肺炎球菌性肺炎に続発した器質化肺炎の1例 -...

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128 ●症 要旨:症例は 28 歳女性,来院 7 日前からの悪寒を伴う発熱で発症.近医での治療にて症状改善せず当科紹 介.レントゲンで右肺に浸潤影を認め尿中抗原検査で肺炎球菌陽性,喀痰塗沫でもグラム陽性双球菌を認め たため肺炎球菌性肺炎と診断した.抗菌薬を開始後速やかに解熱し画像上陰影の改善はみとめたものの肺の 容積減少は進行し低酸素血症が遷延,拘束性の呼吸機能障害を認めた.BAL にてリンパ球の増加を認め, TBLB にて Masson 体を含む器質化像を認め器質化肺炎の診断となった.プレドニンを開始したところ速や かに呼吸状態および画像所見は改善した.肺炎球菌後の続発性器質化肺炎は古くから報告があるものの,本 邦での報告はなく,本症例は肺炎の急性期から器質化の傾向が確認された貴重な症例と思われた. キーワード:肺炎球菌性肺炎,細菌性肺炎,続発性器質化肺炎 Pneumococcal pneumonia,Bacterial pneumonia,Secondary organizing pneumonia 28 歳,女性. 主訴:来院 1 週間前からの悪寒,倦怠感.前日からの 動悸および胸部圧迫感. 現病歴:鬱病で当院精神科に通院中の 28 歳の女性. 来院 7 日前に悪寒,倦怠感,軽度の乾性咳嗽が出現.近 医を受診しアジスロマイシンと総合感冒薬が処方された が,症状の改善を認めなかった.その後,動悸,胸部圧 迫感,前胸部痛,呼吸困難も出現した為に当院救急部を 受診.体温 39.7 度,胸部 X 線で右上葉および下葉に陰 影を認め,肺炎球菌尿中抗原陽性となり肺炎球菌性肺炎 と診断.SpO2 が室内気にて 86% と酸素化が悪く呼吸促 迫,著明な頻脈といった所見を認め即日入院となった. 既往歴:3 歳時に小児喘息. 家族歴:子供:気管支喘息. 生活歴:喫煙:なし,飲酒歴:なし. アレルギー歴:薬剤:キシロカインで意識消失,食 物:エビ,カニで蕁麻疹. 身体所見:身長:154cm,体重:42kg,血圧:144! 91 mmHg,体温:39.7℃ 脈拍:158! 分整,呼吸回数:52 ! 分,SpO2 86%(室内気).眼瞼結膜に貧血なし.眼 球結膜に黄染なし.口腔内衛生良好.頸部リンパ節触知 せず.心音:I 音 II 音の減弱亢進なく,III および IV 音 なし,心雑音聴取せず.呼吸音:右肺野に気管支呼吸音 およびヤギ音を聴取.両側ともにクラックルは聴取せず. 腹部:平坦,軟.四肢:チアノーゼなし.浮腫なし. 検査所見:(Table 1)白血球および CRP の上昇に加 え肝機能の上昇を認めた.尿中抗原検査では肺炎球菌が 陽性. 微生物学的検査:喀痰塗沫検査にて多数のグラム陽性 双球菌が認められ,貪食像も確認された.培養結果は喀 痰,血液培養ともに陰性であった. 画像所見:(Fig. 1,2)胸部 X 線:右上葉および下葉 に気管支透亮像を伴う硬化像を認める.右の小葉間裂は 上方偏移が見られる. 胸部 CT:右上葉および下葉に気管支透亮像を伴った 硬化像を認める.右上葉および下葉の volume loss が認 められる. 入院経過:(Fig.3)画像所見で右上葉全体,下葉の大 部分の均等陰影を認め,喀痰グラム染色,肺炎球菌の尿 中抗原が陽性の結果より肺炎球菌性肺炎と診断した. Ampicillin(ABPC)2g×4! 日(6 時 間 毎)に よ る 治 療 を開始したところ投与翌日より解熱傾向を認めたが,低 酸素血症は遷延し右上肺野および背部の気管支呼吸音も 継続して聴取された.投与 9 日目には平熱となり喀痰も 白色化し,塗沫でも好中球や有意菌も認めないため ABPC は 10 日目で終了とした.この時点で入院時に認 められた肝機能障害は正常化していた.しかし第 2 病日 第 7 病日のレントゲンでは陰影は残存し右上葉および下 葉の容積減少が段階的に進行しているのが確認された 肺炎球菌性肺炎に続発した器質化肺炎の 1 例 原永 修作 玉寄 真紀 仲村 秀太 古堅 屋良さとみ 比嘉 健山 正男 藤田 次郎 〒9030215 沖縄県西原町中頭郡上原 207 番地 琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座分子病態 感染症学分野(第一内科) (受付日平成 21 年 4 月 10 日) 日呼吸会誌 48(2),2010.

