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『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロジェクト事後評価用資料 平成20年12月 2日 経済産業省製造産業局鉄鋼課製鉄企画室 ㈱神戸製鋼所 1 回回転炉床炉による有用金属回収技術 の開発プロジェクト事後評価検討会 資料6

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Page 1: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』

プロジェクト事後評価用資料

平成20年12月 2日

経済産業省製造産業局鉄鋼課製鉄企画室

㈱神戸製鋼所

第 1 回回転炉床炉による有用金属回収技術

の開発プロジェクト事後評価検討会

資料6

Page 2: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

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目 次

1.事業の目的・政策的位置付け…………………………………………………1

1-1 事業の目的………………………………………………………………1

1-2 国の関与の必要性………………………………………………………6

1-3 政策的位置付け…………………………………………………………7

2.研究開発目標…………………………………………………………………10

2-1 研究開発目標…………………………………………………………10

2-1-1 全体の目標設定………………………………………………10

2-1-2 個別要素技術の目標設定……………………………………15

3.成果、目標の達成度…………………………………………………………16

3-1 成果……………………………………………………………………16

3-1-1 全体成果………………………………………………………16

3-1-2 個別要素技術成果……………………………………………19

3-1-2-1 RHF 実験(電炉ダストの塊成化・還元技術の開発) 19

3-1-2-2 溶解炉実験(化石燃料を用いた溶解技術の開発)…… 32

3-1-3 特許出願状況等………………………………………………60

3-2 目標の達成度…………………………………………………………62

4.事業化、波及効果……………………………………………………………63

4-1 事業化の見通し………………………………………………………63

4-2 波及効果………………………………………………………………65

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等……………………67

5-1 研究開発計画…………………………………………………………67

5-2 研究開発実施者の実施体制・運営…………………………………69

5-2-1 研究開発実施者の事業体制 ………………………………70

5-2-2 研究開発実施者の運営 ……………………………………71

5-3 資金配分………………………………………………………………72

5-4 費用対効果……………………………………………………………72

5-5 変化への対応…………………………………………………………73

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1.事業の目的・政策的位置付け

1-1 事業の目的

我が国は、温室効果ガスの排出量を、2008年から2012年までの期間中に、1990

年比で6%削減する義務を負っている。エネルギー多消費型産業のひとつである

鉄鋼業においても、より一層の省エネルギーの推進が喫緊の課題となっており、

「粗鋼生産量1億トンを前提として、2010年度の鉄鋼生産工程におけるエネル

ギー消費量を、基準年の1990年度に対し、10%削減する」という「環境保全に

関する自主行動計画」を策定し、業界全体で省エネルギーに取り組んでいると

ころである。

また、国においては、原油価格の高騰をはじめ厳しいエネルギー情勢を踏ま

え「新・国家エネルギー戦略について」(平成18年経済産業省)において、2030

年までにエネルギー効率を尐なくとも30%改善することとするさらなる省エネ

ルギーの目標を示している。

他方、鉄スクラップ等の電気炉溶解工程からは日本国内において年間約52万

トン注1のダストが発生している。この電炉ダストには、亜鉛、鉛及び鉄などの

有用金属が多量に含まれているが、脱亜鉛率に改善の余地があること、処理中

に発生する残渣の処置が難しいことなどから、その61%は亜鉛としてリサイク

ルされているものの、39%注2は埋立て処理等されており、有効にリサイクルさ

れているとは言い難い状況にある。電気炉ダストは、重金属を多量に含有する

ため管理型廃棄物に指定されており、最終処分場の逼迫が重要な問題となって

いるわが国にとって、最終処分量削減のためその有効活用を図ることが大きな

課題となっている。

現在、電気炉ダストのリサイクルには、ロータリーキルン法が使用されてい

る。しかし、この方法は、CO2排出について大幅な改善を図ることが難しいだけ

でなく、ダスト中に含まれるダイオキシンの分解・再合成の問題を完全にはクリ

アできていない。

このため、本研究開発では、鉄スクラップのリサイクルを行う電気炉の下工

程に、還元処理設備として回転炉床炉を用い、電気炉ダストに含まれる鉄、亜

鉛、鉛を高効率に分離・回収するとともに、CO2ガスやダイオキシン等環境負

荷物質の排出を低減するプロセス技術を開発することとした。

注1 神鋼リサーチ㈱回転炉床炉による有用金属回収技術の開発 プロジェクト評価用資料 (2005) ペ

ージ I-2

注2 神鋼リサーチ㈱回転炉床炉による有用金属回収技術の開発 プロジェクト評価用資料 (2005) ペ

ージ I-2

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回転炉床炉(RHF:Rotary Hearth Furnace)法では、ダスト等の原料と微粉の

炭材を混合して塊成化した塊成化物を炉内に供給することで、金属化率の高い

還元鉄を製造し、還元処理過程で電気炉ダスト中の亜鉛、鉛を還元・気化させ

て分離除去後、捕集する。塊成化物は 1,200~1,400℃の高温で加熱されためダ

イオキシンは分解され環境面において優れているのが特徴である。

㈱神戸製鋼所では、回転炉床炉を用いた FASTMET®法を開発し、既に製鉄所

内の「高炉や転炉等から発生するダスト」の鉄分リサイクル法を実用化してお

り、平成 12 年度以降、回転炉床炉法は他社も含めて国内に 6 基建設(注-3)されて

稼働しており、信頼性の高いプロセスであることが実証されている。

しかしながら、「電気炉ダスト」は、亜鉛等の含有率が数%と低く、鉄分が高

い製鉄所ダストと比べて、電気炉ダストは超微粉で亜鉛等の含有率が数十%と

高く、鉄分が低い上に、スラグ成分や塩化物など様々な成分を含んでおり、そ

の塊成化や還元処理の適正化が難しく、これまで実用化されていなかった。

表 1.電気炉及び高炉ダストの化学性状例

単位:質量%

T.Fe Fe2O3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO2 Al2O3 CaO MgO Cl S C

電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3 3.3 0.6

高炉 31.8 1.5 0.06 37.6

注4:電気炉:T.FeはFe2O3, FeO, M.Fe中のFeを含む

注5:高炉:神鋼リサーチ㈱回転炉床炉による有用金属回収技術の開発プロジェクト評価

用資料(2005) ページI-15より

この回転炉床炉では金属化率の高い還元鉄の製造が可能であるが、電気炉ダ

スト中のスラグ成分や硫黄を除去することができないため、製鉄所ダストと比

べて、スラグや硫黄濃度が高い。このため、本研究開発では、回転炉床炉に溶

解炉を組み合わせることにより、還元鉄を溶解してスラグの分離・除去と脱硫

処理を行なうこととした。回転炉床炉で亜鉛を回収するだけでなく、メルター

炉で還元鉄を溶解することで、鉄分も有価で利用しやすい銑鉄として回収でき

る。また、回転炉床炉で製造した還元鉄を熱間のまま溶解炉へ供給することで、

溶解に必要なエネルギーを大きく低減させることが可能となる。

注3 :新日本製鐵㈱・広畑製鐵所 2基 君津製鐵所 2基 新日鐵住金ステンレス㈱ 光製造所

1基 ㈱神戸製鋼所・加古川製鉄所 1基 計6基

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還元鉄

原料槽

集塵機

空気予熱機

煙突

ブリケット 原料槽'石炭、生石灰等(

吸引ファン

混合機

燃焼式煙突

燃焼空気

スクラバー

冷却塔

吸引ファン

石炭

鉄鉱石石灰石等

還元鉄容器

微粉炭製造装置

煙突

煙突

回転炉床炉

鉄鉱石乾燥設備

溶解炉

バーナ

冷却塔

回転炉床炉による有用金属回収技術の開発パイロットプラント フローシート

塊成化設備

図 1. プロセスフロー

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1-2 国の関与の必要性

鉄鋼業は、我が国におけるエネルギー多消費型産業のひとつであるが、第一

次石油危機以降、世界で最も進んだ省エネルギー技術を導入し、1970~80年代

にかけ約20%の省エネルギーを達成した。さらに「環境保全に関する自主行動

計画」を1996年12月に策定し、「粗鋼生産量1億トンを前提として、2010年度

の鉄鋼生産工程におけるエネルギー消費量を、基準年の1990年度に対し、10%

削減する」という目標を掲げて、業界全体で取組を進めているところ。

このようなエネルギー効率の一層の向上には、技術革新とその成果の普及を

促していく必要があり、官民一体となり中長期的に取り組むことが不可欠とな

っている。

本事業は、回転炉床炉を用いて、ダイオキシン等環境負荷物質の排出が尐な

く、電気炉ダストに含まれる鉄、亜鉛、鉛を高効率に分離・回収するプロセス

技術を開発することを目的としているが、それにとどまらず、本技術は、合金

鉄製造プロセスや、焼結炉、コークス炉を必要としない溶銑製造プロセスの開

発へと波及する可能性があるほか、鉄鋼業のみならず、社会基盤材料製造業そ

の他多くの分野の省エネルギー対策に広く活用されることで、地球温暖化対策

における我が国の目標達成に資するものである上、喫緊の課題である自動車等

のリサイクル問題にも寄与し得るものである。

以上のように、本研究開発は、国民や社会のニーズに合致するものであり、

緊急性が高く、その実施には、多額の開発費用を要し民間単独ではリスクが大

きく困難であることから、国の支援が必要不可欠である。

1-3 政策的位置付け

2005年 2月に発効した京都議定書において、日本は二酸化炭素等の温室効果

ガスの排出量を 2008年から 2012年までの期間中に 1990年比で 6%削減する義務

を負っており、その実施には省エネルギー技術が必要不可欠である。

「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年制定)及び「エネル

ギーの使用の合理化に関する基本方針」(平成18年閣議決定)において、「エ

ネルギー消費効率の向上及び効率的な使用」が事業者に求められている。また、

「新・国家エネルギー戦略について」(平成18年経済産業省)において、2030

年までにエネルギー効率を尐なくとも30%改善するとの目標が示されている。

また、製鉄業等は、資源有効利用促進法における「特定省資源業種」に指定

され、事業者は、原材料等の使用の合理化による副産物の発生抑制、及び副産

物の再生資源としての利用の促進に取り組むことが求められているところ。

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本研究開発は、これらの要請に対応するもので、経済産業省が取りまとめた

「技術戦略マップ 2008」にも、「総合エネルギー効率の向上」に寄与する技術と

して「回転炉床有用金属回収技術」が、3R(最終処分量削減)に寄与する技

術として「製錬ダストからの重金属回収技術」が、個別技術のひとつに位置付

けられており、本研究開発の政策的位置付けは極めて明確になっている。

No. エネルギー技術

個別技術2025 2030~2010 2015 2020

1102 CO2分離・回収技術

1102 省エネ型産業プロセス 排熱回収技術

11021102 溶融還元製鉄法'DIOS( 次世代圧延技術'難加工性特殊鋼等( 創資源・創エネルギー型高炉

1102 製鉄プロセス1102 革新的電磁鋼鈑技術 高温耐熱耐食鉄鋼材料 劣質原料使用技術'石炭・鉄鉱石(

1102 電磁気力利用鋳造技術 鋳片表層改質による循環元素無害化技術 水素鉄鉱石還元技術

1102 電気炉ダスト回生技術 超微細粒熱延鋼鈑製造技術、回転炉床有用金属回収技術

1102 新焼結プロセス 事前炭化式ガス化溶融プロセス 熱・冷延統合プロセス

1102 高微粉炭比操業下でのダスト排出量低減 断熱型鋳造システム 化学プロセスとのコプロダクション エネルギー'鉄/ガス(併産技術

図 2. 「総合エネルギー効率の向上」に寄与する技術の技術ロードマップ「回

転炉床有用金属回収技術」(技術戦略マップ 2008)

短期 中期 長期

~2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2015年 2020年 2025年 2030年

短期 中期 長期

~2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2015年 2020年 2025年 2030年

重金属類除去技術 製品利用のため不可欠な技術 3R1017

塩類除去・回収技術 3R1018

製品の耐久性検討・標準化 3R1019

焼却灰など 3R1020

廃棄物利用率向上を目的とする技術

3R1021

石炭灰 3R1022

非セメント原料化技術'セメント以外の新規用途開発(

セメント需要の減少およびセメント原料として廃棄物利用原単位の限界を考慮し、非セメント原料として利用する技術を開発'例えば、再生砕石利用(

3R1023

重金属類回収技術 製錬ダスト 3R1024

廃棄物発生量の少ない上流プロセス技術の開発 '化学工業におけるグリーンサスティナブルケミストリー(

3R1025

発電効率向上による単位発電量あたりの廃棄物'ばいじんなど(削減技術

3R1026

                                                    時期 項目

目標

想定される状況の変化

当該技術分野シナリオ

施策目標等

対象物質

・用地の確保が困難であることから、処分費は上昇傾向・社会的に3Rに対する意識がより強化され、最終処分量削減につながるリサイクル推進・経済活動の一環として最終処分量削減対策が企業に十分浸透・循環資源を多量に利用できる新たな用途、素材等での利用技術を開発・有用物質の回収も含めた最終処分場の再生技術を開発

技術No.

備考詳細技術

鉄鋼業

小分類

テーマ 最終処分量削減

・用地確保は引き続き困難、引き続き最終処分量削減が重要。・最終処分量削減2020年目標-2010年比25%

・用地確保は引き続き困難、引き続き最終処分量削減が重要。・最終処分量削減2030年目標-2020年比25%

・最終処分量の達成目標  約28百万トン

概  要

・排出される廃棄物をリサイクルによって最終処分量を削減するという対症療法的対策は十分なされ、産業活動における廃棄物発生についても上流対策によって排出削減を達成するという方向へ徐々に進む。

・発生抑制、変換技術などの高度化技術を開発

・建設投資が低下し、廃棄物処理の大きな役割を担っているセメント需要低下へ・1970年代の高度成長期に建設された建築ストック建替えに伴う廃棄物が大量発生。・人口減少が始まる。

・発生量、最終処分量の多いものを中心とした短期的最終処分削減技術を開発

新規用途開発

大分類

高塩素含有物からのセメント製造技術

新たなセメント製造技術

コンクリート原料化

標準化

無害化技術

廃棄物発生量'反応副生成物、廃触媒、廃酸等)の少ない反応プロセス技術

高効率発電技術(IGCC等(

有価物回収技術

リサイクル技術

発生抑制技術'リデュース(

無機系資材

(ダスト・鉱さい

等)

基盤技術

粗鋼生産量

最終処分量

111百万トン(2003)

1.2百万トン(2003)

104百万トン(2010)

【技術の概要等】 国土が狭いわが国においては、最終処分場の逼迫が廃棄物問題の重要な課題となっており、このような課題解決に向けた対策として、最終処分量削減に繋がる技術開発が重要となっている。 ここでは、短期的には現状において最終処分量が多い廃棄物'汚泥、無機系資材)を対象としたリサイクル技術や、中長期的には廃棄物発生に関わる産業の上流部門における生産性の向上、国内資源ストックを最大限活用する技術開発、最終処分場の再生技術等をロードマップとして取りまとめた。

高効率エネルギー利用技術

既存設備の更新

新規上流プロセス'発生抑制技術(

コンクリート原料化'標準化含(

低コスト重金属除去技術

塩類回収技術

耐久性検討・標準化

2010年最終処分量目標

約28百万トン

2020年最終処分量25%削

減'2010年比(

2030年最終処分量25%削減

'2020年比(39百万トン (2003)最終処分量

28百万トン

16百万トン

21百万トン

'百万トン(1262222

62

【産業廃棄物】汚泥がれき類鉱さいばいじん廃プラスチックガラス・コンクリートくず等

【一般廃棄物】焼却残渣直接最終処分量

主な廃棄物

2003年からの最終処分目標削減量

13百万トン

2010年からの最終処分目標削減量

10百万トン

2020年からの最終処分目標削減量

5百万トン

セメント需要低下による処理不能増分

約2百万トン セメント需要低下による処理不能増分

約3百万トン

最終処分量削減目標量7百万トン

最終処分量削減目標量5百万トン

出典: 経済産業省「産業廃棄物'鉱業廃棄物(・有価発生物の動向調査」'平成15年度実績(

出典:日本鉄源協会「鉄鋼生産高推移」出典:資源エネルギー庁 「エネルギー起源CO2排出量に関する京都議定書の目標について'2010年エネルギー起源CO2排出量見通しの再計算(」

出典: 環境省「一般廃棄物の排出・処理状況について」         「産業廃棄物の排出・処理状況について」

想定値 想定値

注目する施策目標

現状および実績値

想定する状況および値

【凡例】

集中的な開発時期開発準備時期 フォロー期間

技術開発以外の検討項目

複数の技術が関係する技術開発の全体スケジュール

非セメント原料化技術開発'標準化含む(

新セメント製造技術

低コスト重金属'Zn,Pb等(回収技術

高塩素含有物からのセメント製造技術

図 3. 3R分野のロードマップ-最終処分量削減「製錬ダスト:重金属回収技

術(低コスト重金属(Zn,Pb 等)回収技術)」(技術戦略マップ 2008)

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2.研究開発目標

2-1 研究開発目標

2-1-1 全体の目標設定

本研究開発は、塊成化設備を含む回転炉床炉および溶解プラントからなるパ

イロットプラントの運転を通して、電気炉ダストから高品位還元鉄と亜鉛濃度

が高い粗酸化亜鉛を製造するとともに、得られた還元鉄を炭材燃焼熱で溶解し、

品質の高い溶銑を製造する技術を開発することを目標とし、表 2-1 に示すとお

り具体的な数値目標を設定して行った。

表 2-1.全体目標

目標・指標 設定理由・根拠等

塊成化設備を含む回転炉床炉および溶解

プラントからなるパイロットプラントの

運転を通して、

・ダストと炭材を混合して適切に塊成化

し、塊成化物を炉内で適切に還元処理

(亜鉛の回収率:95%以上)する。

・電気炉ダストに含まれる亜鉛分のうち、

還元鉄中に残留する鉄分を考慮して

目標を設定した(脱亜鉛率はキルン法

より高く、既存回転炉床炉の最高値を

参考にして設定)。

・有害物質の排出について、ダイオキシ

ン:0.1ng-TEQ/Nm3以下を達成する。

・亜鉛回収用焙焼炉・焼結炉の規制値:

