である。本論文では、これまで精神生理学的手法を用いて重点的に検討され

てきた意味処理、統語処理以外の重要な要素である音韻処理のうち、ピッチアクセントの処

理メカニズムについて詳細な検討を行った。意味、統語処理以外に、韻律処理についての研

究は散見されるが、聴覚課題の条件設定が困難なこともあり、これまで十分に検討されてき

ておらず、ピッチアクセントについてのこれほど詳細な検討は初めての試みであり,オリジ

ナリティが極めて高い。

本論文はまた、膠着性、さらにピッチアクセント情報が語彙に影響を及ぼす、という日本

語の特徴を生かして、刺激受容時間の設定が難しい聴覚課題の条件が十分統制されている点

は大きな長所である。結果においても、合成音を用いた実験 2 と自然な人の声を用いた実

験 3 の両方で、ピッチアクセントの逸脱に対して同様の前頭部陰性成分が認められ、信頼性

の高い事象関連電位成分が抽出されたことは特筆すべき所見である。さらに、ピッチアクセ

ントの逸脱に対する前頭部陰性成分の開始潜時はきわめて早く、接尾辞が提示されるより以

前から脳電位反応が生じていることも示唆され、今後の関連領域における研究の発展に多大

な寄与をするものと考えられる。ただし、音韻処理と意味処理との相対な時系列の順序につ

いては、動詞の接尾辞より以前に逸脱に気づく可能性がないわけではなく、異なった解釈も

できるという指摘もあった。

2008年 8 月16日公開審査が行われた。発表の後の質疑応答では、上記のような残された課

題はあるものの、今後の研究でそれらの問題点をどのように解決していくとよいのかが述べ

られ、高度な見識が伺えた。研究成果は、国内および国際学会において発表し、学術誌にも

掲載され、十分な評価を受けている。以上により、審査員一同は、高祖歩美に博士(言語学)

の学位を授与することが適当であると判断した。

- 6 -

氏 名 樋 上 昇

学 位 の 種 類 博士(考古学)

