設置の趣旨 資料目次 · 2017-08-22 · 資料. 2. 資料2 :共働き世帯の推移....

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設置の趣旨 資料目次 資料 1:岩手県の人口構造の変容 資料 2:共働き世帯の推移 資料 3:岩手県内高等学校卒業生の看護・医療系大学等への進学状況 資料 4:大学進学者の地元進学率及び他県への流出率 資料 5:看護系大学等の在学生の地元出身者の割合 資料 6:岩手県看護職員養成施設志願者数・入学者数の年次推移 資料 7:高齢者人口及び高齢化率 資料 8:岩手保健医療大学の教育の要:ケア・スピリットと倫理 資料A:ケア・スピリットの 4 年間の学修の流れ 資料 9:初年次教育及び学生支援プログラム 資料 10カリキュラム・ツリー 資料 11:学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時の到達目標の構成 資料 12:倫理教育=キャリア教育を各教科の中に組み込むこと 資料B:助手の内定状況 資料 13:岩手保健医療大学設置時における採用教員の定年の特例に関する規程(案) 資料C:定年教員補充計画 資料 14:反転授業 資料 15:履修モデル(看護師)、履修モデル(看護師・保健師)、履修モデル(養護教諭 2 種) 資料 16:学生アドバイザー制度 資料 17:時間割 資料 18:都道府県別保健師課程養成所数及び定員 資料 19:実習要項(案) 資料 20:実習全体計画及び概要・年間スケジュール 資料 21:実習施設の承諾書 資料 22:実習施設一覧 資料 23:実習施設の位置地図 資料D:臨地実習における役割分担 資料 24:実習教員配置 資料 251 週間あたりの担当時間数 資料 26:実習施設における指導者の配置計画 資料 27:教育課程と指定規則等との対比表

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Page 1: 設置の趣旨 資料目次 · 2017-08-22 · 資料. 2. 資料2 :共働き世帯の推移. 全国の共働き等世帯数の推移. 出典:内閣府男女共同参画局. 岩手県

設置の趣旨 資料目次

資料 1:岩手県の人口構造の変容

資料 2:共働き世帯の推移

資料 3:岩手県内高等学校卒業生の看護・医療系大学等への進学状況

資料 4:大学進学者の地元進学率及び他県への流出率

資料 5:看護系大学等の在学生の地元出身者の割合

資料 6:岩手県看護職員養成施設志願者数・入学者数の年次推移

資料 7:高齢者人口及び高齢化率

資料 8:岩手保健医療大学の教育の要:ケア・スピリットと倫理

資料A:ケア・スピリットの 4 年間の学修の流れ

資料 9:初年次教育及び学生支援プログラム

資料 10: カリキュラム・ツリー

資料 11:学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時の到達目標の構成

資料 12:倫理教育=キャリア教育を各教科の中に組み込むこと

資料B:助手の内定状況

資料 13:岩手保健医療大学設置時における採用教員の定年の特例に関する規程(案)

資料C:定年教員補充計画

資料 14:反転授業

資料 15:履修モデル(看護師)、履修モデル(看護師・保健師)、履修モデル(養護教諭 2種)

資料 16:学生アドバイザー制度

資料 17:時間割

資料 18:都道府県別保健師課程養成所数及び定員

資料 19:実習要項(案)

資料 20:実習全体計画及び概要・年間スケジュール

資料 21:実習施設の承諾書

資料 22:実習施設一覧

資料 23:実習施設の位置地図

資料D:臨地実習における役割分担

資料 24:実習教員配置

資料 25:1 週間あたりの担当時間数

資料 26:実習施設における指導者の配置計画

資料 27:教育課程と指定規則等との対比表

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資料 1

資料 1:岩手県の人口構造の変容

平成 25年 10月 1日現在の年齢別人口:

年少人口(15歳未満):159,107 人(前年より△3,212)

生産年齢人口(15才~64歳):759,706人(前年より△13,810)

高齢者人口(65歳以上):370,575 人(前年より 8,124増)

高齢者率 28.7%(平成 25年 全国高齢者率 25.0%)

平成 47年 推計高齢者率 37.7%

「岩手県保健医療計画(平成 25年 3月策定)」より

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資料 2

資料 2:共働き世帯の推移

全国の共働き等世帯数の推移

出典:内閣府男女共同参画局

岩手県 主な世帯の家族類型、夫と妻の就業状態別世帯数の割合 平成 24年

出典:平成 24年就業構造基本調査結果の概要( 岩手県版)

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資料 3

資料 3:岩手県内公立高等学校卒業生の看護・医療系大学等への進学状況

岩手県内公立高等学校卒業生の県内看護系大学等への入学者数の推移 (人)

岩手県立大学

(看護学部)

岩手看護短期

大学

(准)看護師養

成所

合計

平成 17年入学生 53 35 161 249

平成 18年入学生 62 31 159 252

平成 19年入学生 56 35 162 253

平成 20年入学生 54 44 172 270

平成 21年入学生 53 42 170 265

平成 22年入学生 60 35 162 257

平成 23年入学生 62 40 172 274

平成 24年入学生 54 41 (未集計) (-)

(岩手県教育委員会学校教育室「大学入学者数等調べ」)

H17~22 年は卒業生及び過年度卒業生の合計。H23~卒業生のみの集計。

この表は、岩手県内公立高校 65 校 3 分校の看護系大学等への入学者の数を示している。

県内 13私立高校は含まれていないが、多数を占める公立高校卒業生の 700~800名が看護

及び医療系の大学等に進学しているが、そのうちの県内看護系大学等への入学者は、250

人前後で推移している。

「いわて看護職員定着アクションプラン 2011」平成 23年 9月より

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資料 4

資料 4:大学進学者の地元進学率及び他県への流出率(平成 26年 4月入学者)