1ng-TEQ/Nm3より低い値とした。

・高濃度のスラグを含む還元鉄を適切に

溶解処理して、鉄回収率:95%以上を

達成する。

・電気炉ダストに含まれる鉄分の内、粗

酸化亜鉛中に混入する鉄分、溶解炉で

の鉄歩留を考慮して目標を設定した。

(参考)鉄分の回収率、亜鉛の回収率およびダイオキシン濃度の定義

[鉄分の回収率]

= (A)[回収した鉄の量]/(B)[パイロットプラントで使用した正味の鉄の量]

×100

ここで、

(A)= ①銑鉄生産量(t) × 銑鉄中の鉄分(%)

(B)= ②電気炉ダスト使用量(t) × 電気炉ダスト中の鉄分(%)

- ③篩下ブリケット発生量(t) × 篩下ブリケット中の鉄分(%)

- ④RHFにおける落鉱回収物の発生量(t) × RHFにおける落鉱回収

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物中の鉄分(%)

- ⑤溶解炉除塵機回収ダスト量(t) × 溶解炉除塵機回収ダスト中の

鉄分

- ⑥炉・鍋等への付着量(t) × 炉・鍋等への付着分中の鉄分(%)

図2-2 に測定箇所を示す。ここで③~⑤の回収技術は技術的に困難なも

のではなく商業機においてはプラント内で実施するものであるが、本事業

は実験炉であることから、プラントコスト低減のためにリサイクル設備を

設けなかったため、パイロットプラントで使用した鉄の量から差し引いた。

⑥の付着品は商業機においては回収して使用することから同様にパイロ

ットプラントで使用した鉄の量から差し引いた。

⑥溶銑ハンドリング容器への付着物

ブリケットマシン

②電気炉ダスト

炭材

バインダー

回転炉床炉'RHF)

ブリケット溶解炉

還元鉄

バグフィルター

⑦回収粗酸化亜鉛

排出ガス

煙突

スラグ

①溶銑

除塵機

③スクリーンの篩下

④RHFにおける落鉱回収物

⑤溶解炉除塵機捕集ダスト

商業機においてはプラント内でリサイクルするフロー注:

ブリケット原料としてリサイクル冷鉄源として下工程で使用

図2-2. [鉄分の回収率] 評価のための測定箇所

銑鉄中の炭素濃度は本事業のパイロットプラントで製造する銑鉄中の炭

素(%)とする。商業機において銑鉄中の硫黄濃度が高い場合には炉外脱硫を

行うことが一般的であるため、銑鉄中の硫黄濃度については炉外脱硫を行

った場合の硫黄(%)も含むものとする。

[亜鉛の回収率]

= (C)[回収した亜鉛の量]/(D)[パイロットプラントで使用した正味の亜鉛

の量] × 100

ここで、

(C)= ⑦粗酸化亜鉛回収量(t) × 粗酸化亜鉛中の亜鉛分(%)

(D)= ②電気炉ダスト使用量(t) × 電気炉ダスト中の亜鉛分(%)

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- ③篩下ブリケット発生量(t) × 篩下ブリケット中の亜鉛分(%)

- ④RHFにおける落鉱回収物の発生量(t) × RHFにおける落鉱回

収物中の亜鉛分(%)

[ダイオキシン濃度]

= [ 煙突排出ガス流量中のダイオキシン類の每性等量の生の値]

× (21 – [煙突排出ガスの酸素(%)]) / (21-15)

測定場所はRHF排ガスの煙突出口直前とする。また、排出ガス中のダイ

オキシン類の每性等量は酸素濃度15%に換算した値とする。

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9

2-1-2 個別要素技術の目標設定

研究開発を行った技術開発プロセスのフローと開発のポイントは以下のと

おり。

回転炉床炉(RHF)

還元鉄(DRI)

造粒設備

乾燥機

原料槽

ブリケットマシンペレタイザー排ガス処理設備

バグフィルター排ガス冷却塔

廃熱回収熱交換機

煙突

溶解炉

溶銑

プロセスフロー 適切な塊成化技術

最適な還元・脱亜鉛条件

化石燃料を用いた溶解技術

スラグ比の高い条件での安定した溶解技術

分離した亜鉛の回収技術'付着・腐食防止(

高金属化率'鉄(

、高生産性

純度の高い

粗酸化亜鉛

ダイオキシン

は分解

高品質の溶銑

図 2-1.開発プロセスのフローと開発のポイント

[個別要素技術ごとの開発のポイント]

a) 高濃度の亜鉛・鉛およびスラグ分を含む電気炉ダストの塊成化・還元技術

の確立

①超微粒子の電気炉ダストを炭材と混合し適切に塊成化する技術を確立

する。

②微粒子原料を塊成化したブリケットを、回転炉床炉内で還元処理し、

高強度の還元鉄を製造する要素技術を確立する(炭材配合比の決定、

回転炉床炉内温度の制御、回転炉床炉内雰囲気の制御、滞留時間の決

定)。

③製鉄所ダストに比べて、2~10 倍の亜鉛分・塩素分を含む電気炉ダスト

より排ガス中に飛散するこれらの揮発成分の付着・腐食を防止しつつ、

亜鉛分を適切に回収する技術を確立する。

b) 化石燃料を用いた溶解技術の確立

回転炉床炉で製造された還元鉄を炭材の燃焼熱で溶解し、高品質(成分、

温度)の溶銑を製造する技術を目指す。この技術開発により、コストや、

電力需給面で利用制約のある電気エネルギーに替えて、比較的入手が容易

な炭材(化石燃料)を用いることで、立地制限・操業時間の制限を受けずに、

溶解炉の設置が可能になる。

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10

①高濃度スラグ含有の電気炉ダスト還元鉄の溶解技術

電気炉ダスト中には脈石分が多く、そのダストから得られた還元鉄も

脈石分を多く含むため、溶解炉でのスラグ比が通常の 3~5 倍にも

なる。この高スラグ比還元鉄を適切に溶解する技術を開発する。

②溶解炉での有価金属を高効率で回収する技術

溶解炉で鉄分を高効率で回収するための吹錬制御、スラグ組成制御技

術を開発する。また特殊鋼やステンレス鋼の製造時に発生する電気炉

ダストからは鉄分のほかにニッケル分、クロム分も高効率で回収する

技術を開発する。

③溶解炉を傾動せずにスラグを排出する技術

将来の実機化に向けて、炉の大型化を想定した場合、設備費を低減す

るため、傾動せずに溶銑とスラグを排出する技術を開発することが好

ましい。

本事業の実施に当たっては、効率的に研究開発を推進するため、上記の個別

要素技術ごとに具体的目標を整理し研究開発を推進した。表 2-2 にその目標を

示す。

表 2-2.個別要素技術の目標

要素技術 目標・指標 設定理由・根拠等

電気炉ダス

トの塊成化・

還元技術

電気炉ダストと炭材を混合し適切

に塊成化した塊成物を装入して、高

強度の還元鉄を作る事により、

・脱亜鉛率:95%以上を達成する。

還元鉄製造には、原料を塊成化から

還元終了まで強度を保つ事が必要。

・脱亜鉛率は、キルン法より高く、

既存回転炉床炉の最高値を参考

に設定。

・有害物質の排出について、ダイオ

キシン:0.1ng-TEQ/Nm3 以下を

達成する。

・亜鉛回収用焙焼炉・焼結炉の規制

値:1ng-TEQ/Nm3 より低い値に

設定。

・電気炉ダストより排ガス中に飛散

する亜鉛・塩素分などの揮発成分

の付着・腐食を防止しつつ、亜鉛分

の回収率を向上する。

・実用化には炉内、排ガス系統への

亜鉛、塩素等の揮発成分の付着・

腐食を防止して稼働率アップを狙

う。

・高濃度スラグ含有の電気炉ダスト

還元鉄を安定に溶解し、鉄回収

率:95%以上を達成する。

・RHF+メルター炉を通して、大量

スラグ下での酸素吹錬時の鉄の高

歩留を狙う。

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11

化石燃料を

用いた溶解

技術

・還元鉄中の有価金属を溶解炉で、

高効率で回収する。

・酸素吹錬下での溶湯の酸化を低減

して、鉄分、有価金属の回収率を

向上する事が必要。

・溶解炉を傾動せずにスラグを排出

する技術を確立することが好まし

い。

・固定型炉での高生産性の確保に

は、安定なスラグ排出による連続

操業が必須。

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12

3.成果、目標の達成度

3-1 成果

3-1-1 全体成果

本事業では、平成 16 年度下期から㈱神戸製鋼所 加古川製鉄所内にパイロッ

トプラントの建設に着手し、平成 18~19 年度にかけて実験を行なった。

回転炉床炉での電気炉ダスト、鉄鉱石等を用いた還元処理や、メルター炉

での還元鉄の溶解実験により所定の開発目標を達成し、当該プロセスの実証

性を確認するとともに、基本コンセプトを把握した。さらに、製鉄所ダスト

や高 VM 炭、高結晶水鉱石等の塊成化/還元処理を行ない、本プロセスが低品

位原燃料にも適用可能であることを確認した。

開発した本技術の特徴は、以下の通りである。

①炭材を内装した塊成化物を回転炉床上に均一に供給することにより、高

温での還元と均一な伝熱が可能になる。これによって次のような効果が

期待できる。

金属化率の高い還元鉄を高い生産性で製造できる。

静置式の炉であるため気流中に飛散するダストが尐なく、亜鉛濃度

が高い粗酸化亜鉛が製造できる。

ダイオキシンは炉内で分解できるとともに排ガスの温度をコント

ロールすることで、再合成を防ぐことができる。

②スラグ分の多い還元鉄を炭材(化石燃料)で溶解し、溶銑を製造する。

溶解時に還元鉄中の硫黄を低減できるため、高品質の溶銑が製造できる。

還元鉄

原料槽

集塵機

空気予熱機

煙突

ブリケット 原料槽'石炭、生石灰等(

吸引ファン

混合機

燃焼式煙突

燃焼空気

スクラバー

冷却塔

吸引ファン

石炭

鉄鉱石石灰石等

還元鉄容器

微粉炭製造装置

煙突

煙突

回転炉床炉

鉄鉱石乾燥設備

溶解炉

バーナ

冷却塔

回転炉床炉による有用金属回収技術の開発パイロットプラント フローシート

塊成化設備

図 3-1. パイロットプラントのプロセスフロー

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13

以下に研究開発の概要を示す。

(1) パイロットプラントの建設及び実験の推移

第1期工事として、塊成化設備、第2期工事として回転炉床炉(RHF)

設備、第3期工事として溶解炉およびその付帯設備を順次、建設した。

RHFの実験は平成18年2月から開始し、溶解実験は機能アップのための改

造工事を実施後、平成18年7月から実験を開始した。

(2) 回転炉床炉での電気炉ダストリサイクル実験の概要

(2)-1.実験結果の概要

・平成 18~19 年度のキャンペーン工程を表 3-1 に示す。

・RHF 実験は、平成 18~19 年度に実施し、電気炉ダスト、鉄鉱石を使っ

た還元処理実験を行なったほか、製鉄所ダストおよび高 VM 炭等を使っ

た実験も行なった。

・平成 18 年度の電気炉ダスト実験において、95%以上の脱 Zn 率、排ガス

中のダイオキシン濃度 0.1ng-TEQ/Nm3 以下を確認した。平成 19 年度は

RHF の生産性向上等を主目的に実験し、平成 18 年までの実験をあわせ

て、延べ 37 日間の実験で、約 275t のダストを処理した。

・また、ダスト実験以外の期間は鉄鉱石ベース還元鉄を製造し、溶解炉の

原料として使用した。

(2)-2.実験結果まとめ

約 275t の電炉ダストを処理して、塊成化/RHF 操業技術、マスバランス

等に関して技術ノウハウを蓄積すると共に、高品位の二次ダストが得られ

る事を確認した。また、炉内や煙道部の耐火物の調査の結果、付着物は尐

なく、実用化に耐える設備に仕上がっていると評価できた。

表 3-1.キャンペーン実験工程

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

平成18年度 平成19年度

2nd キャンペーン 3rd キャンペーン 8th キャンペーン

5th キャンペーン

6th キャンペーン

7th キャンペーン

製鉄所ダスト

電気炉ダスト5/16~6/20

電気炉ダスト2/14~4/6

電気炉ダスト11/22~12/22

4th キャンペーン

電気炉ダスト8/7~8/8

1 s t キ ャ ン ヘ ゚ ー ン は 平 成 1 7 年 度 に 実 施 。             鉄 鉱 石 を 用 い た D R I 製 造 テ ス ト

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14

(3) 溶解炉(メルター炉)実験の概要

(3)-1.実験結果の概要

・表 3-2 に、平成 16 年~平成 19 年度までのメルター実験設備の建設と実験

の推移を示す。メルター設備は、機能アップの改造工事を行ない、試運転

を経て、平成 18 年 7 月からホットラン・テストを開始した。

・平成 18 年度は、メルター実験設備の基本性能と操業の基本特性を把握す

るとともに、適正な上吹き吹錬、炭材投入と溶湯の昇熱、および出銑滓作

業の確認に加えて、還元鉄の溶解テストを行なった。

・平成 19 年度は、様々な還元鉄の投入テストを実施するとともに、還元鉄

投入速度を拡大し、良好なスラグ排出や溶湯加炭を可能にして、固定型炉

での安定な操業技術を確認した。

・実験は平成 19 年 10 月末まで、延べ7回のキャンペーンテスト(71 ヒート)

を実施した。徐々に高度かつ長時間の実験を行ない、当初の開発目標を達

成する事が出来た。

・その後、当該実験設備を利用して、平成 19 年 12 月から平成 20 年 1 月末

まで溶銑脱硫実験を行ない、脱硫効率に優れたプロセスを開発した。

(3)-2.実験結果まとめ

・大量スラグ下での安定吹錬、還元鉄投入速度の拡大に加え、良好なスラグ

排出や溶湯加炭技術について、固定型炉での安定な操業技術を確認した。

・出銑中の酸素ブローや炭材・DRI 投入を継続する連続吹錬のトライに成功

し、連続化への道を開いた。但し、ホット還元鉄の投入は設備制約もあり、

バッチテストのみ行なった。

・RHF とメルター炉を通して、プロセス全体の鉄分ロスは平均 3.9%となり、

ダスト鉄分の回収率は 95%以上を達成した。

表 3-2.メルター実験の研究開発スケジュール

平成16年

通期 上期 下期 上期 下期 上期 下期

基本計画仕様検討、予備実験含む

建設工事  事前撤去工事  1期、2基工事  3期工事 3期改造工事

設備・操業のメルター実験 基本特性の把握   1st キャンペーン 2nd キャンペーン 環境改善  3rd キャンペーン  4th キャンペーン  5th キャンペーン DRI投入量の拡大  6th キャンペーン  7th キャンペーン脱硫実験

平成17年 平成18年 平成19年

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15

3-1-2 個別要素技術成果

3-1-2-1 回転炉床炉実験(電気炉ダストの塊成化・還元技術の開発)

(1) 概要

平成18年2月から平成19年11月の間に、延べ8回のキャンペーンテストを

実施した。最初の2回のキャンペーンではRHFおよび排ガス設備の調整、

還元の予備テストを行い、3rdキャンペーンより本格的な実験を行った。

電気炉ダストは電気炉メーカより入手し、延べ37日間に約275tのダスト

処理実験を行った。また、本技術は電気炉ダスト以外のダストを含め、安

価な原料を使ったDRI(還元鉄)の製造や、さらにはDRIを溶解して溶銑

を製造する技術への波及効果が考えられるため、高炉一貫製鉄所で発生す

るダスト、及び揮発分の高い石炭を使用する実験も行った。これらの原料

においても、運転条件を調整することによりDRIの製造並びに溶銑の製造

ができることを確認し、回転炉床炉が多くの原料の還元処理に適用できる

ことが分かった。なお、溶解実験の結果については3-1-2-2章を参照のこと。

平成 18~19 年のキャンペーン工程を表 3-3 に、電気炉ダスト実験の概要

を表 3-4 に示す。

表 3-3 キャンペーン実験工程

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

平成18年 平成19年

1st キャンペーン 2nd キャンペーン 3rd キャンペーン 8th キャンペーン

5th キャンペーン

6th キャンペーン

7th キャンペーン

製鉄所ダスト

電気炉ダスト5/16~6/20

電気炉ダスト2/14~4/6

電気炉ダスト11/22~12/22

4th キャンペーン

電気炉ダスト8/7~8/8

鉄鉱石と標準石炭を使った DRI 製造テスト

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表 3-4 電気炉ダスト実験の概要

ダスト使用量

DRI製造量

粗酸化亜鉛回収量

t t t1回目 H18年8/2~3 2日間 12.4 12 0.4 ダストO

5日間 26.2 18.6 5.1 ダストA4日間 28.6 12.9 9.6 ダストB3日間 11.6 5.9 6.7 ダストC

3回目 H19年2/14~4/6 14日間 107.2 55.5 40.9 ダストD3日間 25.9 12.4 5.8 ダストE5日間 50.7 31.5 9.4 ダストF1日間 12.9 7.5 3.4 ダストG