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Page 1: 肺炎球菌性肺炎に続発した器質化肺炎の1例 - jrs.or.jppneumonia;SOP)に分けられ,SOPは種々の要因で 発症し,膠原病,薬剤性などのほかに感染後に起こるも

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●症 例

要旨:症例は 28歳女性,来院 7日前からの悪寒を伴う発熱で発症.近医での治療にて症状改善せず当科紹介.レントゲンで右肺に浸潤影を認め尿中抗原検査で肺炎球菌陽性,喀痰塗沫でもグラム陽性双球菌を認めたため肺炎球菌性肺炎と診断した.抗菌薬を開始後速やかに解熱し画像上陰影の改善はみとめたものの肺の容積減少は進行し低酸素血症が遷延,拘束性の呼吸機能障害を認めた.BALにてリンパ球の増加を認め,TBLBにてMasson 体を含む器質化像を認め器質化肺炎の診断となった.プレドニンを開始したところ速やかに呼吸状態および画像所見は改善した.肺炎球菌後の続発性器質化肺炎は古くから報告があるものの,本邦での報告はなく,本症例は肺炎の急性期から器質化の傾向が確認された貴重な症例と思われた.キーワード:肺炎球菌性肺炎,細菌性肺炎,続発性器質化肺炎

Pneumococcal pneumonia,Bacterial pneumonia,Secondary organizing pneumonia

症 例

28 歳,女性.主訴:来院 1週間前からの悪寒,倦怠感.前日からの

動悸および胸部圧迫感.現病歴:鬱病で当院精神科に通院中の 28 歳の女性.

来院 7日前に悪寒,倦怠感,軽度の乾性咳嗽が出現.近医を受診しアジスロマイシンと総合感冒薬が処方されたが,症状の改善を認めなかった.その後,動悸,胸部圧迫感,前胸部痛,呼吸困難も出現した為に当院救急部を受診.体温 39.7 度,胸部X線で右上葉および下葉に陰影を認め,肺炎球菌尿中抗原陽性となり肺炎球菌性肺炎と診断.SpO2が室内気にて 86%と酸素化が悪く呼吸促迫,著明な頻脈といった所見を認め即日入院となった.既往歴:3歳時に小児喘息.家族歴:子供:気管支喘息.生活歴:喫煙:なし,飲酒歴:なし.アレルギー歴:薬剤:キシロカインで意識消失,食

物:エビ,カニで蕁麻疹.身体所見:身長:154cm,体重:42kg,血圧:144�91

mmHg,体温:39.7℃ 脈拍:158�分整,呼吸回数:52回�分,SpO2 86%(室内気).眼瞼結膜に貧血なし.眼球結膜に黄染なし.口腔内衛生良好.頸部リンパ節触知

せず.心音:I音 II 音の減弱亢進なく,III および IV音なし,心雑音聴取せず.呼吸音:右肺野に気管支呼吸音およびヤギ音を聴取.両側ともにクラックルは聴取せず.腹部:平坦,軟.四肢:チアノーゼなし.浮腫なし.検査所見:(Table 1)白血球およびCRPの上昇に加