地元進学率 他県への流出率

出身高校の所在地

地元進学率 地元大学進学者数

出身高校の所在地

他県への流出率

他県の大学への進学者数

1 愛知 70.6% 26,162 1 和歌山 89.2% 3,974

2 北海道 68.4% 13,818 2 鳥取 88.9% 1,851

3 東京 64.6% 48,550 3 奈良 85.5% 6,686

4 福岡 63.5% 14,317 4 佐賀 84.9% 2,974

5 宮城 56.9% 5,800 5 長野 84.6% 7,822

6 大阪 54.8% 24,392 6 島根 84.3% 2,375

7 沖縄 53.8% 3,315 7 香川 83.3% 3,761

8 広島 53.1% 7,720 8 富山 81.8% 3,748

9 京都 49.8% 7,382 9 高知 81.4% 2,251

10 熊本 45.5% 3,391 10 岐阜 81.2% 7,727

11 兵庫 45.0% 13,002 11 山形 81.1% 3,612

12 岡山 43.0% 3,745 12 福島 80.7% 6,351

13 石川 41.9% 2,234 13 茨城 80.6% 11,957

14 神奈川 40.3% 16,832 14 三重 79.8% 6,553

15 徳島 36.2% 1,199 15 栃木 78.0% 7,090

16 青森 35.5% 1,794 16 滋賀 77.6% 5,222

17 新潟 34.2% 3,323 17 大分 77.4% 3,183

18 愛媛 34.0% 2,096 18 秋田 76.9% 2,979

19 長崎 34.0% 1,910 19 山口 76.0% 3,819

20 鹿児島 32.4% 1,940 20 宮崎 73.5% 3,164

21 千葉 32.0% 9,052 21 山梨 73.4% 3,754

22 埼玉 31.7% 10,451 22 岩手 72.7% 3,389

23 福井 29.4% 1,100 23 静岡 71.6% 12,148

24 群馬 29.3% 2,629 24 群馬 70.7% 6,338

25 静岡 28.4% 4,817 25 福井 70.6% 2,643

26 岩手 27.3% 1,273 26 埼玉 68.3% 22,534

27 山梨 26.6% 1,362 27 千葉 68.0% 19,197

28 宮崎 26.5% 1,138 28 鹿児 67.6% 4,055

29 山口 24.0% 1,209 29 長崎 66.0% 3,710

30 秋田 23.1% 895 30 愛媛 66.0% 4,062

以下略 以下略

計 56.8% 337,270 計 43.2% 256,326

(株)旺文社 教育情報センター調べより作成

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資料 5:看護系大学等の在学生の地元出身者の割合

基本情報

区分 学生数

(人)

回答数

(人)

回答率

(%)

備考

大学 379 294 77.6 1校

短大 247 240 97.2 1校

看護師養成所

(3年課程公立)

272 269 98.9 3校

看護師養成所

(3年課程民間)

361 346 95.8 3校

看護師養成所

(2年課程)

229 222 96.9 3校

高校(5年一貫) 241 239 99.2 1校

准看護師養成所 205 204 99.5 3校

合計 1,934 1,814 93.8

年齢

区分 人数

10代 860

20代 833

30代 93

40代 17

50代 2

空欄 9

合計 1,814

出身県

区分 人数

岩手県 1,478

北海道 15

青森県 64

秋田県 57

宮城県 141

山形県 12

福島県 13

その他・空欄 34

合計 1,814 「いわて看護職員定着アクションプラン 2011」平成 23年 9月

岩手県内の看護師等学校養成所学生実態調査結果より作成

大学

16%

短大

13%

看護師養成

(3年課程

公立)

15%

看護師養成

(3年課程

民間)

19%

看護師養成

(2年課

程)

12%

高校(5年

一貫)

13%

准看護師養

成所

12%

回答数

10代

47%

20代

46%

30代

5%

40代

1%

50代

0%空欄

1%

年齢

岩手県

81%

北海道

1%

青森県

3%

秋田県

3%

宮城県

8%山形県

1%

福島

1%

その他・

空欄

2%

出身県

資料 5

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資料 6

資料 6:岩手県看護職員養成施設志願者数・入学者数の年次推移

「いわて看護職員確保定着アクションプラン 2014」より

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資料7:高齢者人口及び高齢化率 (平成25年10月1日現在)

※順位は高い順

高齢化率 順位 割合 順位

全国 127,298 31,898 25.1% 15,603 12.3%

北海道 5,431 1,469 27.0% 22 739 13.6% 26

青森県 1,335 373 27.9% 16 196 14.7% 19

岩手県 1,295 372 28.7% 9 204 15.8% 5

宮城県 2,328 553 23.8% 41 285 12.2% 35

秋田県 1,050 331 31.5% 1 187 17.8% 1

山形県 1,141 332 29.1% 6 189 16.6% 4

福島県 1,946 524 26.9% 23 286 14.7% 18

茨城県 2,931 728 24.8% 36 344 11.7% 38

栃木県 1,986 480 24.2% 39 233 11.7% 39

群馬県 1,984 512 25.8% 34 251 12.7% 31

埼玉県 7,222 1,661 23.0% 42 699 9.7% 47

千葉県 6,192 1,505 24.3% 38 658 10.6% 42

東京都 13,300 2,914 21.9% 46 1,393 10.5% 43

神奈川県 9,079 2,033 22.4% 44 919 10.1% 44

新潟県 2,330 655 28.1% 15 354 15.2% 13

富山県 1,076 309 28.7% 10 156 14.5% 21

石川県 1,159 302 26.1% 31 149 12.9% 30

福井県 795 214 26.9% 24 115 14.5% 22

山梨県 847 225 26.6% 26 117 13.8% 25

長野県 2,122 600 28.3% 12 320 15.1% 15

岐阜県 2,051 539 26.3% 27 265 12.9% 29

静岡県 3,723 966 25.9% 32 471 12.7% 32

愛知県 7,443 1,662 22.3% 45 750 10.1% 45

三重県 1,833 480 26.2% 28 240 13.1% 27

滋賀県 1,416 319 22.5% 43 154 10.9% 41

京都府 2,617 676 25.8% 33 323 12.3% 34

大阪府 8,849 2,184 24.7% 37 978 11.1% 40

兵庫県 5,558 1,408 25.3% 35 671 12.1% 36

奈良県 1,383 369 26.7% 25 173 12.5% 33

和歌山県 979 288 29.4% 5 149 15.2% 12

鳥取県 578 163 28.2% 13 90 15.6% 9

島根県 702 217 30.9% 3 124 17.7% 2

岡山県 1,930 524 27.2% 21 269 13.9% 24

広島県 2,840 743 26.2% 29 368 13.0% 28

山口県 1,420 429 30.2% 4 223 15.7% 8

徳島県 770 224 29.1% 7 121 15.7% 7

香川県 985 277 28.1% 14 144 14.6% 20

愛媛県 1,405 404 28.8% 8 214 15.2% 11

高知県 745 232 31.1% 2 126 16.9% 3

福岡県 5,090 1,230 24.2% 40 607 11.9% 37

佐賀県 840 219 26.1% 30 119 14.2% 23

長崎県 1,397 390 27.9% 17 211 15.1% 14

熊本県 1,801 491 27.3% 20 271 15.0% 16

大分県 1,178 337 28.6% 11 180 15.3% 10

宮崎県 1,120 310 27.7% 19 168 15.0% 17

鹿児島県 1,680 467 27.8% 18 264 15.7% 6

沖縄県 1,415 260 18.4% 47 137 9.7% 46

総務省統計局人口推計年報 都道府県,年齢(3区分),男女別人口-総人口(平成25年10月1日現在)を基に作成

(単位:千人)