275.5 156.3 81.3   1~4回合計

2回目 H18年11/22~12/22

4回目 H19年5/16~6/20

実施時期テスト期

間電気炉ダスト名

(2) 目標

本開発における具体的な数値目標は以下の通りである(再掲)。

①電気炉ダストからの亜鉛の回収率: 95%以上

②ダイオキシン濃度: 0.1ng-TEQ/Nm3 以下

③電気炉ダストからの鉄分の回収率: 95%以上

なお、上記①~③のうち、③の鉄分の回収については溶解炉との組合せ

になるため、3-1-2-2 章に述べる。

(3) 実験の要領

電炉メーカから入手した電気炉ダスト、微粉炭製造装置によって粉砕し

た微粉炭をそれぞれ原料ビンに供給・保管した。各原料を混合比に応じて

一定の割合で切出すとともにバインダーを添加し、バッチ式の混合機内で

混練の後、塊成化設備にて CBQ(Cold Briquette の略)を製造した。 CBQ

は RHF のフィードホッパーに装入後、フィード装置にて炉床上に一層にな

るように供給した。

RHF 炉内温度の調整はバーナにより行った。CBQ は RHF 内で一定の時

間、加熱・還元した後、ディスチャージャーで排出し、DRI 缶に装入した。

DRI はその後、N2 吹込みによって冷却し回収した。また、RHF の DRI 排

出部に小型 DRI 缶を設置し、DRI サンプルを採取した。

亜鉛、鉛、アルカリ金属等の成分は RHF 内で CBQ から揮発し、排ガス

中に飛散し粗酸化亜鉛となる。RHF からの排ガスは空気予熱器で排ガスの

廃熱回収後、冷却塔を経て集塵機で排ガス中の粗酸化亜鉛を捕集した。

プロセスフローと主な設備仕様をそれぞれ図 3-2 と表 3-5 に示す。

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17

還元鉄

原料槽

集塵機

空気予熱機

煙突

ブリケット 原料槽'石炭、生石灰等(

吸引ファン

混合機

燃焼式煙突

燃焼空気

スクラバー

冷却塔

吸引ファン

石炭

鉄鉱石石灰石等

還元鉄容器

微粉炭製造装置

煙突

煙突

回転炉床炉

鉄鉱石乾燥設備

溶解炉

バーナ

冷却塔

回転炉床炉による有用金属回収技術の開発パイロットプラント フローシート

塊成化設備

図 3-2 プロセスフロー

表 3-5 主な設備仕様

設備・項目 仕様原料

電気炉ダスト 平均粒度1~10μ mの超微粉原料内装炭材 75μ m以下60~80%に粉砕した石炭

塊成化設備 ・ブリケットサイズ:約10cc

RHF ・炉外径11.5m・炉内温度:1200~1400℃・燃料ガス: COGとLPG の混合ガス '発熱量13AのLNG相当, LHV=41,600kJ/Nm3(

DRI缶 ・耐火物張り・DRI容量:1.5t/缶

RHF排ガス系 ・空気予熱器・冷却塔・バグフィルター

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18

(4) 実験の結果

(4)-1 使用原料

電気炉ダストの化学分析の結果を表 3-6 に、また CBQ の内装石炭の化学

分析値を表 3-7 に示す。

表 3-6. 電気炉ダストの化学成分(平均成分%)

T.Fe M.Fe FeO ZnO PbO C S Cl CaO MgO SiO2 Al2O3ダストO 43.44 0.76 0.24 2.20 0.06 0.47 0.48 0.25 12.77 3.77 3.34 1.00ダストA 31.60 0.84 3.64 21.10 1.06 2.76 0.42 1.91 3.30 1.81 8.37 5.41ダストB 23.94 1.46 7.18 35.35 2.84 3.10 0.53 5.43 3.24 1.87 3.57 0.96ダストC 21.61 2.36 4.82 32.74 1.97 5.64 0.53 6.67 2.43 1.13 4.84 2.85ダストD 23.52 1.16 6.45 34.89 2.84 3.55 0.55 5.20 3.27 1.82 3.62 0.98ダストE 24.74 1.71 7.12 35.61 2.75 3.60 0.41 5.10 2.93 1.42 3.74 1.05ダストF 32.45 0.96 2.36 23.60 0.75 2.68 0.38 1.15 4.31 1.90 4.67 2.66ダストG 20.41 0.78 1.89 15.52 1.54 1.17 0.81 3.38 4.98 4.26 9.00 2.89

表 3-7. 石炭の化学分析 単位:wt%

工業分析 灰分 9.27

揮発分 17.72

固定炭素 73.02

合計 100.00

元素分析 C 83.35

H 4.07

N 2.09

S 0.28

O 0.95

(4)-2 実験条件

RHF 内の温度は CBQ の炉内の滞留時間などによって 1250~1360℃に変

化させた。平成18年度は RHF の炉内温度 1350℃前後において、15~20

分の滞留時間で 95%程度の脱亜鉛率が得られることを確認したため、平成1

9年度は炉内の滞留時間をさらに短くした実験を行い、95%以上の脱亜鉛率

を得るために必要な炉内温度を調べた。

平成 19 年度の原料配合条件を表 3-8 に、また RHF での還元実験条件を

表 3-9 に示す。なお、ダストによっては RHF 排ガス中の SOx 濃度が高くな

らないよう、排ガス中に消石灰の噴霧を行う他、消石灰を内装させた。

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19

表 3-8 原料混合率 (単位:wt%)

電気炉ダスト 内装炭材 消石灰 合計 ダスト名

83.5 12.5 4 100.0 ダスト E

85.8 14.2 0 100.0 ダスト F

88.2 11.8 0 100.0 ダスト G

表 3-9 実験条件

滞留時間 電気炉ダスト

処理量

炉内温度

分 t/h ℃

12~16 1.3~2.7 1,330~1,360

注:使用したダスト:ダストE,F,G

(4)-3 結果

1) マスバランス結果

ダストA~ダストGのダスト(合計263t)について、マスバランスの結

果を求めた。なお、ダストOは一般的な電気炉ダストと異なりZnOの含有

量が低かったため対象外とした。結果を図3-3 に示す。

図 3-3. 電気炉処理全データのマスバランス(ダスト A~ダスト G)

ブリケット

電気炉ダスト (100)

炭材等 (24)

RHF(124)

排ガス (39)

粗酸化亜鉛 (30)

DRI (55)

電気炉ダスト

炭材ブリケット

粗酸化亜鉛DRI

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20

注:電気炉ダストの処理量を 100 として DRI 生産量、粗酸化亜鉛回収

量などを求めた。

パイロットプラントは昼間だけの運転であったが、炉内温度が定常

状態になっていない運転開始及び終了時の運転データも含む。

2) 脱亜鉛率/脱鉛率/金属化率

実験結果を図 3-4 に示す。

ここで、脱亜鉛率、脱鉛率、金属化率は以下のように定義した(注)。

脱亜鉛率

= [ 1 – { (DRI 中の Zn%)/(DRI 中の T.Fe%) } / { (CBQ 中の Zn%)/(CBQ 中

の T.Fe%)} ] x 100

脱鉛率

= [ 1 – { (DRI 中の Pb%)/(DRI 中の T.Fe%) } / { (CBQ 中の Pb%)/(CBQ 中

の T.Fe%)} ] x 100

金属化率 = (DRI 中の M.Fe%)/(DRI 中の T.Fe%) x 100

(注)実験条件を変えた場合の影響を調べるには尐量のサンプルで評価で

きる指標が必要になること、また「 (5) RHF での鉄分ロスにおいて」で

記載のように、粗酸化亜鉛への鉄分ロスが 0.3%程度と小さく、電気炉ダ

スト中の鉄分は全量 DRI に移行するとしても実質上計算誤差は生じない

ことから、電気炉ダストと DRI の鉄分当たりの亜鉛量から亜鉛の回収量

を算出した。

図 3-4. 脱亜鉛率/金属化率の推移

50

60

70

80

90

100

070516-1

070516-2

070521-1

070521-2

070521-3

070523-1

070523-2

070528-1

070528-2

070528-3

070601-1

070601-2

070606-1

070606-2

070606-3

070613-1

070613-2

070613-3

070614-1

070614-2

070614-3

070620-1

070620-2

070620-3

070620-4

'%(

脱Zn率脱Pb率金属化率

Eダスト Fダスト Eダスト Gダスト

炉内温度を30-50℃下げて運転

造粒条件調整中

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21

図 3-4.に示すように、以下の結果が得られた。

ダスト E、F、G とも、運転条件によって 95%以上の脱亜鉛率が得られ

た。

Fe の金属化率は概ね 70~90%であった。

高い脱亜鉛率を得るには強度ある CBQ の製造が重要。

CBQはRHFに装入するまでの輸送中に壊れないだけの強度が必要で、

強度ある CBQ を製造することにより目標としていた 95%以上の脱亜

鉛率を達成することができた。

また、本回転炉床炉における脱亜鉛処理能力を調べるため、滞留時間 14

分と 12 分において、炉内温度と脱亜鉛率の関係を求めた。結果を図 3-5 に

示す。

図 5. 炉内温度の影響

図 3-5. 炉内温度の影響

上図より、脱亜鉛率は炉内温度に影響し、いずれの滞留時間においても

炉内温度条件を調整することにより、95%以上の脱亜鉛率が得られること

が分かった。

3) 粗酸化亜鉛の化学成分

粗酸化亜鉛の化学性状を表 3-10 に示す。

RHF での脱亜鉛率、脱鉛率が高く、粗酸化亜鉛としての回収率が高かっ

た一方、揮発しない Fe やスラグ成分(CaO, MgO, SiO2, Al2O3)の濃度は 1%

以下と低く、静置したまま還元する本プロセスの特徴が現れている。

図 3-3 に粗酸化亜鉛中の ZnO, PbO, T.Fe 濃度のバラツキを示す。脱亜鉛

率や金属化率などの反応状況は回転炉床炉の運転条件によって変わるが、

粗酸化亜鉛の化学性状は安定しており、大きな変動は見られなかった。

70

75

80

85

90

95

100

1250 1300 1350 1400

RHF平均温度'℃(

脱Zn率

(%)

滞留時間:12分

滞留時間:14分

Page 24: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

22

表 3-10 粗酸化亜鉛の化学性状(平均成分%)

T.Fe ZnO PbO C S Cl CaO MgO SiO2 Al2O3ダストA 0.24 79.67 3.86 0.08 0.36 7.35 0.17 0.02 0.19 0.06ダストB 0.45 76.49 6.34 0.01 0.21 10.57 0.06 <0.01 0.03 <0.01ダストC 0.71 70.95 5.18 0.04 0.28 15.87 0.18 0.02 0.16 0.02ダストD 0.39 77.22 6.23 0.06 0.33 10.25 0.75 0.03 0.05 0.03ダストE 0.17 74.47 5.59 0.04 0.66 9.70 0.83 0.05 0.14 0.03ダストF 0.04 85.30 3.12 0.02 0.37 5.33 0.06 0.01 0.06 0.01ダストG 0.05 63.10 4.56 0.02 0.57 11.21 0.09 0.01 0.03 <0.01

(分析数:3 回) (分析数:4 回) (分析数:3 回)

図 3-6 粗酸化亜鉛中の ZnO, PbO, T.Fe 濃度の変動

4) DRI の化学性状

DRI の分析結果を表 3-11 に示す。「(2) 脱亜鉛率/脱鉛率/金属化率」に記

載の通り、Zn, Pb, Fe 金属化率等は実験条件によって変わったため、平均

値を表示する。 なお、スラグ成分の CaO, MgO, SiO2, Al2O3 は代表サン

プルの分析値を示す。

表 3-11. DRI の化学成分(%)

T. Fe* M. Fe* ZnO* PbO* C* S* Cl CaO MgO SiO2 Al2O3

ダストA 45.9 40.6 0.9 0.1 11.4 0.6 0.45 5.13 2.54 13.05 8.31

ダストB 42.7 35.5 4.0 0.7 14.8 1.0 1.32 7.14 3.90 11.25 4.04ダストC 49.5 40.3 1.6 0.1 10.0 1.1 0.89 6.55 2.86 13.43 7.80ダストD 45.3 36.4 4.9 0.6 7.0 0.9 - - - - -ダストE 48.1 35.5 4.7 0.4 3.6 0.6 1.94 11.33 2.86 8.33 3.2ダストF 53.2 45.8 3.0 0.1 5.1 0.6 0.11 7.69 3.1 8.77 5.64ダストG 34.5 25.3 1.4 0.2 3.4 1.1 0.53 8.24 6.32 13.18 5.24

注:*印のある成分は実験で得られた DRI 分析値の平均値。

その他は DRI の代表サンプルの分析値。

ZnO, PbOはT.Zn, T.Pb の分析値から計算により ZnO,PbO を求めた。

ダストE

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1 2 3

Zn(

%), P

b(%)

, T.F

e(%)

ZnO

PbO

T.Fe

ダストF

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1 2 3 4

Zn(

%), P

b(%)

, T.F

e(%)

ZnO

PbO

T.Fe

ダストG

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1 2 3

Zn(%

),Pb(

%), T

.Fe(%

)

ZnO

PbO

T.Fe

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23

5) RHFでの鉄分ロス

前記(1)のマスバランスより、100の電気炉ダストから55のDRIと30

の粗酸化亜鉛が回収された。

DRIは溶解炉に供給される一方、粗酸化亜鉛はプロセス外に持ち出される

ため、粗酸化亜鉛中の鉄分は回収されない。電気炉ダスト、粗酸化亜鉛中の

鉄分の平均値(加重平均値)はそれぞれ24.8%, 0.3%であるため、RHFでの

鉄分ロスは以下のようになる。

電気炉ダスト中の鉄分 : 100 x 24.8/100 = 24.8

粗酸化亜鉛中の鉄分 : 30 x 0.3/100 = 0.09

粗酸化亜鉛への鉄分ロス: 0.09/24.8 x 100 = 0.4%

本プロセスで得られた DRI を溶解炉に供給し、溶銑を得る段階においては、

溶解炉のスラグ中と排ガスへ Fe ロスが発生する。 実際には排ガスへ飛散

した Fe 分は回収して回転炉床炉の原料としてリサイクル可能であるため、

95%以上の Fe 歩留まりが期待できる。溶解炉での Fe ロスの詳細は 3-1-2-2

章に示す。

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24

6) 有害物質の排出抑制

排ガス中のダイオキシン濃度測定を始めとした排ガス測定を実施した。測

定場所と結果を以下に示す。

還元鉄

集塵機

空気予熱機

煙突

吸引ファン

還元鉄容器

回転炉床炉

バーナ

冷却塔

燃焼空気

ブリケット

サンプル採取場所

図 3-7 排ガス測定位置

排ガスのダイオキシン濃度は、総じて 0.1ng-TEQ/Nm3 を大きく下回っ

た。パイロットプラントは昼間だけの運転であったが、商業機においては連

続運転によって炉内の状況が安定するため、ダイオキシン濃度はさらに低下

することが期待される。

表 3-12 排ガス測定結果

キャンペーン番号 2nd 3rd 3rd 4th

使用ダスト ダスト O ダストA ダストB ダスト D

ばいじん濃度 g/Nm3 0.001 0.001 <0.001 <0.001

SOx 濃度 V/Vppm 2 <1 41 21

NOx 濃度 V/Vppm 33 25 32 25

ダイオキシン濃度 ng-TEQ/Nm3 0.00021 0.00000084 0.072 0.0017

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25

7) 電気炉ダスト以外の原料適用実験

7)-1 高炉一貫製鉄所で発生するダスト処理

亜鉛含有率が電気炉ダストに比べ 1/10 程度と尐ない高炉一貫製鉄所で発

生するダストを RHF で処理する場合の特性をパイロットプラントにて確認

した。 製鉄所ダストとしては、炭材を含む高炉系ダストと鉄含有量が多い

ダストを組み合わせ、これらダストの配合率を変えることによって内装ブリ

ケット中のカーボン量を変化させ、金属化率と脱亜鉛率の影響を調べた。

還元前 CBQ の化学分析値を表 3-13 に示す。 CBQ に占める ZnO 濃度は

3~6%であった。

表 3-13 製鉄所ダスト CBQ の化学性状

T.Fe ZnO C CaO SiO2 Cl

37-42 3-6 12-17 8-9 2-3 <1

図 3-8 に DRI の金属化率と脱亜鉛率の関係を示す。

金属化率が 50%以上であれば、金属化率が低いにも係わらず、90%程度の

脱亜鉛率が得られることが分かった。

図 3-8 金属化率と脱亜鉛率

以上より、ダスト中の亜鉛濃度に係わらず、RHF プロセスによって DRI

として鉄分の回収ができるとともに、高い脱亜鉛率も得られることが確認で

きた。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 20 40 60 80 100

DRI金属化率(%)

脱Zn率

(%)