学 位 記 番 号 人博 第 3 号

学位授与の日付 平成20年 9 月18日

課程・論文の別 首都大学東京学位規則第 5 条第 2 項該当

学位論文題名 出土木製品からみた弥生・古墳時代の社会

論文審査委員 主査 教 授 山 田 昌 久

委員 教 授 小 野 昭

委員 明治大学教授 石 川 日出志

論文の内容の要旨

●論文の課題―――――――――――――――――――――――――――――――――――

日本考古学における弥生・古墳時代の木製品研究は、京都大学によって1937年から発掘が

実施された、奈良県唐古遺跡の調査から始まった。約70年間の発掘調査によって、北海道を

除く日本列島各地の弥生・古墳時代遺跡から多種類の木製品が出土し、これらの時代の生活

文化や社会構造に関する研究資料として注目され、研究されてきた。

特に鍬や鋤などの農耕関連の道具類は、日本の「稲作技術」の起源を探るうえで、考古学

者の研究対象として重要視されてきた。また弥生・古墳時代は、日本の社会形成史のうえで、

地域ごとに権力者が発生して、やがて近畿地方を中心とした大和政権が成立する、国家形成

の時代でもある。遺跡出土の木製品のなかには、「首長」と呼ばれる弥生・古墳時代の権力者

が保有した、日用品ではない権力を示すための器物がある。

樋上さんは、この20年間、そうした出土木製品を素材として研究を進めてきた中堅研究者

である。本学位請求論文は、これまでの研究成果をまとめ、さらに追加論文を加えて、

とくに、氏の研究フィールドである近畿・東海地方を中心とした地域の、弥生時代・古墳時

代の社会形成を追求することを課題としている。

具体的には

①日本における農具の変遷・系統の追及

②弥生・古墳時代における権力者の登場と集落構造の変化の追及

③木製品生産の専門集団登場に関する追及

などの議論がなされている。

●論文の構成―――――――――――――――――――――――――――――――――――

目 次

序 章:木製品研究の現状と本研究の目的

第Ⅰ章:木製農耕具の研究

第1節 東海系曲柄鍬の波及と展開

第2節 木製農耕具と耕作の技術

第3節 鍬の機能に関する基礎的研究

- 7 -

第Ⅱ章:首長関連木製品の研究

第1節 木製容器の行方

第2節 儀仗の系譜

第Ⅲ章:用材の選択と集落周辺の古植生

第1節 中部地方における弥生時代の木材利用

第2節 朝日遺跡出土木製品の樹種組成と周辺の古植生

第Ⅳ章:木製品からみた弥生・古墳時代の集落像

第1節 出土木製品から見た勝川遺跡

第2節 朝日遺跡出土木製品の分析

第3節 木製品から見た中部・北陸地方の弥生・古墳時代集落

第Ⅴ章:木材・木製品の生産と流通

第1節 木工技術と地域社会

第2節 木製品専業工人の出現と展開

参考文献

●論文要旨――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第1章 木製農耕具の研究

樋上は、この章で、木製農耕具の研究から、日本の農耕社会の生成過程・生産体制の変

容を論じている。

第1節 東海系曲柄鍬の波及と展開

弥生時代の木製鍬の一類型である「東海系曲柄鍬」を集成し、その分布・変遷の整理を行

って、近畿地方から東北地方での伝播様相を検討した。九州地方の鍬とは異なるこの鍬は、

山陰・山陽地方の弥生時代中期鍬を起源とし、東海地方で独自に発達したものである。しか

し、その各地への伝播は人の移動を伴う直接的なものばかりでなく、情報のみが若干変形し

ながら伝わったものもあり、複雑である。

この鍬は、弥生時代後期から古墳時代前期の時期に集中して非常に多く使用されていたこ

とが分かっている。そうした事実から、本節では、この時期が日本列島の開発が爆発的に進

行した時期であることが議論されている。そして、本来日本に伝わった形とは異なるこの曲

柄鍬が、各地に登場した「首長」とよぶ権力者によって意図的に選択されて広がったという

仮説をもとに、この木製農耕具の伝播が、弥生・古墳時代前期の近畿地方以東の首長連合が、

複雑に進行する過程の反映として理解できるとした。

第2節 木製農耕具と耕作の技術

第1節で議論した以外の類型の鍬鋤類を、九州も含めた広い範囲で集成し、その変遷過程

を示し系統関係を整理した。時期的には、①稲作受容期(縄文時代晩期~弥生時代前期)、②

定着期(弥生時代中期)、③拡散期(弥生時代後期~古墳時代初頭期)の三時期を設定して、

各地・各時期の道具組成を示しながら、その特徴を整理した。稲作受容期の前半=縄文時代

晩期には、諸手鍬という直柄鍬と鋤による組み合わせで、北部九州と山陽地域、そして四国

にのみ分布が認められた。つづく、弥生時代前期には、伊勢湾岸地方にまで、農耕具の出土

遺跡の分布が広がった。諸手鍬は減少して、平鍬の比重が高まった。地域性が顕在化しだし

- 8 -

た。弥生時代中期には四角い柄穴の鍬が九州を中心に広まった。また、朝鮮半島に見られる