資料7

※順位は高い順都道府県 総人口

65歳以上人口(高齢者人口)

(再掲)75歳以上人口

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資料 8

1

岩手保健医療大学(仮称)の教育の要:ケア・スピリットと倫理

岩手県盛岡市に新たな保健医療大学を建てるにあたって、その大学として目指すところ、すな

わち、保健医療の専門職を目指す学生をどのように教育し、どのような人間として臨床現場に送

りだそうとするかを、ここにまとめる。本学は看護学部 1 学部をもって出発しようとしているの

で、以下では「看護教育」のあり方について構想を記すが、その内容は医療・介護の従事者全般

に通じるものである。

1.看護教育の基礎に倫理をおく

本学の教育方針の要は「看護教育の基礎に倫理をおく」ことにある。ただし、これは決して、

臨床現場で看護師が「倫理、倫理」といつも気にしつつ、「こうしてはいけない」「ああしてはい

けない」という思考に支配され、行動を制限されながら活動をするということを目指すわけでは

ない。「倫理」は本来そのようなものではない。

そうではなく、

①看護師がこの社会の一員として生まれ、育ってきた過程で自ずと発現するようになった、周

囲の人との関係における振舞い方や情の発動を基礎にして、

②その大部分は現代においても共同体における振舞いと情の働きとして適切なので、それが歪

められずに伸びるように、また、

③現代社会にそぐわない部分を理解することによって自らコントロールできるように、また、

社会(行政)が行う医療・福祉を担当する者として社会に信任されるに際して社会から要請

された理と情の働きができるようになることを目指す教育を大学教育カリキュラムに組み込

み、

④かくして、卒業時には、理の働きと情の働きが相俟って、自分では自由にのびのびとケア活

動をしていて、しかも自ずと社会の一員として、また医療・福祉に携わる者としての倫理に

適っているというあり方になるように

努めたい。

このことは、看護職に必要な専門的知識と技術の教育を、臨床現場で真に活きる実践知にして

いく教育でもある。すなわち、ケア従事者が医療・ケアを必要とする患者やその家族と関係しつ

つケアを進めて行く際に、その専門的知識や技術が、(看護)ケアという文脈に組み込まれて実

践されるために必要なものが倫理である。

また、多職種連携、多職種の医療・介護従事者によるチームによる活動が盛んになっている現

在の医療現場に適応できるように、看護専門家としての知識と技術と、ケア活動を進める際の他

職種と共通の姿勢(倫理的なものを含む)が調和的に統合された人材の養成をしたいのである。

このようなあり方は、卒業生を受け入れる各医療機関が求めているあり方にも適っている。つ

まり、社会の中での人間関係を身につけて、単に知識があり技術があるという専門家ではなく、

人と人との生身の関係において専門的知識・技術を活かせる者であること、ないしそういう者と

して育っていくポテンシャルがあることが求められていると考えるが、そのようになることの核

心に倫理がある。

以上に述べた「理の働きと情の働きが相俟って、自分では自由にのびのびとケア活動をしてい

て、しかも自ずと倫理に適っている」という看護職者のあり方を目指して、本学の倫理教育をど

のようにするかについて、「設置の趣旨 2.教育上の目的(養成する人材、修得させようとす

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資料 8

2

る能力)」の「1)ケア・スピリットの涵養と倫理教育の統合」に記したことについて、より詳細

な説明を以下に付加する。

ケア・スピリットの涵養と倫理教育の統合

(1) 他大学の看護教育における倫理教育と本学の倫理教育〕

本学が行おうとしている教育は、4 年制学部教育課程の看護教育における倫理教育の大方の傾

向とかく異なっている、と一概に言うことは難しい。看護教育の中に「看護倫理」、「医療倫理」

等の教科目を置いているかどうか、関連科目があるとして必修か、選択か、また倫理部分にどれ

ほどの時間を割いているかなど、種々様々だからである。そこで以下では、それなりに倫理教育

を行っている場合を念頭において、説明する。

従来の倫理教育

① 倫理原則をベースにする倫理:看護倫理は遡れば、看護者の心構え中心のいわゆる「職業道徳」

の教育であったということができよう。やがて、現代の生命倫理学が看護学領域にも影響を及

ぼした結果、米国を中心に、(看護)倫理を看護従事者が「いかに振舞うべきか」という行動に

ついてのものと捉え、「倫理原則」を基準にした倫理的な評価を適切に行うことができ、自ら

倫理的に適切な行動ができるようになることを目指す教育として、倫理教育を考える傾向が主

流となった。

② 自律した人間の倫理:この際に「倫理原則」は米国において成立したものを採用しており、人

間は相互に独立した個人同士の対等な関係において活動できる(=自律した)者であることを

前提としていた。

③ ケアの倫理・支え合う人間の倫理:こうした傾向に対して、看護倫理の側から次のような批判

が示された。

・「ケアリング」「共感」「相手に寄り添う」等が大事であるが、上記の倫理原則はそうしたケア

的態度・気持ち面をカバーしていない。

・現実の人間は「相互に独立している」という強さでつきるわけではなく、「互いに支え合う必

要がある」という弱さも併せ持っており、看護ケアはむしろ弱さを受け容れるところから始

まるものだ。

このような批判に伴っている看護の倫理のあるべき姿についての考えを、以下では「ケアの倫

理」と呼ぶ。

④ 2 本立ての教育:ケアの倫理の側からの批判に基づくと、次の2つの対応がでてくる。

a) 《倫理原則をベースにする倫理》と、それではつくせない部分(上記の批判に対応する部分)