え肝機能の上昇を認めた.尿中抗原検査では肺炎球菌が陽性.微生物学的検査:喀痰塗沫検査にて多数のグラム陽性

双球菌が認められ,貪食像も確認された.培養結果は喀痰,血液培養ともに陰性であった.画像所見:(Fig. 1,2)胸部X線:右上葉および下葉

に気管支透亮像を伴う硬化像を認める.右の小葉間裂は上方偏移が見られる.胸部CT:右上葉および下葉に気管支透亮像を伴った

硬化像を認める.右上葉および下葉の volume loss が認められる.入院経過:(Fig. 3)画像所見で右上葉全体,下葉の大

部分の均等陰影を認め,喀痰グラム染色,肺炎球菌の尿中抗原が陽性の結果より肺炎球菌性肺炎と診断した.Ampicillin(ABPC)2g×4�日(6時間毎)による治療を開始したところ投与翌日より解熱傾向を認めたが,低酸素血症は遷延し右上肺野および背部の気管支呼吸音も継続して聴取された.投与 9日目には平熱となり喀痰も白色化し,塗沫でも好中球や有意菌も認めないためABPCは 10 日目で終了とした.この時点で入院時に認められた肝機能障害は正常化していた.しかし第 2病日第 7病日のレントゲンでは陰影は残存し右上葉および下葉の容積減少が段階的に進行しているのが確認された

肺炎球菌性肺炎に続発した器質化肺炎の 1例

原永 修作 玉寄 真紀 仲村 秀太 古堅 誠屋良さとみ 比嘉 太 健山 正男 藤田 次郎

〒903―0215 沖縄県西原町中頭郡上原 207 番地琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座分子病態感染症学分野(第一内科)

(受付日平成 21 年 4月 10 日)

日呼吸会誌 48(2),2010.

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肺炎球菌肺炎後の器質化肺炎 129

Table 1 laboratory data on admission

SerologyChemistryCBCmg/dl43.38CRPg/dl6.1TP/μl32,500WBC

g/dl2.2Alb/μl441×104RBCUrinary antigenmg/dl116Glug/dl13.4HbS. pneumoniae: positivemg/dl13BUN%38.2HtL. pneumophila: negativemg/dl0.75CRE/μl33.6×104Plt

mEq/l138Na mEq/l4.1KABG (mask 3L, RR: 52)mEq/l101Cl7.482pH mg/dl8.3CaTorr67PaO2 mg/dl0.5T-Bil Torr28.5PaCO2 IU/l131ASmEq/l21.3HCO3-IU/l85ALTmEq/l-2BEIU/l473ALP Torr125A-aDO2 IU/l550LDHIU/l103γ-GTPIU/l12CPK

Fig. 1 Chest X-ray film on admission reveals consoli-dation with an air bronchogram in the right upper field.

(Fig. 4).第 14 病日の胸部X線では右上葉の含気が改善したものの容積減少は更に進行し,15 病日の CTでは右下葉の胸膜に接した非区域性の硬化像と右上葉の一部で牽引性の気管支拡張を伴う収縮性変化を認めた(Fig. 5).呼吸機能検査でも%VC 67.6%と拘束性障害を認めており(Table 2),器質化の進行が示唆された.確定診断目的に気管支鏡を施行し右B3で気管支肺胞洗浄を行い,右B3,B6 にてTBLBを行った.BALFの細胞分画では総細胞数が 11×105�ml,分画ではリンパ球が 35.4%とリンパ球優位の細胞数の上昇を認めた(Table 2).TBLBの病理所見ではMasson 体および肺胞隔壁の肥厚,リンパ球を中心とした細胞浸潤といった器質化肺炎の所見が得られ(Fig. 6),二次性の器質化肺

炎と診断した.抗菌薬中止 5日後(第 16 病日)よりプレドニン(0.5mg�kg)の投与を開始したところ酸素化は速やかに改善.肺野の気管支呼吸音も徐々に減弱し,画像所見でも右上葉および下肺の均等陰影の改善が見られた.第 29 病日に退院,以後外来にてプレドニン投与を続けたところ,身体所見上の胸郭変形および画像上の収縮性変化は徐々に改善し,呼吸機能検査でも拘束性障害は改善した.プレドニンは漸減し 12 週後に中止したが,その後も呼吸状態や陰影の悪化は見られず経過良好である.