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26

7)-2 高 VM 炭使用の確認

回転炉床炉による還元プロセスにおいては還元材として固体の炭材が使

用される。前記の高炉から発生したダストも還元材として利用できるが、石

炭を使用することが一般的である。 さらに、本プロセスを広く普及させる

には資源、立地制約、コスト等の点で有利な、高 VM 炭の使用が期待される

ため、本パイロットプラントにて VM 分が高い石炭を内装用炭材として使用

した実験を行った。

鉄鉱石は T.Fe 67% のヘマタイト粉鉱石、石炭は揮発分 37%, 灰分 9%

のものを使用した。実験の結果、同じ還元条件(炉内温度、滞留時間)であ

れば、表 3-7 に示す揮発分約 18%の石炭を使用した場合と同等の金属化率

が得られ、揮発分の高い石炭も使用できることを確認した。

揮発分の高い石炭を使用する場合の具体的な効果については、今後、詳

細な検討が必要であるが、CBQ 内の石炭配合率が増えるため、同じ滞留

時間内に生産できる DRI 重量が減尐する一方、揮発分は RHF の燃料とし

て使用できるため、RHF で必要な燃料ガスを低減できるメリットが期待

できる。

上記のようにパイロットプラントによる実験にて、製鉄所ダスト、揮発

分の高い石炭が使用できることが確認され、本プロセスが電気炉ダスト処

理を始め、多くの原料の還元処理に応用できることが期待される。

8) 電気炉ダスト運転による設備への影響

3rd キャンペーン以降、電気炉ダスト実験を含め本格的な実験を行った。

予熱空気を得るための熱交換器へのダスト付着・堆積量は軽微で、堆積物を

除去することなく目標の予熱温度を確保することができた。

排ガスダクトや排ガス冷却塔内の付着も軽微で、熱交換器を含め腐食の影

響も見られなかった。

また、RHF 炉内耐火物において、部分的にクラックが発生していたが、

脱落に進行する状態でなく、ダスト付着量も尐なく、概ね良好であった。更

に、耐火物をボーリング調査した結果、表層部に数 mm の変質層が見られた

程度で、母材部の強度低下は認められず、健全であった。

ただし、今回の実験は昼間だけの間歇運転であったため、最終的には商業

機で長時間の連続運転を行い確認する必要があると考える。

炉内点検時期:

平成 18 年 12 月

平成 19 年 4 月

平成 19 年 6 月

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27

(5) 回転炉床炉パイロットプラント実験における成果

パイロットプラントでの実験によって、以下の結論を得た。

電気炉ダストから 95%以上の Zn を除去し、粗酸化亜鉛内に回収できる

ことを確認した。また、95%以上の脱亜鉛率を達成するための運転条件

を確認した。

Zn のみならず Pb についても高効率で除去・粗酸化亜鉛内に回収できる

ことを確認した。

粗酸化亜鉛中の Fe は 1%以下と低く、還元・粗酸化亜鉛回収における

Fe ロスは約 0.4%であった。

排ガス中のダイオキシン濃度は 0.1ng-TEQ/Nm3 以下に抑えられた。電

気炉ダスト中のダイオキシンは回転炉床炉内の高温処理によって分解

後、排ガス系内での再合成も低く抑えられた結果であると考えられる。

電気炉ダストの他、高炉一貫製鉄所から発生したダストの処理や、高

VM 炭を内装炭材として使用した実験を行い、本回転炉床炉プロセスが

幅広い原料を使用できる可能性を確認した。

RHF 及び排ガス設備への粗酸化亜鉛の付着・堆積は軽微で、RHF 耐火

物も表層部に変質層が見られる程度であった。また、熱交換器の回収熱

量の低下も見られなかった。但し、今回の実験は昼間だけの間歇操業で

あったため、最終的には商業機で長時間の連続運を行い確認する必要が

あると考える。

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28

3-1-2-2 溶解炉実験(化石燃料を用いた溶解技術の開発)

(1) 概要

平成 18 年度から、パイロットプラントの溶解炉(メルター炉)実験を開始し、

設備の基本性能と操業の基本特性を把握するとともに、適正な上吹き吹錬、炭

材投入と溶湯の昇熱(溶湯中[C]の高目維持)、および出銑滓作業の確認に加えて、

還元鉄の溶解テストを行なった。

平成 19 年度は、様々な還元鉄の投入テストを実施するとともに、還元鉄投

入速度を拡大し、良好なスラグ排出や溶湯加炭を可能にして、固定型炉での安

定な操業技術を確認した。更に、高[S]溶銑への対応のため、本設備を利用し

て溶銑脱硫実験を行ない、効率的に脱硫するプロセスの開発を行った。

表 3-14 に、平成 16 年度から平成 19 年度までのメルター実験設備の建設と

実験の推移を示す。

3 期工事(メルター設備の建設)に合わせて、機能アップのための改造工事を

行ない、試運転および設備の安全対策工事を実施後、平成 18 年 7 月からホッ

トラン・テストを開始した。

実験は平成 19 年 10 月末まで、延べ 7 回のキャンペーンテスト(71 ヒート)

を実施した。各キャンペーンテスト実施後、キャンペーンの間には、機能アッ

プ工事を繰り返して、徐々に高度な実験を行ない、当初の開発目標を達成する

ことが出来た。

その後、当該実験設備を利用して、平成 19 年 12 月から平成 20 年 1 月末ま

で溶銑脱硫実験を行ない、脱硫効率に優れたプロセス開発を確認した。

表 3-14 メルター実験の研究開発スケジュール

平成16年

通期 上期 下期 上期 下期 上期 下期

基本計画仕様検討、予備実験含む

建設工事  事前撤去工事  1期、2基工事  3期工事 3期改造工事

設備・操業のメルター実験 基本特性の把握   1st キャンペーン 2nd キャンペーン 環境改善  3rd キャンペーン  4th キャンペーン  5th キャンペーン DRI投入量の拡大  6th キャンペーン  7th キャンペーン脱硫実験

平成17年 平成18年 平成19年

各キャンペーンテストの概要と特記事項を表 3-15 に示す。

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29

1) 1st~3rd.キャンペーンテスト(設備・操業の基本特性の把握)

・ メルター棟内の物流として、「低周波炉での種湯(溶銑)の溶解と出湯→メル

ター炉への種湯装入→炉内での吹錬(酸素吹き及び炭材投入)と昇熱→溶銑

滓の排出→溶銑の鋳造(鋳銑機、造塊)」の一連の工程を進め、併せて各設備

の性能と操業特性を確認した。

・ 各設備の基本性能を確認したが、溶銑の装入&出銑時の発煙や、炭材のバ

ッチ投入時の黒煙の発生など、集塵・作業環境面の改善が必要となり、順

次対策を実施した。

・ また、操業の基本特性面でも、炉内攪拌効率アップのための炉底部の改造、

酸素ランスチップの変更による吹錬の安定化や、出銑滓作業の向上対策等

を行なった。

2) 4th.~5th.キャンペーンテスト(環境改善)

・ 設備の機能アップ対策や操業技術を向上した後、中間出銑孔を用いた 2 回

吹錬や還元鉄(DRI)の投入を実施するなど、トータル吹錬時間を延長してス

ラグ量を増大した。

・ 期間中、排ガス処理技術の開発に向けて様々な操業条件でテストし、排ガ

ス分析を行なうとともに、連続操業に伴う諸課題をクリアーして、排ガス

処理技術を確立した。

3) 6th.~7th.キャンペーンテスト(還元鉄投入量の拡大)

・ 様々な還元鉄の投入テストを行なうとともに、還元鉄投入速度の大幅アッ

プや良好なスラグ排出を可能にして、固定型炉での安定な操業技術を確認

した。また合わせて、連続吹錬テストをトライし、実証性のあるプロセス

を確認した。

表 3-15 各キャンペーンテストの概要と特記事項

種湯量 送酸量 炭材投入量DRI投入量開始日 終了日 平均t/ch 平均Nm3/ch 平均kg/ch 平均kg/ch

1st H18.7.19 H18.8.9 7 5.57 318 465 0

2nd H18.10.17 H18.10.26 4 4.84 1441 987 0

3rd H18.12.5 H18.12.21 9 5.78 425 353 37

4th H19.1.31 H19.3.22 15 5.89 395 467 22

5th H19.5.9 H19.6.5 10 5.91 432 480 233

6th H19.7.3 H19.8.2 10 5.91 714 832 561

7th H19.9.4 H19.10.25 16 5.97 1043 1163 1318

71 5.81 646 692 418

基本性能の確認'新炉(・更なる炉内攪拌力の強化'底吹きノズル3孔化、炉形状の楕円化  ・連続操業   ・連続吹錬

期間分類

キャンペーン

基本特性の把

目的・目標

環境改善

DRI溶解'長時間化,多銘柄化(、連続化

ヒート数

基本性能の確認・プロセス面・設備面・作業面

基本性能の確認・環境測定のクリアー   ・還元鉄溶解量の拡大・中間出銑を用いた操業

基本性能の確認'継続、新炉(・対策の確認'炭材投入方式の変更、炉形状の変更、操作性向上(

基本性能の確認'継続、新炉(・炉内攪拌力の強化'底吹きノズル2孔化(・還元鉄の溶解    ・環境測定

環境改善(原因究明(・排ガス処理の確立   ・環境測定

環境改善'恒久化対策('新炉(・排ガス処理の確立   ・環境測定

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30

ステップ毎のメルター実験の内容と吹錬/出銑方法の違いを図 3-9 に示す。

図中に、還元鉄(DRI)投入量の拡大を狙ったトータル吹錬時間の延長、連続操

業化など、実験内容の高度化を順次進めて来た結果の概要を要約している。

1st.~3rd.キャンペーンまでは、種湯装入後に 1 回目吹錬(a)で所定の温度に昇

熱し、出銑するのが精一杯であったが、4th.キャンペーンからは吹錬が安定して、

中間出銑孔を用いた 2 回吹錬(b)が可能となった。また、7th.キャンペーンでは

DRI 投入量の拡大に加えて、中間出銑を連続して行なう連続操業(c)テストに成

功した。更に、出銑時も吹錬を継続する連続吹錬トライに成功し、連続化への

道を確認するに至っている。

また、図 3-10 にキャンペーン毎の累積 DRI 溶解量の推移、図 3-11 に DRI

投入速度と投入量実績を示すように、設備・操業面で基本性能および操業を確

立後、急速に DRI 溶解量を拡大していることが分かる。

中間出銑孔残銑孔

種湯6トン装入 吹錬'6トン(

吹錬'4トン(

DRI

DRI

中間出銑孔

中間出銑'2('1-1.5トン+スラグ(

吹錬'4トン(

DRI

吹錬'4トン(

DRI

中間出銑'2('1‐1.5トン+スラグ(

DRI

吹錬'4トン(

DRI

(a(1回吹錬

(b(2回吹錬

(c(連続操業

(d(連続吹錬

種湯'6トン(装入 1回目吹錬 中間出銑'1回目( 2回目吹錬 中間出銑'2回目( 3回目吹錬 残銑出銑 備考

キャンペーン3までの操業パターン

キャンペーン6までの操業パターン

キャンペーン7・No.6, 9 で実施・出銑中は、送酸ブロー&炭材/DRIを停止・出銑中の吹錬中断により、約20分間の非定常状態となる。

キャンペーン7・No.11 で実施・連続吹錬は、No.10以降、継続して実施。・吹錬を中断しないため、ほぼ定常状態を継続。

吹錬中断

残銑孔

残銑出銑

吹錬中断

中間出銑孔

中間出銑'約2トン+スラグ(

吹錬中断

中間出銑'1('約2トン+スラグ(

DRI 連続吹錬 連続吹錬

吹錬'4トン(

DRI

中間出銑'1('約2トン+スラグ(

中間出銑孔

吹錬中断

残銑孔

残銑出銑

吹錬中断

残銑孔

残銑出銑

吹錬中断

残銑孔

残銑出銑

吹錬中断

図 3-9 吹錬/出銑方法の違いによる分類

Page 33: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

31

0 0 332 450

2,341

5,622

20,885

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

累積

DR

I投入

量'kg(

CP1 CP2 CP3 CP4 CP5 CP6 CP7

図 3-10 キャンペーン毎の累積 DRI 溶解量

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

0 400 800 1,200 1,600 2,000

平均投入速度'kg/h(

DR

I投入

量'kg

/ch

)

5th:'07/5/9~6/7

6th:'07/7/3~8/2

7th:'07/9/24~10/25

30分

60分

5th

6th

7thキャンペーン

120分

図 3-11 DRI 投入速度と投入量実績

Page 34: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

32

(2) 目標

「化石燃料を用いた溶解技術の確立」に関する技術開発のポイントは以下の

通りである。(再掲)

回転炉床炉で還元された還元鉄を溶解し、安定した品質(成分、温度)の溶銑

を製造する技術を目指す。この技術開発により、利用制約のある電気エネルギ

ーに替えて、比較的入手が容易な化石燃料を用いることで、立地や操業時間帯

の制限を受けずに溶解炉を設置することが可能になる。

(イ)高濃度スラグ含有の電気炉ダスト還元鉄の溶解技術

電気炉ダスト中には脈石分が多く、溶解炉でのスラグ比が通常の 3~5 倍

になる。この高スラグ比の還元鉄を適切に溶解する技術の確立を目指す。

(ロ)溶解炉での有価金属を高効率で回収する技術

溶解炉で鉄分を高効率で回収するための吹錬制御、スラグ組成制御技

術を確立する。

(ハ)溶解炉からスラグを排出する技術

設備のシンプル化、操業の連続化を目的に、固定型炉で溶銑とスラグを

排出する技術を確立する。

具体的な技術開発項目は次の通りである。

①メルター炉での安定吹錬技術の開発

・吹錬条件(送酸量/ランス高さ)の適正化

・炭材/DRI 投入条件の適正化

・溶湯の昇熱と加炭(溶湯中[C]の高目維持)技術の開発

・スラグフォーミング制御

②安定な出銑作業とスラグ排出技術の開発

③還元鉄(DRI)溶解の安定化

・様々な DRI 材(鉄鉱石/電炉ダストベース)の溶解

・DRI 溶解速度の拡大(鉄鉱石ベース)

④操業の連続化による高生産性の確認

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33

(3) 実験の要領

(3)-1 実験設備のレイアウト

図 3-12 に本実験設備の全体レイアウトを示す。

第 3 期工事として建設した溶解炉および付帯設備は、先に建設したファート

メット設備に隣接して設置する予定であった。しかし、既存の事務所、作業所

の移設に伴う代替地を製鉄所内に確保することが困難であったことから、DRI

のハンドリングおよび溶解炉設備の配置は南西側の空き地を使用することと

した。

滝川工業事務所

N o . 1 ペ レ ッ ト 工 場

フ ァ ー ス ト メ ッ ト ' 既 設 (

PN

滝川工業作業場

神鋼EN&M作業場

No.2 ペレット工場

1

2

3

4

5

6

7

8

① 原料乾燥設備② 微粉炭製造装置③ 塊成化設備④ 回転炉床炉'RHF(⑤ RHF排ガス処理設備⑥ 溶解炉⑦ 操作室・電気室⑧ 現場ハウス

図 3-12 実験設備の全体レイアウト

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34

図 3-13 に溶解炉棟内の主な設備配置を示す。

溶解炉棟内には、DRI 受け入れ設備、副原料ハンドリング設備、メルター炉、

排ガス設備、種湯製造用低周波誘導炉、溶湯ハンドリング・処理設備(取鍋加

熱、鋳銑機、造塊用インゴット)及びクレーンが設置された。

溶解炉本体は「吹錬位置」と「装入位置」間を走行し、「吹錬位置」におい

ては炉蓋と炉本体を密着させるため、昇降運転ができるようになっている。ま

た、溶銑を受湯するための取鍋は「玉掛位置」と「受銑位置」間を専用の取鍋

台車に積載して移動できるようになっている。

RHF(回転炉床炉)で製造された還元鉄(DRI)は、RHF 炉下で専用の還元

鉄搬送容器に装入して、計量した後、フォークリフトおよび専用ホイストにて

溶解炉の炉上まで搬送する。炉上で反転して、容器下部に設置したスライドゲ

ートを開け、投入ホッパーに装入する。

図 3-13 溶解炉棟内の主な設備配置

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35

(3)-2 実験設備の構成と設備仕様

溶解炉(メルター炉)実験設備の概要を図 3-14 に示す。

低周波炉で予め製造された種湯(溶銑)をメルター炉内に装入した後、造滓剤

等を炉中に投入し、上吹きランスを下降して酸素吹きすると、炉内溶銑中の C

が O2 ガスで燃焼して CO ガスが発生し、溶銑を昇熱する。次に、炭材を投入

して、所定温度に達したら、DRI を炉内に投入して溶解させ、溶銑を製造する。

発生した排ガスは、メルター炉上の炉蓋に直結したダクトを通して吸引され、

冷却塔で水噴霧により 500℃以下に冷却される。その後、スクラバーで湿式除

塵した後、吸引ファンを通して燃焼式煙突(フレアスタック)にて未燃焼の CO

ガスを完全燃焼させ、大気中に放散される。

メルター炉では、適正な送酸及び炭材投入条件で DRI 溶解速度を増加させ

るとともに、溶湯温度をほぼ一定に維持するように DRI 投入量を調整し、併

せて溶湯加炭、2次燃焼率の制御を行なった後、生成した溶銑・スラグを排出

する。

DRI を溶解して製造された溶銑・スラグは、先ず中間出銑孔より受銑鍋に排

出した後、再吹錬して DRI 溶解を継続し、実験終了時には残銑抜き孔より全

ての溶銑・スラグが炉外に排出される。溶銑鍋に受けた溶銑は、鋳銑機叉は造

塊により鋳造処理を行なう。

図 3-14 溶解炉実験設備の概要

原料槽'石炭、生石灰等(

吸引ファン

燃焼式煙突

燃焼空気

スクラバー

冷却塔

溶解炉

ホットブリケットマシン

酸素

高温還元鉄

還元鉄容器

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36

メルター実験設備の主要な設備仕様を表 3-16 に示す。実験設備は、種湯を

製造するための低周波溶解炉、メルター炉本体、出銑された溶銑を固めるため

の鋳銑機、メルター炉から発生するガスを処理する設備により構成される。

表 3-16 メルター炉実験設備の主仕様

  設備・項目 仕様

種湯 ・低周波溶解炉で型鉄を溶解して製造。

・製造量:約6t

メルター

形式 ・傾動しないメルター炉で炉蓋密着型。炉体本体は昇降・走行可能。

・出銑滓作業は炉底側壁部をタッピングマシンで開孔して実施。

・取鍋に排出された溶銑とスラグは除滓後、鋳銑機及び鋳型で鋳造。

寸法 ・炉径:内径2m x 高さ2.1m

プロセス条件 ・酸素使用量:最大900Nm3/h

・底吹きガス:窒素、最大60Nm3/h

鋳銑機 ・鋳銑能力:3t/hr

メルター排ガス

排ガスダクト ・水冷ジャケット付きダクト、放散弁付き

排ガス冷却塔 ・噴霧水により排ガスを冷却

・噴霧ガス:窒素

ウエットスクラバー ・排ガスの冷却(約60℃)と除塵を行なう。

・NaOH水溶液により排ガスの脱硫を行う。

煙突 ・燃焼式煙突(周辺の空気を吸引んで燃焼。耐火物張り)