をカバーする《ケアの倫理》とを「看護倫理」内でおこなう。この場合、《ケアの倫理》の部

分の比重は必ずしも大きくなく、また、大方の場合これと《倫理原則をベースにする倫理》

がただ二本立てになっているだけで、両者の内的連関が説明されはしない。

b) 看護倫理内では《倫理原則をベースにする倫理教育》を行い、ケアの倫理はそれ以外のとこ

ろで教育する。

a)、b) いずれの場合も、ケアの倫理に該当する教育は、倫理以外の看護学教育の中で、「ケア

リング」、「共感」、「相手に寄り添う」といったあり方を随時教育するという仕方で行われてい

る。ただし、《ケアの倫理》に該当する教育だと自覚的に行うことは稀で、大方は看護職者のケ

アの相手に対する態度や対応の仕方の教育として行われている。

したがって、a)、b) いずれの場合も、《倫理原則をベースにする倫理》の教育と《ケアの倫

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資料 8

3

理》に該当する看護職の相手に対する姿勢ないしケア的態度の教育が 2 本立てのものとして教

育されている。

本学が志す倫理教育

以上にまとめた他大学における(看護)倫理教育と比較して、本学は以下のような教育をしよ

うとしている(以下の①’、②’、・・・は、それぞれ、上述の①、②、・・・に対応している)。

①’ 「倫理原則をベースにする倫理」に対して:倫理的評価は行動・振舞いについてのみなされ

るものではなく、むしろ、看護者がケアの相手に対する振舞いに際して、相手にどのような

姿勢で臨んでいるかが評価の中心である。倫理的に適切な行動・振舞いは、相手に対する倫

理的に適切な姿勢と、相手および状況についての適切な把握から生じるものだからである

(以下の「3.倫理的に適切な振る舞いは、《倫理的姿勢》と《個別状況の把握》の対に由来

する」を参照)。したがって、「倫理原則」を単に行動についてのルールとするのではなく、

相手に対する姿勢に関するものと理解する。

また、このことにより、倫理原則は「こうせよ、こうするな」と人に指令するものではな

く、看護者が進んで目指すようにと、目指すところを示すガイドとなる。

②’ 「自律した人間の倫理」に対して:「人間は相互に独立した個人同士の対応な関係において活

動できる(=自律した)者である」ことと、次項③’ にある「人間は相互に支え合う必要があ

る(弱さをもった)者である」こととの双方を併せ含むような、臨床倫理において提唱されてい

る倫理原則のセットを採る(以下の「4. 人間社会の倫理は・・・」参照)。

③’ 「ケアの倫理・支え合う人間の倫理」に対して:看護ケアの実践の場から生じた、ありのまま

の人間を、その弱さを含めて受け容れるというケアの倫理は重要であり、それを自覚的に本学

の倫理教育の中に組み込む。

④’ 「2 本立ての教育」に対して:①’~③’により、倫理原則をベースにする倫理とケアの倫理を

総合した教育が可能になる。倫理原則はただ行動面に関するものではなく、看護者のケアの相

手に対する姿勢面にも関するガイドとなり、かつ、人間を「相互に独立している」ことと「相

互に支え合う必要がある」こととを併せもつ者と見る見方を背景にしたものとなるので、倫理

原則はケアの倫理と調和的になるからである。

(2) ケア・スピリットと本学の倫理教育

以上のように本学が目指すところの倫理教育を規定した上で、以上でも言及された倫理以外の

看護学教育において行われて来た、「ケアリング」、「共感」、「相手に寄り添う」等の「看護者のケ

アの相手に対するあり方」の教育をどう位置付けるかをも説明する。

本学は、これを他大学と同様に看護学の諸教科目において行うが、ただ個々に行うというので

はなく、4 年の課程を見通して、自覚的に行おうとしている。これは上述のように倫理的に適切な

看護活動ができるようになるために必要な教育ではあるが、倫理教育のためだけになされる教育

ではなく、より広く、看護のあり方全体にかかわる教育である。すなわち、この教育は、看護者

がケアの相手に対して、行動・振舞い面つまり「見かけ」だけよいケアをするのではなく、態度

や気持ち面すなわちいわば「ケアする心」を含めたケア全体としてよいケアができるようになる

ことを目指すものである。

そこで、本学は、従来「ケアリング」、「共感」、「相手に寄り添う」等のキーワードを使って看護

教育の随所で個別に教育されてきた「看護者のケアの相手に対するあり方」を「ケア・スピリッ

ト」という統一した用語で呼ぶことにより、教育対象を明確にし、また学生も自らが何を学んで

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いるかを自覚できるようにした。

こうして、「〈ケア・スピリットの涵養〉と(上述の)〈倫理教育〉を総合した教育」が本学の主

要な特色の一つである。

「ケア・スピリット」の定義

「ケア・スピリット」とは、「自ら進んでケアに向かう(持続的)姿勢」である。

ケア・スピリットは、看護実践に関して従来「ケアリング」、「共感」、「相手に寄り添う」等の

表現により、相手に対するケア的な関係ないし態度として言及されてきたものに該当する。

看護職をはじめとして医療・ケアに携わる者がケア活動を行うためには、自らの内に状況に応

じてケアに向おうとする姿勢が持続的になければならない(偶々気まぐれにケアをする気になっ

て行動したというのでは、ケア従事者とはいえない)。そこで、例えば「フロンティア・スピリッ

ト」が、目の前に広がる未開の土地を開拓することに取り組もうとする持続的な姿勢であるよう

に、ケアに進んで取り組む持続的な姿勢を「ケア・スピリット」と呼ぶこととした。

「ケア・スピリット」という語を導入することによって、「ケアリング」、「共感」、「相手に寄り

添う」等の教育を統一的な視点で見ることができ、学生に何ができるようになることを学ぶのか、

という目標を提示できる、と考える。

ケア・スピリットの教育

ケア・スピリットも教育の必要があり、また従来の看護教育においても(別の呼び方ではあっ

たが)教育されてきた。困っている人、苦しんでいる人をみて、「かわいそうだ」と感じ、「自分

にできることはないだろうか」と感じる力、また周囲の人々のことを思いやる力は、人間には生

まれながらに潜在的に備わっていると考えられる。しかし、それが大学入学時までに適度に開発

され、現に働く力となっているとは限らないのが現状である。

そこで、学生におけるケア・スピリットの発達状況を把握して、必要に応じて発達を促進する

働きかけをする。

加えて、看護職者においては、ケア・スピリットを(これに関係する情の働きを含めて)理に

よってコントロールし、「誰に対しても公平にケアする」、「難しい相手に対しても厭わず、受容的

な姿勢でケアする」というように、医療・看護に相応しく働くように育つ必要がある。

医療・看護に相応しく働くように育ったケア・スピリットは、看護職者が倫理的に適切な振舞

いをする際に看護職者の側にある、ケアの相手に対する倫理的に適切な姿勢に該当する。そうで

あればこそ、ケア・スピリットの教育は倫理教育においても重要なのである。

以下、本学が志す倫理教育の背景にあるいくつかの基本的理解を参考のため提示する。