踏み鋤の発見例があった。一方、弥生時代中期中葉から、鍬の突起と屈曲柄を紐で緊縛して

固定した曲柄鍬が、中国地方以東で使用されるようになった。弥生時代後期からは、その曲

柄鍬が伊勢湾地方で変形させられて、その鍬が広く拡散した。

第3節 鍬の機能に関する基礎的研究

この節では、木製鍬の形態変化が複雑に認められて、弥生時代後期末から古墳時代の時期

に器種分化が進行して安定化することを示した。そして器種ごとに幅・長さ・柄の装着角度

などの属性を分析し、鍬類の機能について考えた。樋上さんは、その中の平鍬に着目して、

打ち鍬・引き鍬とった区別が明確にならないかの検討を行った。結果的には、現状では弥生

時代例は区別できないことが判明した。一方で古墳時代初頭から、遺跡ごとの変異がなくな

り、急速に規格化が進んでいたことがわかった。木製品生産の構造が変わった可能性が指摘

され、工人集団が首長の配下に置かれるようになったとされた。そして、この定型化は一方

で器種意識の明確化にも通じていた。

第Ⅱ章 首長関連木製品の研究

この節では、弥生時代~古墳時代の「首長」が社会的身分を価値づけるために保有して

いた木製品の特徴を整理し、その変遷と社会的価値が示された。

第1節 木製容器の行方

木製容器には作りの異なる製品が見られる。樋上は、なかでも、美しい木目を持つ木を丁

寧に磨きあげて、さらに赤色の顔料で塗装した高杯などに注目した。精製度の高い容器には、

そのほかに合子とよぶ合わせ蓋つきの容器なども日常品とはすることができない。

樋上は、それらの仕上がりの良い塗装容器群を、この時代の階層化のなかで、「首長」と呼ぶ

地域社会の権力者の利用物・保有物と考えた。祭式や儀礼行為にかかわる場での、木製容器

類の「首長」による使用や提示は、従う人々に「首長」の権力を示すことになる。

こうした「首長」の権力を誇示する器具類は、やがて東海地方で土器に移し換えた形で使

用されるようになる。樋上さんはまた、古墳時代の権力を示す容器類は、次第に別の器種・

別の素材に置き換えられることになることにも言及した。

第2節 儀仗の系譜

弥生時代・古墳時代の各地の中核的な集落遺跡からは、「儀仗」と考えられる木製品が見つ

かっている。「儀杖」は中国の揚子江流域の遺跡からも発見され、権力者の所有物として考え

られている。日本の弥生時代の社会にも、そうした意識が伝播していると考えられているが、

樋上さんはこの節で遺跡出土の「儀仗」について検討した。弥生時代~古墳時代の「儀仗」

を10類に分類して、1~5類を弥生時代、6~10を古墳時代のものとした。そしてその系譜を追

求した。そして、日本の遺跡からは、金銅製や玉製の儀仗部材も発見されているので、そう

した他素材の遺物との関係にも配慮しながら、弥生・古墳時代の「儀仗」を使用した祭式が

一種類ではなく、所作の異なる複数の儀礼・祭祀の存在とその系統関係を導き出した。

第Ⅲ章 用材の選択と集落周辺の古植生

出土木製品は植物組織を判定して樹種を特定する研究がなされている。その情報をもと

に、地方別・時期別の利用樹種を比較することで、弥生時代・古墳時代の木製品の生産と

消費の特性を追求しようとするのが本章である。

- 9 -

第1節 中部地方における弥生時代の木材利用

この節で樋上はまず、北陸・東海・中部高地(長野・山梨県)の遺跡出土木製品の「用材

データベースをもとに、地方別・時期別の用材種の傾向や、木製品ごとの用材傾向を検討し

た。

地域別の傾向としては、東海地方は天竜川を境に西はヒノキ属・東はスギが多く使用され

る傾向であり、広葉樹の利用としては濃尾平野ではアカガシ亜属が少なくコナラ節・クヌギ

節材が多用されていた。北陸地方では沖積平野を中心としてスギの多用傾向が認められた。

一方、中部高地ではヒノキ属・スギの利用は少なく、クリ・コナラ節・クヌギ節の材が多く

用いられていた。

つぎに木製品の種類別の用材傾向が調べられ、杵・臼・鍬鋤・田下駄・弓・容器・建築部

材などの地方差が指摘された。

第2節 朝日遺跡出土木製品の樹種組成と周辺の植生

樋上さんは、第1節での概観的な検討ののち、本節で一つの遺跡(東海地方の拠点的な集

落遺跡である朝日遺跡)を取り上げて、詳細に用材種の比較検討を行った。資料数は1,082

点で、尾張地方の低地部の植生と人によるその森の選択に関しての検討がなされた。

弥生時代の前半はスギ材の利用が4割程度と多かったのに対して、弥生時代後期からヒノキ

属材の割合は上昇し始め、古墳時代になるとヒノキ属材が5割ほど使用されていた。広葉樹で

はアカガシ亜属の材が多くその他のコナラ属材も一定数の使用が有ったことが分かった。

農具類はアカガシ亜属が半数を占めるが、杵にははじめヤブツバキがあてられ後にクヌギ

節材があてられていた。田下駄にはヒノキ属材があてられる傾向にあった。工具柄にはサカ

キ・クヌギ・アカガシ亜属があてられていた。容器は精製品にはケヤキ、大型日常品にはス