・パイロットバーナー+補助燃料添加により確実に燃焼させる。

・燃焼排ガス: 11,000Nm3/hr, 1000℃

(4) 実験の結果

(4)-1 運転および制御方法

メルター炉に種湯を装入後、吹錬開始前に炉内に炭材や造滓剤を前装入する。

メルター内の湯面高さは、種湯装入後に専用冶具を用いて測定し、これを基準

にランス高さの位置決め操作を行なう。酸素ランスは、吹錬以外は炉蓋直上の

待機位置にあり、吹錬開始操作とともに下降して、送酸を開始する。吹錬を開

始して着火すると、排ガスが発生するため、炉内圧を一定にするよう調節弁に

て自動制御している。排ガス流量が大きく変化する場合は、吸引ファンのダン

パーにより自動的に開度調整している。

炭材はメルター炉上部に設けた原料槽より連続フィーダーにて切り出され、

コンベヤーを介してメルターへ連続投入される。焼石灰、焼成マグネシア等の

副原料は比較的尐量であるため、手作業にてコンベヤー上に供給し、メルター

炉内に投入される。

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37

溶湯温度、溶湯[C]濃度の測定は、炉直上のサブランスを炉内に装入して行

なう。排ガスは、炉頂部に設けた排ガスダクトおよび吸引ファン出口に設けた

サンプルポートより採取し、CO、CO2、O2 濃度を連続測定する。溶湯温度、

溶湯[C]濃度、排ガス組成等をもとに、吹錬状況を判断しながら、各種パラメ

ータを操作する。

所定の吹錬を行なった後、タッピングマシーンにて出銑孔を開孔し、炉内の

溶湯およびスラグを排出する。また炉底から 400mm 上方に設けた中間出銑孔

から排出すると、炉内に所定の溶湯や尐量のスラグを残し、継続して吹錬する

ことが可能である。

(4)-2 主・副原料の成分

主原料である種湯と DRI の化学成分値を表 3-17、表 3-18 に示す。

また、副原料である石灰,炭材,焼成マグネシアの各化学成分及び粒度を表

3-19 に示す。

表 3-17 代表的な種湯の化学成分

C, % Si, % S, % P, %種湯 4.0-4.5 0.20-0.30 0.035-0.045 0.100

表 3-18 代表的なDRIの化学成分

銘柄 T.Fe, % M.Fe, % C, % S,% CaO, % MgO, % SiO2, % Al2O3, %鉄鉱石(1) 79.6 76.9 2.1 0.19 7.2 1.7 5.7 0.8鉄鉱石(2) 77.3 66.5 7.9 0.09 3.9 0.3 4.0 2.5電炉ダスト 58.1 47.9 2.1 0.59 7.2 3.0 8.3 5.3電炉SUSダスト 35.4 25.9 3.1 1.07 8.9 6.8 14.8 6.0

表 3-19 副原料の化学成分および粒度

銘柄 T.Fe, % CaO, % MgO, % SiO2, % Al2O3, % C, % CaF2, % 粒度炭材 0.8 0.4 0.1 6.6 3.7 85.2 -- 12-25mm焼石灰 -- 91.4 1.4 0.3 0.2 -- -- 5-25mm焼成マグネシア 1.1 2.0 92.2 3.5 0.6 -- -- <2mm蛍石 -- 8.0 0.1 5.9 0.5 -- 80.6 <2mm

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38

(4)-3 メルター吹錬操業の実施例

1) 吹錬開始時の実施例

溶銑を装入し、吹錬を開始して着火後、溶銑中の C が O2 ガスで燃焼して

CO ガスが発生すると溶銑が昇熱するとともに炉内の雰囲気ガス組成は O2 濃

度が減尐し、CO、CO2濃度が増加する。O2 濃度が下がると炭材を投入し、所

定温度に達したら、DRI を炉内に投入して順次投入量を増加させて溶解し、溶

銑を製造する。炭材投入量は上吹き酸素量見合いで増減させる。(図 3-15 参照)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1

4:

25

:0

0

1

4:

26

:3

0

1

4:

28

:0

0

1

4:

29

:3

0

1

4:

31

:0

0

1

4:

32

:3

0

1

4:

34

:0

0

1

4:

35

:3

0

1

4:

37

:0

0

1

4:

38

:3

0

1

4:

40

:0

0

1

4:

41

:3

0

1

4:

43

:0

0

1

4:

44

:3

0

1

4:

46

:0

0

1

4:

47

:3

0

1

4:

49

:0

0

1

4:

50

:3

0

1

4:

52

:0

0

1

4:

53

:3

0

1

4:

55

:0

0

1

4:

56

:3

0

1

4:

58

:0

0

1

4:

59

:3

0

1

5:

01

:0

0

1

5:

02

:3

0

1

5:

04

:0

0

1

5:

05

:3

0

1

5:

07

:0

0

1

5:

08

:3

0

1

5:

10

:0

0

1

5:

11

:3

0

1

5:

13

:0

0

1

5:

14

:3

0

DR

Iお

よび

炭材

投入

速度

'k

g/

h(

、送

酸速

度'

Nm

3/

h(

炭 材 投 入 速 度

D R I 投 入 速 度

送 酸 速 度

炭 材 投 入 ま で 約 1 4 分 D R I 投 入 ま で 、 更 に 約 1 9 分定 格 D R I 投 入 速 度 ま で 、 更 に 約 1 0 分

図 3-15 吹錬開始時の実施例

2) 還元鉄(DRI)投入時のスラグ膨れ現象例(3rd.キャンペーン)

酸化度が大きく、膨れ易いスラグに DRI を投入すると、DRI 溶解時に急激

に CO ガスが発生してスラグ膨れが活発化し、吹錬が不安定になる。(図 3-16

参照)

0

200

400

600

800

1000

11:00 11:30 12:00 12:30 13:00

Time

Oxyg

en F

low R

ate'

Nm3/

h(DR

I cha

rging

Rat

e (k

g/h)

0

10

20

30

40

50

CO'v

ol%(in

flue

gas

O2 Flow Rate

CO%DRI

O2CO

図 3-16 還元鉄(DRI)投入時のスラグ膨れ現象例(3rd.キャンペーン)

Page 41: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

39

3) 吹錬中の溶銑温度、[C]濃度の推移例

低周波炉から溶銑を出湯してメルター炉に装入し、溶銑温度が約 150℃下が

った状態で、吹錬を開始する。通常、1 回目の吹錬では前ヒートの残銑滓の影

響があり、昇熱して中間出銑後、2 回目の吹錬で所定温度に達してから DRI

を投入する。

DRI 投入中は温度をほぼ一定に保持し、最後は残銑抜き孔から出銑滓する。

なお、[C]濃度もほぼ一定に保持されている。(図 3-17 参照)

1 , 4 8 81 , 4 9 8

1 , 4 7 01 , 4 6 3

1 , 3 8 4

1 , 3 6 41 , 3 5 5

1 , 3 4 71 , 3 4 2

1 , 3 3 6

1 , 4 3 3

1 , 4 6 6

1 , 4 9 71 , 5 0 3

1 , 4 0 0

1 , 4 4 4

1 , 4 5 9

1 , 4 4 41 , 4 5 21 , 4 4 9

1 , 4 5 8

1 , 4 8 3

1 , 5 0 61 , 5 0 61 , 5 1 6

1 , 4 2 8

1 , 4 0 1

4 . 5 34 . 5 34 . 5 54 . 5 54 . 5 4

4 . 3 24 . 3 7

4 . 5 8

4 . 7 0

4 . 8 3

4 . 9 94 . 9 2

5 . 0 14 . 9 5

4 . 7 8

5 . 0 05 . 0 35 . 1 1

5 . 0 6

5 . 2 95 . 2 1

4 . 5 2

1,200

1,300

1,400

1,500

1,600

1 2 : 4 31 2 : 5 71 3 : 1 21 3 : 2 61 3 : 4 01 3 : 5 51 4 : 0 91 4 : 2 41 4 : 3 81 4 : 5 21 5 : 0 71 5 : 2 11 5 : 3 61 5 : 5 01 6 : 0 4

溶湯

温度

'℃

2.5

3

3.5

4

4.5

5

5.5

溶湯

C'

%(

溶 湯 温 度

%C' コ ベ 研 (

出 湯 前

ノ ロ か き 後

吹 錬 前

出 銑 前

吹錬1 吹錬2

D R I 投 入 期 間

送 酸 速 度 : 4 0 0 N m 3 / h

取 鍋 前

図 3-17 吹錬中の溶銑温度、[C]濃度の推移例

4) 吹錬中の排ガス組成の推移例

同一ヒートの排ガス組成の推移例を図 3-18 に示す。1 回目吹錬で CO、CO2

濃度は反対の動きをしている。2 回目吹錬では、吹錬の後半に DRI 溶解が進

んで、CO 濃度が急激に増加する例を示す。なお、排ガス分析は吹錬や昇熱特

性の把握に重要であるため、安定吹錬の確保には、分析フィルターの管理や分

析計の信頼性向上が必須条件である。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1

3:

00

:0

0

1

3:

04

:5

0

1

3:

09

:4

0

1

3:

14

:3

0

1

3:

19

:2

0

1

3:

24

:1

0

1

3:

29

:0

0

1

3:

33

:5

0

1

3:

38

:4

0

1

3:

43

:3

0

1

3:

48

:2

0

1

3:

53

:1

0

1

3:

58

:0

0

1

4:

02

:5

0

1

4:

07

:4

0

1

4:

12

:3

0

1

4:

17

:2

0

1

4:

22

:1

0

1

4:

27

:0

0

1

4:

31

:5

0

1

4:

36

:4

0

1

4:

41

:3

0

1

4:

46

:2

0

1

4:

51

:1

0

1

4:

56

:0

0

1

5:

00

:5

0

1

5:

05

:4

0

1

5:

10

:3

0

1

5:

15

:2

0

1

5:

20

:1

0

1

5:

25

:0

0

1

5:

29

:5

0

1

5:

34

:4

0

1

5:

39

:3

0

1

5:

44

:2

0

1

5:

49

:1

0

1

5:

54

:0

0

1

5:

58

:5

0

排ガ

ス濃

度C

O/

CO

2/

O2

'%

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

ラン

ス高

さ'

mm

(,

D

RI

投入

速度

'k

g/

h(

ラ ン ス 高 さ

O 2 %

C O %

C O 2 %

5 0 0 N m 3 / h

DRI投 入 速 度

4 0 0 N m 3 / h

O 2 % : 異 常 値

図 3-18 吹錬中の排ガス組成の推移例

Page 42: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

40

5) 昇熱特性の実績例

図 3-19 に、7th.キャンペーンでの昇熱特性の実績例を示す。横軸はコール

ド DRI+炭材+焼石灰等を合計した冷材投入速度で、縦軸は昇熱速度である。

昇熱速度=0の直線に交わるポイントで温度はバランスしている。なお、図中

に各二次燃焼率の理論直線を併記しているが、この直線内に実績値が多く分布

している事から、二次燃焼率は概ね 15~40%程度と推定している。

( 1 0 . 0 )

( 5 . 0 )

0 . 0

5 . 0

1 0 . 0

1 5 . 0

2 0 . 0

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

DRIおよび炭材、副原料合計の投入速度'kg/h(

昇温

速度

'℃

/m

in

15%

二 次 燃 焼 率

40%

25%

N o . 2

図 3-19 昇熱特性の実績例

6) ヒートバランス例

図 3-20 に、7th.キャンペーンでの熱バランス実績例を示す。DRI 投入量及

び速度は 1,724kg と 1.7t-DRI/h である。入熱のほぼ全量は、炭材(カーボン)

の発熱で、出熱の 35~40%が DRI 溶解熱、排ガス顕熱は 36~40%、ヒート

ロスは約 11%であった。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

Input Output

比率

 (%)

ヒートロス

排ガス顕熱

DRI昇熱+還元

造滓材の昇熱

種湯昇熱分

Fe発熱量

CO+CO2発熱量

Si発熱量

Input Output Input Output

Si発熱量 0 0 0.00 0.0

CO+CO2発熱量 1,522 0 99.92 0.0

Fe発熱量 1 0 0.08 0.0

種湯昇熱分 0 7 0.00 0.5

造滓材の昇熱 0 181 0.00 11.9

DRI昇熱+還元 0 609 0.00 40.0

排ガス顕熱 0 558 0.00 36.6

ヒートロス 0 167 0.00 11.0

計 1,523 1,523 100 100.0

Mcal Mcal % %

図 3-20 ヒートバランス例

Page 43: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

41

7)カーボンバランス

カーボンバランスを図 3-21 に示す。Input 項目として、炭材、DRI、種湯・

溶湯由来のカーボンがあり、各計量実績と分析値より算出した。

Output 中の種湯・溶湯中のカーボン量は計量実績と分析値により算出した。

排ガス CO/CO2 は系外に放出したものであり、排ガス系統に設置した連続ガ

ス分析器による分析値と排ガス流量により算出した。

ダストは、排ガス中に固体として採取したダストに含まれるカーボン量の総

称である。実験中に排ガス中から採取したダストの分析値と採取時の送酸速度

より、送酸量当たりの dust 中のカーボン量を算出し、累積の送酸量より dust

中のカーボン量を求めた。

残留炭材は、炉内に残留していた炭材量を計測して、炭材の代表成分値をか

けて算出した。不明分は、Input 分と Output 分の差分である。

炭材の歩留は 95.4%であった。

炭材歩留の定義=(インプット量-ダスト中のカーボン量-不明分)/インプ

ット量

なお、操業の連続化と DRI 溶解量の増大により、Input 中の種湯・溶湯か

らのカーボン分比率は低下し、炭材からのカーボン分比率が増加することとな

る。

図 3-21 カーボンバランス

Input C

種湯・溶湯20%

DRI

7%

炭材73%

Output Cdust

1%不明分

5%残留炭材3%

排ガスCOCO2

66%

種湯・溶湯25%

Page 44: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

42

8) 鉄歩留り例

DRI を大量(3,750kg)に溶解した、H.No.71B1(07.10.21)の鉄歩留り例を図

3-22 に示す。スラグ、ダスト他への鉄分ロスを除くと鉄歩留りは 96.2%とな

る。

今回の実験はバッチ操業であったため、種湯の影響を受けているが、連続操業

を行なうと、種湯の影響は極めて尐なくなり、更に DRI 溶解量、製造溶湯量

の比率を増加することが可能と推定している。

O u t p u t F e

種湯6 5 . 9 %

s l a g

0 . 4 %

d u s t

1 . 0 %

製造溶湯3 0 . 3 %

不明分2 . 4 %I n p u t F e

種湯6 5 . 9 %

DRI

34.1%

連 続 化 に よ り 、 更 にDRI,製

造溶湯の比率をアップできる

図 3-22 鉄歩留り例

9) S バランス

メルター炉での吹錬前後の S バランスを図 3-23 に示す。炭材,DRI,種湯・

溶湯中の S 量は、計量実績と分析値より算出した。

Output 中の種湯・溶湯中の S 量は計量実績と分析値により算出した。dust

は、排ガス中から採取したダストの分析値と採取時の送酸速度より、送酸量当

たりの dust 中の S 量を算出し、累積の送酸量より dust 中の S 量を求めた。

排ガス S は、気体で測定した H2S、COS の総称で、dust と同様に、排ガス S

量から算出した。残留炭材は、炉内に残留していた炭材量に、炭材の代表成分

値をかけて算出した。不明分は、Input 分と Output 分の差分である。

操業の連続化と DRI 溶解量の増大により、Input 中の種湯・溶湯からの S

分比率は低下し、炭材および DRI からの S 分比率が増加する。そして、酸素

および炭材原単位が低下するため、Output の排ガスの S 分(dust 及び排ガス

S)比率は低下するが、溶湯量と溶湯当たりのスラグ量が増加して、スラグへ

の S 分は増加するため、種湯・溶湯とスラグへの S 分比率は増加する。

排ガス中のCO/CO2として排出

前チャージ

飛散ロス'炭材ロス(装入炭材

持越し炭材

次チャージ

残留炭材

溶湯C 溶湯C

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

Input Output

比率

 (%

) 残留炭材

飛散ロス

排ガスCO+CO2

装入炭材

溶湯C

Input Output Input Output

溶湯C 163 226 23.2 32.1

装入炭材 391 0 55.6 0.0

排ガスCO+CO2 0 404 0.0 57.4

飛散ロス 0 39 0.0 5.6

残留炭材 150 34 21.3 4.9

計 704 704 100.0 100.0

kg kg % %

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43

Input S

炭材中S56.8%

DRI中S

24.1%

種湯・溶湯19.1%

Output S

不明分7.6%

排ガスS

1.5%

残留炭材2.8%

dust

45.5%

slag

11.4%

種湯・溶湯31.2%

図 3-23 S バランス

10) P バランス

メルター炉での吹錬前後の P バランスを図 3-24 に示す。また[P]濃度は、溶

解実験中、ほぼ一定であった。

なお、炭材,DRI,種湯・溶湯中の P 量は、計量実績と分析値より算出した。

Output 中の種湯・溶湯中の P 量は計量実績と分析値により算出した。残留

炭材は、炉内に残留していた炭材量を計測して、炭材の代表成分値をかけて算

出した。不明分は、Input 分と Output 分の差分である。排ガスから採取した

ダストには、P 分が検出できなかったので、Output 項目に排ガス系の項目は

ない。

操業の連続化と DRI 溶解量の増大により、Input 中の種湯・溶湯からの P

分比率は低下し、炭材および DRI からの P 分比率が増加することとなる。

そして、Output の種湯・溶湯の P 比率は低下し、スラグの P 比率は増加する。

I n p u t P炭材中P

9 . 3 %

DRI中P

6.1%

種 湯 ・ 溶 湯8 4 . 7 %

O u t p u t P

種湯・溶湯9 1 . 9 %

s l a g

7 . 2 %

残留炭材0 . 5 %

不明分0 . 4 %

図 3-24 P バランス

Page 46: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

44

11) DRI 投入速度

DRI 投入速度に影響を及ぼすパラメータは、送酸速度の他に炉内ホットヒー

ル量が上げられる。図 3-25 に、当初想定したシミュレーションと今回の実績

を比較すると、コールド DRI の投入にも関わらず、高い投入速度を確保して

いる事が分かる。本実験では、ホット DRI 投入は設備制約によりバッチ投入

しか確認できなかったが、800℃のホット DRI を投入できれば、熱的には約

1.4 倍の DRI 投入が可能となる。

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

0 10 20 30 40 50 60

ホットヒール量'ton/ヒート(

DR

I投入

速度

'to

n/h

DRI温度:

800℃

DRI温度:

25℃

当初計画

当初計画に対する温度補正値

現状、4~6トンヒール

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 2 4 6 8 10 12 14

ホットヒール量'ton/ヒート(

DR

I投入

速度

'to

n/h

(ホットDRI温度:800℃

当初計画

コールド現状、3.2トンヒール'中間出銑後(

6トンヒール'種湯装入後(

図 3-25 ホットヒール量と DRI 投入速度の関係

12) 代表的な吹錬実施例

メルター実験で、長時間の吹錬や最大の DRI 溶解量(3,750kg)を記録した、

H.No.71B1(07.10.21)の実績を下記に示す。(図 3-26:溶湯温度と炭材と[C]濃

度の推移、図 3-27:炭材と DRI 投入速度)

1 回目の吹錬後、中間出銑孔からの出銑と再吹錬を 2 回繰り返している。

DRI 投入量は 2,025kg+1,725kg=計 3,750kg 投入しており、投入中の溶湯温

度、[C]濃度ともほぼ一定となっている。また DRI 投入速度は、Max.2t/h を

長時間確保しており、吹錬の安定化が図られている。

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45

1,505

1,4811,467

1,363

1,421

1,4731,482

1,500

1,5211,523

1,5631,5481,548

1,484

1,541

1,5651,554

1,538

1,5201,516

1,5411,530

1,5151,5001,504

1,527

1,4301,425

4.70

4.81

4.93

5.09

4.76

5.25 5.23

5.09

5.01

4.87

5.02

4.78

4.89

4.814.79

5.105.15

5.07 5.07

4.98

5.095.10

4.92

1,000

1,100

1,200

1,300

1,400

1,500

1,600

11:31 11:45 12:00 12:14 12:28 12:43 12:57 13:12 13:26 13:40 13:55 14:09 14:24 14:38 14:52 15:07 15:21 15:36 15:50 16:04 16:19 16:33 16:48

溶湯

温度

'℃(

4

4.2

4.4

4.6

4.8

5

5.2

5.4

5.6

5.8

6

溶湯

C'%

溶湯温度

%C'コベ研(

ノロかき後

吹錬前

出銑前

1回目吹錬 2回目吹錬 3回目吹錬

図 3-26 溶湯温度と炭材と[C]濃度の推移

0

500

1000

1500

2000

11:

30:0

0

11:

38:1

0

11:

46:2

0

11:

54:3

0

12:

02:4

0

12:

10:5

0

12:

19:0

0

12:

27:1

0

12:

35:2

0

12:

43:3

0

12:

51:4

0

12:

59:5

0

13:

08:0

0

13:

16:1

0

13:

24:2

0

13:

32:3

0

13:

40:4

0

13:

48:5

0

13:

57:0

0

14:

05:1

0

14:

13:2

0

14:

21:3

0

14:

29:4

0

14:

37:5

0

14:

46:0

0

14:

54:1

0

15:

02:2

0

15:

10:3

0

15:

18:4

0

15:

26:5

0

15:

35:0

0

15:

43:1

0

15:

51:2

0

15:

59:3

0

16:

07:4

0

16:

15:5

0

16:

24:0

0

石炭

/DR

I装入

速度

'kg/

h(

炭材投入速度

DRI投入速度

最大投入時

図 3-27 炭材と DRI 投入速度

Page 48: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

46

13) SUS 電炉ダストの成分と溶解歩留り

SUS 電炉ダストと還元鉄の成分及び溶解歩留を図 3-28 に示す。SUS 電炉ダ

スト中には、Ni、Cr 等の有用金属を含んでおり、還元処理すると濃縮された

成分となる。

スラグ成分が多い、ダスト DRI の溶解特性や排滓性については大きな支障

は無く安定していた。

Ni、Cr 金属の歩留りは低い値となっているが、尐量添加テストの影響が大

きかったと推定している。

スラグ噴出

SUS電炉ダスト成分

T.Fe M.Fe T.Ni T.Cr T.Mn Zn Pb C S20.41 0.76 0.89 4.80 3.88 12.47 1.43 1.17 0.81CaO MgO SiO2 Al2O3 Na2O K2O Cl F4.98 4.26 9.00 2.89 2.07 2.28 3.38 0.98

SUS電炉ダストDRI成分

T.Fe M.Fe T.Ni T.Cr T.Mn Zn Pb C S34.54 25.35 1.05 6.23 5.46 1.1 0.23 3.42 1.07CaO MgO SiO2 Al2O3 Na2O K2O Cl F8.24 6.32 13.18 5.24 1.11 0.54 0.53 0.86

上記DRIを溶解したところ、以下の回収率を確認した。

Ni : 76 %

Cr : 54 %

図 3-28 SUS 電炉ダストと還元鉄の成分及び溶解歩留

Page 49: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

47

14) 固定型メルター炉での安定なスラグ排出技術

・ 固定型メルター炉において、溶銑、スラグの排出はタッピングマシーンを

用いて開口・閉栓作業を行なう方式を採用した。

・ メルター実験(7th キャンペーン)で確認したスラグの排出特性として、図

3-29 にスラグ(T.Fe)とスラグ排出率の関係を示す。

・ その特徴は以下の通りで、スラグ塩基度の目標値は 1.2 に調整した。

① 滓化性が良く、流動性のあるスラグを作っても、メルター炉内のスラグが

過酸化で、フォーミング状態になると、出銑孔を閉口してもスラグの排出

量は非常に尐なかった。

② しかし、スラグを滓化させ、スラグ中(T.Fe)を下げて沈静化し、出銑温度

を高位に保持すると、スムーズなスラグ排出が可能となった。

0 . 0

2 0 . 0

4 0 . 0

6 0 . 0

8 0 . 0

1 0 0 . 0

0 1 2 3 4 5

ス ラ ク ゙ T . F e ( 指 数 (

スラ

グ排

出率

、%

図 3-29 スラグ(T.Fe)とスラグ排出率の関係

Page 50: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

48

(5) メルタープロセスの比較検討

(5)-1 固定型メルタープロセスの生産性検討

・ メルター炉として、転炉型傾動方式を採用すると、出銑時には吹錬を中止

して炉体を傾動して溶銑を出湯後に、次に反対側に炉体を傾動してスラグ

を排滓する必要があり、その間、炉内の温度が下がるとともに、非吹錬時

間が発生して生産性が低下する。

・ 一方、固定型メルター炉において、出銑滓時にも炉体を傾動せずに、吹錬

及び還元鉄の溶解を継続して溶鉄及び溶融スラグを排出できれば、溶銑滓

排出時の顕熱の放散以外は炉内の温度が下がらない上に、生産性を殆ど低

下させずに連続操業することが可能である。特に、RHF で製造された還元

鉄を炉内に高温状態で装入できれば、より生産性が向上する。(図 3-30 参

照)

・ 今回のメルター実験においては次の成果を得ており、固定型メルター炉の

基本コンセプトは確認できたと考える。

①大量スラグ下での吹錬の安定化、還元鉄(DRI)投入速度の拡大に加え、良

好なスラグの排出や溶湯加炭について、固定型炉での安定な操業技術を確

認した。

②出銑中の酸素ブローや、炭材・DRI投入を継続する連続吹錬のトライに成

功し、連続化への道を開いた。

DRI炭材

排ガス DRI炭材

排ガス

種湯装入(1回目装入のみ)

DRI'35t(溶解 中間出湯&排滓

炉修&メンテ停止

'炉底から残銑抜き(

の繰り返し

図 3-30 固定式メルター炉のプロセス・フロー

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49

(5)-2 他プロセスとの比較

今まで、世界各地で新しい製鉄プロセスが開発されているが、現在実用化

されているプロセスの設備構成は、予備還元炉とメルター炉の組合せであり、

メルター炉での溶解時の負荷を下げることが有効である。そのプロセス例を

表 3-20 に、またその特徴を以下に示す。

1) COREX&FINEX 法

両プロセスは、溶解・ガス化炉の上部にシャフト炉(Midrex 式)叉は流動還元

層(FINMET)を組合せており、現在、唯一商業化されている方式で、世界で 6

基(*1)が稼動している。

溶解炉は高炉の下半分を切り取った形の炭材充填層式で、炉内2次燃焼が不

可であるため、炭材原単位が増加して多量の余剰ガスが発生する。

従って、本プロセスでは、この発生ガスの有効利用(発電など)との組み合わ

せが必須となり、設備費が高額となる。(*1); COREX;5基+FINEX;1基

2) 回転炉床炉(RHF)とメルター炉の組合せ

本事業で推進した固定型メルター炉(FASTMELT)方式において、出銑時の

安定なスラグ排出や連続吹錬が出来れば、転炉傾動方式のように出湯・排滓時

に炉体の傾動が必要なく、連続操業が可能で、しかも熱ロスの低減や DRI 溶

解の面でも有利である。

また、FASTMELT 法ではホット還元鉄の使用を前提としており、約 20-30%

の低ニ次燃焼率でも還元鉄の還元率が高いため、溶解炉では高い生産能力が期

待できる。

表 3-20 主要な製鉄プロセス

転炉型メルター炉 COREX FINEX

設備の商業化南ア:Saldanha×1、韓国:POSCO×1、インド:Jindal×1、中国:宝鋼×2

POSCO(浦項)で開発・商業化

生産能力 16万t/年(推定70-80t炉) 75(南ア)~150万t/年(中国)デモ基:60万t/年、商業基:150万t/年

(07/5)

設備構成予備還元炉(RHF)+転炉型溶解炉で溶銑を製造

予備還元炉(シャフト炉)+溶解・ガス化炉で溶銑を製造

予備還元炉(流動層)+溶解・ガス化炉で溶銑を製造

設備費

プロセス概要

設備生産能力

RHF

O2

N2+カーボン

SMP

ホットDRI

傾動型

Lump Ore(8~30mm(

Non-CokingCoal

HotMetal

Oxygen

PCI

現状:シャフト炉

R1

R2

R3

HotMetal

Non-CokingCoal

Fine Ore(-8mm(

Oxygen

流動層

PCI

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50

(5)-3 取り巻く環境

現在の世界鉄鋼業を取り巻く環境は、世界的な粗鋼生産量の拡大傾向が続き、

原燃料の大幅な高騰を招いて、資源争奪戦の様相を呈している。特に、高炉メ

ーカではコークス用強粘結炭の確保が至上命題になっており、原燃料の値上げ

はもとより、原料調達の安定確保が求められている。従って、一般石炭や結晶

水含有の鉄鉱石のように大量に埋蔵され、安価で自由度のある原燃料の使用を

可能とする製造プロセスの開発は、コスト競争力のみならず、将来の重要な技

術開発課題となり得る。

(5)-4 RHF および石炭メルター実験の評価

本事業は、”RHF+メルター”の組合せが特徴であり、先ず RHF では鉄鉱石

はもとより各種ダスト、高 VM 炭や高結晶水鉱石等の造粒/還元処理に関する

知見を得た。またメルター炉では、設備制約がありながら、諸問題を克服し、

パイロット・プラントベースでの安定操業に成功して、当初の目的を達成する

とともに、連続化への道を開くなど、固定型炉の基本コンセプトを確認できた。

(5)-5 今後の展開に関する基本的な考え方

今後、パイロット・プラントから一気に大型商業機へ進むのは設備/操業と

もリスクが高く、先ず商業機に至る開発ステップを検討することが必須である。 他プロセスの商業機までの道程を調べると、溶融還元法(DIOS, HIsmelt),

COREX 法ともパイロットプラント(約 5t 炉)を経て、デモプラント(約 10t 炉)にスケールアップした後、商業プラントに至っている。 図 3-31 にダスト処理設備とデモプラントの設置案を示す。

還元鉄回転炉床炉

溶解炉

・製鉄所ダスト・鉄鉱石+石炭

O2

炭材

N2

ホットDRI2次燃焼

副生ガスのリサイクル

副生ガス

ブリケット

図 3-31 ダスト処理設備とデモプラントの設置案

Page 53: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

51

(6) 溶解炉パイロットプラント実験における成果

メルター炉では、大量スラグ下で吹錬の安定化を図るとともに、様々な還元

鉄の使用テストを実施するとともに、還元鉄投入速度を拡大し、良好なスラグ

排出や溶湯加炭を可能にして、固定型炉での安定な操業技術を確認した。

また、出銑滓中の酸素吹きや炭材・還元鉄の投入を行なう連続吹錬のトライ

に成功し、連続化への道を開いた。なお、コールド還元鉄の投入速度は初期目

標を上回ったが、ホット還元鉄の投入は投入系の設備制約もあり、尐量のバッ

チ投入テストのみに留めた。

更に、回転炉床炉で作った還元鉄を溶解して溶銑を製造する場合、溶銑中[S]

濃度が高くなることが想定されるため、本設備を利用して溶銑脱硫実験を行な

い、効率的に脱硫するプロセスの開発を行った。

本実験で得られた具体的な成果を以下に記載する。

● 炭材上方投入方式で[C]>4%以上、 1450℃以上の溶銑を安定に製造する技

術を確認した。

● 排滓性の向上には適正なスラグ作りがポイントである。

● 3.3t 溶湯に対して、2.0t/h 以上のコールド DRI 投入速度を達成した。

● 様々な DRI 銘柄と 90-70%金属化率の DRI の使用を確認した。

● 週 2 回の間歇操業、待機中のバーナー加熱操業条件下でも、耐火物溶損は

軽微で、溶損速度は比較的低位であった。

Page 54: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

52

(7) 溶銑脱硫実験

(7)-1.目的

回転炉床炉で製造した還元鉄(DRI)を溶解して溶銑を製造する場合、DRI

中の S 分、およびメルター炉で添加する炭材中の S 分により、溶銑 S 濃度は

高くなる。特に電炉ダストを原料とした DRI を使用する場合には、電炉ダス

ト中のFe分が低いことから、Sが濃縮して溶銑のS濃度は更に高くなるため、

その溶銑を使用する製鋼工程での使用制限や脱硫コスト上昇等が想定される。

このことから、良質な鉄源を製造する本プロジェクトの一環として、高 S 濃度

の溶銑を効率的に脱硫するプロセスの開発を行った。

(7)-2.脱硫方式の選定

溶銑脱硫法には、粉体インジェクション法、機械撹拌法がある。機械撹拌法

は、溶銑上に添加した脱硫剤を回転するインペラーにより溶銑中に繰り返し巻

き込ませることができるため、反応性が比較的低い CaO を主とした脱硫剤を

用いることができるという利点がある。

この機械攪拌法は、その優れた脱硫特性から、近年高炉溶銑の脱硫プロセス

として広く採用されている。しかしながら、この方式がメルター炉で製造され

る高 S 濃度の溶銑の脱硫プロセスに適しているかについての知見はないため、

この機械撹拌方式に着目し、高 S 濃度の溶銑の脱硫プロセスとしての評価を行

った。

(7)-3.プロセスフローの概要

想定プロセスを図 3-32 に示す。ダストを RHF で還元し、メルター炉で溶

解して製造した溶銑は、取鍋に出湯する。取鍋内にて脱硫処理を行った後に、

転炉などの次工程に送られるか、鋳銑機にて鋳造される。

脱硫処理は、CaO を主体とした脱硫剤を溶銑上に添加し、溶銑中に浸漬し

た耐火物製の攪拌羽根(インペラー)を回転させて脱硫剤を溶銑中に巻き込ま

せることにより行う。

RHF メルター

脱硫 次工程

図 3-32 全体プロセスフロー

Page 55: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

53

(7)-4.実験設備および実験方法

実験は、取鍋ハンドリングの容易さと、改造範囲の最小化の観点から、図

3-33 に示すメルター棟内の種湯装入位置にて行った。具体的には、炉前デッ

キを改造し、デッキ上に撹拌装置(弊社保有品)を設置した。図 3-34 に装置

を南側から見た立面図を示す。メルター炉前デッキの架構の間に新たに架構を

設け、その上に攪拌装置を設置した。

実験手順は次のとおりである。

① 低周波炉にて銑鉄(約 5t)を溶解後、取鍋に出湯する。

② 除滓後、取鍋を取鍋台車に載せ、撹拌装置下に移送する。

③ 脱硫剤を溶銑上に投入する。

④ インペラを溶銑中に浸漬後、回転させ、脱硫剤と溶銑を攪拌する。

⑤ 処理後の溶銑は、必要に応じて除滓後、鋳銑機にて鋳銑、ないしはインゴ

ットに鋳造する。

(7)-5.実験項目および実験条件

機械撹拌方式を高 S 溶銑に適用するに先立って、通常の高炉溶銑の S レベ

ルで基本的な特性評価を行った。その後、高 S 溶銑での脱硫特性を評価した。

① 機械撹拌方式の基本的な脱硫特性の評価

② 高 S 溶銑における脱硫特性の把握と評価

基本的な実験条件を表 3-22 に示す。溶銑量は 4.5t とし、溶銑の S 濃度は、

高炉溶銑を模擬した 0.03%、および FASTMELT 溶銑を模擬した 0.2%、0.4%

の3水準とした。低周波溶解炉出湯時の溶銑の Si 濃度は 0.3%に調整し、脱硫

処理開始時の溶銑温度は約 1450℃であった。

メルター炉体

攪拌装置

取鍋

メルター炉体

攪拌装置

取鍋

メルター炉

取鍋取鍋

低周波炉

< 種湯受湯位置 >

スラグバッグ'除滓(

< 装入位置 >

< 吹錬位置 >

操作デッキ

炉廻りデッキ

鋳銑機

ホイストCL

PN

実験位置

図 3-33 メルター棟内のレイアウトと実験装置の位置 図 3-34 実験装置の配置

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54

脱硫剤は、CaO-Al2O3系を使用した。

インペラーの回転数は、溶銑 1t 当りに投入されている攪拌動力が工業化さ

れている装置における通常の値と同程度になるように、180-200rpm 目標とし

た。

表 3-22 実験条件

項目 諸元

溶銑量 4.5~5.0t

溶銑成分 4.5%C-0.3%Si

S:0.03%、0.2%、0.4%の3水準

溶銑温度 処理開始時 1450℃

脱硫剤組成 CaO-Al2O3系

追加添加 Al:2kg(但し、処理前 S=0.2,0.4%の実験

のみ)