2.本学の倫理教育の背景にある諸前提

(1) 倫理は人間関係のあり方についての社会的要請である

倫理は、人間関係のあり方 〔私たちが、関係する相手に対してどのような姿勢で・どう理解

し、どう振舞うか〕 についての社会の要請である、といえる。

社会の要請であるということは、私たちが互いに要請し合っているということでもある。「こ

の社会の一員として生きていく以上は、こういう点は皆共通に引き受けよう」と要請しあってい

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資料 8

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るのである。このように要請し合うのは、誰でも自由でありたいのだが、皆が際限なく自由に

(自分勝手に)生きたら、社会の存続があやうくなってしまうからである。そういうわけで、要

請することは、それぞれが自発的に自らの自由をコントロールする事柄となっている。

こうした社会的要請の代表的なものとして、

「他者危害禁止」 (他者に害を与えてはならない)

「他者援助(相互扶助)奨励」(困っている人がいたら助けましょう/互いに助け合って生

きましょう)

を挙げることができる(「他者危害禁止」は皆に個別に要請されている/「他者援助奨励」はあ

る場面に居合わせた人々全体に要請されている、というような興味深い動き方をするが、ここで

は省略する)。たとえば、誰かが夜中に大騒ぎをして周囲の人々の安眠妨害になった場合、害を

被った人々は騒いだ人を「周囲に害を加えたらいけないのだ」として非難するだろう。害を受け

なかった人もこういうことがあったと聞けば、騒いだ人を不適切な行動をしたと評価する(非難

する)。このようにして、「他者に害を加えてはならない」ということが社会的な合意となって

おり、また、互いに要請しあうこととなっている。

医療・福祉従事者に対する社会的要請(医療・福祉従事者の倫理)

上述の社会の一員に対して要請される社会のメンバー間の関係のあり方についての要請に加え

て、社会(行政)がマネジメントして行う医療・福祉活動にケア従事者として参加する者に対し

て、社会が特に要請することがあり、それが医療・福祉の倫理である。それは、倫理原則として

は、次の三つから成る。

・人間尊重:相手を人として尊重する

この場合、相手を「相互に独立した自律的な者」として対していくことと、「相互に支

え合うことを必要とする者」として対していくことの双方をバランスよくブレンドしな

がら対応することに、人間尊重の骨子がある。ここに相手の自律と共に、相手にケア的

態度で対していくことが含まれている。

・与益:相手の益になるように、害にならないようにする

ケア活動が目指すことはこのように表現できる。

・社会的適切さ:社会全体を見る視点でも適切であるようにする

社会として行うケア活動には、それを必要とする人たちに公平・平等にケアを提供する

ことや、ある人にケアを提供することが第3者への不当な害にならないようにするとい

った、社会全体を視野におきながら、自らのケアの適切さをチェックすることが伴わね

ばならない。

(2) 倫理的に適切な振る舞いは、《倫理的姿勢》と《個別状況の把握》の対から生じる

《倫理》とは、ただ「かくかくすべきではない」「しかじかしなければならない」というように、

現れた行動についてコントロールするものでも、逆に「暖かい気持ちで接しなさい」、「相手を受

け容れつつケアをしなさい」等、ただ人間関係における相手への心情を云々するものでもない。

そうではなく、心のあり様と結果としての行動との間にある《倫理的姿勢》と《個別状況の把握》

の対が倫理の場である。

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資料 8

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例えば、その都度の相手に対して、看護師には

①「患者本人にとってできるだけ益になるようにしたい」というケアの目的についての姿勢、

および「相手はものではなく人間である以上、人として尊重しつつケアを進めて行こう」と

いうケアの進め方についての姿勢が持続的にあり、

② その姿勢とその都度の状況の把握が対になって、行動を結果する。

③ そして、「益になるように」という持続的姿勢には、その都度の状況における「ここではど

のようにすることが、この方にとってもっとも益になるだろうか」を把握する働きが対にな

って生じ、相手の益になるような行動となって現れる。

④ また「相手を人として尊重する」という姿勢には、相手の状況を理解する把握が対になり、

共感しつつ、コミュニケーションを進めるという振舞いが結果する。

このように、状況把握は個別状況についての具体的把握であって、個別の状況を的確につかむ

認識と解釈の力および専門職としてもつ知識を個別状況に適用する力を必要とする。

以上のように倫理的な評価の対象になるような振舞いを分析してみると、《倫理的姿勢》と

《状況把握》という二つの要素があることがわかる。このうち、社会的に要請されていることの

要は、《倫理的姿勢》にあらわれている。上述の「他者に害を及ぼさないように」、「互いに助

け合おう」は、代表的な倫理的姿勢である。

したがって、看護教育のプロセスにおいては、倫理的姿勢と状況把握の双方を育てることが必

要であり、かつ、状況把握は個別状況に適切な専門的知識を活性化させることと、患者・家族を

人間として(その考えや気持ち、情を)理解するという二面に分けて、それぞれを実践知として

育てる必要がある。

倫理的姿勢

倫理的に適切なケア的対応 人間を理解する実践知

状況把握

専門的知識とそれを活用する実践知

これらのうち、状況把握の下位区分に関係する知識の教育は、専門的知識を中心に行われてき

た。しかし、倫理的姿勢については、従来、適切な教育は考えられてこなかった。一般に人々は

これを持っているということを前提にしてきたという面もあり、幼少期の「しつけ」によって刷

り込まれるものだと思われて来た面もあろう。これについて、本学は、中等教育までの間に、学

校や家庭で身に着けてきた倫理的姿勢を、知的に見直すことによって、社会の成員として自覚し、

自発的にこれを自らの生き方として選択するという機会を提供しようと考えている。

(3) 人間社会の倫理は《皆一緒》と《人それぞれ》のブレンド

私たちの社会で一般に成り立っている倫理の構造について次のように解する.私たちは毎日多

くの人と交流し,様々なやりとりをしている。その際には,相手に対してどのように振る舞うか

ということについて,様々な〔状況に向かう姿勢〕と〔状況把握〕を組み合わせて,対応の仕方

を選んでいる。そのもっとも基本的な相手に対する姿勢と把握(理解)の対として,二つの両立

しないように思われるものが並存している。それは次の表に示すようなものである。

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資料 8

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相手に対する姿勢 相手についての把握(理解)