ギ・クスノキが使用されていた。建築材には台地上とは異なって針葉樹の使用が目立った。

そうした個別の用材整理の後、樋上は時期別の用材変遷が近隣の森林資源との関係で変容

した可能性を検討した。各木製品の木取り・大きさ・使用年輪数などのデータから、利用木

の太さの変化・搬入元の切り替えなどを検討した。

第Ⅳ章 木製品から見た弥生・古墳時代の集落像

出土木製品には、環境情報や年輪からの時間情報そして技術情報などが内包されている

ので、過去の社会研究の議論に有効な情報がある資料といえる。そこで木製品を利用して

集落研究をしてみることとする。

第1節 出土木製品から見た勝川遺跡

愛知県春日井市にある勝川遺跡は、豊富な森林資源を背景として、木製品を製作し続けた

集団の残した遺跡と考えられている。そこで、樋上さんは勝川遺跡の木製品を調べれば、東

海地方における木製品生産集落の様相を提示できると考えた。

台地と沖積地の境に残された勝川遺跡は、背後の台地・丘陵を利用して木材入手がなされ、

そして川を利用して製品を搬出することができる、条件を備えた遺跡である。遺跡には原材・

未成品も残されていて、この地が木製品生産の拠点であることが裏付けられた。

傍を流れる地蔵川・庄内川を利用して濃尾平野内の集落へ木製品の供給がなされたと考え

られた。

第2節 朝日遺跡出土木製品の分析

- 10 -

勝川遺跡が生産地遺跡であるとすると、本節で取り上げた朝日遺跡は消費地遺跡とするこ

とができる。樋上さんはそこに注目して、朝日遺跡の木製品の用材・技術検討を遺跡間の問

題として再度検討した。弥生時代中期の前半は、石器での加工であったことがわかり、その

時期の利用木の傾向が抽出された。やがて鉄器での加工の次期を迎えると、アカガシ亜属材

を使用した未成品の鍬が特定の器種にのみ集中する傾向が判明した。また、弥生時代の終末

期には製材済みの木材の多量出土が見受けられた。

このように朝日遺跡では太い木を丸ごと入手し製材するといった作業があまり行われてお

らず、別の場所で製材された木材が搬入されていた可能性が見えてきた。

勝川遺跡の状況と比較すると、直截的に結びつけることはまだ決定情報が不足していると

はいえ、濃尾平野の遺跡の中に補完的な情報を有する例があることが見えてきた。

第3節 木製品からみた中部・北陸地方の弥生・古墳時代集落

この節では、木製品を出土した集落遺跡の規模の違いや立地の違いに注目して、弥生・古

墳時代の社会の階層差について検討を加えている。前出の「首長」の祭祀・儀礼品を考えら

れる木製品の出土状況を検討すると、各県に2・3か所しかない規模の大きい拠点的な遺跡

と、それより若干規模の小さい拠点集落、そして一般集落というような3細分ができること

判明し、「首長」も保有物の質にも違いがあることが分かってきた。

そして、「首長」の居住区が一般の住民と区別なく設定されている集落と、独立させて「首

長」居住区が設定されている集落とが見えてきた。それぞれの集落は、高杯・儀仗・琴など

の木製品が残される遺跡・見当たらない遺跡などと整理され、地域社会の階層化の進行状況

として解釈された。古墳時代になると武器関係の木製品が顕在化し、その保有状況からも集

落の社会的位置が見えてくる。樋上さんの本論文の構想が具体的に展開されて成果を現した

節とすることができる。

第Ⅴ章 木材・木製品の生産と流通

本論文の総括にかかわる章である。個別集落で生産されていた弥生時代中期以前の姿と、

専門集団が登場した弥生時代後期後半の姿を対比的に提示した。

第1節 木工技術と地域社会

前節までで提示してきたデータとその解釈を、弥生時代社会の木工技術と生産・流通とい

う形でまとめようとしたのが本節である。濃尾平野の周辺の河川や山塊に視点を広げ、木製

品の原材を獲得する空間(集落と森林の位置関係)の議論に及んだ。

樋上さんは、用材林との距離と製作工程のどの部分の遺物が残る遺跡なのかという2つの

点から、弥生・古墳時代の木製品の生産・流通を具体的に追いかけて、Ⅰ~Ⅳの類型にパタ

ーン分けした。木製品を集中生産して他集落に供給している遺跡、木製品を生産してはいる

が他集落への供給を確認できない遺跡、木製品の原木を入手できず、集落内で加工工程のす

べてが確認できる訳ではない遺跡、木製品を生産せずに供給を受けることを基本とする遺跡、

の4群である。そして、そうした姿が弥生時代後期には地域社会の中で出来上がっていて、

やがて古墳時代の木製品専業工人へと移行する母体となっていたと価値づけた。

第2節 木製品専業工人の出現と展開

古墳時代の主要な遺跡を取り上げて、5世紀を境として、濃尾平野では遺跡から木製品生

産の未成品段階の遺物が消滅することを説明し、樋上さんは、この地域ではこの段階から木

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製品の製作が専業工人によって賄われ始めたと主張している一方で美濃の山間地の遺跡では、

