重症難病患者が入院から在宅療養へスム ーズに移行し、在宅での … ·...

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重症難病患者が入院から在宅療養へスム ーズに移行し、在宅での安全な生活を支援 するため、医療処置の基本や必要とされる 環境整備、関係者の支援体制等のポイント をマニュアルとしてまとめました。 天橋立(大内峠一字観公園から撮影) 京都府丹後保健所(丹後広域振興局健康福祉部) 平成19年3月

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重症難病患者が入院から在宅療養へスム

ーズに移行し、在宅での安全な生活を支援

するため、医療処置の基本や必要とされる

環境整備、関係者の支援体制等のポイント

をマニュアルとしてまとめました。

天橋立(大内峠一字観公園から撮影)

京都府丹後保健所(丹後広域振興局健康福祉部)

平成19年3月

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◆ ◆ ◆ 目 次 ◆ ◆ ◆

1 入院から在宅療養へのポイント 1

■在宅療養までの経過 3

■ネットワーク図 5

2 病状の進行に伴うケアのポイント 7

■コミュニケーション障害 9

■嚥下障害 11

■運動障害 12

■呼吸障害 13

3 医療処置に伴う必要物品 15

■気管切開 17

■吸引 18

■人工呼吸器 19

■経管栄養 21

4 様式等 23

■在宅療養支援チェックリスト 25

■退院準備一覧 28

■衛生材料・消耗品一覧 30

■人工呼吸器退院指導プログラム(院内指導内容) 32

■人工呼吸器モニタリングの記録表 34

■人工呼吸器装着患者の外出支援 35

■「家族以外の者による痰の吸引」条件表 37

5 参考資料 39

・関係機関一覧 41

・「家族以外の者による痰の吸引」に関する通知文 44

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1 入院から在宅療養へのポイント

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

1 入院から在宅療養へのポイント

在宅療養までの経過

入院されている患者が在宅での療養になる場合、在宅での療養環境を整えておくことは、

安定した生活を送るうえで、とても重要なことです。

経 過 会議等 体制確保

入 院

在宅療養の

意思決定

在宅体制準備

退 院

在宅療養継続

本人・介護者への意思

確認

関係者カンファレンスの開催 ①情報交換 ②退院後の課題分析、

評価

・人工呼吸器学習会の開催

・看護連携会議の開催・外泊練習

・5つの体制確保

・関係者カンファレンス

の開催

・準備物品の確認と準

退院直前カンファレンスの開催 ①役割 ②サービス体制

③緊急時体制

④退院時の移送手段

①診療体制

病院の主治医と地域の往診医を持つこと

が望ましい。

②看護体制

病院の看護(施設内看護)と地域の看護

の連携が充分にできる。

③家庭内看護体制 ・介護者が基本的なケア能力(精神的・身体的)をもち、可能であれば複数いる。

・レスパイト入院先が決まっている。

・経済的基盤がある。

④物品供給体制

医療機器に必要な滅菌器材、衛生材料

の供給、その供給ルートがはっきりして

いる。

⑤緊急時体制の確保

緊急時(急変時、機械のトラブル時、家

族の急変、災害時)の連絡先と支援機関

が明確である。

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

会議等のポイント 目 的 会場・方法 内 容 会議

在宅療養支援を行うために、関

わる医師、看護師、福祉等の関

係職員で行い、情報交換・今後

の方針等を共有する。在宅療養

方針は本人・家族が主体性をも

っていることが基本であるか

ら、本人・家族を交え、よく討論

して納得した方針がたてられる

よう協力する。

その都度、内容に応

じて、病院、本人の

自宅、在宅療養支援

関係施設等、集まり

やすい場所に設定

する。

①今後の療養方針に対する本人・家族の意思や希

望の確認

関係者カンファレンス

②病状・治療状況・予想される合併症の確認

③入院中の具体的なケア内容と在宅で必要なケア

内容の確認

④在宅サービスの情報

⑤体制確保(医療・看護・家庭内介護・物品供給・緊

急時体制等)