《皆一緒》(同の倫理) 互いに支え合って生きよう 相手は私と同じ・一緒だ

《人それぞれ》(異の倫理) 互いに干渉せず,別々に生きよう 相手は私とは違う・異なる

一つには,「相手は私と同じ・一緒だ(仲間だ)」と把握すると,「互いに支え合って生きよ

う」という姿勢が活性化して,対になり,それに相応しい振る舞いが結果する。この対とそれに

伴う行動の様式を《皆一緒》(同の倫理)と呼ぶ。他方,「相手は私とは違う・異なる」と把握す

ると,(それでも喧嘩しないで平和にやっていくことを目指すならば)「互いに干渉せずに,別々

に生きよう」という姿勢が活性化して対になり,《人それぞれ》(異の理論)という対応となる。

《皆一緒》という人間関係における対応のあり方は,人間が小さな群単位でサバイバルを図っ

てきた長い歴史をとおして形成された,群の成員に要求される対応の仕方だと考えられる.他

方,《人それぞれ》という対応のあり方は,群が別の群との間で平和的に共存していくために有

効な対応の仕方だったと推定される.そして,多くの群が複雑に絡み合い,融合して社会ができ

る過程で二つの対応の様式が混じり合い,あらゆる人間関係において,私たちはこの二つの対を

相手との距離に応じたバランスでブレンドして対応するようになった.たとえば,距離が近い関

係の典型は家族である.家族内では《皆一緒》という対応の仕方が今でも支配的である.一方

で,疎遠な相手とは《人それぞれ》に傾く対応をしている.

《皆一緒》も《人それぞれ》も、上述の倫理的姿勢が備える要件を備えている。この二つの姿

勢を相手との距離に応じて適当な割合でブレンドすることで、その時々の相手に対する倫理的に

適切な対応をしようと私たちはしている、ということができる。

例えば、医療の場において、医療に従事する者と患者本人・家族との関係においては,《皆一

緒》と《人それぞれ》が並存している。病や怪我で弱っている人を助けるという行為は、もとも

と親しい仲間同士でなされてきたものであって、《皆一緒》という姿勢が伴っている。しかし、

初診の患者さんは,医師や看護師にとって初対面の見知らぬ人であることが普通である。時間が

たてばだんだん親しくなるかもしれませんが、それでも考えや生き方はそれぞれですから,《人

それぞれ》という姿勢も必要である。そこで、医療側が最善と考える治療方針について、本人が

嫌だとしている場合、皆一緒の姿勢からは当該の治療方針を進めたいという意向が結果するが、

人それぞれの姿勢からは、本人が嫌がることを強行するわけにはいかない、ということで、この

二つの姿勢の間で方針の衝突が起きる(いわゆるジレンマ状態)。ここでは割愛するが、こうし

たジレンマをどう解消していくかも、皆一緒と人それぞれを組み合わせた対応によるのである。

なお、ここでは省略するが、以上の考え方から、上述の医療・福祉従事者に要請されるあり方

つまり倫理原則のセットも導出することができる。

(4) 関連する用語の説明

以上のような理解に基づいて、本学の教育の基本方針が「設置の趣旨」に書かれている。以下

では、設置の趣旨にでてくる用語のうち、以上の考え方に関連する若干の用語について、説明を

加えておく。

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資料 8

8

☆ 尊厳

「設置の趣旨を記載した書類」には、諸処に人の「尊厳」についての言及がある。そこでは、

「相手に尊厳があると把握する」ことは「相手を人として尊重する」こととほぼ同義で使われて

いる。このことについて、ここで注釈を加えておく。

〇《尊厳》 dignity には、3 通りの意味がある

• (1) 威厳ある見かけ・振舞い

• (2) 尊重に値するという性質

– 《尊厳》は、価値の中でも 「尊いものとして大事にする(に値する性質」(cf.

所有物を大事にする)

→何かを「尊厳ある」と言うことは、「弄(もてあそ)んではならない」 と語ること

に他ならない。

• 「受精卵にも生命の尊厳がある」「どのような状態になっても人の尊厳に変わり

はない」 cf. 世界人権宣言

• (3) 自らに価値があると感じること(「〈誰か〉の尊厳」)