同じ時期でも集落内で独自に木製品生産をしているような遺跡も確認できる。そこで、社会

の統合状況の異なる空間が存在することを指摘した。

三重県の六大A遺跡、愛知県の八王子遺跡、静岡県の桓武遺跡などから、こうした平野部

での生産供給構造の固定化と、地域の「首長」が集落の一般構成員とは別空間に居館をかま

えるような社会に入って行ったことが重なることを指摘した。

大きく統合される平野の集落群と、それらからは別の動きを見せる山間地の集落群の姿が

対比的に説明された。こうした集団統合で組織された専門工人が、やがて古墳時代後期の部

民、そして律令体制化の国衙の付属工房の工人などの先駆的な存在となるとして、この論文

はまとめられた。

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学位論文審査の要旨

●審査結果――――――――――――――――――――――――――――――――――――

論文提出者の樋上さんは、愛知県の遺跡発掘機関に所属し、20年来遺跡発掘とその資料整

理に携わってきた研究者である。論文に使用している遺跡情報のうち、愛知県内の資料の多

くは、氏自らが発掘し資料化したものである。本論文は、樋上さんの資料実態を熟知した研

究に裏打ちされて、細部にいたるまで情報整理が行き届き、日常の研究蓄積がいかんなく発

揮されて纏められている。

この分野の研究は主査である山田による日本全国を概観した研究はあるが、いまだ十分な

資料分析がなされていないといえる現状である。特に、地域社会の形成過程と対比させた上

で、木製品の持つ社会的意義・経済的意義を研究することは少なく、樋上さんはその先頭に

立っている中堅研究者として、広く知られている。

本論文の成果とし得る点は、

①木製品の日本列島内での地域差・時間差の整理の中から、その系統関係の掌握に成功し

た点。

②木製品のなかで日常生活品ではなく権力者の祭礼の場で使用されたり、地位を表示する

役割を担わされたりした資料を抽出して検討することによって、弥生・古墳時代の社会

階層化についての新視点を提出した点。

③弥生・古墳時代の木製品生産の専業化とその専業集団と地域権力者との関係について新

しい学説を提出した点。

などを挙げることができる。

そして、その研究法を自らが情報化して集めた

①伝統的な考古学の手法による製品の型式研究。

②用材の樹種の同定する問題意識を熟成させて、通常では限定された資料にしか実施しな

い出土品の同定作業を、1000点を超えるオーダーで行って比較するという研究構想。

③地域植生との関係から資材の入手経路についての追及。

など独自性の高い研究活動の展開の結果、本論は成立している。

もちろん、若干の問題点が無いわけではない。それは、あらゆる木製品の生産が樋上さん

の説のように工人集団により行われていたのか、に対する論証がなされていないことや、考

古資料の分布を系譜として繋ぐ際の手続きがやや不足しているのではないのかということな

どである。

本論文に関しての公開審査は、2008年7月4日に行われた。そこで、上記の問題点などを指

摘して、樋上さんの意見を細くして聞くことができ、それらの点について樋上さんは十分に

認識されており、それに対して研究継続されている内容の一端をしっかりと説明することが

なされた。また、弥生時代・古墳時代の知識に関して向けられた質問にも、明確な回答が得

られた。

副査の石川日出志さんは、東海地域の弥生時代の社会研究に関する数々の業績を持ってお

られる研究者であるが、石川さんの弥生時代集落構造に関する本論文の内容への問いかけに

も、樋上さんは適切に回答できる部分と、今後の課題として検討すべき部分とをわけて、十

分に受け答えができていた。

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以上のことから、審査委員:山田昌久・小野昭・石川日出志は、論文提出者樋上昇さんに

博士(考古学)を与えることが妥当であると判断した。

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氏 名 國 澤 洋 介 学 位 の 種 類 博士(保健科学)