療養者が使用している人工呼

吸器について学習する機会を

つくり、人工呼吸器についての

情報共有ができるようにする。

【会場】在宅の関係

者が集まりやすい

場所

①人工呼吸器の機種、作動原理、回路の接続方法

や交換方法、使用済みの回路の処理方法、加温

加湿器の原理、温度調節、加湿器の水の補給等 人工呼吸器学習会

(例)訪問看護ステ

ーション等

②アラームについて、それぞれの意味と対応方法

③ピーク圧の意味と対応方法

【方 法】使用する呼

吸器を扱う会社に依

頼し、機器を持参し

てもらい説明を受け

る。

④日常的な人工呼吸器のチェック項目(別添チェッ

クリスト)

⑤人工呼吸器の管理方法

⑥呼吸器回路、フィルター等物品の供給体制、メン

テナンス等の人工呼吸器供給会社の役割

地域の支援体制やサービ

ス提供等をふまえた退院

指導に向けて検討する。

病棟 ①衛生用品の購入や器具の消毒方法 看護連携会議

②ナースコールや精製水の代用品

③試験外泊の具体的な対応方法

退院に向けて、本人の状

態をふまえたうえで、在宅

療養目標やそれに向けた

サービス、各機関の役割

について最終確認する。

病院等主治医や

関係者の集まり

やすいところ

①病院からの情報提供 退院直前カンファレンス

②本人・家族(介護者)のニードに沿った療

養支援方針の検討

②緊急時の対応を具体的に確認する。

③介護疲労を予防するための体制づくり

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ネットワーク図

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

◆ケアチームの構成と各職種の役割 内 容 備 考

診 断 主治医 病名告知と病気の予後について本人・家族に説明

気管切開・呼吸器装着の説明 レスパイト入院受入

症状に応じた治療 地域主治医

在宅患者の訪問診察

日常生活の介助 病棟看護師

退院へ向けての介護指導、吸引操作指導

通院患者の状態把握 外来看護師

入院時のベット確保

筋力訓練 装具の工夫 関節拘縮防止 理学療養士

呼吸リハビリ 訪問リハビリ、住宅改造指導

自助具の工夫 コールスイッチの製作 作業療養士

環境制御装置の工夫

発語訓練 嚥下訓練 言語聴覚士

文字盤、意思伝達装置の指導

人工呼吸器等精密機器の管理、 臨床工学士 家族への人工呼吸器の取扱方法説明

自宅の下見と呼吸器設置指導

栄養評価 嚥下困難時の食事内容の工夫等栄養全般の指導 栄養士

ミキサー食の家庭指導

口腔ケア 歯科衛生士

嚥下評価・嚥下体操等の指導

薬の説明 薬剤師

内服方法検討

地域医療連携室 病院内と地域関係機関との連絡窓口

在宅患者の状態観察、医療処置の管理と指導 訪問看護師

介護者の疲労度チェック

個別支援やコーディネイト 保健師

関係機関との調整

ケアマネージャー 介護保険コーディネイト

障害者生活支援センター

障害者福祉制度のサービスコーディネイト

ヘルパー 生活全般への支援

訪問入浴 自宅における入浴支援

福祉事務所(町福祉担当者)

障害者福祉サービスに関わる相談窓口

消防署 緊急時搬送

医療機器の貸出、 呼吸器トラブル時の対応 医療機器貸出業者

在宅で使用中の呼吸器の定期点検

停電時の対応(在宅療養開始時に一報しておく。停電の事前予告、優先復興等の協力がある。)