インペラー形状 羽根外径:500mm、羽根数:4

インペラー回転数 180-200rpm 目標

(7)-6.実験結果

1) 低 S 溶銑

処理前溶銑中の[S]濃度が約 0.03%(300ppm)における脱硫処理中の S 濃度

の変化を図 3-35 に示す。インペラー回転数の増加、および脱硫剤原単位の増

加とともに、脱硫は進行する。脱硫剤原単位 8.9kg/t、インペラー回転数 210rpm

において、処理後[S]は 5ppm まで低下した。

図 3-35 低 S 溶銑における脱硫挙動

(脱硫剤原単位 8.0~8.9kg/t)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 3 6 9 12 15 18処理時間(min)

[S](

ppm

)

150rpm150rpm180rpm200rpm210rpm

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55

2) 高 S 溶銑

処理前溶銑中の[S]濃度が約 0.2%および 0.4%における脱硫処理中の S 濃度

の変化を図 3-36 に示す。脱硫剤原単位およびインペラー回転数の増加ととも

に、脱硫は進行する。脱硫剤原単位 24kg/t、インペラー回転数 215rpm にお

いて、処理前[S]0.19%から処理後[S]0.031%と、高炉溶銑並みのレベルまで脱

硫が可能であることを確認した。

(7)-7.溶銑脱硫実験における成果

FASTMELT プロセスにより製造される高 S 濃度の溶銑の脱硫方式として、

機械攪拌法を取り上げ、脱硫特性を評価した。その結果、高炉溶銑並みの S

濃度まで脱硫できること、また溶銑温度についても、転炉などの次工程で使用

する場合に問題のないことを確認した。

図 3-36 高 S 溶銑における脱硫挙動

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0 5 10 15 20 25

処理時間(min)

[S](

%)

150rpm, 12kg/t150rpm, 22kg/t180rpm, 24kg/t

215rpm, 24kg/t214rpm、24kg/t

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56

3-1-3 特許出願状況等

表 3-23.特許・論文等件数

要素技術 論文数 論文

の被

引用

度数

特許等件

数(出願

を含む)

特許権

の実施

件数

ライ

セン

ス供

与数

取得

ライ

セン

ス料

国際

標準

への

寄与

(a)高濃度の亜鉛・鉛

及びスラグ分を含む

電気炉ダストの塊成

化・還元技術

1+1 0 9 0 0 0 0

(b)化石燃料を用い

た溶解技術

0+3 0 7 0 0 0 0

総合 (a)+(b) 1+2 0 0 0 0 0 0

計 2+6 0 16 0 0 0 0

2(フルレポート)+6(発表)

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57

表 3-24.論文、投稿、発表、特許リスト

題目・メディア等 時期

論文

(社)日本鉄鋼協会 環境・エネルギー工学部会 資源循環フォーラム

「回転炉床炉による製鉄ダストからの鉄・亜鉛回収技術の展開」

H20.1

2008 年度東南アジア鉄鋼協会

DEVELOPMENT OF EAF DUST RECYCLING AND MELTING

TECHNOLOGY USING THE COAL-BASED FASTMELT® PROCESS

H20.5

論文 (社)日本鉄鋼協会 第 154 回秋季講演大会 H19.9

(発表) 1)回転炉床炉による有用金属回収技術の開発(第一報:プロジェクトの概要)

2)回転炉床炉による有用金属回収技術の開発(第二報:RHF での電気炉ダスト実

験結果の概要)

3)回転炉床炉による有用金属回収技術の開発(第三報:メルター実験の概要)

(社)日本鉄鋼協会 第 155 回春季講演大会 H20.3

1)回転炉床炉による有用金属回収技術の開発(第四報:メルター実験その2)

2)回転炉床炉による有用金属回収技術の開発(第五報:メルター数値解析シミュレ

ーション)

(株)神戸製鋼所 R&D Vo.158, No.1 新製品・新技術

「FASTMELT® 電炉ダスト処理と石炭メルタープロセス」

H20.4

特許 出願 No.2006-34132 溶鉄製造方法および溶鉄製造装置 H18.2

出願 No.2006-54523 溶解炉およびそれを用いた溶融金属製造方法 H18.3

出願 No.2006-58266 回転炉床 H18.3

出願 No.2007-103005 炭材内装酸化金属原料の塊成化方法 H19.4

出願 No.2007-140816 炭材内装酸化金属ブリケットの製造方法 H19.5

出願 No.2007-181217 回転炉床式還元炉の排ガス処理装置および方法 H19.7

出願 No.2007-196399 炭材内装酸化金属ブリケットの製造方法 H19.7

出願 No.2007-199600 電気炉ダストの還元処理方法 H19.7

出願 No.2007-204444 連続溶解炉のスラグフォーミング抑制方法 H19.8

出願 No.2007-205629 高温用ダイバータ H19.8

出願 No.2007-241199 油分含有製鉄所ダストを用いた炭材内装ブリケットの製造方法 H19.9

出願 No.2007-242650 溶鉄製造方法 H19.9

出願 No.2007-242651 アーク加熱による溶鉄製造方法 H19.9

出願 No.2008-25451 低 NOx 燃焼制御方法および還元処理物の製造方法 H20.2

出願 No.2008-78158 溶鉄製造方法 H20.3

出願 No.2008-87654 溶鉄製造用原料投入装置および溶鉄製造用原料投入方法 H20.3

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58

3-2 目標の達成度

以下のとおり、全体目標及び個別要素技術目標を達成した。

表 3-25-1 全体目標とその達成度

目標・指標 成果 達成度

塊成化設備を含む回転炉床炉および溶解

プラントからなるパイロットプラントの

運転を通して、

・ダストと炭材を混合して適切に塊成化

し、塊成化物を炉内で適切に還元処理

(亜鉛の回収率:95%以上)する。

・様々な電気炉ダストに合致

した塊成化技術を開発し、

安定条件下で、脱亜鉛率:

95%以上を達成。

達成

・有害物質の排出について、ダイオキシ

ン:0.1ng-TEQ/Nm3以下を達成する。

・炉内の高温処理、排ガス系

内の再合成防止により、安

定に

0.1ng-TEQ/Nm3 以下を達

成。

達成

・高濃度のスラグを含む還元鉄を適切に

溶解処理して、鉄回収率:95%以上を

達成する。

・吹錬、還元鉄投入の安定化

をもとに、ダストの鉄分の

回収率:95%以上を達成。

達成

表 3-25-2 個別要素技術の目標とその達成度

要素技術 目標・指標 成果 達成度

電気炉ダ

ストの塊

成化・還

元技術

電気炉ダストと炭材の適切な塊成化

技術の開発により、

・脱亜鉛率:95%以上を達成。

様々な電気炉ダストに合致した

塊成化技術を開発し、

・安定条件下で、脱亜鉛率:95%

以上を達成。

達成

有害物質の排出については、

・ダイキシン:0.1ng-TEQ/Nm3 以

下を達成。

炉内の高温処理、排ガス系内の再

合成防止により、安定に

・≦0.1ng-TEQ/Nm3を達成。

達成

・排ガス中に飛散する亜鉛分・塩素

分などの揮発成分の付着・腐食を

防止。

・炉内や煙道部の耐火物への付着

物も尐なく、実用化に耐えるこ

とを確認。

達成

化石燃料

を用いた

・高濃度スラグ含有の電気炉ダスト

還元鉄の安定溶解で鉄回収率:

95%以上を達成。

・吹錬、還元鉄投入の安定化

をもとに、ダストの鉄分の

回収率:95%以上を達成。

達成

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59

溶解技術 ・溶解炉での有価金属を高効率で回

収。

・SUS 系電炉ダスト還元鉄の溶解

により、Ni,Cr 金属の回収を確

認。

達成

③溶解炉を傾動せずにスラグを排出

する技術を確立。

・固定型炉での安定なスラグ排出

技術を確立。

達成

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60

4.事業化、波及効果についての妥当性

4-1 事業化の見通し

本事業の推進により、電気炉ダストの塊成化及び回転炉床炉での還元処理に

関して、技術ノウハウを蓄積するとともに、高い脱亜鉛率を達成して高品位二

次ダストが得られることを確認した。更に、炉内や煙道部の耐火物への付着物

も尐なく、実用化に耐える設備に仕上がっていることを確認するなど、今後の

実機化へ向けて、設備の設計やスケールアップに目処を建てた。

実際に、本パイロット設備および実験結果は電炉メーカ等から注目されて、

その評価も高く、百名を越えるプラント見学者を受け入れた。現在、本実験結

果の成果をもとに、平成 21 年度以降に商業機を建設することを目指して、電

炉メーカ等のユーザに働きかけ、回転炉床炉を用いた電気炉ダスト処理設備の

実用化と普及に努めている。

なお、事業化の主体は、電気炉設備を保有する電炉メーカが第一候補である

が、数社からダストを集めて集中処理する処理業者も候補となる。そのほか、

複数の事業者による共同事業も検討可能である。事業化に際しては、国や地方

自治体からの優遇措置が得られれば、導入に弾みがつくと考える。

一方、メルター実験においては、固定型炉での安定な操業技術を確認すると

ともに、出銑中の酸素ブローや炭材・DRI 投入を継続する連続吹錬のトライに

成功して、連続化への道を開くなど、固定型メルター炉の基本コンセプトは把

握したが、商業機に至る開発ステップ、スケールアップの推進計画作りが今後

の課題である。

さらに、回転炉床炉とメルター炉の組合せにおいて、低品位原燃料の使用を

確認した意義は大きいと考える。

今まで、日本鉄鋼業界は一貫して、臨海大型製鉄所を建設し大量の輸入資源

を有効に利用するビジネスを展開してきたが、最近はブラジル等で資源立地型

の製鉄所の建設に踏み出すなど、世界網で生産基地を拡げようと画策している。

今後、低品位原燃料を用いた製鉄技術の開発ニーズを考慮すると、本事業で開

発したプロセスをブラッシュアップし、資源立地型の設備として建設すること

も想定できる。

次に、電気炉ダストを回転炉床炉で還元処理し、メルター炉で炭材の燃焼熱

で還元鉄を溶解して銑鉄を製造した場合の、事業化 FS 検討結果を示す。

尚、電気炉ダストの発生量は年間約 50 万トンのままとし、平成 21 年度か

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61

ら毎年度1基のペースで 2 万 5000 トンの電気炉ダストの処理プラントが建設

されるものと仮定し、最終的には電気炉ダスト発生量の内、半分(25 万トン

/年)が本技術を用いたプラントで処理されることを目指す。

2 万 5000 トンの電気炉ダストを処理するプラントにおける経済効果の例を

以下に示す。

本技術により得られる経済効果は銑鉄の価値、粗酸化亜鉛の価値、電炉ダス

ト委託処理費により変動する。電炉ダスト処理設備に対する投資額が 30 億円、

粗酸化亜鉛の価値を 50,000 円/t、銑鉄価格が 60,000 円/t、電炉ダスト委託処

理費用を 30,000 円/t とした場合の経済計算は表 4-1 の通りである。

表 4-1 経済計算例

ダスト処理量 トン/年溶銑生産量 トン/年概算建設費 4,000,000 千円 →①

単価 原単位円/処理ダストトン

年間金額'千円(

変動費 ●操業費炭材 円/トン 15,000 0.32 4,800 120,000燃料(A重油) 円/GJ 2,100 8.3 17,430 435,750電気 円/kWh 12.0 110 1,320 33,000酸素 円/Nm3 6.0 130 780 19,500スラグ処理、その他 3,300 82,500保全費用 4,800 120,000

操業費合計 32,430 810,750 →②固定費 ●人件費'運転員( 万円/人 600 26 6,240 156,000 →③

減価償却費'定額14年( 10,286 257,143金利+税金'14年間平均( 3,216 80,397 →④

固定費合計 19,742 493,540ダスト処理費'収入前( 52,172 1,304,290

●収入粗酸化亜鉛 円/トン 50,000 0.30 15,000 375,000型銑 円/トン 60,000 0.32 19,140 478,500

製品収入合計 34,140 853,500 →⑤

ダスト処理費'収入後( 18,032 450,790EAFダスト処理価格'削減分( 円/トン 30,000 750,000 →⑥

7.2 →⑦

8,300

投資回収

25,000回転炉床炉+溶解炉

注:保全費用、人件費、減価償却費、金利+税金の円/処理ダストトン欄の数値

は年間金額を処理ダストトンで割り戻した。投資期間⑦は以下のようにして求

めた。

⑦=①÷{(⑤+⑥)-(②+③+④)}

銑鉄価格とダスト委託処理費が変動した場合の回収期間への影響を表 4-2

に含む。

Page 64: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

62

表 4-2 銑鉄価格、ダスト委託処理費用と投資回収期間の関係

粗酸化亜鉛価格 銑鉄価格 回収期間

円/t 円/t-銑鉄 年50,000 50,000 8.450,000 60,000 7.250,000 70,000 6.360,000 50,000 7.360,000 60,000 6.360,000 70,000 5.7

4-2 波及効果

本事業で開発したプロセスは、炭材を酸化金属に内装させた塊成化物を、回

転炉床炉を使って還元し、得られた還元鉄を鉄浴のメルター炉で溶解するとい

うもので、高炉のような充填層を有するプロセスではないため、強度を要求さ

れるコークスや焼結鉱を必要としないという特徴がある。

従って、本技術を応用すればコークスと焼結鉱を必要としない製鉄法にまで

発展できる可能性がある。

この場合、コークス原料となる高価な強粘結炭は不要になることから、資源

の確保や経済的な効果が期待されるだけでなく、コークス炉や焼結工場から発

生する排ガスが無くなるため、環境面でも優しい製鉄プロセスとして波及が期

待される。

しかし、新しい製鉄プロセスとして実用化するまでには、実機設備の設計、

スケールアップなど、まだ乗り越えるべき課題は多いが、今回の実験で大量ス

ラグ下での安定吹錬、還元鉄(DRI)投入速度の拡大、良好なスラグ排出や溶湯

加炭など、世界で始めて固定型石炭メルター炉での安定操業を確認できた。ま

た、出銑中の酸素ブローや炭材・DRI 投入を継続する連続吹錬に成功し、連続

化への道を開いた。

この回転炉床炉と固定型メルター炉の組合せにおいて、一般炭を用いた還元

鉄の溶解コンセプトを把握するとともに、将来は本技術を応用して適切な開発

ステップを踏むことにより、低品位原燃料の使用による溶銑製造プロセスに発

展する可能性がある。

ここで、新製鉄法に関して、競合するプロセスとしては、COREX&FINEX

法が先行して実用化されているが、同法では装入原燃料として、塊鉱石、ペレ

ットや、一部コークス等の塊状物を使用していること、また炭材原単位が高く、

多量の余剰ガスが発生するため、この発生ガスの有効利用設備の設置が必要に

Page 65: 『回転炉床炉による有用金属回収技術の開発』 プロ …...3 FeO M.Fe ZnO PbO SiO 2 Al 2 O 3 CaO MgO Cl S C 電気炉 32.2 42.6 3.1 0.02 24.2 4.1 3.8 2.4 4.1 1.3