– 主観的自己評価(≒自尊感情)/自らのこの生を肯定できるというあり方

• 「こうなったら私の尊厳は失われた」(現実に尊厳があるかないかの話では

ない)。

以上のうち、倫理の文脈、医療・ケアの文脈で使われるのは(2)と(3)である。

〇 倫理に関わる言説において、「すべての人には尊厳がある」とする時には、人の状態にかかわ

りなく、尊厳があり、その尊厳は失われることがないとしていることになる(上記の意味(2))。

かつ、「A には尊厳がある」は、「A は大切なものとして、大事に対応しなければならない/A を

弄んではならない」と A に関係する人々に対して主張する言葉なのである。

以上のようなことから、「A に尊厳がある」とすることと、「A を人として尊重する」こととが

意味上連関しているのである。

〇 ケアの文脈では、上記の(3)の意味で使われることがある。例えば「A が尊厳をもって最期まで

生きられるように」をケアの目標として語る際には、A が自らの現在の生を生きる価値あるもの

と認め、前向きに生きるあり方を「尊厳をもって生きている」と表現している。エンドオブライ

フ・ケアにおいては、この意味の尊厳がしばしば使われる。このように、尊厳は文脈によって、

意味(2)か(3)かを区別しながら理解するのが適切である。

「設置の趣旨」において「自律」、「共感」などと並んで「尊厳」と書かれてある場合は、「相手の

尊厳(意味 2 と 3)を見つつケアする姿勢」を指している(次項も参照)。

☆ 自他を大切にする力

「自他を大切にする姿勢」は一般市民に求められる倫理的姿勢であるが、それが人のうちに形

成されて持続的に存在する時に、その人には「自他を大切にする力」があると表現できる。

《自と他》という意識は、元来は《仲間》(身内)と《よそもの》(他人)であり、《仲間》内で

の自と他の区別は、個(人)の成立以降のことであったろう。仲間とよそ者という区別しかなか

った頃、同の倫理は仲間内で、異の倫理はよそ者との間で成り立っていた。が、個の意識が入っ

てくることによって、自と他という時の他は、「仲間だが他人でもある」から「他人だが仲間でも

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資料 8

9

ある」まで、広い範囲を指すこととなった。そしてそのような関係が、倫理が活きる場なのであ

る。つまり、

自と他を意識し、適切な関係をもとうとする姿勢

が倫理の根本にある。そしてここでいう「適切な関係」は、「仲間として大切にする」という、相

手をケアするあり方と、「他人として大切にする」という、それぞれの生き方を尊重するあり方と

の双方を併せたあり方である。ここから、このようなあり方を志向する姿勢は、「自他を大切にす

る姿勢」ということができる。

自他を大切にする姿勢は、「自他に尊厳を見る(認める)姿勢」ともいうことができる。「大切

にする」はまさに尊厳(意味 2)を認める相手に対する姿勢に他ならない。また、尊厳(意味 3)

を自ら持ち続け、また、ケアの相手が持ち続けられるようケアする姿勢こそが、人に対する看護・

ケアの要にあるものである。

☆ 共感と自律

次に、上述の自と他の関係を、皆一緒とみることと人それぞれと見ることの双方を身につける

ことが、ケアの場において現れるポイントとして、同の系列の《共感》と異の系列の《自律》を挙

げた。

☆ 実行

そのようなケアの相手の把握と相手への姿勢は、より個別の状況を適切に掴む状況把握と対に

なることによって、具体的選択と行動となる。すなわち、《実行》である。倫理は、単に姿勢だけ

を問うものではなく、その姿勢が適切な状況把握と対になることによって適切な行動が結果する

という、ダイナミックスにおいて成り立っている。

☆責任

《責任ある行動》は、上述の実行の構造である、相手への姿勢と状況把握の双方を適切なもの

とするようコントロールする姿勢から結果する。姿勢と状況把握について適切なものへとコント

ロールすることからは、通常適切な行動が結果する。だが、時に、想定外の事態の生起、人間の

不完全さによるやり損い等によって、結果として不適切と言われる行動になってしまうこともあ

る。この文脈における《責任ある態度》とは、結果の不適切さを自らの今後の対応によって補お

うとするあり方といえよう。

以上。

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資料 A

ケア・スピリット(自ら進んでケアに向かう姿勢)の学修の流れ

4年間の学修の流れ:ケア・スピリットは1~4年までの全体を通して、学びを深めていくデ

プロマポリシー(DP)の一つである。卒業までに諸科目で学修を進め、系統的に倫理教育と

連動しながら、学生が重要事項として意識して学修し、卒業後の実践を目指す。

1年生:1年前期の「探求の基礎」で倫理原則を含む倫理の基礎について学び、同時期に開講

されている「看護学概論」でケア・スピリットの考え方・意義について学修する。また1年前

期の「基礎看護援助論」や1年後期の「生活援助技術論」で技術を行う中でケア・スピリット

に関した対応についても学ぶ。1年後期には「成人看護学概論」でも事例展開を通して、ケア・

スピリットについてさらに学修する。その後にある「早期体験実習」や「生活援助実習」で看

護の場を見学したり、一部実践したりすることを通して、ケア・スピリットのあり様も含めて

考え、振り返る機会をもち、自己の課題を明確にする。これらのほかに、1年次で学ぶ「対人

コミュニケーション」「人間関係」「人間の生涯発達」や「基礎ゼミナール」「暮らしの科学」

等の科目で、人間理解を深めることがケア・スピリットの基礎づくりになる。

2年生:2年前期で「看護倫理」において看護の基盤となる看護倫理の主要概念を学修する。

さらに各看護学の概論のなかでも、1・2年の学びを活用して対象の特性に合わせた相手を尊

重する姿勢、相手に最善を尽くす姿勢等、ケア・スピリットのあり様を学修する。

3年生:3年前期には「慢性期看護技術論」や看護過程の展開において、具体的な事例をもと

に学修する。さらに各看護学の援助論、技術論の学びの中で領域の専門性を踏まえたケア・ス

ピリットのあり様について学修するとともに、加えて事例での看護過程の展開や技術演習の中

で、プランやロールプレイ等の行動においてケア・スピリットに即した視点で捉えられている

かあるいは行動がとれているかリフレクションを行い、具体的なあり様を身に付けていく。そ

の際に学生自身が自分の感性や感情・思いの特徴等に気づくことができ、さらにそれをコント

ロールしながら、これまで学修した看護する相手の特性や置かれている状況等の知識やコミュ

二ケーション等の技術を駆使して、対応するあり様を学修する。

加えてその後の各看護学の臨地実習の目標にもあるようにケア・スピリットに裏付けられた

看護実践を目指し、実際の患者に対して、看護者としてケア・スピリットをもって、看護を実

践し学修を深める。実習においては、学生個々人が、自ら主体的に自己の課題を見つけ、自分

の個性を活かして実習できるようにする。また実習終了後の面接において、実習場面を丁寧に

振り返り、ケア・スピリットを育む。

4年生:後期に行われる「総合実習」において、学生が自らの課題意識に基づき、実習目標を

明確にする過程で、ケア・スピリットについても取り上げ、実践的に取り組み、リフレクショ

ンする。さらに「臨床倫理」の事例検討において、状況の理解や患者本人・家族の理解、およ

びどのように本人・家族に対応していこうと考えるのかについて吟味する過程を通して、理に

よってコントロールできるようケア・スピリットを育んでいく。最終的に提出の事例の展開・

検討のシート等を用いて、学習状況を自己評価し、卒業後に繋げられるようにする。

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資料 9

1

初年次教育及び学生支援プログラム

看護学部の教育目標を達成するための一環として、初年次教育を含めて 4年間の学生

支援プログラムを構築する。

プログラム 対象学年・

教員

目的

フレッシュマン合宿

(1泊 2日)

4月 1学期

1年次

1 年次担当教

1.大学生活へのスムーズな移行(教育目標①)

2.社会の構成員としての自覚、責任感、倫理観の育成

(教育目標②③)

3.新入生のセルフエスティームの向上(教育目標①)

4.仲間づくり(教育目標①⑤)

キャリアサポート

(学内)