考 察

本症例は肺炎球菌性肺炎に続発した器質化肺炎の症例である.器質化肺炎は特発性(cryptogenic organizingpneumonia;COP)と続発性(secondary organizingpneumonia;SOP)に分けられ,SOPは種々の要因で発症し,膠原病,薬剤性などのほかに感染後に起こるものが報告されている1)~3).SOPと COPの臨床像を比較検討した Sveisson らの報告では5)SOPの原因として最も多かったのは感染症に関連したものであり(46 例中,21 例)そのうち 6例が肺炎球菌であったとしている.この結果は肺炎球菌が器質化を起こしやすいというよりは市中肺炎の起因病原体において肺炎球菌が最も多いことを反映していると思われる.また,SOPの原因として膠原病が最も多かったとする Lohr らの報告4)においても病理学的に器質化肺炎と診断された症例から感染症が明らかなものや好中球の浸潤をみとめる急性肺炎の病理像を認める症例が除外されているため,細菌性肺炎による器質化肺炎が一定の頻度であることが示唆される.もともと器質化肺炎の病理学的定義が明らかにされた

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Fig. 2 Chest CT scan on admission shows consolidation with air bronchograms in the right upper and lower lobes.

Fig. 3 Clinical course

のは 20 世紀前半に肺炎球菌性肺炎で死亡した患者のネクロプシーにて観察された所見からとされている2)6).続発性器質化肺炎の発症が報告されている感染病原体には

細菌,ウイルス,真菌,寄生虫などがあり細菌性ではマイコプラズマ,クラミジアおよびレジオネラの報告が多くみられる1)~3)7)8).細菌性肺炎後の器質化肺炎発症の機

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肺炎球菌肺炎後の器質化肺炎 131

Table 2

BALFPulmonary function testTotal cell count: 11.8×105/mlL1.92VC

40%Mφ%67.6%VC35.4%

(CD4/8: 0.97)18.3%6.4%

Lym

NeuEo

1.92 L1.75 L91.1%

FVCFEV1.0FEV1.0%

Fig. 4 Chest CT scan on day 15 shows the volume loss of the right upper and lower lobes with traction bronchiectasis.

Fig. 5 Microscopic findings of transbronchial lung biopsy specimen, revealing a Masson body in the airspace and the infiltration of lymphocytes into the alveolar wall.

序として不明であるが,病原体がクリアランスされた後に残った炎症性の後遺症であると考えられており2),適切な治療によって症状が改善傾向になった後に画像所見や症状の残存することによりその存在が疑われる.COPと SOPの臨床像や画像所見にほとんど違いが認

められず4)5),クラックルの聴取のみが SOPに優位であったとの報告もある.本症例は入院時には喀痰塗沫,尿中抗原により容易に

肺炎球菌性肺炎の診断がついたが,初診時から右胸郭の

扁平化や画像上の縦隔偏移,小葉間裂の上方偏移など身体所見や画像所見で右肺の容積減少を示唆する所見があった.古典的な肺炎球菌性肺炎は①充血期②赤色肝変期③灰色肝変期④融解期の病期をとるとされる.また,肺炎球菌性肺炎の急性期では浸出物が多く肺葉が拡張し,葉間を圧排するいわゆる bulging fissure sign が見られることが特徴の一つと言われている.肺炎球菌性肺炎の病態は肺胞内の空気を炎症性の浸出物で置き換えることであるので,肺炎の急性期においては肺容量の減少は見られないかわずかであるとされる9).本症例は治療後に解熱が見られるにもかかわらず,低酸素血症および頻脈が持続し胸部画像では上葉および下葉の容積減少は進行している.また呼吸機能検査でも拘束性呼吸障害を呈するなど肺炎球菌性肺炎の経過としては非典型的であった.聴診所見も初診時から経過中にかけてクラックルを呈することはなく,これらの所見からも入院時すでに器質化が進行していたことが推測される.BALFの所見でも細菌性肺炎に見られる好中球の上昇はわずかで