63

なるなど、設備投資額が大きいと推定される。

一方、回転炉床炉と固定型メルター炉の組合せは設備がシンプルであること、

メルター炉の発生ガスが回転炉床炉の燃料ガスとして再利用されること、また

ホット還元鉄をメルター炉に装入することにより、その顕熱を有効利用できる

メリットを享受できるため、プロセス優位性を持つ可能性が高いと考える。

最近の世界鉄鋼業を取り巻く環境は、原料サプライヤーの寡占化はもとより、

2002 年以降の世界規模の生産量の拡大により、特に中国の急激な生産拡大に

より、凄まじいまでの原燃料の大幅な高騰を招き、資源争奪戦の様相を呈して

いる。本事業では電炉ダストだけでなく、製鉄所ダストや高 VM 炭、高結晶水

鉱石等の造粒/還元処理を行ない、低品位原燃料の使用に関する知見を得るこ

とができており、低品位原燃料の使用技術の開発の一助になると期待される。

さらに、今後の発展形としては電気炉ダストと同様にスラグ比の高いフェロ

クロム、フェロニッケル、フェロマンガンなどの合金鉄製造技術への適用も考

えられる。

また、事前処理技術が開発できれば、本プロセスの特徴を利用し、廃木材、

廃プラスチック、シュレッダーダスト、廃油、廃タイヤなどの廃材に含まれる

炭素分をブリケットの内装炭材として、また炭化水素分を回転炉床炉等の燃料

として有効活用する技術開発への波及も期待される。

以上、本事業は電気炉ダストのリサイクル率の向上、産業廃棄物の低減、

CO2排出量の削減の面で、重要な役割を果たす一方、次のような経済効果が

期待される。

平成20年度に受注し、平成21年度から毎年度1基のペースで、2万5000ト

ンの電気炉ダストを処理するプラント(40億円/基)が建設されると、平成

30年度以降、25万トンの電気炉ダストが本事業によって開発されたプロセス

によって処理されることになる。この場合、平成30年度における省エネ及び

経済効果は開発前の平成14年度に対し、以下のようになると推定される。

省エネ効果: 年間 10,500 kl(原油)

CO2 削減効果: 年間 29,000 t-CO2

民間需要創出効果:

建設需要創出効果:累計400億円

消費需要創出効果:年間85億円(年間179億円)

( )内;2007年実勢価格から推定

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民間雇用創出効果 :累計2,000人、年間260人

以下に詳細を示す。

(1) 省エネ効果

エネルギー消費量の内訳(電気炉ダスト 1ton 当たり)は以下のように想

定される。

回転炉床炉+化石燃料による溶解炉:回転炉床炉部分 11,800MJ、

溶解炉部分 1,700MJ

キルン:コークス製造 1,780MJ、キルン部分 10,720MJ

キルン法で、還元処理後に発生する残渣は金属化率が低く、リサイクルは

技術的に困難であるが、技術課題をクリアしてリサイクルできるとして、電

気炉による溶解を行えば 2,630MJ のエネルギーが必要になるので、必要な

エネルギー量を比較すると、以下のようになる。

回転炉床炉+化石燃料による溶解炉 13,500MJ

キルン+電気による溶解炉 15,100MJ

エネルギー量の差異 1,600MJ

平成 30 年度以降 25 万トンの電気炉ダストに対してこの処理を行うと、年

間 400 TJ の省エネ効果が得られる。

この省エネ効果を原油換算(38.2MJ/l)すると、年間 10,500 kl の原油削

減効果となる。

省エネ効果を原油換算で試算した場合、次のようになる。

400(TJ/年) x 1,148 円/GJ(2,100 円/GJ)= 4.6(8.4)億円/年

注:( )内数値は 2007 年の実勢価格から推定

上記の省エネ効果より、年間の CO2 の削減効果は次のようになる(注)。

400(TJ/年) x 20(t-C/TJ) x 0.99 x 44/12(CO2/C) = 29,000 t-CO2

(注):NEDO 発行の「平成 19 年度『国際エネルギー消費効率化等モデル

事業』に係る提案要領」 の別添-温室効果ガス排出削減量計算要領による。

(2) 資源リサイクル効果

1)平成 23 年度時点で、7 万 5000 トンの電炉ダストに 30%含有される鉄分

が回収されるので鉄分の価値を 1 トンあたり 1 万 5000 円(6 万円)と

すると、下記のリサイクル効果が見込まれる。

7 万 5000 トン×30%×1 万 5000 円(6 万円)=3.38 億円(13.5

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億円)-------------------------------------------------------------------------③

平成 30 年度以降、25 万トンの電炉ダストに対して、同様の処理を行う

とすると、下記のリサイクル効果が見込まれる。

25 万トン×30%×1 万 5000 円(6 万円)=11.25 億円(45.0 億円)

------------------- --------------------------------------------------------------④

注:( )内数値は 2007 年の実勢価格から推定

2)平成 23 年度時点で、7 万 5000 トンの電炉ダストに 30%含有される亜

鉛の内、95%が回収されて亜鉛含有量 60%の粗酸化亜鉛が生産されると

する。粗酸化亜鉛の価格を 1 トンあたり 2 万円(5 万円)とすると、下

記の効果が見込まれる。

7 万 5000 トン×30%×95%÷60%×2 万円(5 万円)=7.13 億

円(17.81 億円)-- ------------------------------------------------------------⑤

平成 30 年度以降 25 万トンの電炉ダストに対して、同様の処理を行うと

すると、下記のリサイクル効果が見込まれる。

25 万トン×30%×95%÷60%×2 万円(5 万円)=23.75 億円

(59.37 億円)--------- --------------------------------------------------------⑥

注:( )内数値は 2007 年の実勢価格から推定

4)平成 30 年度以降、25 万トンの電炉ダストが本設備に委託処理される

とすると、委託処理費用を 1 トンあたり 2 万円(3 万円)とすると、下

記の消費需要の創出効果が見込まれる。

25 万トン×2 万円(3 万円)=50 億円(75 億円) -----------------⑦

平成 23 年度の平成 14 年度に対するリサイクル効果は、③+⑤で 10.5

億円(31.3 億円)(年間)となる。

また、算出される総波及効果は、省エネ効果+リサイクル効果の 15.1

(39.7)億円となる。

注:( )内数値は 2007 年の実勢価格から推定

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5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等

5-1 研究開発計画

本事業は、平成 15 年度から経済産業省の補助事業(補助率:2/3)とし

て開始し、平成 19 年度までの5ヵ年の計画で実施した。

(1)計画の適切化

開発は次の4つのステップで推進した。初年度は基礎実験や、パイロット

プラントの基本設計を行ない、2年目以降に設備を順次、設置して開発を進

め、効率的な開発を行なった。

第1ステップ:基礎実験および実験設備基本設計

第2ステップ:塊成化技術の確立および基礎実験

第3ステップ:還元・脱亜鉛・還元鉄溶解技術の確立および基礎実験

第4ステップ:総合実証運転

(2)スケジュールの前倒し実施

第3ステップの平成17年度には、回転炉床炉を含む還元処理設備のほか、

溶解炉の建設・立上げを行なった。当初計画では溶解炉の設置は平成 18 年

度を予定していたが、設備のリース化により、投入予算を前倒しして、開発

の早期スタートを実現した。その結果、業務の効率が上がり、本事業の開発

速度を当初計画より上回った。また、この背景には、電気炉ダストから亜鉛

等の有用金属回収の重要性が増大したことがある。

(3)選別過程の適切化

電気炉ダストの事前調査の結果、電炉メーカでの使用原料により、大きく

3種類(高級鋼、普通鋼、SUS 鋼)のダスト組成に分類されることが分かった

が、技術の汎用性を目的に、これら全てを実験の供与材とした。また、メル

ター炉でも様々な品位の還元鉄を溶解して、汎用性の高い溶解技術を確認す

るなど、社外学識経験者の意見も取り入れて実験を進めた。

(4)採択された実施者の妥当性

㈱神戸製鋼所は、長年に渡って回転炉床炉を用いた FASTMET®法を応用

して、製鉄ダスト還元処理設備を開発・実用化してきた経験があり、この技

術をベースとして、電気炉ダストの還元処理技術を順調に開発できた。

また、固定型メルター炉の開発に当たっても、エンジニヤリング部隊と精錬

操業経験者の共同推進により、安定な操業技術を確認できた。

各ステップの内容と実施時期を表 5-1.に示す。

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表 5-1.年度別の実施内容

ステップ 実施項目 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度

第1 基礎実験および実験設備基本設計電気炉ダスト、粗酸化亜鉛の性状調査0.5t試験転炉での還元鉄溶解基礎技術の確認小型燃焼炉による2次燃焼の挙動確認

第2 塊成化技術の確立および基礎実験実験室における電気炉ダストの塊成化条件の把握パイロットプラントの大型ブリケットマシンでの確認コールドモデルによる粒子飛散低減策の検討

第3

溶解炉内の流熱シミュレーションモデルの作成パイロットプラントの運転による還元技術の確認パイロットプラントの運転による溶解技術の確認

第4 総合実証運転パイロットプラントによる総合実証運転

還元・脱亜鉛・還元鉄溶解技術の確立および基礎実験

当初計画

見直し後

当初計画

見直し後

第1ステップ:基礎実験および実験設備基本設計

電気炉ダストの特性、塊成化条件、還元条件、溶解条件、回収する亜鉛の

特性、回収する鉄の特性について調査を行なった。

主要な設備の基本仕様を決定し基本設計を実施した。

第2ステップ:塊成化技術の確立および基礎実験

平成15年度に得られた成果をもとに電気炉ダストと還元材の混合物の塊成

化技術の開発を行なった。実験室の小型ブリケットマシンで塊成化技術に影

響を与える条件を確認する一方、パイロットプラントにおいては還元、溶解

を行う設備に先立ち塊成化設備を建設、大型のブリケットマシンにて電気炉

ダストと還元材の混合物の塊成化を実証した。

第3ステップ:還元・脱亜鉛・還元鉄溶解技術の確立および基礎実験

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平成15年度から平成16年度にかけて得られた成果をもとに還元・脱亜

鉛・還元鉄溶解設備を建設し実験を行なった。また平成16年度に引き続き、

塊成化技術、還元・脱亜鉛技術、還元鉄溶解技術に関する基礎検討および基礎

実験を行なった。

第4ステップ:総合実証運転

パイロットプラントにて塊成化、還元・脱亜鉛処理、還元鉄溶解の一連の運

転を行い、電気炉ダストに含有する亜鉛並び鉄分のリサイクル技術の実証実

験を実施した。

5-2 研究開発実施者の実施体制・運営

本研究開発は、経済産業省の公募による選定審査手続きを経て、㈱神戸製鋼

所が実施した。また、研究開発の実施に当たっては、統括のプロジェクトリー

ダーを置くとともに、研究開発事業の実施計画、成果等の内容について、本技

術分野の専門家から意見を受けた。更に、本事業の実施方針や実施内容に反映

するため、社外の学識経験者および社内の専門技術者からなる技術委員会を設

置した。

尚、メンバー員はプロセス技術者、設備設計者、操業経験者など、バランス

良く配置するとともに、回転炉床炉については過去の実験経験者、メルター

炉については鉄鋼部門の精錬技術有識者を集めることに加え、研究部門とも

タイアップするなど、全社体制で情報を共有し研究開発を推進した。

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5-2-1研究開発実施者の事業体制

本事業の推進に当たっては、塊成化・還元処理、溶解等の要素技術を開発す

るため、高水準の技術を結集させる必要があるほか、パイロットプラントの建

設及び運転を行うため、エンジニアリング、機器の調達、プラントの建設、プ

ラント設置場所の調整、原料やユーティリティのインフラ整備、行政への届出、

運転員の確保など、多岐に亘る業務を効率よく実施できる体制を整える必要が

あった。

そこで、関連する要素技術、パイロットプラントの建設、及び運転において

技術と経験を有する部署からなる全社的なプロジェクト体制とした。

各部署の主な担当業務を図 5-1 に示す。

本事業のプロジェクトリーダーは新鉄源プロジェクト本部 技術センター

溶解技術部長(平成 20 年 4 月 30 日まで同職務。平成 17 年 9 月 30 日までは

同センターのプロセス技術部長)であり、製鉄プロセスの開発、建設、運転に

おける広い知見と経験により本事業全体の運営、管理を行なった。

○技術研究センター 溶解炉の基本コンセプト

の検討 溶解炉の基本的な実験

計画の作成 溶解実験結果の検討

○機械研究所 流熱解析・実験による溶解

炉仕様の検討 実験での測定計画の作成 実験結果の解析

○加古川製鉄所 プラント設置場所の調整 区官庁への届出支援 ユーティリティ等のインフ

ラ整備 運転員の確保

プロジェクトリーダー:新鉄源プロジェクト本部 藤本英明

技術開発におけるプロジェクトマネージメント 塊成化技術の開発 還元技術の開発 溶解炉の設計仕様の作成 実験計画の具体化 実験結果のまとめ

○機械エンジニアリングカンパニー 土建、計電関係のエンジ

ニアリング 機器の調達 プロジェクト管理 建設工事

プラント建設及び運転における        プロジェクトマネージメント 基本エンジニアリングの実施 詳細エンジニアリングの実施

経済産業省

㈱神戸製鋼所

1回/月の会議で進捗状況を確認

毎週の会議で進捗状況を確認

製鉄所事務所内に席を借りて情報共有化

担当者間で情報共有化

事業全体の企画・運営 全体計画の作成と進捗の確認 ユーザー情報の入手

図 5-1.実施体制図

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5-2-2 研究開発実施者の運営

研究開発は、新鉄源プロジェクト本部が事業の主体を担って、技術開発本部、

鉄鋼部門、機械エンニアリングカンパニーからなる混成チームを組んだ。

新鉄源プロジェクト本部、技術開発本部、鉄鋼・技術研究センター間で、連

携を取ることによって各技術部門が有する専門的な技術を結集し、チームとし

ての技術開発の能力を高めるとともに、製鉄所や機械エンジニアリングカンパ

ニーの現業部門の協力を得ることにより、設備機器の調達、プラントの建設や、

プラントの運転に関して発生する業務を効率よく推進した。

技術開発の運営に関しては、1回/月程度の会議を実施し、開発中の技術内容、

進捗状況、開発の方向性の確認を行なった。また、本事業を効率よく推進する

ために1回/週程度以上の頻度でプロジェクト会議を行い、関係者間で本事業に

関する情報の共有化、開発目標と進捗の確認、課題や問題点の確認、対策の評

価等を行なった。また、社外の学識経験者、および社内の技術者からなる技術

委員会を1回/年実施し、技術分野の専門家からの評価を本事業の実施方針及び

実施内容に反映した。

一方、電気炉ダストリサイクルの需要や本開発技術の実用化に関しては、電

炉メーカと直接、情報交換を行うとともに、本事業で得られた還元鉄をユーザ

にサンプルとして供与し、電気炉で使用テストを行うことにより、開発成果を

確認した。

また、技術開発の内容とその成果を広く知らせるために、日本鉄鋼協会の講

演大会をはじめとして、様々な大会で積極的な発表を実施した。

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5-3 資金配分

開発資金に関しては、鋼材や工事価格の高騰の影響を受け、パイロットプラ

ント建設に係わるコストは大きく上昇したが、流用品の転用や仕様の見直し等

によってコスト低減を行なうことにより、開発費用の全体に占める割合が大き

いパイロットプラント建設の目処を立てることができた。

平成15年度から16年度にかけて基礎実験を行いデータを収集し十分検討

を行った上で平成17年度からパイロット建設を行うなど、効率的に研究開発

を実施した。

表 5-2.資金配分 (単位:百万円)

年度 平成 15 16 17 18 19 合計

補助金(補助率:2/3) 94 188 364 375 575 1,596

神戸製鋼所負担 1 23 18 341 378 760

合計 96 210 381 716 953 2,356

5-4 費用対効果

パイロットプラントを利用して、塊成化・還元処理、還元鉄の溶解を始めと

した本開発に係わる基礎技術を確実かつスピーデイに低コストで把握するこ

とができた。また、製鉄所内のインフラを利用することにより、ユーティリテ

ィや原料の手配など、実験に必要な工事と運転の費用を低く抑えることが可能

となった。

パイロットプラントの規模は開発コストに大きく影響を与えるが、プラント

規模が小さ過ぎると熱収支における熱損失の割合が大きくなり、精度良い運転

データの解析が行えず実証運転の信頼性に問題が生じる。また、溶解炉ではヒ

ートサイズを小さくすると溶解炉から溶銑と溶滓を排出時に熱損失によって

凝固しやすく、安定な運転が困難になる。本事業においてはパイロットプラン

トを安定に運転し、しかも開発技術の実証が可能な必要最小の規模とすること

で、費用対効果が最大に生かせるようにした。

本研究開発では、5年間にわたって15.96億円の補助金により行われた。

これに対し、4-2章で算出したように得られる波及効果(省エネ+リサイク

ル)は15.1(39.7)億円であり、費用対効果は十分あると見込まれる。

注:( )内数値は2007年の実勢価格から推定

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5-5 変化への対応

最近の世界鉄鋼業を取り巻く環境は、原料サプライヤーの寡占化はもとよ

り、2002年以降の世界規模の生産量の拡大により、凄まじいまでの原燃料の

大幅な高騰を招き、資源争奪戦の様相を呈している。特に、コークス原料と

なる強粘結炭は一般炭と比べて、値上がり幅が大きく、昨年度は供給不足に

より、国内高炉メーカでは減産に追い込まれている。また、鉄源の不足によ

って鉄屑需要が高まり、価格が大幅にアップしている。更に、環境面では、産

業廃棄物処理場の慢性的な不足や、処理費用の増加により、電気炉ダストのリ

サイクルの促進や鉄分回収の重要性は益々増してきている。

本研究開発の実施に当たっては、全社体制で情報の収集・共有化を行い、

毎年に社外の学識経験者及び社内の技術者からなる技術委員会を開催し、本

事業の実施方針及び実施内容を検討し研究開発を推進した。

具体的には、電気炉ダストから亜鉛等の有用金属回収の重要性が増大した

ことから当初計画では平成18年度に設置を予定していた溶解炉について、設

備のリース化により投入予算を前倒しして、開発の早期スタートを実現する

など対応を行った。