電力供給会社

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2 病状の進行に伴うケアのポイント

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2 病状の進行に伴うケアのポイント

神経・筋疾患の場合、発声・発語の機能に障害がおこり、話し言葉としての意思伝達が出来ない状

態になることがあります。また、病気によっては四肢の運動機能障害も加わり、筆談も不可能になり、

意思の伝達手段を失う場合があります。必要に応じてコミュニケーションを助ける機器類を活用するこ

とはとても効果があります。

・会話がゆっくり

・長文が困難

・ろれつがまわり

にくい

トーキングエイド 50音文字盤のキーを押して文字を打ち込みます。<価格>100,000円

意思伝達装置※

パソコンを使って、本人にあったスイッチを使い、文字を打ち込みます。 <価格>480,000円

身体障害福祉制度では補装具に該当

経過 状 態 使用機器 詳 細

コミュニケーション障害

機能全廃

・発音不明瞭

・聞き取り困難

・発語不能

※制度の適用条件 ・身体障害者手帳の場合、上下肢1級かつ言語3級(喪失)なら日常生活用具の給付。1割自己負担。

・特定疾患で神経難病の場合、難病居宅生活支援事業を利用。所得に応じた自己負担が必要。

レッツチャット 本人の障害にあったスイッチを使い、文字を打ち込みます。専用スタンドがある。 <価格>120,000円

筆 談

レッツチャット

意思伝達装置

心語り 患者の脳の血流量から「はい」「いいえ」といった本人の考えを把握する新しいシステムです。

トーキングエイド

文字盤

心語り

文字盤 50音や数字等を記入した文字板を指でさして意志を表示します。 <価格>発泡スチロールや厚手の紙で簡単に

手作りできます。

透明文字盤 透明プラスチック板に50音や数字等を記入した文字盤を使い、アイコンタクトで目線のあった文字を拾い、つづっていきます。 <価格>2,300円

プラスチック板(100円程度)を購入すれば簡単に手作りできます。

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

コミュニケーション機器の活用について 装 置 利用者・家族からの声

文字盤

【本人】

動く腕を使って文字

盤を指します。

夫の手作りの回転

する文字盤を使用

しています。

(筋萎縮性側索硬化症・70代女性)

トーキングエイド

【本人】

早速使ってみました。充分だと思います。

使い方も簡単ですぐに慣れました。

(多系統萎縮症・言語障害のある50代男性)

レッツチャット

【本人】

これがあって本当に良かったです。

なくてはならないものになりました。

【家族】

夜中に起こされ何をして欲しいのか解らない時に、

痰や向きを教えてくれるので助かります。なければ

何をして欲しいのか解りません。

(多系統萎縮症・気管切開、上肢機能障害のある

50代女性)

意思伝達装置

【本人】

抵抗なく使えます。おもしろいです。

(筋萎縮性側策硬化症・50代女性)

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

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嚥下障害のため、経口での栄養摂取が不十分であったり、また、経口摂取を安全に実施すること

ができなくなった場合には経管栄養を考える必要があります。

・ 食 事 時 に む せ

る。

・時間がかかる。

・飲み込みにくさ

を自覚する。

・よだれ

経口摂取の支援(食事形態の選択)

普通食 ↓

一口大のきざみ食 ↓

パサパサからしっとり食品への変更 ↓

柔らかい食材・半固形物食品へ (例:米飯から粥食へ)

↓ とろみ・半固形食品への変更

①ゲル化剤による:寒天・ゼラチン・ペクチン・カラギナン等

②とろみ剤による:デンプン系、増粘多糖類系 ③ミキサー食

経過 状 態 導 入 詳 細

嚥下障害

機能全廃

・いつまでも口内

に食べ物が残

っている。

・体重減少。

・誤嚥性肺炎を

繰り返す。

・脱水

・栄養失調

栄養評価

胃ろう等経管栄養と経口摂取の併用

経管栄養(胃ろうや経鼻チューブ)

嚥 下 機 能 の評 価 や 体 操の開始

食 事 形 態 の工夫(軟食、とろみつけ、きざみ) ・体位の工夫・水分摂取の

工夫 ・筆談

◆様々な食品リスト

分 類 主な商品名

濃厚流動食 オクノスc

半消化態栄養

食品

メディエフパック、グルセ

ルナ、cz-Hi、

テルミールソフト、ハイネ

ックス,アイソカルプラス、

ライフロン-6など

半消化態栄養

エンシュアリキッド、クリニ

ール,ラコール、ハーモニ

ック

消化態栄養剤 ツインライン、エンテルー

医薬品

成分栄養剤 エレンタール、エレンター

ル-P

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

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疾患によって違いはありますが、障害の進行に伴い、日常生活が部分的な介助から全面的な介助