学 位 記 番 号 保博 第 5号

学位授与の日付 平成20年 9 月30日

課程・論文の別 首都大学東京学位規則第 5 条第 2 項該当

学位論文題名 頸髄不全麻痺患者の機能障害と歩行能力との関係

-独立歩行獲得および最大歩行速度に影響する要因抽出の統計学

的分析-

論文審査委員 主査 教 授 柳 澤 健

委員 教 授 金 子 誠 喜

委員 教 授 新 田 收

論文の内容の要旨

頸髄不全麻痺患者における①歩行補助具を一切使用しない独立歩行獲得に影響する要因、

②独立歩行獲得者の最大歩行速度に影響する要因を明確にすることを目的とし、頸髄不全麻

痺患者77例の下肢感覚・下肢痙縮・座位バランス能力・立ち上がり動作能力・下肢関節可動

域・等速性膝伸展筋力および屈曲筋力の評価と歩行能力との関係について検討した。

対象患者の平均年齢(標準偏差)は57.5(14.5)歳、発症要因は外傷35例・非外傷42例で、

歩行練習開始 1 ヶ月後の独立歩行獲得者は50例(64.9%)であった。理学療法評価は、下肢

感覚・下肢痙縮・座位バランス能力・立ち上がり動作能力・下肢関節可動域・等速性膝伸展

筋力および屈曲筋力・最大歩行速度の10項目とし、歩行練習開始時(開始時評価)と歩行練

習開始 1 ヶ月後( 1 ヶ月後評価)に実施した。

独立歩行獲得を目的変数とした重回帰分析の結果、開始時評価では第 1 要因に麻痺の影響

が弱い側(優位側)の等速性膝伸展筋力(標準化偏回帰係数:β=0.40,p<0.01)、第 2 要

因に座位バランス能力(β=0.39,p<0.01)が抽出された(自由度調整済み決定係数:調

整済みR 2=0.46)。 1 ヶ月後評価では第 1 要因に優位側の等速性膝伸展筋力(β=0.35,p

<0.01)、第 2 要因に立ち上がり動作能力(β=0.30,p<0.01)、第 3 要因に優位側の下肢

痙縮程度(β=-0.19,p<0.05)が抽出された(調整済みR 2=0.41)。開始時評価・ 1 ヶ月

後評価各々の第 1 要因として抽出された優位側の等速性膝伸展筋力は、頸髄不全麻痺患者の

独立歩行獲得に必要な要因であることが示唆された。

最大歩行速度を目的変数とした重回帰分析の結果、開始時評価では第 1 要因に麻痺の影響

が強い側(劣位側)の等速性膝屈曲筋力(β=0.65,p<0.01)、第 2 要因に劣位側の膝関

節伸展可動域(β=0.29,p<0.01)が抽出された(調整済みR 2=0.51)。 1 ヶ月後評価で

は第 1 要因に劣位側の等速性膝屈曲筋力(β=0.61,p<0.01)、第 2 要因に劣位側の膝関

節伸展可動域(β=0.26,p<0.05)が抽出された(調整済みR 2=0.46)。劣位側の等速性

膝屈曲筋力・劣位側の膝伸展角度は劣位側膝伸展運動を補う機能であると考えられ、最大歩

行速度の向上には膝伸展運動に関与する機能の改善が必要であることが示唆された。

今回の結果から、頸髄不全麻痺患者の歩行能力向上を目標とする理学療法において、重視

する評価項目と積極的な機能改善を図る要因が明確となった。

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学位論文審査の要旨

「頸髄不全麻痺患者の機能障害と歩行能力との関係 -独立歩行獲得および最大歩行速度

に影響する要因抽出の統計学的分析-」(日本保健科学学会誌第11巻 2 号掲載予定)の論文

を審査した結果、複数の疑問・問題点が指摘されたが、概ね的確な返答が得られた。最終試

験では、質問に対する妥当な返答ができた。

副査 2 名の主査への報告でも同様な見解であった。

以上のことから、本論文は博士後期課程満期退学後の提出論文(博士論文)として相応し

いと判断した。最終試験は合格と認める。

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首都大学東京学報(学位論文)第 6 号 登録番号20(14)

博士学位論文(内容の要旨及び審査の結果の要旨)

平成20年10月発行

編集発行 公立大学法人首都大学東京経営企画室企画課

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