4月 1学期

2~4年次

担当教員

1.大学生活とキャリアプランの検討(教育目標①③④)

2.専門性への導入(教育目標⑤⑥⑦)

サマーキャンプ

(2泊 3日)

夏季休暇中

1・2年次

教員 1/2

1.学年間の交流を通した生活の見直し(教育目標①)

2.共同作業を通して他者を尊重し、自分を知る(教育

目標②③)

3.チームワーク・リーダーシップの経験を通した課題

達成(教育目標⑤)

キャンドルセレモニー

9月~10月

2年次 1.看護職者としての動機づけ(看護への思いを新たに

する)(教育目標⑥⑦)

大学祭

(学内)

11月~12月

全学年

全教員

1.学年間、学生‐教員間、大学‐地域間の交流(教育

目標③⑤⑥⑦)

2.学生企画による判断力や実践力の活用(教育目標④)

ゼミ合宿

(1泊 2日以上)

1年次:春休み

4年次:1~2学期

1年次

ゼミ担当教員

1.大学生活の方向付けの確認(教育目標①)

2.他者・自己理解の促進(教育目標②)

3.学生間、学生‐教員間のサポート体制の確認(教育

目標①)

4年次

卒研担当教員

卒業生含む

1.4年次と卒業生の交流(教育目標②③④)

2.卒業研究の動機づけ(教育目標④⑦)

3.卒業生のリアリティショックへの対応(教育目標④

⑤⑥⑦)

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資料 9

2

看護学部の教育目標

① 周囲の人々とコミュニケーションを保ちながら社会人としての自覚をもって生活

できる人間力を培う。

② 看護する相手を全人的・共感的に理解する能力を培う。

③ 看護する相手とのパートナーシップを築き、ケア・スピリット(倫理的姿勢)に裏

付けられた看護を実践する能力を養う。

④ 科学的根拠に基づく看護学のコアとなる知識と技術を修得し、これを活かして、判

断力をもって状況に即応した看護を実践する能力を養う。

⑤ 看護職ならびに多職種と連携・協働してチームとなって活動する能力を養う。

⑥ 地域社会のために、自らの専門性を活かして活動する心構えを培う。

⑦ 看護専門職者としての向上を常に心がけるとともに、豊かに成長し続ける素地を培

う。

岩手県内の施設

収容人数 設備 備考

国立岩手山青少年交流の

家 内陸部

会議室(150席) 登山、アドベンチャ

ープログラム等

休暇村陸中宮古(宮古市)

沿岸部

202名 会議室(180席) 田老防災学習プログ

ラム等

岩手県立陸中海岸青少年

の家(山田町)沿岸部

会議室(108席) 登山、沢登り等

岩手山焼走り国際交流村

内陸部

300サイト

(600人)

ホール、グランド、温泉、

キャビン 25棟等

焼走溶岩流観察、天

文台

Page 21: 設置の趣旨 資料目次 · 2017-08-22 · 資料. 2. 資料2 :共働き世帯の推移. 全国の共働き等世帯数の推移. 出典:内閣府男女共同参画局. 岩手県

資料 10

カリキュラム・ポリシー 支援プログラム Key 概念

人間の理解

思考の基礎と方法

基礎ゼミナール

情報の処理

探求の基礎

英語等

自己・他者の理解

対人コミュニケーション

人間関係

人間の生涯発達

人間の生と死等

生活・社会の理解

地域の文化

暮らしの科学

家族という社会

社会と福祉等

①基礎科目は総合

人間科学として、

人間力や看護する

対象の全人的・共

感的な理解、コミ

ュニケーション能

力に重点を置き、

人間理解のために

「思考の基礎と方

法」「自己・他者の

理解」「生活・社会

の理解」の3科目

群を設置する。

コミュニ

ケーション

生活・社会

人間力

生活・健康

を高める

宿

宿

看護理論 看護倫理 家族看護論 看護学概論

基礎看護援助論 生活援助技術論 療養援助技術論 看護過程論

早期体験実習

療養援助実習Ⅱ

療養援助実習Ⅰ

生活援助実習

各領域看護学概論 各領域看護援助論 各領域看護技術論

成人看護学実習Ⅰ・Ⅱ 老年看護学実習 小児看護学実習 母性看護学実習 精神看護学実習

在宅看護学実習 地域看護学実習

看護の理解

看護の理解

②専門基礎科目は

看護の対象理解ベ

ーシックとして、パ

ートナーシップや

科学的な根拠に重

点を置き、健康(健

康課題も含む)の理

解のために、「自然・

環境の理解」「健康

の理解」「保健と環

境の理解」の3科目

群を設置する。

④統合科目は看護

の総合的理解とし

て、多職種連携・

協働や地域社会、

看護専門職者とし

ての成長に重点を

置き、「在宅看護

の理解」「地域・

公衆衛生の理解」

「看護総合の理

解」の3科目群を

設置する。

災害看護論 看護管理論 感染看護論

臨床倫理 看護研究方法論

卒業研究ゼミナール等

総合実習

看護の統合的理解 選択:保健師課程

公衆衛生看護学実習

公衆衛生看護技術論

公衆衛生看護管理論

ディプロマ・ポリシー

人間力 ケア・スピリット 人間の実践的理解 専門的知識・技術とその臨床実践 多職種連携・チームワーク アドボカシー

アドミッション・ポリシー

1)看護に関心を持ち、将来、看護師または保健師として地域社会に貢献したいという強い意欲をもつ人

2)他者と協力して問題解決できる、協調性とコミュニケーション能力をもつ人

3)人間の尊厳を理解し、世代を超えて人と関わることのできる人

パートナー

シップ

科学的根拠

健康

健康問題

(課題)

l

宿

多職種連携

協働・

地域社会

健康問題を

もつ人々の

あり様と看護

○カリキュラム・ツリー

③専門科目は科学的

根拠に基づく看護の

コアとなる知識と技

術、ケア・スピリッ

トに重点を置き、看

護の理解のために

「基盤の理解」「実

践の理解」の2科目

群を設置する。

自然・環境の理解

自然科学

環境生態学

健康の理解

形態機能学

疾病治療論

ヘルスアセスメント

メンタルヘルス論

保健と環境の理解

ヘルスプロモーション論

チーム医療論

公衆衛生学・疫学

災害援助論

健康(健康課題含む)の理解

知識・技術

ケア・

スピリット

『基盤の理解』

『実践の理解』

『実践の理解』