へとなっていきます。その時々の障害や機能低下に合わせた補助具・機器の導入等、様々な工夫が

必要となります。また、関節や筋肉の拘縮予防をはかるため、リハビリテーションも必要となります。

・握力低下

・歩行時足がひ

っかかる。

・重いものが持

てない。

・走りにくい。

住宅改修(手すり・段差解消・昇降機・リフト)

車椅子で

も昇降機

を利用し

て簡単に

お出かけ

します。

電動ベッド・ベッド柵・マット

上肢の機能があれば、自分で好きな位置に合

わすことができます。

ポータブルトイレ

ウォッシャブル機能のついたタイプもあります。

経過 状 態 導 入 詳 細

運動障害

機能全廃

・衣服の着脱困

・歩行困難

身体障害者手帳(肢体不自由一般用)の等級表

上肢 下肢 体幹

1級

両上肢の機

能が全廃

両 下 肢 の

機 能 が 全

体幹の機能障害に

よりすわっていること

ができないもの

2級

両上肢の機

能 の 著 し い

障害

両 下 肢 の

機能の著し

い障害

体幹の機能障害に

より座位または起立

位保つことが困難な

もの

体幹の機能障害に

より立ち上がりが困

難なもの

3級

一上肢の機

能 の 著 し い

障害

一 下 肢 の

機能の著し

い障害

体幹の機能障害によ

り歩行が困難なもの

車椅子 本人の障害にあわせて、電動車椅子や呼吸器が搭載できる特殊なものを使われる場合は障害者福祉制度を利用します。

・座位保持不可

・身体障害者手 帳 の 申請

・介護保険の申請

車 椅 子 利 用( 場 合 に よ って は 電 動 車椅子)

・介護用ベッドやマット

・障害に合わせ た 車 椅子 ( 例 : 呼吸 器 搭 載可能なオーダ ー メ イ ドの車椅子)

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重症難病患者在宅療養支援マニュアル

呼吸筋萎縮等による換気機能の低下で呼吸障害がおこります。

呼吸障害については、次のように「呼吸障害出現期」、「気管カニューレ装着期」、「人工呼吸器装

着期」に分けて、それぞれ適切な対応が必要となります。

・早朝の頭痛

・痰の喀出困難

・ 声 が 小 さ く な

る。

・労作時の呼吸

苦。

・眠りが浅くよく

目が醒める。

・ 咳 払 い が 小 さ

い。

呼吸障害出現期 ・呼吸障害の出現、その進行状況を的確に把握します。

・呼吸障害出現の予測について、医師から療養者・家族に説明されている内容を確認します。その上で療養者・家族が的確に対応出来るよう支援します。

・今後の気管切開や人工呼吸器に対する説明を確認し、スムーズに移行できるよう支援します(人工呼吸器装着患者との交流)。

・呼吸が苦しいことによる本人の不安や精神的苦痛を緩和します。

人工呼吸器装着期 人工呼吸器は生命維持装置のひとつであり、事故がおきた場合は死に直結するため、日々の充分な呼吸器ケアや気管カニューレの管理、回路など部品の扱いは正確に行います。業者と連携し器具の点検、交換、不測の事態等のサポート体制を確立しておきます。

経過 状 態 導 入 詳 細

呼吸障害

機能全廃

・全身倦怠感

・腹式または胸式

のみの呼吸に

なる。

・呼吸苦の自覚

・頻脈

・顔面蒼白

・苦悶様顔貌

・発語不能

※呼吸器機能障害 ・1級:呼吸困難が強いため、歩行がほとんどでき

ないもの。動脈血O2 分圧 50Torr以下の状態

・3級:動脈血O2 分圧 50~60 Torr ・4級:動脈血O2 分圧 60~70 Torr

気管カニューレ装着期 ・気管切開は、気管切開口で気道が外界と接しているので、吸引等は無菌操作を徹底します。

・器具、機材による事故予防に気をつけます。・緊急時の対応を確認しておきます。

呼 吸 障 害 出現 の 可 能 性について主治医に確認

呼吸リハビリ開始

将 来 の 人 工呼 吸 器 等 装着に関する意志の確認

PaCO2の上昇によりNIPPV呼吸器の導入について検討

・意識障害

(ぼんやり・うと

うと・昏睡)