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Fig. 6 Chest X-ray film (a) and Chest CT scan (b) after 6-week treatment with prednisolone, shows im-provement of the volume loss and no infiltration.

ba

あり,リンパ球の増加を認め,病理所見でもMasson 体の存在や肺胞隔壁の肥厚やリンパ球主体の細胞浸潤を認め器質化肺炎の診断が得られた.本症例において器質化肺炎が肺炎球菌性肺炎の経過と

して発症したのか,質的に異なる病態として出現したかの判断は難しいが入院時は喀痰にて多数の好中球が確認されていたものが器質化肺炎と診断した時点のBALFはリンパ球の上昇を認めており,肺炎球菌性の経過中に器質化と考えた.SOPの治療法や期間に関してコンセンサスは得られ

ていないがCOPと同様に治療されているのが現状である.COPの治療においては 1日あたり 0.5mg�kg~1.5mg�kg のプレドニンで治療が開始し 4~6週間の治療後の漸減が推奨されている1)~3).本症例も 0.5mg�kg のプレドニンにて速やかな改善が得られており,4週間の治療ののち漸減し 12 週で中止としている.本症例においてどの時点でステロイドを使用するのが

適切であったかは議論が残るところであると思われる.SOPにおいてどの時点にステロイドを開始するかを検討した報告はないものの,本症例において抗菌薬と同時にステロイドの投与を行うことによって器質化の進行を予防できた可能性もある.器質化肺炎の治療を目的としたものではないがConfalonieri10)は重症の市中肺炎症例においてステロイドの併用が予後を改善させ入院期間を短縮したと報告しており,Garcia11)らも同様な報告をしている.本症例においても入院時より重症の肺炎として抗菌薬とステロイドを併用することにより器質化の進行を予防することができた可能性はあると思われる.本症例においては入院前に感冒薬や抗菌薬(アジスロ

マイシン),市販薬などの服用歴が見られ,入院時に肝機能障害を認めており,薬剤性肺炎の可能性は否定できないが,喀痰所見や尿中抗原検査で肺炎球菌性肺炎があったことは確認されており,経過からも肺炎に併発した続発性の器質化肺炎と考えることが適当と思われる.細菌性肺炎の治療経過中に画像や酸素化の改善が乏しい場合は本例のような器質化肺炎の続発を考慮し,診断治療に当たるべきであろう.

引用文献

1)Drakopanagiotakis F, Polychronopoulos V, JudsonMA. Organizing pneumonia. Am J Med Sci 2008 ;335 : 34―39.

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Abstract

Secondary organizing pneumonia after pneumococcal pneumonia

Shusaku Haranaga, Maki Tamayose, Hideta Nakamura, Makoto Furugen, Satomi Yara,Futoshi Higa, Masao Tateyama and Jiro Fujita

Department of Medicine and Therapeutics, Control and Prevention of Infectious Disease,Faculty of Medicine, University of the Ryukus, Okinawa

A 28-year-old woman was admitted to our hospital complaining of a 7-day chilly sensation with fever. She wasgiven a diagnosis of pneumococcal pneumonia because of infiltration on chest radiography, sputum gram stainingand testing positive for a pneumococcal urinary antigen. A 10-day course of antibiotics showed improvements insymptoms and infiltration. However, her X-ray film revealed severe volume loss in the right lung. Organizingpneumonia was diagnosed with lymphocytosis in BALF and Masson bodies upon TBLB examination. Administra-tion of prednisolone obtained rapid improvement of the volume loss. This case was interesting, showing an organ-izing tendency in the acute-stage pneumococcal pneumonia.