気管切開

人工呼吸器

装着

全期に渡って

呼吸器感染症を予防するため、兆候を早期に把握し対応します。

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3 医療処置に伴う必要物品

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3 医療処置に伴う必要物品

気管切開

気管切開とは、気管に外科的に穴をあけることです。その穴は気管切開カニューレにより保持され

ます。気管を切開することにより鼻や口に代わって気道を確保することができます。

気管切開を施された療養者は、そこが閉塞されない限り、そこから呼吸したり、咳をしたりします。

気管切開カニューレを通して呼吸する場合、吸気は鼻で加温加湿されず、異物も除去されなくなり

ます。

気管カニューレは喉頭の下に位置するため、空気が喉頭や声門を通らなくなります。カニューレの

口が開いている限り会話は困難です。実際には気管切開孔を閉じて空気が気管および声帯を通る

ようにすると会話は可能です。

なぜ気管切開が必要か

○長期の人工呼吸療法において、気道を確保するため。

○上気道が閉塞していて鼻や口で呼吸できないため。

○気管から咳によって吐き出せないほど粘調な痰を吸引するため。

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吸 引

咳をする力が弱くなったり無くなったりすると、肺や気道に分泌物がたまります。

気道分泌物は肺胞から酸素を取り入れる肺の機能を害し、人工呼吸器装着者の呼吸困難の原因

にもなります。したがって、吸引により気道から分泌物を取り除き、呼吸し やすいようにすることは

気道ケアで最も重要なことです。

(必要物品)

物 品 供給方法 備 考 保険適応

1訪問診療時に1回/1~2

週間交換・ 医療保険 気管カニューレ( Fr.) 医院

カフ用注射器 10cc 医院 医療保険

カニューレバンド 家族購入 自己負担

カテーテル(気管用) 医院 医療保険

吸引器 家族購入 身体障害者手帳

カテーテル(口腔用) 医院 自己負担

滅菌蒸留水(1㍑× 本) 医院 医療保険

(1日2本×30日)煮沸水は

8時間毎に交換 自己負担 精製水または煮沸水 家族

摂子(1~2本) 家族購入 自己負担

摂子立て・精製水用瓶4個 家族購入 自己負担

消毒液(エタノール) 家族購入 自己負担

アルコール綿 家族購入 自己負担

毎日交換(家族) Yガーゼ30枚

綿球または綿花30個

イソジン消毒液50ml

消毒綿入れ蓋付き瓶 家族購入 自己負担

適宜 紙絆創膏1個 医院

気管カニューレ交

換時医療保険キシロカインゼリー30g 医院

ゴム手袋 自己負担

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人工呼吸器

長期にわたり、持続的に、人工呼吸に依存せざるを得ず、かつ安定した病状にある患者について、

在宅において実施する人工呼吸療法のことを在宅人工呼吸療法といい、次のような場合に行われま

す。

○脳がうまく呼吸中枢を刺激できないとき。

○呼吸筋が空気を取り入れたり、吐き出したりする機能をうまく果たせないとき。

○肺組織が損傷を受けたことにより、機会的な補助なしではでは呼吸することが困難になったとき。

(種 類)

陽圧式人工呼吸

気管切開による人工呼吸

鼻マスク式の人工呼吸(NIPPV)

陰圧式人工呼吸

(必要物品)

物 品 供給方法 担当等 保険適応

業 者( ) 種類 医療保険 人工呼吸器

担当者( ) ( )

業 者( ) 加温加湿器 医療保険

担当者( )

業 者( ) 1回/2週間、交換

は訪問看護 回路(蛇腹・フィルター・チューブ・

アダプター) 医療保険 担当者( )

人工鼻

パルスオキシメーター (難病居宅)

アンビューバック 本人・家族 自己負担

酸素ボンベ 医療保険

バッテリー 保健所・保健室 自己負担

カフアシスト レンタル25,000円/月 自己負担

次亜塩素系(ミルト

ン・ミルポン…) 自己負担 回路消毒液 酢など

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◆人工呼吸器用語の解説◆

【種 類】

○陽圧式人工呼吸器:陽圧をかけて肺の中へガスを「押し込む」方法により換気を行う

○従量式:ダイヤルなどで「換気量」を設定し、これを送り込む方式。

○従圧式: 設定した「圧」に達するまで吸気を送り込む方式。

○陰圧式人工呼吸器:胸壁、腹壁をチェストシェルで覆いその中のガスを吸引装置で吸引して陰圧

をつくり、胸壁、腹壁を「引っ張る」方法によりで換気を行う。

器械による呼吸様式をいう。

モード 在宅用人工呼吸器には、コントロール、アシスト/コントロール、SIMVなどのモー

ドがある。

一回換気量 1回に換気する量をいう。通常成人では10ml/Kgで設定する

換気回数 1分間に換気する回数をいう。通常成人では15回前後に設定する。

1分間に換気することをいう。例えば一回換気量を500ml、換気回数12/分で、5

00×12=6000mlとなる。 分時換気量

I/E比 吸気時間と呼気時間の割合をいう。通常は1:2で換気を行う。

人工呼吸器より吸気が急速に得られるか、又はゆっくりと行われるかを規定す

る。補助呼吸時では吸気に流速が低すぎると、人工呼吸 器装着者の吸気に人

工呼吸器からの送気がおいつかない、反対に流速 を増やしすぎると吸気時間が

短くなりすぎることになる。

吸気流速

トリガーとは「銃の引き金」のことで、装着者自身の吸気努力が引き金になって送

気が始まることをいう。 トリガーレベル

PaO2 動脈血酸素分圧 (100~80)60以下で低酸素血症

SaO2 動脈血酸素飽和度

PaCO2 動脈血炭酸ガス分圧 (35~45%)45%以上で高二酸化炭素血症

ETCO2 終末呼気炭酸ガス

SpO2 経皮的酸素飽和度(95%以上)90%以下は低酸素血症疑い

滅菌とは、「物質中の全ての微生物を滅菌または除去すること」を いい、消毒と

は「人畜に対して有害な微生物または目的とする対象微生物だけを殺滅するこ

と」をいう。

滅菌・消毒法

ー滅菌法: 高圧蒸気滅菌/酸化エチレンガス滅菌/放射線滅菌・・・・等

ー消毒法: 消毒剤処理/煮沸/紫外線照射・・・等。

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経管栄養

胃ろう(PEG)

PEGとは、内視鏡を使って胃に小さな穴(口)をつくる手術です。

1970年代までは全身麻酔を必要とする外科的な手術によって行われていましたが現在は経皮

内視鏡的胃ろう造設術により局所麻酔で行えるので負担が少なくなりました。

つくられた穴を「胃ろう」といい、取り付けられた器具を「胃ろうカテーテル」といいます。(カテーテ

ル=管、チューブ)口から食事のとれない方や、食べてもむせ込んで肺炎などを起こしやすい方に、

直接胃に栄養を入れる栄養投与の方法です。

PEGは、欧米で多く用いられている長期栄養管理法で、患者の苦痛や介護者の負担が少ないと

いうメリットがあります。

(必要物品)

物 品 供給元 備 考 保険適応

回/ ヶ月交換 胃ろうカテーテル 医療機関

必要時交換 注入用ボトル(イルリガートル) 医療機関

(1個/月まで)

輸液回路 医療機関

Yガーゼ(12折り)10枚 医療機関

綿球10個 医療機関

紙絆創膏1個 医療機関

適宜交換・予備1個 注射器(薬剤注入用) 医療機関

次亜塩素系

ボトル・回路等消毒薬 自己負担 (ミルトン・ミルポン…)・酢等

Page 24: 重症難病患者が入院から在宅療養へスム ーズに移行し、在宅での … · 吸器を扱う会社に依 頼し、機器を持参し てもらい説明を受け

重症難病患者在宅療養支援マニュアル

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